特許第6803602号(P6803602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803602
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】飛行体の姿勢制御方法
(51)【国際特許分類】
   B64C 15/12 20060101AFI20201214BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20201214BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B64C15/12
   B64C39/02
   B64C27/08
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-111129(P2016-111129)
(22)【出願日】2016年6月2日
(65)【公開番号】特開2017-214044(P2017-214044A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2019年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】517286799
【氏名又は名称】株式会社MMラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(72)【発明者】
【氏名】三輪 昌史
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05086993(US,A)
【文献】 米国特許第05765783(US,A)
【文献】 国際公開第2015/012935(WO,A2)
【文献】 特開昭62−001695(JP,A)
【文献】 特開2013−178062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 15/12
B64C 27/08
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、該機体の側面に設けられた翼と、前記翼の前面よりも後端側に設けられた推力偏向が可能な推力源と、該推力源の作動を制御する制御手段と、を有する飛行体の制御方法であって、
前記制御手段は、
前記推力源の推力と推力の方向を制御して、前記機体を鉛直姿勢にした状態での飛行を維持する鉛直姿勢維持機能と、
前記推力源の推力と推力の方向を制御して、前記機体を非鉛直にした非鉛直姿勢での飛行を維持する飛行制御機能と、
前記鉛直姿勢維持機能と前記飛行制御機能を切り替える切換機能と、を有しており、
前記切換機能は、
鉛直姿勢の飛行状態から非鉛直姿勢の飛行状態に移行する指令を受けると、前記鉛直姿勢維持機能によって鉛直姿勢に維持されている前記機体が非鉛直姿勢となるように前記推力源を操作し、該機体が受ける揚力が一定以上になると前記飛行制御機能を作動させるものであり、
前記切換機能は、
鉛直姿勢の飛行状態から非鉛直姿勢の飛行状態への移行期間に、前記機体が飛行する移行軌跡を記憶しており、
該切換機能は、
前記機体が前記移行軌跡に沿って移動し、かつ、前記機体の軸方向が前記移行軌跡の各点において接線方向と平行となるように前記推力源を制御する
ことを特徴とする飛行体の制御方法。
【請求項2】
前記切換機能は、
前記機体の鉛直方向に対する傾斜角度が所定の切替角度となる前に、前記推力源が発生する推力が該機体を水平にした状態での飛行を維持し得る揚力を前記翼に発生させ得る大きさ以上となるように、前記推力源を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の飛行体の制御方法。
【請求項3】
機体と、該機体の側面に設けられた翼と、前記翼の前面よりも後端側に設けられた推力偏向が可能な推力源と、該推力源の作動を制御する制御手段と、を有する飛行体の制御方法であって、
前記制御手段は、
前記推力源の推力と推力の方向を制御して、前記機体を鉛直姿勢にした状態での飛行を維持する鉛直姿勢維持機能と、
前記推力源の推力と推力の方向を制御して、前記機体を非鉛直にした非鉛直姿勢での飛行を維持する飛行制御機能と、
前記鉛直姿勢維持機能と前記飛行制御機能を切り替える切換機能と、を有しており、
前記切換機能は、
