【文献】
Biochemical and Biophysical Research Communications,2016年 5月,Vol.474,pp.709-714
【文献】
Molecular Therapy Methods & Clinical Development,2016年 1月,Vol.3, 15054,pp.1-12,doi: 10.1038/mtm.2015.54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成分2C及び/又は2Eが含まれ、2C及び/又は2Eが、TORESの働きにより、2C及び/又は2Eによりコードされる被分析物TCR鎖対のライブラリをもたらす、請求項14〜26のいずれか一項に記載の二部分装置。
1以上の成分2C及び/又は2Eが、成分2C及び/又は2Eにコードされる2つの相補被分析物TCR鎖を成分2B及び/又は2Dに組み込んでeTPC-tと呼ばれる細胞を得るために成分2Aと組み合わされ、成分2B及び/又は2Dが、成分2Aの表面で被分析物TCRspを発現する成分2B'及び/又は2D'になる、請求項26〜28のいずれか一項に記載の二部分装置。
成分2C又は2Eの一方が、成分2C又は2Eにコードされる1つの被分析物TCR鎖を成分2B又は2Dに組み込んでeTPC-xと呼ばれる細胞を得るために成分2Aと組み合わされ、成分2B又は2Dが、eTPC-xで単一TCR鎖を発現する成分2B'又は2D'になる、請求項26〜28のいずれか一項に記載の二部分装置。
成分2C又は2Eの一方が、成分2C又は2Eにコードされる1つの被分析物TCR鎖をeTPC-xの成分2B又は2Dに組み込んでeTPC-tを得るためにeTPC-xと組み合わされ、1つの被分析物TCR鎖が、eTPC-xに発現されるTCR鎖に相補的であり、成分2B又は2Dが、eTPC-tの表面でTCRspを発現する成分2B'又は2D'になる、請求項30に記載の二部分装置。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
本発明は、上記の必要性に対処する。本発明は、TCR ORFの遺伝子再構成及び/又は配列多様化、及び、機能解析及び/又は選択のための操作TCR提示細胞(eTPC)へのこれらORFの挿入に適切な二部分装置を提供する。このような装置は、天然型細胞表面においてCD3複合体に関連付けて迅速に分析及び選択できる天然型鎖対及び/又は配列を多様化した鎖対を得るために適切である。
二部分装置の第1の部分は、TCR鎖の可変(V)、連結(J)及び定常(C)配列を有するベクターの予め組立てられたライブラリを含む二成分ベクターシステムを含む。該システムの第1の成分は、V及びC配列を含むV-Cエントリーベクターを含む(成分1A)。該システムの第2の成分は、J配列を含むJドナーベクターを含む(成分1B)。二成分ベクターシステムは、全ての望ましいV-C配列組合せ及びJ配列をそれぞれ有するV-Cエントリーベクター及びJドナーベクターのライブラリに予め組立てられる。二成分ベクターシステムは、所望の配列を有する単一V-Cエントリーベクター及び単一Jドナーベクターが、第3の成分であるCDR3をコードする短いDNAオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)(成分1C)配列と組み合わされて、制限酵素及びリガーゼ依存性かつPCR非依存性の様式で単一試験管反応においてインビトロで全長TCR ORFを再構成できるような様式で設計されている。これらの三成分TCR ORF再構成及び操作システム(TORES)は、親和性又は機能成熟ワークフローのために天然型の、配列が多様化された又は合成のTCR ORFの大きいライブラリを迅速に作成するために理想的に適切である。
【0032】
TORESと定義する本発明の第1の部分を、
図1の「パート1」に要約する。標的全長TCR ORFに必要なV及びC TCR遺伝子セグメントを含む選択されたV-Cエントリーベクターを、必要なJ TCR遺伝子セグメントを含むJドナーベクターと組み合わせる。全長TCR ORFは、V(D)J組換え中に生じる非生殖系列配列の原因となるodeCDR3の付加により完成し、それぞれV-Cエントリーベクター及びJドナーベクターによりコードされる固定化生殖系列によりコードされるV及びJ配列が間に挿入されている。二成分ベクターシステム及び第3のodeCDR3成分は、制限酵素及びリガーゼ反応において組み合わされた場合に、所望の全長V-CDR3-J-C TCR ORFが再構成されるように設計されている。よって、二部分装置のこの第1の部分は、TCR ORFを特定のベクターに関連付けて組立てて、これらのTCRをコードするベクターが、二部分装置の第2の部分が動作するための組込みベクターとなるようにする。
【0033】
二部分装置の第2の部分は、操作T細胞受容体提示細胞システム(eTPCS)と定義する、操作された多成分細胞システムを含む。第2の部分。
図1の「パート2」に要約される少なくとも3つの成分で構成される多成分システム。第一に、操作TCR提示細胞(操作されたTCRを提示する細胞;eTPC)(成分2A)。第二に、操作されたゲノム受容部位の対(成分2B及び2D)を含む。第三に、二部分装置の第1の部分TORESに由来するTCRコーディング遺伝子組込みベクターであって、eTPCに含まれるゲノム受容部位とマッチする遺伝子組込みベクター(成分2C及び2E)。マッチしたゲノム受容部位及び組込みベクター(組込みカップルと呼ぶ)を、TCR対をコードする遺伝子材料の迅速で安定な組込みのために用いる。eTPCは、更に、第4の成分(任意成分)であるTCR刺激応答エレメント(成分2F)を、TCRシグナル伝達応答のインビトロ検出及び特徴決定のために更に含んでよい。
【0034】
二部分装置は、よって、特異的組込みベクターと関連付けられた天然型の若しくは配列が多様化されたTCR ORF又はそのライブラリを得るため、そしてこれらの組込みベクターをマッチしたeTPCと組み合わせることにより、単一TCR対を発現する被分析物eTPC(eTPC-t)又はそのライブラリを得るために用いられる。
本発明は、全長TCR対を提示する安定な派生被分析物細胞(eTPC-t)の迅速でハイスループットな作製のために用いられる。この二部分装置は、研究の背景及び臨床免疫診断手順の両方で直接用いることができる分析システムへのTCR中心の細胞ベースのインプットを作製するためによく適している。よって、二部分装置は、一般的に、TCR ORFの派生物を得た後に1以上の被分析物eTPC-tを調製するために用いられる。これらの被分析物eTPC-tを、次いで、1以上の被分析物抗原と組み合わせて(まとめてeTPC:抗原システム、eTPC:A)、1以上のアウトプットを得る(
図24)。被分析物抗原は、被分析物抗原提示細胞(APC)により、及び/又は可溶性若しくは固定化被分析物抗原として提供されるか、或いは/又は非細胞ベースの粒子(NCBP)上で提示される。
【0035】
本発明は、TCR ORFを作製するため(TORES)及び細胞表面でTCR対を安定に発現する操作された株化細胞を作製するため(eTPCS)に、標準化された、柔軟性のあるそして組織化可能な二部分装置を提供する。単一TCR ORF対は、詳細な解析のために、二部分装置内の操作された細胞により提示されることができ、TCR ORFのライブラリもそうである。天然型又は配列が多様化されたTCRを提示する細胞のライブラリの作製は、新規なTCR特異性を同定若しくは操作するため、又は特定のTCR対についての同族抗原を同定するための分析又はスクリーニングの目的のために用いることができる。本発明の中心である標準化は、再現性を増し、生成サイクル時間を減らし、よってこのような被分析物材料を作製するための費用を減らす点において、現存する方法に対して著しい改善となる。この標準化は、制御されたコピー数で制御されたゲノム位置に信頼できるORF組込みを許容する確固とした組込みベクター/ゲノム受容部位サブシステムにより達成される。同様のTCR提示細胞を達成する以前の無作為組込み及びウイルスアプローチに対して著しい改善である。
【0036】
TORES:二部分装置の第1の部分
二部分装置の第1の部分は、TORESと言い、これは、標的TCR ORFの再構成のための全ての必要なV、C及びJ遺伝子セグメントを含むライブラリに組立てられる二成分ベクターシステムを含む(
図1、パート1)。例えば、ライブラリは、実施例1に記載するように、ヒトTRA及びTRB遺伝子座の天然型タンパク質配列をコードする全ての遺伝子セグメントを含むように構築できる。
【0037】
TORESを用いて、標的TCR、V、J及びC遺伝子セグメント使用を定義する配列情報を非生殖系列CDR3配列と一緒に用いて全長TCR ORFを再構成することで十分である。この情報から、標的TCR ORFのV/C及びJ使用に対応するV-Cエントリーベクター及びJドナーベクターがまず選択される。全長TCR ORFを完成するために必要な非生殖系列CDR3配列に相当する第1の部分の第3の成分であるodeCDR3も作製される。
図2に示すように、3つの成分を、反応においてIIS型制限酵素及びDNAリガーゼ酵素と組み合わせて標的全長TCR ORF、並びに副生成物を作製する。得られる再構成された全長TCRは、V-Cエントリーベクター骨格に含まれ、よって、この親の構築物に含まれるベクターの特徴を全て含む。
【0038】
制限酵素/リガーゼ反応剤中での3つの組合せ成分(
図2、b、c)のIIS型制限酵素の作用により、2つの反応副生成物及び2つの反応中間体が得られる。V-Cエントリーベクター由来の反応副生成物は、切り取られた天然型選択マーカー及びIIS型結合部位である(
図2d)。Jセグメント部が切り取られたJドナーベクター骨格は、第2の反応副生成物である(
図2e)。Jドナーベクターから切り取られたJセグメント部は、反応中間体であり、Jセグメント部、Cセグメントからの小さいC部及びライゲーションに必要な一本鎖オーバーハングを両方含む(
図2f)。第2の反応中間体は、V及びCセグメント並びにライゲーションに必要な一本鎖オーバーハングを含む親のV-Cエントリー骨格である(
図2g)。反応の最終生成物は、親のV-Cエントリーベクター骨格内で再構築され、odeCDR3ライゲーション部(
図2c)、切り取られたJセグメント部(
図2f)並びにV及びC遺伝子セグメントを有するV-Cエントリー骨格(
図2g)で構成される全長TCR ORFである。
【0039】
第1の部分のV-Cエントリーベクター及びJドナーベクター成分
二部分装置の第1の部分は:
a.複製起点、
b.第1のポジティブ選択マーカー、
c.1以上の5'遺伝子エレメント、
d.コザック配列、
e.TCR可変遺伝子セグメント、
f.IIS型制限酵素による部位特異的認識及び切断のための第1のIIS型配列、
g.ネガティブ選択マーカー、
h.第2のIIS型配列、
i.TCR定常遺伝子セグメント、及び
j.1以上の3'遺伝子エレメント
を含む1以上のV-Cエントリーベクター(成分1A)を含み、ここで、a)及びb)は、細菌宿主内での親のV-Cエントリーベクター及び再構成されたTCR ORF含有ベクターの増殖及び選択に用いられ、c)及びj)は、二部分装置の第2の部分のマッチしたゲノム受容部位(成分2B又は2D)への組込みの態様並びに川下の応用に必要な追加の特徴を定義するために用いられ、d)は、真核細胞での効率的な翻訳開始を確実にし、e)は、開始コドンから、所与の二成分ベクターシステムにおいて全てのVセグメントにわたって保存されるCDR3領域の5'末端のモチーフまでの可変(V)遺伝子セグメントであり、f)は、標準化された一本鎖オーバーハングがV遺伝子セグメントの3'末端に創出されるように、IIS型制限酵素が5'方向で切断するよう指示するIIS型認識配列であり、g)は、本システムが全長TCR ORFを再構成するように働いている間に、親のV-Cエントリーベクターを排除するネガティブ選択マーカーであり、h)は、標準化された一本鎖オーバーハングがC遺伝子セグメントの5'末端に創出されるように、IIS型制限酵素が3'方向で切断するよう指示するIIS型認識配列であり、i)は、所与の二成分ベクターシステムにおいて全てのCセグメントにわたって保存されるC遺伝子セグメントの5'末端のモチーフ、又はC遺伝子セグメントの5'末端の一部分を欠くC遺伝子セグメント部分からのC遺伝子セグメントであって、Jセグメントとの境界を定めるC遺伝子セグメントである(
図2aを参照されたい)。
【0040】
二部分装置の第1の部分は、1Bと呼ばれる成分を含み:
a.複製起点、
b.第2のポジティブ選択マーカー、
c.第3のIIS型配列、
d.TCR連結遺伝子セグメント、
e.定常遺伝子セグメントの小さい5'部分に相当するC部、及び
f.第4のIIS型配列
を含む1以上のJドナーベクターを含み、ここで、a)及びb)は、Jドナーベクターの増殖及び選択のために用いられ、c)は、標準化された一本鎖オーバーハングがJ遺伝子セグメントの5'末端に創出されるように、IIS型制限酵素が3'方向に切断するよう指示するIIS型認識配列であり、d)は、所与の二成分ベクターシステムにおいて全てのJセグメントにわたって保存されるCDR3領域の3'末端を定義する5'モチーフから始まって、二成分システムに含まれるV-CエントリーベクターによりコードされるCセグメントの5'部分であるC部が組み込まれている3'配列までの連結(J)遺伝子セグメントであり、f)は、標準化された一本鎖オーバーハングがJ遺伝子セグメントの3'末端に創出されるように、IIS型制限酵素が5'方向に切断するよう指示する、当該配列のC部の部分に含まれるIIS型認識配列である(
図2bを参照されたい)。
【0041】
Jドナーベクターは、C遺伝子セグメントの小さい5'部分をコードするC部配列を厳密に有する必要はない。このC部は、TORESが動作している間の再構成反応のためのオーバーハングを最適化して標準化するために用いられる。これは、J遺伝子セグメントの3'末端で見いだされる配列のバリエーションがより高く、よって、C部を含むことにより、多様性がより低いC遺伝子セグメント内でオーバーハングを作製することにより標準化が可能になるからである。3'Jセグメント多様性を有さない他の生物からのTCR遺伝子座についてTORESを構築する場合、又は合成J遺伝子セグメントを用いる場合、Jセグメント内のオーバーハングをい標準化するためのC部は省略してもよい。このことにより、Jドナーライブラリ構築の複雑さが低くなる。
【0042】
V-Cエントリーベクター及びJドナーベクターにコードされる第1、第2、第3及び第4のIIS型配列の各々は、同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、これらは同じである。このことにより、二成分ベクターシステム内の各制限部位が、同じIIS型酵素に適合し、TORESを用いる全長TCR ORFの再構成の間の制限酵素/リガーゼ反応に単一の酵素だけが必要となる。IIS型酵素はその認識配列内で切断せず、該認識配列の外に一本鎖オーバーハングが作製される。よって、IIS型制限酵素の作用により作製されるオーバーハングの性質は、認識配列の向きと、隣接配列との両方に依存する(実施例1を参照されたい)。
或いは、IIS型制限配列の各々は、互いに異なっていてよい。しかし、ユニークな認識配列を加えるたびに、制限酵素/リガーゼ反応に更なるIIS型酵素を組み込まなければならない。このことにより、全長TCR ORFを組み立てるための再構成反応の複雑さ及び費用が増加する。
【0043】
V-Cエントリーベクター及びJドナーベクターそれぞれに含まれる第1及び第2のポジティブ選択マーカーは、好ましくは異なる。このことにより、最終全長TCR ORF生成物の骨格を提供するV-CエントリーベクターがJドナーベクターから独立して選択され、よって、(そうでなければ、再構成反応にバックグラウンドをもたらすことになる)未消化の又は再環化したJドナーベクターを有する形質転換体を排除できる(
図2を参照されたい)。
【0044】
ポジティブ選択マーカーは:
a.抗生物質耐性遺伝子、
b.栄養要求性補完遺伝子、
c.レポーター遺伝子
から選択でき、ここで、このようなポジティブ選択マーカーの選択、フォーマッティング及び使用は、当業者に公知である。
【0045】
V-Cエントリーベクターに組み込まれる5'遺伝子エレメントは:
a.遺伝子シスエレメント、
b.リコンビナーゼ酵素のための異種特異的認識部位、
c.興味対象のゲノム部位についての5'相同組換えアーム、
d.mRNAスプライスアクセプター部位、
e.配列内リボソーム進入部位、及び
f.エピジェネティックインスレータ配列
から選択される1以上のエレメントを含み、ここで、b)及びc)の少なくとも一方が含まれ、それらは二部分装置の成分2B及び2Dとして含まれるゲノム受容部位にマッチしており、a)は、V-Cエントリーベクター骨格内で再構成された全長TCR ORF生成物によりコードされる転写産物の発現を駆動し、b)は、リコンビナーゼ酵素の存在下で部位特異的組換えを駆動して、V-Cエントリーベクター骨格内で再構成された全長TCR ORF生成物を、二部分装置の第2の部分のeTPCのゲノムに特異的に挿入する配列であり、c)は、部位特異的相同組換えを駆動して、V-Cエントリーベクター骨格内で再構成された全長TCR ORF生成物を、二部分装置の第2の部分のeTPCのゲノムに特異的に挿入する配列であり、d)は、操作ドメイン-融合アプローチを可能にして、V-Cエントリーベクター骨格内で再構成された全長TCR ORFから発現されるタンパク質の形を操り、e)は、V-Cエントリーベクター骨格内で再構成された全長TCR ORFから発現されるmRNAのキャップ非依存性の翻訳開始を許容し、f)は、V-Cエントリーベクター骨格内で再構成された全長TCR ORFを挿入し得るゲノムにおいて、(そうでなければ、エンハンサエレメントにより影響される)転写活性の遮蔽を許容する。
【0046】
シスエレメントは、V-Cエントリーベクター骨格に再構成されたTCRの発現を、eTPCのゲノム受容部位に一旦挿入されるや否や駆動するために含めることができる。しかし、このことは、組込み中に、作製された組込みベクターをeTPCに送達する際のTCR鎖の一過性発現を可能にするであろう。よって、TCR鎖が正しいゲノムの状況に一旦組み込まれた場合にだけ発現され得るように、ゲノム受容部位自体の中にシスエレメントが含まれることが好ましい。
V-Cエントリーベクター骨格は、再構成されたTCR ORFを含む前記ベクターが適当なリコンビナーゼ酵素の存在下で哺乳動物細胞にトランスフェクションされる場合に、再構成された全長TCR ORFのリコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)を許容するリコンビナーゼ酵素のための異種特異的認識部位をコードし得る(実施例1)。
【0047】
V-Cエントリーベクターに含まれる第1のIIS型認識配列は、TCR可変遺伝子セグメント内(
図2a)の前記認識配列の5'を切断して、合成されたodeCDR3(
図2c)の5'末端のものに相補的な可変遺伝子セグメント(
図2g)の3'末端にて一本鎖DNAオーバーハングを生成するような向きである。この第1のIIS型認識配列をどのように設計するかについての詳細は、実施例1及び2を参照されたい。
V-Cエントリーベクターは、第1のIIS型認識配列と第2のIIS型認識配列との間にネガティブ選択マーカーを含む(下記参照、
図2a)。このネガティブ選択マーカーは:
a.第1の成分の他の場所にもTCR連結遺伝子セグメント内にも含まれない制限酵素認識部位、
b.殺菌性因子をコードする遺伝子、
c.レポーターエレメント
の1以上から選択され、ここで、ネガティブ選択マーカーは、親のV-Cエントリーベクターで形質転換された宿主細胞を排除して、よって、第1のポジティブ選択マーカーを用いてV-Cエントリーベクター骨格内に標的TCR ORFを含む形質転換体を選択する場合、再構成反応のバックグラウンドを低減するために用いられる(実施例3を参照されたい)。
ネガティブ選択マーカー自体を除いて、二部分システム内の全てのその他の配列は、システムの他の場所にこの配列を含むことに基づく不当なネガティブ選択を与えないために、前記配列を含んではならない。
【0048】
この関係において、V-Cエントリーベクターに含まれる第2のIIS型認識配列は、TCR定常遺伝子セグメント(
図2a)内で前記認識配列の3'側を切断して、定常遺伝子セグメント(
図2g)の5'末端に、Jドナー断片反応中間体(
図2f)の3'末端のものに相補的な一本鎖DNAオーバーハングを生成するような向きである。この第2のIIS型認識配列をどのように設計するかについての詳細は、実施例1及び2を参照されたい。
【0049】
V-Cエントリーベクターに組み込まれる3'遺伝子エレメントは:
a.ターミネータエレメント、
b.リコンビナーゼ酵素のための異種特異的認識部位、
c.興味対象のゲノム部位についての3'相同組換えアーム、
d.mRNAスプライスドナー部位、
e.配列内リボソーム進入部位、及び
f.エピジェネティックインスレータ配列
から選択される1以上のエレメントを含み、ここで、b)及びc)の少なくとも一方が含まれ、それらは二部分装置の成分2B及び2Dとして含まれるゲノム受容部位にマッチしており、a)は、インサイチュでのTCR ORFの効率的なmRNA生成のための転写終結を駆動し、ポリAシグナルをコードしていてもよい配列であり、b)は、リコンビナーゼ酵素の存在下で部位特異的組換えを駆動して、V-Cエントリーベクター骨格内で再構成された全長TCR ORF生成物を、二部分装置の第2の部分のeTPCのゲノムに特異的に挿入する配列であり、c)は、部位特異的相同組換えを駆動して、V-Cエントリーベクター骨格内で再構成された全長TCR ORF生成物を、二部分装置の第2の部分のeTPCのゲノムに特異的に挿入する配列であり、d)は、下流のmRNAスプライスアクセプター部位をコードするゲノム遺伝子座への組込みの後に転写ユニットへのTCR ORFの融合を許容して、TCR発現レベルの強度又はV-Cエントリーベクター骨格内で再構成された全長TCR ORFから発現されるタンパク質の形を操り、e)は、V-Cエントリーベクター骨格内で再構成された全長TCR ORFから発現されるmRNAのキャップ非依存性の翻訳開始を許容し、f)は、隣接クロマチンドメイン間の不適切な相互作用を妨げて、V-Cエントリーベクター骨格内で再構成された全長TCR ORFを挿入し得るゲノムの状況において、隣接転写調節からの全長TCR ORF又はヘテロクロマチンの広がりを遮蔽する。
【0050】
ターミネータエレメントは、V-Cエントリーベクター骨格に再構成され、eTPCのゲノム受容部位に組み込まれたTCRの発現中の転写終結を確実にするために含むことができる。ターミネータ配列を、実施例1に概説するように、ゲノム受容部位自体の中に含んでもよい。
V-Cエントリーベクター骨格は、実施例3、4及び5に概説するように、再構成されたTCR ORFを含む前記ベクターが適当なリコンビナーゼ酵素の存在下でマッチしたゲノム受容部位と共にeTPCをトランスフェクションする場合に、再構成された全長TCR ORFのリコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)を許容するリコンビナーゼ酵素のための異種特異的認識部位をコードし得る、実施例1。
Jドナーベクターは、J遺伝子セグメントの3'に、C遺伝子セグメントの5'断片であるC部配列を有するJ遺伝子セグメントを含む(
図2b)。
【0051】
C部配列は、Jドナーベクター由来J断片反応中間体(
図2f)の3'末端にての中に、そしてIIS型消化オープンV-Cエントリーベクター反応中間体(
図2g)の中のC遺伝子セグメントの5'末端にて、IIS型酵素の作用により作製される一本鎖オーバーハングを標準化するように設計される。
【0052】
Jドナーベクターに含まれる第3のIIS型認識配列は、該認識配列の3'をTCR連結遺伝子セグメント内で切断して(
図2b)、連結遺伝子セグメント(
図2f)の5'末端にて、合成されたodeCDR3の5'末端のものに相補的な(
図2c)一本鎖DNAオーバーハングを生成するような向きである。この第3のIIS型認識配列をどのように設計するかについての詳細は、実施例1及び2を参照されたい。
Jドナーベクターに含まれる第4のIIS型認識配列は、該認識配列の5'をTCR C部内で切断して(
図2b)、3'C部(
図2f)の3'端にて、5'IIS型消化オープンV-Cエントリーベクター反応中間体のものに相補的な(
図2g)一本鎖DNAオーバーハングを生成するような向きである。この第3のIIS型認識配列をどのように設計するかについての詳細は、実施例1及び2を参照されたい。
【0053】
二部分ベクターシステム内で、全てのベクター配列は、TORES組立て反応に用いられるIIS型制限酵素についての余剰のIIS型認識配列を含まない。このような配列を含むことは、コードされる遺伝子セグメント又はその部分内でのIIS型制限酵素の作用をもたらし、TCR再構成プロセスの混乱をもたらす。同様に、IIS型認識配列は、第3のシステム成分であるodeCDR3に含まれない(下記参照)。
TORESの二成分ベクターシステムは、TCR鎖の任意のコレクションについても構築できる。以下の実施例1では、二成分ベクターシステムは、ヒトTCRアルファ及びベータ鎖をそれぞれコードするヒトTRA及びTRB遺伝子座について構築される。このようなTORESの構築は、TCRデルタ及びガンマ鎖対をそれぞれコードするTRD及びTRG遺伝子座、又は実際に、有顎脊椎動物で見いだされる任意のTRA/TRB、TRD/TRG若しくはバリアントTCR鎖対システムの状況において等しく当てはめることができる。このようなTORESシステムは、細胞により発現されるTCR又は組換えTCRタンパク質の操作のための合成バリアントTCR ORFの組立てを許容する合成TCR遺伝子断片も組み込んでよい。
【0054】
二部分システムの第1の部分の第3のodeCDR3成分
任意の与えられたTORESを用いて全長TCR ORFを再構成するために、二成分V-Cエントリーベクター及びJドナーベクターシステムによりコードされない小さいORF断片が第3の成分として必要である。この第3の成分は、成分1Cと呼ばれる、CDR3をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)の形をとる。
このような第3の成分1C、odeCDR3は:
a.V-CエントリーベクターのTCR可変遺伝子セグメント内の第1のIIS型認識部位と結合するIIS型制限酵素により作製されるオーバーハングに相補的な第1の一本鎖オーバーハング配列、
b.TCR CDR3領域をコードし、ネガティブ選択エレメントを含まず(ネガティブ選択エレメントは、請求項10で定義されるとおりである)、TORES反応ミックスに加えられるIIS型制限酵素についてのいずれのIIS型制限配列も含まない二本鎖セグメント、
c.JドナーベクターのTCR連結遺伝子セグメント内の第3のIIS型認識部位と結合するIIS型制限酵素により作製されるオーバーハングに相補的な第2の一本鎖オーバーハング配列
を含む。
或いは、
