特許第6803447号(P6803447)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6803447吸収シート、吸収シートロール及び吸油方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803447
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】吸収シート、吸収シートロール及び吸油方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/00 20060101AFI20201214BHJP
   B65D 81/26 20060101ALI20201214BHJP
   A47J 43/28 20060101ALI20201214BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20201214BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20201214BHJP
【FI】
   A47J37/00 C
   B65D81/26 H
   A47J43/28
   B65D85/50 100
   A23L5/00 G
   A23L5/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-210794(P2019-210794)
(22)【出願日】2019年11月21日
(65)【公開番号】特開2020-164247(P2020-164247A)
(43)【公開日】2020年10月8日
【審査請求日】2019年11月26日
(31)【優先権主張番号】特願2019-68428(P2019-68428)
(32)【優先日】2019年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516274863
【氏名又は名称】幸田 八州雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180921
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】幸田 八州雄
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−521218(JP,A)
【文献】 特表平09−504471(JP,A)
【文献】 特開2008−073187(JP,A)
【文献】 特開2011−030718(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3163077(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/00
A23L 5/00
A47J 43/28
B65D 81/26
B65D 85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面に付いた液滴や液膜を除去する吸収シート(31)であって、
向かい合う二辺を有するシート状の形態であるシート部(33)と、
前記シート部に設けられた複数の第1切れ目(35)と、
前記第1切れ目と交差する方向に設けられた前記第1切れ目よりも短い複数の第2切れ目(41)と、
前記シート部の前記向かい合う二辺に、前記第1切れ目及び前記第2切れ目が入っていない縁部(37)と、
前記縁部を残し、前記縁部の前記二辺に対して垂直方向に設けられた複数の前記第1切れ目が形成する複数の短冊からなる短冊部(39)とを備え、
複数の前記短冊は、前記縁部でつながったものであり、
前記第1切れ目同士の間に、複数の前記第2切れ目が設けられていて、
1本の前記第1切れ目のうち少なくとも2つの端点に挟まれた線分部分に対して複数の前記第2切れ目が接続して複数の切れ端を形成している、吸収シート。
【請求項2】
複数の前記第2切れ目は、千鳥状に設けられていて、前記シート部を前記第2切れ目に対して垂直方向に引っ張ると前記シート部が網状に広がる、請求項1記載の吸収シート。
【請求項3】
前記第2切れ目と交差する方向の前記シート部の辺に複数の前記第2切れ目が達している、請求項2記載の吸収シート。
【請求項4】
