特許第6803456号(P6803456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラ株式会社の特許一覧

特許6803456配線基板、電子装置用パッケージおよび電子装置
<>
  • 特許6803456-配線基板、電子装置用パッケージおよび電子装置 図000002
  • 特許6803456-配線基板、電子装置用パッケージおよび電子装置 図000003
  • 特許6803456-配線基板、電子装置用パッケージおよび電子装置 図000004
  • 特許6803456-配線基板、電子装置用パッケージおよび電子装置 図000005
  • 特許6803456-配線基板、電子装置用パッケージおよび電子装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803456
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】配線基板、電子装置用パッケージおよび電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/13 20060101AFI20201214BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20201214BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20201214BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20201214BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H01L23/12 C
   H01L23/12 J
   H05K1/09 B
   H05K1/03 610D
   H05K3/38 B
   H01L23/12 301Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-501134(P2019-501134)
(86)(22)【出願日】2018年1月24日
(86)【国際出願番号】JP2018002148
(87)【国際公開番号】WO2018155053
(87)【国際公開日】20180830
【審査請求日】2019年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2017-31937(P2017-31937)
(32)【優先日】2017年2月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桐木平 勇
(72)【発明者】
【氏名】山本 誠
【審査官】 豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/077136(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B37/00−37/04
H01L21/54
23/00−23/04
23/06−23/26
H05K 1/03
1/09
1/16
3/10− 3/26
3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化アルミニウム質焼結体およびムライト質焼結体を含む第1表面部を有する絶縁基板と、
マンガン化合物およびモリブデン化合物の少なくとも一方を含有しており、前記絶縁基板の前記第1表面部に接している第2表面部を含むメタライズ層とを備えており、
該メタライズ層の前記第2表面部および前記絶縁基板の前記第1表面部が、マンガンシリケート相およびマグネシウムシリケート相の少なくとも一方を含有している配線基板。
【請求項2】
前記絶縁基板および前記メタライズ層が、マンガン化合物およびモリブデン化合物の少なくとも一方とシリカとを含む添加物を含有しており、
前記絶縁基板および前記メタライズ層における前記添加物の含有率は、前記第1表面部において前記絶縁基板の他の部分よりも大きく、前記第2表面部において前記メタライズ層の他の部分よりも大きい請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
前記モリブデン化合物が酸化モリブデンである請求項2記載の配線基板。
【請求項4】
前記絶縁基板がマンガンアルミネート相およびマグネシウムアルミネート相の少なくとも一方をさらに含有している請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の配線基板。
【請求項5】