d.odeCDR3は、第1又は第2の成分と矛盾しない2つのIIS型酵素に挟まれ、消化された場合に、上記のa、b及びcを含む生成物、短いdsDNA断片IIS型部位をコードする2つの副生成物が作製されるような向きであるCDR3をコードするdsDNA分子で構成され得る。この代替のdsDNA odeCDR3は、予めの消化を必要とすることなく、制限酵素/リガーゼ反応に適合する。
【0055】
全長TCR ORFを再構成するためにTORESを用いる方法
二部分装置の第1の部分であるTORESは、実施例3においてヒトTRA/TRB鎖対について示すように、遺伝子ベクターに関連付けて、配列情報から全長TCR ORFを再構成するために用いることができる。
配列情報から全長TCR ORFを再構成するようにTORESを働かせるために、所与のTCR鎖についての二成分ベクターシステムのリソースに鑑みて、方法は:
a.V-Cエントリーベクターを選択する工程と、
b.Jドナーベクターを選択する工程と、
c.odeCDR3を選択する工程と、
d.a、b及びcを組み合わせて、i)V-Cエントリーベクター及びJドナーベクターに存在する全てのIIS型制限酵素認識及び切断部位を切断するIIS型制限酵素並びにii)DNAリガーゼ酵素と反応させて、iii)組合せミックスを温度制御反応に供する工程と、
e.工程dから得られる反応生成物で、DNAベクター増殖能力を持つ選択可能な宿主生物を形質転換する工程と、
f.宿主生物の選択を行って、V-Cエントリーベクター骨格内の全長の再構成されたTCRオープンリーディングフレームを得る工程
とを含み、a)及びb)は、標的全長TCR ORF内のV、J及びC遺伝子セグメントをコードする選択されたベクターに基づいて選択され、c)は、a)及びbにおいて選択されるV-Cエントリー又はJドナーベクターによりコードされず、その中にコードされる可変及び連結セグメントと結合する全長TCR ORF配列を完成することに基づいて選択され、d)3つの選択された成分を、反応混合物に、V-Cエントリー及びJドナーベクター内の第1、第2、第3及び第4のIIS型制限酵素認識配列を切断する制限酵素と共に組み合わせること、e)は、通常、形質転換能力を持つ細菌であり、f)宿主の選択は、V-Cエントリーベクター骨格によりもたらされる第1のポジティブ選択マーカーに基づく。
【0056】
一般的に、再構成のための全長TCR ORFの遺伝子エレメントを選択及び定義するためのワークフローは、標的生物組織からのTCR鎖のデノボシーケンシングを必然的に伴う。一般的なワークフローは、選別された単一細胞からのTCR鎖対の逆転写及びPCRベースの増幅と、そのあとのサンガーシーケンシングとを組み込む。代替のシーケンシング方法を用いることができる。一般的に重要なパラメータは、TCR ORF対を維持することである。更に、TCR ORFのV、CDR3、J及びCセグメントにまたがる高品質の配列を情報が必要とされ、このことにより、特定のシーケンシングアプローチをとることが要求される。
【0057】
よって、TCRオープンリーディングフレームを選択及び再構成する方法は:
a.TCRオープンリーディングフレーム配列を得る工程であって、前記配列情報が、i)可変遺伝子セグメント使用、ii)定常遺伝子セグメント使用、iii)連結遺伝子セグメント使用、iv)可変遺伝子セグメント境界から連結遺伝子セグメント境界にまたがる全長CDR3配列を同定するために十分である工程と、
b.工程a.i)及びa.ii)でそれぞれ同定される可変及び定常遺伝子セグメントに対応するV-Cエントリーベクターを選択する工程と、
c.工程a.iii)で同定される連結遺伝子セグメントに対応するJドナーベクターを選択する工程と、
d.工程a.iv)で同定されるCDR3配列に対応するodeCDR3を作製する工程と、
e.b、c及びdを組み合わせて、i)V-Cエントリーベクター及びJドナーベクターに存在する全てのIIS型制限酵素認識及び切断部位を切断するIIS型制限酵素並びにii)DNAリガーゼ酵素と反応させて、iii)組合せミックスを温度制御反応に供する工程と、
f.工程e.で得られる反応生成物で、プラスミド複製能力を持つ選択可能な宿主生物を形質転換する工程と、
g.宿主生物の選択を行って、V-Cエントリーベクター骨格内の全長の再構成されたTCR ORFを得る工程と
を含み、a)は、当業者に公知のシーケンシング方法により行われ、4つ全ての必要な遺伝子エレメントを同定するために十分な配列の長さ及び質を得ることができ、b)及びc)は、必要なベクターを含むTORESライブラリから選択され、d)は、デノボに合成されるか、又はodeCDR3ライブラリから選択され、e)は、単一反応槽で行われる。
【0058】
適切なV-Cエントリーベクター、Jドナーベクター及びodeCDR3を選択するために、標的TCR配列を、対応するTCR鎖についてのV、C及びJ遺伝子セグメントのライブラリに対して整列させて、標的鎖のV、C及びJセグメント使用を決定した。この配列アラインメント及び解析工程は、CDR3コーディング配列の定義、よって、odeCDR3配列の定義も許容する。よって、全体として、このような配列解析は、TCR鎖再構成のためのV-Cエントリーベクター及びJドナーベクターの選択を許容する。この解析は、各鎖再構成反応のためのodeCDR3の合成も許容する。
IIS型消化及びDNAリガーゼ依存性ライゲーション(工程e)を単独反応で行うことが望ましい。このことは、処理工程を最小限にし、幾つかのユニークオーバーハングが単一酵素により作製され、よってJドナーベクター反応中間体及びodeCDR3の、V-Cエントリーベクター骨格への効率的な定方向クローニングを維持するように認識配列の外側を切断するIIS型制限酵素を用いる、システムの設計により可能になる。
或いは、IIS型制限消化及びDNAライゲーションは、逐次的な手順で行ってよい。
【0059】
TORESの一般的な用途の一例は、TRA/TRB TCR鎖対の逆転写及びPCRベースの増幅と、そのあとのサンガーシーケンシングのための、ヒト組織からの抗原特異的=T細胞の単一細胞蛍光標示式細胞選別(FACS)の状況において例示される。これは、一般的に適用可能なワークフローであり、ここで、任意の組織を任意の有顎脊椎動物からのT細胞の供給源とすることができ、細胞を表現型の特徴に基づいて選別できる。選別された単一細胞は、pHLA多量体反応剤を用いて抗原特異性について染色される必要がない。
用いられるTCRシーケンシングアプローチは、TCR ORFの上記のように定義する遺伝子特徴が配列情報に基づいて定義できるように十分に高品質の配列情報が得られる限り、いずれの特定の方法又は技術にも限定されない。
【0060】
天然型TCR鎖対をシーケンシング及び同定できるように単一細胞を分けるためのFACSの使用は、多重特異性抗体パネルを用いて収集できる正確で豊富な表現型情報のために、強力な方法である。しかし、エマルジョンPCR、微小流体細胞カプセル化を用いるデジタルPCRアプローチ、物理的分配基板を用いる液滴デジタルPCRを含む他の方法が、細胞を分配するために存在する。
供給源材料から天然型TCR対を得ることが一般的に望ましい。なぜなら、TCR対の両方の鎖が、HLA-抗原結合及び認識に寄与するからである。しかし、設定された特異性に対する単一鎖のハイスループットスクリーニングのように、単一の鎖だけの回収が望まれる場合がある。このような場合、TCRは、非分配細胞から増幅及び/又はシーケンシングしてよい。
【0061】
多様化配列を有する全長TCR ORFを作製するためにTORESを使用する方法
TORESシステムは、幾つかの系統化された形態において多様化された全長TCR ORFを作製するために理想的に適する。このような系統的多様化は、TCR鎖についての親和性及び/又は機能成熟ワークフローに適用できる。標的TCR鎖配列のこのような多様化は、実施例5に詳しく記載する。
このようなTCR ORF配列多様化方法は、再構成反応と同じ全般的なスキームに従う。多様化は、単一のバリアントTCR ORFが反応当たり作製される多重並列再構成反応で行うことができる。しかし、ほとんどのシナリオでは、単一反応でバリアントTCR ORFのプールを作製することが望ましい。これらのアプローチの各々は、各遺伝子成分(V-Cエントリーベクター、Jドナーベクター、odeCDR3)の1以上の多重バリアントを再構成反応に提供することにより達成される。
実施例5に記載するように、TCR ORFは、規定された位置的配列多様性を有するodeCDR3のプールを加えることにより、CDR3領域にて系統的に多様化できる(
図3)。
【0062】
よって、CDR3領域におけるTCR ORF多様性を達成するためにTCRオープンリーディングフレームを選択及び再構成する方法は:
a.TCRオープンリーディングフレーム配列を得る工程であって、前記配列情報が、i)可変遺伝子セグメント使用、ii)定常遺伝子セグメント使用、iii)連結遺伝子セグメント使用、iv)可変遺伝子セグメント境界から連結遺伝子セグメント境界にまたがる全長CDR3配列を同定するために十分である工程と、
b.工程a.i)及びa.ii)でそれぞれ同定される可変及び定常遺伝子セグメントに対応するV-Cエントリーベクターを選択する工程と、
c.工程a.iii)で同定される連結遺伝子セグメントに対応するJドナーベクターを選択する工程と、
d.バリアント配列組成を有する工程a.iv)で同定されるCDR3配列に対応する2つ以上のodeCDR3を作製する工程と、
e.b、c及びdを組み合わせて、i)V-Cエントリーベクター及びJドナーベクターに存在する全てのIIS型制限酵素認識及び切断部位を切断するIIS型制限酵素並びにii)DNAリガーゼ酵素と反応させて、iii)組合せミックスを温度制御反応に供する工程と、
f.工程e.で得られる反応生成物で、プラスミド複製能力を持つ選択可能な宿主生物を形質転換する工程と、
g.宿主生物の選択を行って、V-Cエントリーベクター骨格内の全長の再構成されたTCRオープンリーディングフレームを得る工程と
を含み、a)は、当業者に公知のシーケンシング方法により行われ、4つ全ての必要な遺伝子エレメントを同定するために十分な配列の長さ及び質を得ることができ、b)及びc)は、必要なベクターを含むTORESライブラリから選択され、d)は、デノボに合成されるか、又はodeCDR3ライブラリから選択され、e)は、単一反応槽で行われる。
【0063】
このような方法は、全てのodeCDR3バリアントを単一反応にプールして、配列多様化プールを作製することにより達成できるが、各odeCDR3バリアントを並行反応に供することによっても等しく達成され得る。
バリアントodeCDR3は、当業者に公知の様々な方法により作製できる。odeCDR3縮重/多様性の位置及び程度の選択は、単一の位置での単一残基の変化から、odeCDR3の長さでの完全縮重配列までの範囲であり得る。
TCR ORFは、単一odeCDR3の提供によりCDR3領域を維持するが、2つ以上のV-Cエントリーベクター及び/又はJドナーベクターを再構成反応に提供することによりV、C及びJセグメントを多様化することにより、系統的に多様化できる(
図4、5及び6)。
【0064】
よって、多様化V、C及び/又はJセグメント使用を有するTCRオープンリーディングフレームを選択及び再構成する方法は:
a.TCRオープンリーディングフレーム配列を得る工程であって、前記配列情報が、i)可変遺伝子セグメント使用、ii)定常遺伝子セグメント使用、iii)連結遺伝子セグメント使用、iv)可変遺伝子セグメント境界から連結遺伝子セグメント境界にまたがる全長CDR3配列を同定するために十分である工程と、
b.工程a.i)及びa.ii)でそれぞれ同定される可変及び定常遺伝子セグメントに対応しない2つ以上のV-Cエントリーベクターを選択する工程と、
c.工程a.iii)で同定される連結遺伝子セグメントに対応しない2つ以上のJドナーベクターを選択する工程と、
d.工程a.iv)で同定されるCDR3配列に対応するodeCDR3を作製する工程と、
e.b、c及びdを組み合わせて、i)V-Cエントリーベクター及びJドナーベクターに存在する全てのIIS型制限酵素認識及び切断部位を切断するIIS型制限酵素並びにii)DNAリガーゼ酵素と反応させて、iii)組合せミックスを温度制御反応に供する工程と、
f.工程e.で得られる反応生成物で、プラスミド複製能力を持つ選択可能な宿主生物を形質転換する工程と、
g.宿主生物の選択を行って、V-Cエントリーベクター骨格内の全長の再構成されたTCRオープンリーディングフレームを得る工程と
を含み、a)は、当業者に公知のシーケンシング方法により行われ、4つ全ての必要な遺伝子エレメントを同定するために十分な配列の長さ及び質を得ることができ、b)及びc)は、必要なベクターを含むTORESライブラリから選択され、d)は、デノボに合成されるか、又はodeCDR3ライブラリから選択され、e)は、単一反応槽で行われる。
【0065】
このような方法は、全てのV-Cエントリーベクター及び/又はJドナーベクターバリアントを単一反応にプールして、配列多様化プールを作製することにより達成できるが、各ベクターバリアントを並行反応に供することによっても等しく達成され得る。
与えられたライブラリからの各V-Cエントリー及びJドナーベクターを選択して、V、C及びJ遺伝子セグメントを完全にカバーできる。
上記のCDR3並びにV、C及びJ多様化のいずれの組合せを用いても、多様化TCR ORFのプール又はライブラリを作製できる。
このシステムを用いて、天然型V、C及びJ遺伝子セグメント使用を完全にカバーし、規定されたCDR3特徴を有するTCR ORFの完全合成ライブラリを作製できる。
【0066】
再構成及び多様化方法に関するTORESの特徴
上記のように、単一IIS型制限酵素を用いる組立て反応を行うことが望ましい。このことは、制限酵素の使用を節約し、IIS型作用の性質、並びに二成分ベクターシステムにおけるユニーク一本鎖オーバーハング及びodeCDR3の設計により可能になる。
或いは、4つまでのIIS型制限酵素認識配列が、V-Cエントリーベクター及びJドナーベクターの4つのIIS型認識部位にわたる。
TCR ORF生成物の効率的なクローニングのために:
a.反応生成物の制限酵素消化を行って、親のV-Cエントリーベクターを消去すること、
b.条件的殺菌性因子選択を行って、親のV-Cエントリーベクターで形質転換されたコンピテントな宿主を排除すること、及び/又は
c.レポーター同定により、親のV-Cエントリーベクターで形質転換された宿主細胞の選択を行うこと
から選択される少なくとも一工程のネガティブ選択を、TORESを用いる全長TCR ORFの組立て中に行い、ここで、ネガティブ選択を用いて、IIS型酵素により未消化のまま残ったか又は消化の後に親の形に再びライゲーションされた親のV-Cエントリーベクターを排除する。
V-Cエントリーベクター骨格を考えると、親のV-Cエントリーベクターの排除は重要であり、よってこの骨格が有するポジティブ選択マーカーを、全長TCR ORF反応生成物を含むベクターのポジティブ選択に用いる。
【0067】
この関係において、ネガティブ選択は、V-Cエントリーベクターから切り取られた反応副生成物内で設計された制限酵素部位を用いて行われる(
図2d)。このネガティブ選択手順は、実施例3に記載する。
上記のネガティブ選択方法のいずれか1つ又は組合せを用いて、最終のクローニングされた生成物から親のV-Cエントリーベクターを排除できる。クローニングされた反応生成物の効率的な回収のためにクローニング効率が十分に高いとみられるならば、このようなネガティブ選択手順は省略してよい。
形質転換宿主生物におけるクローニングされた全長TCR ORF含有ベクターの選択が、最終のクローニングされた生成物を得るために必要である。このような選択は、当業者に公知である。
【0068】
宿主生物は、誘導されたか又は天然に形質転換能力を持つ細菌であり、V-Cエントリーベクター骨格内に含まれる全長TCR ORFを含む形質転換体の選択は、抗生物質選択を含む。このことは、形質転換された細胞が存在する培養系に抗生物質を加えることを必然的に伴い、この抗生物質に対する耐性は、V-Cエントリーベクター骨格内の第1のポジティブ選択マーカーである遺伝子によりコードされる。
或いは、形質転換体が存在する培養系の栄養要求性因子がポジティブ選択の形であってよく、ここで、栄養要求性補完は、V-Cエントリーベクター骨格内でコードされる遺伝子生成物により与えられる。上記のポジティブ選択の組合せを用いてよい。
【0069】
V-Cエントリーベクター及びJドナーベクターライブラリ
選択されたTCR ORFの再構成又は多様化を行うためのTORESの効率的な稼動のために、V-Cエントリーベクター及びJドナーベクターライブラリの再構築が必要である。各TCR鎖の形について特異的なこのライブラリから、odeCDR3配列を補完した場合に、標的TCR ORF配列のV/J/C使用を満足するような選択が行われるのである。
V-Cエントリー及びJドナーベクターライブラリは、TCRを有する生物の全ての生殖系列TCR V/J/C遺伝子セグメントを含むように構築してよい。このようなライブラリ
は、実施例1に示すTRB遺伝子座特異的TORESのように、V-Cエントリーベクター内に全てのV-C組合せを含んでもよく、このライブラリは、各可変セグメントに対する両方の定常遺伝子セグメントを有して複製される。
【0070】
V-Cエントリー及びJドナーベクターのライブラリは、コードされるタンパク質の翻訳されたアミノ酸配列が、生殖系列遺伝子セグメントによりコードされるタンパク質配列に対して修飾されないように、V/J/C遺伝子セグメントを含んでよい。
このようなライブラリは、望ましくないIIS型認識配列、又はポジティブ及びネガティブ選択エレメントを有さないライブラリを作製するような、基礎の核酸配列における変化を許容する。基礎の核酸配列における変化は、再構成されたTCR鎖の最適な発現のためのコドン最適化のために用いることもできる。
或いは、V-Cエントリー及びJドナーベクターのライブラリは、コードされるタンパク質の翻訳されたアミノ酸配列が、生殖系列遺伝子セグメントによりコードされるタンパク質配列に対して修飾されるように、V/J/C遺伝子セグメントを含んでよい。
このようなライブラリは、異なる診断又は治療のための使用について最適化された特徴を有するTCRを構築するために用いることができる。V/J/C遺伝子セグメント内のフレームワーク残基又は領域における変化は、可溶性物質としてのTCRの発現のような様々なシナリオにおける発現又は安定性を増すために用いることができる。同様に、直接のHLA-抗原接触に関与しないフレームワークにおける変更は、TORESにより生成される再構成されたTCRのシグナル伝達能力を変更するために用いることができる。親和性タグ又は免疫原性配列も、下流の用途における再構成されたTCRの精製及び/又は検出を助けるように、フレームワーク内にコードされることができる。
【0071】
V-Cエントリー及びJドナーベクターライブラリは:
a.可変及び定常遺伝子セグメントの組合せをコードする1以上のV-Cエントリーベクターと、
b.J遺伝子セグメントをコードする1以上のJドナーベクターと、
所望により、
c.制限消化/ライゲーション反応中の遊離のために一本鎖オーバーハングを有するか、予め露出されている(pre-exposed)か又はIIS型制限部位に挟まれており、V-Cエントリーベクター及びJドナーベクターの一本鎖オーバーハングにマッチした1以上のodeCDR3又はodeCDR3の1以上のプールされたライブラリと、
所望により、
d.陽性対照odeCDR3と同様に、制限消化/ライゲーション反応中の遊離のために一本鎖オーバーハングを有するか、予め露出されているか又はIIS型制限部位に挟まれており、V-Cエントリーベクター及びJドナーベクターの一本鎖オーバーハングにマッチした1以上の標準化odeCDR3と、
所望により、
e.参照としての予め組立てられた全長TCR ORFと
の組合せを含むキットに組立てることができ、ここで、a)及びb)は、意図する用途のために適切な未改変又は改変アミノ酸配列を有して、標的生物からの遺伝子セグメントの要求される遺伝的多様性をカバーし、c)は、規定された又は多様化されたCDR3を有するTCR鎖の再構成のために用いられ、d)は、再構成反応における陽性対照として用いられ、e)は、該キットに含まれるV-Cエントリーベクター及びJドナーベクターライブラリを用いて再構成された全長TCR ORFの下流の用途において陽性対照として用いられる。
【0072】
第2の部分の装置インプットとしての第1の部分の装置アウトプットの定義
二部分装置全体の動作において、第1の部分(TORES)を用いて、規定される組込みベクターに関連付けて1以上のTCR鎖を作製する。TCRは、ヘテロ二量体複合体であるので、TORESが、TCR鎖対の各鎖についての2つの並行する組立てサブシステムを通常含む。よって、二部分装置の第1の部分としてのTORESは、各々がTCR鎖対の一方の鎖又はそのライブラリをコードする2つの組込みベクターを含む2つのアウトプットを作製する。TORESシステムの生成物成分2C及び2Eは、成分1AのV-Cエントリー骨格において提示される組込みベクターである。
二部分装置の第1の部分からのこれらのアウトプットは、二部分装置の第2の部分への直接のインプットとして用いられる(
図1)。これらの第1の部分からのベクターアウトプット及び第2の部分へのインプットを、成分2C及び2Eと呼ぶ。これらのインプットの各々を、eTPC(成分2A)内でコードされるそれぞれゲノム受容部位成分2B及び2Dと対にして、2つの独立組込みカップルを形成する。
組込みカップルのこの対は、各組込み事象がTCR対の各鎖について単一TCR ORFだけを確実にもたらし、それにより、TCR表面タンパク質(TCRsp)の単一種を提示する標準化されたeTPC(eTPC-tと呼ぶ)が優先的に得られるように、互いに独立して単離される。
【0073】
eTPCS:二部分装置の第2の部分
多成分eTPCシステム(eTPCS)を、
図1の「パート2」に示す。多成分eTPCSは、装置の第1の部分から得られる2つのTCRコーディング組込みベクター、成分2C及び2Eと対にされる2つのゲノム受容部位、成分2B及び2Dを含む成分2Aと呼ばれる第1の成分eTPCを含む。全体として、TCR鎖の相補対を、組込みベクター(成分2C及び2E)を介してゲノム受容部位(成分2B及び2D)に導入することにより、eTPC(成分2A)を、TCR表面タンパク質(TCRsp)を発現するバリアントeTPC(eTPC-tと呼)に変換する(
図8)。
eTPC、すなわち成分2Aは、システムの全ての他の成分が関係する多成分システムの基本成分である。よって、eTPCは、天然型である又は操作された或る特徴を含み、これらにより、eTPCは、被分析物eTPC-t集団及びその使用を創出するために用いるのに適切になる。
【0074】
eTPC、成分2Aは、
i.TCRアルファ、ベータ、デルタ及びガンマ鎖の内因性発現を欠き、
ii.細胞がTCR鎖の相補対を発現する場合にのみ細胞の表面で条件的に提示されるCD3 タンパク質を発現し、
iii.各部位にて1つの被分析物TCRアルファ、ベータ、デルタ又はガンマ鎖をコードする単一ORFの組込みのためのゲノム受容部位として、成分2B及び2Dと呼ばれる更なる改変を含み、
ここで、i)は、前記発現を欠く天然に存在する細胞集団の選択により得ることができるか、又はそのような発現を欠くように操作されてよく、ii)は、前記発現を含む天然に存在する細胞集団の選択により得ることができるか、又はそのような発現を含むように操作されてよく、iii)は、eTPCのゲノムに固有の配列を用いることにより達成できるか、又は遺伝子工学の手段により導入してよい。
【0075】
天然に存在する細胞集団からのTCRアルファ、ベータ、デルタ及びガンマ鎖を欠くeTPC細胞候補の選択は、当該技術において公知の方法により達成できる。TCRアルファ、ベータ、デルタ及びガンマ鎖に特異的な親和性反応剤を用いる標的細胞の染色、並びに細胞TCRアルファ、ベータ、デルタ及びガンマ鎖の選択がこれを直接達成できる。
TCRアルファ、ベータ、デルタ及びガンマ鎖発現を欠くようなeTPCの操作は、非標的化又は標的化手段により達成できる。細胞の非標的化変異誘発は、細胞に化学的、放射線又はその他の変異原を負荷し、次いで、標的TCRアルファ、ベータ、デルタ及びガンマ鎖の発現を欠く細胞を選択することにより達成できる。ゲノム遺伝子座の標的化変異は、限定されないが:
i.ジンクフィンガーヌクレアーゼ、
ii.CRISPR/Cas9媒介標的化、
iii.合成転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)
による部位特異的変異誘発を含む異なる手段により達成でき、ここで、前記部位特異的ヌクレアーゼは、部位特異的二本鎖DNA切断を誘発して、標的遺伝子座でのエラープローンDNA修復の機会を増やし、その後、変異細胞を、TCRアルファ、ベータ、デルタ及びガンマ鎖発現を欠く細胞の選択により得る。
【0076】
CD3並びに成分2B及び/又は2Dの組込みのオプションは、当業者に公知であるが、相同性配向型組換え(HDR)及び/又は無作為組込み法を含んでよく、ここで、HDRは、HDRが生じるゲノム遺伝子座の標的化変異により促進でき、それらに限定されないが:
i.ジンクフィンガーヌクレアーゼ、
ii.CRISPR/Cas9媒介標的化、
iii.合成転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)
による部位特異的変異誘発を含む異なる手段により達成でき、ここで、前記部位特異的ヌクレアーゼは、標的遺伝子座にてHDRによる部位特異的DNA修復を誘発する。このような事象の後に、一部の細胞は、組み込まれたHDRベクターを有し、以下の任意の組合せにより選択及び/又は決定できる:
iv.非破壊的表現型発現解析
v.破壊的表現型発現解析
vi.遺伝子解析。
ここで、iv及びviは、成功したゲノム組込み事象の選択及び決定のための好ましい方法である。
或いは、ウイルスベクターを用いて、部位特異的又は非特異的様式で必要な成分を送達することができる。
【0077】
eTPC成分2Aは、分析ワークフローにおいて被分析物抗原と共に用いるように設計されていことを考えると、好ましい態様では、eTPCは、このような分析に干渉するであろう因子を提示するeTPCを最小限にする特徴を含む。
eTPC成分2Aは、所望により、被分析物抗原提示複合体(aAPX)及び/又は被分析物抗原性分子(aAM)の少なくとも1ファミリーの内因性表面発現を欠き、表面発現の欠如は、標的被分析物抗原の適合させた分析(matched analysis)における干渉を最小限にするように選択される。
aAPXのファミリーは、以下のいずれであってもよい:
i.HLAクラスI
ii.HLAクラスII
iii.非HLA抗原提示複合体。
【0078】
aAMは:
i.被分析物抗原性分子ORFから翻訳されたポリペプチド又はポリペプチドの複合体
ii.被分析物抗原性分子ORFから翻訳されたポリペプチドに由来するペプチド
iii.成分Aプロテオームの変更に由来するペプチド
iv.成分Aプロテオームの変更に由来するポリペプチド
v.成分Aメタボロームの変更に由来する代謝産物
から選択される。
成分2A eTPCは、所望により、T細胞共受容体を更に含んでよく、このような特徴により、被分析物eTPCの被分析物APCとの確固とした又は変動するコミュニケーションの形を許容し、調整可能なコミュニケーションは、特異的被分析物TCRsp及び/又は被分析物抗原の同定又は特徴決定のために適切である。
