(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態に係る発光装置等について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0013】
(実施の形態1)
[発光装置の構成]
まず、実施の形態1に係る発光装置の構成について図面を用いて説明する。
図1は、実施の形態1に係る発光装置の外観斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る発光装置の平面図である。
図3は、実施の形態1に係る発光装置の内部構造を示す平面図である。
図4は、
図2のIV−IV線における模式断面図である。
【0014】
なお、上記の
図3は、
図2において封止部材13及びダム材15を取り除き、LEDチップ12の配列及び配線パターンなどの内部の構造を示した平面図である。
図4においては、黄色蛍光体14及び添加材19の、形状及び粒径などは、模式的に図示されており、正確ではない。
【0015】
図1〜
図4に示されるように、実施の形態1に係る発光装置10は、基板11と、複数のLEDチップ12と、封止部材13と、ダム材15とを備える。
【0016】
発光装置10は、基板11にLEDチップ12が直接実装された、いわゆるCOB(Chip On Board)構造のLEDモジュールである。
【0017】
基板11は、配線16が設けられた配線領域を有する基板である。なお、配線16(並びに、電極16a及び電極16b)は、LEDチップ12に電力を供給するための金属により形成される。基板11は、例えば、メタルベース基板またはセラミック基板である。また、基板11は、樹脂を基材とする樹脂基板であってもよい。
【0018】
セラミック基板としては、酸化アルミニウム(アルミナ)からなるアルミナ基板または窒化アルミニウムからなる窒化アルミニウム基板等が採用される。また、メタルベース基板としては、例えば、表面に絶縁膜が形成された、アルミニウム合金基板、鉄合金基板または銅合金基板等が採用される。樹脂基板としては、例えば、ガラス繊維とエポキシ樹脂とからなるガラスエポキシ基板等が採用される。
【0019】
なお、基板11として、例えば光反射率が高い(例えば光反射率が90%以上の)基板が採用されてもよい。基板11として光反射率の高い基板が採用されることで、LEDチップ12が発する光を基板11の表面で反射させることができる。この結果、発光装置10の光取り出し効率が向上される。このような基板としては、例えばアルミナを基材とする白色セラミック基板が例示される。
【0020】
また、基板11として、光の透過率が高い透光性基板が採用されてもよい。このような基板としては、多結晶のアルミナや窒化アルミニウムからなる透光性セラミック基板、ガラスからなる透明ガラス基板、水晶からなる水晶基板、サファイアからなるサファイア基板または透明樹脂材料からなる透明樹脂基板が例示される。
【0021】
なお、実施の形態1では基板11は矩形であるが、円形などその他の形状であってもよい。
【0022】
LEDチップ12は、発光素子の一例であって、青色光を発する青色LEDチップである。LEDチップ12としては、例えばInGaN系の材料によって構成された、中心波長(発光スペクトルのピーク波長)が430nm以上470nm以下の窒化ガリウム系のLEDチップが採用される。なお、発光装置10は、少なくとも1つのLEDチップ12を備えればよい。
【0023】
基板11上には、複数のLEDチップ12からなる発光素子列が複数設けられている。
図3に示されるように、構造的には、円形状に対応して発光素子列が7列、基板11上に設けられている。
【0024】
電気的には、12個の直列接続されたLEDチップ12からなる発光素子列が5列、基板11上に設けられている。これら5列の発光素子列は並列接続され、電極16aと電極16bとの間に電力が供給されることにより発光する。
【0025】
また、直列接続されたLEDチップ12同士は、主に、ボンディングワイヤ17によってChip To Chipで電気的に接続される(一部のLEDチップ12については、配線16を介して電気的に接続される)。ボンディングワイヤ17は、LEDチップ12に電気的及び構造的に接続される給電用のワイヤである。なお、ボンディングワイヤ17、並びに、上述の配線16、電極16a、及び電極16bの金属材料としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、または銅(Cu)等が採用される。
【0026】