前記絶縁基板の下面および側面が前記第1表面部を有しているとともに、前記絶縁基板の前記下面および前記側面に前記メタライズ層が位置している請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の配線基板。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の配線基板と、
凹部を有する金属筐体とを備えており、
該金属筐体の凹部の内面に前記絶縁基板が、前記メタライズ層を介して接合されている電子装置用パッケージ。
【請求項7】
前記金属筐体の凹部の底面および内側面に前記絶縁基板の下面および側面が、前記メタライズ層を介して接合されている請求項5を引用する請求項6記載の電子装置用パッケージ。
【請求項8】
請求項6または請求項7記載の電子装置用パッケージと、
前記金属筐体の凹部内に収容された電子部品とを備える電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック材料からなる絶縁基板と絶縁基板に接合されたメタライズ層とを含む配線基板、電子装置用パッケージおよび電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の搭載用等に用いられる基板として、酸化アルミニウム質焼結体等の絶縁材料からなる絶縁基板と、絶縁基板の表面に設けられたメタライズ層とを含むものが知られている。メタライズ層は、電子部品と外部電気回路との電気的な接続のための導電路として機能する。また、電子部品から外部への放熱性の向上等のため、メタライズ層に金属製の部材が接合される場合がある。
【0003】
基板に電子部品が実装されてなる電子装置は、スマートフォンおよびタブレット等の電子機器において部品として使用される。このような電子装置において高密度化および高周波化が進んでいる。また、小型化に伴い機械的な強度の向上も求められている。このような要求に対して、酸化アルミニウムを含み、焼結助剤としてマグネシウム化合物等が添加された材料を絶縁基板として用いる技術が提案されている(特許文献1、2を参照)。
【発明の概要】
【0004】
本発明の1つの態様のメタライズ基板は、酸化アルミニウム質焼結体およびムライト質焼結体を含む第1表面部を有する絶縁基板と、マンガンおよびモリブデン化合物の少なくとも一方を含有しており、前記絶縁基板の前記第1表面部に接している第2表面部を含むメタライズ層とを備えている。該メタライズ層の前記第2表面部および前記絶縁基板の前記第1表面部が、マンガンシリケート相およびマグネシウムシリケート相の少なくとも一方を含有している。
【0005】
本発明の1つの態様の電子装置用パッケージは、上記構成の配線基板と、凹部を有する金属筐体とを備える。金属筐体の凹部の内面に前記絶縁基板が、前記メタライズ層を介して接合されている。
【0006】
本発明の1つの態様の電子装置は、上記構成の電子装置用パッケージと、前記金属筐体の凹部内に収容された電子部品とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(a)は本発明の実施形態の配線基板の一例を示す平面図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
図2】本発明の実施形態の電子装置用パッケージの一例を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態の電子装置の一例を示す断面図である。
図4図1のB部分を拡大して示す断面図である。
図5図2のC部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態の配線基板、電子装置用パッケージおよび電子装置を、添付の図面を参照して説明する。なお、以下の説明における上下の区別は説明上の便宜的なものであり、実際に配線基板、電子装置用パッケージまたは電子装置が使用されるときの上下を限定するものではない。
【0009】
図1(a)は本発明の実施形態の配線基板の一例を示す平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線における断面図である。図2は本発明の実施形態の電子装置用パッケージの一例を示す断面図である。図3は本発明の実施形態の電子装置の一例を示す断面図である。図4は、図1に示す配線基板のB部分を拡大して示す断面図である。なお、図1(a)は断面図ではないが、識別しやすくするため、一部にハッチングを施している。また、配線基板に含まれないが電子装置用パッケージまたは電子装置には含まれる要素の一部を破線で示している。
【0010】
