(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803459
(24)【登録日】2020年12月2日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】セラミック材料、素子及び素子を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
H01C 7/04 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
H01C7/04
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-510340(P2019-510340)
(86)(22)【出願日】2017年8月21日
(65)【公表番号】特表2019-525491(P2019-525491A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2017071053
(87)【国際公開番号】WO2018036976
(87)【国際公開日】20180301
【審査請求日】2019年2月19日
(31)【優先権主張番号】102016115642.6
(32)【優先日】2016年8月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518379278
【氏名又は名称】テーデーカー エレクトロニクス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ミード, クリストル リサ
(72)【発明者】
【氏名】トレウル, コルネーリア
【審査官】
田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/124421(WO,A1)
【文献】
特開平06−263518(JP,A)
【文献】
特開2002−121071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負の温度係数の電気抵抗を有するセラミック材料であって、
Ni‐Co‐Mn‐O、Ni‐Mn‐O及びCo‐Mn‐Oから選択された系に基づく構造と、
ランタノイドの群から選択される少なくとも1つのドーパントと、
を有し、
前記セラミック材料は一般式AB2O4のスピネル構造を有し、ここで、
‐ Aは、Ni、Co、Mn、Mg、Sr、Zn、Ca、Zr、Cu及びこれらの組み合わせから選択され、
‐ Bは、Mn、Co、Al、Fe、Ti及びこれらの組み合わせから選択され、
‐ Aは少なくともNiを含みかつBは少なくともMnを含むか、又は、
Aは少なくともNiを含みかつBは少なくともMn並びにCoを含むか、又は、
Aは少なくともMn若しくはCoを含みかつBは少なくともCo若しくはMnを含み、
前記ドーパントは、前記スピネル構造のB位置上に配置されている、
セラミック材料。
【請求項2】
前記ドーパントはPr、Nd及びこれらの組み合わせから選択される、
請求項1記載のセラミック材料。
【請求項3】
前記ドーパントは、セラミック材料中10mol%以下の割合を有する、
請求項1又は2記載のセラミック材料。
【請求項4】
前記系はさらに、Al、Fe、Cu、Zn、Ca、Zr、Ti、Mg、Sr及びこれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つの要素を含む、
請求項1乃至3いずれか1項記載のセラミック材料。
【請求項5】
前記スピネル構造は、NiMn2O4、Ni2+Mn3+Co3+O4、MnCo2O4及びCoMn2O4から選択される、
請求項1乃至4いずれか1項記載のセラミック材料。
【請求項6】
前記セラミック材料は、Co1.5−0.5aMn1.5−0.5aPraO4、Co1.8−0.5aMn1.2−0.5aPraO4であり、ここで、それぞれ0<a≦0.3である、
請求項1乃至5いずれか1項記載のセラミック材料。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか1項記載のセラミック材料を含むセラミック基体と、前記セラミック基体上に配置された2つの電極と、を有する素子。
【請求項8】
温度センサである、
請求項7記載の素子。
【請求項9】
前記セラミック基体は、0.03cm3以上0.23cm3以下の範囲から選択される体積を有する、
請求項7又は8記載の素子。
【請求項10】