ダム材15は、基板11上に設けられた、封止部材13をせき止めるための部材である。ダム材15には、例えば、絶縁性を有する熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂等が用いられる。より具体的には、ダム材15には、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、またはポリフタルアミド(PPA)樹脂などが用いられる。
【0027】
ダム材15は、発光装置10の光取り出し効率を高めるために、光反射性を有することが望ましい。そこで、実施の形態1では、ダム材15には、白色の樹脂(いわゆる白樹脂)が用いられる。なお、ダム材15の光反射性を高めるために、ダム材15の中には、TiO
2、Al
2O
3、ZrO
2、及びMgO等の粒子が含まれてもよい。
【0028】
発光装置10においては、ダム材15は、上面視した場合、複数のLEDチップ12を囲むように円環状に形成される。そして、ダム材15に囲まれた領域には、封止部材13が設けられる。なお、ダム材15は、外形が矩形の環状に形成されてもよい。
【0029】
封止部材13は、複数のLEDチップ12を封止する封止部材である。封止部材13は、より具体的には、複数のLEDチップ12、ボンディングワイヤ17、及び配線16の一部を封止する。封止部材13は、基材18と、黄色蛍光体14と、添加材19とを含む。
【0030】
封止部材13の基材18は、透光性樹脂材料である。透光性樹脂材料としては、例えば、メチル系のシリコーン樹脂が用いられるが、エポキシ樹脂またはユリア樹脂などが用いられてもよい。
【0031】
封止部材13は、黄色蛍光体14、及び、添加材19(
図4において図示)を含有する。また、図示されないが、封止部材13は、シリカなどのフィラーが含まれてもよい。なお、封止部材13は、黄色蛍光体14などの蛍光体を含まなくてもよく、LEDチップ12の保護を主な目的として配置されてもよい。
【0032】
黄色蛍光体14は、蛍光体(蛍光体粒子)の一例であって、LEDチップ12の発する光で励起されて発光する。黄色蛍光体14は、具体的には、黄色蛍光を発する。黄色蛍光体14には、例えば、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系の蛍光体が採用される。
【0033】
LEDチップ12が発した青色光の一部は、封止部材13に含まれる黄色蛍光体14によって黄色光に波長変換される。そして、黄色蛍光体14に吸収されなかった青色光と、黄色蛍光体14によって波長変換された黄色光とは、封止部材13中で拡散及び混合される。これにより、封止部材13からは、白色光が出射される。
【0034】
添加材19は、封止部材13の基材18である透光性樹脂材料の劣化(酸化劣化)を抑制するために、封止部材13中に含まれる。添加材19としては、例えば、酸素貯蔵機能、及び、SiOと化学的に結合する性質を有する材料が用いられる。添加材19としては、ラジカル捕捉剤が用いられてもよい。
【0035】
添加材19は、例えば、遷移金属元素の化合物である。添加材19は、具体的には、遷移金属元素の酸化物、遷移金属元素の金属塩(金属石鹸)、及び、遷移金属元素の有機錯体などである。遷移金属元素は、第3族元素から第11族元素までに属する元素であり、遷移金属元素には希土類元素が含まれる。なお、添加材19は、黄色蛍光体14とは異なり、LEDチップ12が発する光によって励起されない。言い換えれば、添加材19は、発光しない。
【0036】
[添加材を加えた封止部材の耐熱性試験]
近年、LEDチップ12の高輝度化にともない、封止部材13への温度負荷は大きくなっている。したがって、高温環境下における封止部材13の劣化の抑制、すなわち、封止部材13の耐熱性の向上が課題となる。そこで、発明者らは、封止部材13の基材18に添加材19を加えた場合の封止部材13の耐熱性についての試験を行った。
図5は、封止部材13の耐熱性についての試験結果を示す第1の図である。
【0037】
図5は、基材として東レ・ダウコウニーング社製OE−6351(シリコーン樹脂)を使用し、添加材として
図5中の(a)〜(o)の各材料を加えた試験用プレート(試験用の封止部材13。以下、単にプレートとも記載する)を260℃環境下に放置した結果を示す。
図5においては、初期重量に対する重量の変化量をパーセンテージで示し、重量の変化量が記載されている時間帯は、クラックが発生していない、つまり、プレートが劣化していないと判断される。言い換えれば、クラックの発生が確認されたタイミング以降は、プレートが劣化したと判断される。なお、
