特許第6803575号(P6803575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6803575I−III−VI2化合物半導体を用いた磁気抵抗素子及びその製造方法、これを用いた磁気記憶装置並びにスピントランジスタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803575
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】I−III−VI2化合物半導体を用いた磁気抵抗素子及びその製造方法、これを用いた磁気記憶装置並びにスピントランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 43/10 20060101AFI20201214BHJP
   H01L 21/8239 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H01L43/10
   H01L27/105 447
   H01L43/08 P
   H01L43/08 Z
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-524175(P2018-524175)
(86)(22)【出願日】2017年6月23日
(86)【国際出願番号】JP2017023140
(87)【国際公開番号】WO2017222038
(87)【国際公開日】20171228
【審査請求日】2018年12月11日
(31)【優先権主張番号】特願2016-125316(P2016-125316)
(32)【優先日】2016年6月24日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、内閣府革新的研究開発推進プログラム、単結晶化・高集積化・3次元化プロジェクト、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100190067
【弁理士】
【氏名又は名称】續 成朗
(72)【発明者】
【氏名】葛西 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 有紀子
(72)【発明者】
【氏名】鄭 博瀚
(72)【発明者】
【氏名】イクティアル
(72)【発明者】
【氏名】三谷 誠司
(72)【発明者】
【氏名】大久保 忠勝
(72)【発明者】
【氏名】宝野 和博
【審査官】 加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/032527(WO,A1)
【文献】 特開2004−128085(JP,A)
【文献】 特開2015−125012(JP,A)
【文献】 特開2014−203931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 43/10
H01L 21/8239
H01L 27/105
H01L 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1の強磁性層、非磁性層、第2の強磁性層を積層した構造を有する磁気抵抗素子であって、
ホイスラー合金からなる前記第1の強磁性層と、
ホイスラー合金からなる前記第2の強磁性層と、
I−III−VI型カルコパイライト型化合物半導体からなる前記非磁性層であって、前記非磁性層の厚さは0.5〜3nmであり、
磁気抵抗(MR)変化率が40%以上であり、素子抵抗(RA)が0.1[Ωμm]以上3[Ωμm]以下であることを特徴とする磁気抵抗素子。
【請求項2】
前記I−III−VI型カルコパイライト型化合物半導体は、Cu(In1−yGa)Se(0≦y≦1)、Cu(In1−yGa)S(0≦y≦1)、Ag(In1−yGa)Se(0≦y≦1)、Ag(In1−yGa)S(0≦y≦1)からからなる群から選択される一つであることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項3】
前記ホイスラー合金はCoMnGaGe1−x(0≦x≦1)、CoMnGaSn1−x(0≦x≦1)、CoMnSiGe1−x(0≦x≦1)、CoFeGaGe1−x(0≦x≦1)、CoCrFe1−yGa(0≦y≦1)、CoMnGeSn1−x(0≦x≦1)、CoMnFe1−ySn(0≦y≦1)、Co2−zFeMnGe(0≦z≦2)、CoMnFe1−yGa(0≦y≦1)、CoCrFe1−ySi(0≦y≦1)、CoMnTiSn1−x(0≦x≦1)、CoMnAlSn1−x(0≦x≦1)、CoMnGaSi1−x(0≦x≦1)、CoMnFe1−ySi(0≦y≦1)、CoMnAlSi1−x(0≦x≦1)、CoFeGaSi1−x(0≦x≦1)、CoFeAlSi1−x(0≦x≦1)、CoCrAl、CoCrGa、CoMnSn、CoMnAl、CoMnGa、CoFeSi、CoFeAl、CoMnGe、CoFeGe、CoFeGa、CoTiSn、CoMnSi、FeVAl、CoVAl55からなる群から選択されるCo基ホイスラー合金であって、前記第1の強磁性層はB2あるいはL2構造であり、前記第2の強磁性層はB2構造であることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項4】