【0079】
本発明の状況において、eTPC成分2Aは、所望により、CD4及び/又はCD8を発現してよく、ここで、CD4又はCD8の発現は、それぞれHLAII及びHLAI型の結合aAPXにeTPCを限定する。
eTPC成分2Aは、所望により、CD28及び/又はCD45を発現してよく、ここで、CD28及びCD45は、シグナル伝達に対するポジティブフィードフォワード効果によりシグナル感度に寄与するが、これらは、発現された被分析物TCRspによりシグナル伝達に関係するので、シグナル伝達に対するネガティブフィードバック効果によりシグナル特異性にも寄与する。
【0080】
成分2A eTPCは、所望により、細胞表面接着分子成分の導入又は内因性細胞表面接着分子の除去を更に含んで、それぞれ、被分析物APCとのeTPCの結合及び免疫シナプスの形成を促進し、又はAPCが関与する分析ワークフロー内での堅固な結合及び有害な細胞クラスタリングの形成を回避することができる。
成分2Aに更なるORFとして導入できるか又は成分2Aから遺伝子的に除去され得るこのような接着分子は、接着タンパク質のインテグリンファミリーから選択できる。
eTPCは、eTPC:Aシステムを用いる分析ワークフロー(下記参照)内で、被分析物抗原反応剤の検出可能な結合により、又は同族抗原による刺激に対する天然型の若しくは操作されたeTPC中心の応答により、同族被分析物抗原の結合をアッセイするように設計されている。よって、発現されたTCRspの刺激からのシグナル伝達応答についての標準化されたレポーター読み出しがあることが望ましい。
eTPC成分2Aは:
i.少なくとも1つの天然型プロモータ及び/又は少なくとも1つの合成プロモータと少なくとも1つのレポーターとを含む単一成分合成構築物
ii.少なくとも1つの天然型プロモータ及び/又は少なくとも1つの合成プロモータと少なくとも1つのレポーターとで設計された多成分合成構築物
から選択される2Fとよばれる成分である合成ゲノムTCR刺激応答エレメントを更に含むことができ、ここで、i及び/又はiiの活性化は、合成経路、天然型経路又はその組合せから選択される少なくとも1つのシグナル伝達経路に依存する。
【0081】
eTPCの一部としてゲノム受容部位と対をなすTCRをコードする組込みベクターは、成分2C及び2Eと呼ばれる。
これらの成分2C及び2Eの各々は、単一TCR鎖ORFをコードし、eTPCを、TCRspを発現するeTPC-tに変換するために要求される。
ベクターである成分2C又は2Eの各々は、ゲノム受容部位2B又は2Dのいずれかをそれぞれ標的にするように設計されている、コードされるTCR ORFを挟む5'及び3'遺伝子エレメントを有する。これらの組込みカップルは、2B-2C又は2D-2E組込みカップリング関係により決定されるように、1つのTCR ORFだけが各ゲノム受容部位に確実に挿入されるように互いにほどよく遮蔽されていなければならない。
上記のように、成分2C及び2Eは、装置の第1の部分であるTORESに由来する。よって、第1の部分ベクター骨格構造の特徴は、成分2A eTPCのゲノム受容部位である成分2B及び2Dにマッチしている。
上記のeTPCに含まれる組込みカップルの対は、一旦組み込まれたらゲノム受容部位から単一TCR鎖を除去するための部位の再利用を許容する特徴を有することが好ましい。
TCR ORFと非TCRsp発現構築物との間のこのようなサイクリングは、TCRの単一鎖を発現する中間体を作製するように、よってTCRsp発現がないように、eTPC-tにおいて発現される単一TCR ORFの交換を許容できる。この中間体は、eTPC-xと呼ばれる(
図7を参照されたい)。このようなリサイクリングは、RCMEを行うようなリコンビナーゼ酵素を用いて達成できる。
ゲノム受容部位リサイクリングは、その他のリコンビナーゼ様酵素の使用、トランスポサーゼエレメントの使用、及び/又は部位特異的エンドヌクレアーゼを用いるか若しくは用いない相同組換えの使用によっても達成できる。
【0082】
ゲノム受容部位である成分2B及び2Dは:
i.リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)のために設計された合成構築物
ii.部位特異的相同組換えのために設計された合成構築物
から選択でき、ここで、i)は、RMCEのためのゲノム受容部位の好ましい形である。RMCE法は、成分2B及び2Dが各々遮蔽された特異性を有するように、個別のリコンビナーゼ酵素に特異的な選択された異種特異的部位を採用してよい。
ゲノム受容部位である成分2B及び2Dは、以下の遺伝子エレメント:
i.異種特異的リコンビナーゼ部位
ii.相同アーム
iii.真核生物プロモータ
iv.真核生物条件的調節エレメント
v.真核生物ターミネータ
vi.選択マーカー
vii.スプライスアクセプター部位
viii.スプライスドナー部位
ix.タンパク質ノンコーディング遺伝子
x.インスレータ
xi.可動遺伝子エレメント
xii.メガヌクレアーゼ認識部位
xiii.配列内リボソーム進入部位(IRES)
xiv.ウイルス自己切断型ペプチドエレメント
xv.コザックコンセンサス配列
の少なくとも1つから構成され、ここで、少なくともi)又はii)が含まれる。
【0083】
好ましいゲノム受容部位は、以前に記載したエレメントのリストからの以下の選択されたエレメントを用いる2つの異なる配置から構成される。
第一の配置は、RMCE組込みにより、1つのTCR鎖と組込みの選択マーカーとをコードする単一ORFを受け入れるためであり、ここで、該配置は
5'-[A] [B] [C] [D] [E] [F]-3'
であり、ここで、
A)は、エレメントiii)構成性又は誘導性真核生物プロモータであり、
B)は、エレメントi)異種特異的リコンビナーゼ部位1であり、
C)は、エレメントxv)コザックコンセンサス配列であり、
D)は、エレメントvi)FACS及び/又はMACS適合性コード化タンパク質マーカーであり、
E)は、エレメントi)異種特異的リコンビナーゼ部位2であり、
F)は、エレメントv)真核生物ターミネータである。
【0084】
第二の配置は、RMCE組込みにより、1以上のTCR鎖及び/又は組込みのための選択マーカーをコードする2つのORFを受け入れるためであり、ここで、該配置は:
5'-[A] [B] [C] [D] [E] [F] [G] [H] [I]-3'
であり、ここで、
A)は、エレメントiii)構成性又は誘導性真核生物プロモータであり、
B)は、エレメントi)異種特異的リコンビナーゼ部位1であり、
C)は、エレメントxv)コザックコンセンサス配列であり、
D)は、エレメントvi)FACS及び/又はMACS適合性のコード化タンパク質マーカー1であり、
E)は、エレメントv)真核生物二方向転写ターミネータであり、
F)は、エレメントvi)FACS及び/又はMACS適合性コード化タンパク質マーカー2であり、
G)は、エレメントxv)コザックコンセンサス配列であり、
H)は、エレメントi)異種特異的リコンビナーゼ部位2であり、
I)は、エレメントiii)構成性又は誘導性真核生物プロモータであり、
更に、この第二の配置において、エレメントF、G及びIは、アンチセンス方向にコードされる。
【0085】
成分2C及び2Eは、以下の遺伝子エレメント:
i.異種特異的リコンビナーゼ部位
ii.相同アーム
iii.真核生物プロモータ
iv.真核生物条件的調節エレメント
v.真核生物ターミネータ
vi.選択マーカー
vii.スプライスアクセプター部位
viii.スプライスドナー部位
ix.タンパク質ノンコーディング遺伝子
x.インスレータ
xi.可動遺伝子エレメント
xii.メガヌクレアーゼ認識部位
xiii.配列内リボソーム進入部位(IRES)
xiv.ウイルス自己切断型ペプチドエレメント
xv.コザックコンセンサス配列
xvi.組込みの選択マーカー
xvii.抗生物質耐性カセット
xviii.細菌複製起点
xix.酵母複製起点
xx.クローニング部位
の少なくとも1つで構成される。
【0086】
好ましい遺伝子組込みベクター成分2C及び成分2Eは、以前に記載したエレメントのリストからの以下の選択されたエレメントを用いる2つの異なる、可能性のある配置から構成される。
第一の配置は、RMCE組込みによる、1以上のTCR鎖及び/又は組込みの選択マーカーをコードする単一ORFの送達のためであり、ここで、該配置は
5'-[A] [B] [C] [D] [E]-3'
であり、ここで、
A)は、エレメントi)異種特異的リコンビナーゼ部位1であり、
B)は、エレメントxv)コザックコンセンサス配列であり、
C)は、エレメントxx)TCR鎖及び/又はエレメントxvi)組込みの選択マーカーをコードする単一ORFのクローニング部位であり、
D)は、エレメントi)異種特異的リコンビナーゼ部位2であり、
E)は、非特異的配向でのエレメントxvii)抗生物質耐性カセット及びエレメントxviii)細菌複製起点であり、
更に、エレメントviii及び/又はxivを、複数のTCR鎖及び/又はエレメントxviを一緒に連結するために用いてよい。
【0087】
第二の配置は、RMCE組込みによる、1つのTCR鎖及び/又は組込みの選択マーカーをコードする1以上のORFの送達のためであり、ここで、該配置は:
5'-[A] [B] [C] [D] [E] [F]-3'
であり、ここで、
A)は、エレメントi)異種特異的リコンビナーゼ部位1であり、
B)は、エレメントxv)コザックコンセンサス配列であり、
C)は、エレメントxx)少なくとも1つのTCR鎖及び/又はエレメントxvi)組込みの選択マーカーをコードする、真核生物ターミネータを有する、2つ以上のORFの導入のためのクローニング部位であり、
D)は、エレメントxv)コザックコンセンサス配列(アンチセンス方向)であり、
E)は、エレメントi)異種特異的リコンビナーゼ部位2であり、
F)は、特に方向が特定されないエレメントxvii)抗生物質耐性カセット及びエレメントxviii)及び/又は細菌複製起点であり、
更に、エレメントviii及び/又はxivを、多重TCR鎖及び/又はエレメントxviを各ORF内で一緒に連結するために用いてよい。
eTPC-tからeTPC-xへの変換(
図7及び10を参照されたい)のための好ましい遺伝子組込みベクターである成分2Y及び成分2Zは、上記の2C及び2Eと同じ組込みベクターの要件を含み得るが、いずれのTCR鎖ORFもコードせず、好ましくは組込みのマーカーをコードする。
【0088】
eTPC-x及びeTPC-tをコンパイルするための組込みカップルの使用
上記の多成分システムは、様々な様式で用いて、eTPC:Aシステムの分析又は準備のためのワークフロー内において被分析物TCRspを被分析物抗原に提示することに貢献する、別個の形の被分析物eTPC集団又はそのライブラリを調製できる。
予測可能なコピー数の1以上のORFのゲノム受容部位への効率的な組込みは、被分析物eTPC-t集団が迅速に調製及び特徴決定され得る標準化eTPCSの動作のために非常に有利である。よって、ゲノム受容部位及びカップリングさせた組込みベクターは、eTPCSの機能にとって重要である。成分2B及び成分2Dが、単一対のみの正しい組込み及び送達の高い可能性で、相補TCR鎖の単一対の導入が迅速で、繰り返し可能である上記のeTPC-tの調製方法に適することも望ましい。eTPC-x及び/又はeTPC-tを生成するための遺伝子組込みベクターとeTPCとの組合せは、幾つかの形態で達成できる(
図7)。創出されるeTPC-t集団は、それを用いて候補抗原を分析する幾つかの起源から被分析物TCR鎖を誘導する必要がある。
【0089】
TORES反応において用いる成分を規定するための被分析物TCR鎖配列情報の起源は:
i.初代T細胞からのTCR鎖ORF配列のペア型クローニング(paired cloning)
ii.初代T細胞からのTCR鎖ORF配列の非ペア型クローニング
iii.合成TCR鎖ORF配列
から導くことができ、ここで、i)は、胸腺選択を理由として、自己aAPX及び/又はaAPXカーゴに対して全般的に交差反応性である可能性が低い天然型TCRspの発見のために好ましく、ii)は、候補TCR親和性反応剤を同定するために用いることができ、iii)は、TCR親和性反応剤の親和性成熟又はTCR鎖のデノボ創出において用いることができる。
2つの組込みカップルを含む多成分システムを用いて、相補TCR鎖対の一方の鎖をコードする1つのORFと各々組み合わせた成分2C及び2Eを提供して、両方の被分析物TCR鎖がゲノム受容部位である成分2B又は2Dに組み込まれて2B'及び2D'を創出することにより、成分2AからeTPC-tを調製できる。得られる株化細胞は、提供されたTCR対を発現し、細胞表面にてTCRspとして提示される。eTPC-tは、2つの相補TCR鎖を同時に組み込んでTCRspを形成することにより調製できる(
図8)。eTPC-tは、2つの相補TCR鎖を段階的に組み込んで、eTPC-x中間体を介してTCRspを形成することにより調製できる(
図9)。
【0090】
eTPC-xは、組込みのマーカーをコードするか又はORFをコードしない更なる組込みベクターの一方である成分2Y又は2Zを提供することにより、eTPC-tから調製できる(
図10)。成分2Y又は2ZをeTPC-tと組み合わせることにより、いずれかの部位が交換されて、eTPC-xを発現する単一TCR鎖が得られる。
eTPCからの被分析物eTPC-x及び/又はeTPC-t集団の調製の上記の例において、多成分システム(eTPCS)は、規定された方法で既知の被分析物TCR鎖を提供して、規定されたTCRspを発現する被分析物eTPCの分離した集団を調製するために用いられる。このようなプロセスを多数回繰り返して、分析又は調製用ワークフローへのインプットとしてのeTPC-x及び/又はeTPC-tのライブラリを構築できる。代替のアプローチは、遺伝子組込みベクターと組み合わせた被分析物TCR鎖のプールしたライブラリを取り、これらをショットガン様式で組み込んで、被分析物eTPC-tのプールしたライブラリを得ることであり、該ライブラリにおいて、各eTPC-tは、単一種のTCRspを発現するが、まとめてプールとして複数種のTCRspを提示する(
図11〜14を参照されたい)。このことは、被分析物抗原に対する候補TCRspの大きいライブラリを分析する場合に特に有用である。
【0091】
2つの組込みカップルを含むeTPCSを用いて、単一被分析物TCR鎖のプールをコードする複数のORFのライブラリと組み合わせた成分2Cを提供することにより、成分2Aから一工程でeTPC-tプールを調製して、各細胞内で各対が部位2Bに組み込まれて2B'を創出できる。同時に、成分2Cにおいて提供された第1のライブラリに相補的な単一被分析物TCR鎖のプールをコードする複数のORFのライブラリと組み合わせた成分2Eを、各細胞内で各被分析物相補的TCR鎖が部位2Dに組み込まれて2D'を創出するように、提供する。eTPC-tプールにおいて得られる各細胞は、相補被分析物TCR鎖の無作為化された単一選択を有して、プール内の各細胞がユニーク無作為化TCRspを発現するようにする。このようなプールされたライブラリは、C'及びE'に進むセットからの提供される相補TCR鎖の全ての可能な組合せを含み得る(
図11)。
2つの組込みカップルを含むeTPCSを用いて、以前に得られたe-TPC-xから一工程でeTPC-tプールを調製でき、ここで、部位2Bは2B'に変換され、単一被分析物TCR鎖を含む。eTPC-tは、提供される成分2Eライブラリの各TCR鎖が部位2Dに単一で組み込まれて2D'を創出するように、既に組み込まれた鎖に相補的な単一被分析物TCR鎖のプールをコードする複数ORFのライブラリと組み合わせた成分2Eを提供することにより調製する。eTPC-tプールにおいて得られる各細胞は、出発eTPC-xにより提供される被分析物TCR鎖と、相補被分析物TCR鎖の無作為化された単一選択とを有して、プール内の各細胞がユニークTCRspを発現するようにする。このようなアプローチは、相補TCR鎖対において固定した鎖に対して単一鎖を変動する影響について分析する場合に用いられる(
図12)。
【0092】
2つの組込みカップルを含むeTPCSを用いて、eTPC-xプールを調製してよい。eTPC-xは、相補鎖を割愛した単一被分析物TCR鎖のプールをコードする複数のORFのライブラリと組み合わせた成分2Cを提供することにより調製して、各細胞内で提供した成分2Cライブラリの各TCR鎖が、部位2Bに組み込まれて2B'を創出するようにする。eTPC-xにおいて得られる各細胞は、相補被分析物TCR鎖の無作為化された単一選択を有して、プール内の各細胞がユニーク単一TCR鎖を発現するようにする(
図13)。このようなアプローチは、以前の例と同様に第2の組込みカップルを介して組み込まれる単一又は複数の相補TCR鎖に対してアッセイするeTPC-xを調製する場合に用いられる(
図14)。
eTPC-x又はそのライブラリは、ターゲットアッセイにおいてTCRsp誘導体を迅速にスクリーニングするために、eTPC-xにおける、2B'に組み込まれたTCR ORFに相補的なTCR鎖ORFの一過性トランスフェクションのために用いることができる。
【0093】
被分析物抗原との被分析物eTPC-tの接触
本発明は、まとめてeTPC:抗原(eTPC:A)システムと呼ばれる分析装置のコンパイルのために、分析eTPC-t集団を導くために用いられる二部分装置を形成する2つの多成分システムを提供することに関する(
図24)。二部分装置内で、第1の部分は、組込みベクターの状況においてTCR ORFを導くために用いられ、これらを次いで第2の部分を含むマッチしたeTPCに挿入する。よって、二部分装置の作動は、成分1A、1B及び1Cの各々の1以上を用いて、1以上の成分2C及び2Eを導くことを必然的に伴い、これらを、少なくとも成分2B及び2Dを含む成分2Aと共に用いて、1以上のeTPC-tをコンパイルする。これらの被分析物eTPC-tを、次いで、1以上の被分析物抗原と分析eTPC:Aシステム内で組み合わせて、1以上のアウトプットを得る。被分析物抗原は、被分析物抗原提示細胞(APC)により、及び/又は可溶性若しくは固定化された親和性反応剤として提供されるか、及び/又は非細胞ベースの粒子(NCBP)上に提示される。
【0094】
被分析物抗原は、TCRがeTPC:Aシステムにおいて推定上結合できる任意の物体であり:
i.aAPX(被分析物抗原提示複合体)及び/又は
ii.aAM(被分析物抗原性分子)及び/又は
iii.aAPX:aAM(被分析物抗原性分子を提示する被分析物抗原提示複合体)及び/又は
iv.CM(非被分析物カーゴ分子)及び/又は
v.aAPX:CM(カーゴ分子を提示する被分析物抗原提示複合体)
であることができ、ここで、aAPXは、aAMを提示できる複合体であり、aAMは、TCRにより直接認識されるか又はaAPXに積載された場合にTCRにより認識される任意の分子であり、aAPX:aAMは、aAMを積載したaAPXであり、CMは、aAPXに積載され得るが、被分析物でないので、被分析物抗原提示細胞(APC)又はアッセイシステム自体に由来し得るカーゴ分子であり、aAPX:CMは、CMが積載されたaAPXである。
【0095】
これらの形の被分析物抗原は、eTPC:Aシステム内で異なる形態でeTPCに提示されることができ、
i.被分析物抗原提示細胞(APC)及び/又は
ii.可溶性又は固定化された親和性反応剤及び/又は
iii.非細胞ベースの粒子(NCBP)
として表されることができ、ここで、被分析物抗原提示細胞(APC)は、抗原をeTPC-tに対して提示できる任意のAPCとみなされ、親和性反応剤は、eTPC:AシステムにおいてeTPC-tの細胞表面でのTCRsp結合及び/又は刺激をプローブするための被分析物として調製される任意の反応剤とみなされる。このような反応剤は、しばしば、被分析物抗原性分子(aAM)、被分析物抗原提示複合体(aAPX)又はaAMを積載したaAPX(aAPX:aAM)である。aAPX:aAMの典型的な例は、TCRを染色するために用いられるpHLA-多量体反応剤(例えば「四量体」)である。この状況における親和性反応剤も、抗体又は同様の物体であり得る。非細胞ベースの粒子(NCBP)は、親和性反応剤と同様の様式で機能するが、これは、粒子が、被分析物抗原又はeTPC:Aシステム内においてeTPC-tの表面でのTCRsp結合について評価されるその他の物体であるからである。しかし、NCBPは、提示される被分析物抗原又はその他の結合物体そのまま又はその代理として識別子として機能する、遺伝的又はその他の情報を更に有することができるより大きい物体とみなされる。NCBPの典型的な例は、ファージディスプレイのシナリオにおけるバクテリオファージであり、ここで、ファージは、抗体断片抗原結合(FAB)をディスプレイし得る。ポジティブに標識されたeTPC-tは、ファージと共に回収でき、シーケンシングして、eTPC-tの表面にてTCRspに特異的なFABを同定できる。
【0096】
分析eTPC:Aシステムは、1以上の被分析物抗原と1以上のeTPC-t集団の選択で構成される(
図24)。被分析物eTPC-t集団は、上記の多成分システムを用いて調製される(
図1〜14)。eTPC:Aシステムは、被分析物抗原と被分析物eTPC-t集団との間の物理的接触を許容するフォーマットで提供され、ここで、このような接触は、1以上の被分析物抗原と1以上の被分析物eTPC-tのTCRspとの間の複合体形成を許容し、ここで、被分析物抗原は、以下:
vi.aAPX(被分析物抗原提示複合体)及び/又は
vii.aAM(被分析物抗原性分子)及び/又は
viii.aAPX:aAM(被分析物抗原性分子を提示する被分析物抗原提示複合体)及び/又は
ix.CM(非被分析物カーゴ分子)及び/又は
x.aAPX:CM(カーゴ分子を提示する被分析物抗原提示複合体)
のいずれかであり、ここで、被分析物抗原は、複合体形成がこのような複合体の安定化を導き得るように被分析物APCにより提示されるか、又は可溶性及び/若しくは固定化された親和性反応剤又はNCBPにより提示され、該複合体形成は、eTPC-tの観察可能な標識化及び/若しくは含まれる場合に成分2Fによる被分析物eTPC内のシグナル伝達の誘導、並びに/又は被分析物APCにおける観察可能なシグナルを導き、これは測定できる。
【0097】
本発明の状況において、eTPC:Aシステムは:
i.単一被分析物eTPC-tのインプット又は
ii.被分析物eTPC-tのプールされたライブラリのインプット
で構成され、以下:
iii.単一被分析物APCのインプット、又は
iv.単一被分析物親和性反応剤のインプット、又は
v.単一被分析物NCBPのインプット、又は
vi.被分析物APCのプールされたライブラリのインプット、又は
vii.被分析物親和性反応剤のプールされたライブラリのインプット、又は
viii.被分析物NCBPのプールされたライブラリのインプット
の1つと組み合わされる。
【0098】
緩衝液システムでの接触
被分析物APCと被分析物eTPC-tとの間の接触は、許容細胞培養又は緩衝液システムで行われ、ここで、前記システムは、被分析物APC及び被分析物eTPC-t細胞の両方の機能を許容する媒体を含む。
可溶性被分析物親和性、固定化された親和性反応剤及び/又は被分析物NCBPと被分析物eTPC-tとの間の接触は、許容緩衝システムで行われ、ここで、前記システムは、被分析物抗原及び被分析物eTPC-t細胞の両方の機能を許容する緩衝媒体を含む。
【0099】
親和性反応剤又はNCBPでのeTPC-tの標識化
二部分装置から得られる被分析物eTPC-tは、eTPC-tにより提示されるTCRspの特徴決定のために用いることができる。このような特徴決定は、被分析物eTPC-tが固定化された若しくは可溶性親和性反応剤又は非細胞ベースの粒子(NCBP)と接触して、eTPC-tが標識されるような様式で行うことができる(
図15)。
標識化は、フローサイトメトリ、顕微鏡観察、分光分析若しくは発光分析のような方法による標識の直接観察により、又は固定化された親和性反応剤若しくはNCBPでの捕捉により検出されることが考えられる。同様の様式で、親和性反応剤又はNCBPは、含まれるならばレポーターエレメントである成分2Fを刺激できる。成分2Fの刺激は、同定のためにeTPC-t及び/又は親和性反応剤若しくはNCBPの選択を可能にする(
図16)。
【0100】
シグナル応答定義
二部分装置から得られる被分析物eTPC-tは、被分析物TCRspを発現する被分析物eTPC-tの被分析物抗原に対するシグナル応答の特徴決定のために用いられ、ここで、このようなシグナル応答は、二値(binary)又は徐々に変化するもののいずれかであってよく、eTPC-tに固有(
図15、16及び17)及び/又は含まれるならばAPCに固有(
図18)として測定され得る。このようなシグナルは、フローサイトメトリ、顕微鏡観察、分光分析若しくは発光分析又は当業者に既知のその他の方法のような方法により検出できる。
【0101】
シグナル応答を有するAPCとの接触
被分析物APCは、eTPC:Aシステム内においてeTPC-tと接触することもできる。一般的に、応答は、eTPC-t内でレポートされるシグナルにより測定される(
図17)が、APC内でレポートされるシグナルにより測定することもできる(
図18)。
【0102】
一般的な方法-eTPC-tの選択
eTPC:A組合せシステムからのインプット被分析物eTPC-t又は被分析物eTPC-tのライブラリから1以上の被分析物eTPC-tを選択して、1以上の被分析物eTPC-tを得る方法であって、発現されるTCRspが1以上の被分析物抗原と結合する方法は:
i.1以上の被分析物eTPC-tと1以上の被分析物抗原とを組み合わせて、被分析物TCRspと被分析物抗原との間の接触をもたらすことと、以下の少なくとも1つ:
ii.もしあるならば、1以上の被分析物TCRspと1以上の被分析物抗原との間の複合体の形成を測定すること、及び/又は
iii.標識被分析物抗原からのシグナルを測定すること、及び/又は
iv.もしあるならば、1以上の被分析物TCRspと1以上の被分析物抗原との間の複合体の形成により誘導される被分析物eTPC-tによるシグナル応答を測定すること、及び/又は
v.もしあるならば、1以上の被分析物TCRspと1以上の被分析物抗原との間の複合体の形成により誘導される被分析物APCによるシグナル応答を測定することと、
vi.工程ii、iii、iv及び/又はvに基づく1以上の被分析物eTPC-tを選択することであって、選択が、ポジティブ及び/又はネガティブ測定により行われることと
を含み、ここで、i、iv及びvi又はi,v及びviは、好ましい仕組みを含む。
【0103】
一般的な方法-被分析物抗原の選択
インプット被分析物抗原又は被分析物抗原のライブラリから1以上の被分析物抗原を選択して1以上の被分析物抗原を得る方法であって、発現される被分析物抗原が、被分析物eTPC-tにより提示される1以上の被分析物TCRspと結合する方法は:
i.1以上の被分析物抗原と1以上の被分析物eTPC-tとを組み合わせて、被分析物抗原により提示される被分析物抗原と1以上の被分析物eTPC-tの被分析物TCRspとの間の接触をもたらすことと、
