特許第6803531号(P6803531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803531
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】車両用シート構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/427 20060101AFI20201214BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20201214BHJP
   B60N 2/22 20060101ALN20201214BHJP
   B60N 2/06 20060101ALN20201214BHJP
【FI】
   B60N2/427
   B60N2/68
   !B60N2/22
   !B60N2/06
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-10471(P2017-10471)
(22)【出願日】2017年1月24日
(65)【公開番号】特開2018-118584(P2018-118584A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509264383
【氏名又は名称】リアコーポレーションジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】安池 重暁
(72)【発明者】
【氏名】小村 章吾
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 昭弘
(72)【発明者】
【氏名】菊地 亮
(72)【発明者】
【氏名】安藤 幸範
【審査官】 西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−016710(JP,A)
【文献】 特開2013−177090(JP,A)
【文献】 特開2013−173463(JP,A)
【文献】 特開2007−186160(JP,A)
【文献】 実開昭61−077846(JP,U)
【文献】 特開2015−030341(JP,A)
【文献】 特開2014−159264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上下方向に延びている樹脂製のシートバックフレームと、該シートバックフレームの下部から車両前方に延びている樹脂製のシートクッションフレームとを備えており、
前記シートバックフレームは、車両上下方向に延び、互いに間隔を空けて車幅方向両側部に配置されている縦フレーム部を有している車両用シート構造において、
前記各縦フレーム部の下部には、ロアブラケットが接合され、
2つの前記縦フレーム部は、前記各ロアブラケットを介している状態で、車幅方向に延在しているロアクロスメンバーにより連結されており、
前記ロアブラケットは、前記縦フレーム部よりも低剛性であり、
前記ロアブラケット及び前記ロアクロスメンバーは、それぞれ金属材料により構成されており、
前記ロアブラケットは、前記各縦フレーム部の下部に接着接合されていることを特徴とする車両用シート構造。
【請求項2】
前記縦フレーム部の下部には、リクライニング機構が取り付けられており、
前記ロアブラケットには、車両上下方向に延びている平面部を有し、該平面部は、前記縦フレーム部に対向している状態で接着され、
前記縦フレーム部は、前記平面部と前記リクライニング機構により挟持されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート構造。
【請求項3】
前記ロアクロスメンバーの車両上下方向位置Pは、
前記シートクッションフレームの下端から乗員のヒップポイントに相当する位置までの車両上下方向距離hと、前記シートクッションフレームの下端から前記シートバックフレームの上端までの距離Hに対して、
h≦P≦H/2
を満たす位置に配置され、
前記ロアクロスメンバーの車両前後方向位置Pは、前記縦フレーム部の車両前後方向幅における中央部よりも車両後方に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用シート構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートは、乗員が着座するシートクッションと、乗員の上肢を支持するシートバックを備えている。シートバックを構成するフレームは、例えば、特許文献1に開示されているように、繊維強化複合材料等の樹脂材料により形成されているものが知られている。
【0003】
特許文献1に開示されているフレームは、上下方向フレームと横方向フレームによって構成されている。当該フレームは、横方向の荷重を受け持つように横方向に掛け渡された横ビーム部を備えている。
【0004】
