(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願のワーク搬送コンベアを具体化した一実施形態である搬送コンベアについて説明する。
図1は、本実施形態の搬送コンベア10の斜視図を示している。
図1は、複数(図示例では、2つ)の単位固定部11を連結させた固定部12に、複数(図示例では、2つ)のキャリア13A,13Bを配置した状態を示している。搬送コンベア10は、リニアモータの駆動によって固定部12(単位固定部11)に対して複数のキャリア13A,13Bをスライド移動させる装置である。尚、以下の説明では、
図1に示すように、キャリア13A,13Bをスライド移動させる方向をX方向、X方向に垂直で固定部12(単位固定部11)を載置する面に平行な方向をY方向、X方向及びY方向に垂直な方向をZ方向と称して説明する。
【0013】
搬送コンベア10は、2つのキャリア13A,13Bを固定部12(単位固定部11)内に配置して構成されている。尚、キャリア13A,13Bの数は、2つに限らず、3つ以上でも良い。
図2は、2つのキャリア13A,13Bのうち、1つのキャリア13A及び単位固定部11の一部を示している。
図3は、搬送コンベア10のY方向における手前側の部材を取り除いて、搬送コンベア10の内部を一部だけ示している。
図4は、X方向に直交する平面で単位固定部11を切断した断面を示している。2台のキャリア13A,13Bは、同様の構成となっている。このため、以下の説明では、キャリア13Aについて主に説明し、キャリア13Bについての説明を適宜省略する。
【0014】
図2〜
図4に示すように、単位固定部11は、X方向に延設されている。X方向に直交する平面で切断した単位固定部11の断面形状は、Z方向の上部を開口した略U字形状をなしている。単位固定部11は、底板21と、一対の側板22,23を備えている。底板21は、X方向に延設され、下部を開口され、上下方向に薄い略箱型形状をなしている。底板21の下部には、非接触給電やキャリア13A,13Bの動作を制御する制御基板25が設けられている。制御基板25は、下部を開口した底板21内に収納され、底板21の下面に固定されている。制御基板25は、キャリア13A,13Bの各々に設けられた通信部60(
図6参照)と通信可能となっている。制御基板25は、例えば、通信部60と無線通信を行い、キャリア13A,13Bの各々とデータの送受信を行う。
【0015】
一対の側板22,23は、底板21の上面に立設して設けられ、Z方向の高さが同一となっている。一対の側板22,23は、X方向に沿って延設されている。単位固定部11は、底板21及び一対の側板22,23によって、X方向に延びる溝(レール)を構成している。キャリア13Aは、この単位固定部11のレール内に収納されている。一対の側板22,23の内壁には、複数のマグネット26が固定子として取り付けられている。複数のマグネット26は、例えば、Z方向に延びる板状をなし、側板22,23の各々の内壁において、X方向に沿って、即ち、キャリア13Aの移動方向に沿って等間隔に配置されている。マグネット26の各々は、例えば、キャリア13AとY方向で対向する内側の面においてN極、S極が交互に現れるように、X方向において隣り合うものが互いに異なる極性(N極及びS極)となっている。換言すれば、複数のマグネット26は、X方向に沿って交互に異なる極性を内側に向けて配置されている。尚、
図3及び
図4は、マグネット26を覆う
図2に示すカバー27を取り外した状態を示している。また、
図3は、Y方向の手前側の側板22を取り外した状態を示している。
【0016】
また、Z方向における側板22,23の各々の上部には、レール部28が設けられている。レール部28は、例えば、スライド面をV字に形成されたVレールであり、後述するキャリア13Aの溝ローラ43を取り付けられる。
【0017】
また、側板22の上部に設けられたレール部28の上面には、リニアスケール29が取り付けられている。また、