図5に示される各プレートの重量の減少は、シリコーン樹脂に側鎖として含まれる炭化水素が減少することに起因する。炭化水素の減少(重量の減少)は、酸化劣化の進行を意味する。
【0038】
図5の最上段にRefの記号で示されるプレートは、添加材19を含まない基材18のみからなるプレートである。プレートRefは、試験開始から144時間の経過でクラックの発生が確認された。
【0039】
[添加材の具体例:遷移金属元素の酸化物]
これに対し、例えば、プレート(a)〜プレート(f)は、添加材19として、遷移金属元素の酸化物を含む点がプレートRefと異なる。
【0040】
プレート(a)は、添加材19として酸化ジルコニウム(ZrO
2:多木化学社製、Zr−C20)を1.0wt%含む。プレート(a)は、試験開始から1536時間経過してもクラックが発生せず、プレートRefよりも耐熱性が向上されている。なお、ジルコニウムは、第4族の遷移金属元素である。
【0041】
プレート(b)は、添加材19として酸化チタン(TiO
2:多木化学社製、AM−15)を1.0wt%含む。プレート(b)は、試験開始から288時間の経過でクラックが発生した。したがって、プレート(b)は、プレートRefよりも耐熱性が向上されている。なお、チタンは、第4族の遷移金属元素である。
【0042】
プレート(c)は、添加材19として酸化鉄(Fe
2O
3:多木化学社製、Fe−C10)を1.0wt%含む。プレート(c)は、試験開始から1536時間経過してもクラックが発生せず、プレートRefよりも耐熱性が向上されている。なお、鉄は、第8族の遷移金属元素である。
【0043】
プレート(d)は、添加材19として酸化セリウム(CeO
2:多木化学社製、B−10)を1.0wt%含む。プレート(d)は、試験開始から1152時間の経過でクラックが発生した。したがって、プレート(d)は、プレートRefよりも耐熱性が向上されている。なお、セリウムは、希土類元素(第3族の遷移金属元素)である。
【0044】
プレート(e)は、添加材19として酸化イットリウム(Y
2O
3:高純度化学社製)を1.0wt%含む。プレート(e)は、試験開始から336時間の経過でクラックが発生した。したがって、プレート(e)は、プレートRefよりも耐熱性が向上されている。なお、イットリウムは、希土類元素(第3族の遷移金属元素)である。
【0045】
プレート(f)は、添加材19として酸化ガドリニウム(Gd
2O
3:高純度化学社製)を1.0wt%含む。プレート(f)は、試験開始から168時間の経過でクラックが発生した。したがって、プレート(f)は、プレートRefよりも耐熱性が向上されている。なお、ガドリニウムは、希土類元素(第3族の遷移金属元素)である。
【0046】
以上のように、
図5に示される試験結果によれば、封止部材13に遷移金属元素の酸化物が含まれることにより、封止部材13の耐熱性を向上させることができる。
【0047】
[添加材の具体例:遷移金属元素の金属塩]
また、プレート(g)〜プレート(i)は、添加材19として、遷移金属元素の金属塩である、ジルコニウムの金属石鹸を含む酸化物を含む。プレート(g)〜プレート(i)は、具体的には、ジルコニウムのオクチル酸金属石鹸(日本化学産業社製、ニッカオクチックス ジルコニウム)を含む。
【0048】
プレート(g)は、添加材19としてジルコニウムの金属石鹸を1.0wt%含む。プレート(g)は、試験開始から1536時間経過してもクラックが発生せず、プレートRefよりも耐熱性が向上されている。
【0049】
プレート(h)は、添加材19としてジルコニウムの金属石鹸を0.25wt%含む。プレート(h)は、試験開始から768時間の経過でクラックが発生した。したがって、プレート(h)は、プレートRefよりも耐熱性が向上されている。
【0050】
プレート(i)は、添加材19としてジルコニウムの金属石鹸を0.125wt%含む。プレート(i)は、試験開始から384時間の経過でクラックが発生した。したがって、プレート(i)は、プレートRefよりも耐熱性が向上されている。
【0051】
以上のように、
図5に示される試験結果によれば、封止部材13に遷移金属元素の金属塩が含まれることにより、封止部材13の耐熱性を向上させることができる。また、封止部材13は、遷移金属元素の金属塩の含有量が多いほど、高い耐熱性を有する。
【0052】
なお、ジルコニウムのオクチル酸金属石鹸は、遷移金属の金属塩の一例である。封止部材13は、オクチル酸金属石鹸以外の金属塩(金属石鹸)を含んでもよいし、ジルコニウム以外の遷移金属の金属塩(金属石鹸)を含んでもよい。
【0053】
[添加材の具体例:遷移金属元素の有機錯体]