当該フレームは、通常使用時においては、十分な耐久性及びシート剛性を有している。これに対して、車両衝突時の衝突荷重を受けたときは、フレームに設けられた脆弱部によって、衝突エネルギーを吸収するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4483409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような構造では、繊維強化複合材料の脆弱部を破断または塑性変形させることで衝突エネルギーを吸収させているが、局所的な破断または塑性変形となる可能性がある。これに対して金属材料により形成されたフレームの場合は、フレームが全体的に変形することによって衝突エネルギーを吸収させている。そのため、繊維強化複合材料により形成されたフレームは、金属材料により形成されたフレームに比べ、衝突エネルギーの吸収効率が低くなる可能性がある。
【0007】
また、繊維強化複合材料により形成されたフレームに、脆弱部を設ける場合、衝突時に当該脆弱部が破断すると、乗員(上肢)を支持しきなくなる可能性がある。
【0008】
また、上記例では、車両衝突時の衝撃荷重を受けると、フレームが車両後方へ曲がるモードと、フレームの横ビーム部が車両後方に突出する、例えばくの字に曲がるモードがある。
【0009】
横ビーム部がくの字に曲がると、横ビーム部が接合しているフレームの前部が、シート中央部に向かってねじられるように回転する可能性がある。この変形により、例えば、フレームの下部に設けられるリクライニング機構に対して、乖離する荷重が発生する可能性がある。リクライニング機構の周辺の締結が、乖離荷重に対して脆弱な部分がある場合、上述したくの字に曲がるモードの発生は好ましくない。
【0010】
さらに、フレームを構成するフレーム部材を全て繊維強化複合材料とすると、材料コストが高額になる可能性もある。
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、シートバックフレームにおける通常使用時の剛性を確保しつつ、車両衝突時の衝突エネルギーを十分に吸収することが可能な車両用シート構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため本発明に係る車両用シート構造は、車両上下方向に延びている樹脂製のシートバックフレームと、該シートバックフレームの下部から車両前方に延びている樹脂製のシートクッションフレームとを備えており、前記シートバックフレームは、車両上下方向に延び、互いに間隔を空けて車幅方向両側部に配置されている縦フレーム部を有している。当該車両用シート構造において、前記各縦フレーム部の下部には、ロアブラケットが接合され、2つの前記縦フレーム部は、前記各ロアブラケットを介している状態で、車幅方向に延在しているロアクロスメンバーにより連結されており、前記ロアブラケットは、前記縦フレーム部よりも低剛性であり、前記ロアブラケット及び前記ロアクロスメンバーは、それぞれ金属材料により構成されており、前記ロアブラケットは、前記各縦フレーム部の下部に接着接合されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両用シート構造を構成するシートバックフレームは、通常使用時の剛性を確保しつつ、車両衝突時の衝突エネルギーを十分に吸収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る車両用シート構造の一実施形態を示す概略斜視図である。
図2図1の車両用シートのシートクッションフレーム及びシートバックフレーム等を示す概略斜視図である。
図3図2の右側縦フレームにロアブラケット等が取り付けられる前の状態を示す分解斜視図である。
図4図3の右側縦フレームと、右側クッションフレームが接続されている状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る車両用シート構造の実施形態について、図面(図1図4)を参照して説明する。
【0016】
本実施形態に係る車両用シート構造は、例えば、運転席や助手席等の一人掛け用の車両用シートを例に挙げて説明する。当該車両用シートは、シートクッション1と、シートバック2と、ヘッドレスト4を備えている。
【0017】
先ず、シートクッション1について説明する。シートクッション1は、図1に示すように、乗員が着座する座面部1aを有している。シートクッション1は、図示しない車体フロアパネル上に設置されているレール5の上をスライド可能に構成されている。シートクッション1をスライドさせるためのスライド機構についての説明は省略する。
【0018】
シートクッション1の内部には、シートクッションフレーム11,12が設けられている。また、シートクッションフレーム11,12には、少なくとも3本の金属製のパイプ材が取り付けられている。パイプ材については後で説明する。
【0019】