図5に示すように、キャリア13Aには、単位固定部11のリニアスケール29とZ方向で対向する位置にリニアヘッド40が取り付けられている。リニアヘッド40は、キャリア13AのX方向への移動にともなって、リニアスケール29の上部を移動し、X方向におけるキャリア13Aの位置を位置情報PI(
図6参照)としてキャリア13Aの受電基板50(
図6参照)に出力する。受電基板50は、通信部60を介して位置情報PIを単位固定部11の制御基板25に送信する。尚、リニアスケール29及びリニアヘッド40による位置の検出方法は、特に限定されない。例えば、位置の検出方法は、光学式の検出方法でも良く、あるいは電磁誘導を用いた検出方法でも良い。また、キャリア13Aの位置を検出する方法は、リニアスケールに限らず、例えば、ロータリーエンコーダを用いても良い。
【0018】
また、底板21の上面には、X方向に延設された走行レール30が設けられている。尚、
図3は、奥側の走行レール30を取り外した状態を示している。また、側板22,23の下部は、Y方向の内側に向かって、且つ底板21の上面に沿って延設されている。その側板22,23の底板21上に延設された部分の上には、非接触給電を行う送電コイル部31が設けられている。送電コイル部31は、X方向に延びるコイル保持部33と、送電コイル35とを備えている。尚、
図1、
図2及び
図3は、送電コイル35を取り外した状態を示している。コイル保持部33は、X方向に延びる略板状をなしている。コイル保持部33の材料は、例えば、フェライトや電磁鋼板などの磁性材料である。X方向に直交する平面で切断したコイル保持部33の断面形状は、上方に向かって突出する略E字形状をなしている。送電コイル35は、Y方向におけるコイル保持部33の中央部の突出した部分に巻回されている。
【0019】
単位固定部11の制御基板25は、送電コイル35と接続され、送電コイル35に供給する交流電圧を変更する。制御基板25は、送電コイル35に供給する交流電圧を変更することで、送電コイル35から後述するキャリア13Aの受電コイル49へ非接触による電力供給を行う。尚、非接触給電の方式は、コイルを用いた電磁結合方式や電磁誘導方式に限定されず、例えば、平板状の電極を用いた静電結合方式でも良い。また、キャリア13Aへの電力の供給は、非接触に限らず、接触型の給電方法を用いても良い。例えば、キャリア13Aに設けたパンタグラフを架線に接触させて給電を行っても良い。
【0020】
また、
図2及び
図3に示すように、キャリア13Aは、本体部41と、作業台42とを備えている。本体部41は、X方向及びZ方向に長い箱型形状をなし、内部に様々な機器が内蔵されている。作業台42は、X方向に長い略板状をなし、本体部41の上部に固定されている。
図5は、キャリア13AをX方向から見た側面図であり、本体部41の一部を取り除いた状態を示している。
図5に示すように、作業台42の下面には、複数の溝ローラ43が取り付けられている。本実施形態の複数の溝ローラ43は、Y方向における作業台42の側縁部にそれぞれ3個(合計で6個)取り付けられている(
図3参照)。また、作業台42の下面には、上記したリニアヘッド40が取り付けられている。
【0021】
また、本体部41の下面には、走行ローラ45が取り付けられている。走行ローラ45は、Y方向において並んで配置された2つを1組として、X方向において複数組設けられている。各走行ローラ45は、Z方向に沿った回転軸を中心に回転可能となっている。
【0022】
キャリア13Aは、作業台42を単位固定部11の上方に配置した状態で、略U字状をなす単位固定部11のレール内に本体部41を挿入している。単位固定部11に挿入された本体部41は、単位固定部11の側板22,23との間に一定の隙間を設けている。複数の溝ローラ43の各々は、側板22,23の上部に設けられたレール部28に対して回転可能に取り付けられている。また、走行ローラ45は、底板21の上面に設けられた走行レール30内に配置され、走行レール30の内壁と接触して回転可能な状態となっている。キャリア13Aは、溝ローラ43及び走行ローラ45を単位固定部11に対して回転可能に取り付けられることでX方向へ移動可能となり、作業台42にワーク(部品や完成品など)を載置して移動する。本実施形態の搬送コンベア10は、例えば、後述する
