(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外囲器は、少なくともアーク放電領域を囲んで形成される前記アーク放電空間をアルカリフリー領域として形成する石英ガラス以外のアルカリフリーガラスからなるアルカリフリーガラス管と、
前記アルカリフリーガラス管の内外径と同一を含む略等しい内外径を有し、前記アルカリフリーガラス管の一端の端面に溶融接合されるホウ珪酸ガラスからなる接合ガラス管と、
前記陽極を形成する前記タングステンピンを含む前記放電電極に前記アルカリフリーガラス管の外径と略等しい外径を有する端面部を形成するように気密溶着され、前記アルカリフリーガラス管の他端に前記端面部を介して溶融接合されるホウ珪酸ガラスからなる陽極ビードと、
前記陰極の先端部に固着される焼結電極と共に前記陰極を形成する前記タングステンピンを含む前記放電電極に前記接合ガラス管の内径と略等しい外径を有する側面部を形成するように気密溶着され、前記接合ガラス管内に前記側面部を介して溶融接合されるホウ珪酸ガラスからなる陰極ビードと、
を備えて構成される請求項1に記載の閃光放電管。
【背景技術】
【0002】
従来から、内部にキセノンガスを封入した状態で、透光性の外囲器の両端に放電電極を気密封着して構成される閃光放電管は、周知である。閃光放電管は、トリガー回路が出力する高周波信号、いわゆるトリガー信号が外囲器を介して印加される。これにより、閃光放電管は、瞬間的に大光量で発光する。
【0003】
また、上記構成の閃光放電管を光源負荷として備える発光装置も、周知である。発光装置としては、例えば写真撮影の際の被写体照明用の人工光源であるストロボ装置や、キャッチアップを目的とする広告宣伝用の発光装置などがある。
【0004】
上記発光装置の発光動作モードの一つとして、閃光放電管を短時間間隔で連続発光させる短間隔連続発光動作モードが知られている。
【0005】
短間隔連続発光動作モードは、例えば1秒以下の短時間間隔で発光を繰り返すような発光動作モードである。具体的には、上記ストロボ装置においては、撮影時の照射状態(例えば、影の発生状況)を事前に確認するための発光動作モードである。また、上記広告宣伝用の発光装置においては、キャッチアップ効果をより高めるための点滅発光動作モードなどである。近年、短間隔連続発光動作モードにおいて、より多くの連続発光動作回数で発光させることが望まれている。
【0006】
しかしながら、閃光放電管は、発光動作に伴い発熱する。そのため、連続発光動作時において、連続発光回数の増大に従って発熱が蓄積され、閃光放電管が高温状態となる。これにより、発光できない、いわゆる発光欠けを生じる場合がある。
【0007】
上記理由により、むやみに連続発光回数を増大させることは困難である。そこで、一般的には、例えば閃光放電管を所定回数の連続発光動作後に、適宜、発光休止する発光休止期間を強制的に設けている。これにより、上記発光装置などは、連続発光動作モードにおける発光動作を制御し、閃光放電管が高温になることを防いでいる。
【0008】
以下に、高温状態において、閃光放電管の発光動作が阻害される要因について考察する。
【0009】
まず、閃光放電管の外囲器の内部に封入されるキセノンガスの熱膨張による封入圧力の上昇が、想定される。キセノンガスの封入圧力が上昇すると、外囲器内における電子の移動が制限される。この場合、発光動作であるアーク放電を生じるためには、陽極と陰極との電極間への、より大きなエネルギーの供給や、トリガー電極への、より大きなエネルギーを有するトリガー信号の印加が必要となる。つまり、高温状態での封入圧力の変化は、閃光放電管の発光動作を阻害する方向に作用すると考えられる。
【0010】
また、閃光放電管の温度上昇に伴うトリガー信号の出力の減衰現象が、考えられる。
【0011】
ここで、出力の減衰現象について、以下に簡単に説明する。
【0012】
通常、連続発光動作時のトリガー信号の出力波形は、初期の発光動作時に、所望の高いピークの振動波形が観測される。しかし、連続発光回数が増えて閃光放電管が高温状態となり、例えば発光欠けが生じる回数になると、ピークが大きく減衰した出力波形が観測される現象である。
【0013】
つまり、トリガー信号の出力波形の減衰現象は、トリガー信号が陰極からの電子放出を誘引・誘導する能力、および封入されているキセノンガスを励起する能力が低下することを意味する。これは、閃光放電管の発光開始動作を助ける、いわゆるトリガー能力、の低下を意味する。そのため、閃光放電管の連続発光動作を継続した場合、トリガー信号の出力の減衰現象は、前述したキセノンガスの封入圧力の上昇作用などと相俟って、発光欠けを生じる要因になると考えられる。
【0014】
そして、本願発明者は、上記トリガー信号の波形が減衰する要因は、以下に示すように、閃光放電管の外囲器を構成するガラスの組成に起因すると考えている。
【0015】
つまり、一般的に、閃光放電管の電極ピンには、アーク放電現象で閃光放電管を発光させるために、瞬間的に流れる大電流に耐える高融点金属材料であるタングステンが採用される。そのため、閃光放電管の外囲器は、タングステンの熱膨張係数に近似した、熱膨張係数を有するタングステン封着用の硬質ガラス(タングステン封着ガラス)である周知のホウ珪酸ガラスが、一般的に使用される。
【0016】
具体的には、熱膨張係数が4.4×10
−6・K
−1〜4.5×10
−6・K
−1のタングステンに対して、同程度の3.2×10
−6・K
−1〜4.1×10
−6・K