前記縁部に、前記第1切れ目と交差する方向に設けられた第3切れ目とをさらに備える、請求項1から3のいずれかに記載の吸収シート。
【請求項5】
前記シート部は、
第1シートと、
前記第1シートよりも剛性が高い第2シートの複数のシートを有し、
前記第1シートは、前記第2シートよりも吸収性が高く、
前記第1切れ目及び前記第2切れ目の少なくともいずれか一方の少なくとも一部は、前記第1シート及び前記第2シートを貫通している、請求項1から4のいずれかに記載の吸収シート。
【請求項6】
複数の前記第1シートが、前記第2シートを挟み込むように積層されている、請求項5記載の吸収シート。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の前記吸収シートが切り取り線を介して複数枚接続されている、吸収シートロール。
【請求項8】
揚げ物の表面に付いた油滴や油膜を吸油する吸油方法であって、
請求項1から6のいずれかに記載の前記吸収シートを揉むことにより、少なくとも一部の前記第2切れ目が前記シート部の一部に引っ掛かっている立体形状にする立体化工程と、
前記立体化工程により立体化した前記吸収シートの上に前記揚げ物を置く静置工程とを含む、吸油方法。
【請求項9】
前記立体化工程の前に、請求項3から6のいずれかに記載の前記吸収シートの前記シート部を前記第2切れ目に対して垂直方向に引っ張って前記シート部を網状に広げる網状化工程をさらに含む、請求項8記載の吸油方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収シート、吸収シートロール及び吸油方法に関し、特に、対象物の表面に付いた液滴や液膜を除去する吸収シート等に関する。
【背景技術】
【0002】
健康志向の高まりに伴い、唐揚げ等の揚げ物の油分を減らして消費者に提供する敷き板等が開発されてきた。
【0003】
例えば、とんかつ、めんちかつ、コロッケ、唐揚げ、てんぷら、ポテトフライ等の揚げ物食品の敷き板であって、揚げ物食品の油切りを良好とする紙製の敷き板が知られている(特許文献1)。また、切れ目のついたクッキングシートの下にキッチンペーパーを重ねて肉や魚を包むことが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−107695号公報
【特許文献2】登録実用新案第3163077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の敷き板は、切った油が揚げ物食品に再度付着することを防止するためのものであり、油切り自体は自然落下に任せている点で消極的な油切り方法といえる。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術は、「水、油を通さない」(特許文献2の明細書0006段落)クッキングシートで肉や魚を包み、クッキングシートの切れ目を介してキッチンペーパーに油を吸収させるため、揚げ物食品から油を分離することについては、特許文献1に記載の技術と同じく消極的と言わざるを得ない。
【0007】
ゆえに、本発明は、従来の油切りに用いられる手法よりも積極的に対象物の表面に付いた液滴を除去することが可能な、食品に対しても使用できる吸収シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、対象物の表面に付いた液滴や液膜を除去する吸収シートであって、シート状の形態であるシート部と、前記シート部に設けられた複数の第1切れ目と、前記第1切れ目と交差する方向に設けられた複数の第2切れ目とを備え、前記第1切れ目同士の間に、複数の前記第2切れ目が設けられていて、1本の前記第1切れ目に対して複数の前記第2切れ目が接続している、吸収シートである。
【0009】
本発明の第2の観点は、第1の観点の吸収シートであって、複数の前記第2切れ目は、千鳥状に設けられていて、前記シート部を前記第2切れ目に対して垂直方向に引っ張ると前記シート部が網状に広がる。
【0010】
本発明の第3の観点は、第2の観点の吸収シートであって、前記第2切れ目と交差する方向の前記シート部の辺に対して複数の前記第2切れ目が達している。
【0011】
本発明の第4の観点は、第1から第3のいずれかの観点の吸収シートであって、前記シート部の縁の少なくとも一部に、前記第1切れ目及び前記第2切れ目が入っていない縁部と、前記縁部に、前記第1切れ目と交差する方向に設けられた第3切れ目とをさらに備える。
【0012】