鉛直姿勢の飛行状態から非鉛直姿勢の飛行状態に移行する指令を受けると、前記鉛直姿勢維持機能によって鉛直姿勢に維持されている前記機体が非鉛直姿勢となるように前記推力源を操作し、該機体が受ける揚力が一定以上になると前記飛行制御機能を作動させるものであり、
前記機体が非鉛直状態となっている状態で揚力を発生させるスラスタを備えており、
前記切換機能は、
該機体の鉛直方向に対する傾斜角度が所定の停止角度以上になると前記スラスタを作動させ、
前記機体が受ける揚力が一定以上になると、前記スラスタを停止して前記飛行制御機能を作動させる
ことを特徴とする飛行体の制御方法。
【請求項4】
前記切換機能は、
前記推力源が発生する推力を、前記機体に加わる揚力または速度に基づいて判断する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の飛行体の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体の姿勢制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、飛行体として、一般的には、固定翼を有する飛行機と、回転翼を有するヘリコプターがあり、それぞれに特徴がある。
【0003】
まず、飛行機の場合、機体の移動に伴って翼に発生する揚力によって飛行するものであり、機体を移動させる駆動源に種々のエンジンを採用できる。このため、ジェットエンジンなどを駆動源とすることによって、非常に高速かつ大型機体でも飛行できる。
しかし、飛行機は揚力を増加減少させることによって離着陸をしているので、この揚力を調整するために、離陸着陸にはある程度の長さの滑走路が必要になる。つまり、飛行機を離陸着陸させるためには、ある程度広い場所が必要になる。
【0004】
一方、ヘリコプターなどは、ロータを回転させることによって揚力を発生させており、垂直離陸が可能であるので、離陸着陸させるために必要な領域を狭くできるという利点がある。
しかし、ヘリコプターでは、ロータの回転で発生する揚力で飛行しているので、それほど大きな揚力を得ることができない。したがって、機体の大きさはそれほど大きくできないし、また、それほど高速で飛行することができない。
【0005】
飛行機とヘリコプターの両方の利点を兼ね備えた飛行体の開発が進んでいる。具体的には、垂直に離着陸することができ、しかも、翼の発生する揚力によって高速で飛行できる飛行機の開発が進められている(例えば特許文献1)。
【0006】
特許文献1の飛行機は、垂直離着陸する際に使用する翼に設けられたファンを備えており、このファンを駆動することによって飛行時と同じように機体を水平に保ったまま浮上させることができる。すると、ファンの駆動により浮上した状態でジェットエンジンなどの駆動手段を作動させることにより、浮上した状態から飛行機を水平飛行させることができる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−118891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかるに、上記のような飛行機では、飛行のためのエンジン以外に、浮上のためのファン等の駆動源を設けなければならず、機体の構造が複雑になる上、機体において客室や貨物室等に利用できる空間が小さくなるなどの問題が生じる。
【0009】
一方、飛行のためのエンジンからの推力を浮上の動力として利用するものもある。例えば、飛行に使用するジェットエンジンの噴流を翼等から下方に噴出させて浮揚の揚力を発生するものや、ジェットエンジン自体の向きを変更するもの等が開発されている。
【0010】
しかし、これらの方法では、駆動源は増加しないものの、ジェットエンジンの噴流を翼等から下方に噴出させるための構造を設けなければならなかったり、ジェットエンジンの向きを変更する装置を設けなければならなかったりするので、上述したような問題は解決されない。
