(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分散樹脂(A)を加温した溶媒(C)に溶解するときの分散樹脂(A)の含有量が、分散樹脂(A)及び溶媒(C)の合計量を基準として、固形分で0.01〜10質量%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電ペーストの製造方法。
分散樹脂(A)の含有量が、導電ペーストの固形分総量中に固形分で0.1〜30質量%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の導電ペーストの製造方法。
導電カーボン(B)が、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト(黒鉛)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電ペーストの製造方法。
分散樹脂(A)を50℃以上に加温した溶媒(C)に溶解する第一工程と、得られた分散樹脂(A)及び溶媒(C)を含む混合溶液に導電カーボン(B)を加え混合する第二工程を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の導電ペーストの製造方法。
前記第二工程又は前記分散機を用いて分散する工程の後に、更にバインダー(D)を加えて混合する工程を有する、請求項11又は12に記載の導電ペーストの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「樹脂がその原料となるモノマーXを含有する」とは、相反する内容を別途明記しない限り、上記樹脂が、上記モノマーXを含む原料モノマーの(共)重合体であることを意味する。また、本明細書において、(共)重合体とは重合体又は共重合体を意味する。
【0012】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを意味する。
【0013】
本発明は、分散樹脂(A)、導電カーボン(B)、及び溶媒(C)を含有する導電ペーストの製造方法において、分散樹脂(A)を50℃以上に加温した溶媒(C)に溶解することを特徴とする導電ペーストの製造方法である。
尚、本発明の製造方法においては、「分散樹脂(A)を50℃以上に加温した溶媒(C)に溶解する。」と規定しているが、「分散樹脂(A)と溶媒(C)を混合した後に、混合液を50℃以上に加温して溶解する。」の方法に関しても含まれるものとする。
【0014】
溶媒(C)の加温温度としては、通常50℃以上であり、50℃以上かつ200℃未満が好ましく、70℃以上かつ170℃未満がより好ましく、90℃以上かつ140℃未満がさらに好ましく、100℃以上かつ130℃未満が特に好ましい。
特に加温温度の上限については、製造面の観点から溶媒(C)の沸点以下であることが好ましい。また、溶媒(C)が複数種類混合されている場合の加温温度の上限については、溶媒(C)中に少なくとも10%混合している溶媒の中の最低沸点以下であることが好ましい。
溶媒の温度が高すぎる場合(例えば、200℃以上)、エネルギーコスト増、溶媒蒸発による環境悪化、樹脂の変質(例えば、ポリビニルアルコール樹脂の加水分解)等の問題があるため好ましくない。
また、分散樹脂(A)を加温した溶媒(C)に溶解するときの分散樹脂(A)の含有量としては、分散樹脂(A)及び溶媒(C)の合計量を基準として、固形分で、通常0.01〜10質量%であり、0.1〜5質量%であることが溶解性と粘性等の観点から好適である。
【0015】
本発明における導電ペーストの製造は、分散性及び貯蔵安定性の観点から、加温した溶媒(C)と分散樹脂(A)を溶解する第一工程と、得られた混合溶液と導電カーボン(B)を混合する第二工程からなることが好ましい。
【0016】
分散性及び貯蔵安定性の観点から、上記第二工程の後、分散機を用いて分散する第三工程を有することが好ましい。分散機としては、特に制限はなく、例えば、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、ペブルミル、LMZミル、DCPパールミル、遊星ボールミル、ホモジナイザー、二軸混練機(プラネタリーミキサー等)、薄膜旋回型高速ミキサー(フィルミックス、クレアミックス等)等の従来公知の分散機を用いることができる。
【0017】
分散樹脂(A)、導電カーボン(B)、及び溶媒(C)以外の成分としてバインダー(D)を加える場合、上記第一工程、第二工程、又は第三工程の後に添加し、混合することができる。
【0018】
<1.分散樹脂(A)>
本発明において、分散樹脂(A)としては、例えば50〜200℃程度の温度で変質せず、導電ペーストの分散性を向上させる樹脂であるならば、特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びこれらの複合樹脂等が挙げられ、これらの樹脂は1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。また、分散性及び粘度の観点から、分散樹脂(A)は非架橋の樹脂であることが好ましい。