図7に示すように、複数の単位固定部11を連結した固定部12により構成した搬送経路上でキャリア13A,13Bを移動させ、作業工程位置85等においてキャリア13A,13Bを停止させ、部品の供給や組み立てなどの作業を実行する。
【0023】
また、本体部41の下面には、非接触給電を行う受電コイル部47が設けられている。受電コイル部47は、X方向に延びるコイル保持部48と、受電コイル49とを備えている。コイル保持部48は、X方向に延びる略板状をなしている。X方向に直交する平面で切断したコイル保持部48の断面形状は、下方に向かって突出する略E字形状をなしている。コイル保持部48の材料は、例えば、フェライトや電磁鋼板などの磁性材料である。受電コイル49は、Y方向におけるコイル保持部48の中央部の突出した部分に巻回されている。キャリア13Aを単位固定部11内に配置した状態では、受電コイル部47は、Z方向において送電コイル部31と所定の間隔を間に設けて対向して配置されている。尚、キャリア13Aは、後述する
図7に示すように、複数の単位固定部11を跨がって移動する。このため、跨がった2つの単位固定部11の少なくとも一方から電力の供給を受けるために、キャリア13Aは、X方向における両端(移動方向の前後の端部)のそれぞれに、別の受電コイル部47を備えても良い。
【0024】
また、
図3及び
図5に示すように、本体部41内には、受電基板50と、サーボアンプ51と、可動子である巻線部53とが内蔵されている。従って、本実施形態の搬送コンベア10は、固定子(単位固定部11)にマグネット26を、キャリア13Aに可動子(巻線部53)を配置した、所謂、ムービングコイル型のリニアモータを構成している。受電基板50は、受電コイル部47の受電コイル49と接続され、送電コイル部31から受電コイル部47へ給電された交流電力に応じた電力を供給される。また、受電基板50は、サーボアンプ51と接続され、サーボアンプ51へ電力W1(
図6参照)を供給する。サーボアンプ51は、受電基板50から供給された電力W1から巻線部53に通電する駆動電流を生成する。
【0025】
本実施形態の巻線部53は、Y方向における本体部41の両側にそれぞれ設けられている。各巻線部53は、例えば、3つのヨーク53Aのそれぞれにコイル53Bが巻回されている(
図3参照)。この3つのコイル53Bの各々は、例えば、U相、V相、W相の各相に対応している。各相のヨーク53A及びコイル53Bは、X方向、即ち、キャリア13Aの移動方向に並んで配置されている。サーボアンプ51は、駆動電流として、三相の交流電流Iac(
図6参照)を各コイル53Bに通電する。巻線部53は、サーボアンプ51からコイル53Bに交流電流Iacを通電されると磁界を発生させ(N極及びS極を誘起され)、単位固定部11のマグネット26との間に推進力を発生させる。キャリア13Aは、巻線部53とマグネット26との間に生じる推進力により、X方向に移動する。本実施形態では、Y方向で対向するマグネット26と、Y方向における本体部41の両側に設けられた巻線部53とにより両側式のリニアモータを構成している。受電基板50は、サーボアンプ51を介して巻線部53に通電する三相の交流電流Iacを制御することで、コイル53Bによって形成する磁界、即ち、キャリア13Aを移動させる方向や速度を制御する。
【0026】
(生産システムについて)
次に、上記した本実施形態の搬送コンベア10を複数台用いて構成した生産システムについて
図6及び
図7を参照しつつ説明する。
図6は、本実施形態の生産システム71の電気的な構成を示している。
図7は、本実施形態の生産システム71の概要を示している。
図7に示すように、生産システム71は、例えば、