本発明の第5の観点は、第1から第4のいずれかの観点の吸収シートであって、前記シート部は、第1シートと、前記第1シートよりも剛性が高い第2シートとを有し、前記第1シートは、前記第2シートよりも吸収性が高く、前記第1切れ目及び前記第2切れ目の少なくともいずれか一方の少なくとも一部は、前記第1シート及び前記第2シートを貫通している。
ている。
【0013】
本発明の第6の観点は、第5の観点の吸収シートであって、複数の前記第1シートが、前記第2シートを挟み込むように積層されている。
【0014】
本発明の第7の観点は、第1から第6のいずれかの観点の前記吸収シートが切り取り線で複数枚接続されている、吸収シートロールである。
【0015】
本発明の第8の観点は、揚げ物の表面に付いた油滴や油膜を吸油する吸油方法であって、第1から第6のいずれかの観点の前記吸収シートを揉むことにより、少なくとも一部の前記第2切れ目が前記シート部の一部に引っ掛かっている立体形状にする立体化工程と、前記立体化工程により立体化した前記吸収シートの中に前記揚げ物を置く静置工程とを含む、吸油方法である。
【0016】
本発明の第9の観点は、第8の観点の吸油方法であって、前記立体化工程の前に、請求項3から6のいずれかに記載の前記吸収シートの前記シート部を前記第2切れ目に対して垂直方向に引っ張って前記シート部を網状に広げる網状化工程をさらに含む。
【0017】
本発明の第10の観点は、対象物の表面に付いた液滴や液膜を除去する吸収シートであって、シート状の形態であるシート部と、複数の切れ目とを備える、吸収シートである。
【0018】
本発明の第11の観点は、第10の観点の吸収シートであって、前記シート部の縁の少なくとも一部に、前記切れ目が入っていない縁部をさらに備える。
【0019】
本発明の第12の観点は、第11の観点の吸収シートであって、前記切れ目に沿って切り離してもシート部全体が分離せずに1つに接続されている。
【0020】
本発明の第13の観点は、第12の観点の吸収シートであって、長方形又は正方形の形状であり、4辺全てに前記縁部が存在しており、前記縁部に囲まれる領域に複数が配列するように入っているものである。
【0021】
本発明の第14の観点は、第13の観点の吸収シートであって、前記切れ目は、隣り合う切れ目との間隔が、最も狭いところで2mm以上であり、最も広いところで9cm以下である。
【0022】
本発明の第15の観点は、第13又は第14の観点の吸収シートであって、前記縁部は、1辺の長さに対して33%以下の長さである。
【0023】
本発明の第16の観点は、第12の観点の吸収シートであって、当該吸収シートは、長方形又は正方形であり、少なくとも対向する2辺のうち1辺は、前記切れ目が入っていない前記縁部であり、他の1辺は縁まで切れ目が入っている。
【0024】
本発明の第17の観点は、第10から第16のいずれかの観点の前記吸収シートが切り取り線で複数枚接続されている、吸収シートロールである。
【0025】
本発明の第18の観点は、第17の観点の吸収シートロールであって、前記切れ目は、前記切り取り線と交わる方向に線状に形成されている。
【0026】
本発明の第19の観点は、第10から第12及び第16のうちいずれかの観点の吸収シートが切り取り線で複数枚接続されており、前記切れ目は、前記切り取り線まで延びている、吸収シートロールである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の各観点によると、持ち運びや設置の際には平面的で場所を節約しつつ、吸収シートを揉むことで短冊部がお互いに絡み合って立体的に膨らんだ形状となる。さらに、複数の第1切れ目と複数の第2切れ目が形成する複数の切れ端が、第1切れ目、シート部の辺又は他の第2切れ目などのシート部の一部に引っかかることで立体的に膨らんだ形状を安定化することが可能となる。これにより、対象物を安定で崩れにくい立体的に膨らんだ形状の内部に埋没させるように入れ込み、吸収シートとの接触面積を飛躍的に増大させて表面に付いた液滴や液膜を積極的に除去する吸収シートを提供可能となる。
【0028】
本発明の第2の観点によると、千鳥状に設けられた第2切れ目を網状に広げることにより短冊部が伸長するため、より膨らんだ形状の吸収シートを提供することが可能になる。また、第2切れ目がシート部の一部に絡み合いやすくなり、立体的に膨らんだ形状を容易に保持することが可能になる。
【0029】