−1の熱膨張係数を有するホウ珪酸ガラスが、通常採用される。これにより、熱膨張係数の差に起因する、気密封着時の不具合の発生を防止している。
【0017】
しかし、ホウ珪酸ガラスは、高温状態になるに従い、電気的特性が変動することが知られている。具体的には、ホウ珪酸ガラスは、温度上昇に伴い、例えば比誘電率や誘電損失率が大きくなるため、線抵抗値が下降する特性を有する。電気的特性の変動が生じると、トリガー電極にトリガー信号を印加する時、トリガー信号のエネルギーが、電気的特性の変動状態・状況に基づいて、消費される。
【0018】
上記理由について、以下に、具体的に説明する。
【0019】
まず、ガラスが高温状態になる場合、ガラス管自体の体積抵抗率は、下記要因により下降し、ガラス管でのトリガー信号のエネルギーの消費量が増加する。つまり、ガラス管内のキセノンガスや、陰極に含浸したエミッタから見ると、トリガー信号のエネルギー量は、高温状態の硝子管で消費される。そのため、ガラス管内のキセノンガスやエミッタには、入力されたトリガー信号のエネルギーが十分に供給されない。その結果、キセノンガスの励起が不十分となるため、不発光となる。また、閃光放電管の点灯電圧が上昇する。
【0020】
そこで、本願発明者は、温度上昇に伴うホウ珪酸ガラスの電気的特性の変動が、トリガー信号の出力の減衰現象の発生の主要因であると推定している。
【0021】
さらに、本願発明者は、上記電気的特性の変動を生じる原因が、ホウ珪酸ガラス管が含有するホウ素およびアルカリ成分であるナトリウムのガラス管構造内での振る舞いに起因していると推定している。すなわち、例えばアルカリ成分であるナトリウムを含有するホウ珪酸ガラスは、温度上昇に伴い、ナトリウムのイオンのガラス管構造内での移動度が大きくなる。一方、ナトリウムのイオンは、伝導キャリアとしても機能する。そのため、ナトリウムのイオンの移動度が大きくなると、誘電率も大きくなる。つまり、比誘電率などの変動が、上記電気的特性の変動を生じさせると推定している。また、アルカリ成分は高温時にガラス管から揮発し、発光に対して種々の悪影響を及ぼす。なお、上記アルカリ成分とは、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属成分のことを意味する。以降でも同様である。
【0022】
そこで、本願発明者は、比較のために、外囲器として石英ガラスからなる石英管を採用した閃光放電管において、短時間間隔の連続発光動作を行った場合の出力の減衰現象について確認した。このとき、石英管の温度は、ホウ珪酸ガラスと同様に上昇するが、トリガー信号の出力の減衰現象は発生しなかった。
【0023】
石英ガラスは、ナトリウムに代表されるアルカリ成分を含有していない。つまり、温度が上昇しても、石英ガラスは伝導キャリアとして機能するナトリウムのイオン成分を含まない。そのため、誘電率などが大きく上昇あるいは下降変動することが無い。これにより、ガラス管は、トリガー信号のエネルギーを消費しないので、トリガー信号の出力の減衰現象が発生しないと、推測される。以上の比較結果からも、本願発明者は、ホウ珪酸ガラス中のナトリウムのイオンなどのアルカリ成分がトリガー信号の出力減衰現象の主要因であると推定している。
【0024】
なお、上記石英管(石英ガラス)を採用した閃光放電管は、主に二酸化珪素から形成される。石英ガラスは、小さい熱膨張係数と、高耐熱特性、高耐熱衝撃特性、および大きな機械的強度を備える。石英ガラスからなる閃光放電管も、通常、上記ホウ珪酸ガラス管と同様に、放電電極の電極ピンとして、高融点金属であるタングステンが採用される。
【0025】
しかし、石英管の熱膨張係数は約0.55×10
−6・K
−1で、タングステンの熱膨張係数は4.4×10
−6・K
−1〜4.5×10
−6・K
−1である。つまり、石英管とタングステンの熱膨張係数は、著しく異なる。そのため、気密封着するために、石英管とタングステンとを加熱溶融により直接溶着すると、熱膨張係数の差により石英管に大きな歪みが発生し、クラックなどが生じる。
【0026】
そこで、従来から、上記クラックなどの発生を防止するために、以下に示す種々の方法が、提案あるいは実用化されている。
【0027】
例えば、石英管の管軸方向に熱膨張係数が順次変化する中間ガラス体を備える閃光放電管が、提案されている(例えば、特許文献1参照)。中間ガラス体は、複数の熱膨張係数の異なるガラス管を、管軸方向に順次配置して構成される。これにより、熱膨張係数の異なる石英管とタングステンとの接合を可能にしている。
【0028】
具体的には、特許文献1の閃光放電管は、複数の熱膨張係数の異なる特性を有する中間ガラス体を、予め準備する。そして、中間ガラス体のタングステンの熱膨張係数と近似するホウ珪酸ガラスから形成される端部ガラス管と、タングステンとを、まず溶着する。
【0029】
つぎに、中間ガラス体の端部ガラス管とタングステンとを加熱して気密封着する。
【0030】
同様に、中間ガラス体の石英管の熱膨張係数と近似する二酸化珪素を主成分とする端部ガラス管と、石英管とを、溶着する。
【0031】
つぎに、中間ガラス体の端部ガラス管と石英管とを加熱して気密封着する。
【0032】
これにより、石英管とタングステンとを、中間ガラス体を介して、間接的に気密封着し、クラックなどが発生しにくい閃光放電管を構成している。
【0033】
また、ナトリウムなどのアルカリ成分を含有しないガラスとして、従来から、モリブデン封着用のガラスであるアルミノシリケートガラスを用いる閃光放電管が、知られている(例えば、特許文献2参照)。アルミノシリケートガラスは、石英ガラス管と同様に、温度上昇時において、伝導キャリアとして機能する、アルカリ成分などを含まない。そのため、誘電率などが大きく変動しない、と推定される。