図1に示す直線形状の搬送コンベア10や、搬送コンベア10を湾曲させたものを互いに連結し、環状の生産ラインが構成されている。以下の説明では、生産ラインを移動する複数のキャリア13A,13Bを区別して説明する場合には、キャリア13A,13B,13C・・と称して説明する。また、複数のキャリア13A,13Bを総称して説明する場合には、キャリア13と称して説明する。
【0027】
図6に示すように、生産システム71は、例えば、生産ラインを構成する複数の搬送コンベア10を統括的に制御する管理PC73を備えている。管理PC73は、例えば、CPUを主体として構成され、メモリ等を備えたパーソナルコンピュータである。管理PC73は、複数の搬送コンベア10に接続され、各搬送コンベア10の制御基板25に対して制御信号CT1を送信する。制御信号CT1は、例えば、各搬送コンベア10を連携させてキャリア13を移動させるための制御信号である。各搬送コンベア10の制御基板25は、制御信号CT1に基づいて、自身の単位固定部11に配置された移動中や停止中のキャリア13の動作を制御する。
【0028】
制御基板25は、通信部60を介して各キャリア13の受電基板50へ制御信号CT2を送信する。受電基板50は、単位固定部11の制御基板25から受信した制御信号CT2に基づいて電力W1を変更し、サーボアンプ51からコイル53Bに供給する交流電流Iacを制御する。これにより、管理PC73は、各搬送コンベア10の制御基板25を介して、複数のキャリア13の動作を統括的に制御することが可能となる。管理PC73は、例えば、ユーザによって予め設定された制御プログラムに基づいて、生産ライン上の複数のキャリア13の動作を制御する。
【0029】
例えば、
図7に示すように、管理PC73は、図中の矢印75の方向に向かって環状の生産ライン上で複数のキャリア13を移動させる。各キャリア13の作業台42(
図2参照)には、ワーク79が載置されている。例えば、管理PC73は、生産ラインの搬入位置77に配置した搬入ロボット80によって、搬入位置77に配置されたキャリア13の作業台42にワーク79を配置する。管理PC73は、搬入位置77の単位固定部11を制御して、ワーク79を載置したキャリア13を搬入位置77から移動させる。
【0030】
また、生産ラインには、例えば、ワーク79に対する組み立て作業などを行う多関節ロボット81,83が配置されている。例えば、管理PC73は、複数の搬送コンベア10の各々を制御し、搬入位置77から搬入されたキャリア13を多関節ロボット81の作業工程位置85まで移動させる。管理PC73は、多関節ロボット81,83と接続され、多関節ロボット81,83の動作を制御し、作業工程位置85に配置されたキャリア13のワーク79に対して作業を行わせる。管理PC73は、各キャリア13の移動や、多関節ロボット81,83の作業を制御し、ワーク79を用いた組み立てや、ワーク79に対する加工等を実行する。管理PC73は、ワーク79に対する作業が完了したキャリア13を、搬出位置78へ移動させる。そして、管理PC73は、搬出位置78に配置した搬出ロボット87によって、作業の完了したワーク79を搬出する。ワーク79を搬出したキャリア13は、再度、搬入位置77へ移動する。このようにしてキャリア13を循環させて生産を実行する。尚、生産システム71が備える作業装置は、多関節ロボットに限らず、他の装置、例えば、XYロボットでも良い。
【0031】
(複数のキャリア13の協調制御について)
次に、管理PC73による複数のキャリア13の協調制御について説明する。本実施形態の管理PC73は、制御基板25へ制御信号CT1を送信して、複数のキャリア13に対する個別制御と、協調制御とを切り替える。例えば、
図7に示す例では、1つのワーク79を1つのキャリア13で順番に搬送する個別制御を実行している。
【0032】
一方、管理PC73は、例えば、重量の重いワーク79を運ぶ場合に、複数のキャリア13を用いて1つのワーク79を搬送する協調制御を実行する。