前記I−III−VI型カルコパイライト型化合物半導体は、Cu(In1−yGa)Se(0≦y≦1)であり、
前記ホイスラー合金は、CoFeGaGe1−x(0≦x≦1)であることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項5】
前記I−III−VI型カルコパイライト型化合物半導体は、Cu(In0.8Ga0.2)Seであり、
前記ホイスラー合金は、CoFeGa0.5Ge0.5であることを特徴とする請求項4に記載の磁気抵抗素子。
【請求項6】
前記ホイスラー合金に代えて、
(i) 膜面直方向に磁化配向したCoCrPt、CoCrTa、CoCrTaPt、CoCrTaNbからなる群から選択されるCoCr系磁性層、
(ii) TbFeCoであるRE-TM系アモルファス合金磁性層、
(iii) Co/Pd、Co/Pt、CoCrTa/Pd、FeCo/Pt、FeCo/Niからなる群から選択される人工格子磁性層、
(iv) CoPt系やFePt系、FePd系の合金磁性層、
(v) SmCo系合金磁性層、
(vi) CoFe、CoNiFe、NiFe、CoZrNb、FeN、FeSi、FeAlSi、CoFeB、FeBからなる群から選択される軟磁性層、または
(vii) 膜面内方向に磁化が配向したCoCr系の磁性合金膜、
の上記(i)から(vii)までからなる群から選択される一つ又は複数の磁性体からなる磁性層を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の磁気抵抗素子を用いた磁気記憶装置であって、
前記磁気抵抗素子の一方の強磁性ホイスラー合金の層におけるスピンの向きを固定し、他方の強磁性ホイスラー合金の層におけるスピンの向きを反転可能とし、前記磁気抵抗素子の積層方向に電流を通電して、前記各層のスピンの向きに応じた値を出力することを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項8】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の磁気抵抗素子を用いたスピントランジスタであって、
前記磁気抵抗素子のI−III−VIカルコパイライト型化合物半導体の層にゲート電圧を印加し、前記磁気抵抗素子の一方の強磁性ホイスラー合金の層をソース層とし、他方の強磁性ホイスラー合金の層をドレイン層とすることを特徴とするスピントランジスタ。
【請求項9】
MgO(001)単結晶基板にAg層を成膜し、300℃〜450℃で10分間乃至2時間の熱処理を行う工程と、
前記Ag層に下部CoFeGa0.5Ge0.5を成膜し、270℃〜550℃で10分間乃至2時間の熱処理を行ってB2あるいはL2構造に規則化させる工程と、
前記下部CoFeGa0.5Ge0.5にCu(In0.8Ga0.2)Seを0.5〜3nm成膜する工程と、
前記Cu(In0.8Ga0.2)Seに上部CoFeGa0.5Ge0.5を成膜し、270℃〜350℃で10分間乃至2時間で熱処理を行って上部CoFeGa0.5Ge0.5の規則化させる工程と、
を有することを特徴とする磁気抵抗素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、I−III−VI型カルコパイライト型化合物半導体を磁気抵抗素子のスペーサ材料に適用した磁気抵抗素子及びその製造方法に関する。
また本発明は、上記の磁気抵抗素子を用いた磁気ランダムアクセスメモリ、ハードディスクの再生ヘッド、スピンロジック素子に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル磁気抵抗素子(MTJ: magnetic tunnel junction)や巨大磁気抵抗(CPP−GMR: Current Perpendicular to Plane - Giant MagnetoResistance)素子といった磁気抵抗(MR: Magneto-Resistance)素子は、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層構造からなり、上下に配置する強磁性層の磁化の相対的な角度により抵抗が大きく変化する現象を利用した素子である。MR素子は磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM: Magnetoresistive random-access memory)、ハードディスクドライブ(HDD)の再生ヘッド、スピンロジック素子への応用が期待されている。そのためには、大きな磁気抵抗(MR)変化・0.1〜1Ωμm程度の素子抵抗を持つMR素子の開発が望まれている。これらはMTJ素子およびCPP−GMR素子ともに達成困難な数字であった。