ii.もしあるならば、1以上の被分析物抗原と1以上の被分析物TCRspとの間の複合体の形成を測定することと、及び/又は
iii.標識被分析物抗原からのシグナルを測定することと、及び/又は
iv.もしあるならば、被分析物TCRspと被分析物抗原との間の複合体の形成により誘導される1以上の被分析物eTPC-tにおけるシグナル応答を測定することと、及び/又は
v.もしあるならば、1以上の被分析物TCRspと1以上の被分析物抗原との間の複合体の形成により誘導される被分析物APCによるシグナル応答を測定することと、
vi.工程ii、iii、iv及び/又はvからの1以上の被分析物抗原を選択することであって、選択が、ポジティブ及び/又はネガティブ測定により行われることと
を含み、ここで、i、iv及びvi又はi,v及びviは、好ましい仕組みを含む。
【0104】
シグナル応答についての一般的な方法
レポートされるシグナル応答に基づいてeTPC:A組合せシステムから被分析物eTPC-t及び/又は被分析物APC及び/又は親和性反応剤及び/又はNCBPを選択する方法は:
i.天然型シグナル伝達応答を決定することと、及び/又は
ii.eTPC-tが成分2Fを含むならば、及び/又はAPCが等価な合成レポーターエレメントを含むならば、合成シグナル伝達応答を決定することと
を含む。
APC及び/又はeTPC-tに固有の、誘導される天然型又は合成シグナル応答は、以下:
i.分泌された生体分子
ii.分泌された化学物質
iii.細胞内生体分子
iv.細胞内化学物質
v.表面発現生体分子
vi.被分析物APCに対する被分析物eTPC-tの細胞傷害性作用
vii.シグナル応答が被分析物APCにより誘導され、i〜vのいずれかの増加又は減少を検出することにより決定されるような被分析物APCに対する被分析物eTPC-tの傍分泌作用
viii.被分析物eTPC-tの増殖
ix.被分析物eTPC-tと被分析物APCとの間の免疫シナプス
の1以上の増加又は減少を検出することにより測定され、ここで、前記検出されるシグナル応答は、eTPC:A組合せシステム、及び/又は並行組立て組合せシステムの組立ての前の、被分析物APC及び/又は被分析物eTPC-tに固有の非誘導シグナル応答状態と比較され、ここで、被分析物APC及び/又は被分析物eTPC-tは、用いるeTPC:A組合せシステム内でシグナル応答を誘導しないことがわかっている対照被分析物抗原及び/若しくは被分析物TCR種並びに/又は可溶性被分析物抗原を提示し得る。
【0105】
標識化及び/又はシグナル応答による選択の方法
eTPC:A組合せシステムから、親和性反応剤又はNCBPによるeTPC-tの測定可能な標識化に基づいて被分析物eTPC-t及び/又は被分析物親和性反応剤及び/又は被分析物NCBPを選択する方法は:
i.親和性反応剤又はNCBPによるeTPC-tの標識化を決定する
ことを含み、
ii.天然型シグナル伝達応答を決定すること、及び/又は
iii.eTPC-tが成分2Fを含むならば、合成シグナル伝達応答を決定すること
も含んでよく、ここで、eTPC-tの標識化を検出することによりeTPC-t及び/又は親和性反応剤及び/又はNCBPを選択することは、親和性反応剤及び/又はNCBPに検出可能な標識を含ませることによる、親和性反応剤及び/又はNCBPによるeTPC-tの表面標識化の検出を含んでよい。このような検出可能な標識は、蛍光、発光、分光、化学、放射化学、又は親和性部分であってよい。よって、eTPC-tのこのような選択は、FACS、MACS又は等価なハイスループットスクリーニング及び選択方法に基づいて行ってよい。
【0106】
まとめ
eTPC:A組合せシステム内で、1以上の被分析物eTPC-t若しくは1以上の被分析物APCにおけるシグナル応答の測定、又は被分析物TCRspと被分析物抗原との間の複合体の形成により媒介され得るeTPC-tの標識化は、一次システムアウトプットの選択のために重要であり(
図24工程v)、ここで、一次システムアウトプットは、単一細胞若しくは細胞プール、及び/又は単一親和性反応剤若しくは親和性反応剤のプール、及び/又は単一NCBP若しくはNCBPのプールである。
細胞又は反応剤の選択は、接触させた被分析物APC若しくは被分析物eTPC-t細胞のいずれか及び/又は両方におけるレポートされるシグナル応答の存否に対して、或いは親和性反応剤若しくはNCBPでのeTPC-tの測定可能な標識化により行うことができる。
【0107】
eTPC:Aシステムからの一次システムアウトプットの取得
本発明は、被分析物eTPC-tが導かれる二部分装置の提供に関する。これらの被分析物eTPC-tは、次いで、上記のように、eTPC:Aシステムにより1以上の被分析物抗原と組み合わされて、1以上のアウトプットを得る。被分析物抗原は、被分析物抗原提示細胞(APC)により、及び/又は可溶性若しくは固定化された被分析物抗原として提供されるか、並びに/或いは非細胞ベースの粒子(NCBP)上に提示される。システムは、1以上の被分析物抗原と1以上のeTPC-t集団の選択で構成される(
図24)。eTPC:Aシステムは、被分析物抗原と被分析物eTPC-t集団との間の物理的接触を許容するフォーマットで提供され、ここで、このような接触は、1以上の被分析物抗原と1以上の被分析物eTPC-tのTCRspとの間の複合体の形成を許容し、ここで、被分析物抗原は、以下:
i.aAPX及び/又は
ii.aAM及び/又は
iii.aAPX:aAM及び/又は
iv.CM及び/又は
v.aAPX:CM
のいずれかであり、ここで、被分析物抗原は、被分析物APCにより提示されて提供されるか、或いは可溶性及び/若しくは固定化された被分析物親和性反応剤又は被分析物NCBPにより提示され、複合体の形成は、そのような複合体の安定化を導くことができ、eTPC-tの標識化及び/又はもし含まれるならば被分析物eTPC内のシグナル伝達の誘導を導くか、並びに/或いは被分析物APCがレポート及び測定され得る。
【0108】
誘導されたシグナル応答のレポート、及び/又はeTPC-t標識化の形態は上述の通りであり、eTPC:Aシステムにコンパイルされる二部分装置の一次アウトプットの取得において測定されるために必要なのは、これらの報告される応答及び/又は標識化である。
eTPC:Aシステムからの一次アウトプットは、選択された細胞集団及び/又は選択された親和性反応剤若しくは選択されたNCBPであり、ここで、選択は:
i.親和性反応剤若しくはNCBPによるeTPC-tの測定可能な標識化、及び/又は
ii.eTPC-tにおいて検出されるシグナル応答、及び/又は
iii.eTPC-tにおける検出されるシグナル応答の欠如、及び/又は
iv.被分析物APCにおいて検出されるシグナル応答、及び/又は
v.被分析物APCにおいて検出されるシグナル応答の欠如
に基づいて行われ、ここで、一次アウトプットは、単一細胞、又は細胞のプール及び/又は1以上のeTPC-t関連親和性反応剤若しくはNCBPとして表すことができる。
【0109】
eTPC:A組合せシステムから、被分析物親和性反応剤、NCBP若しくは被分析物APC及び/又は被分析物eTPC-tを、接触細胞における応答に基づいて選択できる。つまり、被分析物APCは、接触している被分析物eTPC-tにおける、レポートされる応答又はその欠如に基づいて選択できる。逆に、被分析物eTPC-tは、接触している被分析物抗原における、レポートされる応答又はその欠如に基づいて選択できるか、或いは被分析物抗原が被分析物親和性反応剤又はNCBPである場合は、被分析物親和性反応剤又はNCBPは、eTPC-t応答から選択できる。
【0110】
システムからの一次APCアウトプットは、選択された細胞であり、ここで、選択は、被分析物APC又はeTPC-tのいずれかにおけるレポートされるシグナル応答の存否に基づいて行われ、これらの細胞は、APC及び/又はeTPC-tの1以上を含んでよく、ここで、選択された細胞は、単一細胞、同じアイデンティティの細胞のプール又は異なるアイデンティティの細胞のプールを含んでよい(
図24工程v)。
システムからの一次eTPC-tアウトプットは、選択された細胞であり、ここで、選択は、レポートされるシグナル応答の存否に基づいて行われ、これらの細胞は、eTPC-tを含み、ここで、選択された細胞は、単一細胞、同じアイデンティティの細胞のプール又は異なるアイデンティティの細胞のプールを含んでよい(
図24工程v)。
システムからの一次被分析物親和性反応剤又はNCBPアウトプットは、親和性反応剤又はNCBPが結合しているか又はしていない選択された細胞であり、ここで、選択は、被分析物eTPC-tによる標識化又はレポートされるシグナル応答の存否に基づいて行われ、ここで、選択された親和性反応剤又はNCBPは、単一親和性反応剤若しくはNCBP、同じアイデンティティの親和性反応剤若しくはNCBPのプール又は異なるアイデンティティの親和性反応剤若しくはNCBPのプールを含んでよい(
図24工程v)。
eTPC:A組合せシステムにおける被分析物APC及び/又は被分析物eTPC-tにおけるレポートされるシグナルは、被分析物細胞集団又は被分析物親和性反応剤又はNCBPを選択して、一次アウトプットを提供するために用いてよい。
【0111】
APC及び/又はeTPC-t型の一次アウトプットは、二元システムから所望の被分析物APC及び/又は被分析物eTPC-t集団を選択することにより、eTPC:A組合せシステムが二元培養の性質(例えば
図15〜18)のものである場合に達成できる。
eTPC-tの一次アウトプットは、eTPC:A組合せシステムが、被分析物親和性反応剤若しくはNCBPで標識化されたか、或いはeTPC:Aシステム内で被分析物親和性反応剤若しくはNCBP又は被分析物APCにより活性化できる所望の被分析物eTPC-t集団を選択することにより、1以上の被分析物eTPC-tと被分析物抗原(例えば
図19〜21)の二元組成のものである場合に達成できる。
被分析物親和性反応剤又はNCBPの一次アウトプットは、eTPC:Aシステムからの被分析物親和性反応剤又はNCBPにより誘導化されるシグナルで標識化されているか、及び/或いは該シグナルを有する所望の被分析物eTPC-t集団を選択することにより、eTPC:A組合せシステムが、1以上の被分析物eTPC-tと被分析物親和性反応剤又はNCBP(例えば
図21)との二元組成のものである場合に達成できる。
APCの一次アウトプットは、被分析物APC内での応答の検出又はその欠如に基づいて被分析物APCを選択することにより、eTPC:A組合せシステムが、固定された被分析物eTPC-t及びプールされたライブラリ被分析物APC(例えば
図22)のものである場合に達成できる。
【0112】
eTPC:Aシステムからアウトプットを取得する形態
一次アウトプットを得ることができる幾つかの異なる形態があり、ここで、各形態は、選別の工程を伴う。選別は、蛍光標示式細胞選別(FACS)及び/又は磁気標示式細胞選別(MACS)及び/又は異なる親和性標示式細胞選別方法により達成してよい。
一次アウトプットAPC及び/又はeTPC-t細胞、並びに/或いはeTPC関連親和性反応剤又はNCBPは、単一細胞選別により得て、単一細胞を得てよいか、及び/又はプールへの細胞選別により得て、細胞のプールを得てよい。
一次アウトプットAPC及び/又はeTPC-t細胞は、単一細胞選別により得て、単一細胞を得てよく、所望により、単一細胞を次いで増殖させて、選択されたAPC又はeTPC-t細胞のモノクローナルプールを得てよい。
一次アウトプットAPC及び/又はeTPC-t細胞は、プールへの細胞選別により得て、細胞のプールを得てよく、所望により、細胞のプールを次いで成長させて、選択されたAPC及び/又はeTPC-t細胞のプールを得てよい。
【0113】
eTPC:Aシステムからの終端システムアウトプットの取得
一次アウトプットが、測定されるシグナル応答又は安定な複合体形成に基づいて選択される選択された被分析物APC及び/又は被分析物eTPC-tである一次アウトプットを取得する上記の方法に続いて、eTPC:Aシステムからの終端アウトプットを、選択されたAPC及び/又はeTPC一次アウトプットの更なる処理により得ることができる。
この関係において、多成分システムからの終端アウトプットは、被分析物APC又は被分析物eTPC-t又は被分析物親和性反応剤若しくはNCBPにより提示され、eTPC:A組合せシステムからのそれらの選択により多成分システムからの一次アウトプットとして得られる:
i.aAPX及び/又は
ii.aAM及び/又は
iii.aAPX:aAM及び/又は
iv.CM及び/又は
v.aAPX:CM及び/又は
vi.TCRsp
のアイデンティティである。
【0114】
eTPC:Aシステム内で、被分析物APC及び被分析物eTPCにより提示される被分析物分子が遺伝子にコードされている場合が頻繁にある。例えばバクテリオファージによりディスプレイされるNCBPの場合、被分析物NCBPが遺伝子にコードされるアイデンティティを有する場合もそうである。よって、被分析物APC又は被分析物eTPC-tにより提示される被分析物分子を同定するために、調製した被分析物APC、eTPC-t及び被分析物NCBPの遺伝子シーケンシングを行ってよい。
APCは、選別された及び/又は増殖させたAPC細胞のゲノム又はトランスクリプトームについての遺伝子配列を得て:
i.aAPX及び/又は
ii.aAM及び/又は
iii.aAPX:aAM
iv.CM及び/又は
v.aAPX:CM
のアイデンティティを決定するように処理してよく、ここで、得られるアイデンティティは、eTPC:Aシステムからの終端アウトプットを表す。この関係において、遺伝子成分を有する被分析物NCBPは、選別及び/又は増殖された被分析物NCBPのゲノム又はトランスクリプトームについての遺伝子配列が得られて、被分析物NCBPのアイデンティティを決定するように処理してよく、ここで、得られるアイデンティティは、eTPC:Aシステムからの終端アウトプットを表す。
【0115】
eTPC-tは、選別及び/又は増殖されたeTPC-t細胞の成分2B'及び/又は成分2D'についての遺伝子配列を得て、TCRspのアイデンティティを決定するように処理してよく、ここで、TORESにより作製されるTCRspの得られるアイデンティティは、eTPC:Aシステムからの終端アウトプットを表す。
eTPCは、選別及び/又は増殖されたeTPC-t細胞のゲノム又はトランスクリプトームについての遺伝子配列を得て、TCRspのアイデンティティを決定するように処理してよく、ここで、TCRspの得られるアイデンティティは、eTPC:Aシステムからの終端アウトプットを表す。
【0116】
遺伝子シーケンシングは、様々な形態で、様々な遺伝子材料起源から、特定の処理あり又はなしで達成できる。
この関係において、シーケンシング工程の前に
i.ゲノムDNAを抽出すること、及び/又は
ii.成分2B'及び/又は2D'RNA転写産物を抽出すること、及び/又は
iii.成分2B'及び/又は2D'をコードするDNAをPCRにより増幅すること、
iv.成分2B'及び/又は2D'に由来するRNA転写産物をRT-PCRにより増幅すること
を行ってよい。
シーケンシング工程は、多成分システムからの一次アウトプットとして得られるAPC若しくはeTPC-t若しくは被分析物NCBP又はそれらのプールに対して破壊的であってよい。
【0117】
シーケンシング工程が一次アウトプットeTPC-tに対して破壊的であるeTPC:Aシステムから一次アウトプットを得ることが望ましいならば、二部分装置の終端アウトプットとして得られる配列情報を用いて、被分析物eTPC-tと等価なアウトプットeTPC-tを調製してよい。
遺伝子によりコードされる被分析物分子の上記のシナリオにおいて、eTPC:Aシステムの終端アウトプットは、成分2B'及び/若しくは2D'並びに/又は細胞ゲノム及び/若しくはトランスクリプトームから配列情報を得ることにより得てよい。しかし幾つかの実施形態では、抗原情報は、遺伝子によりコードされない。翻訳後修飾された抗原、非遺伝子的手段によりeTPC:A組合せシステムに提供される抗原、被分析物APCプロテオーム又は代謝産物の誘導又は改変された状態から現れる抗原、eTPC:Aシステムに固有のCM、及び遺伝子エレメントのない親和性反応剤又はNCBPは、遺伝子シーケンシング手段により適度に同定されない場合がある。
【0118】
非遺伝子手段によりeTPC:Aシステムに提供され得るaAMの重要な場合において、提供されたaAMをaAPX:aAM複合体としてAPCが提示し得る2つの異なる形態が存在する。第1のシナリオにおいて、aAMは、aAPXと直接結合でき、細胞表面にてaAPX:aAM複合体を形成する形で提供される。このようなaAMの例は、HLA複合体のためのペプチド抗原である。第二のシナリオにおいて、aAMは、被分析物APCにより取り込まれることができ、aAPX内のカーゴとして積載され、細胞表面にてaAPX:aAM複合体を形成するようにプロセシングされる形で提供される。
aAMカーゴ又はCMカーゴを選択して同定する方法であって、前記カーゴが、多成分システムの一次アウトプットとして選択されて得られるAPCのaAPXに積載される代謝産物及び/又はペプチドである方法は、
i.aAPX:aAM又はaAPX:CM又はカーゴaM又はカーゴCMを単離することと、
ii.積載されたカーゴを同定することと
を含み、前記同定される積載されたカーゴ(CM又はaAM)は、二部分装置の終端アウトプットである。
【0119】
選択されたAPCからカーゴ分子を同定できる2つの形態が一般的に存在する。第一に、aAPX:aAM又はaAPX:CMからのカーゴの強制的な遊離により、その後の同定のために利用可能なaAM又はCMが単離される。この例は、HLA複合体からペプチドaAMを自由にするAPCの酸洗浄である。第二に、複合体を自由にすること及び免疫親和性単離法による例えばaAPX:aAM又はaAPX:CMの捕捉により、aAM又はCMが同定できるようにaAPX:aAM又はaAPX:CM複合体が単離される。
単離aAM及び/若しくはCMを直接、又は単離aAPX:aAM若しくはaAPX:CM複合体から同定する方法は:
i.質量分析
ii.ペプチドシーケンシング分析
を含むことができ、ここで、含まれるaAM及び/又はCMアイデンティティは、二部分装置からの終端アウトプットである。
【0120】
eTPC:Aシステムとして二部分装置を用いる、被分析物抗原についてのTCRspの親和性の決定
一次アウトプットを得る上記の方法であって、一次アウトプットが、測定されるシグナル応答に基づいて選択される、選択された被分析物eTPC-t細胞である方法の後に、eTPC-t一次アウトプットを親和性分析に供して、同族被分析物抗原に対するTCRspの親和性を決定してよく、ここで、被分析物抗原は、以下:
i.aAPX及び/又は
ii.aAM及び/又は
iii.aAPX:aAM及び/又は
iv.CM及び/又は
v.aAPX:CM
のいずれかであり、ここで、被分析物抗原は、被分析物TCRspの親和性が以下の方法:
i.選択された被分析物eTPC-tを、濃度の範囲の被分析物抗原で標識すること、
ii.工程aの染色した被分析物eTPC-tに対してFACS分析を行うこと、
iii.濃度の範囲の被分析物抗原に対する被分析物eTPC-tの蛍光標識化の強度を決定すること、
iv.被分析物抗原に対するTCRspの親和性を算出すること
により決定されるように、可溶性親和性反応剤として提供されるか又は被分析物APC若しくは被分析物NCBPにより提示される。
【0121】
被分析物TCRspの親和性は、親和性が参照蛍光強度に対する被分析物抗原蛍光強度の比率を用いて算出されるように、標識された参照が含まれ得る以前に記載された方法によって決定でき、ここで、標識された参照は:
i.被分析物TCR鎖の一方又は両方の被分析物TCR鎖に対する親和性反応剤で標識された被分析物eTPC-t、
ii.1以上のCD3タンパク質に対する親和性反応剤で標識された被分析物eTPC-t
iii.標識された参照単一TCR鎖又は標識された参照TCR鎖対を提示する細胞又は粒子
から選択される。
【実施例】
【0123】
材料及び方法
DNAシーケンシング
ここで示す実施例の中で言及する全てのシーケンシングは、サンガー法により行い、GATC Biotec AB、スウェーデンが行った。
【0124】
DNA合成
ここで示す実施例の中で言及する全てのDNA合成は、Integrated DNA technologies BVBA、ベルギーが行った。
125 bpより大きいDNA断片は、「gBlock遺伝子断片」生成物として、直鎖状二本鎖DNA分子として合成した。
15〜60 ntのDNA断片は、「カスタムオリゴヌクレオチド断片」生成物として、一本鎖DNA分子として合成した。
61〜124 ntのDNA断片は、「Ultramer DNAオリゴヌクレオチド断片」生成物として、一本鎖DNA分子として合成した。
【0125】
ベクターライブラリ組立て及びクローニング
実施例に記載するベクターの構築は、当業者に公知の様々な方法を含み、具体的な反応組成物は、実施例1〜3に詳細に概説する。以下の鍵となる材料を、記載する手順において用いた:
【0126】
【表1】
【0127】
CDR3をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)の組立て
odeCDR3は、部分相補一本鎖オリゴヌクレオチドをアニールすることにより、慣例的に組立てた。詳細な反応組成及び条件は、実施例2に記載する。以下の鍵となる材料を、記載する手順において用いた:
【0128】
【表2】
【0129】
TCR再構成
詳細な反応組成及び条件は、実施例3に記載する。以下の鍵となる材料を、記載する手順において用いた:
【0130】
【表3】
【0131】
細胞のトランスフェクション
本出願で用いた全ての細胞は、HEK293細胞に由来する。トランスフェクションの前日に、細胞を、1.2〜1.4×10
6細胞/60mmディッシュの密度にて、90% DMEM+2mML-グルタミン+10% HI-FBS(Life Technologies)に播種した。
次の日に、65%集密の細胞を、合計5ug DNA及びjetPEI(登録商標)(Polyplusトランスフェクション試薬、Life Technologies)で、6のN/P比にてトランスフェクションした。DNA及びjetPEI(登録商標)のストック溶液を、それぞれ滅菌1M NaCl及び150mM NaClで希釈した。各溶液の最終容量は、全混合容量の50%に等しかった。次いで、PEI溶液を希釈DNAに加え、混合物を室温にて15分間インキュベートした。最後に、DNA/PEI混合物を、細胞フィルムを乱さないように注意しながら、60mmディッシュに加えた。細胞を48時間、(37℃、5% CO2、95%相対湿度)にてインキュベートした後に、DNA送達マーカー発現分析を行った。培地は、トランスフェクションの前に交換した。
【0132】
組込みカップル対間のRMCE
RMCE組込みのために、細胞を、FLPをコードするDNAベクター(V4.I.8)0.6μg、2μgの成分2C/2Y、2μgの成分2E/2Z、0.4μgのDNA送達を追跡するためのマーカーをコードするDNAでトランスフェクションした。トランスフェクションの2日後に、GFP又はRFPポジティブのいずれかの、DNA送達マーカーについてポジティブの細胞を、FACSにより選別した。トランスフェクションの4〜10日後に、成分2D及び2B選択マーカーによりコードされる蛍光タンパク質シグナルの減少を示す個別の細胞を、FACSにより選別した。ACL-987の作製については例外で、GFPポジティブを示す個別の細胞をFACSにより選別した。
【0133】
RSUの特徴決定のためのTCR鎖対の一過性発現
一過性発現のために、細胞を、FLPをコードするDNAベクター(V4.I.8)、JG9-TCR-アルファバリアント(VP.7751.RC1.A1〜VP.7751.RC1.H8)、JG9-TCR-ベータWT鎖(V3.C.5)及びDNAベクタービヒクル(V1.C.2)でトランスフェクションした。トランスフェクションの2日後に、全ての細胞をHLA-A*02:01-NLVP四量体及び抗CD3抗体で染色した。RSUは、CD3ネガティブ集団に対するCD3ポジティブ集団についてのHLA-A*02:01-NLVP四量体シグナルの平均蛍光強度(MFI)の比として算出し、各TCR鎖対バリアントの結合強度の指標であった。
【0134】
蛍光標示式細胞選別(FACS)
単一細胞選別又はポリクローン選別は、標準的な細胞選別法により、BDInflux装置を用いて達成した。簡単に述べると、ACL細胞を、Try-pLE(商標)エクスプレストリプシン(ThermoFisher Scientific)を用いて採集し、適切な容量のDPBS 1×(Life Technologies)に再懸濁した後に、細胞選別を、20% HI-FBS及びAnti-Anti 100X(Life Technologies)を含むDMEM 1×培地中で行った。
細胞を、HLA-多量体反応剤で氷上で10分間、次いで、CD3及び/又はTCRab抗体で染色した。BDInflux装置による特異的細胞蛍光特性の検出は、表4に定義する。
モノクローナル作製のための単一細胞の選別、興味対象の表現型を示す細胞を、200 ulの成長培地を含む96ウェルプレートに入れた。試料あたり1〜2枚のプレートを選別した。ポリクローナル細胞選別は、細胞ソーターInflux(商標)(BD Bio-sciences)における2ウェイ選別設定を用いて、培地を含むFACSチューブに割り当てた。
JG9-TCR-アルファバリアントの分子的特徴決定のための単一細胞選別は、5μLのヌクレアーゼフリー水を予め充填したPCRプレートに選別した。検体は、その後の処理まで急速冷凍した。
【0135】
【表4】
【0136】
【表5】
【0137】
遺伝子特徴決定のためのゲノムDNA抽出
DNAは、QIAamp DNAミニキット(Qiagen)を用いて5×10
6細胞から抽出した。DNAは、1×TE (10mM Tris pH8.0及び0.1 mM EDTA)中に貯蔵した。
【0138】
成分2B又は2DへのTRA-ORF及びTRB-ORFのRMCE組込みを評価するためのPCR反応
TRA-ORFの組込みを評価するため、TRA-Cセグメント(フォワードプライマー1.F.7)及びゲノム受入部位に予め存在する部分であるsv40pAターミネータ(リバースプライマー15.H.2)にアニールするプライマーを用いた。予測サイズ566bp。
TRB-ORFの組込みを評価するため、TRB-Cセグメント(フォワードプライマー1.F.9)及びゲノム受入部位に予め存在する部分であるsv40pAターミネータ(リバースプライマー15.H.2)にアニールするプライマーを用いた。予測サイズ610bp。
【0139】
【表6】
【0140】
【表7】
【0141】
PCR産物を、PowerPac Basic(Bio-Rad)を用いて1×TAE緩衝液中で1%アガロースゲルに泳動し、10,000倍希釈のsybersafeで染色し、Fusion SL(Vilber Lourmat)で分析した。
【0142】
DNA送達後にゲノム中のTRA-ORF及びTRB-ORFのコピー数を評価するためのddPCR反応
選択したACL-851モノクローンのDNAを、興味対象のTCR_ORF Cセグメントを標的にする特異的プライマー及びプローブを用いることにより分析した。