図8は、複数のキャリア13A,13Bを用いて重たいワーク79を搬送する協調動作を示している。管理PC73は、例えば、制御プログラムに基づいて、次の生産に用いるワーク79の重量、体積、長さ、形状等を判定する。そして、例えば、管理PC73は、次の生産に用いるワーク79の重量が、1台のキャリア13で搬送可能な重量を超えている場合、2台のキャリア13A,13Bを用いてワーク79を搬送するように搬送コンベア10を制御する。
【0033】
図8に示すように、管理PC73は、制御基板25を介してキャリア13A,13Bを制御し、例えば、2台のキャリア13A,13Bによって、1つのワーク79を搬送する。この際、管理PC73は、2つのキャリア13A,13Bの間の距離L1を調整する。例えば、管理PC73は、ワーク79の重量や長さ等に基づいて、距離L1を演算する。管理PC73は、演算した距離L1を間に設けてキャリア13A,13Bを配置させる旨の制御信号CT1を搬送コンベア10の制御基板25へ送信する。尚、管理PC73は、距離L1を演算せずに、重量と距離L1とが予め設定された対応テーブルを用いて、距離L1を決定しても良い。また、距離L1の決定は、制御基板25によって実行しても良い。
【0034】
制御基板25は、受信した制御信号CT1に基づいて、X方向においてキャリア13A,13Bを近づけるように移動させる。本実施形態の搬送コンベア10は、所謂、ムービングコイル方式の搬送コンベア10であるため、各キャリア13の個別制御が可能となる。具体的には、制御基板25は、各キャリア13A,13Bの受電基板50に対して、異なった内容の制御信号CT2を送信する。各キャリア13A,13Bは、制御信号CT2に基づいて、それぞれのサーボアンプ51(巻線部53)の通電を制御する。これにより、各キャリア13A,13Bは、互いに異なった動作が可能となる。
【0035】
例えば、
図7に示した搬入位置77に配置された搬送コンベア10は、2つのキャリア13A,13Bの位置を調整し、搬入ロボット80からワーク79を受け取る。具体的には、
図8の矢印89に示すように、搬入位置77の搬送コンベア10の制御基板25は、管理PC73の制御に基づいて、一方のキャリア13BのX方向における位置を搬入位置77で固定し、他方のキャリア13Aをキャリア13Bに近づけるようにX方向へ移動させる。この際、制御基板25は、キャリア13Aのリニアヘッド40から通信部60を介して受信した位置情報PIを管理PC73へ送信する。管理PC73は、位置情報PIに基づいてキャリア13AのX方向における位置を検出し、キャリア13Aの移動量等を決定する。管理PC73は、決定した移動量の情報を制御信号CT1として制御基板25へ送信する。
【0036】
制御基板25は、管理PC73から受信した制御信号CT1に基づいて、キャリア13A,13Bの間の距離を距離L1に調整する。制御基板25は、調整を終了させると、距離L1の調整を完了した旨を管理PC73へ通知する。管理PC73は、制御基板25からの通知を受けると、搬入ロボット80を制御し、2つのキャリア13A,13Bの上に、重たいワーク79を載置する。そして、制御基板25は、管理PC73の制御に基づいて、2つのキャリア13A,13Bによって、1つのワーク79を搬送する。尚、距離L1の調整は、制御基板25が実行しても良い。例えば、制御基板25は、位置情報PIに基づいて、キャリア13Aをキャリア13Bに近づけて距離L1を調整しても良い。この場合、制御基板25は、本願の制御装置として機能する。
【0037】
従って、本実施形態の搬送コンベア10は、複数のキャリア13A,13Bの各々の単位固定部11における位置に応じた位置情報PIを出力するリニアヘッド40(位置検出部)を備える。管理PC73(制御装置)は、リニアヘッド40(位置検出部)から位置情報PIを入力し、ワーク79の大きさ及び重さの少なくとも一方及び位置情報PIに基づいて、1つのワーク79を搬送する、隣り合う少なくとも2つのキャリア13A,13Bの間の距離L1を調整する。
【0038】