【0003】
MTJは、約1nm程度の薄いMgO等のトンネルバリア層の上下にCoFeB等の強磁性電極を配置した構造をしており、強磁性体電極間のトンネル磁気抵抗効果を利用している。1nm以上のMgO膜厚で100%超の高いMR比を特徴とする素子で、現在ハードディスクドライブ(HDD)の再生素子として使われている。しかしながら、高密度媒体の高速読み出しに対応するためにデバイス抵抗(RA)の低減が求められている。MTJのRAの低減には、トンネルバリア層の厚さを1nm以下に低減しなければならないが、トンネルバリア膜厚の薄い領域で高いMR比を得るのは難しい。
【0004】
一方で、すべての層が金属で構成されるCPP−GMR素子は、低すぎるRAと低MR比が問題であった。多くの研究により、現在までに、MTJではMR比200%・RA=10Ωμmが達成されている(非特許文献1参照)。しかし、金属非磁性層を用いたCPP−GMR素子では高スピン偏極率材料であるホイスラー合金を用いた場合であっても、RA<0.1Ωμm・MR比=80%という特性に留まっている。CPP−GMR素子ではRAをさらに増加させるために、電流狭窄(非特許文献2参照)や酸化物(非特許文献3−5参照)といった特殊なスペーサが使われる場合もあるが、所望のMR比とRAを両立するには至っていない。
【0005】
他方で、MR素子で所望のRA値を得る方法として、これまで酸化物や非磁性金属が使われてきたスペーサにSi、GaAs、ZnSeなどの半導体材料を使うことが挙げられる。これらの半導体材料のバンドギャップは、MgOの7.8eVに対して1〜2eVと小さいため、RAの低減に有効と考えられる。しかし、強磁性金属上の半導体の成長は困難で、これまでにFe/GaAs/Feの磁気抵抗素子であって、低温で5%程度のMR比が報告されているのみである(非特許文献6参照)。
IV族半導体であるGeあるいはSiGeについても強磁性体上に高品質成長させたという報告はあるが、磁気抵抗素子に最も重要な磁気抵抗比の提示がない(特許文献1参照)。他方で、本出願人は垂直磁気記録媒体について既に提案を行っているが(特許文献2、3参照)、高いMR比とデバイス応用に適当なRAを有する磁気抵抗素子とするには、更に性能の向上が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2012/081694
【特許文献2】WO2015/037425
【特許文献3】特許第5617112号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T. Kitada, K. Nakamura, Y. Tanaka, S. Furukawa, and T. Hatano, Dig. 59th Conf. on MMM, Vols. DE-02, (2014).
【非特許文献2】H. Fukuzawa, H. Yuasa, S. Hashimoto, K. Koi, H. Iwasaki, M. Takagishi, Y. Tanaka, and M. Sahashi: IEEE Trans. Magn. 40, 2236 (2004).
【非特許文献3】K. Shimazawa, Y. Tsuchiya, T. Mizuno, S. Hara, T. Chou, D. Miyauchi, T. Machita, T. Ayukawa, T. Ichiki, and K. Noguchi: IEEE Trans. Magn., 46, 1487 (2010).
【非特許文献4】A. M. H. R. Hakimi, N. Baberjee, A. Aziz, J. W. A. Robinson, and M. G. Blamire: Appl. Phys Lett., 96, 102514 (2010).
【非特許文献5】T. Nakatani G, Mihajlovic, J. C. Read, Y-S, Choi, and J. Childress: Appl. Phys. Express 8, 093003 (2015). 7. S. Kreuzer, J. Moser, W. Wegscheider, and D. Weiss: Appl. Phys. Lett. 80, 4582 (2002).
