特許第6803416号(P6803416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803416
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】変速装置及び変速装置の組み付け方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20201214BHJP
   B60K 17/06 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   F16H57/04 J
   F16H57/04 Z
   B60K17/06 K
   F16H57/04 F
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-19726(P2019-19726)
(22)【出願日】2019年2月6日
(65)【公開番号】特開2020-125837(P2020-125837A)
(43)【公開日】2020年8月20日
【審査請求日】2019年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】下田 裕也
【審査官】 山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−090537(JP,A)
【文献】 特開2014−043120(JP,A)
【文献】 特開2012−013166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
B60K 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のケースと、
オイルポンプギヤと、
前記オイルポンプギヤを支持する支持部と、オイルポンプに接続される接続部と、を有するオイルポンプシャフトと、
前記オイルポンプを収容するオイルポンプボディと、
前記オイルポンプへ潤滑油を供給するストレーナと、
を備える変速装置であって、
前記ストレーナ及び前記オイルポンプボディは、第1のケースに固定され、
前記ストレーナには、前記オイルポンプギヤの径方向と平行に突出する突出部が設けられ、
前記オイルポンプギヤは、前記オイルポンプシャフトの軸方向における前記突出部と前記オイルポンプボディとの間に設けられ
前記突出部は前記オイルポンプギヤの一部を覆うように形成されている変速装置。
【請求項2】
前記オイルポンプボディに接続される前記オイルポンプシャフトの前記接続部における軸方向での長さは、前記突出部と前記オイルポンプギヤとの間の前記軸方向での隙間よりも長い請求項1又は請求項に記載の変速装置。
【請求項3】
前記突出部は、前記オイルポンプシャフトの軸方向に直交する方向に平行な板状部材により構成される請求項1又は求項に記載の変速装置。
【請求項4】
前記第1のケースと合わせられる第2のケースをさらに備え、
前記第2のケースには、シャフト軸受が備えられ、
前記接続部は前記オイルポンプにスプライン嵌合され、
前記オイルポンプシャフトの、前記オイルポンプギヤを挟んで前記接続部とは反対側の部分は、前記シャフト軸受に嵌合される請求項1〜請求項のいずれかに記載の変速装置。
【請求項5】
請求項に記載の変速装置の組み付け方法であって、
前記第1のケースに前記オイルポンプボディを組み付け後に前記オイルポンプシャフトと前記オイルポンプギヤを組み付け、その後前記ストレーナを前記第1のケースに組み付ける工程を有する、変速装置の組み付け方法。
【請求項6】
前記第1のケースに前記ストレーナを組み付け後に、前記第1のケースを前記第2のケースと組み付ける工程を有する、請求項に記載の変速装置の組み付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速装置及び変速装置の組み付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンの下部のオイルパンに貯留された潤滑油を吸入して、エンジン各部に供給するオイルポンプを備え、エンジン各部の潤滑に用いられた潤滑油をオイルパンに回収する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−043120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