これによれば、管理PC73は、リニアヘッド40の位置情報PIに基づいて、1つのワーク79を搬送する複数のキャリア13A,13Bの位置を検出することができる。そして、管理PC73は、ワーク79の大きさや重さに応じて、1つのワーク79を搬送する複数のキャリア13A,13Bを適切な位置に配置することができる。
【0039】
尚、上記した例では、重量が重いワーク79を、2つのキャリア13A,13Bで搬送する例を説明したが、これに限らない。例えば、
図9に示すように、体積の大きいワーク79を、2つのキャリア13A,13Bで搬送しても良い。この場合、管理PC73は、ワーク79のX方向における距離L2に基づいて、距離L1を調整しても良い。例えば、管理PC73は、2つのキャリア13A,13BのX方向における端部間の距離を距離L2に一致させるように、即ち、キャリア13A,13Bとワーク79の端部が一致するように、距離L1を調整しても良い。また、1つのワーク79を搬送するキャリア13A,13Bの数は、2つに限らない。例えば、3つ以上のキャリア13で、1つのキャリアを搬送しても良い。
【0040】
また、
図8に破線で示すワーク79及びキャリア13Cのように、3台のキャリア13A,13B,13Cによって、2つのワーク79を搬送しても良い。即ち、複数のキャリア13で、複数のワーク79を搬送しても良い。これにより、キャリア13の種類を変更することなく、様々な種類のワーク79を搬送することが可能となる。
【0041】
また、本実施形態の生産システム71(ワーク搬送システム)は、搬送コンベア10(ワーク搬送コンベア)と、複数のキャリア13の各々における受電基板50(制御部)を制御する管理PC73(制御装置)と、を備える。管理PC73は、受電基板50を制御して、複数のキャリア13の各々を個別に動作させる個別制御と、隣り合う少なくとも2つのキャリア13を協調して動作させる協調制御と、を実行する。
【0042】
これによれば、管理PC73(制御装置)は、複数のキャリア13の受電基板50(制御部)を制御して、複数のキャリア13による個別動作や、複数のキャリア13による協調動作を制御することができる。従って、管理PC73は、単位固定部11(固定部12)の搬送路上を移動する複数のキャリア13の動作を統括的に制御することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態の管理PC73(制御装置)は、ワーク79の特徴に応じて個別制御と協調制御とを切り替える。ここでいう、ワーク79の特徴とは、ワーク79の大きさ、形状、重さ、使用される作業工程位置85の位置、実施される作業内容、作業時間などである。管理PC73は、例えば、大きいワーク79に対して複数のキャリア13A,13Bを配置する。あるいは、管理PC73は、小さいワーク79に対して1つのキャリア13を配置する。従って、管理PC73は、ワーク79の特徴に応じて、複数のキャリア13A,13Bを適切に配置や配分できる。
【0044】
また、管理PC73(制御装置)は、協調制御において、1つのワーク79を隣り合う少なくとも2つのキャリア13A,13Bによって搬送させる。これによれば、管理PC73は、例えば、複数のキャリア13A,13Bを協調させて、重量の重い1つのワーク79を搬送することができる。これにより、キャリア13の種類を変更することなく、重量等の異なるワーク79を搬送することができる。
【0045】
また、本実施形態の管理PC73は、
図7に示す作業工程位置85に複数のキャリア13を移動させる際に、先頭のキャリア13を作業工程位置85に移動させ、他の後続のキャリア13を作業工程位置85より手前で待機させる。例えば、