【非特許文献6】S. Kreuzer, J. Moser, W. Wegscheider, and D. Weiss: Appl. Phys. Lett. 80, 4582 (2002).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では、カルコパイライト型化合物半導体を中間層として用いることで高いMR比とデバイス応用に適当なRAを有する磁気抵抗素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の磁気抵抗素子は、例えば図1に示すように、基板10上に第1の強磁性層16、非磁性層18、第2の強磁性層20を積層した構造を有する磁気抵抗素子であって、ホイスラー合金からなる第1の強磁性層16と、ホイスラー合金からなる第2の強磁性層20と、I−III−VI型カルコパイライト型化合物半導体からなる非磁性層18であって、非磁性層18の厚さは0.5〜3nmに相当するものであり、磁気抵抗(MR)変化率が40%以上であり、素子抵抗(RA)が0.1[Ωμm]以上3[Ωμm]以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明の磁気抵抗素子において、I−III−VI型カルコパイライト型化合物半導体は、Cu(In1−yGa)Se(0≦y≦1)、Cu(In1−yGa)S(0≦y≦1)、Ag(In1−yGa)Se(0≦y≦1)、Ag(In1−yGa)S(0≦y≦1)からからなる群から選択される一つであるとよく、特に好ましくはCu(In1−yGa)Se(0≦y≦1)であるとよい。
本発明の磁気抵抗素子において、前記ホイスラー合金は、CoMnGaGe1−x(0≦x≦1)、CoMnGaSn1−x(0≦x≦1)、CoMnSiGe1−x(0≦x≦1)、CoFeGaGe1−x(0≦x≦1)、CoCrFe1−yGa(0≦y≦1)、CoMnGeSn1−x(0≦x≦1)、CoMnFe1−ySn(0≦y≦1)、Co2−zFeMnGe(0≦z≦2)、CoMnFe1−yGa(0≦y≦1)、CoCrFe1−ySi(0≦y≦1)、CoMnTiSn1−x(0≦x≦1)、CoMnAlSn1−x(0≦x≦1)、CoMnGaSi1−x(0≦x≦1)、CoMnFe1−ySi(0≦y≦1)、CoMnAlSi1−x(0≦x≦1)、CoFeGaSi1−x(0≦x≦1)、CoFeAlSi1−x(0≦x≦1)、CoCrAl、CoCrGa、CoMnSn、CoMnAl、CoMnGa、CoFeSi、CoFeAl、CoMnGe、CoFeGe、CoFeGa、CoTiSn、CoMnSi、FeVAl、CoVAl55からなる群から選択されるCo基ホイスラー合金であって、前記第1の強磁性層はB2あるいはL2構造であり、前記第2の強磁性層はB2構造であるとよい。
ここで、CoMnGaGe1−x(0≦x≦1)はCoMnGa0.5Ge0.5またはCoMnGa0.25Ge0.75が望ましいが、これに限定されない。CoMnGaSn1−x(0≦x≦1)はCoMnGa0.5Sn0.5が望ましいが、これに限定されない。CoMnSiGe1−x(0≦x≦1)はCoMnSi0.75Ge0.25またはCoMnSi0.25Ge0.75が望ましいが、これに限定されない。CoFeGaGe1−x(0≦x≦1)はCoFeGa0.5Ge0.5が望ましいが、これに限定されない。CoCrFe1−yGa(0≦y≦1)はCoCr0.02Fe0.98Gaが望ましいが、これに限定されない。CoMnGeSn1−x(0≦x≦1)はCoMnGe0.5Sn0.5が望ましいが、これに限定されない。CoMnFe1−yGa(0≦y≦1)はCoMn0.95Fe0.05Snが望ましいが、これに限定されない。Co2−zFeMnGe(0≦z≦2)はCo1.95Fe0.05MnGeが望ましいが、これに限定されない。CoMnFe1−yGa(0≦y≦1)はCoMn0.5Fe0.5Gaが望ましいが、これに限定されない。CoCrFe1−ySi(0≦y≦1)はCoCr0.02Fe0.98SiまたはCoCr0.1Fe0.9Siが望ましいが、これに限定されない。CoMnTiSn1−x(0≦x≦1)はCoMnTi0.25Sn0.75が望ましいが、これに限定されない。CoMnAlSn1−x(0≦x≦1)はCoMnAl0.5Sn0.5が望ましいが、これに限定されない。CoMnGaSi1−x(0≦x≦1)はCoMnGa0.25Si0.75、が望ましいが、これに限定されない。CoMnFe1−ySi(0≦y≦1)はCoMn0.5Fe0.5SiまたはCoMn0.6Fe0.4Siが望ましいが、これに限定されない。CoMnAlSi1−x(0≦x≦1)はCoMnAl0.5Si0.5が望ましいが、これに限定されない。CoFeGaSi1−x(0≦x≦1)はCoFeGa0.5Si0.5が望ましいが、これに限定されない。CoFeAlSi1−x(0≦x≦1)はCoFeAl0.5Si0.5が望ましいが、これに限定されない。
なお、ホイスラー合金において、上記の元素組成はホイスラー合金の代表的なものであり、上記の元素組成から多少の組成がズレていても、磁気抵抗素子の強磁性層として用いるには問題がない。
【0011】
本発明の磁気抵抗素子において、主に高磁気異方性特性が必要となるMRAMやスピントルク発振素子応用では、好ましくは、ホイスラー合金に代えて、
(i) 膜面直方向に磁化配向したCoCrPt、CoCrTa、CoCrTaPt、CoCrTaNbからなる群から選択されるCoCr系磁性層、