【0034】
特許文献2は、熱膨張係数が約5.0×10
−6・K
−1〜5.5×10
−6・K
−1程度のホウ珪酸ガラスからなる管形バルブと、熱膨張係数が約4.0×10
−6・K
−1〜5.5×10
−6・K
−1程度のコバールからなる電極ピンとを備えた蛍光ランプを開示している。なお、特許文献2には、ホウ珪酸ガラスにおける温度上昇に伴う、前述の減衰現象については、何ら示唆がなく、構成材料などは、単なる例示に留まっている。しかし、電極ピンの例として、例えばタングステンやモリブデンを、外囲器の例として、例えばアルミノシリケートガラスを開示している。このとき、線膨張係数(熱膨張係数)を考慮する必要性が示唆されている。さらに、閃光放電管を用いるランプおよび照明装置も開示している。
【0035】
つまり、上述したように、一般的な閃光放電管を備えた発光装置は、閃光放電管の発光動作時の発熱、特に短時間間隔の連続発光動作時における発熱の蓄積による高温状態への温度上昇によって生じるトリガー信号の出力の減衰現象などが発生する。これにより、閃光放電管が発光しない、いわゆる発光欠け(不発光)などの不具合が発生する。
【0036】
そのため、連続発光動作回数の増大を制限している。具体的には、例えば所定回数の連続発光動作後に、適宜、発光休止期間を強制的に設定して、発光動作を制御している。
【0037】
そこで、特許文献1に開示される閃光放電管は、外囲器としてアルカリ成分を含有しない石英ガラスからなる石英管を用いている。これにより、トリガー信号の出力の減衰現象の発生を防止して、連続発光動作回数の大幅な増大を可能にしている。しかしながら、上記閃光放電管は、電極ピンと、外囲器である石英管との熱膨張係数の差異を考慮して、石英管の両端部に中間ガラス体を構成する必要がある。そのため、中間ガラス体を形成する複雑な加工ステップが必要となる。その結果、閃光放電管や発光装置の大幅なコストアップを招いてしまう。
【0038】
また、特許文献2には、外囲器としてアルカリ成分を含有しないモリブデン封着用として、周知のアルミノシリケートガラスの採用が示唆されている。しかし、示唆内容は、上述したように、単なる例示に留まる。つまり、特許文献2は、アルミノシリケートガラス採用時の電極として、単にモリブデン電極を採用するという技術を開示しているだけである。
【0039】
そして、アルミノシリケートガラスの採用により、特許文献1の石英管と同様に、トリガー信号の出力の減衰現象の発生を防止して、連続発光動作回数の大幅な増大を可能にしている。しかし、電極ピンを構成するモリブデンの融点は、約2600℃である。そのため、瞬間的に大電流が発生するアーク放電現象を利用する閃光放電管の電極へ適用する場合、融点が約3400℃のタングステンを用いる場合に比して、耐久性などの面で不利となる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態にかかる閃光放電管について、
図1を参照しながら説明する。
【0051】
図1は、本発明の実施の形態にかかる閃光放電管を示す概略図である。
【0052】
図1に示すように、本実施の形態の閃光放電管1は、外囲器2と、外囲器2の両端に配置され、一対の放電電極を構成する陽極Aと陰極Cを備える。外囲器2の内部は、キセノンガス3を封入した状態で、陽極Aと陰極Cからなる一対の放電電極を介して気密封着される。
【0053】
陽極Aは、陽極ビード4と、電極ピンを構成するタングステンピン6と、外部ピン10を備える。陰極Cは、陰極ビード5と、電極ピンを構成するタングステンピン7と、焼結電極11と、外部ピン12を備える。キセノンガス3は、陽極Aと陰極Cからなる一対の放電電極を気密封着して形成される、外囲器2の内部の気密空間X内に封入される。
【0054】
外囲器2は、第1外囲器部8と、第2外囲器部9とから構成される。第1外囲器部8は、陽極Aと陰極Cとを構成する一対の放電電極のタングステンピン6、7間であるアーク放電空間Yを含む空間を形成する。第2外囲器部9は、第1外囲器部8の少なくとも一端に連接される接合ガラス管で構成される。なお、本実施の形態では、陰極C側にのみ、第2外囲器部9を構成した例で図示している。
【0055】
第1外囲器部8は、石英ガラスを除く、アルカリ成分を含まない、あるいは所定量以下(例えば、許容される不純物として、アルカリ金属成分は0.1wt%以下)のアルカリ成分を含む、アルカリフリーガラスである、例えばアルミノシリケートガラス管で構成される。アルミノシリケートガラス管としては、例えばSCHOTT社製のGlass8253などが例示される。つまり、第1外囲器部8は、アルカリフリー領域を形成する。
【0056】
また、第2外囲器部9の接合ガラス管は、例えば軟化点(例えば、700から830℃程度の範囲)が低くなるように、アルカリ成分を含んで設計されたホウ珪酸ガラス管で構成される。そこで、ホウ珪酸ガラス管としては、軟化点が775℃の例えばSCHOTT社製のGlass8487などが例示される。
【0057】
なお、アルミノシリケートガラス管自体は、上述したように、周知のガラス管である。つまり、アルミノシリケートガラス管は、アルカリ成分を殆ど含んでいない。具体的な成分組成は、SCHOTT社のGlass8253によれば、酸化アルミニウムを16.5wt%、二酸化珪素を61.0wt%、アルカリ土類金属の酸化物として、酸化カルシウムを13wt%、酸化バリウムを8wt%、アルカリ金属酸化物である酸化ナトリウムを0.02wt%未満、などを含んで構成されている。さらに、Glass8253は、アルカリ金属酸化物の含有量が、合計でも0.03wt%未満となるように設定されている。