絶縁基板1と、絶縁基板1に接しているメタライズ層2とによって、実施形態の配線基板10が基本的に構成されている。また、実施形態の配線基板10と、凹部12を有する金属筐体11とを有し、その凹部12の内面に絶縁基板1がメタライズ層2を介して接合されて、実施形態の電子装置用パッケージ20が基本的に構成されている。また、実施形態の電子装置20と、金属筐体11の凹部12内に収容された電子部品21とによって、実施形態の電子装置30が基本的に構成されている。収容された電子部品21は、例えばメタライズ層2の一部を介して外部と電気的に接続される。以下、配線基板10、電子装置用パッケージ20および電子装置30の詳細について説明する。
【0011】
(配線基板)
配線基板10を構成している絶縁基板1は、例えば平面視で矩形状の板状部材であり、上面、下面および側面を有している。絶縁基板1は、例えば、複数のメタライズ層2を配置するための基体として機能する。
【0012】
この絶縁基板1は、酸化アルミニウム質焼結体およびムライト質焼結体を含む第1表面部1aを有している。配線基板10における第1表面部1aは、絶縁基板1の表面のうちメタライズ層2が接している部分である。この実施形態の配線基板10では、絶縁基板1の下面および側面にメタライズ層2が接している。すなわち、絶縁基板1の下面および側面のメタライズ層2と接合されている部分が、第1表面部1aである。
【0013】
なお、絶縁基板1は、その全体が酸化アルミニウム質焼結体およびムライト質焼結体を含むセラミック焼結体からなるものでもよい。この場合、絶縁基板1は、アルミニウム質焼結体およびムライト質焼結体からなる複数の絶縁層(図示せず)が積層されて形成されたものでも構わない。
【0014】
このような絶縁基板1は、例えば次のようにして製作することができる。すなわち、酸化アルミニウムおよびムライトの原料粉末を適当な添加材、有機バインダおよび有機溶剤と混練してスラリーを作製する。このスラリーをドクターブレード法等の方法でシート状に成形して四角シート状の複数のセラミックグリーンシートを作製する。次に、これらのセラミックグリーンシートを積層して積層体を作製する。その後、この積層体を1300〜1600℃の温度で焼成することによって絶縁基板1を製作することができる。上記の添加材としては、シリカ(酸化ケイ素)、酸化マンガン、酸化モリブデンおよび炭酸マグネシウム等を用いることができる。
【0015】
絶縁基板1の下面のみが、メタライズ層2が接する第1表面部1aを有する面であってもよい。この場合には、絶縁基板1を形成する複数の絶縁層のうち少なくとも最下層のものを、酸化アルミニウム質焼結体およびムライト質焼結体を含む絶縁層とすればよい。他の絶縁層は、例えば酸化アルミニウム質焼結体からなるものでもよい。酸化アルミニウム質焼結体およびムライト質焼結体を含む絶縁層と他の絶縁層とは、例えばろう材またはガラス等の接合材を介した接合法によって互いに接合させることができる(この形態は図示せず)。
【0016】
メタライズ層2は、例えば後述する各種の金属部材を接合するためのろう付け用の金属層として機能する。また、メタライズ層2は、前述したように、電子部品21と外部の電気回路とを電気的に接続させるための導電路としても機能し得る。図1および以下に参照する各図では、導電路としてのメタライズ層2を他のメタライズ層2Lとして示している。他のメタライズ層2Lも、絶縁基板1の表面においては第1表面部1aに接している。
【0017】
実施形態の配線基板10では、絶縁基板1の下面および側面にメタライズ層2が接し、接合されている。このメタライズ層2は、マンガンおよびモリブデン化合物の少なくとも一方とシリカとを含有している。マンガン化合物およびモリブデン化合物は、例えばマンガンおよびモリブデンそれぞれの酸化物またはケイ酸塩(シリケート)等である。
【0018】
また、メタライズ層2は、絶縁基板1の第1表面部1aに接している第2表面部2aを含んでいる。言い換えれば、メタライズ層2の表面のうち絶縁基板1の下面および側面等の第1表面部1aに接している面が第2表面部2aである。
【0019】
メタライズ層2は、その全体がモリブデンおよびマンガンを含む金属材料の焼結体からなるものでもよい。メタライズ層2は、モリブデンおよびマンガン以外に、絶縁基板1(セラミックグリーンシート)との焼結挙動の調整用等の無機物(セラミックまたはガラス等)からなるフィラー粒子を含有していてもよい。
【0020】
また、実施形態の配線基板10において、メタライズ層2の第2表面部2aには、シリカ、酸化マンガンおよび酸化マグネシウムといった酸化物が含まれている。メタライズ層2に含まれる上記酸化物は、前述したように絶縁基板1の第1表面部1aにも含まれている。これらの酸化物同士の結合によりメタライズ層2の絶縁基板1に対する接合の強度を高めることができる。
【0021】