図7に示すように、管理PC73は、3つのキャリア13A,13B,13Cを、多関節ロボット81の作業工程位置85へ移動させる際に、搬送方向(矢印75)における先頭のキャリア13Aを、作業工程位置85へ移動させるように制御する。また、管理PC73は、後続のキャリア13Bやキャリア13Cを作業工程位置85の直前の位置で停止させ、待機させる。この際に、管理PC73は、キャリア13Aとキャリア13BとのX方向における距離L3や、キャリア13Bとキャリア13Cとの距離L3をできるだけ短くするように制御する。例えば、管理PC73は、各キャリア13のワーク79が干渉しない程度まで、距離L3を短くする。即ち、本実施形態の管理PC73は、次の作業工程位置85にできるだけ近い位置で、順番を待っているキャリア13B,13Cを待機させる。そして、管理PC73は、先頭のキャリア13Aの作業が終了すると、キャリア13Aを作業工程位置85から移動させ、次のキャリア13Bを作業工程位置85へ移動させる。また、管理PC73は、キャリア13Bに続くように、キャリア13Cを作業工程位置85に向かって移動させ、作業工程位置85の直前で待機させる。
【0046】
従って、本実施形態の搬送路(生産ライン)は、ワーク79に応じた作業を行う複数の作業工程位置85を接続している。複数のキャリア13A,13B,13Cの各々は、複数の作業工程位置85の間を移動する。管理PC73(制御装置)は、複数の作業工程位置85のうち、一の作業工程位置85に複数のキャリア13A〜13Cを移動させる際に、移動させる複数のキャリア13A〜13Cのうち、先頭のキャリア13Aを一の作業工程位置85に移動させ、他の後続のキャリア13B,13Cを一の作業工程位置85より手前で待機させる。
【0047】
作業工程位置85での作業時間は、作業の種類や内容によって異なる。このため、キャリア13は、作業工程位置85ごとに停止する時間が異なってくる。これに対し、管理PC73は、先頭のキャリア13Aを作業工程位置85に移動させ、他の後続のキャリア13B,13Cをその作業工程位置85より手前(搬送方向である矢印75の手前)で待機させる。これにより、前のキャリア13Aの移動に合わせて、後続のキャリア13B,13Cを作業工程位置85に向かって移動させることができ、後続のキャリア13B,13Cの作業までの待ち時間を可能な限り短縮することができる。
【0048】
尚、複数のキャリア13A〜13Cを協調して制御する協調制御の内容は、上記した1つのワーク79を複数のキャリア13A〜13Cで搬送する場合や、任意の作業工程位置85の手前で後続のキャリア13B,13Cを待機させる制御に限らない。例えば、任意の作業工程位置85で異なる種類のワーク79(部品)が必要であり、且つ、その異なる種類のワーク79が1つのキャリア13Aで搬送できない場合、複数のキャリア13A〜13Cの各々にワーク79を搭載して搬送しても良い。この場合、例えば、3つのキャリア13A〜13Cの各々を、所定の距離を間に保った状態で一列に並べて、作業工程位置85まで走行させても良い。
【0049】
あるいは、複数のキャリア13A〜13Cに対し、例えば、任意の作業工程位置85で作業が終了したキャリア13Aを出発させるタイミングで、一つ前の作業工程位置85のキャリア13Bを出発させる協調制御を実行しても良い。また、例えば、作業前に比べて作業後のワーク79の大きさが大きくなった場合に、作業工程位置85のキャリア13Aの搬送を助けるために、他のキャリア13B,13Cをキャリア13Aの位置まで移動させても良い。そして、作業後のワーク79を協調して複数のキャリア13A〜13Cで搬送しても良い。
【0050】
因みに、上記実施形態において、搬送コンベア10は、ワーク搬送コンベアの一例である。マグネット26は、磁石の一例である。リニアヘッド40は、位置検出部の一例である。サーボアンプ51は、電力供給部の一例である。生産システム71は、ワーク搬送システムの一例である。管理PC73は、制御装置の一例である。
【0051】