前記セラミック基体は、2000Ω乃至3000Ωの範囲から選択される抵抗R25と、3500K乃至4300Kの範囲から選択されるB値とを有する、
請求項7乃至9いずれか1項記載の素子。
【請求項11】
さらにシェルを有し、
前記シェルはガラス又はポリマーを含む、
請求項7乃至10いずれか1項記載の素子。
【請求項12】
請求項7乃至11いずれか1項記載の素子を製造するための方法であって、
‐ 前記セラミック材料の出発材料を含むパウダーを製造するステップと、
‐ 前記パウダーからフィルムを製造するステップと、
‐ 前記フィルムから前記セラミック材料を含む基板を製造するステップと、
‐ 前記基板を個別化するステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記パウダーを製造するために、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩及び/又はシュウ酸塩の形態の少なくとも1つのドーパントの原料を残りの原料に添加する、
請求項12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、負の温度係数を有するセラミック材料、セラミック材料を含有する素子、並びに素子を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な用途における監視及び制御のための温度は、主にセラミック熱導体サーミスタ素子(NTC)、シリコン温度センサ(KTY)、プラチナ温度センサ(PRTD)、又は熱電対(TC)で測定される。例えばスピネル構造に基づくNTCサーミスタが、低い製造コストゆえに最も広く使用されている。熱電対及び例えばプラチナ素子のような金属製抵抗素子に対するさらなる利点は、顕著な負の抵抗‐温度特性である。
【0003】
温度センサに対する、その電気特性及び素子の幾何学的寸法の小型化に関する、常に高まる要求は、高いB値と低い抵抗率を有するセラミック材料を必要とする。低い実抵抗値と同時に急峻な特性曲線(steiler Kennlinie)とを有するセンサの製造のために、従来は、2.6cm
3未満の体積を有する比較的大きな素子寸法を有する、トリムされたディスク又はチップのいずれかが使用されている。小型化の要求が高まるにつれて、NTCセラミック素子の寸法は著しく縮小されなければならない。これまでのところ、200Ωcm未満の抵抗率を実現するために、セラミック材料は、例えば酸化銅でドープされてきた。しかしながら、その際同時に、B値(B-Wert)は3000K未満の値に低下し、ドリフト挙動は約2%から5〜10%に増加した。
【発明の概要】
【0004】
少なくとも1つの実施形態の課題は、改良された特性を有するセラミック材料を提供することにある。少なくとも1つの実施形態のさらなる課題は、改良された特性を有する素子を提供することにある。少なくとも1つの実施形態のさらなる課題は、改良された特性を有する素子を製造するための方法を提供することにある。これらの課題は、独立請求項によるセラミック材料、素子及び方法によって解決される。さらなる実施形態は、従属請求項の対象である。
【0005】
負の温度係数の電気抵抗を有するセラミック材料が提供される。これらは、Ni‐Co‐Mn‐O、Ni‐Mn‐O及びCo‐Mn‐Oから選択された系に基づく構造を有する。セラミック材料は、さらに、ランタノイドの群から選択される少なくとも1つのドーパントを含む。ここで、Ni‐Co‐Mn‐OはNi‐Mn‐Co‐Oと等価であり、Co‐Mn‐OはMn‐Co‐Oと等価である。
【0006】
ここで及び以下では、負の温度係数(NTC)の電気抵抗を有するセラミック材料とは、低温においてよりも高温において電流がよりよく伝導される材料と解されるべきである。かかる材料は、高温導体(Heissleiter)と称されることもできる。
【0007】
セラミック材料がNi‐Co‐Mn‐O、Ni‐Mn‐O及びCo‐Mn‐Oから選択される系に基づくということは、セラミック材料はそれぞれ、少なくともNi、Co、Mn及びOを含み、又はNi、Mn、Oを含み、又はCo、Mn、Oを含むことと解されるべきであり、ここで、個々の元素はセラミック材料中に異なる割合で存在していてもよく、それぞれの系はさらなる元素を含んでいてもよい。ここで、系の元素はそれぞれ、特定の構造を形成し、その格子中には少なくとも1つのドーパントが組込まれることができる。
【0008】