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、垂直な離陸を実現でき、垂直姿勢の飛行状態から水平姿勢の飛行状態に切り替えることができる飛行体の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明の飛行体の制御方法は、機体と、該機体の側面に設けられた翼と、前記翼の前面よりも後端側に設けられた推力偏向が可能な推力源と、該推力源の作動を制御する制御手段と、を有する飛行体の制御方法であって、前記制御手段は、前記推力源の推力と推力の方向を制御して、前記機体を鉛直姿勢にした状態での飛行を維持する鉛直姿勢維持機能と、前記推力源の推力と推力の方向を制御して、前記機体を非鉛直にした非鉛直姿勢での飛行を維持する飛行制御機能と、前記鉛直姿勢維持機能と前記飛行制御機能を切り替える切換機能と、を有しており、前記切換機能は、鉛直姿勢の飛行状態から非鉛直姿勢の飛行状態に移行する指令を受けると、前記鉛直姿勢維持機能によって鉛直姿勢に維持されている前記機体が非鉛直姿勢となるように前記推力源を操作し、該機体が受ける揚力が一定以上になると前記飛行制御機能を作動させるものであり、前記切換機能は、鉛直姿勢の飛行状態から非鉛直姿勢の飛行状態への移行期間に、前記機体が飛行する移行軌跡を記憶しており、該切換機能は、前記機体が前記移行軌跡に沿って移動し、かつ、前記機体の軸方向が前記移行軌跡の各点において接線方向と平行となるように前記推力源を制御することを特徴とする。
第2発明の飛行体の制御方法は、第1発明において、前記切換機能は、前記機体の鉛直方向に対する傾斜角度が所定の切替角度となる前に、前記推力源が発生する推力が該機体を水平にした状態での飛行を維持し得る揚力を前記翼に発生させ得る大きさ以上となるように、前記推力源を制御することを特徴とする。
第3発明の飛行体の制御方法は、機体と、該機体の側面に設けられた翼と、前記翼の前面よりも後端側に設けられた推力偏向が可能な推力源と、該推力源の作動を制御する制御手段と、を有する飛行体の制御方法であって、前記制御手段は、前記推力源の推力と推力の方向を制御して、前記機体を鉛直姿勢にした状態での飛行を維持する鉛直姿勢維持機能と、前記推力源の推力と推力の方向を制御して、前記機体を非鉛直にした非鉛直姿勢での飛行を維持する飛行制御機能と、前記鉛直姿勢維持機能と前記飛行制御機能を切り替える切換機能と、を有しており、前記切換機能は、鉛直姿勢の飛行状態から非鉛直姿勢の飛行状態に移行する指令を受けると、前記鉛直姿勢維持機能によって鉛直姿勢に維持されている前記機体が非鉛直姿勢となるように前記推力源を操作し、該機体が受ける揚力が一定以上になると前記飛行制御機能を作動させるものであり、前記機体が非鉛直状態となっている状態で揚力を発生させるスラスタを備えており、前記切換機能は、該機体の鉛直方向に対する傾斜角度が所定の停止角度以上になると前記スラスタを作動させ、前記機体が受ける揚力が一定以上になると、前記スラスタを停止して前記飛行制御機能を作動させることを特徴とする。
第4発明の飛行体の制御方法は、第1、第2または第3発明において、前記切換機能は、前記推力源が発生する推力を、前記機体に加わる揚力または速度に基づいて判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明によれば、機体を鉛直姿勢での飛行状態から水平等の非鉛直姿勢の飛行状態に移行することができる。したがって、推進型の飛行体であっても、余分な駆動機構を設けることなく垂直離陸して通常の飛行状態に移行することが可能になる。所定の移行軌跡に沿って鉛直姿勢の飛行状態から非鉛直姿勢の飛行状態に移行するので、飛行状態の移行をスムースに実施することができる。しかも、仰角をほぼ0とすることができるので、安定して移行軌跡に沿った飛行を実現できる。
第2発明によれば、鉛直姿勢の飛行状態から非鉛直姿勢の飛行状態に安定して移行することができる。
第3発明によれば、機体を鉛直姿勢での飛行状態から水平等の非鉛直姿勢の飛行状態に移行することができる。したがって、推進型の飛行体であっても、余分な駆動機構を設けることなく垂直離陸して通常の飛行状態に移行することが可能になる。スラスタによって揚力を発生させているので、飛行体の姿勢変更を安定して行うことができる。また、機体の姿勢を維持する程度の揚力を発生させればよいので、スラスタの出力はそれほど大きくしなくてもよい。したがって、スラスタを設けても、機体の構造の複雑化を低減でき、機体において有効利用できるスペースも確保できる。
第4発明によれば、飛行体に特別な機構を設けなくても推力を判断できるので、飛行体の構造や制御等が複雑化することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の飛行体1の制御方法の概略制御フロー図である。
図2】他の実施形態の飛行体1の制御方法による概略制御フロー図である。