シートクッションフレーム11,12は、右側シートクッションフレーム11と左側シートクッションフレーム12により構成されている。ここでの左右は、車両用シートに着座した乗員が車両前方を見ているときの左右に対応している。すなわち、図3においては、主に右側の部材が示されている。
【0020】
右側シートクッションフレーム11は、炭素繊維強化樹脂材料により形成され、車体フロアパネルに対して起立している状態で、車両前後方向に延びている部材である。当該右側シートクッションフレーム11は、車幅方向外側及び内側に臨む側面を有する主部11aと、該主部11aの縁端からシート幅方向中央側に張り出しているフランジ部11bとを有し、これらが一体的に形成されている。
【0021】
図3に示すように、右側シートクッションフレーム11の主部11aには、3個の貫通孔(前部貫通孔11d、中央貫通孔11e、後部貫通孔11f)が形成され、これらは、車両前後方向に間隔を空けて配置されている。これらの貫通孔11d,11e,11fは、後述するパイプ材を取り付けるためのものである。貫通孔11d,11e,11fとパイプ材との連結は後で説明する。
【0022】
右側シートクッションフレーム11の下部における車両前後方向の中央部は、切欠き部が設けられており、該切欠き部よりも車両前方の部分と車両後方の部分のそれぞれの下側フランジ部11cは、レール5上をスライド可能に構成されている。
【0023】
左側シートクッションフレーム12は、右側シートクッションフレーム11と同様に、炭素繊維強化樹脂材料により形成され、車体フロアパネルに対して起立している状態で、車両前後方向に延びている板状の部材である。左側シートクッションフレーム12は、主部12aとフランジ部12bを有し、これらが一体的に形成されている。また、図示は省略しているが、主部12aには、右側シートクッションフレーム11の主部11aと同様に、前部貫通孔、中央貫通孔及び後部貫通孔が形成されている。
【0024】
左側シートクッションフレーム12にも、右側シートクッションフレーム11と同様に、切欠き部が設けられ、該切欠き部よりも車両前方の部分と車両後方の部分のそれぞれの下側フランジ部12cは、レール5上をスライド可能に構成されている。
【0025】
右側シートクッションフレーム11と、左側シートクッションフレーム12は、シートクッション1の座面部1aの左右(シート幅方向両側部)に配置されており、シート幅方向に互いに間隔空けて、対をなすように平行に配置されている。このとき、右側シートクッションフレーム11の前部貫通孔11d、中央貫通孔11e及び後部貫通孔11fと、左側シートクッションフレーム12の前部貫通孔、中央貫通孔及び後部貫通孔のそれぞれの車両前後方向位置が同じになるように配置されている。
【0026】
続いて、パイプ材について説明する。右側シートクッションフレーム11と、左側シートクッションフレーム12との間には、少なくとも3本のパイプ材(クッションRrクロスパイプ14、クッションFrクロスパイプ15、クッションメンバーパイプ16)が配置されている。
【0027】
クッションRrクロスパイプ14は、右側シートクッションフレーム11の後部と左側シートクッションフレーム12の後部とを連結するように、車幅方向に延在している金属製のパイプ材である。クッションRrクロスパイプ14の右側端部は、右側シートクッションフレーム11の後部貫通孔11fを貫通している状態で、プッシュナット7が取り付けられ、接着剤で固定されている。クッションRrクロスパイプ14の左側端部は、左側シートクッションフレーム12の後部貫通孔を貫通している状態で、同様に固定されている。
【0028】
クッションFrクロスパイプ15は、右側シートクッションフレーム11の車両前後方向の中央よりやや前部と、左側シートクッションフレーム12の対応する部分とを連結するように、車幅方向に延在している金属製のパイプ材である。図2及び図3に示すように、クッションFrクロスパイプ15の右側端部は、右側シートクッションフレーム11の中央貫通孔11eを貫通している状態で、プッシュナット7が取り付けられ、接着剤で固定されている。クッションRrクロスパイプ14の左側端部は、左側シートクッションフレーム12の中央貫通孔を貫通している状態で、同様に固定されている。
【0029】
クッションメンバーパイプ16は、右側シートクッションフレーム11の前部と、左側シートクッションフレーム12の前部とを連結するように、車幅方向に延在している金属製のパイプ材である。図2及び図3に示すように、クッションメンバーパイプ16の右側端部は、右側シートクッションフレーム11の前部貫通孔11dを貫通している状態で、プッシュナット7が取り付けられ、接着剤で固定されている。クッションメンバーパイプ16の左側端部は、左側シートクッションフレーム12の前部貫通孔を貫通している状態で、同様に固定されている。
【0030】
また、クッションRrクロスパイプ14とクッションFrクロスパイプ15には、これらを架け渡すように車両前後方向に延在する前後方向バネ18が取り付けられている。この例では、2本の前後方向バネ18が、シート幅方向に間隔を空けて配置されている。
【0031】