本発明の第3の観点によると、網状に広がる部分が多いためより膨らみやすく、また、全部の第2切れ目を容易に網状に広げることが可能になる。
【0030】
本発明の第4の観点によると、対向する辺の縁部を第3切れ目に入れ込むことで、吸収シートを揉みこむことなく対象物を風呂敷のように包み込むことが可能となる。これにより、対象物の表面に付いた液滴や液膜を除去することがさらに容易となる。
【0031】
本発明の第5の観点によると、高い吸収性と剛性が高い特性の両方を備えた特殊なシートを使用せずとも、高い吸収性と高い剛性を併せ持つ吸収シートを提供することが可能となる。
【0032】
本発明の第6の観点によると、使用者が吸収シートの表裏を気にすることなく、吸収性と高い剛性を併せ持つ吸収シートを利用することが可能となる。
【0033】
本発明の第10の観点によれば、吸収シートに切れ目が入っていることにより、揉むと絡み合って立体的に膨らんだ状態にすることが容易となる。結果として、吸収シートと対象物との接点を増やして対象物表面の液滴を効率的に吸収することが可能となる。このため、シート状であることによる輸送や収納の利便性と、使用時に立体的な構造とすることによる高い吸収効率とを両立する吸収シートを提供することが可能となる。
【0034】
また、本発明の第11の観点によれば、少なくとも吸収シートの1辺は切れ目が入っていない縁部を備えている。このため、対象物が食べ物である場合に、吸収シートがバラバラになって対象物と共に誤飲するリスクを低減することが容易となる。
【0035】
さらに、本発明の第12の観点によれば、吸収シート全体が1つにつながっているため、構造が立体的で高い吸収効率と廃棄するときの簡便さとを両立する吸収シートを提供することが可能となる。
【0036】
さらに、本発明の第13から第16の観点によれば、使用者が吸収シートを揉むことにより、容易にかつ安定して立体的な構造が得られる吸収シートを提供することが可能となる。
【0037】
また、本発明の第18の観点によれば、使用者が吸収シートロールから個々の吸収シートを切り離して使用する際、切り取り線と切れ目とが平行だと、吸収シートの切れ目にも切れる力が働く。そうすると、吸収シートの切れ目が勢いよく切れる結果、縁部等の切れ目でない箇所まで破損しかねない。そこで、切れ目が切り取り線と交わる方向に設けられることにより、個々の吸収シートの破損を防止することが容易となる。
【0038】
さらに、本発明の第19の観点によれば、個々の吸収シートを切り離した後に、切れ目の一端が縁まで入っているので、切れ目を切り離すことが容易となる。したがって、使用者が立体的な形状をなすことがさらに容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】実施例1の吸油紙の概要を示す模式図である。
図2】吸油紙の使用方法について示す図である。
図3】3種類の吸油方法を比較した結果を示す図である。
図4】規格が統一された3種類の対象物に対する吸油量を比較した結果を示す図である。
図5】実験で使用した3種類の切れ目を示す図である。
図6】立体形状に揉み込んだ吸油紙の広がりを比較した結果を示す図である。
図7】立体形状に揉み込んだ吸油紙の高さを比較した結果を示す図である。
図8】吸油紙の切れ目の様々な例を示す図である。
図9】吸油紙の切れ目のピッチと吸油紙のからみ具合との関係を示す図である。
図10】吸油紙の切れ目の縁の幅と吸油紙のからみ具合との関係を示す図である。
図11】実施例2の吸油紙の概要を示す模式図である。
図12】吸油紙の第2切れ目及び第3切れ目を示す図である。
図13】三角錐形状の対象物を吸油紙45で包んだ状態を例示する図である。
図14】吸油紙の第1切れ目及び第2切れ目の様々な例を示す図である。
図15】実施例3の吸油紙の概要を示す模式図である。
図16】実施例4の吸油紙の概要を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して、本願発明の実施例について述べる。なお、本願発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