(ii) TbFeCo等のRE-TM系アモルファス合金磁性層、
(iii) Co/Pd、Co/Pt、CoCrTa/Pd、FeCo/Pt、FeCo/Niからなる群から選択される人工格子磁性層、
(iv) CoPt系やFePt系、FePd系の合金磁性層、
(v) SmCo系合金磁性層、
(vi) CoFe、CoNiFe、NiFe、CoZrNb、FeN、FeSi、FeAlSi、CoFeB、FeBからなる群から選択される軟磁性層、または
(vii) 膜面内方向に磁化が配向したCoCr系の磁性合金膜、
の上記(i)から(vii)までからなる群から選択される一つ又は複数の磁性体からなる磁性層を有することを特徴とする
【0012】
本発明の磁気記憶装置は、上記の磁気抵抗素子を用いた磁気記憶装置であって、
前記磁気抵抗素子の一方の強磁性ホイスラー合金の層におけるスピンの向きを固定し、他方の強磁性ホイスラー合金の層におけるスピンの向きを反転可能とし、前記磁気抵抗素子の積層方向に電流を通電して、前記各層のスピンの向きに応じた値を出力することを特徴とする。
【0013】
本発明のスピントランジスタは、上記の磁気抵抗素子を用いたスピントランジスタであって、
前記カルコパイライト型化合物半導体の層にゲート電圧を印加し、前記磁気抵抗素子の一方の強磁性ホイスラー合金の層をソース層とし、他方の強磁性ホイスラー合金の層をドレイン層とすることを特徴とする。
【0014】
本発明の磁気抵抗素子の製造方法は、MgO(001)単結晶基板に形成する場合には、Ag層を成膜し、300℃〜450℃で10分間乃至2時間の第1の熱処理を行う工程と、
前記Ag層に下部CoFeGaGeを成膜し、300℃〜650℃で10分間乃至2時間の第2の熱処理を行う工程と、
前記下部CoFeGaGeにCu(In1−yGa)Se(0≦y≦1であり、例えば0.2。以下、CIGSと略して表記する場合がある。)を0.5〜3nmまでの層厚で成膜する工程と、
前記Cu(In1−yGa)Seに上部CoFeGaGeを成膜し、270℃〜350℃で10分間乃至2時間で第3の熱処理を行う工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
第1の熱処理は、Ag層の表面平坦性を改善するものである。第1の熱処理の熱処理温度が270℃未満では表面平坦性の改善が不足し、450℃を超えると表面の平坦性が悪化するという不都合がある。熱処理時間が10分間未満では表面平坦性の改善が不足し、2時間を超えると徒に熱処理時間が延びるという不都合がある。
第2の熱処理は、下部CoFeGa0.5Ge0.5をB2あるいはL2構造に規則化させるために行う。第2の熱処理の熱処理温度が270℃未満ではB2構造への規則化が不足し、650℃を超えると層構造の破壊という不都合がある。熱処理時間が10分間未満ではB2あるいはL2構造への規則化が不足し、2時間を超えると徒に熱処理時間が延びるという不都合がある。
第3の熱処理は、上部CoFeGaGeをB2構造に規則化させるために行う。第3の熱処理の熱処理温度が270℃未満ではB2構造への規則化が不足し、350℃を超えると層構造の破壊という不都合がある。
【0016】
次に、カルコパイライトの結晶構造について説明する。
元素周期表において、IV族(Si、Geなど)をはさんでIV族から等間隔にある2種の元素で化合物をつくると、同様の化学結合ができて半導体になる。例えば、III−V族の一例であるGaAsにおいては、Gaから3s3pの3電子が供給され、Asから4s4pの5電子が供給され再配分され、1原子あたり4個の電子はsp混成軌道を作る。III−V族半導体はIV族と等電子的(isoelectric)である。IV族を出発点として、II−VI族、III−V族が得られ、さらに、II−VI族においてII族をI族とIII族の2つの元素で置き換えるとI−III−VI族の化合物が、次にI族を空格子点とII族で置換するとII−IIIVI族の結晶ができる。このような系列をアダマンティン(adamantine)系列と称する。アダマンティン系列の系統図を図9に示す。これらは等電子的でいずれも半導体的な物性を示す。
【0017】
その結晶構造は、IV族ではダイヤモンド構造(diamond structure)、III−V族とII−VI族では閃亜鉛鉱構造(zincblende structure)またはウルツ鉱構造(wurtzite structure)、I−III−VI、II−IV−V族では黄銅鉱(カルコパイライト)構造(chalcopyrite structure)をとる。
【0018】
図10は、カルコパイライト型の結晶構造を説明する元素配置図である。I−III−VI族、II−IV−V族など黄銅鉱構造は、閃亜鉛鉱構造をc軸方向に2階建てに積み重ねた単位胞をもつが、c軸の長さは、a軸の長さの2倍からずれ、正方晶系(tetrahedral system)となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の磁気抵抗素子によれば、高いMR比とデバイス応用に適当なRAを有する磁気抵抗素子が得られる。