このような効果を得るためには、メタライズ層2は、少なくとも第2表面部2aにおけるシリカ、酸化マンガンおよび酸化マグネシウムの合計の含有率が1〜20質量%であればよい。
【0022】
メタライズ層2の第2表面部2aおよび絶縁基板1の第1表面部1aは、マンガンシリケート相およびマグネシウムシリケート相の少なくとも一方3を含有している。以下、マンガンシリケート相およびマグネシウムシリケート相の少なくとも一方3は、単にシリケート相3という場合がある。また、以下の説明おけるシリケート相3による効果は、マンガンシリケート相およびマグネシウムシリケート相のいずれか一方であっても、両方であっても、同様に得ることができる。
【0023】
なお、絶縁基板1は、第1表面部1a以外の部分にもマンガンシリケート相およびマグネシウムシリケート相が含有されていてもよい。また、絶縁基板1が、マンガン、マグネシウムおよびシリカの少なくとも1種を含有していてもよい。絶縁基板1の例えば全体が、このような成分をさらに含有している場合には、酸化アルミニウムおよびムライトの結晶化の進展を低減させて、緻密化をさせることができる。これにより、絶縁基板1の機械的な強度を向上させることができる。
【0024】
図4は、この第1表面部1aおよび第2領域2aを含む部分を拡大して断面図である。シリケート相3は、不定形等であり、その一例を図4において模式的に示している。図4において、絶縁基板1とメタライズ層2との境界線Kと上側の仮想線(二点鎖線)との間が第1表面部1aであり、絶縁基板1とメタライズ層2との境界線Kと下側の仮想線(二点鎖線)との間が第2表面部2aである。第1表面部1aおよび第2表面部2aでは、他の部分よりもシリケート相が多く分散して、含まれている。
【0025】
実施形態の配線基板10では、メタライズ層2と絶縁基板1との界面において、互いに接し合うメタライズ層2の第2表面部2aおよび絶縁基板1の第1表面部1aの両方に含まれたマシリケート相3同士が強固に接合し合っている。そのため、メタライズ層2の絶縁基板1に対する接続信頼性を効果的に向上させることができる。また、メタライズ層2が配置される部分(第1表面部1a)は、酸化アルミニウム質焼結体等に比べて比誘電率が小さいムライト質焼結体を含んでいる。そのため、メタライズ層2を高周波信号が伝送されるときの伝送速度を向上させることができる。
【0026】
したがって、メタライズ層2と絶縁基板1との接合強度が高く、両者の接続信頼性が効果的に高められている。このようなメタライズ層2を介して絶縁基板1に金属筐体11等の金属部材を接合するときには、金属筐体11と絶縁基板1との接続信頼性を効果的に高くすることができる。
【0027】
シリケート相3は、例えば、図4に示すような不定形状の粒子であり、マンガンシリケートまたはマグネシウムシリケートの多結晶体である。これらのシリケート相3粒子は、複雑に曲がった凹凸を含む表面を有している。この場合には、メタライズ層2と絶縁基板1とに対するシリケート相の接合面積を大きくすることが容易である。また、メタライズ層2および絶縁基板1とシリケート相3との接合界面が、メタライズ層2と絶縁基板1との界面に平行な方向に対して斜め(直交を含む)になりやすい。そのため、メタライズ層2と絶縁基板1との界面に平行な方向に作用する応力によるメタライズ層2の剥がれを抑制する効果も比較的大きい。
【0028】
第1表面部1aおよび第2表面部2aにおけるシリケート相3の存在割合は、例えば図4に示すような断面の観察における面積の割合として、約10〜40体積%であればよい。この存在割合は、上記のようにメタライズ層2と絶縁基板1との接合界面を走査型電子顕微鏡(SEM)等で観察するとともに、XDR法によるシリケート相の元素分析で測定することができる。
【0029】
シリケート相3は、図4に示すような不定形状のものに限らず、球状、楕円球状または球状等であって表面の一部に凹凸を有するものでも構わない。また、複数種の形状のシリケート相3が含まれていてもよい。シリケート相3(粒子)の粒径についても、複数のもの同士で互いに異なる粒径でもよく、同じ程度に粒径が揃っていてもよい。不定形状のシリケート相3の粒径は、例えば、断面における最大の差し渡し距離として求めることができる。
【0030】
上記のようなメタライズ層2は、例えば次のようにして形成することができる。まず、前述したような方法で、酸化アルミニウム質焼結体およびムライト質焼結体を含む絶縁基板1を作製する。絶縁基板1の下面および側面が第1表面部1aを含むものとして以下の工程を進める。
【0031】