【0058】
また、ガラス8253の特性は、軟化点が約1000℃、熱膨張係数が4.7×10
−6・K
−1である。つまり、ガラス8253の軟化点は、アルカリ成分を含有しているホウ珪酸ガラスの約700〜830℃よりも高い。また、ガラス8253の熱膨張係数は、ホウ珪酸ガラスの3.2〜4.1×10
−6・K
−1および石英ガラスの0.55×10
−6・K
−1よりも大きい。
【0059】
陽極Aは、上述したように、陽極ビード4が溶着されるタングステンピン6と、タングステンピン6に溶接された外部ピン10で構成される。なお、タングステンピン6は、熱膨張係数が4.4〜4.5×10
−6・K
−1で、融点が約3400℃と極めて高い特性を有する。陽極ビード4は、周知のホウ珪酸ガラス、例えばSCHOTT社製のGlass8487などで構成される。外部ピン10は、融点が1455℃程度の、例えば純ニッケル、または鉄ニッケルやマンガンニッケルなどのニッケル系金属で形成され、外部との接続端子を構成する。なお、外部ピン10は、閃光放電管のガラスと封着せず、管外に設置されるため、特にガラス側の膨張係数と合わせる必要はない。
【0060】
さらに、陽極ビード4は、第1陽極ビード4aと、第2陽極ビード4bから構成される。第1陽極ビード4aは、タングステンピン6に対して、直接溶着されて配置される。第2陽極ビード4bは、第1陽極ビード4aの外側に溶着されて配置される。このとき、第2陽極ビード4bの端面4bb(
図5参照)の外径は、アルミノシリケートガラス管からなる第1外囲器部8の外径と同一を含む略等しい値となるように形成される。そして、後述するように、端面4bbを介して、第1外囲器部8の端面8a(
図5参照)の厚み(肉厚)部分と溶融接合される。これにより、第1外囲器部8とタングステンピン6との気密封着を間接的に実現する。
【0061】
つまり、上記陽極ビード4の二重構造は、まず、アルミノシリケートガラス管の端面8aと第2陽極ビード4bを封着することにより、封着の信頼性を高めることができる。さらに、アルミノシリケートガラス管内に嵌まるサイズの第1陽極ビードを設けることにより、陽極Aをアルミノシリケートガラス管の中心軸に、容易に合わせることができる。そこで、上記の二重構造が用いられる。より具体的には、熱膨張率の異なるガラスを接合する場合、管軸方向での接合が気密封着に対する信頼性を高めることができる。そのため、第1外囲器部8の端面8aと第2陽極ビード4bの端面4bbを管軸方向で意図的に接合している。すなわち、従来のビードの側面とガラス管の内面との異種ガラス接合の場合、タングステンピンからビードを引き剥がす円周方向に歪応力が発生して、タングステンピンとビードを剥離させようとする。そのため、陽極ビード4の端面とアルミノシリケートガラス管の端面を管軸方向で接合する。これにより、タングステンピン6と陽極ビード4の剥離を防ぐことができる。なお、1つのビードで陽極ビードを構成し、その端面とガラス管の端面とを気密封着することも可能である。しかし、本実施の形態では、封着加工時において、ガラス管の内径の円周方向に対して、タングステンピン6を管軸方向の中心に設置し易くするために、第1陽極ビード4aを設け、二重構造の陽極ビード4構成としている。
【0062】
陰極Cは、上述したように、陰極ビード5と、タングステンピン7と、焼結電極11と、外部ピン12とから構成される。タングステンピン7は、陰極ビード5が気密溶着されて配置される。焼結電極11は、タングステンピン7の先端側(陽極Aと対向する側)に、例えばカシメ工法などで取り付けられる。外部ピン12は、タングステンピン7に溶接され、外部との接続端子を構成する。なお、陰極Cを構成する陰極ビード5、タングステンピン7および外部ピン12も、陽極Aと同様に、それぞれ、ホウ珪酸ガラス、タングステン、ニッケル系金属で構成される。このとき、陰極ビード5の側面部5aは、第2外囲器部9の内径と略等しい外径を有する。そして、後述するように、側面部5aを介して、第2外囲器部9の内周面9cに溶融接合される。これにより、第2外囲器部9とタングステンピン7との気密封着を間接的に実現する。
【0063】
また、上記第1外囲器部8は、透明導電性被膜13aと、トリガー電極13を備える。透明導電性被膜13aは、例えば第1外囲器部8の端部領域を除く外表面の、例えば半周程度の領域に、少なくともアーク放電空間Yの長手方向に沿って形成される。トリガー電極13は、透明導電性被膜13aの一方の端部(例えば、陰極C側の端部)に巻回した、例えば金属導線を導電ペイントで固定されるトリガーバンド13bで構成される。
【0064】
以上のように、本実施の形態の閃光放電管1が構成される。
【0065】
以下に、本発明の実施の形態にかかる閃光放電管1の製造方法の一例について、
図2Aから
図5を参照しながら、説明する。
【0066】
図2Aおよび
図2Bは、陽極Aの製造ステップの一例を示す概略図である。
図3Aおよび
図3Bは、陰極Cの製造ステップの一例を示す概略図である。
図4Aおよび
図4Bは、外囲器2の製造ステップの一例を示す概略図である。
図5は、
図2Aから
図4Bの製造ステップで製造した陽極Aと陰極Cを用いて、本実施の形態の閃光放電管を製造する製造ステップの一例を示す概略図である。
【0067】
図2Aに示すように、陽極Aは、まず、熱膨張係数が4.4〜4.5×10
−6・K
−1のタングステンピン6に、ニッケル系金属からなる外部ピン10を溶接する。このとき、