図1は、本願発明の実施例1に係る吸油紙1(本願請求項の「吸収シート」の一例)の概要を示す模式図である。吸油紙1は、唐揚げなどの対象物の表面に付いた油滴や油膜を吸い取るものであり、一般的なペーパータオルの大きさである。吸油紙1は、シート部3(本願請求項の「シート部」の一例)と、複数の切れ目5とを備える。シート部3は、縁部7(本願請求項の「縁部」の一例)と、短冊部9とを有する。具体的には、吸油紙1には、約1cmの縁部7を残して同じ方向に同じ長さの切れ目5が入っている。結果として、吸油紙1は、縁部7でつながった幅約1cmの短冊状のシートとなっている。ただし、使用前の切れ目5は、ミシン目でつながっている。
【0042】
続いて、図2を参照して、吸油紙1の使用方法について述べる。図2は、吸油紙の使用方法について示す図である。図2(a)に示すように、使用者は、吸油紙1を使用する前に切れ目5を切り離す。続いて、図2(b)に示すように、吸油紙1を揉んで複数の短冊からなる短冊部9を絡み合わせることにより吸油紙1を立体化させる(以下、「立体化工程」と記載)。さらに、図2(c)に示すように、立体化した吸油紙1の中に唐揚げ等の対象物11を入れることにより、対象物11の表面に付いた油滴や油膜を吸い取る。
【0043】
以下、図3を参照して、本実施例の吸油紙の効果を確認した実験方法について述べる。図3は、3種類の吸油方法を比較した様子を示す図である。(1)鶏肉5個を油で揚げた状態(図3(a)-(c))。(2)(1)で揚げた唐揚げ5個を3種類の吸油紙に5分静置した状態(図3(d)-(f))。(3)から揚げを取り除き油を吸った吸油紙の状態(図3(g)-(i))である。
【0044】
ここで、3種類の吸油紙として、本実施例に係る吸油紙に対して立体化工程を施したもの、平置き(立体化工程を経ずに平面状のまま油を吸わせること)の吸油紙、平置きのキッチンペーパーを使用した。
【0045】
なお、計測内容として、油を吸う前の吸油紙の重さ、油を吸った後の吸油紙の重さ、唐揚げの重さを計測し、記録した。また、3種類の吸油方法についてそれぞれ3回計測を行い、その平均値を計測結果とした。計測結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示すように、吸油紙に対して立体化工程を施して吸油させることにより、平置きの場合に比べて2倍超の吸油が可能となった。これは、吸油紙が立体的であることにより唐揚げなどの対象物との接点が増えた結果、より多くの毛細管現象が生じたためと考えられる。
【0048】
さらに、吸油紙に切れ目が入ったことにより、吸油紙の立体配位の自由度が増したことも、吸油紙の空間的な拡がり度合いを増加させている。結果として、唐揚げ等の対象物が吸油紙の中に埋もれやすくなり、吸油紙との接点を増やしているものと考えられる。
【0049】
なお、吸油紙は、唐揚げの油を吸油する他にも、果物等の対象物の水滴を吸収することに用いてもよい。その他、対象物の表面に付いた液滴や液膜を除去する吸収シートとして用いてもよい。
【0050】
また、から揚げは大きさや形がそれぞれ異なるため、データのバラツキが大きいと考えられる。そのため、形状に規格性がある対象物で本実施例の吸油紙の効果を確認した実験方法について述べる。計測内容として、油を吸う前の全体の重量、油を吸った後の全体の重量、揚げた対象物を除いた重量を計測し、記録した。また、3種類の対象物において、それぞれ吸油紙が吸った油の重量を算出し、比較した測定結果を図4に示す。
【0051】
図4に示すように、「消しゴム片」や「うずらの卵」などの立体的で球体に近い形状の対象物は、吸油紙に対して立体化工程を施して吸油させることにより、平置きの場合に比べて4倍前後の吸油が可能となった。しかしながら、バームクーヘンは平置きの吸油紙の方が多く吸油する結果となった。これは、扁平部の設置面積が大きいことによると考えられる。一般的な形状では、必ずしも扁平部の接地面積が大きいとは限らないため、「消しゴム片」や「うずらの卵」の実験結果に近い実験結果になると考えられる。
【0052】
続いて、吸油紙を揉み込んだ時に効果的に立体形状になるような切れ目パターンについての効果を確認した実験方法について述べる。図5(A)〜(C)に示すような切れ目が入った吸油紙を各5枚ずつ20秒間揉み込んで平面に静置した時の吸油紙の広がりと高さを比較した。また、図5に示されている吸油紙への切れ目パターンの裏図面(底面図)は表図面(平面図)と対称につき省略する。
【0053】
立体形状に揉み込んだ吸油紙の広がりを比較した結果を図6に示す。図6に示すように、図5(A)の立体形状を上部から見た状態11と図5(C)の立体形状を上部から見た状態15は吸油紙同士が絡まりにくく、平面に置いた時に絡まりが解けて開きそうになっているが、図5(B)の立体形状を上部から見た状態13は吸油紙同士が絡まり纏まっていることが分かる。