また、プレート(j)及びプレート(k)は、添加材19として、遷移金属元素の有機錯体を含む。プレート(j)及びプレート(k)は、具体的には、ジルコニウムのアセチルアセトン錯体(日本化学産業社製、ナーセム ジルコニウム)を含む。
【0054】
プレート(j)は、添加材19としてジルコニウムの有機錯体を0.25wt%含む。プレート(j)は、試験開始から336時間の経過でクラックが発生した。したがって、プレート(j)は、プレートRefよりも耐熱性が向上されている。
【0055】
プレート(k)は、添加材19としてジルコニウムの有機錯体を0.125wt%含む。プレート(k)は、試験開始から288時間の経過でクラックが発生した。したがって、プレート(k)は、プレートRefよりも耐熱性が向上されている。
【0056】
以上のように、
図5に示される試験結果によれば、封止部材13に遷移金属元素の有機錯体が含まれることにより、封止部材13の耐熱性を向上させることができる。また、封止部材13は、遷移金属元素の有機錯体の含有量が多いほど、高い耐熱性を有する。
【0057】
なお、ジルコニウムのアセチルアセトン錯体は、遷移金属の有機錯体の一例である。封止部材13は、アセチルアセトン錯体以外の有機錯体を含んでもよいし、ジルコニウム以外の遷移金属の有機錯体を含んでもよい。
【0058】
[遷移金属元素の複合酸化物の混合]
封止部材13には、遷移金属元素の複合酸化物が添加材19として含まれてもよい。例えば、プレート(l)は、ジルコニウムとイットリウムの複合酸化物((Y
2O
3)
x(ZrO
2)
1−x:第一稀元素化学工業社製、HSY−3.0)を1.0wt%含む。プレート(l)は、試験開始から336時間の経過でクラックが発生した。したがって、プレート(l)は、プレートRefよりも耐熱性が向上されている。
【0059】
また、プレート(m)は、ジルコニウムとイットリウムの複合酸化物((Y
2O
3)
x(ZrO
2)
1−x:第一稀元素化学工業社製、HSY−8.0)を1.0wt%含む。プレート(m)は、試験開始から336時間の経過でクラックが発生した。したがって、プレート(m)は、プレートRefよりも耐熱性が向上されている。
【0060】
以上のように、
図5に示される試験結果によれば、封止部材13に遷移金属元素の複合酸化物が含まれることにより、封止部材13の耐熱性を向上させることができる。
【0061】
なお、ジルコニウムとイットリウムの複合酸化物は一例であり、封止部材13には、その他の遷移金属の複合酸化物が含まれてもよい。
【0062】
[遷移金属元素の酸化物と遷移金属元素の金属塩との混合]
封止部材13は、遷移金属元素の酸化物、遷移金属元素の金属塩、及び、遷移金属元素の有機錯体の3種類の添加材のうち、少なくとも1種類を含めばよいが、2種類以上を含んでもよい。つまり、封止部材13には、複数種類の添加材19が含まれてもよい。封止部材13には、例えば、遷移金属元素の酸化物と遷移金属元素の金属塩とが含まれてもよい。
【0063】
プレート(n)は、添加材19として、酸化ジルコニウム(ZrO
2:多木化学社製、Zr−C20)と、ジルコニウムのオクチル酸金属石鹸(日本化学産業社製、ニッカオクチックス ジルコニウム)とを合わせて0.125wt%含む。
【0064】
プレート(n)は、試験開始から456時間の経過でクラックが発生した。したがって、プレート(n)は、プレートRefよりも耐熱性が向上されている。
【0065】
以上のように、
図5に示される試験結果によれば、封止部材13に遷移金属元素の酸化物と遷移金属元素の金属塩とが含まれることにより、封止部材13の耐熱性を向上させることができる。
【0066】
特に、添加量が同じ0.125wt%であれば、遷移金属元素の金属塩のみが含まれる封止部材13(プレート(i))よりも遷移金属元素の酸化物と遷移金属元素の金属塩とが含まれる封止部材13(プレート(n))のほうが、高い耐熱性となる。
【0067】
[遷移金属元素の酸化物と遷移金属元素の有機錯体との混合]
また、封止部材13には、例えば、遷移金属元素の酸化物と遷移金属元素の有機錯体とが含まれてもよい。
【0068】
プレート(o)は、添加材19として、酸化ジルコニウム(ZrO
2:多木化学社製、Zr−C20)と、ジルコニウムのアセチルアセトン錯体(日本化学産業社製、ナーセム ジルコニウム)とを合わせて0.125wt%含む。
【0069】
プレート(o)は、試験開始から1152時間の経過でクラックが発生した。したがって、プレート(o)は、プレートRefよりも耐熱性が向上されている。
【0070】
以上のように、
図5に示される試験結果によれば、封止部材13に遷移金属元素の酸化物と遷移金属元素の有機錯体とが含まれることにより、封止部材13の耐熱性を向上させることができる。