次に、シートバック2について説明する。シートバック2は、乗員の上肢を支持可能な背もたれ部2aを有する部材である。当該シートバック2は、リクライニング機構39によって、シートクッション1に対して、相対回転可能に構成されている。また、シートバック2の上部には、ヘッドレスト4が着脱可能な状態で取り付けられている。
【0032】
シートバック2の内部には、シートバック2の骨格を構成するシートバックフレームが設けられている。以下、シートバックフレームについて説明する。シートバックフレームは、図2に示すように、右側縦フレーム(縦フレーム部)21と、左側縦フレーム(縦フレーム部)22を有している。
【0033】
右側縦フレーム21と左側縦フレーム22は、シートバック2の背もたれ部2aの左右(シート幅方向両側部)に配置されており、シート幅方向に互いに間隔空けて、対をなすように平行に配置されている。
【0034】
右側縦フレーム21は、図2及び図3に示すように、右側シートクッションフレーム11の後部から車両上方に延びている部材であり、リクライニング機構39を介して右側シートクッションフレーム11に回転可能に取り付けられている。当該右側縦フレーム21は、車幅方向外側及び内側に臨む面を有する縦壁部21aと、該縦壁部21aの縁端からシート幅方向中央側に張り出しているフランジ部21b,21cとを有し、これらが一体的に形成されている。
【0035】
該縦壁部21aの後端から、シート幅方向中央側に張り出している後側フランジ部21cは、該縦壁部21aの前端から、シート幅方向中央側に張り出している前側フランジ部21bよりも、張り出している長さ(シート幅方向長さ)が長い。縦壁部21aと、前側フランジ部21b及び後側フランジ部21cにより、シート幅方向中央側に開くコ字状の平断面が構成されている。
【0036】
縦壁部21aの下部には、リクライニング機構39を取り付けるための設置部21dが設けられている。この例の設置部21dは、1つの径大孔21eと、該径大孔21eの径方向外側に配置されている4つの径小孔21fを有している。径小孔21fは、径大孔21eの周囲を等間隔に配置されている。リクライニング機構39は、これらの孔21e,21fに、締結部材等により取り付けられている。当該リクライニング機構39の詳細な説明は省略しているが、左右の縦フレーム21,22のシート幅方向の両外側に本体が配置され、これらをパイプで連結することにより構成されている。
【0037】
縦壁部21aには、設置部21dよりも上方に、貫通孔21gが形成されている。当該貫通孔21gは、後述するロアクロスメンバーパイプ35を取り付けるためのものである。また、貫通孔21gが形成される位置には、右側ロアブラケット31が接合されている。当該貫通孔21gの位置の詳細は後で説明する。また、右側ロアブラケット31の詳細についても後で説明する。
【0038】
続いて、左側縦フレーム22について説明する。左側縦フレーム22は、左側シートクッションフレーム12の後部から車両上方に延びている部材であり、リクライニング機構39を介して左側シートクッションフレーム12に回転可能に取り付けられている。当該左側縦フレーム22は、右側縦フレーム21と同様に、該縦壁部22a、前側フランジ部22b及び後側フランジ部を有している。これらが一体的に形成され、シート幅方向中央側に開くコ字状の平断面が構成されている。
【0039】
図示は省略しているが、左側縦フレーム22の縦壁部22aの下部には、右側縦フレーム21の縦壁部21aと同様に、リクライニング機構39を取り付けるための設置部が設けられ、設置部よりも上方には、ロアクロスメンバーパイプ35を取り付けるための貫通孔が形成されている。
【0040】
続いて、右側ロアブラケット31について説明する。右側ロアブラケット31は、右側縦フレーム21の下部に取り付けられており、車両上下方向に延びている部材である。右側ロアブラケット31は、図2及び図3に示すように、シート幅方向の外側及び中央側に臨み、車両上下方向に延びている側面を有する外壁部31aと、該外壁部31aの後端からシート幅方向中央側に張り出している後壁部31bとを有し、これらが一体的に形成されている。
【0041】
外壁部31aには、図3に示すように、上側貫通孔31cと、下側貫通孔31dが形成されている。上側貫通孔31c及び下側貫通孔31dは、車両上下方向に互いに間隔を空けて配置されている。上側貫通孔31cには、ロアクロスメンバーパイプ35が挿通される。下側貫通孔31dには、リクライニング機構39が取り付けられている。
【0042】
外壁部31aのシート幅方向外側の側面は、車両上下方向に延びている平坦面となっており、右側縦フレーム21の縦壁部21aのシート幅方向中央側の面に、接着剤により接合(接着)されている。また、後壁部31bの後面は、車両上下方向に延びている平坦面となっており、右側縦フレーム21の後側フランジ部21cに接着剤により接着されている。
【0043】