なかでも、分散性及び貯蔵安定性の観点から、ポリビニルアルコール樹脂(a1)及び/又は変性ポリビニルアルコール樹脂(a2)を用いることが好ましい。
【0019】
ポリビニルアルコール樹脂(a1)は、酢酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルを重合し、得られる重合体を更にけん化することで得られる。
【0020】
変性ポリビニルアルコール樹脂(a2)は、以下の方法によって製造することができる。
(1)酢酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルと、それ以外の重合性不飽和基含有モノマーとを共重合し、得られる重合体を更にけん化する方法。
(2)ポリビニルアルコールに重合性不飽和基含有モノマーをマイケル付加させる方法。
(3)アルデヒド化合物でポリビニルアルコールをアセタール化する方法。
(4)アルコール、アルデヒド及びチオール等の官能基を有する化合物を連鎖移動剤として共存させ、ポリビニルアルコールの重合をする方法。
【0021】
変性ポリビニルアルコール樹脂(a2)は、エステル基、アミド基、イミド基、エーテル基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、アミノ基のうち少なくとも1種の官能基を有する側鎖を含有することが好ましい。
【0022】
ポリビニルアルコール樹脂(a1)及び変性ポリビニルアルコール樹脂(a2)は、分散性及び貯蔵安定性の観点から、高けん化度(高極性)であることが好ましい。具体的には、けん化度が85mol%以上100mol%未満であることが好ましく、90mol%以上100mol%未満であることがより好ましく、95mol%以上100mol%未満であることがさらに好ましく、96mol%以上100mol%未満であることが特に好ましい。
【0023】
ポリビニルアルコール樹脂(a1)及び変性ポリビニルアルコール樹脂(a2)は、分散性及び貯蔵安定性の観点から、平均重合度が50〜3,000であることが好ましく、100〜2,000であることがより好ましく、100〜1,500であることがさらに好ましい。
【0024】
分散樹脂(A)は、高極性であるほど導電カーボン(B)への吸着性が向上する傾向があり、なかでもポリビニルアルコール樹脂(a1)及び変性ポリビニルアルコール樹脂(a2)はけん化度が高いほど導電カーボン(B)への吸着性が良好となる。しかし、一方で高極性の分散樹脂は溶媒(C)への溶解性が低下する。
分散樹脂(A)の溶媒(C)への溶解性を向上させるためには、前述した通り、混合時に溶媒(C)を加温して分散樹脂(A)を溶解することが好適である。
【0025】
<2.導電カーボン(B)>
本発明において、導電カーボン(B)としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、バルカン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、気相成長カーボンファイバー(VGCF)、グラファイト(黒鉛)等が挙げられる。好ましくは、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト(黒鉛)等が挙げられ、より好ましくはアセチレンブラック等が挙げられる。これらの導電カーボンは、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。なかでも、アセチレンブラックと共に、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト(黒鉛)の少なくとも1種を併用して用いることが導電性等の観点から好適である。
なお、上記グラファイト(黒鉛)としては、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等を好適に使用することができる。
天然黒鉛としては、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等を使用することができる。また、鱗片状黒鉛を化学処理等した膨張黒鉛(膨張性黒鉛ともいう)や、膨張黒鉛を熱処理して膨張化させた後、微細化やプレスにより得られた膨張化黒鉛等を使用することもできる。
人造黒鉛としては、無定形炭素の熱処理により不規則な配列の微小黒鉛結晶の配向を人工的に行わせたものであり、一般的には石油コークスや石炭系ピッチコークスを主原料として製造される。
【0026】
導電カーボン(B)の表面は、導電性、分散性及び貯蔵安定性の観点から、電気的に中性〜陰性が好ましい。具体的には、水に分散させたとき、pHの範囲が5〜10になるような導電カーボンが好ましい。
【0027】