図3】(A)は本実施形態の飛行体の制御方法によって、鉛直姿勢の飛行状態から非鉛直姿勢の飛行状態に移行する状態の概略説明図であり、(B)は他の実施形態の飛行体の制御方法によって、鉛直姿勢の飛行状態から非鉛直姿勢の飛行状態に移行する状態の概略説明図である。
図4】スラスタを備えた飛行体の制御方法の概略制御フロー図である。
図5】本実施形態の飛行体の制御方法により制御される飛行体1の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の飛行体の制御方法は、翼を有する飛行体の飛行状態を制御する方法であって、鉛直姿勢の飛行状態から非鉛直姿勢の飛行状態にスムースに移行できるようにしたことに特徴を有している。
【0016】
本発明の飛行体の制御方法は、翼が発生する揚力によって飛行する飛行体であって、翼の前面よりも後方に推力源を有するもの(つまり推進型の飛行体)であれば採用することができる。ここでいう「翼の前面よりも後方に推力源を有する」とは、推力源が発生する気流が直接翼の前面に作用しないことを意味している。翼の前面側から空気を吸引し翼の後方に排出するようにダクトファンなどを翼に設けた場合も、「翼の前面よりも後方に推力源を有する」に該当する。
【0017】
また、飛行体に設けられる推力源はとくに限定されず、飛行体の大きさや形状等に合わせて適宜選択することができる。例えば、小型の無人飛行体であれば、ダクトファンやロータ等を採用することができる。
以下では、本発明の飛行体が推力源としてダクトファンを有している場合を代表として説明する。
【0018】
(飛行体)
まず、本実施形態の飛行体の制御方法について説明する前に、飛行体1について説明する。
図5示すように、飛行体1は、機体2と、機体2の側面に設けられた一対の翼3,3と、機体2の後端に設けた2つのダクトファン4,4と、機体2内に配置された制御手段10と、を備えている。
【0019】
(機体2)
まず、機体2は、軸方向に延びた略柱状に形成されたものであり、その内部には、制御手段10や電源ユニット等が収容されている。この機体2は、その先端から後端に掛けて略流線形に形成されている。なお、機体2の形状は上記のような形状に限定されないが、飛行時における抵抗を少なくする上では、上記のごとき形状が望ましい。
【0020】
機体2の下端には、台座2dが設けられている。この台座2dは、飛行体1を地面等に垂直に立てておくために使用されるものである。つまり、飛行体1は、台座2dによって機体2の中心軸2aが鉛直になるように地面等に配置され、その状態から鉛直上方に離陸(垂直離陸)できるようになっている。なお、機体2が垂直着陸する場合には、台座2dが着陸の際の脚になる。
【0021】
(翼3)
機体2の側面には、一対の翼3,3が設けられている。この一対の翼3,3は、一般的な飛行機に設けられる翼と実質的に同様の配置になるように機体2の側面に取り付けられている。この一対の翼3,3は、一般的な飛行機に設けられる翼と実質的に同様の構造を有している。具体的には、機体2の軸方向に沿って推力が加わった場合に、一対の翼3,3の表面と略直交する方向に揚力が発生するような形状に形成されている。
【0022】
(ダクトファン4)
機体2の後端には、推力源である2つのダクトファン4,4が設けられている。各ダクトファン4,4は、機体2の台座2dに揺動可能に取り付けられている。例えば、各ダクトファン4,4は、ジンバル等を有しており、このジンバル等を介して機体2の台座2dに取り付けられている。このため、ジンバル等を作動させることによって、2つのダクトファン4,4の推力の方向を、機体2の中心軸2aに対して所望の角度に調整することができる。したがって、2つのダクトファン4,4の推力とその推力の方向を変化させれば、機体2に加わる推力(揚力)を制御できる。なお、2つのダクトファン4,4の推力の方向を変化させることを、推力偏向という場合がある。
【0023】
このため、両ダクトファン4,4の傾きを調整して、両ダクトファン4,4に同じ推力を発生させるようにすれば、機体2の中心軸2aに沿った推力を発生させることができる。つまり、機体2の中心軸2aを鉛直に維持した状態で機体2を上昇させることができる。また、両ダクトファン4,4に発生させる推力を調整すれば、機体2の中心軸2aを鉛直に維持した状態で、機体2を空中に静止させる(ホバリング)させることができる。
【0024】
そして、風などの外乱によって機体2の姿勢が変化した場合(例えば鉛直方向から傾いた場合)でも、2つのダクトファン4,4の傾きを調整して機体2に対して加わる推力の方向を制御すれば、機体2を鉛直に維持することができる。