【0071】
特に、添加量が同じ0.125wt%であれば、遷移金属元素の金属錯体のみが含まれる封止部材13(プレート(k))よりも遷移金属元素の酸化物と遷移金属元素の金属錯体とが含まれる封止部材13(プレート(o))のほうが、高い耐熱性となる。
【0072】
[遷移金属元素の酸化物の含有量]
封止部材13は、添加材の含有量が多いほど、耐熱性が向上すると考えられる。そこで、発明者らは、例えば、遷移金属元素の酸化物を封止部材13にどの程度含有させれば、有意に耐熱性を向上させることができるについて、試験を行った。
図6は、封止部材13の耐熱性についての試験結果を示す第2の図である。
【0073】
図6は、基材として信越化学社製KJR9025HH(シリコーン樹脂)を使用し、添加材19を含まないプレートRefと、添加材19として酸化ジルコニウム(ZrO
2:第一稀元素化学工業社製、RC−100)を含むプレート(a)との耐熱性を比較した。
【0074】
図6に示されるように、プレート(a)は、酸化ジルコニウムを少なくとも0.05wt%含めば、Refよりも高い耐熱性を有するといえる。したがって、耐熱性を向上させるために、封止部材13は、遷移金属の酸化物を0.05wt%以上含めばよい。なお、封止部材13に含まれる遷移金属の酸化物の量は、100wt%未満となる。
【0075】
[効果等]
以上説明したように、発光装置10は、基板11と、基板11上に配置されたLEDチップ12と、LEDチップ12を封止する封止部材13とを備える。封止部材13は、封止部材13の基材18の劣化を抑制するための添加材19として、遷移金属元素の酸化物を0.05wt%以上含む。LEDチップ12は、発光素子の一例である。
【0076】
これにより、発光装置10は、封止部材13の耐熱性を向上することができる。
【0077】
また、封止部材13は、遷移金属元素の酸化物として、第4族の遷移金属元素の酸化物を0.05wt%以上含んでもよい。
【0078】
このように、発光装置10は、第4族の遷移金属元素の酸化物を含有することにより、封止部材13の耐熱性を向上することができる。
【0079】
また、封止部材13は、第4族の前記遷移金属元素の酸化物として、チタンの酸化物またはジルコニウムの酸化物を0.05wt%以上含んでもよい。
【0080】
このように、発光装置10は、チタンの酸化物またはジルコニウムの酸化物を含有することにより、封止部材13の耐熱性を向上することができる。
【0081】
また、封止部材13は、遷移金属元素の酸化物として、希土類元素の酸化物を0.05wt%以上含んでもよい。
【0082】
このように、発光装置10は、希土類元素の酸化物を含有することにより、封止部材13の耐熱性を向上することができる。
【0083】
また、封止部材13は、希土類元素の酸化物として、イットリウムの酸化物、セリウムの酸化物、または、ガドリニウムの酸化物を0.05wt%以上含んでもよい。
【0084】
このように、発光装置10は、イットリウムの酸化物、セリウムの酸化物、または、ガドリニウムの酸化物を含有することにより、封止部材13の耐熱性を向上することができる。
【0085】
また、封止部材13は、遷移金属元素の酸化物に代えて、封止部材13の基材18の劣化を抑制するための添加材19として、遷移金属元素の金属塩、及び、遷移金属元素の有機錯体の少なくとも一方を含んでもよい。
【0086】
これにより、発光装置10は、封止部材13の耐熱性を向上することができる。
【0087】
また、封止部材13は、遷移金属元素の金属塩として、遷移金属元素のオクチル酸金属石鹸を含んでもよい。
【0088】
このように、発光装置10は、遷移金属元素のオクチル酸金属石鹸を含有することにより、封止部材13の耐熱性を向上することができる。
【0089】
また、封止部材13は、遷移金属元素の有機錯体として、遷移金属元素のアセチルアセトン錯体を含んでもよい。
【0090】
このように、発光装置10は、遷移金属元素のアセチルアセトン錯体を含有することにより、封止部材13の耐熱性を向上することができる。
【0091】
また、封止部材13は、添加材19として、ジルコニウムの金属塩またはジルコニウムの有機錯体の少なくとも一方を含んでもよい。
【0092】
このように、発光装置10は、ジルコニウムの金属塩またはジルコニウムの有機錯体の少なくとも一方を含有することにより、封止部材13の耐熱性を向上することができる。
【0093】
また、封止部材13は、添加材19として、遷移金属元素の酸化物をさらに含んでもよい。
【0094】
これにより、