本発明の磁気抵抗素子を用いた磁気記憶装置並びにスピントランジスタによれば、高密度の記憶容量を有する垂直磁気記録装置や不揮発ロジックデバイス等に応用可能なスピントランジスタが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施例を示すCIGSを用いた磁気抵抗素子の膜構成図である。
図2】本発明の一実施例を示すCIGSを用いた多層膜の断面図で、(a)はHAADF−STEM像、(b)は上部CoFeGa0.5Ge0.5(以下CFGGと略して表記する場合がある)、(c)はCIGS、(d)は下部CFGGのナノビーム電子回折像、(e)は高分解能HAADF−STEM像である。
図3】本発明の一実施例を示すCFGG/CIGS/CFGG−磁気抵抗素子(白丸表記)およびCFGG/Ag/CFGG−CPP−GMR素子(白抜き四角表記)の室温での磁気抵抗曲線である。
図4】本発明の一実施例を示すCFGG/CIGS/CFGG−磁気抵抗素子のMR比、RA、ΔRAをピラー面積の逆数(A−1)依存性を示す図で、室温での値を示している。
図5】本発明の一実施例を示すCFGG/CIGS/CFGG−磁気抵抗素子のMR比、RA、ΔRAをピラー面積の逆数(A−1)依存性を示す図で、低温での値を示している。
図6】本発明の磁気抵抗素子が搭載される磁気ヘッドを搭載可能な磁気記録再生装置の一例を示す概略図である。
図7】本発明の磁気抵抗素子が搭載される磁気ヘッドアセンブリの一例を示す概略図である。
図8】本発明の磁気抵抗素子が搭載される磁気ヘッドの一例を示す概略図で、主磁極の先端部及び高周波発振子(スピントルク発振子)を拡大して示してある。
図9】アダマンティン系列の系統図である。
図10】カルコパイライト型の結晶構造を説明する元素配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態において、基板上に第1の強磁性層、非磁性層、第2の強磁性層を積層した構造を有する磁気抵抗素子における非磁性層には、I−III−VI型カルコパイライト型化合物半導体の1つであるCu(In1−yGa)Se(0≦y≦1であり、例えば0.2。以下CIGSと略して表記する場合がある)をスペーサ材料として用いている。例えば、上記のCIGSにおいて、y=0.2を採用すると、Cu(In0.8Ga0.2)Seとなるが、これはCuInSeのInの一部をGaで置換したものである。Cu(In0.8Ga0.2)Seは太陽電池材料として知られており、カルコパイライト型の結晶構造を持つ。バンドギャップはCuInSeは約1.0eV、CuGaSe2は約1.7eVであり、Gaの置換量により変化する。また、格子定数はGaの置換により0.56nmから0.58nmへと変化する。なお、上記のCIGSにおいて、y=0.2に限られず、0≦y≦1の範囲にあればよい。
【0022】
本実施形態において、第1及び第2の強磁性層に用いるホイスラー合金として、CoFeGaGe1−x(0≦x≦1)のうち、x=0.5を採用すると、CoFe(Ga0.5Ge0.5)(以下CFGGと略して表記する場合がある)となる。このホイスラー合金の格子定数は0.573nmであり、Cu(In0.8Ga0.2)Seとの格子整合は非常によい。これまでにCu(In0.8Ga0.2)SeをスペーサとしたMTJあるいはCPP−GMRの報告例はない。
【実施例】
【0023】
実験結果:図1に作製した磁気抵抗素子の膜構成を示す。膜構成はMgO(001)基板/Cr(10nm)/Ag(100nm)/CFGG(10nm)/CIGS(2nm)/CFGG(10nm)/Ru(8nm)である。成膜はすべて室温で行った。
【0024】
製造工程としては、MgO(001)単結晶基板は、膜を成膜する前にスパッタチャンバー内で550℃・1時間の熱洗浄を行った。Agを成膜した後に、300℃で熱処理を行うことにより、Agの表面平坦性を改善した。下部CFGGを成膜した後、L2構造に規則化させるために500℃で、全体を成膜した後に上部CFGGの規則化のために300℃で熱処理を行った。
【0025】
多層膜の構造測定については、透過電子顕微鏡(TEM)で、輸送特性は4端子法で測定を行った。磁気抵抗素子は、電子ビームリソグラフィー・Arイオンミリング・リフトオフによる微細加工により作製した。作製したピラーは楕円形で、サイズは200*100nmから400*200nmの範囲で複数用意した。
【0026】
図2に作製した多層膜のHAADF−STEM像、ナノビーム電子回折像を示す。図2(a)のHAADF-STEM像からは、層構造が明瞭に観察できる。また図2(b)〜図2(d)のナノビーム電子回折像から、上部CFGGはB2構造、下部CFGGはL2構造、CIGSはカルコパイライト構造をもつことがわかる。またこれらの層はエピタキシャル成長をしており、CFGG(001)[110]//CIGS(001)[110]の方位関係を持つ。図2(e)には、高分解能HAADF−STEM像を示す。上下CFGG層はB2およびL2構造に対応する周期的なコントラストが観察できる。また、CFGG/CIGS界面にはミスフィット転位は観測されず、格子整合が非常によいことがわかる。