図2Aに示すように、例えば外部ピン10の溶接面に、第2陽極ビード4bの内径より大きい段差部を設けることが好ましい。これにより、陽極Aの陽極ビード4の位置を容易に決めることができる。
【0068】
つぎに、タングステンピン6に、中空円筒形状に形成された熱膨張係数が3.2〜4.1×10
−6・K
−1のホウ珪酸ガラスからなる陽極ビード4(第1陽極ビード4aと第2陽極ビード4b)を、例えば下方(矢印方向)に移動させて挿通させる。その後、
図2Bに示すように、ビード加熱用のバーナーB1でタングステンピン6と陽極ビード4を加熱して、溶融接合する。これにより、陽極Aが形成される。
【0069】
同様に、
図3Aに示すように、陰極Cは、まず、熱膨張係数が4.4〜4.5×10
−6・K
−1のタングステンピン7に、ニッケル系金属からなる外部ピン12を溶接する。
図3Aに示すように、例えば外部ピン12の溶接面に、陰極ビード5の内径より大きい段差部を設けることが好ましい。これにより、陰極Cの陰極ビード5の位置を容易に決めることができる。
【0070】
つぎに、タングステンピン7に、中空円筒形状に形成された熱膨張係数が3.2〜4.1×10
−6・K
−1のホウ珪酸ガラスからなる陰極ビード5を、例えば下方(矢印方向)に移動させて挿通させる。その後、
図3Bに示すように、ビード加熱用のバーナーB2でタングステンピン7と陰極ビード5を加熱して、溶融接合する。
【0071】
さらに、例えばタンタル、ニオブ、ジルコニウム、ニッケルなどの高融点金属の粉末を焼結した焼結電極11を、例えばカシメ工法を用いて、タングステンピン7の先端近傍に取り付ける。これにより、陰極Cが形成される。
【0072】
このとき、陽極Aおよび陰極Cを構成するタングステンピン6、7と、陽極ビード4および陰極ビード5との熱膨張係数の差は小さく、具体的には1×10
−6・K
−1以下になるように設定している。これにより、加熱による溶融接合時における熱膨張係数の差に基づく不都合の発生を未然に防止している。
【0073】
つぎに、
図4Aに示すように、アルミノシリケートガラス管からなる第1外囲器部8と、アルカリ成分を含むホウ珪酸ガラス管からなり、第1外囲器部8の内外径と同一を含む略等しい内外径を有する第2外囲器部9とを、例えば図中に示す下方(矢印方向)に移動させて、端面8aと端面9aとを当接させる。そして、端面8aと端面9aを当接させた状態で、例えば
図4Bに示すように、バーナーB3で、加熱して溶融接合する。これにより、外囲器2が形成される。
【0074】
このとき、第1外囲器部8を形成するアルミノシリケートガラス管の熱膨張係数(4.6×10
−6・K
−1)と、第2外囲器部9を形成するホウ珪酸ガラス管の熱膨張係数(3.2〜4.1×10
−6・K
−1)との差は、概ね1×10
−6・K
−1前後である。そのため、第1外囲器部8の内周面8bに第2外囲器部9の外周面9bを挿入して径方向で溶融接合すると、両者の熱膨張係数の差により、クラックなどの不具合を生じる虞がある。
【0075】
そこで、本実施の形態では、第1外囲器部8の端面8aの厚み(肉厚)と、第2外囲器部9の端面9aの厚み(肉厚)の部分を介して、管軸方向に溶融接合する。これにより、両者の熱膨張係数の差に起因する不具合の発生を、大幅に抑制することができる。
【0076】
つぎに、
図1に示すように、外囲器2の第1外囲器部8の外周面8cの所定領域に、例えば酸化スズなどの透明導電性被膜13aからなるトリガー電極13を形成する。透明導電性被膜13aは、例えば蒸着法などの周知の方法で形成される。トリガー電極13には、内部に封入されるキセノンガスを励起する、トリガー電圧が印加される。なお、第1外囲器部8の外周面8cの所定領域とは、具体的には、第2外囲器部9を構成するホウ珪酸ガラスと接する端部領域を除いた領域である。
【0077】
つぎに、
図5に示すように、
図2Aから
図4Bに示す方法で製造した陽極Aおよび陰極Cなどを、以下のように外囲器2と組み合わせる。
【0078】
具体的には、まず、陽極Aを、図中の矢印A1で示す下方に移動させる。そして、陽極Aの陽極ビード4の第2陽極ビード4bの端面4bbと、外囲器2の第1外囲器部8の端面8aとを当接させる。その後、当接箇所を、例えばバーナーB4で加熱する。これにより、第2陽極ビード4bの端面4bbと第1外囲器部8の端面8aとを、溶融接合する。その結果、陽極Aは、第1外囲器部8を介して、外囲器2に気密封着される。
【0079】
つぎに、陰極Cを、図中の矢印A2で示す上方に移動させる。そして、陰極Cの陰極ビード5の側面部5aを、外囲器2の第2外囲器部9の内周面9cに沿って、内部に挿入する。
【0080】
つぎに、挿入した状態で、外囲器2の内部に所望量のキセノンガス3(
図1参照)を充填させながら、例えばバーナーB5で第2外囲器部9を加熱する。これにより、陰極Cの陰極ビード5の側面部5aと、第2外囲器部9の内周面9cとが溶融接合される。その結果、陰極Cは、外囲器2(第2外囲器部9)に気密封着される。
【0081】
つぎに、特に図示していないが、陽極Aの外部ピン10および陰極Cの外部ピン12を所望の長さに設定するステップや、外部ピン10、12に対して予備半田を施すステップを実行する。
【0082】
さらに、
図1に示すように、第1外囲器部8に形成される透明導電性被膜13aの陰極C側の端部に、透明導電性被膜13aとともにトリガー電圧が印加されるトリガー電極を構成するトリガーバンド13bを設けるステップなどを必要に応じて行う。
【0083】
上記ステップにより、