次に、絶縁基板1の下面および側面に、メタライズ層2用の金属ペーストをスクリーン印刷法等の方法で所定パターンに塗布する。金属ペーストは、例えば、モリブデンおよびマンガンそれぞれの粉末を主原料とする原料粉末に、適当な有機溶剤、バインダを添加し、これらをミル等で混練することによって作製することができる。この金属ペーストにはシリカ(酸化ケイ素)、酸化マンガン、酸化モリブデンおよび酸化マグネシウム等の、セラミックグリーンシートに添加する材料と同様の材料が添加しておく。
【0032】
次に、金属ペーストを所定パターンに塗布した絶縁基板1を、約1100〜1400℃程度の温度で焼成(いわゆる後焼成)する。これによって、金属ペーストと絶縁基板1とがシリカ等のガラス質を介して互いに接合される。以上の工程によって、絶縁基板1にメタライズ層2を形成することができる。
【0033】
上記の焼成の際に、金属ペーストと絶縁基板1との界面部分において酸化マンガンおよび酸化マグネシウムとシリカとの反応が生じ、マンガンシリケートおよびマグネシウムシリケートが生成する。例えば金属ペーストにマグネシウムが添加されていなければ、金属ペースト側では酸化マンガンのみが生成する。この場合にも、絶縁基板1が酸化マグネシウムを含有していれば(添加されていれば)、メタライズ層2と絶縁基板1との接合界面部分に酸化マグネシウムを生成させることもできる。
【0034】
なお、図1に示す例では、絶縁基板1の下面の第1表面部1aに接するメタライズ層2に金属部材が接合された状態を示している。この金属部材は、後述する電子装置用パッケージ20に含まれる金属筐体11の一部であり、この金属筐体11の底部11Aである。この詳細については以下で説明する。また、この例では、メタライズ層2と金属筐体11とは、ろう材4を介して接合されている。ろう材4は、例えば、銀ろう(JIS規格のBAg8等)である。
【0035】
(電子装置用パッケージ)
実施形態の電子装置用パッケージ20は、前述したように、実施形態の配線基板10と、凹部11aを有する金属筐体11とによって形成されている。金属筐体11の凹部11aの内面に絶縁基板1が、メタライズ層2を介して接合されている。
【0036】
金属筐体11は、この実施形態の例では、例えば図2に示すように、金属製の平板状部材である底部11Aと、金属製の枠状部材である枠部11Bとが接合されて形成されている。底部11Aの上面と枠部11Bの内側面とで囲まれた領域が、配線基板10および電子部品21を収容するための容器の一部を構成する。
【0037】
なお、金属筐体11は、底部と枠部とが一体的に形成されたもの(図示せず)でも構わない。一体型の金属筐体の場合には、底部11Aと枠部11Bとの接合界面がないため、凹部12内を気密封止するときの気密性を高める上では有利である。また、底部11Aと枠部11Bとの接合の工程が不要であるため、電子装置用パッケージ20としての生産性向上についても有利である。
【0038】
金属筐体11は、例えば、銅、銅を含む合金材料、鉄−ニッケル合金、鉄−ニッケル−コバルト合金またはステンレス鋼等の金属材料によって形成されている。金属筐体11は、上記のような金属材料に、圧延、切断、研磨、研削およびエッチング等の金属加工を適宜選択して施すことによって、製作することができる。また、底部11Aと枠部11Bとは、例えば銀ろう等のろう材を介した接合等の種々の接合法によって、互いに接合させることができる。
【0039】
また、この実施形態の例では、枠部11Bの一部に、枠の内外を(内側面から外側面にかけて)貫通する貫通部13A、13Bが設けられている。貫通部13A、13Bは、例えば、凹部12の内側と外側との間で、電気接続または光接続等のための接続部材を通すための開口部として機能する。図2に示す例では、枠部11の一部に設けられた貫通部13Aを介して配線基板10の一部が凹部12の内側から外側に張り出している。この張り出した部分(符号なし)に位置するメタライズ層2を介して、電子部品21と外部の電気回路との電気的な接続を行なうことができる。
【0040】
枠部11Bの他の一部に設けられた貫通部13Bは、例えば光導波路等の光接続部材(図示せず)が配置される部分として機能し得る。この場合、貫通部11Bにおいて枠部11Bを貫通するように光導波路が配置される。光導波路を介して、電子部品と外部の光学装置(図示せず)との光接続を行なわせることができる。
【0041】
図2に示す例では、絶縁基板1の下面および側面が、メタライズ層2が接する第1表面部1aを有している。凹部11aの底面に絶縁基板1の下面がメタライズ層2を介して接合されている。また、平面視で長方形状の凹部12の長辺側の2つの内側面のそれぞれに絶縁基板1の側面がメタライズ層2を介して接合されている。
【0042】
このような電子装置用パッケージ20によれば、上記構成の配線基板10を含むことから、メタライズ層2を介した金属筐体11と絶縁基板1との接合強度が高い。そのため、長期信頼性が高い電子装置30を製作することが容易な電子装置用パッケージ20を提供することができる。