【0027】
図3に典型的な磁気抵抗曲線を示す。白丸表記がCIGS2nmのスペーサ、白抜き四角表記がAg5nmのスペーサのものである。Agのスペーサは参考のために示している。Agスペーサの素子では、MR比=20%であるのに対し、CIGSスペーサではMR比=40%と非常に大きな値が得られている。
【0028】
図4に、MR比、RA、ΔRAをピラー面積の逆数(A−1)に対してまとめたグラフを示す。測定は室温で行った。RAが0.1〜3[Ωμm]とばらついているものの、MR比は約40%を示す。RAのばらつきの原因は明らかではないが、HDDの再生素子やMRAMへの応用において好ましいRAが得られていることがわかる。
【0029】
図5にMR比、RA、ΔRAの温度依存性を示す。8Kでは、MR比は100%を超えている。RAは低温で10−20%程度増加しており、MR比の低温での増加はΔRAの増加によるものであることがわかる。温度の減少に伴うRAの減少は、CIGSスペーサの電子の伝導機構がトンネル的であることを示しており、CPP−GMR素子における電子の伝導機構とは異なっていると考えられる。
【0030】
図6は、本発明の磁気抵抗素子が搭載される磁気ヘッドを搭載可能な磁気記録再生装置の概略構成を例示する要部斜視図である。図6において、磁気記録再生装置100は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。同図において、記録用媒体ディスク110は、スピンドル140に装着され、図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。磁気記録再生装置100は、複数の媒体ディスク110を備えたものとしてもよい。
【0031】
図7に、本発明の磁気抵抗素子が搭載される磁気ヘッドアッセンブリの一例を表す概略図を示す。
図7は、アクチュエータアーム154から先の磁気ヘッドアセンブリをディスク側から眺めた拡大斜視図である。すなわち、磁気ヘッドアッセンブリ150は、例えば駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム154を有し、アクチュエータアーム154の一端にはサスペンション152が接続されている。
【0032】
図6に示す媒体ディスク110に格納する情報の記録再生を行うヘッドスライダー120は、図7に示す薄膜状のサスペンション152の先端に取り付けられている。ここで、ヘッドスライダー120は、例えば、本発明の磁気抵抗素子が搭載される磁気ヘッドをその先端付近に搭載している。
【0033】
媒体ディスク110が回転すると、ヘッドスライダー120の媒体対向面(ABS)は媒体ディスク110の表面から所定の浮上量をもって保持される。あるいはスライダが媒体ディスク110と接触するいわゆる「接触走行型」であってもよい。
【0034】
サスペンション152は、駆動コイルを保持するボビン部(図示せず)などを有するアクチュエータアーム154の一端に接続されている。アクチュエータアーム154の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ130が設けられている。ボイスコイルモータ130は、アクチュエータアーム154のボビン部に巻き上げられた駆動コイル(図示せず)と、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石および対向ヨークからなる磁気回路(図示せず)とから構成される。
【0035】
アクチュエータアーム154は、スピンドル140に設けられたボールベアリング(図示せず)によって保持され、ボイスコイルモータ130により回転摺動が自在にできるようになっている。
【0036】
また、サスペンション152は信号の書き込みおよび読み取り用のリード線158を有し、このリード線158とヘッドスライダー120に組み込まれた磁気ヘッドの各電極とが電気的に接続されている。図中156は磁気ヘッドアッセンブリ150の電極パッドである。
【0037】
図8は、主磁極および高周波発振子(スピントルク発振子)を模式的に示す斜視図である。図8に示すように、スピントルク発振子180は、主磁極160の先端部162と補助磁極170のリーディング側端面174との間に設けられている。スピントルク発振子180は、非磁性導電層からなる下地層182、スピン注入層(第1磁性層)184、中間層186(非磁性層)、発振層(第2磁性層)188、非磁性導電層からなるキャップ層190を、主磁極160側から補助磁極170側に順に積層して構成されている。発振層188は、軟磁性かつ飽和磁束密度が2Tと大きなFeCoNiにより形成され、中間層186はスピン拡散長が長いCuにより形成され、更に、スピン注入層184は、保磁力が高くかつスピン偏極率が高いCo/Ni人工格子により形成されている。なお、図8では、スピン注入層184、中間層186、発振層188の順に積層した例を示したが、発振層、中間層、スピン注入層の順に積層してもよい。