導電カーボン(B)の比表面積は、導電性及び分散性の観点から、5m
2/g以上1000m
2/g未満が好ましく、5m
2/g以上500m
2/g未満がより好ましく、10m
2/g以上150m
2/g未満が特に好ましい。
【0028】
導電カーボン(B)の一次粒子径は、導電性及び分散性の観点から、5nm以上10000nm以下が好ましく、5nm以上5000nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が好ましい。
また、一次粒子径が5nm以上300nm以下、好ましくは10nm以上100nm以下の導電カーボンの少なくとも1種と、一次粒子径が1000nm以上10000nm以下の導電カーボン又は一次粒子径が10nm以上100nm以下で平均長さが1000nm以上10000nm以下の導電カーボンの少なくとも1種とを併用してもよい。本発明の一次粒子径、平均長さは、電子顕微鏡で測定された算術平均粒子径、算術平均長さをそれぞれ示す。
【0029】
<3.溶媒(C)>
本発明において、溶媒(C)としては、特に制限はなく、例えば、n−ブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタン等の炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;エクアミド(製品名、出光興産社製、アミド系溶剤)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルプロピオアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等のアミド系溶剤等、従来公知の溶剤を挙げることができる。本発明の製造方法は、加温した溶媒(C)に分散樹脂(A)を溶解するため、好ましい溶媒(C)の具体例としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等の高沸点溶媒が挙げられ、より好ましくはN−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。尚、溶媒(C)としては、後述する理由により、水を含有しない事が好ましい。
【0030】
<4.その他の成分>
本発明の製造方法によって得られる導電ペーストには、上記成分(A)、(B)、及び(C)以外の成分(その他の添加剤と示すこともある)を配合してもよい。その他の添加剤としては、例えば、中和剤、顔料分散剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤、バインダー(結着剤)等を挙げることができ、なかでも、少なくとも1種のバインダー(D)が好ましい。
【0031】
バインダー(D)としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びこれらの複合樹脂等が挙げられる。また、分散性及び粘度の観点から、バインダー(D)は非架橋の樹脂であることが好ましい。
これらの樹脂は1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができ、なかでも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いることが好ましい。
【0032】
<5.導電ペースト>
本発明において、導電ペースト固形分中の分散樹脂(A)の固形分含有量は、通常、0.1〜30質量%、好ましくは0.2〜20質量%、より好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1.0〜10質量%であることが、顔料分散時の粘度、顔料分散性、分散安定性、生産効率、及び導電性の観点から好適である。
【0033】
本発明において、導電ペースト固形分中の導電カーボン(B)の固形分含有量は、通常、50質量%以上、かつ100質量%未満、好ましくは60質量%以上、かつ100質量%未満、より好ましくは70質量%以上、かつ100質量%未満が電池性能の点から好適である。
【0034】
本発明において、導電ペースト中の溶媒(C)の含有量は、通常、50質量%以上かつ100質量%未満、好ましくは70質量%以上かつ100質量%未満、より好ましくは80質量%以上かつ100質量%未満、さらに好ましく80質量%以上かつ90質量%未満が乾燥効率、ペースト粘度の点から好適である。
【0035】
本発明において、導電ペーストは、ペーストの総量を基準として、水分含有量が1.0質量%未満であることが好ましく、0.7質量%未満であることがより好ましく、0.5質量%未満であることがさらに好ましい。本発明において、導電ペーストの水分含有量は、カールフィッシャー電量滴定法にて測定する。具体的には、カールフィッシャー水分率計(製品名:MKC−610、京都電子工業社製)を用い、該装置に備えられた水分気化装置(製品名:ADP−611、京都電子工業社製)の設定温度は130℃として測定することができる。バインダー(D)にポリフッ化ビニリデンを用い、かつ導電ペースト中の水分量が一定量以上ある場合、高分子量化(ゲル化)を促進することがあるため、できるだけ水分を除くことが好ましい。