【0043】
(電子装置)
実施形態の電子装置30は、前述したように、例えば上記構成の電子装置用パッケージ20の凹部12内に電子部品21が収容されて形成されている。電子部品21は、例えばボンディングワイヤ22等の導電性接続材を介してメタライズ層2に電気的に接続されている。また、図3に示す例では、蓋体23が金属筐体11の枠部11Bの上面に接合され、凹部12を塞いでいる。これによって、金属筐体11の凹部12と蓋体23とによって、電子部品21を気密封止する容器(符号なし)が構成されている。
【0044】
蓋体23は、例えば平面視で四角形の平板状であり、金属筐体11と同様の金属材料を含む材料によって作製されている。蓋体23についても、金属筐体11と同様の金属材料を用い、同様の金属加工によって製作することができる。蓋体23は、例えば低融点ろう材を介した接合法または溶接法等の種々の接合法によって、金属筐体11の枠部11B上面に接合することができる。
【0045】
このような電子装置30によれば、上記構成の配線基板10を含むことから、メタライズ層2を介した金属筐体11と絶縁基板1との接合強度が高い。したがって、長期信頼性の高い電子装置30とすることができる。
【0046】
電子部品21は、マウント24を介して金属筐体11(底部11Aの上面)に搭載されていてもよい。マウント24は、例えば、電子部品21と金属筐体11との熱膨張率の差を緩和して、熱応力を低減するために配置される。
【0047】
実施形態の配線基板10およびこれを含む電子装置用パッケージ20および電子装置30において、前述したように、メタライズ層2は、マンガン化合物およびモリブデン化合物の少なくとも一方とシリカとを含む添加物を含有している。マンガン化合物およびモリブデン化合物は、メタライズ層2の第2表面部2aにも含まれている。また、実施形態の配線基板10およびこれを含む電子装置用パッケージ20および電子装置30において、絶縁基板1にもマンガン化合物およびモリブデン化合物の少なくとも一方とシリカとを含む添加物が含まれていてもよい。以下、マンガン化合物およびモリブデン化合物の少なくとも一方とシリカとを含むものを単に添加物ともいう。
【0048】
このような場合に、絶縁基板1およびメタライズ層2における添加物の含有率は、第1表面部1aにおいて絶縁基板1の他の部分よりも大きくてもよい。また、第2表面部2aにおいてメタライズ層2の他の部分よりも大きくてもよい。
【0049】
添加物の含有率が、第1表面部1aにおいて絶縁基板1の他の部分よりも大きく、第2表面部2aにおいてメタライズ層2の他の部分よりも大きい場合には、第1表面部1aと第2表面部2aとの界面における同種の添加物同士の結合の強度を効果的に高めることができる。したがって、第1表面部1aおよび第2表面部2aを介したメタライズ層2と絶縁基板1との接合の強度を高めることができる。
【0050】
また、このような場合には、メタライズ層2のうち第2表面部2a以外では添加物の含有率が比較的小さいため、メタライズ層2としての導通抵抗の低減等の電気的な特性向上に関し有利である。また、絶縁基板1のうち第1表面部1a以外では添加物の含有率が比較的小さいため、絶縁基板1としての電気絶縁性および機械的強度の確保等に関し有利である。
【0051】
添加物の含有率が、第1表面部1aにおいて絶縁基板1の他の部分よりも大きく、第2表面部2aにおいてメタライズ層2の他の部分よりも大きい場合の各部分の添加物の含有率は、例えば次のように設定される。すなわち、絶縁基板1の第1表面部1aにおけるマンガン化合物およびモリブデン化合物等の添加物の含有率は、例えば約1〜20質量%であり、他の部分における上記添加物の含有率は約5質量%以下であって第1表面部よりも小さい値である。また、メタライズ層2の第2表面部2aにおけるマンガン化合物およびモリブデン化合物等の添加物の含有率は、例えば約1〜20質量%であり、他の部分における上記添加物の含有率は約5質量%以下である。メタライズ層2の他の部分に、酸化物等の化合物以外の状態であれば、マンガン等が存在していても構わない。
【0052】
シリカ以外の上記添加物について、マンガン化合物およびモリブデン化合物以外のものとしては、マグネシウム、アルミニウム、シリコン(ケイ素)およびジルコニウム等の酸化物が挙げられる。添加物としてマグネシウムの酸化物が含まれている場合には、マグネシウム化合物とシリカとの反応でマグネシウムシリケートが生成し得る。このマグネシウムシリケートは、前述したシリケート相3の一部として機能することができる。これにより、メタライズ層2と絶縁基板1との接合の強度を高めることもできる。
【0053】