【0038】
中間層186には、例えば、Au、Agなどのスピン透過率の高い材料を用いることもできる。中間層186の層厚は、1原子層から3nmとすることが望ましい。これによりスピン注入層184と発振層188の交換結合を最適な値に調節することが可能となる。
【0039】
また、スピン注入層184には、例えば、膜面直方向に磁化配向したCoCrPt、CoCrTa、CoCrTaPt、CoCrTaNb等のCoCr系磁性、TbFeCo等のRE−TM系アモルファス合金磁性層、Co/Pd、Co/Pt、CoCrTa/Pd、FeCo/Pt、FeCo/Ni等の人工格子磁性層、CoPt系やFePt系の合金磁性層、SmCo系合金磁性など、垂直配向性に優れた材料、CoFe、CoNiFe、NiFe、CoZrNb、FeN、FeSi、FeAlSi等の比較的、飽和磁束密度の大きく膜面内方向に磁気異方性を有する軟磁性層や、CoFeSi、CoMnSi、CoMnAl等のグループから選択されるホイスラー合金、膜面内方向に磁化が配向したCoCr系の磁性合金膜も適宜用いることができる。さらに、複数の上記材料を積層したものを用いてもよい。
【0040】
さらに、発振層188には、Fe、Co、Niまたは、これらを組み合わせた合金もしくは、これらを組み合わせた人工格子と、上記スピン注入層184に用いることができる各種の材料とを積層したものを用いてもよい。なお、発振層188には、FeCo系合金に、さらにAl、Si、Ge、Ga、Mn、Cr、Bの少なくともいずれか1つ以上を添加した材料も用いても良い。これにより、例えば、発振層188とスピン注入層184との飽和磁束密度、異方性磁界、及びスピントルク伝達効率を調整することができる。
なお、発振層188の層厚は、5ないし20nmとすることが望ましく、スピン注入層184の層厚は、2ないし60nmとすることが望ましい。
【0041】
スピントルク発振子180は、その下端面192がディスク対向面(図示せず)に露出し、磁気ディスク(図示せず)の表面に対して、主磁極160の先端面とほぼ同一の高さ位置に設けられている。すなわち、スピントルク発振子180の下端面192は、スライダのディスク対向面と面一に、かつ、磁気ディスクの表面とほぼ平行に位置している。また、スピントルク発振子180は、ディスク対向面から最も離れ、下端面192とほぼ平行に延びる上端面194と、下端面から上端面まで延びる両側面196、198とを有している。
少なくとも一方の側面、ここでは、両側面196、198は、ディスク対向面に垂直な方向に対してトラック中心側、つまり、内側に傾斜している。また、主磁極160に対向する面のスピントルク発振子180の形状は、トラック幅方向に対称な台形となっている。
【0042】
スピントルク発振子180は、制御回路基板による制御信号に従って、電源(図示せず)から主磁極160、補助磁極170に電圧を印加することにより、スピントルク発振子180の膜厚方向に直流電流が印加される。通電することにより、スピントルク発振子180の発振層188の磁化が回転し、高周波磁界を発生させることが可能となる。これにより、スピントルク発振子180は、磁気ディスクの記録層に高周波磁界を印加する。このように、補助磁極170と主磁極160はスピントルク発振子180に垂直通電する電極として働くことになる。
【0043】
なお、上記の実施例では、基板上に第1の強磁性層、非磁性層、第2の強磁性層を積層した構造を有するトンネル磁気抵抗素子において、非磁性層にはCu(In0.8Ga0.2)Seを用い、第1及び第2の強磁性層にCoFe(Ga0.5Ge0.5)を用いたものを示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、非磁性層には他のI−III−VI型カルコパイライト型化合物半導体を用いても良く、また第1及び第2の強磁性層には他のホイスラー合金や他の強磁性材料を用いても良いことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、大きな磁気抵抗(MR)変化・0.1〜3 Ωμm程度の素子抵抗を持つ磁気抵抗素子が得られる。そこで、この磁気抵抗素子は磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)、ハードディスクドライブ(HDD)の再生ヘッド、スピンロジック素子に適用できる。
【符号の説明】
【0045】
100 磁気記録再生装置
110 記録用媒体ディスク
120 ヘッドスライダー
130 ボイスコイルモータ
140 スピンドル
150 磁気ヘッドアッセンブリ
160 主磁極
170 補助磁極
180 スピントルク発振子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10