かかるセラミック材料は複数の分離された電気特性(entkoppelte elektrische Eigenschaften)を有する。このことは、セラミック材料によって、少なくとも特定の範囲において、高いB値が、同時に低い抵抗率ρにおいて、実現されることができる。これとは対照的に、従来のNTCセラミックにおいて、抵抗率ρとB値と間の線形の関係がある。例えば、従来のNTC素子は、約4000KのB値において、約2500Ωcmの抵抗率ρを有する。これに対して本発明によるセラミック材料は、4000K未満の高いB値を、同時に200Ωcm〜500Ωcmの範囲の低い抵抗率において、実現できる。
【0009】
複数の電気特性の分離は、ランタノイドから選択される少なくとも1つのドーパントの添加によって達成されることができる。低い抵抗率は、セラミック材料を含有する素子を、NTCセラミックを有する従来の素子と比較して少なくとも20倍ほど小型化することを可能にする。
【0010】
本発明によるセラミック材料の複数の電気特性の分離によって、低い抵抗率における高いB値が達成されることができ、かかるセラミック材料は同時に、例えば70℃〜300℃の温度範囲において少なくとも1000時間の期間にわたって0.5%未満のドリフト値を有する高い長時間安定性を有する。
【0011】
一実施形態によれば、ドーパントは、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、及びこれらの組み合わせから選択される。これらのドーパントを用いて、複数の電気的性質の上述の分離が特に良好に達成され得る。
【0012】
一実施形態によれば、ドーパントは10モル%以下の割合でセラミック材料中に存在する。セラミック材料に添加されるドーパントの量は特性曲線のスロープ(die Steilheit der Kennlinien)に影響を及ぼし得る。
【0013】
セラミック材料は、一実施形態によれば、さらにAl、Fe、Cu、Zn、Ca、Zr、Ti、Mg、Sr及びこれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つの元素を含む系を有する。さらなる実施形態によれば、セラミック材料はスピネル構造を有する。
【0014】
一実施形態によればスピネル構造は一般式AB
2O
4を有する。
ここで、
‐ AはNi、Co、Mn、Mg、Sr、Zn、Ca、Zr、Cu及びこれらの組み合わせから選択され、
‐ BはMn、Co、Al、Fe、Ti及びこれらの組み合わせから選択され、
‐ Aは少なくともNiを含みかつBは少なくともMnを含むか、又は、Aは少なくともNiを含みかつBは少なくともMn並びにCoを含むか、又は、Aは少なくともMn若しくはCoを含みかつBは少なくともCo若しくはMnを含む。
【0015】
ここで又は以下では、スピネル構造の一般式は、セラミック材料の個々の成分の正確な化学量論比を再現する必要がなく、A位置およびB位置を有する基本式として理解されるべきである。
【0016】
一般式によれば、Aは1つ又は複数の二価元素に相応する。Bは、例えば、二価、三価又は四価等の、混合原子価を有し得る1つ又は複数の元素に相応する。従って、一般式は、例えば、A
1−x2+B
x2+(A
x2+B
2−2x3+B
x4+)O
4で表されることができ、ここで指数Xは、0〜1の範囲から選択されることができる。x=0の場合、一般式A
2+B
23+O
4が得られる。
【0017】
いずれの場合も、スピネル構造は、Ni及びMn又はNi、Mn及びCo又はMn及びCoを含有する。
【0018】
さらに、ドーパントはスピネル構造のB位置に配置されることができる。
【0019】
スピネル構造は、さらに、NiMn
2O
4,Ni
2+Mn
3+Co
3+O
4、MnCo
2O
4及びCoMn
2O
4から選択されることができる。従って、かかる構造に基づいて、セラミック材料は例えばCo
1,5−0,5aMn
1,5−0,5aPr
aO
4、Co
1,8−0,5aMn
1,2−0,5aPr
aO
4及びNi
0,97−0,33aMn
1,21−0,33aFe
0,82−0,33aPr
aO
4から選択されることができる。ここで、それぞれ0<a≦0.3である。
【0020】
セラミック材料の基本配合(Die Basisrezeptur)は、所望のB値曲線に応じて選択される。ドーパントをそれぞれの基本配合に添加することによって、抵抗率ρの値を設定することができる。
【0021】
さらに、上述の実施形態によるセラミック材料を含有するセラミック基体を有する素子が提供される。従って、セラミック材料に関して与えられた全ての特性は、素子にも当てはまり、その逆もまた同様である。
【0022】