【0025】
なお、2つのダクトファン4,4は、ジンバル等によってその中心軸4aを機体2の中心軸2aと平行にした際に(以下、この状態をダクトファン4の基準状態という)、2つのダクトファン4,4の中心軸4aと機体2の中心軸2aが同一平面上に位置するように配置されていることが望ましい。かかる配置とすれば、2つのダクトファン4,4を基準状態にした場合には、2つのダクトファン4,4が発生する推力の方向と機体2の中心軸2aの方向が平行となるので、機体2の姿勢制御を実施しやすくなるという利点が得られる。
【0026】
また、2つのダクトファン4,4において推力偏向を生じさせる方法はとくに限定されない。上述したように、ジンバル等によってダクトファン4自体の傾きを変化させてもよいし、ダクトファン4の噴き出し口にフィン等を設けて、推力偏向してもよい。
【0027】
さらに、飛行体1に設けるダクトファン4の数は、2つに限られず、一つでもよいし、3つ以上設けてもよい。ダクトファン4の数を多くすれば、同じダクトファン4を使用した場合には発生する推力を大きくできる。また、機体2に同じ推力を発生させる場合であれば、各ダクトファン4を小型化できる。そして、ダクトファン4を一つだけ設ける場合には、機体2の中心軸2a上にダクトファン4の中心軸が位置するように設ければよい。また、ダクトファン4を3つ以上設ける場合には、各ダクトファン4が、機体2の中心軸2aに対して回転対称かつ等角度間隔になるように配置すれば、機体2に対して安定した推力(揚力)を発生させることができる。
【0028】
(制御手段10)
そして、飛行体1は、推力源である2つのダクトファン4,4および2つのダクトファン4,4を保持するジンバル等(以下単にダクトファン4,4という)の作動を制御する制御手段10を備えている。この制御手段10は、機体2の内部に電源ユニット等とともに収容されており、2つのダクトファン4,4に電気的に接続されている。つまり、2つのダクトファン4,4は、制御手段10からの指令に基づいて、電源ユニットから供給される電力によって駆動するようになっている。
【0029】
この制御手段10は、機体2の姿勢を略鉛直状態で維持して飛行体1を飛行させる鉛直姿勢維持機能11と、機体2を非鉛直にした状態(例えば水平にした状態)で飛行させる飛行制御機能12と、鉛直姿勢維持機能11と飛行制御機能12を切り替える切換機能13と、を備えている。
【0030】
したがって、台座2aによって機体2の中心軸2aが鉛直になるように飛行体1を地面等に配置し、制御手段10の鉛直姿勢維持機能11を作動させれば、2つのダクトファン4,4の推力によって飛行体1を機体2の中心軸2a方向に沿って浮上させることができる。つまり、飛行体1を、鉛直姿勢のまま垂直離陸させることができる。
【0031】
垂直離陸した後、鉛直姿勢維持機能11が作動していれば、飛行体1は空中に浮遊した状態になっても、機体2を鉛直姿勢に維持することができる。具体的には、鉛直姿勢維持機能11によって2つのダクトファン4,4の推力とその推力の方向が制御されるので、機体2を鉛直姿勢に維持することができる。したがって、2つのダクトファン4,4の推力と推力の方向を制御すれば、機体2の中心軸2aを略鉛直な状態に維持したまま(鉛直姿勢のまま)、飛行体1を空中に静止(ホバリング)させておくことができる。
【0032】
そして、ホバリング状態から、2つのダクトファン4,4の推力とその推力の方向を調整すれば、飛行体1を、機体2の中心軸2aを鉛直に維持したまま(鉛直姿勢のまま)、着陸させることができる。つまり、飛行体1を、鉛直姿勢のまま垂直着陸させることもできる。
【0033】
また、機体2が水平状態になっている状態(非鉛直姿勢の状態)で制御手段10の飛行制御機能12を作動させれば、機体2を水平にしたまま(非鉛直姿勢のまま)、飛行体1を飛行させることができる。つまり、一対の翼3,3に飛行体1が水平飛行を維持できる程度の揚力が発生するだけの推力が発生するように飛行制御機能12によって2つのダクトファン4,4の推力と推力の方向を制御すれば、飛行体1を水平飛行させることができる。そして、飛行体1が水平飛行している状態で、飛行制御機能12によって2つのダクトファン4,4の推力や推力の方向を制御すれば、機体2の姿勢や飛行方向などを調整することができる。
【0034】
(制御手段10の詳細説明)