TRA-ORFコピー数を評価するために、TRA-Cセグメントにアニールするプライマー及びプローブ(フォワードプライマー1.F.7、リバースプライマー1.F.8及びプローブ1.G.1)を用いた。
TRB-ORFコピー数を評価するために、TRB-Cセグメントにアニールするプライマー及びプローブ(フォワードプライマー1.F.9、リバースプライマー1.F.10及びプローブ1.G.2)を用いた。
【0143】
全ての場合において、プライマー10.A.9及び10.A.10を、HEXとコンジュゲートした蛍光プローブ10.B.6と一緒に用いて、染色体のコピー数を決定するために参照遺伝子(TRAC)を同時にスクリーニングした。組込みコピー数は、HEK293細胞が参照遺伝子(TRAC)について三倍体であるとみなした。
ドロップレットデジタルPCRの前に、DNAをMfel(NEB)で消化して、直列の組込みを分離した。反応の構成及びサイクル条件は、プローブについてddPCR(商標)Supermix(dUTPなし)(Bio-Rad)のプロトコールに従い、QX200(商標)ドロップレットリーダー及びドロップレットジェネレーター並びにC1000 Touch(商標)ディープウェルサーマルサイクラー(Bio-Rad)を用いた。
【0144】
【表8】
【0145】
データは、FAMの検出のためにCh1及びHEXの検出のためにCh2を用いて、QuantaSoft(商標)ソフトウェアを用いて取得した。
【0146】
【表9】
【0147】
【表10】
【0148】
単一T細胞からのTCRアルファ及びベータ鎖のシーケンシング
FACSにより選別した個別のeTPC-t細胞を、TRA及びTRBの各々についてV領域特異的プライマーコレクションを必然的に伴う二工程増幅プロセス、続いて、配列分析のためのTRA及びTRBアンプリコンを創出するペア型ネステッドPCR反応に供した。この手順は、以前に記載されている(Hanら、Nat Biotechnol. 2014 32(7): 684〜692)。以下の材料を、記載する手順において用いた:
【0149】
【表11】
【0150】
機能的成分2Fの実証
eTPC-t及びAPC細胞を、RPMI+10%熱不活化胎児ウシ血清(完全培地)中で、0.2×10
6〜1.5×10
6細胞/mlの間、37℃、90%相対湿度及び5%CO
2にて慣例的に培養した。ペプチドNLVPMVATV及びVYALPLKMLは、Genescriptにより合成され、凍結乾燥された状態で受領した。ペプチドの一次ストックを10% DMSOに懸濁し、-80℃にて貯蔵した。作業ストックは、50μMにて完全培地(50×濃縮)中で処理時に調製した。HLA-A*02:01(ACL-209)又はHLA-A*24:02(ACL-963)又はHLA-ヌル(ACL-128)を提示する以下のAPCを用いた。eTPC-t株化細胞(ACL-1277、成分2A)は、2つのユニークゲノム受容部位(成分2B、2D)を有するように操作して、HLAヌルとなるように操作し、天然型CD3発現を利用し、二成分 合成応答エレメント(成分2F)を有した。更に、ACL-1277は、成分B、DがB'/D'に変換されており、pHLA: HLA-A*02:01-NLVPMVATVに特異的なTCRspをコードするTCRアルファ/ベータORFが組み込まれている(実施例8を参照されたい)。
【0151】
抗原パルス手順
APC細胞の活発に成長している培養物(0.5〜1.0×10
6細胞/ml)を懸濁し、細胞濃度を決定するために試料を採取して計数した。その後、1百万細胞を採集し、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、Gibco)で1回洗浄した後に、細胞濃度1〜2×10
6細胞/mlにて1μMのペプチドと又はペプチドなしで完全培地に懸濁した。細胞を2時間、標準培養条件で、24ウェル培養プレートにてインキュベートした。2時間後に、細胞を採集し、遠心分離(400 rcf、3分)によりペレットにした後にDPBSで3×10 mlで洗浄した。細胞を、その後、完全培地中に0.2×10
6細胞/mlにて懸濁した。
【0152】
eTPC-t採集
eTPC-t細胞の活発に成長している培養物(0.5〜1.0×10
6細胞/ml)を懸濁し、細胞濃度を決定するために試料を採取して計数した。細胞を採集し、PBSで1回洗浄し、次いで、完全培地中に0.6×10
6細胞/mlの濃度にて懸濁した。
【0153】
eTPC:AシステムにおけるeTPC-t及びAPCの接触
96ウェル丸底プレートの各ウェルに、50μlの完全培地、50μlのAPC、続いて50μlのeTPC-tを加えた。これは、1:3の比率でのおよそ10,000のAPC及び30,000のeTPC-tで、およそ0.27×10
6細胞/mlの全細胞濃度に等しかった。細胞混合物を、次いで、標準培養条件にておよそ24時間インキュベートした。
【0154】
染色及び分析
24時間のインキュベーションの後に、細胞を採集し、0.75 mlのV底Micronicチューブに移植し、500μl DPBSで1回洗浄し、その後、以下のようにして死細胞マーカー(DCM-APC-H7)で染色した。各ウェルに、25μlの染色溶液を加え、細胞を混合により懸濁し、次いで、15〜20分インキュベートした。染色溶液は、100μlの染色溶液当たり0.5μl DCM-APC-H7で構成されていた。インキュベーションの後に、細胞を、500μlのDPBS+2%FCS(洗浄緩衝液)で2回洗浄した。細胞を、次いで、eTPC-tに独特の表面マーカーで染色した。各ウェルに、30μlの染色溶液を加え、細胞を混合により懸濁し、次いで、30〜45分インキュベートした。染色溶液は、100μlの染色溶液当たり2.5μlの抗myc-AF647で構成された(クローン9E10、Santa Cruz Biotech)。インキュベーションの後に、細胞を、500μlの洗浄緩衝液で2回洗浄し、次いで、200μlの洗浄緩衝液に懸濁し、次いで、FACSによりLSR-Fortessa(BD Biosciences)で分析した。
【0155】
実施例1 ヒトTRA及びTRBのためのTORESシステムの設計及び組立て
TORESは、所定のTCR鎖についてのV-Cエントリーベクターライブラリ及びJドナーベクターライブラリからなる。選択されたV-J-Cの状況に挿入される標的deCDR3配列と組み合わされた場合に、全長TCR ORFを再構成できる。odeCDR3配列の特徴及び/又はV/J/C選択を変えることにより、この再構成工程は、TCR ORF操作ワークフローにおける配列多様化工程にもなり得る。本実施例では、ヒトTRA及びTRB鎖のための完全TORESシステムの設計及び組立てについて記載する。
【0156】
天然型ヒトTRAレパートリーのためのTRA V-Cエントリーベクターライブラリの設計及び組立て
本実施例では、天然型ヒトTRA V-C配列レパートリーを含むTRA V-Cエントリーベクターライブラリの設計及び組立てについて記載する。モジュール組立て方法を用いるので、V-Cエントリーベクターライブラリの構築が、ヒト、他の生物からの他のTCR鎖又は合成TCR鎖について迅速にサイクル可能になる。
TRA V-Cベクターライブラリのために必要なDNA成分は:
I.ヒトゲノムにおいてコードされる各機能的TRA V遺伝子セグメントについてのTRA Vクローニング断片
II.単一TRA Cクローニング断片
III.V-Cエントリーベクター骨格
本実施例では、単一制限酵素及びリガーゼ反応において標的V-Cエントリーベクター骨格に組立てられるように、TRA V及びTRA Cクローニング断片を合成して用いた。
本実施例では、異種特異的FRTV-Cエントリーベクター骨格の対を用いて、TRA及びTRB V-Cエントリーベクターライブラリを組立てた。各TRA及びTRB V-Cエントリーベクターライブラリは、V-Cエントリーシステムに含まれる5'及び3'遺伝子エレメント、成分2C及び2Eである、別個のフリッパーゼ認識標的(FRT)配列を含むベクター骨格を用いて構築する。よって、このTORESの動作において作製される生成物TRA/TRB対は、5'及び3'遺伝子エレメント内に適合するFRTを含むゲノム受容部位(成分2B及び2D)を含むeTPC細胞への迅速ゲノム組込みに供することができる。
本実施例では、TRA V-Cエントリーベクターは、5'及び3'遺伝子エレメントとして、それぞれF14及びF15 FRT配列を含む。このF14/F15 V-Cエントリーベクター骨格配列は、SEQ0688と表す。
本実施例では、TRA V-Cエントリーベクターライブラリは、IIS型制限酵素BbsIを用いて構築する。全長TRA ORFを再構成するための完全TORESの機能化において用いるIIS型制限酵素は、BsaIである。
【0157】
合成TRA Vクローニング断片の設計
本実施例におけるTRA Vクローニング断片の遺伝子エレメントの配置を、
図25に示す。
TRA Vクローニング断片の各末端は、PCRによる断片全体の増殖のための、20ヌクレオチドの標準化された5'及び3'プライマーバインドDNA配列をコードする。
5'プライマーバインドに隣接して、BbsI IIS型制限酵素結合部位がコードされ、BbsI結合部位の方向は、BbsI酵素がDNAをその認識配列に対して3'で切断するように手引きする。BbsI酵素活性により作製されるオーバーハングは、オーバーハング*1によりコードされる。このオーバーハングは、V-Cエントリーベクター骨格のアームを用いる定方向リガーゼ依存クローニングを許容するように設計されている。
コンセンサスコザック配列は、最終の再構成されかつ発現されたTRA mRNAの翻訳の効率的な開始のために、TRA V遺伝子セグメント内のATG開始コドンの5'にコードされる。本実施例では、各TRA Vセグメントは、TRA Vセグメントの最初のメチオニン残基からその最後のシステイン(Cys)まで全てのアミノ酸をコードする。このCys残基は、一般的に、TRA可変遺伝子セグメントの境界として認識され、この欠失は、天然に存在する組換え及び機能的TRA鎖において稀である。必要であれば、天然型ヒトTRA Vコンセンサス配列を編集して、TORESを用いる組立て又は再構成動作において用いられる任意の制限酵素、及び下流の用途において用いられる任意の酵素についての認識配列を除去する。
【0158】
TRA Vセグメントの3'末端に、BsaI IIS型制限酵素結合部位BsaI←がコードされる。BsaI結合部位の方向は、BsaI酵素がDNAをその認識配列に対して5'で切断するように手引きする。得られるオーバーハング配列は、Vセグメントエレメントの最後のシステインコドンと、システインに先行するアミノ酸コドンの3番目のヌクレオチドとを含むように設計されている。よって、設計された配列に対するBsaIの作用は、TRA Vセグメントの3'末端にてTRA V Cys-オーバーハング‡1を創出する。本実施例では、このCys-オーバーハング‡1は、全ての含まれるTRA Vセグメントのうちで標準化されており、このことにより、クローニング方策が単純かつ一定になる。必要であれば、TRA V遺伝子エレメントをコードするヌクレオチドを変更して、翻訳されるアミノ酸配列を変化させずに、この標準化されたオーバーハングをコードするようにする。このBsaI←部位は、全長TRA再構成反応中利用する。
【0159】
本実施例では、V-Cエントリーベクターネガティブ選択マーカーは、NotI制限酵素結合部位である。NotI結合部位を構築するために、TRA Vクローニング断片とTRA Cクローニング断片とが一緒にライゲーションされるときに、部位の2つの半分を組み合わせる。TRA Vクローニング断片は、6ヌクレオチドのNotI 5'セグメントをコードする。
3'プライマーバインド配列の5'末端に、第2のBbsI制限部位がコードされ、これは、BbsI酵素がDNAをその認識配列に対して5'で切断するようにする、BbsI←。設計された配列に対するBbsIの作用は、よって、4ヌクレオチドのオーバーハングであるNotI 5'オーバーハングを創出し、これは、TRA C DNA断片に作製されるオーバーハングと相補的であり、ライゲーションによりNotI結合部位を再構成するように設計されている。
Spは、IIS型制限酵素結合部位及び切断部位の正しいスペーシングを、そのような部位に隣接する場合に達成するための、TRA Vクローニング断片の特定の点へのヌクレオチド付加を表す。NotI制限酵素結合部位配列を挟むSpブロックは、効率的な作用のために、適切にNotI結合及び切断部位の間をあけるために用いられる。ヌクレオチドの選択は、BsaI結合部位のDAMメチル化の可能性のある影響を考慮した。
天然型ヒトTRA鎖の本実施例におけるTRA Vクローニング断片についての全長DNA配列を、SEQ0001〜SEQ0046として示す。これらの配列は、5'プライマーバインド及び3'プライマーバインド配列を含む。
【0160】
合成TRA Cクローニング断片の設計
本実施例におけるTRA Cクローニング断片の遺伝子エレメントの配置を、
図26に示す。
TRA Cクローニング断片の各末端は、PCRによる断片全体の増殖のための、20ヌクレオチドの標準化された5'及び3'プライマーバインドDNA配列をコードする。
5'プライマーバインド配列に隣接して、BbsI制限酵素認識部位がコードされるので、BbsI酵素がDNAをその認識配列BbsI→に対して3'で切断する。
TRA Cクローニング断片は、6ヌクレオチドのNotI 3'セグメントをコードし、これは、V-Cエントリーベクターネガティブ選択マーカーを作り上げるNotI認識部位を完成する。隣接BbsI→制限部位は、NotI 3'エレメントに作用して、4ヌクレオチドのNotI 3'オーバーハングを創出する。このオーバーハングは、TRA V DNA断片上に作製されるNotI 5'オーバーハングに相補的であり、V-Cエントリーベクターの組立ての際に完全NotI結合部位を再構成するように設計される。
NotI 3'エレメントの3'末端に、TRA Cクローニング断片は、BsaI制限酵素結合部位BsaI→をコードする。BsaI結合部位の方向は、BsaI酵素がDNAをその認識配列に対して5'で切断するように手引きする。得られるオーバーハング配列は、TRA C遺伝子断片の最初のシトシンから開始するように設計されている、TRA Cオーバーハング‡3。このBsaI→部位は、全長TRA再構成反応中利用される。BsaI→酵素は、V-CエントリーベクターにおいてコードされるTRA Cセグメントに対して作用して、再構成反応中に必要なTRA Cオーバーハング‡3を創出する。最初のグルタミンコドンの5'のシトシン残基から停止コドンまでのコンセンサスTRA C配列が、本実施例のTRA Cクローニング断片に含まれる。
3'プライマーバインドの5'に、BbsI制限酵素認識配列BbsI←がコードされる。BbsI結合部位の方向は、BbsI酵素がDNAをその認識配列に対して5'で切断するように手引きする。BbsI酵素活性により作製されるオーバーハングは、オーバーハング*2によりコードされる。このオーバーハングの設計は、組立て中にV-Cエントリーベクター骨格のアームを用いる定方向リガーゼ依存クローニングを許容する。
Spは、IIS型制限酵素結合部位及び切断部位の正しいスペーシングを、そのような部位に隣接する場合に達成するための、TRA Cクローニング断片の特定の点へのヌクレオチド付加を表す。NotI制限酵素結合部位配列を挟むSpブロックは、効率的な作用のために、適切にNotI結合及び切断部位の間をあけるために用いられる。ヌクレオチドの選択は、BsaI結合部位のDAMメチル化の可能性のある影響を考慮した。
天然型ヒトTRA鎖の本実施例におけるTRA Cクローニング断片についての全長DNA配列を、SEQ0047として示す。この配列は、5'プライマーバインド及び3'プライマーバインド配列を含む。
【0161】
哺乳動物細胞における再構成されたTRA ORFの一過性発現のためのV-Cエントリーベクター骨格の設計
本実施例では、V-Cエントリーベクター骨格をpMAプラスミドから導く。これは、Col E1複製起点であるoriを、抗生物質耐性ベータ-ラクタマーゼ遺伝子、ポジティブ選択#1と共にコードする。ベータ-ラクタマーゼは、アンピシリン及びカルベニシリンのようなベータ-ラクタム抗生物質のペニシリン群に対する耐性を付与する。
図27に示すベクター骨格は、完全に再構成されたTRA ORFの下流の用途のための適切な機能性を付与する、必要な遺伝子エレメントをコードする。本実施例では、5'遺伝子エレメントは、CMV構成性哺乳動物プロモータをコードし、3'遺伝子エレメントは、SV40pAポリアデニル化シグナルをコードして、哺乳動物細胞における完全に再構成されたTRA ORFの一過性発現を許容する。
本実施例では、ベクター骨格は、オーバーハング*1'及びオーバーハング*2'をそれぞれ作製するAcc65I及びXbaI制限酵素結合部位をコードする。オーバーハング*1'は、TRA Vクローニング断片内のオーバーハング*1に相補的である(
図25)。オーバーハング*2'は、TRA Cクローニング断片内のオーバーハング*2に相補的である(
図26)。これらの相補オーバーハングは、V-Cエントリーベクター骨格へのTRA V及びTRA Cクローニング断片の定方向クローニングを許容する。
Sp特徴は、効率的な作用のためにAcc65I及びXbaI制限酵素認識部位の距離をあけるために必要な、2つの部位の間に付加されたヌクレオチドを表す。
FRT F14部位をコードする5'遺伝子エレメントから、FRT F15をコードする3'遺伝子エレメントまでのベクター骨格の配列を、SEQ0688として表す。
【0162】
TRA V-Cエントリーベクターライブラリの組立ての方法
この方法は、選択されたTRA Vクローニング断片(
図25)及びTRA Cクローニング断片(
図26)を所定のV-Cエントリーベクター骨格(
図2)に組立てて、TRA V-Cエントリーベクター(成分1A、
図2a)を創出するための標準的な分子生物学技術を利用する。本実施例では、方法は、制限酵素消化及びライゲーション反応を単一反応で行う。
【0163】
消化及びライゲーション反応について
100 ngの直鎖状ベクター骨格(ACC65I及びXbaI消化により直鎖化)
10 ngのTRA V遺伝子断片
20 ngのTRA C遺伝子断片
2μl 10×NEBリガーゼ緩衝液
0.5μlのBbsI
1μlのT4 DNAリガーゼ
20μlまでのH
2O
【0164】
反応条件
工程1:37℃にて2分
工程2:16℃にて3分
工程1及び2を20回反復
50℃にて5分
80℃にて5分
室温に戻す
【0165】
得られた生成物で、コンピテント大腸菌(E.coli)細胞を形質転換し、該細胞を、カルベニシリン耐性コロニーについて選択する。選択されたコロニーから単離されるプラスミドをシーケンシングして、正しく組立てられた構築物を決定する。この手順を、独立したVセグメントクローニング断片の各々について反復する。得られた構築物は、哺乳動物細胞における再構成されたTRAの一過性発現において後で用いるための全長TRA ORFの再構成において用いるためのTRA V-Cエントリーベクターライブラリを作り上げる。TRA V-Cエントリーベクターライブラリを作り上げるクローニングされたV-C断片の配列を、SEQ0049〜SEQ0094として示す。示した配列は、可変セグメントの開始コドンに先行するコザック配列から、Cセグメントの停止コドンまで全てを含む。
【0166】
天然型ヒトTRAレパートリーのためのTRA Jドナーベクターライブラリの設計及び組立て
本実施例では、TRA J受入カセット断片を構築してJドナーベクター骨格に挿入して、J受入カセットベクターを創出する。その後、合成TRA Jセグメント部をTRA J受入カセットベクターに組立てて、Jドナーベクターライブラリを創出できる。このフレキシブル多工程組立て法により、Jセグメント長のバリエーションのようなJドナーセグメント特徴の迅速で対費用効果の良い操作が可能になる。
TRA Jドナーベクターライブラリに必要なDNA成分は:
I.TRA J受入カセット断片
II.Jドナーベクター骨格
III. TRAJ受入カセットベクター
IV. TRA Jセグメント部
である。
【0167】
合成TRA J受入カセット断片の設計
2つの一本鎖DNAオリゴヌクレオチドのアニーリングを用いて、DNA断片の各末端に4ヌクレオチド一本鎖オーバーハングであるオーバーハング*3及びオーバーハング*4を設計により含む受入部位カセット断片を作製する。Jドナーベクター骨格への定方向リガーゼ依存クローニングを許容して、
図28に示すTRAJ受入カセットベクターを創出する4ヌクレオチドオーバーハング。
IIS型制限部位の対、BsaI←及びBsaI→は、受入部位カセットDNA断片の5'及び3'末端に位置する。BsaI認識部位の方向は、BsaI酵素がDNAを構築物の中央に向かって切断するように手引きするためである。これらの部位は、オーバーハング‡2-5'及びオーバーハング‡3-3'を作製することにより、TRA ORF再構成プロトコール中に用いられる。オーバーハング‡3は、受入カセット断片にコードされるTRA C部の成分であるが、オーバーハング‡2は、TRA Jセグメント部がクローニングされた後に規定される(下記参照)。
IIS型認識部位のBbsI対BbsI←及びBbsI→は、カセットの中央近くにコードされ、合成されたTRA Jセグメント部(下記参照)に含まれる相補オーバーハングの創出において、TRA Jドナーベクターの組立てのために用いられる。
【0168】
5' BbsI部位であるBbsI←は、BsaIに切断して、この機能の3'末端にオーバーハング*5を創出する。3 BbsI部位であるBbsI→は、TRA C部エレメントに切断して、このエレメントの5'末端にオーバーハング*6を創出する。これらのオーバーハングは、この構築物のBsaI 及びTRA C部機能の内部にコードされて、最終の再構成されたTRA ORFに組み込まれる可能性のある非天然型ヌクレオチドの付加を回避する。
BbsI→酵素が作製したオーバーハングとBsaI←酵素が作製したオーバーハングとの間の領域は、TRA C遺伝子断片であるTRA C部の2番目のヌクレオチドから開始するTRA C領域の一部をコードする。TRA C遺伝子断片の2番目のヌクレオチドから開始する動機は、ヒトTRA遺伝子座TORESの本実施例においては、得られるオーバーハングがTATCであってパリンドロームオーバーハングではないからであり、これは、TRA C遺伝子断片の最初が含まれている場合にそうである(得られるオーバーハングATAT)。パリンドロームオーバーハングは、2つのベクター末端が必要なTRA Jセグメント部インサートなしで連結することを許容するので、回避すべきである。BbsI→部位の向きは、全てのTRA J断片3'末端の、受入部位カセットにおけるTRA C領域の5'開始へのインフレームリガーゼ依存クローニングを許容する。BsaI←部位の向きは、完全TORESを用いるTRA全長ORF再構成プロトコールの最終工程において、TRA C領域の開始と残りのTRA C断片とのインフレームリガーゼ依存クローニングを許容する。
【0169】
2つのBbsI結合部位の間は、酵素NotIの8ヌクレオチド認識配列である。この制限部位は、親のプラスミドコロニーのバックグラウンドを低減するためのネガティブ選択マーカーとして利用される。これは、TRA J遺伝子断片挿入を行った後にNotI酵素が加えられたときに達成される。よって、TRA J遺伝子断片を正しくクローニングしているプラスミドは、NotI酵素の存在下で環状のままであるが、そのNotI部位がTRA J遺伝子断片に交換されていない親のプラスミドは直鎖状になり、次いで、細菌の形質転換が偏って、完全環状TRA J断片含有プラスミドを増殖させる。
Spは、IIS型制限酵素結合部位及び切断部位の正しいスペーシングを、そのような部位に隣接する場合に達成するための、TRA J受入カセット断片の特定の点へのヌクレオチド付加を表す。Spは、NotI制限酵素結合部位配列を挟むSpブロックは、効率的な作用のために、適切にNotI結合及び切断部位の間をあけるために用いられる。更なるヌクレオチドを含めて、最終の再構成された全長TRA内の正しいリーディングフレームを維持する。ヌクレオチドの選択は、BsaI結合部位のDAMメチル化の可能性のある影響を考慮した。
天然型ヒトTRA鎖の本実施例におけるTRA J受入カセット断片オリゴヌクレオチドのための全長DNA配列を、SEQ0095及びSEQ0096として示す。フォワード(F1)及びリバース(R1)オリゴヌクレオチド配列を共に列挙する。
【0170】
Jドナーベクター骨格の設計
Jドナーベクター骨格を用いて、TRA J受入カセット断片を挿入して、TRA J受入カセットベクターを創出する。この骨格は、よって、Jドナーベクターライブラリ全体が有する。TRA全長ORFを創出するための最終反応において、この骨格は、反応副生成物であり(
図2e)、よって、
図29に示すように最小限の特徴を有する。
本実施例では、Jドナーベクター骨格は、Col E1複製起点であるoriをコードする。抗生物質耐性は、アミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ遺伝子であるポジティブ選択#2である。アミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼは、カナマイシン、ストレプトマイシン、ネオマイシン及びゲンタマイシンのような抗生物質に対する耐性を付与する。この代わりのポジティブ選択は、ポジティブ選択#1で選択されるJドナーベクターが全長TCR ORF再構成の後に選択されることが確実にないようにするために用いられる。
本実施例では、相補オーバーハングであるオーバーハング*3'及びオーバーハング*4'をそれぞれ作製するベクターEcoRI及びXhoI制限酵素結合部位。オーバーハング*3'は、TRA J受入カセット断片内に含まれるオーバーハング*3に相補的である。オーバーハング*4'は、TRA J受入カセット断片内に含まれるオーバーハング*4に相補的である。これらのオーバーハングは、TRA J受入カセット断片の定方向クローニングを許容する。
Spブロックは、効率的な作用を確実にするためにEcoRIとXhoI制限酵素結合部位の間の距離をあけるための、2つの部位の間に付加されたヌクレオチドを表す。
本実施例では、Jドナー骨格をSEQ0097として表す。
【0171】
TRA J受入カセットベクターを組立てる方法
この方法は、所定のTRA J受入カセット断片(
図28)を所定のJドナーベクター骨格(
図29)に組立てて、TRA J受入カセットベクター(
図30)を創出するための標準的な分子生物学技術を利用する。得られるTRA J受入カセットベクターを用いて、TRA Jセグメント部(
図31)を挿入して、TRA Jドナーベクター(成分1B、
図2b)を構築する。
まず、TRA J受入カセットDNA断片を形成する2つのオリゴヌクレオチドをリン酸化してアニールする。
【0172】
反応ミックス
オリゴヌクレオチド(センス鎖)(100μM) 1μl
オリゴヌクレオチド(アンチセンス鎖)(100μM) 1μl
T4リガーゼ緩衝液10× 1μl
T4 PNK 1μl
H
2O 6μl
【0173】
反応条件
37℃にて1時間インキュベート
95℃にて5分変性