さらに、素子は、セラミック基体上に配置された少なくとも2つの電極を備える。素子は、さらに、少なくともセラミック基体、特にセラミック基体及び電極を完全に覆うシェルを備える。電極は接続ケーブルと電気的に接続しており、接続ケーブルは同様にシェルで覆われることができる。
【0023】
一実施形態によれば素子は温度センサである。従って、小型化された素子サイズを有し得る温度センサ(NTCサーミスタ)が実現されることができる。なぜなら、素子は分離された複数の電気特性を有するセラミック材料を含有するからである。
【0024】
一実施形態によれば、セラミック基体は、0.03cm
3以上0.23cm
3以下の範囲から選択される体積を有する。従って、これまでの素子に比べて同じ実抵抗R
25において、はるかに小さいセラミック基体が実現されることができる。温度センサのような素子のサイズに関する低減によって、セラミック材料の同じ基礎量(Grundmenge)からより多くのセラミック基体が製造されることができ、コスト的利点をもたらし、場合によっては原材料へのより高いコストを緩和する。
【0025】
さらなる実施形態によれは、セラミック基体は2000Ω〜3000Ωの範囲から選択される実抵抗R
25を有する。さらに、3500K〜43000Kの範囲から選択されるセラミック基体はB値を有する。特にB値は4000Kであることができる。
【0026】
さらに、素子はシェル(eine Verkapselung)を有する。素子のシェルは一実施形態においてガラス又はポリマーを含むことができる。従って素子は十分に機械的に安定化され及び外部影響から保護される。さらに、攻撃的媒体による腐食が回避されることができる。シェルは、少なくともセラミック基体上のコーティングの形態で配置されることができる。
【0027】
さらに、上述の実施形態によるセラミック材料を含有するセラミック基体を有する素子を製造するための方法が提供される。従って、セラミック材料及び素子との関係で開示された主な特徴は、方法に対しても当てはまり、逆もまた同様である。
【0028】
方法は、セラミック材料の出発材料を含むパウダーを製造するステップ、パウダーからフィルムを製造するステップ、フィルムからセラミック材料を含有する基板を製造するステップを含む。
【0029】
「セラミック材料の出発材料を含むパウダーを製造する」ステップは、例えば出発材料の集合化(Einwaage)、第1湿式粉砕(Nassmahlung)、第1乾燥、第1ろ過(Siebung)、か焼(Kalzination)、第2湿式粉砕、第2乾燥及び第2ろ過の部分ステップを含むことができる。パウダーの製造は混合‐酸化物法によって行われることができる。
【0030】
パウダーを製造する際には、少なくとも1つのドーパント、例えば酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩及び/又はシュウ酸塩の形態の出発材料は、残りの出発材料に添加されることができる。残りの材料は同様に、元素Ni、Co、Mn、Al、Fe、Cu、Zn、Ca、Zr、Ti、Mg、Srの、セラミック材料の組成に応じて、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩及び/又はシュウ酸塩であることができる。
【0031】
セラミック材料へのドーパントの添加によって、抵抗率ρの減少が達成され、B値は同程度には影響されない。ドーパントとしてのランタノイドの使用によって、典型的な線形的B−ρ挙動は少なくともいくつかの範囲では切り離される(entkoppelt)。
【0032】
「パウダーからフィルムを製造する」方法ステップは、パウダーの有機成分及び溶媒の集合化、スリップ調製(Schlickeraufbereitung)、粉砕、脱ガス及びフィルム延伸(Folienziehen)の部分ステップを含み得る。
【0033】
「フィルムからセラミック材料を有する基板を製造する」ステップは。フィルムの積層、圧縮及び切断、脱炭素化、焼結、ラッピング(Laeppen)、アニーリング(Tempern)、少なくとも2つの電極の取り付けのための金属化、及び電気的予備測定(elektrisches Vormessen)の部分ステップを含む。最後に、部品は基板を分離することによって製造される。
【0034】