また、既知の脱水剤を添加して、水分をできる限り除くことができる。
本発明で得られる導電ペーストは、実質的に非水系の導電ペーストといえる。
【0036】
<6.塗工材及び電極用組成物>
本発明の製造方法によって得られる導電ペーストは、例えば、塗工材(塗工膜、塗工物品)や電極用組成物(電極層、電池)として用いることができる。
【0037】
塗工材としては、具体的には、例えば、印刷配線板や電子部品等の配線層(導電層)、電気(導電)回路の形成、導電接着剤、導電シート材料、導電塗料(導電塗膜、導電シート)等が挙げられ、いずれの用途でも好適に用いることができる。
【0038】
電極用組成物としては、本発明の製造方法によって得られた導電ペーストと電極活物質とを混和して製造することができる組成物であり、具体的には、例えば、非水電解質二次電池用電極組成物、水系電解質二次電池用電極組成物、固体電解質二次電池用電極組成物等が挙げられ、正極及び/又は負極用の電極組成物として好適に用いることができる。なかでも、非水電解質二次電池正極組成物として好適に用いることができる。
【0039】
<6−1.塗工材>
本発明において、塗工材は、上記導電ペーストに含まれる分散樹脂(A)、導電カーボン(B)、及び溶媒(C)を必須成分とするものであって、さらに必要に応じて、樹脂、顔料、溶媒、添加剤等を含有することができる。
【0040】
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びこれらの複合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0041】
顔料としては、例えば、着色顔料、光輝性顔料、体質顔料、防錆顔料等が挙げられる。これらの顔料は1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0042】
溶媒としては、特に制限はないが、前述した溶媒(C)と同様の溶媒を好適に用いることができる。上記溶媒は1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0043】
添加剤としては、中和剤、顔料分散剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤、粘性調整剤等が挙げられる。
【0044】
塗工材中の分散樹脂(A)の含有量は、塗工材中の固形分を基準として、通常0.05〜80質量%、好ましくは0.1〜60質量%、より好ましくは0.2〜50質量%、特に好ましくは0.5〜40質量%であることが、粘度、分散性、貯蔵安定性、及び生産効率等の面から好ましい。
【0045】
塗工材は、以上に述べた各成分を、例えば、ディスパー、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、ペブルミル、LMZミル、DCPパールミル、遊星ボールミル、ホモジナイザー、二軸混練機(プラネタリーミキサー等)、薄膜旋回型高速ミキサー(フィルミックス、クレアミックス等)等の従来公知の撹拌機又は分散機を用いて均一に混合又は分散させることにより調製することができる。
【0046】
前述の塗工材を被塗物に塗布することで導電性の塗工膜が形成され、塗工物品が得られる。
【0047】
本発明において、塗工膜とは、液状の塗工材を被塗物に塗布して加熱乾燥した固形状の膜のことであり、被塗物から剥がしてフィルムとして用いることもできる。
【0048】
被塗物は特に限定されるものではなく、例えば、金属材;各種プラスチック材;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;繊維材料(紙、布等)等を挙げることができ、これらの複合材料であってもよい。また、これらの被塗物は、必要に応じて適宜、脱脂処理、表面処理等することができる。
【0049】
塗布方法としては、一定の膜厚範囲内で塗布できるものであれば特に限定されず、例えば、ローラー塗装、刷毛塗装、霧化塗装、ディッピング塗装、アプリケーター塗装、シヤワーコート塗装、ロールコーター塗装、ダイコーター塗装等が挙げられる。
膜厚としては、乾燥膜厚で1〜200μmが好ましく、2〜150μmがより好ましい。
乾燥温度としては、80〜200℃の温度が好ましい。
乾燥時間としては、1秒〜30分が好ましい。
【0050】
加熱乾燥することにより、塗工材に含まれる溶媒の80%以上を消失することが好ましく、90%以上を消失することがより好ましく、95%以上を消失することが特に好ましい。
【0051】
<6−2.電極用組成物>
本発明の製造方法で作製される導電ペーストは、さらに活物質を配合することで電極用組成物を製造することができ、なかでも、非水電解質二次電池正極組成物を好適に製造することができる。非水電解質二次電池正極組成物の用途としては、非水電解質二次電池の正極層、或いはプライマー層の形成等が挙げられる。