センス及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを、反応剤をゆっくり1分当たり3℃にて25℃まで冷却することによりアニールする
【0174】
TRA J受入カセット断片とJドナーベクター骨格の組立てライゲーション
反応ミックス
直鎖状ベクター骨格 100 ng
受入部位カセットDNA断片(0.5μM) 2μl
T4リガーゼ緩衝液10× 2μl
T4リガーゼ 0.5μl
H
2O 20μlまで
【0175】
反応条件
25℃にて1時間インキュベート
65℃にて10分間熱不活化
【0176】
得られた生成物でコンピテント大腸菌細胞を形質転換し、カナマイシン耐性コロニーを選択する。耐性コロニーを選択して、正しく組立てられた構築物を決定する。得られるプラスミドは、TRA J受入カセットベクターである。本実施例では、TRA J受入カセットベクターをSEQ0098として表し、
図30に示す。
【0177】
合成TRA Jセグメント部の設計
TRA J受入カセットベクターを作製したら、合成TRA Jセグメント部を作製して、このベクターに挿入しなければならない。各TRA J配列は、独立したTRA J受入カセットベクターの状況に挿入して、ヒトTRA TORESの一部としてのTRA Jドナーベクターライブラリを作製する。
TRA Jドナーベクターライブラリは、長い又は短いJセグメント部で構成される2つの異なる形で得られる。短いTRA Jセグメント部は、CDR3境界コドンの最初から全てのアミノ酸をコードする。しかし、TRA Jセグメントの大部分はTCR再編成中に10ヌクレオチド未満刈り込まれることを考慮して、より長いTRA J生殖系列セグメントを含むTRA Jドナーライブラリを設計する、長いTRA Jセグメント部。より長いTRA J遺伝子断片ライブラリに対する動機は、CDR3をコードするより短いオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)が、短いTRA J断片を用いる場合よりも全長TRA再構成のために必要とされるであろうことである。高可変配列が短いオリゴヌクレオチド二重鎖、odeCDR3として提供されるので、より短いCDR3オリゴヌクレオチド合成は、切断又は変異されたオリゴヌクレオチド混入物を含む可能性が低く、よって、全長TRA再構築中に配列の誤りを有するオリゴヌクレオチド二重鎖がクローニングされる可能性が低減する。更に、より短いodeCDR3合成は、費用節減になる。
TRA Jセグメント部は、4ヌクレオチド一本鎖オーバーハングをDNA断片の両末端に含むように設計された2つの一本鎖DNAオリゴヌクレオチドをアニールすることにより構築する。得られるTRA Jセグメント部を
図31に示す。
【0178】
オーバーハング*5'と呼ぶ5'オーバーハングは、BbsI作用によりJドナー受入カセットベクター内に作製されるオーバーハング*5に相補的である。オーバーハング*6'と呼ぶ3'オーバーハングは、BbsI作用によりJドナー受入カセットベクター内に作製されるオーバーハング*6に相補的である。相補オーバーハングのこの対は、TRA J受入カセットベクターへのTRA Jセグメント部の定方向クローニングを許容する。
短いTRA Jセグメント部は、CDR3-J境界Pheコドンの最初から全てのアミノ酸をコードする。CDR3は、V領域のC末端保存Cysと、Phe-Gly/Ala保存モチーフの一部であるJ領域のPheとに挟まれた配列と規定される。この保存Phe-Gly/Alaモチーフを用いて、TRA J断片の5'オーバーハングを、下流のTRA再構成のためにTTTGに標準化する。本実施例におけるこの標準化の例外は、Trp及びGlyがCDR3領域の境界をなすヒトTRAJ33及びTRAJ38である。5'オーバーハングは、本実施例において、TRAJ33及びTRAJ38の両方についてTGGGである。
長いTRA Jセグメント部は、CDR3境界アミノ酸のN末端のより多くのアミノ酸をコードするように設計されている。各々の長い遺伝子断片の開始点は、生殖系列によりコードされるTCR連結エレメントの5'末端から10〜12 ntに位置するアミノ酸コドンの最初のヌクレオチドである。各々の長いTRA Jセグメント部の5'末端は、短いTRA Jセグメント部のものと同一のままである。
短い及び長いTRA Jセグメント部の両方に、
図11においてAブロックと表されるアデニンを、各TRA Jセグメント部の3'末端に付加する。このアデニンは、TRA J受入カセットから除外されるTRA C断片の最初のヌクレオチドである。
天然型ヒトJセグメントの本実施例の短いTRA Jセグメント部の配列を、SEQ0099〜SEQ0210として表し、長いTRA Jセグメント部をSEQ0211〜SEQ0322として表す。両方の場合において、フォワード(F1)及びリバース(R1)オリゴヌクレオチド配列の両方を列挙する。
【0179】
短い又は長いJドナーベクターライブラリを組立てる方法
この方法は、短いTRA Jセグメント又は長いTRA Jセグメント部分(
図31)をTRA J受入カセットベクター(
図30)にクローニングして、短い又は長いTRA Jセグメントを含むTRA Jドナーベクター(成分1B、
図2b)を創出するための標準的な分子生物学技術を利用する。本実施例では、この方法は、制限酵素消化及びライゲーション反応を単一反応で行う。
Jドナーベクターライブラリに必要なDNA成分は、以下のとおりである:
I.短いTRA Jセグメント部又は長いTRA Jセグメント部
II.Jドナー受入カセットベクター
【0180】
TRA Jセグメント部を形成するための2つのオリゴヌクレオチドのリン酸化及びアニーリング
DNA断片
反応ミックス
オリゴヌクレオチド(センス鎖)(100μM) 1μl
オリゴヌクレオチド(アンチセンス鎖)(100μM) 1μl
T4リガーゼ緩衝液10× 1μl
T4 PNK 1μl
H
2O 6μl
【0181】
反応条件
37℃にて1時間インキュベート
95℃にて5分変性
センス及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを、反応剤をゆっくり1分当たり3℃にて25℃まで冷却することによりアニールする
【0182】
消化及びライゲーション反応について
TRA J受入カセット骨格 100 ng
TRA J DNA断片(0.5μM) 2μl
10×NEB T4リガーゼ緩衝液 2μl
BbsI 0.5μl
T4 DNAリガーゼ 0.5μl
H
2O 20μlまで
【0183】
反応条件
工程1:37℃にて2分
工程2:16℃にて3分
工程1及び2を20回反復
50℃にて5分
80℃にて5分
室温に戻す
0.5μlのNotI酵素を加え、37℃にて30分インキュベートして、親のベクターを直鎖状にする。
【0184】
反応生成物で、コンピテント大腸菌を形質転換し、カナマイシン耐性について選択する。選択された耐性コロニーをシーケンシングして、正しく組立てられた構築物を決定する。得られた構築物は、長い又は短いTRA J遺伝子断片のいずれかをコードするTRA Jドナーベクターライブラリを作り上げる。
BsaI認識部位の外側の骨格配列を除く、得られるライブラリの配列を、TRA短いJドナーライブラリについてSEQ0323〜SEQ0378として、TRA長いJドナーライブラリについてSEQ0379〜SEQ0434として示す。
【0185】
天然型ヒトTRBレパートリーのためのTRB V-Cエントリーベクター及びTRB Jドナーベクターライブラリの設計及び組立て
上のセクションでは、天然型ヒトTRAレパートリーのためのV-Cエントリーベクター及びJドナーベクターライブラリの設計及び組立てについて詳細に記載した。TRBレパートリーの配列をコードするこのようなベクターライブラリの全体的な設計及び組立ては、本質的に同じである。本実施例では、TORES又は天然型ヒトTRB TCR遺伝子座を構築するためのTRB V-Cエントリーベクター及びTRB Jドナーベクターライブラリの設計及び組立てを簡単に概説する。
TRA及びTRB鎖のためのV-Cエントリーベクター骨格が、システムの動作から得られるベクター生成物(成分2C及び2E)をeTPC-tのゲノム受容部位(成分2B及び2D)と対にするために、異なるFRT部位を含むことに注意することが重要である。このことは、単一TRA又はTRB鎖だけが、組込みカップル対により各eTPC細胞に組み込まれることを意味する。本実施例では、TRA鎖は、V-Cエントリーベクターにおいて、FRT F14及びF15部位が結合しているのに対して、TRB鎖はFRT FRT及びF3部位と結合している。
【0186】
天然型ヒトTRBレパートリーのためのTRB V-Cエントリーベクターライブラリの設計及び組立て
本実施例では、天然型ヒトTRB V-C配列レパートリーを含むTRB V-Cエントリーベクターライブラリの設計及び組立て。
TRB V-Cベクターライブラリのために必要なDNA成分は:
I.ヒトゲノムにコードされる各機能的TRB V遺伝子セグメントについてのTRB Vクローニング断片
II.TRB C1又はTRB C2クローニング断片
III.V-Cエントリーベクター骨格
である。
ヒトTRA遺伝子座と対照的に、ヒトTRB遺伝子座は、2つの別個の定常セグメントTRB C1及びC2をコードする。よって、両方の定常領域を捕捉するために、2つのV-Cエントリーベクターセットを構築して、Vセグメントの各々をC1及びC2セグメントの各々と対にする。
本実施例では、TRB V及びTRB Cクローニング断片を合成及び使用して、単一制限酵素及びリガーゼ反応において標的V-Cエントリーベクター骨格に組立てる。本実施例では、標的V-Cエントリー骨格は、哺乳動物細胞内で再構成されたTRB ORFの一過性発現を許容するように設計されている。
本実施例では、IIS型制限酵素BbsIを用いてTRB V-Cエントリーベクターライブラリを構築する。全長TRB ORFを再構成するためにライブラリの機能化において用いるIIS型制限酵素は、BsaIである。
【0187】
合成TRB Vクローニング断片の設計
TRB Vクローニング断片の遺伝子エレメントの配置は、
図25に示すように、上の1で記載したTRA Vクローニング断片のものと同一である。
天然型ヒトTRB鎖の本実施例におけるTRB Vクローニング断片の全長DNA配列を、SEQ0435〜SEQ481として表す。
【0188】
合成TRB Cクローニング断片の設計
TRB Cクローニング断片の遺伝子エレメントの配置は、
図26に示すように、上で記載したTRA Cクローニング断片のものと同一である。
TRB遺伝子座は、2つの別個のCセグメントをコードし、共にTRB V-Cエントリーベクターライブラリの設計に含まれる。
天然型ヒトTRB鎖の本実施例におけるTRB Cクローニング断片の全長DNA配列を、SEQ0482及びSEQ0483として表す。
【0189】
TRB V-Cエントリーベクターライブラリを組立てる方法
所定のTRB V及びTRB Cクローニング断片を所定のV-Cエントリーベクター骨格に組立てて、TRB V-Cエントリーベクターを創出する方法は、TRAシステムについて上で記載したものと同じである。本実施例におけるTRB V-Cエントリーベクターについて用いるV-Cエントリーベクター骨格は、5'及び3'遺伝子エレメントとしてそれぞれFRT及びF3 FRT配列を含む。このFRT/F3 V-Cエントリーベクター骨格配列を、SEQ0689として表す。TRA及びTRB TORESシステムの間で異なるFRT部位の状況は、組込みベクターを互いに遮蔽し、それらを組込みカップル対としてeTPCのゲノム受容部位と対をなす。
TRA V-Cエントリーベクターライブラリを作り上げるクローニングされたV-C断片の配列を、SEQ0484〜SEQ0577として表す。
【0190】
天然型ヒトTRBレパートリーについてのTRB Jドナーベクターライブラリの設計及び組立て
本実施例では、天然型ヒトTRB J配列レパートリーを含むTRB Jドナーベクターライブラリの設計及び組立て。
本実施例では、TRB J受入カセット断片を構築して、Jドナーベクター骨格に挿入して、TRB J受入カセットベクターを創出する。その後、合成TRB Jセグメント部をTRB J受入カセットベクターに組立てて、TRB Jドナーベクターライブラリを創出できる。このフレキシブル多工程組立て法により、Jセグメント長のバリエーションのようなJドナーセグメント特徴の迅速で対費用効果の良い操作が可能になる。
この手順は、実施例2に記載するTRA Jドナーベクター組立てと同じパターンに従う。しかし、J受入カセット断片がCセグメントの部分を含むので、TRA J及びTRB J受入カセット断片は、C部配列に関して異なり、それぞれのC遺伝子セグメントに対応しなければならないことに注意すべきである。更に、単一J受入カセット断片だけを必要とするTRA Jのシナリオとは対照的に、TRB Jは、代替のC1及びC2セグメントの使用を可能にするために、2つの別個のJ受入カセット断片を必要とする。
【0191】
TRB Jドナーベクターライブラリのために必要なDNA成分は:
I.TRB J C1又はTRB J C2受入カセット断片
II.Jドナーベクター骨格
III.TRB J C1又はTRB J C2受入カセットベクター
IV.TRB Jセグメント部
である。
【0192】
合成TRA J受入カセット断片の設計
2つの一本鎖DNAオリゴヌクレオチドのアニーリングを用いて、
図28に示すように、4ヌクレオチド一本鎖オーバーハングをDNA断片の各末端に含む受入カセット断片を作製する。4ヌクレオチドオーバーハングにより、TRB J受入カセットベクターを創出するために、Jドナーベクター骨格への定方向リガーゼ依存クローニングが可能になる。
C1及びC2セグメントの代替の使用に必要な2つの受入カセット断片を、SEQ0578及びSEQ0581として表す。各断片について、フォワード(F1)及びリバース(R1)オリゴヌクレオチド配列を示す。
【0193】
TRB J受入カセットベクターを組立てる方法
TRB J受入カセットベクターを組立てる方法は、実施例2に記載するTRA J受入カセットベクターを組立てる方法と同一である。同じJドナーベクター骨格(SEQ0097)を用いて、TRB遺伝子座についての代替のCセグメントに対応する1つのC1又はC2部を各々含む2つのTRB J受入カセットベクターを作製する。
得られる2つのTRB J受入カセットベクターを用いて、TRB Jセグメント部に挿入して、TRB Jドナーベクターを構築する。
得られるTRB J受入カセットベクターを、SEQ0582及びSEQ0583として表す。
【0194】
合成TRB Jセグメント部の設計
TRB Jセグメント部は、4ヌクレオチド一本鎖オーバーハングをDNA断片の各末端に含むように設計された2つの一本鎖DNAオリゴヌクレオチドをアニールすることにより構築する。この部分の配置及び組立ての方法は、TRA Jセグメント部のものと同一であり、
図31に示す。
短いTRB Jセグメント部の場合、CDR3-J境界Pheコドンの最初から全てのアミノ酸をコードする。CDR3は、V領域のC末端保存Cysと全てのヒトTRB Jセグメントにわたって保存されているPhe-Gly モチーフの一部であるJ領域のPheとに挟まれた配列として規定される。この保存Phe-Glyモチーフを用いて、下流のTRB再構成のためにTRA J断片の5'オーバーハングをTTTGに標準化する。TRA Jセグメントと異なって、本実施例におけるTRA Jセグメント部におけるこの標準化されたオーバーハングに例外はない。
短い及び長いTRB Jセグメント部の両方に、
図11においてAブロックと表されるアデニンを、各TRB Jセグメント部の3'末端に付加する。このアデニンは、TRB J受入カセットから除外されるTRB C断片の最初のヌクレオチドである。
天然型ヒトJセグメントの本実施例の短いTRB Jセグメント部の配列を、SEQ0584〜SEQ0609として、長いTRB Jセグメント部をSEQ0610〜SEQ0635として表す。両方の場合において、フォワード(F1)及びリバース(R1)オリゴヌクレオチド配列の両方を列挙する。
【0195】
TRB短い又は長いJドナーベクターライブラリを組立てる方法
TRB Jドナーライブラリを組立てる手順は、上記のTRAライブラリのものと同一である。しかし、TRA遺伝子座セグメントについての短い及び長いライブラリとは対照的に、TRBライブラリの場合、4つのライブラリを作製する。
TRBライブラリの場合、各短い及び長いライブラリは、代替のC1及びC2 Cセグメントの各々を有するように構築して、TRB Jドナーライブラリ内で4つの部分集合をもたらすことができる。
Jドナーベクターライブラリのために必要なDNA成分は、以下のとおりである:
I.短いTRB Jセグメント部又は長いTRB Jセグメント部
II.TRB J C1又はTRB J C2受入カセットベクター
【0196】
上記と同じ手順に従って、TRB Jドナーライブラリ内の4つの得られる部分集合を作製する。BsaI認識部位の外側の骨格配列を除く得られるライブラリの配列を示す。
SEQ0636〜SEQ0648として表すTRB C1短いJドナーライブラリ
SEQ0649〜SEQ0661として表すTRB C2短いJドナーライブラリ
SEQ0662〜SEQ0674として表すTRB C1長いJドナーライブラリ
SEQ0675〜SEQ0687として表すTRB C2長いJドナーライブラリ
【0197】
実施例2 CDR3をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)の設計及び作製
上の実施例では、全体的な二部分装置の成分2C及び2Eとしての全長ヒトTCR鎖をアウトプットするための、V-Cエントリーベクター及びJドナーベクターライブラリヒトTRA及びTRB鎖としてのTORESの設計及び構築について記載する。
全長TCRオープンリーディングフレームの一工程再構成のためのこれらのV-Cエントリーベクター及びJドナーベクターライブラリの使用は、標的全長TCR鎖配列を完成するために、CDR3をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)構築物が提供されることを必要とする(
図2c)。V-Cエントリーベクター及びJドナーベクターライブラリが一旦作製されると、これらのベクターは、標的全長TCR鎖配列の所望のV-J-C組合せを選択するために制限なく利用され得るストック要素を表す。対照的に、odeCDR3は、標的全長TCR ORFに特異的な短いユニーク配列を表す。
本実施例は、天然型ヒトTRA及びTRBベクタープラットフォームにおいて用いるためのodeCDR3の設計及び作製について記載する。
【0198】
TRA odeCDR3の設計
2つの一本鎖DNAオリゴヌクレオチドのアニーリングは、
図2cに示すように、4ヌクレオチド一本鎖オーバーハングをDNA断片の各末端に含むodeCDR3を作製する。4ヌクレオチドオーバーハングは、エントリーベクターにコードされるTRA Vセグメントの3'末端(オーバーハング‡1-5')及びTRA再構成中のTRA J断片の5'末端(オーバーハング‡2-3')への定方向リガーゼ依存クローニングを許容するように設計されている。オーバーハング‡1-5'は、TRA V-CエントリーベクターのVセグメントにおいてコードされる標準化されたオーバーハング‡1-5に相補的なCTGCに標準化される。オーバーハング‡2-3'の場合、取りうる配列の形が2つあり、これは、ヒトTRA遺伝子座からのJセグメントのうちの配列相違により決定される。天然型ヒトTRA JセグメントTRAJ33及びTRAJ38について、オーバーハング‡2-3'は、これらの2つのJセグメントのJドナーベクターにおいてコードされるオーバーハング‡2-3に相補的なTGGGに標準化される。全ての他のヒトTRA Jセグメントについて、オーバーハング‡2-3'は、これらのJセグメントのJドナーベクターにおいてコードされるオーバーハング‡2-3に相補的なTTTGに標準化される(実施例1を参照されたい)。
【0199】
TRB odeCDR3の設計
TRB odeCDR3について、2つの一本鎖DNAオリゴヌクレオチドのアニーリングは、
図4cに示すように、4ヌクレオチド一本鎖オーバーハングをDNA断片の各末端に含むodeCDR3を作製する。4ヌクレオチドオーバーハングは、エントリーベクターにおいてコードされるTRB Vセグメントの3'末端、オーバーハング‡1-5'及びTRB再構成中のTRB J断片の5'末端、オーバーハング‡2-3'への定方向リガーゼ依存クローニングを許容するように設計されている。オーバーハング‡1-5'は、TRB V-CエントリーベクターのVセグメントにおいてコードされる標準化されたオーバーハング‡1-5に相補的なTTGCに標準化される。2つの代替オーバーハング‡2-3の形が必要とされるTRA odeCDR3とは対照的に、TRB odeCDR3について、オーバーハング‡2-3は、全てのTRB JセグメントのJドナーベクターにおいてコードされるオーバーハング‡2-3に相補的なTTTGに標準化される(実施例1を参照されたい)。
【0200】
一般的なodeCDR3設計
一般的に、odeCDR3設計は、オーバーハングにマッチしていなければならず、4ヌクレオチドオーバーハングは、エントリーベクターにおいてコードされるVセグメントの3'末端(オーバーハング‡1-5')及び再構成中のJ断片の5'末端(オーバーハング‡2-3')への定方向リガーゼ依存クローニングを許容するように設計されている。
【0201】
リン酸化CDR3 DNAオリゴヌクレオチド二重鎖を作製する方法
odeCDR3を形成するための2つのオリゴヌクレオチドのリン酸化及びアニーリング
反応ミックス
オリゴヌクレオチド(センス鎖)(100μM) 1μl
オリゴヌクレオチド(アンチセンス鎖)(100μM) 1μl
T4リガーゼ緩衝液10× 1μl
T4 PNK 1μl
H
2O 6μl
【0202】
反応条件
37℃にて1時間インキュベート
95℃にて5分変性
センス及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを、反応剤をゆっくり1分当たり3℃にて25℃まで冷却することによりアニールする
【0203】
実施例3 eTPC-tを作製するためのTORES及びeTPCSを含む二部分装置の実証
本実施例は、標的TCRの配列情報に鑑みて、TRA及びTRB全長TCR ORFを再構成するために必要なベクターライブラリ成分及びodeCDR3を規定するために用いられる工程について記載する。本実施例は、全長モデルTRA及びTRB TCR鎖対を組立てるためのTORESプロセスについて実証する。本実施例は、eTPC-tを作製するための、eTPCへのRMCEによる前記ベクターの組込みによるeTPCSも実証し、その後、特異的HLA多量体反応剤での表面提示TCRの染色によりそのTCR対特異性を確認する。
【0204】
V-Cエントリーベクター、Jドナーベクター及びodeCDR3の選択
クローニングライブラリにおいて表される全ての可能な生殖系列断片の配列を、興味対象のTRA又はTRB配列とアラインメントする。TRA又はTRB配列に対して最も高い同一性を有する遺伝子断片は、どのV、J及びC遺伝子エレメントが所望のTRA又はTRBクローン形質配列を構成するかを決定する。TRAについて、適当なV-Cエントリーベクターは、所望のTRAのV使用の決定に基づいて選択される。TRBについて、配列カバー範囲がV及びC使用を決定するために十分である場合、適当なV-Cエントリーベクターは、所望のクローン形質がTRBC1又はTRBC2のいずれを用いるかということに加えて、前記TRBクローン形質のV使用に対応して選択される。
特異的TRAJ又はTRB J遺伝子エレメントの短い及び長いバージョンが共にTRA及びTRB配列とそれぞれアラインメントされる場合、より長い遺伝子エレメントをコードする対応するプラスミドをTRA再構築のために用いる。
【0205】
TRAが合成されるために必要なodeCDR3配列は、TRA Vアラインメントされた遺伝子断片の3'末端と、アラインメントされたTRAJ遺伝子断片の5'末端との間の領域として決定される。オリゴヌクレオチドセンス鎖は、更なる5' 4ヌクレオチドオーバーハングであるオーバーハング‡1-5' CTGCを必要とし、これは、BsaIで消化された場合にTRA Vエントリーベクターに作製されるオーバーハングであるオーバーハング‡1-3'に普遍的である。相補オリゴヌクレオチドアンチセンス鎖は、更なる5' 4ヌクレオチドオーバーハングであるオーバーハング‡2-3'を必要とし、これは、TRA再構築反応に付加されるTRAJベクターに特異的なオーバーハングであるオーバーハング‡2-5'にユニークである。
TRBが合成されるために必要なCDR3配列は、TRB Vアラインメントされた遺伝子断片の3'末端と、アラインメントされたTRB J遺伝子断片の5'末端との間の領域として決定される。オリゴヌクレオチドセンス鎖は、更なる5' 4ヌクレオチドオーバーハングであるオーバーハング‡1-5'、TTGCを必要とし、これは、BsaIで消化された場合にTRB Vエントリーベクターに作製されるオーバーハングであるオーバーハング‡1-3'に普遍的である。相補オリゴヌクレオチドアンチセンス鎖は、更なる5' 4ヌクレオチドオーバーハングであるオーバーハング‡2-3'を必要とし、これは、TCR再構築反応に付加されるTRB Jベクターに特異的なオーバーハングであるオーバーハング‡2-5'にユニークである。
【0206】
本実施例では、HLA-A*02:01において提示されるヒトサイトメガロウイルス(HCMV)抗原に対する既知の特異性を有するモデルTCR TRA/TRB対(JG9-TCR)を用いる。この抗原性ペプチドは、HCMV pp65タンパク質に由来し、HLA-A*02:01において提示されるペプチド抗原の全長アミノ酸配列は、NLVPMVATVである。TRA(JG9-TCR-アルファ)及びTRB(JG9-TCR-ベータ)鎖の配列を、それぞれSEQ701及びSEQ702として示す。
この全長配列に基づいて、TRA及びTRBライブラリから適当なV-Cエントリー及びJドナーベクターを選択することは簡単であった。
本実施例では、SEQ0698骨格におけるTRA V-CエントリーベクターSEQ0088(リスト0049〜0094から)と、JドナーベクターSEQ0371(リスト0323〜0378)とを選択した。
本実施例では、SEQ0688骨格におけるTRB V-CエントリーベクターSEQ0563(リスト0484〜0577から)と、JドナーベクターSEQ0637(リスト0636〜0687)とを選択した。
TRA鎖について合成されたodeCDR3を、それぞれセンス及びアンチセンスとしてSEQ703及びSEQ704に示す。
TRB鎖について合成されたodeCDR3を、それぞれセンス及びアンチセンスとしてSEQ705及びSEQ706に示す。
【0207】
全長再構成の方法
上記の選択されたTRA及びTRB成分の各々について、制限酵素/リガーゼサイクル反応を以下に記載するようにして行った:
消化及びライゲーション反応について
V-Cエントリーベクター 100 ng
Jドナーベクター 60 ng
odeCDR3オリゴヌクレオチド二重鎖(0.5μM) 2μl
10×T4リガーゼ緩衝液 2μl
BsaI 0.5μl