第1表面部1aおよび第2表面部2bを含む絶縁基板1およびメタライズ層2におけるマンガン化合物およびモリブデン化合物のいずれか一方およびシリカの含有率は、例えば前述した元素分析等の機器分析で測定することができる。この場合には、絶縁基板1とメタライズ層2との接合界面部分を厚み方向に切断した断面試料を作製する。この断面をSEMで観察して元素分析すれば、各元素(Mo、Mn、Si等)の存在割合を検知できる。その結果に基づいて、各化合物の含有率を測定することができる。
【0054】
なお、上記の各例において、モリブデン化合物が酸化モリブデンであってもよい。また、マンガン化合物が酸化マンガンであってもよい。添加物は、酸化モリブデンおよび酸化マンガンを含むものであってもよい。言い換えれば、添加物は、シリカ(酸化ケイ素)とモリブデンおよびマンガンの少なくとも一方の酸化物とにより構成されるものであってもよい。
【0055】
この場合には、絶縁基板1の第1表面部が酸化アルミニウムおよびムライト質焼結体を含む絶縁基板が酸化物であるため、酸化物を含む添加剤と絶縁基板1との接合の強度を高めることができる。そのため、前述した、第1表面部1aと第2表面部2aとの界面における同種の添加物同士の結合の強度を効果的に高める効果とあわせて、絶縁基板1とメタライズ層2との接合の強度を効果的に向上させることができる。したがって、電子装置30としての信頼性向上に有効な配線基板10とすることができる。また、そのような電子装置30を容易に製作することが可能な電子装置用パッケージ20とすることができる。また、信頼性向上に有利な電子装置30とすることができる。また、前述した各例と同様に、これらの配線基板10、電子装置用パッケージ20および電子装置30は、高周波信号の伝送速度向上にも有効である。
【0056】
また、上記のように酸化モリブデンが添加されている場合には、酸化モリブデンが顔料として機能し、絶縁基板1が茶褐色等の暗色に着色される。これにより、絶縁基板1の表面における光の反射が抑制される。そのため、例えば電子部品21が光電変換素子であるときに、凹部12内での光の乱反射が抑制されて、信号の伝搬効率が高められる。
【0057】
また、上記各例の配線基板10、電子装置用パッケージ20および電子装置30において、絶縁基板1が、マンガンアルミネート相およびマグネシウムアルミネート相の少なくとも一方をさらに含有していてもよい。以下において、マンガンアルミネート相およびマグネシウムアルミネート相を、特に区別せずアルミネート相という場合がある。絶縁基板1がアルミネート相を含有している場合には、絶縁基板1のアルミナ(酸化アルミニウム)およびムライト結晶化の進展が低減される。そのため、これらの結晶について、結晶粒径がより均一になり、かつ微小化できる。そのため、配線基板1としての誘電正接(いわゆるtanδ)を低減させることができる。
【0058】
この場合、アルミネート相が絶縁基板1の第1表面部1aに存在していれば、上記誘電正接の低減効果を有効に得ることができる。アルミネート相は、第1表面部1a以外の絶縁基板1内部にも含まれていて構わないが、少なくとも、第1表面部1aにアルミネート相が存在することにより、前述した効果を有効に得ることができる。
【0059】
マンガンアルミネート相およびマグネシウムアルミネート相は、例えば、第1表面部1aに含有されているマンガン成分(マンガンシリケート相等)およびマグネシウム成分(マグネシウムシリケート相等)と、絶縁基板1の酸化アルミニウム成分(酸化アルミニウム等)とによって生成されている。すなわち、配線基板1に熱処理を施すことによって、上記マンガン成分およびマグネシウム成分の少なくとも一方と酸化アルミニウムとを結合させて、上記アルミネート相を生成させて析出させることができる。
【0060】
なお、アルミネート相は、メタライズ層2の第2表面部2aにも含有されていて構わない。例えば上記のようにして生成させたアルミネート相は、第1表面部1aに接した第2表面部2aにも拡散して含有され得る。第2表面部2aにもアルミネート相が含有されている場合には、上記のような誘電正接の低減効果を高めることができる。 実施形態の配線基板10では、絶縁基板1の下面および側面が第1表面部1aを有している。また、絶縁基板1の下面および側面にメタライズ層2が位置している。このような形態の配線基板10であれば、絶縁基板1の下面および側面の両方を、金属筐体11の凹部12の内面にメタライズ層2を介して接合させることができる。この凹部12の内面は底部11Aおよび枠部11Bの表面であり、凹部12の底面および内側面に相当する。そのため、絶縁基板1(配線基板10)の金属筐体11に対する接合の強度を効果的に向上させることができる。上記の接合は、絶縁基板1の下面および側面の両方ともに同じ種類のろう材4を用いることができる。