図1に示す、本実施の形態の閃光放電管1が形成される。
【0084】
以上で述べたように、本実施の形態にかかる閃光放電管は、複雑な加工ステップを必要とする中間ガラス体や段継ぎガラス管などを用いることなく構成される。そのため、閃光放電管1の製造ステップを簡素化できる。その結果、閃光放電管1を安価に提供できる。
【0085】
以下に、本実施の形態の閃光放電管1を短時間間隔で連続発光させた場合の温度分布について、
図6を用いて説明する。
【0086】
図6は、同実施の形態にかかる閃光放電管を短間隔連続発光させた場合の長手方向における概略温度分布図である。
【0087】
なお、
図6に示す温度分布は、0.8s間隔で、例えば数msの時間で発光する動作を、250回実行させる連続発光動作条件で測定した。
【0088】
つまり、
図6は、上記構成の閃光放電管を0.8s間隔で250回連続発光させた場合における、管軸(長手)方向の概略温度分布を示している。
【0089】
図6から、閃光放電管の最高到達温度は、700℃を超える高温に達することがわかる。
【0090】
また、一対の放電電極間で、アーク放電が発生するアーク放電空間Yにおける管軸方向の温度分布は、ほぼ約700℃前後の高温で均一の分布に維持されることがわかる。
【0091】
さらに、陽極Aの陽極ビード4と陰極Cの陰極ビード5を含む、いわゆる封着部近傍の温度分布は、アーク放電空間Yより低いが、約400℃〜550℃の高温であることがわかる。このとき、陽極A側の温度は、陰極C側の封止部近傍の温度より高温であることがわかる。
【0092】
なお、本実施の形態では、キセノンガスが封入される気密空間X内における陽極Aを構成するタングステンピン6を、比較的長尺で構成している。そのため、タングステンピン6の中央部付近に、温度下降領域が生じていることがわかる。
【0093】
なお、温度下降領域は、放電により加熱されたタングステンピンとガラス管の内径との空間距離があるために発生する。つまり、温度下降領域の熱伝導は、放電によるタングステンピンの加熱、キセノンガス、ガラス管の内面から外面への熱伝導になる。一方、陽極ビード4とガラス管との封着面は、タングステン、陽極ビード4およびガラス管の封着部への熱伝導となる。この差により、温度下降領域が発生する。
【0094】
また、陰極C近傍においても、トリガーバンド13bの形成領域に温度下降領域が発生することもわかる。これは、陰極C側において、焼結電極11を設置するガラス管の外面にトリガーワイヤー線などを巻きつけ、銀ペイントで固着している。そのため、トリガーワイヤー線などを介して、空気中に放熱される。これにより、さらに温度の低く領域が形成される。
【0095】
そのため、従来の閃光放電管の外囲器の場合、アーク放電が発する400℃以上の高温状態となる領域を、アルカリ成分を含むホウ珪酸ガラスで形成すると、上述したように、ホウ珪酸ガラスのアルカリ成分によるトリガー信号の減衰現象が起こると考えられる。つまり、ホウ珪酸ガラスで形成した領域に、トリガー信号を供給すると、ホウ珪酸ガラスによるトリガー信号のガラス管によるエネルギーの消費が発生する。そのため、トリガー信号の出力が減衰する。これにより、発光欠け(不発光)を生じる虞がある。
【0096】
しかし、本実施の形態の閃光放電管は、高温状態となる領域のうちの、アーク放電空間Yおよびキセノンガスが封入される気密空間Xを囲む領域の一部を、アルミノシリケートガラス管からなる第1外囲器部8でアルカリフリー領域を形成する。さらに、トリガー電極13を第1外囲器部8(アルカリフリー領域)に形成する。これにより、第1外囲器部8における、アルカリ成分に起因するトリガー信号のエネルギーの消費が防止される。
【0097】
つまり、本実施の形態は、放電電極であるタングステンピンと、外囲器を構成するアルミノシリケートガラス管とを、タングステンピンと膨張係数が合う封着用ガラスであるホウ珪酸ガラスによる接合ガラス管を介在させて気密封着する構成としている。このとき、従来のように、ホウ珪酸ガラスにトリガー電極を形成してトリガー信号が印加すると、高温時において、ホウ珪酸ガラス領域でエネルギーの消費が生じる。そこで、本実施の形態では、トリガー電極をホウ珪酸ガラス領域ではなく、アルカリフリー領域に形成する。つまり、ホウ珪酸ガラス領域にトリガー信号が印加されないように構成する。これにより、トリガー信号の出力の減衰を抑制して、発光欠けなどの不発光を防止している。上記効果は、短間隔連続発光させた結果を示す
図6の温度分布により確認できる。これにより、アルカリフリー領域とトリガー電極の領域とを、発光により高温になる領域に一致させる必要があることが確認できる。
【0098】
なお、本実施の形態は、上記の実施の形態に限定されない。
【0099】
例えば、陽極Aの気密封着工法やキセノンガスの封入工法などについては、以下のように種々変更することができることはいうまでもない。
【0100】
つまり、上記実施の形態では、第1外囲器部8の一端にのみ第2外囲器部9を溶融接合する構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、第1外囲器部8の両端に第2外囲器部9を形成してもよい。そして、陽極Aを、第2外囲器部9を介して溶融接合してもよい。この場合、陽極Aの陽極ビード4は、その外径を陰極ビード5と同様に第2外囲器部9の内径未満で形成する必要がある。これにより、陽極ビード4の外周面は、対応する第2外囲器部9の内周面9cと溶融接合される。その結果、上記同様の効果が得られる。
【0101】