変速装置の組み付け時には、オイルポンプギヤ等の部品が組み付けられた第1のケースと第2のケースとが合わせられて、組み付けが行われる。この組み付けの際には、部品が組み付けられた第1のケースは、反転させられて組み付けられた部品が第1のケースに対して下側となるように保持される等、姿勢が変更されることにより、オイルポンプギヤ等の部品が第1のケースから抜けて外れてしまうことがある。また、組み付けの際には、部品が組み付けられた第1のケースが振動することにより、オイルポンプギヤがずれたり、第1のケースから抜けて外れてしまったりすることがある。このため、組み付け性が悪化し、その他組み付け方法に制約が発生する。
【0005】
本発明は、変速装置の組み付け時に、ケースに組み付けられた部品が外れることが防止された変速装置、及び、当該変速装置の組み付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明にかかる変速装置は、第1のケース(例えば、後述の中間ケース20)と、オイルポンプギヤ(例えば、後述のオイルポンプギヤ62)と、前記オイルポンプギヤを支持する支持部(例えば、後述の中間部分612)と、オイルポンプ(例えば、後述のオイルポンプギヤ62)に接続される接続部(例えば、後述の接続部611)と、を有するオイルポンプシャフト(例えば、後述のオイルポンプシャフト61)と、前記オイルポンプを収容するオイルポンプボディ(例えば、後述のオイルポンプボディ51)と、前記オイルポンプへ潤滑油を供給するストレーナ(例えば、後述のストレーナ70)と、を備える変速装置(例えば、後述の変速装置1)であって、前記ストレーナ及び前記オイルポンプボディは、第1のケースに固定され、前記ストレーナには、前記オイルポンプギヤの径方向と平行に突出する突出部(例えば、後述の突出部71)が設けられ、前記オイルポンプギヤは、前記オイルポンプシャフトの軸方向における前記突出部と前記オイルポンプボディとの間に設けられていることを特徴とする。
【0007】
これにより、オイルポンプシャフト及びオイルポンプギヤが組み付けられた状態の第1のケースの向き(姿勢)を変化させたときに、オイルポンプギヤが突出部に当接して、オイルポンプシャフト及びオイルポンプギヤが第1のケースに取り付けられたオイルポンプボディから、抜けて外れてしまうことを防止することが可能となる。このため、組み付け性が悪化することを抑えることが可能となる。
【0008】
また、前記突出部は前記オイルポンプギヤの一部を覆うように形成されていることが好ましい。これにより、オイルポンプギヤが突出部とオイルポンプボディとの間に配置された構成となる。このため、オイルポンプギヤのフリクションを低減して燃費を向上させることが可能となる。
【0009】
また、前記オイルポンプボディに接続される前記オイルポンプシャフトの前記接続部における軸方向での長さ(例えば、後述の長さY)は、前記突出部と前記オイルポンプギヤとの間の前記軸方向での隙間(例えば、後述の隙間の幅X)よりも長いことが好ましい。これにより、接続部の長さと隙間の長さを規制することで、オイルポンプボディからのシャフトの抜け防止を確実とすることができる。
【0010】
また、前記突出部は、前記オイルポンプシャフトの軸方向に直交する方向に平行な板状部材により構成されることが好ましい。これにより、オイルポンプシャフトの軸方向における突出部の寸法を抑えることが可能となる。
【0011】
また、前記第1のケースと合わせられる第2のケースをさらに備え、前記第2のケースには、シャフト軸受が備えられ、前記接続部は前記オイルポンプにスプライン嵌合され、前記オイルポンプシャフトの、前記オイルポンプギヤを挟んで前記接続部とは反対側の部分は、前記シャフト軸受に嵌合されることが好ましい。
【0012】
これにより、オイルポンプシャフトが、スプライン嵌合のような抜けやすい構造でオイルポンプに嵌合していても、オイルポンプシャフトのオイルポンプからの抜けを防止することができる。また、オイルポンプシャフトをシャフト軸受に嵌合させる際には、オイルポンプシャフトの回転を考慮せずに、シャフト軸受に嵌合することが可能であり組み付けを容易とする。
【0013】
また、本発明にかかる変速装置の組み付け方法は、上記変速装置の組み付け方法であって、前記第1のケースに前記オイルポンプボディを組み付け後に前記オイルポンプシャフトと前記オイルポンプギヤを組み付け、その後前記ストレーナを前記第1のケースに組み付ける工程を有することを特徴とする。