T4 DNAリガーゼ 0.5μl
H
2O 20μlまで
【0208】
反応条件
工程1:37℃にて2分
工程2:16℃にて3分
工程1及び2を20回反復
50℃にて5分
80℃にて5分
室温に戻す
0.5μlのNotI酵素を加え、37℃にて30分インキュベートする。
得られる反応生成物でコンピテント大腸菌細胞を形質転換し、カルベニシリン含有プレートに播種した。
カルベニシリン耐性コロニーのスクリーニング及びシーケンシングを行って、正しく組立てられた構築物を決定した。コロニーのスクリーニングは、単離プラスミドDNAの制限酵素特徴的(diagnostic)消化により行い、予期されるDNA断片サイズをDNA電気泳動により観察した。得られる構築物は、全長TCRアルファ及びベータクローン配列をコードする。
【0209】
再構成されたTRA及びTRBベクターの確認
上記の再構成されたTCR TRA TRB対の特異性を確認するために、前記対を有するeTPC-tを作製したが、ここで、親のeTPCは、別個の合成ゲノム受容部位成分2B及び2Dを含む。部位成分2B及び2Dは各々、TCR対(JG9-TCR)の単一鎖をコードする、作製した組込みベクター成分2C及び2EにおけるRMCE部位とマッチするように設計した。
本実施例では、親のeTPC株化細胞ACL-488を用い、これは、TCRヌル、HLAヌル、CD4ヌル及びCD8ヌルであり、成分2B及び2Dを更に含む。成分2Bは、2つのユニーク異種特異的リコンビナーゼ部位FRT及びF3を含み、これらは、コザック配列及び選択マーカーである青色蛍光タンパク質(BFP)をコードするORFを挟む。FRT部位の5'には、EF1aプロモータがコードされ、F3部位の3'にはSV40ポリアデニル化シグナルターミネータがコードされている。成分2Dは、2つのユニーク異種特異的リコンビナーゼ部位F14及びF15を含み、これらは成分2Bとは異なるものであった。これらの部位は、コザック配列及び選択マーカーである赤色蛍光タンパク質(RFP)をコードするORFを挟む。F14部位の5'にはEF1aプロモータがコードされ、F15部位の3'にはSV40ポリアデニル化シグナルターミネータがコードされている。
【0210】
TORESを用いて作製される上記の成分2C及び2Eは、2つの異種特異的リコンビナーゼ部位FRT/F3(2C)及びF14/F15(2E)を含み、よって、それぞれ成分2B及び2Dにマッチしている。成分2Cは、FRT/F3部位の間に、コザック配列、開始コドン及びJG9-TCR-ベータ鎖をコードするTCR ORFを更に含む。成分2Eは、F14/F15部位の間に、コザック配列、開始コドン及びJG9-TCR-アルファ鎖をコードするTCR ORFを更に含む。
eTPC-tを、ACL-488(eTPC)のエレクトロポレーションによりRMCEを通じて創出した。エレクトロポレーションの4〜10日後に、成分2D及び2B選択マーカーによりコードされる蛍光タンパク質シグナルBFP及びRFPの減少を示す個別の細胞を、FACSにより選別した。個別のモノクローンを成長させ、次いで表現型を評価した。得られたモノクローンACL-851は、BFP及びRFPネガティブであった(
図32a及びb)。ACL-851は、TCR及びCD3表面発現も示したが、親の株化細胞は示さなかった(
図32c及びe)。更に、導入したJG9-TCRは、HLA-A*02:01-NLVP四量体と特異的染色を示し、このことは、これがeTPC-tの表面で機能的TCRspであることを示した(
図32d〜f)。ACL-851は、PCRにより、ゲノムに組み込まれた成分2B'及び成分2D'によりコードされるTCRspを含むことが確認された(
図32g及びh)。
まとめると、成分2B及び2Dを成分2B'及び2D'に変換するようなTORESにおいて作製した成分2C及び2Eに送達されたTCR ORFを組み込むためのRMCEベースの組込み法を用いることによりeTPCをeTPC-tに変換し、ここで、このeTPC-tにより、細胞の表面で機能的TCRspが発現された。更に、本実施例は、eTPC-t及び被分析物抗原の二元組成物を組み合わせ、可溶性被分析物抗原(HLA多量体:HLA-A*02:01-NLVPMVATV)との間の複合体形成に基づいてeTPC-tが選択される単純なeTPC:Aシステムの動作を実証した。
【0211】
実施例4:eTPC-tからのeTPC-x復帰の実証
本実施例では、eTPC-xへのeTPC-tの変換について記載し、ここで、eTPC-xは、TCR鎖ORFをコードする成分2B'を有し、成分2Dは、相補TCR鎖ORFの組込みのために利用可能である。eTPC-xの成分DへのeTPC-tの成分2D'のの変換は、成分2D'にマッチした遺伝子ドナーベクター(成分2Z)の使用により達成される。
本実施例では、実施例3で作製した親のeTPC-t株化細胞ACL-851を用いた。成分2Zは、成分2D'にマッチした2つの異種特異的リコンビナーゼ部位F14/F15、コザック配列、開始コドン及び組込みの選択マーカーとしての緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするORFで構成されるプラスミドベクターである。eTPC-tは、成分2Z及びRMCEリコンビナーゼ酵素をコードするベクターと、エレクトロポレーションにより組み合わされ、それにより、細胞は、CD3提示の喪失及び組込みのGFP選択マーカーの獲得について後で選択された。モノクローンACL-987は、FACSにより表現型が特徴決定され、ACL-987がGFPを獲得し、CD3及びTCRabを喪失したことが観察され(
図33b、d)、このことは、JG9-TCR-アルファのGFP ORFへの交換、及び成分Dの成分D'への変換、よってeTPC-xの作製が成功したことを示した。これと比べて、親のeTPC-tであるACL-851は、GFP発現を欠き、CD3及びTCRab表面発現を有する(
図33a〜c)。.
まとめると、本実施例は、eTPC-tのeTPC-xへの変換と、代替相補TCR鎖ORFの更なる組込みカップリング事象のための、GFP組込みの選択マーカーとの交換による成分2D'でのJG9-TCR-アルファTCR ORFの除去、それによる成分2Dの創出とを実証する。この変換は、ゲノム組込みのためのRMCE法を用いて行った。
【0212】
実施例5:TORESによる一工程でのTCRバリアントの配列を多様化したプールの作製、及びeTPC-tのプールを創出するためのeTPC-xへのショットガン組込みの実証
本実施例は、64の単一JG9-TCR-アルファバリアントをコードするベクター(成分2E)のプールをどのようにして作成し、単一JG9-TCR-ベータを含む親のeTPC-x株化細胞(実施例4に記載する)に組み込んで、各細胞が表面で単一の分離したTCRspを発現するeTPC-tのライブラリを提示するために各個別の細胞が単一TRA鎖を組み込んでいるプールされたeTPC-tライブラリをどのようにして創出するのかについて記載する。このような方法は、「ショットガン」組込みと呼ぶ。64のJG9-TCRαバリアントは、
図3に示す方法により、V及びJ断片の接合部にあるCDR3配列を改変することにより創出した。この単一反応多様化は、天然型のTRB鎖対と共に哺乳動物細胞の表面で提示された場合に特異的HLA-多量体反応剤に対して広範囲の親和性を有するTCRセットを生成することが示されている。このアプローチは、哺乳動物生細胞の機能的な状況において提示及び選択され得る全長TCR ORFを用いる迅速TCR操作に理想的に適している。
【0213】
odeCDR3縮重性による迅速TCR鎖多様化
TCR ORFの多様化及び選択は、特異性、親和性及び/又はシグナル伝達能力が変化したTCR鎖対を操作するために望ましい。TORESシステムは、元の標的配列から系統的に変化したTCR鎖コレクションの迅速な作製のために適している。本実施例では、選択されたコドン位置にて規定され限定されたヌクレオチド縮重性を有する再構成反応にodeCDR3を含めることによるモデルTCR鎖対の多様化のアプローチを示す。このアプローチを用いて、実施例3に示すモデルJG9-TCR対のJG9-TCR-アルファ鎖を多様化した。
【0214】
多様TRA鎖コレクションの作製
図3は、odeCDR3プールの使用による単一反応でのTCR鎖の配列を多様化したコレクションの作製のための全体的な方策を表す。単一C-Vエントリーベクター及びJドナーベクターを選択して、最終全長TCR生成物における標的V、J及びC遺伝子セグメントを表す(
図3.ボックスi及びボックスii)。選択した多様性を有するodeCDR3プールが作製されて、このodeCDR3プールにおいて幾つかの異なるCDR3配列がある(
図3、ボックスiii)。全ての成分を制限酵素/リガーゼサイクル反応に組み合わせた場合に、得られる生成物は、規定されたV、JC遺伝子セグメント使用で、CDR3領域における規定された多様性の全長TCR鎖を含む構築物のコレクションである(
図3、ボックスiv)。最終生成物における多様化された全長TCR鎖の数は、反応に加えた初期odeCDR3プールにおけるodeCDR3バリアントの数に比例する。
本実施例では、JG9-TRA-アルファ鎖が配列多様化の標的であり、このことは、3つのコドンの各々において4つの異なるアミノ酸をもたらすことができるように各々が別々のコドンを変更する3つの別個の位置にてヌクレオチド縮重性を有するodeCDR3センス及びアンチセンスオリゴの合成により達成した。縮重性について選択したコドンは、CDR3ループにわたって間をあけた。odeCDR3オリゴをSEQ0743及びSEQ0744として示し、ここで、縮重コドンをNで表す。
odeCDR3オリゴを、実施例2に概説する方法によりアニールし、3つの別々のコドン位置での4倍アミノ酸縮重は、元のコーディング配列(すなわちSEQ0701)を含む64のユニーク配列を有するodeCDR3生成物プールをもたらした。
odeCDR3を用いて、実施例3に概説する方法により全長TRA ORFを組立てて、3つの別個のコドン位置にて4倍アミノ酸縮重を有する64のユニークTRA ORFを創出した。本実施例では、記載する位置にて縮重ヌクレオチド使用を有するodeCDR3を合成し、すなわち再構成を単一チューブ内で行って、64全ての鎖バリアントを作製した。
並行して、各バリアントJG9-TCR-アルファ鎖及びJG9-TCR-ベータ鎖も別のV-Cエントリー骨格(SEQ0048)にクローニングしたが、これは、並行特徴決定のための一過性トランスフェクションを許容する。予期された全てのクローンを、単離ベクターとして調製し、配列を確認した。
【0215】
TRB鎖対を有する多様化したJG9-TCR-アルファ鎖の特徴決定
本実施例では、JG9-TCR-ベータ(成分2B'において)及びCD3鎖を発現する親のeTPC-x株化細胞ACL-987(株化細胞の構築は、実施例4に記載する)を用いた。成分2Dは、選択マーカーGFPをコードし、実施例6に記載する。本実施例では、F14/F15部位に挟まれた成分2Eのプールを創出する64のJG9-TCR-アルファバリアントを作製した。
64の成分2EのACL-987へのエレクトロポレーションによりRMCEを通じて、eTPC-tプールを創出した。ポリクローンを、GFP発現に基づいて選択した。得られたポリクローンACL-988は、GFPポジティブ細胞のみで構成される親の系統とは異なって、GFPポジティブ及びGFPネガティブの両方の細胞集団で構成された(
図34a及びb)。しかし、GFPネガティブ集団のみが、強いCD3発現を継続して示し、このことは、成分2Dの成分2D'への変換の成功、よってeTPC-xがeTPC-tに変換されたことを示す(
図34c及びd)。更に、ACL-988 GFPネガティブ集団は、JG9-TCR特異的四量体反応剤(HLA-A*02:01-NLVP)を用いて染色した場合に2つの別個の強度を示し、このことは、この集団が、結合効率が異なるTCRバリアントを発現する細胞で構成されることを示唆した。
並行して、WT JG9-TCR-ベータと共に64全てのJG9-TCR-アルファバリアントの特徴決定を、親のeTPC(ACL-987)において一過的に発現させた。この一過性アッセイを用いて、バリアントJG9-TCRを発現する上記のプールしたeTPC-tにおいて提示される各TCR対についての参照に対するHLA-A*02:01-NLVP四量体反応剤に対する相対染色単位(RSU)を決定した。RSUは、CD3ポジティブ集団についてのCD3ネガティブ集団に対するHLA-A*02:01-NLVP四量体シグナルの平均蛍光強度(MFI)の比率として算出し、各TCR鎖対バリアントの結合強度の指標であった。親のACL-987系統を各JG9-TCR-アルファバリアントで独立してトランスフェクションした後に、細胞を、CD3に対する抗体及びHLA-A*02:01-NLVP四量体反応剤で染色し、フローサイトメトリにより分析した。
図34eにプロットする各点は、各64のバリアントについて観察されたRSUを表す。
【0216】
HLA-A*02:01 NLVPポジティブであったACL-988細胞が高いRSU TRAバリアントをコードし、HLA-A*02:01 NLVPネガティブのものが低RSU TRAバリアントをコードすることを確認するために、各集団についての個別の細胞及びそれらのTRAをシーケンシングし、
図34eにプロットした。実際に、HLA-A*02:01 NLVPポジティブであった個別のACL-988細胞は、個別に試験したバリアントにおいて高RSUの結果を主に示したTRAバリアントをコードした(
図34e、塗りつぶしていない丸)。更に、HLA-A*02:01 NLVPネガティブであった個別のACL-988細胞は、低RSU結果を主に示したTRAバリアントをコードした(
図34e、塗りつぶしていないされている三角)。
まとめると、本実施例は、CDR3多様化TCR ORFをコードするベクターのプールしたライブラリを単一反応で作製する。このプールしたライブラリは、eTPCゲノム受容部位とマッチしているベクターにコードされる。複数のTCRを含むプールしたeTPC-tライブラリの作製は、天然型相反TCR ORFをコードするeTPC-xへのショットガン組込みを用いて単一工程で成功した。作製した遺伝子改変ポリクローナル株化細胞ACL-988は、天然型対に特異的なHLA四量体反応剤に対する様々な染色強度について機能的に染色できるTCRspのライブラリを提示した。このことは、ヒト細胞の表面で提示されるCD3複合体の天然の状況において選択されるTCR対の選択的操作についての協力で迅速なアプローチを表す。
【0217】
実施例6:成分2Fの機能的実証
2つのユニークゲノム受容部位(成分2B及び2D)で操作され、天然型CD3発現を利用してHLA発現についてヌルになるように操作され、2成分合成応答エレメント(成分2F)を有するeTPC株化細胞(ACL-1063、成分2A)についてここで記載する。
応答エレメントは、ドライバ-アクチベータ成分及びアンプリファイヤ-レポート成分で構成され、これらの両方のユニットは、合成エンハンサを利用した。ドライバは、NFAT-AP1-NFkBについての3セットの直列転写因子結合部位(3xNF-AP-NB)をコードする天然型TCRシグナル伝達経路に応答性の合成エンハンサである。転写活性化の際に、ドライバは、アンプリファイヤエンハンサ領域内に同族DNA認識配列が直列で6回存在するヘルペスVP16活性化ドメイン、GAL4 DNA結合ドメイン並びにN及びC末端にて2つの核局在化シグナル(NV16G4N)の融合により導かれるアクチベータタンパク質である合成設計転写因子の発現を誘導する。ドライバ及びアンプリファイヤエンハンサは共に、コアプロモータ配列(CMV IE1プロモータからのB認識エレメント(BRE)、TATAボックス、イニシエータ(INR)及び転写開始部位(TSS)をそれぞれの転写因子結合部位のすぐ3'に利用した。転写活性化の際にアンプリファイヤは、レポーターRFPの発現を駆動する。
【0218】
本実験では、実施例3に記載したように、eTPC株化細胞をeTPC-t株化細胞(ACL-1277)に変換したが、ここで、成分2B'及び2D'でのTCR鎖は、HCMV HLA-A*02:01-NLVPMVATVに特異的なTCR対をコードする。
eTPC-t株化細胞に、次いで、HLA-A*02:01(ACL-209)若しくはHLA-A*24:02(ACL-963)を提示するか、又はHLA-ヌル(ACL-128)であるAPCを負荷した。ここで、APCを、ペプチドNLVPMVATV若しくはVYALPLKMLでパルスしたか又はペプチドを用いなかった。その後、30,000のeTPC-tを10,000のAPCと24時間共培養した。24時間後に細胞を採集し、洗浄し、集団を区別するためにeTPC及びAPCについて特異的なマーカーで染色し、フローサイトメトリにより分析した。eTPC-tである成分2Fの強い活性化(RFP+発現>80%)は、既知の同族標的抗原を負荷されたeTPC-t、すなわちA*02:01-NLVPMATVを有するAPCにおいてのみ観察された(
図35)。
結論として、機能的成分2Fを含むeTPC株化細胞を操作し、その後、それを用いてeTPC-tを創出した。eTPC-tと同族標的T細胞抗原を提示するAPCとの相互作用の際に、RFP発現の増加として応答を測定可能であった。逆に、非同族T細胞抗原及びHLA又はHLAアレルなしを提示するAPCと接触させた場合、バックグラウンドを超えるRFP発現の測定可能な増加は、eTPC-tにより示されなかった。機能的成分2Fを有するeTPC-tを用いて、よって、T細胞受容体とAPCにより提示される同族T細胞抗原との間の機能的相互作用の同定及び特徴決定が可能である。
配列
以下、本明細書で言及する配列を示す表を提示する。
【0219】
【表12-1】
【0220】
【表12-2】
【0221】
【表12-3】
【0222】
<210> 745 <223> pcDNA3.1_GFPベクターV1.A.4
<210> 746 <223> pcDNA3.1_RFPベクターV1.A.6
<210> 747 <223> pMA-SV40pAベクターV1.C.2
<210> 748 <223> pMA-CS-JG9-TCRベータベクターV3.C.5
<210> 749 <223> pMA-F14-GFP-F15ベクターV4.H9
<210> 750 <223> pMA-F14-TCR-JG9-アルファ-F15ベクターV7.A.3
<210> 751 <223> pMA-FRT-TCR-JG9-ベータ-F3ベクターV7.A.4
<210> 752 <223> F14-TCRaF15 CDR3degen.64mixベクターV8.F.8
<210> 753 <223> CMVpro-Flp-sv40pA-V2ベクターV4.I.8
<210> 754 <223> JG9-TRA CDR3 64バリアントベクター骨格VP.7751.RC1-A1〜H8
<210> 755 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_A1のCDR3配列
<210> 756 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_A2のCDR3配列
<210> 757 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_A3のCDR3配列
<210> 758 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_A4のCDR3配列
<210> 759 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_A5のCDR3配列
<210> 760 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_A6のCDR3配列
<210> 761 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_A7のCDR3配列
<210> 762 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_A8のCDR3配列
<210> 763 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_B1のCDR3配列
<210> 764 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_B2のCDR3配列
<210> 765 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_B3のCDR3配列
<210> 766 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_B4のCDR3配列
<210> 767 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_B5のCDR3配列
【0223】
<210> 768 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_B6のCDR3配列
<210> 769 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_B7のCDR3配列
<210> 770 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_B8のCDR3配列
<210> 771 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_C1のCDR3配列
<210> 772 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_C2のCDR3配列
<210> 773 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_C3のCDR3配列
<210> 774 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_C4のCDR3配列
<210> 775 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_C5のCDR3配列
<210> 776 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_C6のCDR3配列
<210> 777 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_C7のCDR3配列
<210> 778 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_D1のCDR3配列
<210> 779 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_D2のCDR3配列
<210> 780 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_D3のCDR3配列
<210> 781 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_D4のCDR3配列
<210> 782 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_D5のCDR3配列
<210> 783 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_D6のCDR3配列
<210> 784 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_D7のCDR3配列
<210> 785 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_D8のCDR3配列
<210> 786 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_E1のCDR3配列
<210> 787 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_E2のCDR3配列
<210> 788 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_E3のCDR3配列
<210> 789 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_E4のCDR3配列
<210> 790 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_E5のCDR3配列
【0224】
<210> 791 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_E6のCDR3配列
<210> 792 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_E7のCDR3配列
<210> 793 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_E8のCDR3配列
<210> 794 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_F1のCDR3配列
<210> 795 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_F2のCDR3配列
<210> 796 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_F3のCDR3配列
<210> 797 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_F4のCDR3配列
<210> 798 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_F5のCDR3配列
<210> 799 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_F6のCDR3配列
<210> 800 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_F7のCDR3配列
<210> 801 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_F8のCDR3配列
<210> 802 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_G1のCDR3配列
<210> 803 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_G2のCDR3配列
<210> 804 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_G3のCDR3配列
<210> 805 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_G4のCDR3配列