上記のように、飛行体1は、制御手段10によって2つのダクトファン4,4の作動を制御することによって、鉛直姿勢の飛行状態(垂直離着陸や鉛直状態でのホバリング)と非鉛直姿勢の飛行状態のいずれの状態でも飛行することも可能となっている。そして、制御手段10が以下のような制御を実施することによって、鉛直姿勢の飛行状態から非鉛直姿勢の飛行状態に飛行体1の飛行状態を移行することができるようになっている。
【0035】
以下では、制御手段10を構成する各機能と、この機能によって、鉛直姿勢の飛行状態から非鉛直姿勢の飛行状態に飛行体1の飛行状態を移行する制御について説明する。
【0036】
(センサの説明)
まず、制御手段10が飛行状態の制御を実施する上で必要となるセンサ、つまり、飛行体1の状態を検出するセンサを説明する。
【0037】
制御手段10は、機体2に発生する揚力(言い換えれば一対の翼3,3に発生する揚力)や速度、機体2の傾き等を検出する複数のセンサを有しており、この複数のセンサからの信号に基づいて、各機能による制御や制御の切替えを実施している。
【0038】
制御手段10が備えるセンサとして、例えば、Inertial Measurement Unit(慣性計測装置:IMU)や加速度センサ、圧力センサ、ジャイロセンサ等を挙げることができる。かかるセンサは、市販のセンサ等、公知のものを採用することができ、各センサを設けることによって、以下の状況を把握することができる。
【0039】
IMUは、機体2の3軸方向の加速度や3軸周りの角速度等を検出することができる。機体2の3軸方向の加速度や3軸周りの角速度等が得られれば、制御手段10は、飛行体1の移動速度や機体2の傾きを算出することができる。
【0040】
加速度センサは、飛行体1の加速度を検出することができる。飛行体1の加速度が得られれば、制御手段10は、飛行体1の移動速度や飛行体1に加わる外力を算出することができる。
【0041】
圧力センサは、飛行体1に加わる外力を検出することができる。飛行体1に加わる外力が検出できれば、制御手段10は、検出した圧力に基づいて飛行体1の移動速度や飛行体1に発生する揚力を算出することができる。
【0042】
飛行体1の機体2や翼3にピトー管等の圧力センサを設けて、動圧や静圧を測定すれば、飛行体1の速度を求めることができる。
【0043】
また、飛行体1の速度を求めることができれば、以下の式1を用いて、揚力を算出することもできる。なお、式1において、ρが空気の密度、Vは飛行体1の速度、Sは飛行体1の代表面積(飛行体1を正面から見たときの投影面積)、Cは揚力係数を意味している。揚力係数は翼の形状によって変化する係数であり、実験により定められる係数である。

式1: L=1/2ρVSC
【0044】
また、翼3の骨組みにロードセルや圧力センサ等を設ければ、翼3に加わる力、つまり、翼3に発生する揚力や推力を直接求めることも可能である。
【0045】
ジャイロセンサは、飛行体1の移動による角速度を検出することができる。飛行体1の移動による角速度が検出できれば、制御手段10は、検出した角速度に基づいて、飛行体1の傾きを算出することができる。つまり、飛行体1の機体2の中心軸2aが鉛直方向に対してなす角度(傾斜角度)を算出することができる。
【0046】
なお、上記各センサの説明において算出できる情報は、あくまでも例示である。使用するセンサの特性や各センサの設置状況(設置位置等)によって、センサが検出した情報から算出できる飛行体1の状態は種々異なり、必ずしも上記のものに限定されない。
【0047】
また、制御手段10が有するセンサも上述したセンサに限られず、制御手段10は他のセンサを備えていてもよい。
【0048】
つぎに、制御手段10が実施する飛行状態の制御について説明する。
【0049】
(鉛直姿勢維持機能11)
鉛直姿勢維持機能11は、機体2が飛行している状態において、その中心軸2aを鉛直に維持するように(つまり鉛直姿勢を維持するように)、2つのダクトファン4,4の作動を制御するものである。具体的には、鉛直姿勢維持機能11は、上述したセンサからの信号に基づいて機体2の傾斜角度等を算出し、算出された傾斜角度等に基づいて、2つのダクトファン4,4の推力と推力の方向を変化させて、機体2が鉛直姿勢を維持するように制御する。
【0050】
なお、鉛直姿勢維持機能11は、機体2を鉛直状態に維持したまま一定の高さで静止させるホバリング状態と、機体2を鉛直状態に維持したまま上昇下降する状態の両方を実施させることができる機能を有している。