次に、左側ロアブラケットについて説明する。左側ロアブラケットは、図示は省略されているが、左側縦フレーム22の下部に取り付けられており、車両上下方向に延びている部材である。左側ロアブラケットは、右側ロアブラケット31と同様に、外壁部と後壁部を有し、これらが一体的に形成されている。また、左側ロアブラケットの外壁部にも、上側貫通孔と、下側貫通孔が形成されている。
【0044】
外壁部のシート幅方向外側の側面は、平坦面となっており、左側縦フレーム22の縦壁部22aのシート幅方向中央側の面に接着剤により接着されている。また、後壁部の後面は、平坦面となっており、左側縦フレーム22の後側フランジ部に接着剤により接着されている。
【0045】
ロアクロスメンバーパイプ35は、右側ロアブラケット31及び左側ロアブラケットを介している状態で、右側縦フレーム21と左側縦フレーム22を連結するように、シート幅方向(車幅方向)に延在している。ロアクロスメンバーパイプ35は、金属材料により形成されている。
【0046】
ロアクロスメンバーパイプ35は、右側縦フレーム21の車両上下方向の中央よりやや下方と、左側縦フレーム22の対応する部分とを連結している。図3に示すように、ロアクロスメンバーパイプ35の右側端部は、右側ロアブラケット31の上側貫通孔31cを貫通し、右側縦フレーム21の貫通孔21gを貫通している状態で、プッシュナット7により固定されている。ロアクロスメンバーパイプ35は、上側貫通孔31cを貫通している状態で、右側ロアブラケット31に溶接により接合されている。また、ロアクロスメンバーパイプ35の左側端部は、左側ロアブラケットの上側貫通孔を貫通し、左側縦フレーム22の貫通孔を貫通し、同様に固定されている。
【0047】
シートバックフレームは、右側縦フレーム21の上部と左側縦フレーム22の上部とを連結しているアッパークロスメンバー38を有している。アッパークロスメンバー38は、例えば、炭素繊維強化樹脂材料により形成されている。当該アッパークロスメンバー38には、ヘッドレストフレーム4aが取り付けられており、ヘッドレストフレーム4aを覆うようにヘッドレスト4が設置されている。また、ロアクロスメンバーパイプ35より上方で、アッパークロスメンバー38の下方には、幅方向バネ36が、右側縦フレーム21と左側縦フレーム22を架け渡すように配置されている。
【0048】
右側ロアブラケット31及び左側ロアブラケットは、右側縦フレーム21及び左側縦フレーム22よりも低剛性である。この例では、炭素繊維強化樹脂材料よりも、低剛性な金属材料により形成されている。
【0049】
このように剛性が異なるように構成することにより、車両が後方からの衝突荷重を受けたときに、ロアクロスメンバーパイプ35に作用する車両後方への変形荷重を、ロアブラケット31の塑性変形により吸収することが可能となる。
【0050】
本実施形態では、車両衝突時に生じる衝撃エネルギーは、塑性変形または破断によるエネルギー吸収効率の悪い繊維強化複合材料ではなく、金属材料により形成されているロアブラケット31により吸収させている。
【0051】
前方からの衝突時(前突時)は、右側シートクッションフレーム11及び左側シートクッションフレーム12を連結しているクッションRrクロスパイプ14、クッションFrクロスパイプ15及びクッションメンバーパイプ16を塑性変形させることにより、前突時の衝突エネルギーを吸収することができる。
【0052】
一方、後方からの衝突時(後突時)は、金属材料により形成されているロアクロスメンバーパイプ35を塑性変形させることより、後突時の衝突エネルギーを吸収させることができる。後突時の衝撃荷重を受けたときは、シートバックフレーム(右側縦フレーム21及び左側縦フレーム22)が車両後方へ曲がるモードと、ロアクロスメンバーパイプ35が車両後方へ曲がるモードがある。
【0053】
ロアクロスメンバーパイプ35が車両後方へ例えば「くの字」に曲がると、それに伴いシートバックフレーム(右側縦フレーム21及び左側縦フレーム22)の前部が、シート幅方向中央側へねじられて回転し、リクライニング機構39に対して乖離荷重が発生する。
【0054】
本実施形態では、上述したように、右側縦フレーム21及び左側縦フレーム22のそれぞれの下部には、リクライニング機構39が取り付けられている。リクライニング機構39は、右側縦フレーム21の設置部21d及び左側側縦フレーム22の設置部に取り付けられている。
【0055】
右側縦フレーム21は、右側ロアブラケット31の外壁部31aのシート幅方向外側の平坦な側面と、右側のリクライニング機構39とにより挟持されている。同様に、左側縦フレーム22は、左側ロアブラケットの外壁部のシート幅方向外側の平坦な側面と、左側のリクライニング機構39により挟持されている。
【0056】
このように挟持することにより、ロアブラケット31は、リクライニング機構39を右側縦フレーム21及び左側縦フレーム22のシート幅方向内側から固定するインナブラケットとして機能することができる。すなわち、ロアブラケット31がインナブラケットを兼ねることができる。
【0057】