【0014】
これにより、このような工程における順番で組み付けが行われるため、前記ストレーナに設けられた突出部によってオイルポンプギヤの移動を規制することが可能となり、オイルポンプシャフトのオイルポンプボディからの抜けを確実に防止することが可能となる。
【0015】
また、前記第1のケースに前記ストレーナを組み付け後に、前記第1のケースを前記第2のケースと組み付ける工程を有することが好ましい。
【0016】
これにより、第1のケース側において、オイルポンプシャフトをオイルポンプボディにスプライン嵌合した場合には、突出部による抜け止め構造により第1のケース側からオイルポンプシャフトが抜けることがなく、組み付けが可能となる。また、合わせケース側としての第2のケース側にシャフト軸受を設けたことにより、オイルポンプシャフトがシャフト軸受に嵌合されることで、先に第1のケース側にオイルポンプシャフトを組み付けしなければならない場合でも、第1のケースの第2のケースへの組み付けが可能となる。第1ケース側を反転して、第2ケース側に組み付ける際、抜け止め(落下、ずれ)防止ができる。さらに、オイルポンプシャフトのシャフト軸受への嵌合は、スプライン嵌合のような位相を合わせて嵌合しなければいけないような形状でないため、組み付けが容易になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、変速装置の組み付け時に、ケースに組み付けられた部品が外れることが防止された変速装置、及び、当該変速装置の組み付け方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態による変速装置の組み付け方法において中間ケースをMケースへ組み付ける前の状態を示す側面図である。
図2】本発明の一実施形態による変速装置の中間ケースにオイルポンプギヤやストレーナが取り付けられた状態を示す側面図である。
図3】本発明の一実施形態による変速装置の組み付け方法において中間ケースをMケースへ組み付ける前の中間ケースを示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、中間ケース20をMケース30へ組み付ける前の状態を示す側面図である。図2は、変速装置1の中間ケース20にオイルポンプギヤ62やストレーナ70が取り付けられた状態を示す側面図である。図3は、中間ケース20をMケース30へ組み付ける前の中間ケース20を示す要部断面図である。
【0020】
変速装置1は、車両の内燃機関(ENG)のトルクを前輪(RWf,LWf)に伝達する自動変速機を構成する。変速装置1は、内燃機関に隣接して配置される。変速装置1は、互いに平行に配置された複数の回転軸と、各回転軸の周りで回転可能に支持されたギヤ等の回転部品及びクラッチなどの変速用の部品を備えた変速機構と、変速機構を含む変速装置1の構成部品と、を収容するケーシング10であって、変速装置1の外壁を構成するケーシング10(中間ケース20及びMケース30)を備えている。
【0021】
ケーシング10は、中間ケース20とMケース30(ミッションケース)とが嵌め合わされて一体とされて構成されている。
第1のケースとしての中間ケース20は、トルクコンバータやクラッチ、フライホイールなどの動力伝達機構を収容するものであり、中間ケース20の内面には、図3に示すように、オイルポンプ50を構成するオイルポンプボディ51が固定されている。オイルポンプ50は、オイルポンプボディ51に対して回転可能にオイルポンプボディ51に支持されたオイルポンプロータ52と、第2のケースとしてのMケース30に対向するオイルポンプボディ51の部分に設けられ、オイルポンプロータ52に対して同軸的な位置関係で配置された軸受53とを有している。オイルポンプ50においては、後述のオイルポンプギヤ62、及び、オイルポンプギヤ62を支持するオイルポンプシャフト61が回転することによりオイルポンプロータ52が回転して、オイルポンプ50は、潤滑油を吸入すると共に加圧し、内燃機関の潤滑部位に圧送する。オイルポンプボディ51は、図1に示すように、中間ケース20をMケース30に嵌め合わせて組み付ける際に、中間ケース20の内面から下方へ向かう位置関係で固定されている。
【0022】