【0052】
正極の活物質としては、例えば、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2等のリチウム複合酸化物等が挙げられる。これらの電極活物質は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
上記非水電解質二次電池正極組成物固形分中の正極活物質の固形分含有量は、通常70質量%以上かつ100質量%未満、好ましくは80質量%以上かつ100質量%未満、特に好ましくは90質量%以上100質量%未満であることが、電池容量、電池抵抗等の面から好適である。
【0053】
上述の非水電解質二次電池正極組成物は、イオン伝導性の観点から、フッ素含有高分子バインダーを含有することが好ましい。フッ素含有高分子バインダーとしては、具体的には、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PVDF−HFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられ、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましい。
【0054】
上述の非水電解質二次電池正極組成物は、前記導電ペーストをまず調製し、当該導電ペーストに正極活物質を配合することにより得ることができる。
【0055】
上述の非水電解質二次電池正極組成物固形分中の分散樹脂(A)の固形分含有量は、通常0.001〜20質量%、好ましくは0.005〜10質量%であることが、電池性能、粘度等の面から好適である。
【0056】
上述の非水電解質二次電池正極組成物固形分中の導電カーボン(B)の固形分含有量は、通常、0.01〜30質量%、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%が電池性能の点から好適である。
【0057】
上述の非水電解質二次電池正極組成物中の溶媒(C)の含有量は、通常、0.1〜60質量%、好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは1〜45質量%が電極乾燥効率、粘度の点から好適である。
【0058】
上述の非水電解質二次電池正極組成物は、以上に述べた各成分を、例えば、ディスパー、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、ペブルミル、LMZミル、DCPパールミル、遊星ボールミル、ホモジナイザー、二軸混練機(プラネタリーミキサー等)、薄膜旋回型高速ミキサー(フィルミックス、クレアミックス等)等の従来公知の撹拌機又は分散機を用いて均一に混合又は分散させることにより調製することができる。
【0059】
さらに前記非水電解質二次電池正極組成物を塗布し、これを乾燥することで非水電解質二次電池正極層を製造することができる。
【0060】
非水電解質二次電池正極組成物の塗布は、ダイコーター等を用いたそれ自体公知の方法により行うことができる。非水電解質二次電池正極組成物の塗布量は特に限定されないが、例えば、乾燥後の正極合材層の厚みが0.03〜0.30mm、好ましくは0.05〜0.24mmの範囲となるように設定することができる。乾燥工程の温度としては、例えば、70〜200℃、好ましくは100〜180℃の範囲内で適宜設定することができる。乾燥工程の時間としては、例えば、5〜120秒、好ましくは5〜60秒の範囲内で適宜設定することができる。
【0061】
前記非水電解質二次電池正極組成物を塗布・乾燥して得られた非水電解質二次電池正極層は、プレスにより圧縮されてもよい。プレスすることで導電性が向上し、より性能の高い非水電解質二次電池が得られる。
【0062】
前述の非水電解質二次電池正極層を用いることで、非水電解質二次電池を製造することができる。非水電解質二次電池の構成部位としては、正極以外に、負極、セパレータ、及び非水電解質等が挙げられ、これらは非水電解質二次電池の分野において公知のものを適宜使用することができる。また、非水電解質二次電池は、前述した非水電解質二次電池正極層又はその原料成分を用いる以外、公知の方法を適宜使用することにより製造することができる。
【実施例】
【0063】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0064】
<分散樹脂の製造>
製造例1
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル100部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してケン化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥した。最終的に、重合度500、ケン化度98mol%のポリビニルアルコール樹脂である分散樹脂No.1を得た。