この場合において、ロアブラケット31が、縦フレーム21,22を挟持する部分に限定して接着剤を塗布し、ロアクロスメンバーパイプ35が接合される部分の周辺には、接着剤を塗布しない構造とすることができる。例えば、右側ロアブラケット31の外壁部31aにおいて、上側貫通孔31cよりも下方の領域のみに、接着剤を塗布することが可能となる。左側ロアブラケットにつても同様である。
【0058】
その結果、衝突荷重の入力時には、ロアクロスメンバーパイプ35が接合される部分の周辺のみ、例えば、上側貫通孔31cの周辺のみを変形させることが可能となるため、当該変形に伴うリクライニング機構39への影響を抑えることが可能となり、且つ、衝突エネルギーを吸収することが可能となる。左側ロアブラケットにつても同様である。
【0059】
ここで、ロアクロスメンバーパイプ35の車両上下方向位置について図4を用いて説明する。この例のロアクロスメンバーパイプ35の車両上下方向位置Pは、右側シートクッションフレーム11及び左側シートクッションフレーム12の下端からの距離を示している。当該距離は、車体フロアパネルの上面からの距離とほぼ同等の距離を有している。なお、この例のPは、ロアクロスメンバーパイプ35の円形断面の中心を示している。
【0060】
ロアクロスメンバーパイプ35の車両上下方向位置Pについて、右側シートクッションフレーム11及び左側シートクッションフレーム12の下端から、乗員のヒップポイントXに相当する位置までの車両上下方向距離hと、右側シートクッションフレーム11及び左側シートクッションフレーム12の下端からシートバックフレームの上端(アッパークロスメンバーの上端)までの距離Hに対して、(式1)を満たす位置に配置されている。
h≦P≦H/2…(1)
【0061】
なお、図4におけるヒップポイントXについては、一般的な範囲における位置を示している。また、ロアクロスメンバーパイプ35の車両前後方向位置は、図4に示すように、右側縦フレーム21及び左側縦フレーム22の車両前後方向幅の中央部よりもやや車両後方に配置されている。この例では、図4における領域Sで示されている部分に、ロアクロスメンバーパイプ35を配置することができる。
【0062】
ロアクロスメンバーパイプ35の位置を上記のように設定することで、通常使用時には、乗員(人体)に当たることを抑制できるため、乗員の乗り心地を損なわずに、シート剛性を確保できる。後突時の衝撃荷重を受けたときのみ、人体のお尻からロアクロスメンバーパイプ35に当たり、効率よく荷重を伝えることが可能となる。
【0063】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0064】
上記実施形態では、本実施形態のロアブラケットは、金属材料で形成されているが、これに限られない。繊維強化樹脂材料により形成されているシートバックフレーム(右側縦フレーム21及び左側縦フレーム22)よりも変形しやすい材料であればよい。
【0065】
また、ロアクロスメンバー35を塑性変形させる起点として、ロアクロスメンバー35に、例えば4つの凹形状部が設けられてもよい。この場合、2つの凹形状部を、ロアクロスメンバー35の前部にシート幅方向に間隔を空けて配置し、後部においても2つの凹形状部を配置してもよい。ロアクロスメンバーパイプ35に脆弱部となる4つの凹形状部を設けて、塑性変形によるエネルギー吸収させるため、金属製のロアクロスメンバーパイプ35は、ハット型に変形し、シートバックフレームの左右の縦フレーム21,22がねじれるモードを抑制でき、リクライニング機構39への乖離方向の荷重を抑制できる。
【0066】
なお、本実施形態のシートバックフレーム20は、2つの縦フレーム21,22を有し、これらを、アッパークロスメンバー38で連結しているが、これに限らない。これらを一体的に形成してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 シートクッション
1a 座面部
2 シートバック
2a 背もたれ部
4 ヘッドレスト
4a ヘッドレストフレーム
5 レール
7 プッシュナット
11 右側シートクッションフレーム
11a 主部
11b フランジ部
11c 下側フランジ部
11d 前部貫通孔
11e 中央貫通孔
11f 後部貫通孔
12 左側シートクッションフレーム
12a 主部
12b フランジ部
12c 下側フランジ部
14 クッションRrクロスパイプ
15 クッションFrクロスパイプ
16 クッションメンバーパイプ
18 前後方向バネ
21 右側縦フレーム(縦フレーム部)
21a 縦壁部
21b 前側フランジ部
21c 後側フランジ部
21d 設置部
21e 径大孔
21f 径小孔
21g 貫通孔
22 左側縦フレーム(縦フレーム部)
22a 縦壁部
22b 前側フランジ部
31 右側ロアブラケット
31a 外壁部
31b 後壁部
31c 上側貫通孔
31d 下側貫通孔
35 ロアクロスメンバーパイプ(ロアクロスメンバー)
36 幅方向バネ
38 アッパークロスメンバー
39 リクライニング機構
図1
図2
図3
図4