また、上記実施の形態では、外囲器2を、第1外囲器部8および第2外囲器部9で構成する例で説明したが、これに限られない。例えば、外囲器2を第1外囲器部8のみで構成してもよい。この場合、陽極Aの陽極ビード4および陰極Cの陰極ビード5の外径を、第1外囲器部8の内径未満に形成する。さらに、第1外囲器部8を管軸方向に、例えば内径の2倍以上の寸法の分だけ長尺化して形成する。そして、陽極ビード4と陰極ビード5のそれぞれの側面部を、対応する第1外囲器部8の内周面に沿って挿入し、溶融接合することが好ましい。これにより、同様の効果が得られる。
【0102】
また、上記実施の形態では、陽極ビード4を第1陽極ビード4aと第2陽極ビード4bで構成する例で説明したが、これに限られない。例えば、陽極ビード4を第2陽極ビード4bのみで形成し、タングステンピン6と直接溶着してもよい。これにより、簡略な構成で、同様の効果が得られる。
【0103】
また、上記実施の形態では、陰極Cを外囲器2の内部にキセノンガス3を封入しながら、バーナーB5で気密封着する例で説明したが、これに限られない。例えば、カーボンヒーターを用いて気密封着してもよい。この場合、具体的には、バーナーB5を除く
図5に示す陽極Aが封着された外囲器2と陰極Cおよびカーボンヒーターとを、所定圧力のキセノンガスを充填できる作業空間を備える真空容器内に配置する。そして、真空容器内で、キセノンガスの充填、並びにカーボンヒーターによる陰極Cの陰極ビード5と外囲器2の第2外囲器部9間の溶融接合を行う。
【0104】
さらに、例えば外囲器2に連接して設けた排気管を介して外囲器2内の排気およびキセノンガス封入を行った後、排気管をチップオフする周知の工法で気密封着してもよい。この場合、外囲器2を、接合ガラス管である第2外囲器部9を接合せずに、第1外囲器部8のみで構成する。さらに、陰極Cを、端部外径を含む陰極ビード5の構成を陽極ビード4の構成と同様の構成とする。これにより、陽極Aと同様に、第1外囲器部8の一端に、その厚みを介して陰極ビード5を直接溶融接合することが好ましい。
【0105】
また、本実施の形態では、トリガー電極13を透明導電性被膜13aとトリガーバンド13bとで構成する例で説明したが、これに限られない。例えば、透明導電性被膜13aのみ、あるいは透明導電性被膜13aと第1外囲器部8に巻回された金属線とからなる構成などでトリガー電極13を構成してもよい。
【0106】
また、本実施の形態では、アルカリフリー領域を第1外囲器部8の範囲に形成する例で説明したが、これに限られない。例えば、発光動作によって高温となる領域の全てをアルカリフリー領域としてもよい。これにより、封着方式によらず、同様の効果が得られる。しかし、本実施の形態のように、タングステンピン6、7と、第1外囲器のアルミノシリケートガラス管とを、ホウ珪酸ガラスの陽極ビード4および陰極ビード5を介在させて気密封着する構成の場合、温度上昇により電気的特性が変動するホウ珪酸ガラスと溶融接合される領域を避けて、アルカリフリー領域を構成することが望ましい。
【0107】
具体的には、まず、陽極ビード4、陰極ビード5を含む、いわゆる封着部を除く領域であるキセノンガスが封入される気密空間Xを最大領域とする。一方、トリガー信号は放電電極の周囲を含んで印加する必要があることを考慮して、一対の放電電極のタングステンピン6、7の先端間であるアーク放電空間Yを囲む領域を最小領域とする。そして、アルカリフリー領域を、高温度になる、最小領域以上で、最大領域未満の範囲とする中央領域に形成する。そこで、本実施の形態では、
図1に示すアルカリフリー領域を、上述した一対の放電電極間であるアーク放電空間Yと、アーク放電空間Yに連なる気密空間Xの一部を囲む領域として形成している。
【0108】
以上のように、本実施の形態の閃光放電管1が形成される。
【0109】
以下に、本発明の実施に形態にかかる発光装置の一例について、
図7を参照しながら、説明する。
【0110】
図7は、本発明の実施の形態にかかる閃光放電管1を備える発光装置の一例であるストロボ装置Sを示す概略構成図である。
【0111】
図7に示すように、本実施の形態の発光装置の一例であるストロボ装置Sは、本体14と、本体14内部に、上述の閃光放電管1、反射傘16、光学部材17、光学制御部18、発光動作制御部19などを備えて構成される。閃光放電管1は、被写体15などを照明する照明用光源となる。反射傘16は、閃光放電管1が発光する光を被写体15方向に向けて導く。光学部材17は、閃光放電管1と被写体15の間に配置され、短波長領域の光、例えば400nm以下の光を遮断する。光学制御部18は、光学部材17を介して入射する光の射出方向、射出角度などを制御する。発光動作制御部19は、閃光放電管1の発光動作を制御する。
【0112】
ストロボ装置Sは、閃光放電管1が発光動作を行う場合、発光動作制御部19で制御されて、以下のように動作する。
【0113】
まず、閃光放電管1から射出される光は、直接、および反射傘16によって反射されて光学部材17に到達する。到達した光は、光学部材17で短波長領域の光が遮断される。そのため、例えば400nm以下の波長の光を含まない光として、光学部材17から出射する。出射した光は、光学制御部18で、例えば照射角度などが制御されて、被写体15に照射される。
【0114】