図5のプレート(n)及び(o)に示されるように、封止部材13の耐熱性を向上させ、かつ、添加材の量を低減することができる。
【0095】
また、封止部材13は、LEDチップ12が発する光によって励起される黄色蛍光体14をさらに含み、添加材19は、LEDチップ12が発する光によって励起されなくてもよい。黄色蛍光体14は、蛍光体の一例である。
【0096】
このように、添加材19としては、典型的には、波長変換機能を有しない(発光しない)ものが用いられる。
【0097】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2に係る発光装置について説明する。なお、実施の形態2に係る発光装置は、封止部材以外の構成については、実施の形態1に係る発光装置10と同様であるため、封止部材の構造を中心に断面図を用いて説明が行われる。発光装置10と実質的に同一の構成については、同一の符号が付されて説明が省略される。
図7は、実施の形態2に係る発光装置の断面図である。なお、
図7は、
図2のIV−IVにおける断面に対応する断面図である。
【0098】
実施の形態2に係る発光装置10aは、封止部材13cが2層構造であることが特徴である。封止部材13cは、具体的には、第一封止層13aと、第二封止層13bとを有する。
【0099】
まず、第一封止層13aについて、
図8をさらに用いて説明する。
図8は、第一封止層13aの構造を示す模式図である。
【0100】
第一封止層13aは、LEDチップ12を封止する封止層である。
図8に示されるように、第一封止層13aは、基材18、黄色蛍光体14、第一添加材19a、及び、第二添加材19bを含む。第一封止層13aは、フィラーを含んでもよい。なお、
図8は、模式図であり、黄色蛍光体14、第一添加材19a、及び、第二添加材19bの、形状及び粒径などは正確に図示されていない。
【0101】
基材18は、透光性樹脂材料であり、具体的には、メチル系のシリコーン樹脂であるが、エポキシ樹脂またはユリア樹脂などが用いられてもよい。
【0102】
第一添加材19aは、例えば、白色または無色の遷移金属元素の酸化物であり、基材18の劣化を抑制するために封止部材13cに含まれる。なお、第一添加材19aは、白色または無色の遷移金属元素の金属塩であってもよいし、白色または無色の遷移金属元素の有機錯体であってもよい。
【0103】
第二添加材19bは例えば、上記実施の形態で説明されたような遷移金属元素の金属塩または遷移金属元素の有機錯体であり、基材18の劣化を抑制するために封止部材13cに含まれる。実施の形態2では、第二添加材19bは、例えば、薄い黄色である。つまり、第二添加材19bは、第一添加材19aよりもLEDチップ12が発する青色光を吸収しやすい特性を有する。言い換えれば、第二添加材19bは、第一添加材19aよりもLEDチップ12が発する光の吸収率(吸収係数、吸光度)が高い特性を有する。なお、第二添加材19bは、第一添加材19aよりもLEDチップ12が発する青色光を吸収しやすい特性を有すればよく、薄い黄色の遷移金属元素の酸化物であってもよい。なお、第二添加材19bの色は、薄い黄色に限定されず、例えば、第一添加材19aと異なる色(白色でもなく、無色でもない色)であればよい。
【0104】
第一封止層13aは、第一添加材19aよりも少ない量の第二添加材19bを含む。第一封止層13aは、第二添加材19bを含まなくてもよい。
【0105】
第一封止層13aは、LEDチップ12に加えて、ボンディングワイヤ17を封止している。つまり、第一封止層13aは、LEDチップ12及びボンディングワイヤ17を塵芥、水分、または外力等から保護する機能を有する。
【0106】
また、第一封止層13aは、波長変換材としても機能し、LEDチップ12が発した青色光の一部は、第一封止層13aに含まれる黄色蛍光体14によって黄色光に波長変換される。そして、黄色蛍光体14に吸収されなかった青色光と、黄色蛍光体14によって波長変換された黄色光とは、第一封止層13a中で拡散及び混合される。これにより、第一封止層13a(封止部材13c)からは、白色光が出射される。
【0107】
次に、第二封止層13bについて
図9をさらに用いて説明する。
図9は、第二封止層13bの構造を示す模式図である。
【0108】
第二封止層13bは、第一封止層13aの上方に位置する封止層であり、第一封止層13aを覆う。
図9に示されるように、第二封止層13bは、基材18、黄色蛍光体14、及び、第二添加材19bを含む。第二封止層13bは、第一添加材19aを含んでいないが、第一添加材19aを含んでもよい。第二封止層13bは、フィラーを含んでもよい。なお、