【0051】
機体2の鉛直状態での飛行を維持するように、鉛直姿勢維持機能11が2つのダクトファン4,4の推力や推力の方向を制御する方法には、公知の方法を採用することができる。例えば、PID制御や状態フィードバック、H∞制御、古典制御、現代制御、最適制御、適応制御、ファジィ制御等の制御を採用することができる。とくに、上記センサからの信号に基づいてPID制御によって鉛直姿勢の状態を維持するようにすれば、制御が容易となるし、鉛直姿勢時の安定性が向上するという利点が得られる。
【0052】
また、以下の論文に記載されている制御によって、飛行体1を鉛直姿勢の状態に維持することが可能である。
1)“Control of Ducted Fan Flying Object Using Thrust Vectoring”, Masafumi MIWA et al., Journal of System Design and Dynamics Vol.6, No.3, pp.322-334, 2012
2)“Ducted Fan Flying Object with Normal and Reverse Ducted Fan Units”, Masafumi MIWA et al., International Journal of Robotics and Mechatronics Vol.1, No.1, pp.8-15, 2014
【0053】
なお、PID制御や状態フィードバック、H∞制御、古典制御、現代制御、最適制御、適応制御、ファジィ制御等の公知の制御によって、機体2を鉛直姿勢の状態の維持する場合、上記センサのうち、少なくとも、IMUや加速度センサ、ジャイロセンサを使用することができる。
【0054】
(飛行制御機能12)
飛行制御機能12は、機体2を水平(または非鉛直姿勢)に維持した状態で飛行できるように制御する機能を有している。具体的には、飛行体1が所定の姿勢で飛行を維持することができるように、2つのダクトファン4,4の推力と推力の方向を制御する機能を有している。
【0055】
飛行体1が所定の姿勢で飛行を維持するとは、飛行中における上昇や下降、旋回などを実施しても、失速せずに飛行を継続できる状態を意味している。
なお、飛行制御機能12による制御が実施されている状態において、飛行体1が旋回や上昇下降する際に一時的に鉛直姿勢になっても、鉛直姿勢維持機能11に制御を切り替える信号等が入力されなければ、飛行制御機能12による制御は維持される。
【0056】
飛行制御機能12が、飛行体1が所定の姿勢を維持して飛行するように制御する方法としては、種々の方法を採用することができる。例えば、一般的な自動航行システムで採用されている制御を採用することができる。また、上記センサからの信号に基づいて、PID制御や状態フィードバック、H∞制御、古典制御、現代制御、最適制御、適応制御、ファジィ制御等を実施して、所定の飛行状態を維持することができる。
【0057】
(切換機能13)
切換機能13は、上述した鉛直姿勢維持機能11から飛行制御機能12に切り替える機能を有している。具体的には、鉛直姿勢維持機能11によって鉛直姿勢を維持した状態で飛行体1が浮遊しているとする。この状態で外部からの信号等により切換機能13が水平飛行に移行する指令を受けると、水平飛行の状態となるように機体2の姿勢を変化させる機能を切換機能13は有している。具体的には、切換機能13は、2つのダクトファン4,4の推力と推力の方向を制御して機体2の姿勢を変化させる。そして、機体2の姿勢が水平飛行可能になると、飛行制御機能12による水平飛行に切り替える機能を切換機能13は有している。
【0058】
(姿勢変更について)
切換機能13は、外部から水平飛行に移行する指令を受けると、以下のように各部を制御して、飛行体1を鉛直姿勢の飛行状態から非鉛直姿勢の飛行状態に移行させる。
以下の説明では、鉛直姿勢維持機能11によってホバリング状態となっている状態から、水平姿勢の飛行状態に移行する場合を説明する。
【0059】
(高さを維持した状態から水平飛行に移動する場合)
まず、鉛直姿勢の飛行状態から非鉛直姿勢の飛行状態に移行する場合、飛行体1の高さを一定に保った状態のまま、鉛直状態から水平飛行に移動させるようにしてもよい。具体的には、飛行体1は、機体2の一定の高さを維持しつつ、水平方向に移動しながら水平飛行に移動させるようにしてもよい。この場合には、機体2の上方に十分な空間がなくても、鉛直姿勢の飛行状態から非鉛直姿勢の飛行状態に移行することが可能となる。