焼結、アニーリング及び金属化の部分ステップは、セラミック材料又はセラミック材料を含む素子の特性曲線のスロープに影響を及ぼし得る温度プロセスである。焼結は、1100℃以上1300℃以下の範囲から選択される温度で行われることができる。アニーリングは、900℃以上1100℃以下の範囲から選択される温度で行われることができる。焼結の際の保持時間は2時間以上8時間以下の間で選択でき、アニーリングの際の保持時間は1時間以上72時間以下の間で選択できる。電極が焼き付けられる金属化は、700℃以上900℃以下の範囲から選択される温度で、10分以上60分以下の範囲から選択される保持時間で行われることができる。
【0035】
このようにして方法によって費用対効果的に及び省材料的に、小さい素子サイズを有する素子、例えば温度センサが製造されることができ、そのセラミック基体は少なくともある範囲で分離された電気特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
以下では、本明細書に記載のセラミック材料及び素子を、例示的実施形態及び関連する図面に基づいてさらに詳細に説明する。
【
図1】
図1は、例示的実施形態に基づく抵抗率ρとB値との間の関係を示す図である。
【
図2】
図2A及び2Bは、例示的実施形態に基づいて、セラミック材料の基本配合に依存するドーパント1の添加量の影響をB値及び抵抗率ρで示す図である。
【
図3】
図3A乃至
図3Cは、異なる条件下でのセラミック材料のドリフト挙動を示す図である。
【
図4】
図4は、素子の側面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図中の同一の、類似の又は同様に作用する要素は、同一の符号を付して示される。図面及び図中に表された要素の相互の倍率は縮尺どおりとみなされるべきではない。むしろ、個別の要素はより良い表現可能性及び/又はより良い理解のために誇張して描かれていることができる。
【0038】
図1は、従来の、NiMnCoO
4及びNiMn
2O
4系に基づくドーピングされていないNTCセラミック(P)について、及び、0<a≦0.3(E)でドーピングされたセラミックCo
1,5−0,5aMn
1,5−0,5aPr
aO
4、Co
1,8−0,5aMn
1,2−0,5aPr
aO
4及びNi
0,97−0,33aMn
1,21−0,33aFe
0,82−0,33aPr
aO
4の例示的実施形態について、抵抗率ρとB値との間の関係を示す。X軸上にはB値がKで、Y軸上には抵抗率ρがΩcmで示されている。菱形◆Pは従来のNTCセラミックについての値を、四角■Eは例示的実施形態のセラミック材料についての値を示す。
【0039】
図1では、ランタノイドでドーピングされたセラミック材料(E)について、3500K〜4300KのB値範囲にわたって、200Ωcm〜500Ωcmの抵抗率ρを設定することができることがわかる。同じB値範囲において、従来のNTCセラミック(P)についての抵抗率ρは500Ωcm〜20000Ωcmの間にある。
【0040】
ランタノイドでドーピングされたセラミック材料は、これまでのNTCセラミック組成物とは対照的に、同じ実抵抗において、著しくコンパクトな設計が実現される、という利点を有する。このことに関連して素子サイズの縮小化によって、同じ基礎量のセラミック材料から、そのセラミック材料を含有するより多くのNTCセラミック体を製造することができる。このことはコスト面での利点をもたらし、より高い原料コストを食い止める。
【0041】
図2A及び2Bは、B値(
図2A)及びρ値(
図2B)で、セラミック材料の基本配合に依存するドーパント1の添加量の影響を示す。X軸上には添加量lがmol%でそれぞれ示されている。
図2AのY軸上には、B値がKで、
図2BのY軸上には抵抗率ρがΩcmで示されている。
【0042】
両基本配合はそれぞれ、四角■E1(基本配合1)と菱形◆E2(基本配合2)で表される。基本配合は、それぞれセラミック材料の組成であると理解されるべきであり、そこに異なる量lのドーパントが添加される。基本配合E1は、0<a≦0.3のCo
1,5−0,5aMn
1,5−0,5aPr
aO
4であり、基本配合E2は、0<a≦0.3のCo
1,8−0,5aMn
1,2−0,5aPr
aO
4である。
【0043】
図2A及び2Bは、抵抗率ρが基本配合に依存せずに維持される(
図2B)と同時に、ドーパントが添加される基本配合E1又はE2の選択によってB値状態を異ならせることができること(
図2A)を明らかにする。
【0044】
図3A乃至