このとき、本実施の形態のストロボ装置Sは、光源として本実施の形態の閃光放電管1を備えている。具体的には、閃光放電管1は、電極ピンとしてタングステンピンを用い、また短時間間隔の連続発光動作で高温となる外囲器の適切な領域に石英ガラス以外のアルカリフリーガラスを用いて構成している。これにより、安価な構成の閃光放電管1で、トリガー信号の出力の減衰を抑制し、例えば発光欠け(不発光)の発生を低減している。つまり、安定した短時間間隔の連続発光動作を、安価に実現する耐久性に優れた閃光放電管1を用いている。その結果、発光寿命耐久特性、並びに短時間間隔の繰り返し発光耐久特性が大幅に向上したストロボ装置Sを実現できる。
【0115】
なお、本実施の形態の発光装置として、ストロボ装置Sを例に説明したが、これに限定されない。例えば、橋梁・高層ビルなどの高所に設置されている航空機障害灯、航空機やパトカーなどの緊急自動車に搭載される警光灯などの各種発光装置の光源として、上記閃光放電管を用いてもよい。
【0116】
以上で説明したように、本発明の閃光放電管は、透光性の外囲器と、外囲器の両端に、外囲器の内部にキセノンガスを封入した状態で、気密封着して設けられる陽極と陰極からなる一対の放電電極と、トリガー信号を出力するトリガー回路と、外囲器の外表面に形成され、トリガー信号が印加されるトリガー電極を備える。一対の放電電極は、相対向して外囲器内に設けられるタングステンピンを有する。さらに、外囲器は、一対の放電電極で気密封着して形成される気密空間を囲む最大領域未満で、一対の放電電極のタングステンピン間で形成されるアーク放電空間を囲む最小領域以上の、発光動作時に高温状態となる中央領域を、石英ガラスを除くアルカリフリーガラスでアルカリ金属成分を含まない、あるいは
含有量が0.03wt%未満のアルカリ金属成分を含むアルカリフリー領域として、備える。そして、トリガー電極を、アルカリフリー領域に配置する構成としてもよい。
【0117】
この構成によれば、外囲器の中央領域における比誘電率などの電気的特性の大きな変動を抑制できる。これにより、外囲器の中央領域での、トリガー信号のエネルギーの消費を低減できる。その結果、トリガー信号の出力の減衰現象の発生を防止して、短時間間隔の連続発光動作回数を増大できる。
【0118】
さらに、相対向するタングステンピンを介して、短時間間隔の連続発光動作によって外囲器が高温状態に移行しても、タングステンピンの劣化を防止できる。これにより、電極劣化に起因する不発光などの発生を、さらに抑制できる。
【0119】
つまり、上記構成によれば、耐久性に優れ、短時間間隔の連続発光動作回数を増やすことができる閃光放電管が得られる。
【0120】
また、本発明の閃光放電管の外囲器は、少なくともアーク放電領域を囲んで形成されるアーク放電空間をアルカリフリー領域として形成する石英ガラス管以外のアルカリフリーガラスからなるアルカリフリーガラス管と、アルカリフリーガラス管の内外径と同一を含む略等しい内外径を有し、アルカリフリーガラス管の一端の端面に溶融接合されるホウ珪酸ガラスからなる接合ガラス管とを有する。さらに、閃光放電管は、アルカリフリーガラス管の両端部を除く外表面に形成されるトリガー電極と、陽極を形成するタングステンピンを含む放電電極にアルカリフリーガラス管の外径と略等しい外径を有する端面部を形成するように気密溶着され、アルカリフリーガラス管の他端に端面部を介して溶融接合されるホウ珪酸ガラスからなる陽極ビードを備える。そして、陰極の先端部に固着される焼結電極とともに、陰極を形成するタングステンピンを含む放電電極に接合ガラス管の内径と略等しい外径を有する側面部を形成するように気密溶着され、接合ガラス管内に側面部を介して溶融接合されるホウ珪酸ガラスからなる陰極ビードとを備える構成としてもよい。
【0121】
この構成によれば、陽極ビードおよび接合ガラス管は、アルカリフリーガラス管の端面の厚み部分と溶着される。これにより、アルカリフリーガラス管の径方向ではなく管軸方向で溶着される。その結果、溶着される部材間の熱膨張係数の差に起因して生じる、例えば剥離現象によるリークなどの発生を大幅に抑制できる。
【0122】
さらに、陰極と外囲器との気密封着作業を、従来と同様のホウ珪酸ガラスからなる接合ガラス管を介して実施できる。そのため、気密封着作業における設備・作業条件などを、従前と同様に設定できる。これにより、高い特性を備える閃光放電管を、生産性を低下させることなく形成できる。
【0123】
また、本発明の閃光放電管は、アルカリフリーガラス管を、アルミノシリケートガラス管で構成してもよい。
【0124】
この構成によれば、アルミノシリケートガラス管はホウ珪酸ガラス管より軟化点が高いために、加工作業の温度が高くなるが、石英ガラス管の加工温度よりははるかに低い温度で加工できる。そのため、陽極および陰極の気密封着ステップの作業性を、中間ガラス体などが必要な石英ガラス管を用いる閃光放電管と比して、向上させることができる。
【0125】
また、本発明の閃光放電管は、トリガー電極をアルカリフリー領域の両端部を除く、外囲器の外表面に設けてもよい。
【0126】
また、本発明の閃光放電管は、トリガー電極を透明導電性被膜で形成してもよい。
【0127】
これらの構成によれば、トリガー電極でのエネルギーの消費を低減しながら、従前と同様のトリガー電圧の印加構成を実現できる。
【0128】
また、本発明の発光装置は、上記閃光放電管を光源負荷として備えてもよい。
【0129】
この構成によれば、耐久性に優れ、短時間間隔の連続発光動作回数を増やすことができる閃光放電管を光源として用いる。これにより、アーク放電現象に対する耐久特性、短時間間隔の連続発光動作特性(繰り返し発光特性)に優れた発光装置を提供できる。
【0130】
本発明は、安価で、高い発光に対する耐久特性、並びに短時間間隔の繰り返し発光耐久特性が要望される閃光放電管や、それを備える発光装置などの分野に適用できる。