【0054】
また、立体形状に揉み込んだ吸油紙の高さを比較した結果を図7に示す。図7に示すように、図5(A)の立体形状を側面から見た状態17と図5(C)の立体形状を側面から見た状態21は、立体形状が形成されてはいるものの、高さと密度が比較的低い。それに比べ、図5(B)の立体形状を側面から見た状態19は、纏まっているため高さもあり密度も高くなっている。
【0055】
上記の理由から図5(B)の切れ目パターンは、図5(A)や図5(C)の切れ目パターンよりも、広がらず良く絡まった解けにくい立体形状を形成できていることが分かる。
【0056】
さらに、吸油紙への切れ目パターンは図8の(a)〜(i)に示すような形状でもよい。また、図8に示されている吸油紙への切れ目パターンの裏図面(底面図)は表図面(平面図)と対称につき省略する。
【0057】
続いて、図9を参照して、切れ目のピッチについて検討した結果について述べる。図9は、吸油紙の切れ目のピッチと吸油紙のからみ具合との関係を示す図である。なお、吸油紙の縁は、1cmに統一した。
【0058】
図9(a)に示すように、ピッチを1mmとした場合、吸油紙が充分に膨らまなかったため、対象物が吸油紙に沈まず、かつ、油が付着するとちぎれてしまう等、期待するほどの効果が得られなかった。他方、2mm〜9cmまでは、吸油紙が適切に立体的な膨らみを見せた。したがって、今回の実験からは、切れ目のピッチが2mm以上9cm以下が好ましいことが分かった。
【0059】
さらに、図10を参照して、縁の幅について検討した結果について述べる。図10は、吸油紙の切れ目の縁の幅と吸油紙のからみ具合との関係を示す図である。なお、吸油紙の切れ目のピッチは1cmに統一した。
【0060】
図10(h)に示すように、縁の幅を1辺(約21.5cm)の41.9%も取ると、切れ目の数が減ることに加えて切れ目の長さも短くなり、吸油紙同士がからまずに立体的に十分に膨らまなかった。他方、縁の幅を1辺の0.5%〜33%とした場合は、吸油紙同士がからんで立体的な膨らみが得られた。
【0061】
なお、図9及び図10においては、正方形の吸油紙の4辺全ての縁を残す形とした。しかし、長方形の吸油紙や、1〜3辺のみ縁を残す形としてもよい。
【0062】
吸油紙の大きさは、市販されている一般的なキッチンペーパーの標準的なサイズ(横220mm×縦230mm)か、その他の大きさでもよい。
【0063】
吸油紙の形状は、正方形及び長方形に限定されず、円形、台形、平行四辺形又は多角形としてもよい。
【0064】
また、吸油紙は、紙以外の吸収体であってもよい。輸送の利便性を考えると、シート状のものに切れ目が入ることで容易に絡ませて立体化するものが好ましい。
【0065】
さらに、吸油紙の切れ目は、異なる方向であってもよいし、異なる長さであってもよい。
【0066】
さらに、吸油紙の切れ目は、シート部を短冊状にするものに限らず、他の切れ目であってもよい。切れ目を切り離した後もシート部が分離せずにつながっているように切れ目を入れることは、吸油紙を処分する際に手間が省ける点で好ましい。
【0067】
さらに、本実施例の吸油紙を切り取り線で接続した吸油シートロール(本願請求項の「吸収シートロール」の一例)として提供してもよい。また、一般的なティッシュペーパーのように、複数の吸油紙が接続されずに1つの箱に収められて提供されるものであってもよい。
【実施例2】
【0068】
図11は、本願発明の実施例2に係る吸油紙31(本願請求項の「吸収シート」の一例)の概要を示す模式図である。吸油紙31は、実施例1と同様にシート部33(本願請求項の「シート部」の一例)と、実施例1の切れ目5に相当する第1切れ目35(本願請求項の「第1切れ目」の一例)とを備える。シート部33は、実施例1と同様に、縁部37(本願請求項の「縁部」の一例)と、短冊部39とを有する。
【0069】