図3Cは、例示的実施形態に基づくセラミック材料の、異なる条件下でのドリフト挙動を示す。ドリフト挙動は、ランタノイドでドーピングされたセラミック材料を含有するガラスカプセル化されたNTC温度センサによって得られた。ランタノイドでドーピングされたセラミック材料は、Ni‐Co‐Mn‐O、Ni‐Mn‐O又はCo‐Mn‐Oの系に基づく構造を有する。これらの系には、任意でAl、Fe、Cu、Zn、Ca、Zr、Ti、Mg、Sr及びこれらの組み合わせが含まれることができ、系はスピネル構造を有することができる。セラミック材料は、10mol%までのドーパント濃度を有する。ドーパントは好ましくは、Pr、Nd又はこれらの組み合わせである。例えば、それぞれ0<a≦0.3のCo
1,5−0,5aMn
1,5−0,5aPr
aO
4、Co
1,8−0,5aMn
1,2−0,5aPr
aO
4又はNi
0,97−0,33aMn
1,21−0,33aFe
0,82−0,33aPr
aO
4である。
【0045】
図3Aは、時間hでの時間tに応じたドリフト挙動dR/Rを%で示す。T1は、155℃の乾熱における(in trockner Waerme)第1温度貯蔵条件(Temperaturlagerungbedingung)におけるセラミック材料の挙動を示し、T2は300℃の乾熱における第2の温度貯蔵条件における挙動を示す。両方の温度貯蔵条件T及びT2において、セラミック材料は、1000時間後でさえも0.5%未満の非常に低いドリフト挙動を示す。
【0046】
図3Bは、急激な温度変化中のドリフト挙動dR/Rを%で示す。
図3Bのx軸は温度変化のサイクル数Zを示す。TW1は、−55℃から155℃への第1の急激な温度変化(第1の温度変化条件)での挙動を示し、TW2は、−55℃から200℃への第2の急激な温度変化(第2の温度変化条件)での挙動を示す。条件TW1及び条件TW2の両方において、抵抗Rの変化は観察できない。
【0047】
図3Cは、ドリフト挙動dR/Rに対する湿熱貯蔵(Lagerung bei feuchter Waerme)の影響を示す。これもまたy軸上に%で示されている。x軸は日数dを示す。貯蔵は85℃の温度及び85%の相対湿度で行われた。この条件下で観察されたドリフト挙動は0.5%未満である。
【0048】
図4は、例示的実施形態の素子(II)と比較して、従来の素子(I)の模式的側面を示す。両方の素子は電極10を含む。従来の構成要素Iは、1.8〜3.4cm
3の体積を有するセラミック基体20をさらに含む。これに対して、構成要素IIの例示的実施形態のセラミック基体30は、0.03〜0.23cm
3の体積を有する。両方の素子は、2200Ωの抵抗R25及び3500〜4300KのB値を有する。素子Iは、1500〜3000Ωcmの抵抗率ρを有し、素子IIは200〜500Ωcmの抵抗率ρを有する。素子I及びIIは、例えばガラス又はポリマーのカプセル(図示せず)をさらに有することができる。
【0049】
素子IIのセラミック基体30は、Ni‐Co‐Mn‐O、Ni‐Mn‐O又はCo‐Mn‐Oの系に基づく構造を有するランタノイドでドーピングされたセラミック材料を含有する。系の中には、それぞれ任意で、さらにAl、Fe、Cu、Zn、Ca、Zr、Ti、Mg、Sr及びこれらの組み合わせが含まれることができ、系はスピネル構造を有する。セラミック材料は10mol%未満のドーパント濃度を有する。ドーパントは、好ましくはPr、Nd又はこれらの組み合わせである。例えば、セラミック材料は、それぞれ0<a≦0.3の、Co
1,5−0,5aMn
1,5−0,5aPr
aO
4、Co
1,8−0,5aMn
1,2−0,5aPr
aO
4又はNi
0,97−0,33aMn
1,21−0,33aFe
0,82−0,33aPr
aO
4である。
【0050】
このようにして、セラミック材料の選択に基づいて、素子サイズが顕著に低減されることができ、同時に、低い抵抗率において高いB値が実現され得ることを示すことができる。
【0051】
本発明は、例示的実施形態による明細書によって限定されるものではない。むしろ、本発明は、例えその特徴又はその組み合わせ自体が特許請求の範囲に明示されておらず、例示的実施形態が挙げられていなかったとしても、あらゆる新規な特徴並びに特徴のあらゆる組み合わせを包含し、特に、特許請求の範囲の特徴のあらゆる組合せを含む。
【符号の説明】
【0052】
10 電極
20 セラミック基体
30 セラミック基体
ρ 抵抗率
B B値
1 ドーパントの添加量
P 従来のセラミック材料
E セラミック材料の実施形態
E1 セラミック材料Co‐Mn
1,5−0,5aPr
aO
4
E2 セラミック材料Co
1,8−05,aMn
1,2−0,5aPr
aO
4
t 時間
Z サイクル数
T1 第1温度貯蔵条件
T2 第2温度貯蔵条件
dR/R 抵抗変化
TW1 第1温度変化条件
TW2 第2温度変化条件
d 日にち