図9は、模式図であり、黄色蛍光体14及び第二添加材19bの、形状及び粒径などは正確に図示されていない。
【0109】
実施の形態2では、第二封止層13bに含まれる基材18は、第一封止層13aに含まれる基材18と同じ材料(同じ封止材)によって形成される。この場合、第一封止層13a用の封止材と第二封止層13b用の封止材とが塗布後に一斉に硬化されれば、第一封止層13aと第二封止層13bとの間に界面が形成されない。そうすると、界面が形成されることによる光のロスが低減されるため、光取り出し効率の低下を抑制できる利点がある。
【0110】
なお、第一封止層13aの基材18と第二封止層13bの基材18とは、異なる材料によって形成されてもよい。例えば、第一封止層13aがメチル系のシリコーン樹脂によって形成され、第二封止層13bがフェニル系のシリコーン樹脂によって形成されてもよい。
【0111】
第二封止層13bは、封止部材13のうち大気に接触する部分であり、第一封止層13aの酸化劣化を抑制する保護層として機能する。第二封止層13bに含まれる第二添加材19bの濃度は、第一封止層13aに含まれる第二添加材19bの濃度よりも高い。
【0112】
[実施の形態2の効果等]
以上説明したように、発光装置10aにおいて、添加材には、第一添加材19aと、第一添加材19aよりもLEDチップ12が発する光を吸収しやすい特性を有する第二添加材19bとが含まれる。また、封止部材13cは、LEDチップ12を封止する第一封止層13aと、第一封止層13aの上方に位置する第二封止層13bとを含む。第一封止層13aには、LEDチップ12が発する光によって励起される黄色蛍光体14が含まれる。
【0113】
ここで、第二封止層13bに含まれる第二添加材19bの濃度は、第一封止層13aに含まれる第二添加材19bの濃度よりも高い。以下、このような構成により得られる効果について説明する。
【0114】
LEDチップ12が発する青色光の一部は、第二封止層13bに到達するまでに第一封止層13aに含まれる黄色蛍光体14によって、第二添加材19bによって吸収されにくい黄色光に変換される。したがって、第二添加材19bの光(青色光)の吸収が抑制され、第二添加材19bの発熱が抑制される。よって、封止部材13cの耐熱性が向上される。
【0115】
このように第二添加材19bの濃度が変更された2層構造は、封止部材13cに複数種類の添加材が添加されるときに有用である。例えば、実施の形態1で説明したように、遷移金属元素の酸化物と、遷移金属元素の金属塩及び遷移金属元素の有機錯体の一方とを添加材として使用することにより、封止部材13の耐熱性を向上させ、かつ、添加材の量を低減することができる場合がある(
図5のプレート(n)及び(o)参照)。第二添加材19bの濃度が変更された2層構造は、このような場合に、封止部材13cの耐熱性をさらに高めることができる。
【0116】
なお、発光装置10aが有する封止部材13cの積層構造は、一例である。例えば、第一封止層13aと第二封止層13bとの層間に別の層が設けられてもよい。また、実施の形態2では、発光装置10aが有する積層構造の各層を構成する主たる材料について例示しているが、積層構造の各層には、上記発光装置10aと同様の機能を実現できる範囲で他の材料が含まれてもよい。
【0117】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る照明装置200について、
図10及び
図11を用いて説明する。
図10は、実施の形態3に係る照明装置200の断面図である。
図11は、実施の形態3に係る照明装置200及びその周辺部材の外観斜視図である。
【0118】
図10及び
図11に示されるように、実施の形態3に係る照明装置200は、例えば、住宅等の天井に埋込配設されることにより下方(廊下または壁等)に光を照射するダウンライト等の埋込型照明装置である。
【0119】
照明装置200は、発光装置10を備える。照明装置200はさらに、基部210と枠体部220とが結合されることで構成される略有底筒状の器具本体と、当該器具本体に配置された、反射板230及び透光パネル240とを備える。
【0120】
基部210は、発光装置10が取り付けられる取付台であるとともに、発光装置10で発生する熱を放熱するヒートシンクである。基部210は、金属材料を用いて略円柱状に形成されており、実施の形態3ではアルミダイカスト製である。
【0121】
基部210の上部(天井側部分)には、上方に向かって突出する複数の放熱フィン211が一方向に沿って互いに一定の間隔をあけて設けられている。これにより、発光装置10で発生する熱を効率よく放熱させることができる。
【0122】