また、中間ケース20には、オイルポンプギヤ62と、オイルポンプギヤ62を支持するオイルポンプシャフト61とが回転可能に支持されている。具体的には、オイルポンプシャフト61の一端部(図3に示すオイルポンプシャフト61の上端部)は、オイルポンプ50を収容するオイルポンプボディ51を貫通して、オイルポンプ50を構成するオイルポンプロータ52の軸心位置の部分にスプライン嵌合され、これにより、オイルポンプロータ52、及び、オイルポンプロータ52を収容するオイルポンプボディ51に接続されている。オイルポンプロータ52は、オイルポンプシャフト61の一端部と一体回転可能にオイルポンプシャフト61の一端部に固定されている。オイルポンプシャフト61の一端部は、オイルポンプボディ51と接続される接続部611を構成する。
【0023】
オイルポンプギヤ62は、オイルポンプシャフト61によって貫通されて、オイルポンプシャフト61の中間部分612と一体回転可能に当該中間部分612に圧入されて固定されている。オイルポンプシャフト61の中間部分612は、オイルポンプギヤ62を支持する支持部を構成する。
【0024】
Mケース30には、シャフト軸受64が圧入により固定されて設けられている。シャフト軸受64には、オイルポンプギヤ62を挟んで接続部611とは反対側のオイルポンプシャフト61の他端部が嵌合している。より詳細には、シャフト軸受64の内輪には、オイルポンプシャフト61と一体回転可能に当該オイルポンプシャフト61の他端部が嵌合している。シャフト軸受64の外輪は、Mケース30に圧入されて固定されている。これにより、オイルポンプシャフト61及びオイルポンプギヤ62は、中間ケース20及びMケース30により構成されるケーシング10に対して回転可能に支持されている。なお、図3においては、説明の便宜上、オイルポンプシャフト61に対するシャフト軸受64の位置が分かりやすいように、オイルポンプシャフト61の端部にシャフト軸受64を図示している。
【0025】
また、第1のケースとしての中間ケース20の内面には、ストレーナ70が設けられている。ストレーナ70は、図示しないオイルパン室の底部に溜まった潤滑油をストレーナ70内に吸入して濾過し、オイルポンプ50へ供給する。ストレーナ70は、図1図3に示すように、中間ケース20をMケース30に嵌め合わせて組み付ける際に、中間ケース20の内面から下方へ向かって延びるような位置関係とされて固定されている。このように中間ケース20をMケース30に嵌め合わせて組み付ける際に、上下方向におけるストレーナ70の中間の部分には、オイルポンプギヤ62の径方向と平行の方向、即ち、オイルポンプシャフト61の軸方向に直交する方向に突出する突出部71が設けられている。
【0026】
突出部71は、より具体的には、オイルポンプシャフト61の軸方向に直交する方向に平行な位置関係を有してストレーナ70から延びる平板状の板状部材により構成されている。突出部71は、オイルポンプシャフト61の軸方向において、オイルポンプギヤ62よりもオイルポンプシャフト61の他端部側に位置している。このため、図3に示すように、オイルポンプシャフト61の軸方向における突出部71とオイルポンプボディ51との間には、オイルポンプギヤ62が位置している。
【0027】
また、図2に示すように、突出部71は、オイルポンプシャフト61の軸方向視において、オイルポンプギヤ62の一部と重なる位置関係を有している。このため、図2に示すように、オイルポンプシャフト61の軸方向視では、突出部71は、ストレーナ70寄りのオイルポンプギヤ62の部分の一部を、中間ケース20に対向するMケース30の側において覆うように形成されている。このため、当該ストレーナ70寄りのオイルポンプギヤ62の部分の一部は、図3に示すように、ストレーナ70の突出部71とオイルポンプボディ51との間に配置されている。
【0028】
図3に示すように、オイルポンプボディ51のオイルポンプロータ52に接続されるオイルポンプシャフト61の接続部611における軸方向での長さYは、突出部71とオイルポンプギヤ62との間の、オイルポンプシャフト61の軸方向での隙間の幅Xよりも長く構成されている。より具体的には、図3に示すように、中間ケース20の内面から突出するオイルポンプボディ51のオイルポンプロータ52に挿入されているオイルポンプシャフト61の接続部611の長さYは、オイルポンプシャフト61の軸方向における、オイルポンプギヤ62と突出部71との間の隙間の幅の最大値Xよりも長く構成されている。このため、図3に示すように、中間ケース20の向き(姿勢)が変えられることにより、オイルポンプシャフト61が中間ケース20よりも下側に位置したときであっても、オイルポンプボディ51に挿入されているオイルポンプシャフト61の接続部611がオイルポンプボディ51のオイルポンプロータ52から抜けてしまう前に、オイルポンプギヤ62と突出部71とが当接して、オイルポンプボディ51からの、オイルポンプシャフト61の接続部611の抜けが防止される。