【0065】
製造例2
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル100部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してケン化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥した。最終的に、重合度500、ケン化度90mol%のポリビニルアルコール樹脂である分散樹脂No.2を得た。
【0066】
製造例3
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル100部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してケン化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥した。最終的に、重合度500、ケン化度85mol%のポリビニルアルコール樹脂である分散樹脂No.3を得た。
【0067】
製造例4
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル70部及びポリエチレングリコールメタクリレート(分子量2000)30部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してケン化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥した。最終的に、重合度500、ケン化度50mol%、ポリエーテル基含有モノマー含有量30%の変性ポリビニルアルコール樹脂である分散樹脂No.4を得た。
【0068】
製造例5
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル97部及びポリエチレングリコールメタクリレート(分子量2000)3.0部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してケン化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥した。最終的に、重合度500、ケン化度90mol%、ポリエーテル基含有モノマー含有量3.0%の変性ポリビニルアルコール樹脂である分散樹脂No.5を得た。
【0069】
製造例6
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとしてメタクリル酸2−ヒドロキシエチル95部及びメタクリル酸5.0部、溶媒としてエチレングリコールモノブチルエーテル、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて約115度の温度で2時間共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマー及びメタノールを除去し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて固形分50%のアクリル樹脂である分散樹脂No.6溶液を得た。
【0070】
<導電ペーストの製造>
実施例1
製造例1で得られた分散樹脂No.1 30部(固形分30部)を125℃に加温したN−メチル−2−ピロリドン8500部に加えて混合し、分散樹脂No.1を完全に溶解させた。樹脂溶液にアセチレンブラック(※1)1200部及びKFポリマーW#7300(製品名、クレハ社製、ポリフッ化ビニリデン)220部を加えて混合した後、ボールミルにて5時間分散し、導電ペースト(X−1)を得た。
【0071】
実施例2〜23、実施例26〜30、及び比較例1〜2
導電ペーストの配合及び溶媒(C)の加温温度を下記表1のとおりとする以外は、実施例1と同様にして、導電ペースト(X−2)〜(X−23)、及び(X−26)〜(X−32)を製造した。尚、表中の樹脂配合量は固形分の値である。
【0072】
実施例24
製造例1で得られた分散樹脂No.1 30部(固形分30部)を50℃に加温したN−メチル−2−ピロリドン8500部に加えて混合し、分散樹脂No.1を溶解させた。樹脂溶液にアセチレンブラック1200部を加え、ボールミルにて5時間分散した。得られたペーストにKFポリマーW#7300 220部を混合し、導電ペースト(X−24)を得た。
【0073】
実施例25
製造例1で得られた分散樹脂No.1 30部(固形分30部)、アセチレンブラック1200部及びKFポリマーW#7300 220部を125℃に加温したN−メチル−2−ピロリドン8500部に加えて混合した後、ボールミルにて5時間分散し、導電ペースト(X−25)を得た。
【0074】
下記表1に、粘度、貯蔵性、及び導電性の評価試験結果(S、A、B、C、D)を示す。また、3種類の評価結果の中の一番悪い評価を総合評価とした。