【0061】
実施形態の電子装置用パッケージ20およびこれを含む電子装置30について、上記形態の配線基板10が含まれるときには、金属筐体11の凹部12の底面および内側面に絶縁基板1の下面および側面がメタライズ層2を介して接合されたものになる。このような電子装置用パッケージ20およびこれを含む電子装置30は、絶縁基板1と金属筐体11との接合の強度が効果的に向上されている。したがって、例えば配線基板10を介した外部の電気回路等との電気的および光学的な接続の信頼性の向上について有利な電子装置用パッケージ20および電子装置30とすることができる。
【0062】
なお、実施形態の配線基板10、電子装置用パッケージ20および電子装置30において、絶縁基板1の下面または側面のみが、メタライズ層2が接合された第1表面部1aを有していてもよい。この場合には、絶縁基板1にメタライズ層2を設ける工程数が低減される。そのため、配線基板10およびこれを含む電子装置用パッケージ20および電子装置30としての生産性および経済性等の点では有利である。
【0063】
また、実施形態の配線基板10を含む電子装置用パッケージ20および電子装置30において、メタライズ層2(他のメタライズ層2Lを含む)および金属筐体11とのろう材4による接合構造において、例えば図5に示すように、ろう材4がフィレット4Fを有する形態であってもよい。ろう材4にフィレット4F部分が存在する場合には、ろう材4と金属筐体11との接合の強度を高めることができる。つまり、ろう材4を介した金属筐体11とメタライズ層2と絶縁基板1との接合の強度を高めることができる。また、ろう材4部分において絶縁基板1と金属筐体11との熱膨張率の差に起因して生じる熱応力を、フィレット4F部分において緩和することができる。
【0064】
これにより、絶縁基板1と金属筐体11との接合の信頼性を効果的に高めることができる。したがって、電子部品21の封止の信頼性等の信頼性向上に有利な電子装置用パッケージ20および電子装置30とすることができる。
【0065】
なお、このようなフィレット4Fは、金属筐体11の底部11Aには限定されず、金属筐体11の枠部11Bにおいて存在していてもよい。この場合にも、絶縁基板1と金属筐体11との接合の信頼性、つまり電子部品21の気密封止の信頼性等の向上に有効な、電子装置用パッケージ20および電子装置30とすることができる。
【0066】
また、枠部11Bにおいて、ろう材4がフィレット4Fを有するものであるときには、例えば蓋体23が金属筐体11(枠部11B)の上面に接合されるときの熱によりろう材4に熱応力が加わったとしても、蓋体23と枠部11Bとの接合の信頼性を効果的に高めることができる。
【0067】
このようなフィレット4Fは、例えば、ろう材4の量(体積)、ろう付け温度、ろう付け部分における金属筐体11およびメタライズ層2表面の表面粗さ等の条件を調整することによって、ろう材4に設けることができる。例えば、ろう材4の量を多くすれば、フィレット4Fはろう付け部分から外側に広がる。この場合、ろう材4の量が多すぎると、ろう材の広がった部分が滑らかな凹面上のフィレット形状にならず、不定形状の塊状(いわゆるだま状等)になるため、熱応力を緩和する効果が小さくなる可能性がある。言い換えれば、フィレット4は、滑らかな凹面状の外面を有し、金属筐体11およびメタライズ層2(2L)に対して小さい濡れ角で接しているものが、気密封止等の信頼性向上に関しては有利である。
【0068】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内であれば種々の変更は可能である。例えば、金属筐体11のうち蓋体23が接合される部分である枠部11Bの幅を、蓋体23が接合される上面部分において他の部分よりも小さくしてもよい。言い換えれば、枠部11Bの上面近くにおいて、外側面または内側面に段状部(切欠き部)を設けてもよい。この場合には、蓋体23の接合時に、枠部11Bの変形による熱応力緩和の効果を高めて、機密封止等の信頼性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0069】
1・・・絶縁基板
1a・・・第1表面部
2・・・メタライズ層
2a・・・第2表面部
2L・・・他のメタライズ層
3・・・シリケート相
4・・・ろう材
4F・・・フィレット
10・・・配線基板
11・・・金属筐体
11A・・・底部
11B・・・枠部
12・・・凹部
13A、13B・・・貫通部
14b・・・第2接続点
20・・・電子装置用パッケージ
21・・・電子部品
22・・・ボンディングワイヤ
23・・・蓋体
24・・・マウント
30・・・電子装置
図1
図2
図3
図4
図5