上記実施形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施形態の搬送コンベア10(ワーク搬送コンベア)は、搬送路に配置される複数のマグネット26(磁石)を有する単位固定部11と、搬送路を移動してワーク79を搬送する複数のキャリア13A,13Bと、を備える。複数のキャリア13A,13Bの各々は、単位固定部11の複数のマグネット26により生じる磁力を利用して推進力を発生させるコイル53Bと、コイル53Bに交流電流Iac(電力)を供給するサーボアンプ51(電力供給部)と、サーボアンプ51を制御しサーボアンプ51からコイル53Bに供給する交流電流Iacを制御する受電基板50(制御部)と、を有する。複数のキャリア13A,13Bの各々は、受電基板50の制御により、複数のキャリア13A,13Bの各々が個別に動作する個別動作及び複数のキャリア13A,13Bのうち搬送路において隣り合う少なくとも2つのキャリア13A,13Bが協調して動作する協調動作を行う。
【0052】
これによれば、複数のキャリア13A,13Bの受電基板50(制御部)は、サーボアンプ51(電力供給部)を制御し、サーボアンプ51からコイル53Bに供給する交流電流Iac(電力)を制御する。複数のキャリア13A,13Bの各々は、受電基板50によりサーボアンプ51を制御することで、個別に動作する個別動作や、協調して動作する協調動作を行うことができる。例えば、複数のキャリア13A,13Bは、個別に動作し、異なる位置で停止、加速等することができる。また、例えば、複数のキャリア13A,13Bは、協調して動作し、重量の重いワーク79(
図8参照)や体積の大きいワーク79(
図9参照)を搬送することができる。従って、1つの単位固定部11に配置した複数のキャリア13A,13Bの動作を個別に制御及び協調して制御できる。換言すれば、キャリア13A,13Bの種類を変更することなく、重さや大きさの異なるワーク79を搬送することができる。
【0053】
尚、本願は、上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
具体的には、例えば、上記実施形態では、管理PC73が、複数のキャリア13A〜13Cを統括して制御したが、これに限らない。例えば、各搬送コンベア10の制御基板25が、自身の搬送コンベア10(単位固定部11)上のキャリア13A,13Bのみを個別及び協調制御しても良い。あるいは、キャリア13A〜13C同士が相互に通信を実行し、キャリア13A〜13C自身が自律して個別動作及び協調動作をしても良い。例えば、キャリア13Aの制御基板25は、他のキャリア13Bの制御基板25と通信を実行し、協調して1つのワーク79を搬送しても良い。あるいは、キャリア13Aの受電基板50(制御部)は、例えば、キャリア13Aに設けたセンサに基づいて、前方や後方を走行する他のキャリア13B,13Cとの距離を判定し、移動速度等を調整し個別動作を実行しても良い。
また、上記実施形態では、本願のワーク搬送システムとして生産システム71を例に説明したが、これに限らない。本願のワーク搬送システムは、
図7に示す搬入ロボット80、多関節ロボット81,83、搬出ロボット87等を備えなくとも良い。例えば、ワーク搬送システムは、搬送コンベア10と、管理PC73のみを備える構成でも良い。また、複数の搬送コンベア10の制御基板25によって相互に通信してキャリア13A〜13Cの制御を実行する場合には、ワーク搬送システムは、搬送コンベア10のみを備える構成でも良い。この場合、搬送コンベア10の制御基板25は、本願の制御装置として機能する。
また、上記実施形態では、本願の磁石として、単位固定部11にマグネット26(永久磁石)を設けたが、電磁石でも良い。
【0054】
また、管理PC73は、ワーク79の大きさなどの特徴に応じて、個別制御と協調制御とを切り替えたが、これに限らない。例えば、管理PC73は、ユーザからの指示に基づいて、個別制御と協調制御を切り替えても良い。
また、上記実施形態では、一の作業工程位置85に複数のキャリア13A〜13Cを移動させる際に、後続のキャリア13B,13Cを一の作業工程位置85の直前で待機させたが、直前で待機させなくとも良い。例えば、後続のキャリア13B,13Cを、一つ前の作業工程位置85で待機させても良い。