枠体部220は、内面に反射面を有する略円筒状のコーン部221と、コーン部221が取り付けられる枠体本体部222とを有する。コーン部221は、金属材料を用いて成形されており、例えば、アルミニウム合金等を絞り加工またはプレス成形することによって作製することができる。枠体本体部222は、硬質の樹脂材料または金属材料によって成形されている。枠体部220は、枠体本体部222が基部210に取り付けられることによって固定されている。
【0123】
反射板230は、内面反射機能を有する円環枠状(漏斗状の)反射部材である。反射板230は、例えばアルミニウム等の金属材料を用いて形成することができる。なお、反射板230は、金属材料ではなく、硬質の白色樹脂材料によって形成してもよい。
【0124】
透光パネル240は、光拡散性及び透光性を有する透光部材である。透光パネル240は、反射板230と枠体部220との間に配置された平板プレートであり、反射板230に取り付けられている。透光パネル240は、例えばアクリルやポリカーボネート等の透明樹脂材料によって円盤状に形成することができる。
【0125】
なお、照明装置200は、透光パネル240を備えなくてもよい。透光パネル240を備えないことで、照明装置200から出射される光の光束を向上させることができる。
【0126】
また、
図11に示されるように、照明装置200には、発光装置10に、当該発光装置10を点灯させるための電力を供給する点灯装置250と、商用電源からの交流電力を点灯装置250に中継する端子台260とが接続される。点灯装置250は、具体的には、端子台260から中継される交流電力を直流電力に変換して発光装置10に出力する。
【0127】
点灯装置250及び端子台260は、器具本体とは別体に設けられた取付板270に固定される。取付板270は、金属材料からなる矩形板状の部材を折り曲げて形成されており、その長手方向の一端部の下面に点灯装置250が固定されるとともに、他端部の下面に端子台260が固定される。取付板270は、器具本体の基部210の上部に固定された天板280と互いに連結される。
【0128】
以上説明したように、照明装置200は、発光装置10と、発光装置10に、当該発光装置10を点灯させるための電力を供給する点灯装置250とを備える。これにより、照明装置200において、封止部材13の耐熱性を向上することができる。
【0129】
なお、照明装置200は、発光装置10に代えて、発光装置10aを備えてもよい。この場合も、照明装置200において、封止部材13cの耐熱性を向上することができる。
【0130】
なお、実施の形態3では、照明装置として、ダウンライトが例示されたが、本発明は、スポットライトなどの他の照明装置として実現されてもよい。
【0131】
(他の実施の形態)
以上、実施の形態に係る発光装置、及び、照明装置について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0132】
例えば、上記実施の形態では、COB構造の発光装置について説明したが、本発明は、SMD構造の発光装置にも適用可能である。SMD構造の発光装置(発光素子)は、例えば、凹部を有する樹脂製の容器と、凹部の中に実装されたLEDチップと、凹部内に封入された封止部材(蛍光体含有樹脂)とを備える。
【0133】
また、上記実施の形態では、発光装置は、青色光を発するLEDチップと黄色蛍光体との組み合わせによって白色光を出射したが、白色光を出射するための構成はこれに限らない。例えば、赤色蛍光体及び緑色蛍光体を含有する蛍光体含有樹脂と、青色光または紫色光を発するLEDチップとが組み合わされてもよい。
【0134】
また、上記実施の形態では、基板に実装されたLEDチップは、他のLEDチップとボンディングワイヤによって、Chip To Chipで接続された。しかしながら、LEDチップは、ボンディングワイヤによって基板上に設けられた配線(金属膜)に接続され、当該配線を介して他のLEDチップと電気的に接続されてもよい。
【0135】
また、上記実施の形態では、発光装置に用いる発光素子としてLEDチップが例示された。しかしながら、半導体レーザ等の半導体発光素子、または、有機EL(Electro Luminescence)もしくは無機EL等の固体発光素子が、発光素子として採用されてもよい。
【0136】
また、発光装置には、発光色が異なる2種類以上の発光素子が用いられてもよい。例えば、発光装置は、演色性を高めるなどの目的で、青色光を発するLEDチップに加えて赤色光を発するLEDチップを備えてもよい。
【0137】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。