本発明においては全ての評価試験で合格することが必須であり、1種類でも不合格(D)があった場合、総合評価は不合格(D)となり、その導電ペーストは不合格となる。
【0075】
【表1】
【0076】
(※1)アセチレンブラック(一次粒子径50nm、比表面積39m
2/g、pH8.8)、
(※2)ケッチェンブラック(一次粒子径40nm、比表面積800m
2/g、pH9.0)、
(※3)グラファイト(一次粒子径8000nm、比表面積5m
2/g)、
(※4)グラフェン(一次粒子径3000nm、比表面積40m
2/g)、
(※5)カーボンナノチューブ(一次粒子径10nm、平均長さ5000nm、比表面積260m
2/g)、
(※6)製造工程について
α:分散樹脂(A)に加温した溶媒(C)を加えて溶解した。次いで該樹脂溶液に導電カーボン(B)及びバインダー(D)を添加して分散した。
β:分散樹脂(A)に加温した溶媒(C)を加えて溶解した。次いで該樹脂溶液に導電カーボン(B)を添加して分散した後、バインダー(D)を添加して混合した。
γ:加温した溶媒(C)に分散樹脂(A)、バインダー(D)、及び導電カーボン(B)を添加して混合した。次いで該混合液を分散した。
(※7)分散樹脂(A)の溶解性について
S:5分間のディスパー撹拌後に分散樹脂が完全に溶解する。
A:5分間のディスパー撹拌後に分散樹脂の一部が溶け残っているが、1時間のディスパー撹拌後に分散樹脂が完全に溶解する。
B:1時間のディスパー撹拌後に分散樹脂の一部が溶け残っているが、24時間のディスパー撹拌後に分散樹脂が完全に溶解する。
C:24時間のディスパー撹拌後に分散樹脂の一部が溶け残っている。
D:24時間のディスパー撹拌後に分散樹脂がほぼ全て溶け残っている。
尚、製造工程αとβについては、樹脂溶液(分散樹脂と溶媒)の溶解性を確認できたが、製造工程γ(実施例25)に関しては顔料が含有されているため溶解性の評価はできなかった。
【0077】
上記実施例及び比較例で作製した導電ペースト(X−1)〜(X−32)の水分含有量はいずれも0.8%未満であった。実施例及び比較例で得られた導電ペーストから非水電解質二次電池正極組成物を作製し、さらに非水電解質二次電池を作製したところ、導電ペースト(X−1)〜(X−30)を用いて作製された非水電解質二次電池は、導電ペースト(X−31)及び(X−32)を用いたものに比べて電池性能が良好であった。
【0078】
評価試験
<粘度>
実施例及び比較例で得られた導電ペーストをコーン&プレート型粘度計「Mars2」(製品名、HAAKE社製)を用い、シアーレート1.0sec
−1で粘度を測定し、下記基準により評価した。評価としては、S、A、B、Cが合格で、Dが不合格である。
S:粘度が、1Pa・s未満である。
A:粘度が、1Pa・s以上、かつ5Pa・s未満である。
B:粘度が、5Pa・s以上、かつ30Pa・s未満である。
C:粘度が、30Pa・s以上、かつ100Pa・s未満である。
D:粘度が、100Pa・s以上である。
【0079】
<貯蔵性>
実施例及び比較例で得られた導電ペーストを20℃の恒温室で1ヶ月貯蔵した後、コーン&プレート型粘度計「Mars2」(製品名、HAAKE社製)を用い、シアーレート1.0sec
−1で粘度を測定し、下記基準により評価した。評価としては、S、A、B、Cが合格で、Dが不合格である。
S:粘度が、1Pa・s未満である。
A:粘度が、1Pa・s以上、かつ5Pa・s未満である。
B:粘度が、5Pa・s以上、かつ30Pa・s未満である。
C:粘度が、30Pa・s以上、かつ100Pa・s未満である。
D:粘度が、100Pa・s以上である。
【0080】
<導電性>
実施例及び比較例で得られた導電ペーストをドクターブレード法でガラス板(2mm×100mm×150mm)へ塗工して、140℃で15分加熱乾燥した。得られた厚さ20μmの乾燥塗膜について、四探針プローブ(三菱化学製、PSP)を用いて、ソースメータ(ケースレー製、2400)により抵抗を測定した。評価としては、S、A、B、Cが合格で、Dが不合格である。
S:抵抗が、0.5Ω・cm未満であり、導電性は非常に良好である。
A:抵抗が、0.5Ω・cm以上、かつ1Ω・cm未満であり、導電性は良好である。
B:抵抗が、1Ω・cm以上、かつ1.5Ω・cm未満であり、導電性はやや良好である。
C:抵抗が、1.5Ω・cm以上、かつ10Ω・cm未満であり、導電性はやや劣る。
D:抵抗が、10Ω・cm以上であり、導電性は非常に劣る。又は平滑性のある乾燥塗膜が作成できなかった。
【課題】本発明が解決すべき課題としては、少ない分散樹脂の添加量で、高固形分濃度であるにもかかわらず、分散性、貯蔵安定性、及び導電性に優れた導電ペースト、塗工材、及び塗工物品の製造方法を提供すること。
【解決手段】分散樹脂(A)、導電カーボン(B)、及び溶媒(C)を含有する導電ペーストの製造方法であって、分散樹脂(A)を50℃以上に加温した溶媒(C)に溶解することを特徴とする導電ペーストの製造方法。