吸油紙31は、第1切れ目35よりも短い第2切れ目41(本願請求項の「第1切れ目」の一例)と、第3切れ目43(本願請求項の「第3切れ目」の一例)をさらに備える。具体的には、吸油紙31は正方形であり、吸油紙31の向かい合う二辺に約1cmずつの縁部37を残し、縁部37の二辺に対して垂直方向に同じ長さの第1切れ目35が複数設けられている。複数の第2切れ目41のうち少なくとも一部は、第1切れ目35同士の間に設けられていて、また、第1切れ目に接続しており、第1切れ目35に対して垂直に、千鳥状に設けられている。ここで、「千鳥状」とは、向かい合う複数の第2切れ目41の間に互いに切れ込んでいる状態を指す。そのため、シート部33を第2切れ目41に対して垂直方向に引っ張るとシート部33が網状に広がる。また、第2切れ目と交差する方向のシート部の二辺に複数の第2切れ目が接続している。そのため、網状に広がる部分が多く、より立体的に膨らんだ形状にすることができ、また、全部の第2切れ目を容易に網状に広げることができる。第3切れ目43は、第1切れ目35に対して垂直な吸油紙31の辺側の縁部37に、第1切れ目35に対して垂直方向に設けられている。
【0070】
シート部33を第2切れ目41に対して垂直方向に引っ張ってシート部33を網状に広げた後(本願請求項の「網状化工程」の一例)、シート部33を揉むと短冊部39がお互いに絡み合って立体的に膨らんだ形状になり、さらに少なくとも一部の第2切れ目41が、第1切れ目35、シート部33の辺又は他の第2切れ目41などのシート部33の任意の部分に引っかかることで立体的に膨らんだ形状を安定化することが可能となる(本願請求項の「立体化工程」の一例)。複数の第1切れ目35と複数の第2切れ目41が複数の切れ端を形成する結果、立体化した後のシート部33は、対象物を外から包み込むだけでなく、立体形状のの内部でも切れ端が対象物と接することとなる。これにより、対象物を膨らんだ形状の内部に埋没させるように入れ込んだ際(本願請求項の「静置工程」の一例)、吸油紙31との接触面積を飛躍的に増大させることが可能となり、表面に付いた液滴や液膜を除去することが容易となる。同時に、多数の切れ端が発生することはエントロピーの増大を伴い、立体化が不可逆変化となることを促進する。このため、立体形状が平面化することを防ぐことが容易となる。
【0071】
また、対向する辺の縁部37を第3切れ目43に入れ込むことで、吸油紙31を揉みこむことなく対象物を風呂敷のように包み込むことが可能となる。これにより、対象物の表面に付いた液滴や液膜を除去することがさらに容易となる。
【0072】
図12は、吸油紙45の第2切れ目47及び第3切れ目49を示す図であり、第1切れ目を設けていない状態の図である。図12(a)に示すように、第2切れ目47は千鳥状に設けられていて、第3切れ目49は対向する2本の線分を形成するように2つ設けられている。吸油紙45を第2切れ目47に対して垂直方向に引っ張ると、図12(b)に示すように吸油紙45が網状に広がる。
【0073】
図13は、例として三角錐形状の対象物を吸油紙45で包んだ状態を示す図である。図13(a)に示すように、2つの第3切れ目49を互いに入れ込んで固定すると、吸油紙45で22個の対象物を風呂敷のように包み込むことができる。また、図13(b)に示すように、対象物の上に吸油紙を乗せ、その外側を1枚の吸油紙で包むことで、隙間を埋めることができ、吸油性をさらに高めることが可能になる。図13(c)は、ここで例として用いた対象物を示す図である。
【0074】
第1切れ目、第2切れ目及び第3切れ目のパターンは図14の(a)〜(d)に示すような形状でもよい。また、図14に示されている切れ目のパターンの裏図面(底面図)は、表図面(平面図)と対称につき省略する。
【0075】
なお、図11及び図14に示すように第2切れ目が第1切れ目と接続している場合、並びに、第2切れ目が網状に広がるように設けられている場合は、特に第2切れ目がシート部の一部に絡み合いやすくなり、立体的に膨らんだ形状を保持しやすい。
【0076】
さらに、第2切れ目は、第1切れ目に対して垂直方向に限られず、第1切れ目と交差する方向であれば、例えば図14に示すように第1切れ目に対して斜めに設けてもよい。また、図14に示すように、第2切れ目が隣接する第1切れ目に接続する第2切れ目の間に互いに切れ込む長さであれば網状に広がるため、特に第2切れ目が絡み合いやすくなる。
【0077】
さらに、第3切れ目は、図14に示すように縁部上に、対向する2本の線分を形成するように2つ設けてもよい。
【実施例3】
【0078】
図15(a)は、本願発明の実施例3に係る吸油紙51の断面の概要を示す模式図である。吸油紙51の表図面(平面図)は、実施例2と同様である。
【0079】