【0029】
次に、上記変速装置1の組み付け方法について説明する。変速装置1の組み付け方法では、先ず、中間ケース20の内面に、ボルトによりオイルポンプボディ51を組み付けて固定する工程を行う。次に、オイルポンプボディ51の軸受53に、オイルポンプシャフト61の一端部である接続部611を挿入してゆき、オイルポンプボディ51のオイルポンプロータ52にオイルポンプシャフト61の接続部611をスプライン嵌合させる工程を行う。また、Mケース30に圧入によりシャフト軸受64を固定する工程を行う。
【0030】
次に、ストレーナ70を中間ケース20に組み付ける工程を行う。この工程においてストレーナ70を中間ケース20の所定の位置に組み付けることにより、図2に示すように、オイルポンプシャフト61の軸方向視では、突出部71は、ストレーナ70寄りのオイルポンプギヤ62の部分の一部を、中間ケース20に対向するMケース30の側から覆うような位置関係となる。当該ストレーナ70寄りのオイルポンプギヤ62の部分の一部は、図3に示すように、ストレーナ70の突出部71とオイルポンプボディ51との間に配置される。
【0031】
次に、中間ケース20とMケース30とを嵌め合わせて一体としてケーシング10とする工程を行う。この工程では、先ず、図1に示すように、ストレーナ70、オイルポンプボディ51、及び、オイルポンプシャフト61を下側とし、中間ケース20を上側とした位置関係で、中間ケース20の内面、ストレーナ70、オイルポンプボディ51、及び、オイルポンプシャフト61等をMケース30に対向させる。
【0032】
このとき、前述のようにオイルポンプギヤ62の一部は、図3に示すように、ストレーナ70の突出部71とオイルポンプボディ51との間に配置されており、オイルポンプギヤ62の当該一部の下側には、ストレーナ70に設けられた突出部71が存在している。そして、図3に示すように、中間ケース20の内面から突出するオイルポンプボディ51のオイルポンプロータ52に挿入されているオイルポンプシャフト61の接続部611の長さYは、オイルポンプシャフト61の軸方向における、オイルポンプギヤ62と突出部71との間の隙間の幅の最大値Xよりも長く構成されているため、オイルポンプロータ52にスプライン嵌合されたオイルポンプシャフト61の接続部611が、オイルポンプロータ52から抜けて、オイルポンプボディ51から外れてしまうことが防止される。
【0033】
次に、中間ケース20とMケース30とを互いに相対的に接近させてゆき、Mケース30に固定されているシャフト軸受64に、オイルポンプシャフト61の他端部を嵌合させ、中間ケース20とMケース30とを当接させて嵌め合わせ、ボルトにより固定して一体として、ケーシング10とする。
【0034】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態による変速装置1では、ストレーナ70及びオイルポンプボディ51は、中間ケース20に固定され、ストレーナ70には、オイルポンプギヤ62の径方向と平行に突出する突出部71が設けられ、オイルポンプギヤ62は、オイルポンプシャフト61の軸方向における突出部71とオイルポンプボディ51との間に設けられている。
【0035】
これにより、オイルポンプシャフト61及びオイルポンプギヤ62が組み付けられた状態の中間ケース20の向き(姿勢)を変化させたときに、オイルポンプギヤ62が突出部71に当接して、オイルポンプシャフト61及びオイルポンプギヤ62が中間ケース20に取り付けられたオイルポンプボディ51から、抜けて外れてしまうことを防止することが可能となる。このため、組み付け性が悪化することを抑えることが可能となる。
【0036】