【0225】
<210> 806 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_G5のCDR3配列
<210> 807 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_G6のCDR3配列
<210> 808 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_G7のCDR3配列
<210> 809 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_G8のCDR3配列
<210> 810 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_H1のCDR3配列
<210> 811 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_H2のCDR3配列
<210> 812 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_H3のCDR3配列
<210> 813 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_H4のCDR3配列
<210> 814 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_H5のCDR3配列
<210> 815 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_H6のCDR3配列
<210> 816 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_H7のCDR3配列
<210> 817 <223> JG9-TRA 64バリアントVP.7751.RC1_H8のCDR3配列
【0226】
略語
aAM 被分析物抗原性分子
aAPX 被分析物抗原提示複合体
α-GalCer アルファ-ガラクトシルセラミド
aT 被分析物TCR
APC 抗原提示細胞
APX 抗原提示複合体
B細胞 Bリンパ球
β2M ベータ2ミクログロブリン
BFP 青色蛍光タンパク質
C(領域) 定常領域
CAR キメラ抗原受容体
CAR-T CAR T細胞
CD1b 表面抗原分類1b
CD1d 表面抗原分類1d
CD3 表面抗原分類3
CDR 相補性決定領域
CM カーゴ分子
CMV サイトメガロウイルス
C領域 定常領域
CRISPR クラスター化して規則的な配置の短いパリンドローム配列リピート
【0227】
D(領域) 多様性領域
DAMPS 損傷関連分子パターン
DC 樹状細胞
DNA デオキシリボ核酸
dsDNA 二本鎖DNA
eAPC 操作された抗原提示細胞
eAPC-a 被分析物抗原性分子を発現する操作された抗原提示細胞
eAPC-p 被分析物抗原提示複合体を提示する操作された抗原提示細胞
eAPC-pa 被分析物抗原提示複合体及び被分析物抗原性分子を提示する操作された抗原提示細胞
eAPCS 操作された抗原提示細胞システム
eTPC 操作されたTCR提示細胞
eTPC-t 全長TCR対を提示する操作されたTCR提示細胞
eTPCS 操作されたTCR提示細胞システム
FAB 抗体断片抗原結合
FACS 蛍光標示式細胞選別
FRT フリッパーゼ認識標的
GEM T細胞 生殖系列によりコードされるミコリル反応性T細胞
GFP 緑色蛍光タンパク質
gRNA Cas9ガイドRNA
HCMV ヒトサイトメガロウイルス
HDR 相同性配向型組換え
【0228】
HIV ヒト免疫不全ウイルス
HLA ヒト白血球抗原
HLAI HLAクラスI
HLAII HLAクラスII
IgSF 免疫グロブリンスーパーファミリー
iNK T細胞 インバリアントナチュラルキラーT細胞
IRES 配列内リボソーム進入部位
ITAM 免疫受容活性化チロシンモチーフ
Jドナー 連結ドナー
J領域 連結領域
MACS 磁気標示式細胞選別
MAGE 黒色腫関連抗原
MAIT 粘膜関連インバリアントT
MHC 主要組織適合複合体
MR1 主要組織適合複合体クラスI関連遺伝子タンパク質
mRNA メッセンジャーリボ核酸
NCBP 非細胞ベースの粒子
【0229】
NK T細胞 ナチュラルキラーT細胞
odeCDR3 CDR3をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖
ORF オープンリーディングフレーム
PAMPS 病原体関連分子パターン
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
pHLA ペプチドHLA
RFP 赤色蛍光タンパク質
RMCE リコンビナーゼ媒介カセット交換
RNA リボ核酸
RT 逆転写
SH2 Src相同2
T細胞 Tリンパ球
TAA 腫瘍関連抗原
TALEN 転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ
TCR T細胞受容体
TCRsp CD3との複合体でのTCR表面タンパク質
TORES TCR ORF再構成及び操作システム
TRA TCRアルファ
TRB TCRベータ
TRD TCRデルタ
TRG TCRガンマ
V-Cエントリーベクター 可変-定常エントリーベクター
V(領域) 可変領域
ZAP-70 70 kDaのζ鎖関連タンパク質
【0230】
定義
適応免疫:病原体を排除するか又はその成長を妨げる高度に専門化された全身性細胞及びプロセスで構成される全体的な免疫系の下位組織。
相補TCR鎖の対:翻訳されたタンパク質がTCR提示細胞の表面でTCRspを形成できる2つのTCR鎖
親和性:2つ以上の分子又はタンパク質の間の相互作用の動的又は平衡パラメータ
親和性反応剤:eTPC:AシステムにおいてeTPC-tの細胞表面でTCRsp結合及び/又は刺激をプローブするために被分析物として調製された任意の反応剤
アレル:所定の遺伝子のバリアント形
aAM:被分析物抗原性分子。一般的に、ゲノムDNA及び/又は特定の導入された遺伝子配列から細胞により発現されるタンパク質であるが、代謝産物でもあり得る。AMは、細胞で発現され、断片が次いでカーゴとしてAPXにより又はそれ自体で細胞表面で提示され得る。カーゴとして又はそうでなくても、AMは、次いで、T細胞受容体保有細胞又は関連する親和性反応剤の標的になり得る。
アンプリコン:PCRを含む様々な方法を用いる人工的増幅の供給源及び/又は生成物であるDNA又はRNA片
被分析物:組合せシステムにおいて同定及び/又は測定及び/又は照会される興味対象の物体
抗体:B細胞と呼ばれる免疫系の専門細胞により発現され、2つの鎖を含む親和性分子。
抗原:TCRと結合でき、T細胞内で伝達されるシグナルをもたらす任意の分子
被分析物抗原:分析的決定のために抗原を提示する任意の物体を集合的に表すeTPC:抗原システム(eTPC:A)
抗原結合窩:ペプチド抗原がMHC-I分子と結合する部位である長い窩又は溝。
【0231】
APC:抗原提示細胞。通常、HLAの状況において細胞表面で抗原を提示できる細胞。
aAPX:被分析物抗原提示複合体。有核細胞により、ゲノムDNA及び/又は特定の導入された遺伝子配列をコードする遺伝子/ORFから細胞表面で発現及び提示されるタンパク質。APXは、ペプチド又はその他の代謝産物分子であるカーゴを提示する。
自己免疫:は、生物自体の健常細胞及び組織に対する生物の免疫応答の系である。
C(領域):定常遺伝子セグメント。T細胞受容体を組立てるために用いられる遺伝子セグメントの一つ。c領域は、TCRの多様性を駆動するのではなく、免疫系におけるその全般的な機能を規定する別個のセグメントである。
Cクローニング断片:定常クローニング断片。C遺伝子セグメントクローニング断片とも呼ぶ。V-Cエントリーベクターを構築するために用いられるC遺伝子セグメントの一部を有する構築物。
カーゴ積載装置:細胞で見いだされるタンパク質又はその他の提示される分子からカーゴ分子を作製してAPX上に積載するタンパク質の細胞性セット。
シスエレメント:近傍のORFの転写を制御するノンコーディングDNAの領域。
C部:定常部。J受入カセット断片、J受入カセット及びJドナーベクターが有する定常遺伝子セグメント配列の小さい部分であって、TCR ORFを再構成するためのTORESの動作のためにオーバーハング配列を標準化する。
CDR:相補性決定領域。標的結合機能のほとんどを行う、TCR及び抗体の抗原に面する末端及び抗体の短い配列。各抗体及びTCRは、6つのCDRを含み、これらは、一般的に、多数の多様な標的分子の検出を可能にするために、分子の最も可変部分である。
【0232】
CM:カーゴ分子。抗原提示複合体、例えばHLA I又はHLA IIにより提示されるペプチド又は代謝産物。CMは、ゲノムDNAから固有に細胞により発現され、培養培地に導入されるか又は特定の導入された遺伝子配列から発現されることができる。
同族抗原:特定のTCRにより認識される、しばしばHLAにより提示される抗原。TCR及び抗原は、同族物である。
コピー数:細胞のゲノム内でコードされる規定された配列が存在する全数。
細胞遺伝学的:染色体の構造及び機能に関する遺伝の学問、すなわち細胞の核型を決定する。
細胞傷害性の/細胞傷害:標的細胞を直接かつ特異的に損傷する因子をT細胞が放出するプロセス。
D(領域):多様性遺伝子セグメント。T細胞受容体を組立てるために用いられる遺伝子セグメントの一つ。各個体は、これらの多数の異なるバリエーションのこれらの領域を有して、各個体が非常に多種類の異なるTCRを有するT細胞で武装できるようにする。
二量体:は、強いか又は弱い、共有又は分子間であり得る結合により連結された2つの構造的に似た単量体からなるオリゴマーである。
DNA:デソキシリボ核酸。遺伝子及びタンパク質をコードする遺伝物質を形成する分子の化学名称。
内因性:細胞内に起源を発する物質。
【0233】
eTPC:Aシステム:eTPC:抗原システム。eTPC-tが被分析物抗原と接触するシステム。
真核生物条件的調節エレメント:所定の条件下で誘導又は抑制され得るプロモータの活性に影響し得るDNA配列
真核生物プロモータ:RNAポリメラーゼ結合部位及び応答エレメントをコードするDNA配列。プロモータ領域の配列は、RNAポリメラーゼ及び転写因子の結合を制御するので、プロモータは、興味対象の遺伝子がどこでいつ発現されるかを決定する大きな役割を演じる。
真核生物ターミネータ/シグナルターミネータ:RNAポリメラーゼIIと会合し、転写終結プロセスの引き金を引くタンパク質因子により認識されるDNA配列。これは、ポリAシグナルもコードする。
操作された細胞:遺伝子改変によりゲノムが操作された改変細胞。
エピトープ:抗原決定因子としても知られるエピトープは、免疫系により、特に抗体、B細胞又はT細胞により認識される抗原の部分である。例えば、エピトープは、抗体が結合する特定の抗原片である。
【0234】
エピジェネティックインスレータ配列:調節配列、例えばエンハンサ又はサイレンサとプロモータとの間のコミュニケーションを中断させるDNAエレメント。
eTPCシステム:eTPCS、eTPC-t細胞又はそのライブラリを、eAPC:eTPCシステムにおける組合せのために調製するシステム。
FACS/フローサイトメトリ:蛍光標示式細胞選別。フローサイトメトリは、特定の細胞表面及び細胞内マーカーの発現について個別の細胞をまとめて分析できる技術である。この技術の変法である細胞選別は、規定されたマーカーセットを有する細胞を、更なる分析のために回収することを可能にする。
APXのファミリー:抗原提示複合体を構成する機能的に関連するタンパク質をコードする幾つかの類似の遺伝子のセット
Flpリコンビナーゼ:パン酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の2μmプラスミドに由来するリコンビナーゼ(フリッパーゼ、Flp)。
蛍光(タンパク質)マーカー:特定の消光及び発光特徴を有し、顕微鏡観察、FACS及び関連する技術により検出できる分子。
生殖系列遺伝子セグメント:ヒトに自然に存在する(TCR)遺伝子セグメント。
遺伝子シスエレメント:は、それが調節する遺伝子と同じDNA分子上に存在するが、トランス調節エレメントは、それらが転写された遺伝子から離れた遺伝子を調節できる。シス調節エレメントは、しばしば、1以上のトランス因子のための結合部位である。
【0235】
遺伝子バーコーディング:DNAバーコーディングは、それが特定の種に属することを同定するための、生物のDNA中の短い遺伝子マーカーを用いる分類学的方法である。
ゲノム受容部位:遺伝子ドナーベクター内にコードされるドナー遺伝子材料の標的化組込みのためのゲノム内の部位。
ゲノム受容部位リサイクリング:占められたゲノム受容部位の、新しい被分析物(TCR) ORFを組み込むことができる立体配置への復帰
ハプロタイプ:単一染色体上に位置する遺伝子決定因子のセット。
HLAハプロタイプ:各個体に存在するHLAI及びHLA IIアレルのセット。
異種特異的リコンビナーゼ部位:2つのDNA分子のクロスオーバーを促進するためのリコンビナーゼ酵素により認識されるDNA配列。
HLA I:ヒト白血球抗原クラスI。全ての有核細胞においてヒトにおいて発現される遺伝子。発現したHLA Iは、細胞表面に輸送されて、そこで、内部タンパク質の短い断片、ペプチドをカーゴとしてT細胞受容体に提示する。このように、これは、進行中の感染の可能性のある固有タンパク質の断片を提示する。HLA Iは、加えて、培養培地に加えられるか、導入された遺伝子エレメントから発現されたタンパク質から作製されるか又は細胞により取り込まれたタンパク質から作製されるペプチドをカーゴとして提示できる。HLAクラスI遺伝子は多型であり、これは、異なる個体が同じ遺伝子において、提示におけるバリエーションを導くバリエーションを有する可能性があることを意味する。HLAクラスIIと関連する。
【0236】
HLA II:ヒト白血球抗原クラスII。適応免疫応答を調和し助ける特定の細胞(例えば樹状細胞)においてヒトにおいて発現される遺伝子。HLAクラスIと関連する。HLAクラスIIタンパク質は、細胞表面に輸送されそこでこれらは外部タンパク質の短い断片、ペプチドをカーゴとしてT細胞受容体に提示する。このように、これは、進行中の感染の可能性のある固有タンパク質の断片を提示する。HLA IIは、培養培地に加えられるか、導入された遺伝子エレメントから発現されたタンパク質から作製されるか又は細胞により取り込まれたタンパク質から作製されるペプチドをカーゴとして更に提示できる。HLAクラスII遺伝子は多型であり、これは、異なる個体が同じ遺伝子において、提示におけるバリエーションを導くバリエーションを有する可能性があることを意味する。
相同アーム:相補相同アームとほぼ同一の配列同一性を有し、よって細胞性プロセスである相同性配向型修復による2つのDNA分子の交換を促進するDNAの区間。
免疫監視機構:免疫系が感染、悪性病変又はその他の病原性の可能性がある変化を検出し、それにより活性化されるプロセス。
免疫療法:疾患と戦う体の自然の防御を高める種類の処置。これは、免疫系機能を改善又は回復する、体により又は実験室で作られる物質を用いる。
【0237】
インスレータ:近傍の遺伝子の活性化又は抑制により遺伝子が影響されることを妨げるDNA配列。インスレータは、発現停止された遺伝子から活性に転写された遺伝子へのヘテロクロマチンの広がりも妨げる。
組込み:細胞の染色体へのDNA配列の物理的ライゲーション
組込みベクター:TCR ORFを含み、組込みを可能にする遺伝子エレメントを5'及び3'末端に含む、ゲノム受容部位にマッチしたTORESの生成物。
組込みカップル:マッチした、組込みベクター及びゲノム受容部位
配列内リボソーム進入部位(IRES):一旦転写されると、キャップ非依存様式で翻訳の開始を可能にするRNAエレメントをコードするDNA配列。
アイソフォーム:類似するが同一でないアミノ酸配列を有し、異なる遺伝子又は異なるエキソンが除かれた同じ遺伝子からのRNA転写産物のいずれかによりコードされる、2つ以上の機能的に類似のタンパク質のいずれか。
J(領域):連結セグメント。T細胞受容体を組立てるために用いられる遺伝子セグメントの一つ。各個体は、これらの領域の多数の異なるバリエーションを有して、各個体が非常に多種類の異なるTCRを有するT細胞で武装できるようにする。
Jドナー骨格:連結ドナー骨格。J受入カセット断片が挿入されてJ受入カセットベクターを創出するベクター骨格。
Jドナーベクター:J TCRセグメントを有し、このセグメントを、全長TCR ORFの再構成中にV-Cエントリーベクターに与える二成分ベクターシステムのベクター、
J受入カセット断片:連結受入カセット断片。J受入カセットベクターを構築するために用いられるC部を有するクローニング断片。
【0238】
J受入カセットベクター:連結受入カセットベクター。Jセグメント部が挿入されてJドナーベクターを創出する、C部を有するベクター。
Jセグメント部:連結セグメント部分。J受入カセットベクターに挿入されてJドナーベクターを作製するJ遺伝子セグメントの一部を有するDNA構築物。
コザック配列:翻訳の効率的な開始のために必要な短い配列
主要HLAクラスI:遺伝子HLA-A、HLA-B及びHLA-Cで構成されるAPXのファミリー。
マッチした:2つの成分が、相補成分の間の相互作用を駆動及び制限する遺伝子エレメントをコードする場合
メガヌクレアーゼ認識部位:メガヌクレアーゼと一般的に呼ばれるエンドデオキシリボヌクレアーゼにより認識されるDNA配列
代謝産物:細胞の代謝経路により創出又は変更された分子
可動遺伝子エレメント:トランスポサーゼ酵素の活性を有するDNAの組込みを許容するDNA配列。
モノクローン株化細胞:細胞複製の反復により単一祖先細胞から生成される規定された細胞群
【0239】
mRNA スプライスアクセプター部位:5'末端にて、DNAヌクレオチドは、GT[プレメッセンジャーRNA(pre-mRNA)においてはGU]であり、3'末端にてAGである。これらのヌクレオチドは、スプライシング部位の一部である。ドナースプライス:イントロンの開始、イントロン5'左末端でのスプライシング部位。アクセプタースプライス:イントロンの終端、イントロン3'右末端でのスプライシング部位。
多量体:複数の同一単量体からなるタンパク質複合体。HLA多量体反応剤の文脈においてしばしば用いられる。
天然型:細胞に天然に存在する物体。
ネガティブ選択マーカー:ベクター及び/又はマーカーを有するベクターを有する宿主生物のネガティブ選択を与える選択可能なマーカー
非細胞ベースの粒子:(NCBP)は、該粒子が、被分析物抗原又はeTPC:Aシステム内のeTPC-tの表面でのTCRsp結合について評価されるその他の物体を提示するので、親和性反応剤と類似の様式で作用する。しかし、NCBPは、提示される被分析物抗原又はその他の結合物体の直接的又は近傍の識別子として作用する遺伝子又はその他の情報を更に有することができる、より大きい物体とみなされる。NCBPの典型的な例は、ファージディスプレイのシナリオにおけるバクテリオファージである。
ノンコーディング遺伝子:機能的ノンコーディングRNA分子に転写されるタンパク質ノンコーディングDNA配列。
odeCDR3:相補性決定領域をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖。全長TCR ORFを再構成するために二成分ベクターシステムに関連して用いられる、終端オーバーハングと共にCDR3遺伝子配列を有する合成構築物。
【0240】
複製起点:そこで複製が開始する、ベクター、プラスミド又はゲノム内の特定の配列。
ORF:オープンリーディングフレーム。リボソームによるタンパク質(ポリペプチド)の合成のための翻訳フレームをコードする遺伝子材料の区間。
オーバーハング:二本鎖核酸分子の末端での一本鎖配列。しばしば粘着又は付着末端と呼ばれる。
PCR:特定の標的DNA分子が指数関数的に増幅されるポリメラーゼ連鎖反応
ペプチド:6〜30の間のアミノ酸長のアミノ酸の短い一続き。
表現型分析:細胞の観察可能な特徴の分析。
プラスミド:遺伝子構築物、典型的に、細菌又は原生動物の細胞質内の小さい環状DNA鎖は、染色体とは独立して複製できる。
多型:同じ遺伝子の異なるアレルの存在により、同じ種の個体において異なる形で存在する。
ポリペプチド:三次元構造を形成する、ペプチドの区間からなるタンパク質。
ポジティブ選択マーカー:ベクター及び/又はマーカーを有するベクターを有する宿主生物のポジティブ選択を与える選択可能なマーカー。
プライマー:例えばPCR中に標的DNA配列の特異的認識を可能にする短いDNA配列。
プロフェッショナルAPC:アルファベータ及びガンマデルタT細胞によりサンプリングのために抗原を提示できる任意の有核細胞。
プロモータ:遺伝子発現の制御された開始のための調節DNAエレメント。
リコンビナーゼ:遺伝子組換えを媒介する酵素。
【0241】
レポーターエレメント:エレメントを有する生物又はベクターにおけるレポートされたシグナルを媒介する遺伝子エレメント。ポジティブ又はネガティブ選択マーカーとして用いることができる。
制限酵素切断配列:制限酵素の認識配列にとって外的又は固有であり得る、制限酵素により切断される遺伝子配列。
制限酵素認識配列:制限酵素により認識され、制限酵素が結合する遺伝子配列。
選択可能なマーカー:人工的選択法に適切な形質を与えるDNA配列。
スプライスアクセプター部位:表面でTCRspを有する細胞又はTCRspベースの反応剤との相互作用のための、イントロンAM、APX CM又は親和性反応剤の3'末端のDNA配列。
スプライスドナー部位:イントロンの5'末端でのDNA配列。
体細胞V(D)J組換え:このプロセスの後に、各T細胞が単一の別個に再編成されたTCRのコピーを発現する。TRB及びTRD遺伝子座での組換えのことをいい、多様性(D)遺伝子セグメントを更に含む。
自殺遺伝子:この遺伝子を有する宿主生物内で細胞死を媒介する遺伝子。ポジティブ又はネガティブ選択マーカーとして用いることができる。
合成:人工的に作製された物体。
T細胞:Tリンパ球。その表面でT細胞受容体を発現する白血球。自己と反応しないが、感染及び悪性疾患を認識し、同じ種のほとんどのメンバーからの移植片を拒絶する能力を有するように免疫系により選択される。
【0242】
T細胞成熟:自己に属し、健常でないか又は自己に全く属さないものから健常である細胞をT細胞が区別できるようにするプロセス。胸腺で生じる。
T細胞レパートリー:T細胞受容体の別個のセット。
TCR:T細胞受容体。Tリンパ球と呼ばれるリンパ球の下位集団により発現される親和性分子。ヒトでは、TCRは、ウイルス若しくは細菌感染又はがん性細胞からの断片を含む、APX CM又はAPX AMにより提示されるカーゴを認識する。よって、TCR認識は、適応免疫系の肝要な部分である。TCRは、細胞表面で対形成する2つの鎖からなる。各細胞の表面で発現されるTCRは、様々な遺伝子(v、d、j及びcセグメント)の大きいプールから無作為に組立てられるので、各個体は、異なるTCRの非常に大きく多様なレパートリーを発現するT細胞のプールを有する。
ターミネータエレメント:は、転写中にゲノムDNAにおいて遺伝子又はオペロンの終端を印づける核酸配列の一区画である。この配列は、新しく合成されたmRNAにおいて、転写複合体からmRNAを放出するプロセスの引き金を引くシグナルを与えることにより、転写終結を媒介する。これらのプロセスは、複合体とのmRNA二次構造の直接相互作用及び/又は動員した終結因子の間接的な活性を含む。転写複合体の放出は、RNAポリメラーゼ及び関連する転写装置を自由にして、新しいmRNAの転写を開始する。終結エレメントは、DNAの鋳型鎖にあり、6塩基により分けられた2つの逆方向反復とそのあとの一連のアデニン(A's)からなる。
胸腺選択:未熟胸腺細胞は、それらのT細胞受容体の特異性に基づく選択のプロセスを受ける。これは、機能的であるT細胞の選択(ポジティブ選択)及び自己反応性であるT細胞の排除(ネガティブ選択)を含む。胸腺の髄質が、T細胞成熟の部位である。
腫瘍関連抗原:腫瘍抗原は、腫瘍細胞で生成される抗原性物質であり、すなわちこれは宿主における免疫応答の引き金を引く。腫瘍抗原は、診断試験で腫瘍細胞を同定するために有用な腫瘍マーカーであり、がん療法で用いるための可能性のある候補である。
【0243】
TRA:TCRアルファをコードする遺伝子座。VDJ組換えTCR鎖を形成できる遺伝子をコードする4つの異なる遺伝子座のうちの一つ。翻訳されたTCRアルファ鎖タンパク質は、典型的に、翻訳されたTCRベータ鎖タンパク質と対形成して、アルファ/ベータTCRspを形成する。
TRB:TCRベータをコードする遺伝子座。VDJ組換えTCR鎖を形成できる遺伝子をコードする4つの異なる遺伝子座のうちの一つ。翻訳されたTCRベータ鎖タンパク質は、典型的に、翻訳されたTCRアルファ鎖タンパク質と対形成して、アルファ/ベータTCRspを形成する。
TRD:TCRデルタをコードする遺伝子座。VDJ組換えTCR鎖を形成できる遺伝子をコードする4つの異なる遺伝子座のうちの一つ。翻訳されたTCRデルタ鎖タンパク質は、典型的に、翻訳されたTCRガンマ鎖タンパク質と対形成して、ガンマ/デルタTCRspを形成する。
TRG:TCRガンマをコードする遺伝子座。VDJ組換えTCR鎖を形成できる遺伝子をコードする4つの異なる遺伝子座のうちの一つ。翻訳されたTCRガンマ鎖タンパク質は、典型的に、翻訳されたTCRデルタ鎖タンパク質と対形成して、ガンマ/デルタTCRspを形成する。
二成分ベクターシステム:所望の配列を有する単一VCエントリーベクターと単一Jドナーベクターとを、CDR3をコードする短いDNAオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)配列と組み合わせて、単一チューブ反応において、制限酵素及びリガーゼ依存的及びPCR依存的様式で、インビトロで全長TCR ORFを再構成できる。
I型膜貫通ドメイン:ストップ-トランスファーアンカー配列を用いて脂質膜に係留されている一回通過分子であり、そのN末端ドメインは、合成中に小胞体内腔(及び成熟形が原形質膜に位置するならば、細胞外空間)を標的にする。
IIS型制限酵素:非対称DNA配列を認識し、その認識配列の外側で切断する制限酵素。
【0244】
V(領域):可変領域。T細胞受容体を組立てるために用いられる遺伝子セグメントの一つ。各個体は、これらの領域の多数の異なるバリエーションを有して、各個体が非常に多種類の異なるTCRを有するT細胞で武装できるようにする。
V-Cエントリーベクター:V及びC TCRセグメントを有し、全長TCR ORFの再構成中にJドナーベクター及びodeCDR3からの配列を受け入れる二成分ベクターシステムのベクター。
Vクローニング断片:可変クローニング断片。V遺伝子セグメントクローニング断片とも呼ばれる。V-Cエントリーベクターを構築するために用いられるV遺伝子セグメントの一部分を有する構築物。
ベクター:ベクターは、遺伝情報を有する遺伝子構築物である。この文脈において、ベクターは、通常、プラスミドDNAベクターを表す。ベクターは、宿主生物において増やして選択できる任意のこのような構築物のことであり得る。