吸油紙51のシート部53は、吸収性が高い第1シート55(本願請求項の「第1シート」の一例)と、剛性が高い第2シート57(本願請求項の「第1シート」の一例)の2層構造である。第1切れ目、第2切れ目及び第3切れ目は、第1シート55及び第2シート57を貫通している。
【0080】
吸油紙51は、高い吸収性と剛性が高い特性の両方を備えた特殊なシートを使用せずとも、高い吸収性と高い剛性を有する。
【0081】
なお、第1切れ目、第2切れ目及び第3切れ目は、第1シート55と第2シート57のどちらか一方のみに設けてもよい。
【0082】
図15(b)は、白色の吸収性が高い第1シートと、茶色の剛性が高い第2シートとからなる吸油紙、図15(c)は、白色の吸収性が高い第1シート2枚からなる吸油紙を示す図である。図15の(d)と(e)は、(b)と(c)の吸油紙をそれぞれ横に引っ張って第2切れ目を広げた状態、(f)と(g)は、第2切れ目同士が絡み合って吸油紙が立体的に膨らんだ状態を示す図である。吸収性が高い第1シートに、剛性が高い第2シートを組み合わせると、図15(f)に示すように第2切れ目同士が絡み合った立体状態が安定していた。一方で、吸収性が高いが剛性は低い第1シートを2枚用いた場合は、図15(g)に示すように第2切れ目同士が絡み合って立体的にはなったが、部分的に隙間ができ、(f)よりは崩れやすかった。
【実施例4】
【0083】
図16(a)は、本願発明の実施例4に係る吸油紙61の断面の概要を示す模式図である。吸油紙61の表図面(平面図)は、実施例2と同様である。
【0084】
吸油紙61のシート部63は、2枚の吸収性が高い第1シート65で、剛性が高い第2シート67を挟み込むように積層されている3層構造である。
【0085】
吸油紙61は、実施例3の吸油紙51と同様に吸収性と高い剛性を併せ持つ。さらに、吸油紙61は対象物に接する面が必ず吸収性が高い第1シート65になるため、使用者が吸収シートの表裏を気にすることなく利用することができる。
【0086】
図16(b)は、白色の吸収性が高い第1シート2枚の間に、茶色の剛性が高い第2シート1枚を挟んでなる吸油紙、図16(c)は、白色の吸収性が高い第1シート3枚からなる吸油紙を示す図である。図16の(d)と(e)は、(b)と(c)の吸油紙をそれぞれ横に引っ張って第2切れ目を広げた状態、(f)と(g)は、第2切れ目同士が絡み合って吸油紙が立体的に膨らんだ状態を示す図である。吸収性が高い第1シートに、剛性が高い第2シートを組み合わせると、図16(f)に示すように第2切れ目同士が絡み合った立体状態が安定していた。一方で、吸収性が高いが剛性は低い第1シートを2枚用いた場合は、図16(g)に示すように第2切れ目同士が絡み合って立体的にはなったが、部分的に隙間が目立った。図16(h)は、(f)と(g)に示す立体状態の吸油紙に一定の振動を与えた後の状態を示す図であり、(f)は振動を与えた後も嵩高いままであり、立体状態を安定させやすいことが分かる。
【0087】
なお、吸油紙の形状は、正方形に限定されず、長方形、円形、台形、平行四辺形又は多角形としてもよい。
【0088】
また、第1切れ目、第2切れ目及び第3切れ目は、シンプルな直線状に限定されず、曲線、波線又はジグザグ線といった直線以外の線状であってもよい。
【0089】
さらに、第2切れ目は、利用者が網状に広げた際に切れ目となる程度に、例えばミシン目などを形成するように弱く接続されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1;吸油紙、3;シート部、5;切れ目、7;縁部、9;短冊部、11;図5(A)の立体形状を上部から見た状態、13;図5(B)の立体形状を上部から見た状態、15;図5(C)の立体形状を上部から見た状態、17;図5(A)の立体形状を側面から見た状態、19;図5(B)の立体形状を側面から見た状態、21;図5(C)の立体形状を側面から見た状態
31;吸油紙、33;シート部、35;第1切れ目、37;縁部、39;短冊部、41;第2切れ目、43;第3切れ目
45;吸油紙、47;第2切れ目、49;第3切れ目、50;第1切れ目
51;吸油紙、53;シート部、55;第1シート、57;第2シート
61;吸油紙、63;シート部、65;第1シート、67;第2シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11
図12
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図16