また、本実施形態による変速装置1においては、突出部71はオイルポンプギヤ62の一部を覆うように形成されている。これにより、オイルポンプギヤ62が突出部71とオイルポンプボディ51との間に配置された構成となる。このため、オイルポンプギヤのフリクションを低減して燃費を向上させることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態による変速装置1においては、オイルポンプボディ51に接続されるオイルポンプシャフト61の接続部611における軸方向での長さYは、突出部71とオイルポンプギヤ62との間の軸方向での隙間の幅Xよりも長い。これにより、接続部611の長さYと隙間の幅Xを規制することで、オイルポンプボディ51からのシャフトの抜け防止を確実とすることができる。
【0038】
また、本実施形態による変速装置1においては、突出部71は、オイルポンプシャフト61の軸方向に直交する方向に平行な板状部材により構成される。これにより、突出部71を薄く構成することができ、オイルポンプシャフト61の軸方向における突出部71の寸法を抑えることが可能となる。
【0039】
また、本実施形態による変速装置1においては、第1のケースと合わせられる第2のケースとしてのMケースをさらに備え、Mケース30には、シャフト軸受64が備えられ、接続部611はオイルポンプにスプライン嵌合され、オイルポンプシャフト61の、オイルポンプギヤ62を挟んで接続部611とは反対側の部分は、シャフト軸受64に嵌合される。
【0040】
これにより、オイルポンプシャフト61が、スプライン嵌合のような抜けやすい構造でオイルポンプ50に嵌合していても、オイルポンプシャフト61のオイルポンプ50からの抜けを防止することができる。また、オイルポンプシャフト61をシャフト軸受64に嵌合させる際には、オイルポンプシャフト61の回転を考慮せずに、シャフト軸受64に嵌合することが可能であり組み付けを容易とする。
【0041】
また、本実施形態による変速装置1の組み付け方法では、第1のケースにオイルポンプボディ51を組み付け後にオイルポンプシャフト61とオイルポンプギヤ62を組み付け、その後ストレーナ70を第1のケースに組み付ける工程を有する。これにより、このような工程における順番で組み付けが行われるため、ストレーナ70に設けられた突出部71によってオイルポンプギヤ62の移動を規制することが可能となり、オイルポンプシャフト61のオイルポンプボディ51からの抜けを確実に防止することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態による変速装置1の組み付け方法では、中間ケース20にストレーナ70を組み付け後に、中間ケース20をMケース30に組み付ける工程を有する。これにより、中間ケース20側において、オイルポンプシャフト61をオイルポンプボディ51にスプライン嵌合した場合には、突出部71による抜け止め構造により中間ケース20側からオイルポンプシャフト61が抜けることがなく、組み付けが可能となる。また、合わせケース側としてのMケース30側にシャフト軸受64を設けたことにより、オイルポンプシャフト61がシャフト軸受64に嵌合されることで、先に中間ケース20側にオイルポンプシャフトを組み付けしなければならない場合でも、中間ケース20のMケース30への組み付けが可能となる。中間ケース側を反転して、Mケース側に組み付ける際、抜け止め(落下、ずれ)防止ができる。さらに、オイルポンプシャフト61のシャフト軸受64への嵌合は、スプライン嵌合のような位相を合わせて嵌合しなければいけないような形状でないため、組み付けが容易になる。
【0043】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
例えば、突出部の構成は、本実施形態における突出部71の構成に限定されない。即ち、突出部は、平板状の板状部材により構成されていることに限定されない。突出部は、オイルポンプボディと対向するオイルポンプギヤの面の反対側の面の一部を覆うように構成されていればよい。
【0044】
また、変速装置の各部の構成は、本実施形態における変速装置1の各部の構成に限定されない。
【符号の説明】
【0045】
1…変速装置
20…中間ケース
30…Mケース
50…オイルポンプ
51…オイルポンプボディ
61…オイルポンプシャフト
62…オイルポンプギヤ
64…シャフト軸受
70…ストレーナ
71…突出部、
611…接続部
612… 中間部分(支持部)
X…隙間の幅
Y…長さ
図1
図2
図3