【0060】
以下、上記のように鉛直姿勢の飛行状態から非鉛直姿勢の飛行状態に移行する場合の制御について説明する(図1図3(A)参照)。
【0061】
まず、切換機能13は、鉛直状態から水平飛行に移行する指令を受けると、鉛直姿勢維持機能11を解除する。そして、機体2が鉛直方向に対して傾斜するように、2つのダクトファン4,4の推力の方向を変化させて、推力偏向を実施する。そして、機体2が鉛直方向に対して傾斜を開始すると、切換機能13は、IMU等が検出する機体2が傾く角速度に基づいて、機体2が所定の遷移角度になったときに、遷移姿勢制御機能14を作動させる。なお、遷移角度はとくに限定されず、例えば、遷移角度は鉛直方向に対して、20〜45°程度が望ましい。
【0062】
遷移姿勢制御機能14では、機体2が傾く角速度を検出しつつ、2つのダクトファン4,4の作動を制御する。つまり、推力偏向を実施しつつ、2つのダクトファン4,4が発生する推力を上昇させる。具体的には、2つのダクトファン4,4の推力および推力の方向を、一対の翼3,3に発生する揚力では機体2が鉛直方向には上昇しないが、機体2の姿勢が緩やかに鉛直方向から傾くように制御する。このとき、揚力の水平方向成分によって、機体2は水平方向に移動するようになる。
【0063】
やがて、機体2が切替角度となると、遷移姿勢制御機能14から飛行制御機能12に切り替わり、2つのダクトファン4,4は、飛行体1が所定の姿勢で飛行するように制御される。つまり、飛行体1は、水平飛行状態で飛行するようになる。
【0064】
なお、機体2の傾きが切替角度となる前に、一対の翼3,3に発生する揚力が所定の大きさ以上となるように、2つのダクトファン4,4の推力を切換機能13が調整することが望ましい。この所定の大きさ以上の揚力とは、機体2を水平にした状態でも飛行できる揚力を意味している。切替角度においてかかる揚力が発生するようになっていれば、飛行制御機能12を作動させた際に、飛行体1は安定して水平飛行を維持することができる。
【0065】
なお、上述した切替角度はとくに限定されず、例えば、鉛直方向に対して、20〜45°程度が望ましい。
【0066】
(遷移姿勢制御機能14による制御の具体例)
上述した遷移姿勢制御機能14では、機体2が上昇せずしかも急激に傾かないように2つのダクトファン4,4が発生する推力や推力の方向を変化させている。この制御を成立させる理論を以下に説明する。
【0067】
(前提条件)
まず、飛行体1の機体2の重心Gと揚力L中心が一致すると仮定する。
なお、重心Gと揚力L中心は必ずしも一致していなくてもよいが、重心Gと揚力L中心が一致していれば、制御が容易になる。
【0068】
(ホバリング)
まず、飛行体1の機体2の中心軸2aが鉛直方向と一致している状態では、機体2に対して水平方向には力が働かない。この状態では、2つのダクトファン4,4が発生する推力Tと飛行体1の機体2に加わる重力mg(m:飛行体1の質量)が釣り合う(T−mg=0)ことでホバリング状態が維持される(図3(A)の左端の図参照)。
【0069】
(水平飛行)
一方、機体2が水平になると、垂直方向には揚力Lと重力mgが働き、水平飛行を維持する場合には、L−mg=0の関係を満たす(図3(A)の右端の図参照)。
【0070】
(姿勢変化過程)
機体2が鉛直姿勢となっている状態から水平姿勢の状態に遷移する場合には、その過程で機体2が傾斜する(図3(A)の真ん中の図参照)。
【0071】
機体2が傾斜することによって、機体2に対して、その水平方向には、推力Tの水平方向成分と揚力Lの水平方向成分が作用する。つまり、以下の式2の関係が成立することになる。なお、式2において、βは鉛直方向に対する機体2の傾斜角度であり、θは鉛直方向に対する推力偏向の角度である。推力偏向の角度とは、機体2の中心軸2aとダクトファン4が発生している推力の方向(空気の吹き出し方向)とのなす角度を意味している。

式2:Tsin(β―θ)−Lcos(β)>0
【0072】
また、機体2が傾斜することによって、機体2に対して、その垂直方向には、推力Tの垂直方向成分と揚力Lの垂直方向成分と重力mgが作用する。つまり、機体2に働く力によって、以下の式3の関係が成立することになる。

式3:Tcos(β―θ)−Lsin(β)≧0
【0073】
さらに、機体2が傾斜することによって、ダクトファン4,4は機体2の重心Gの鉛直下方からズレた位置に位置することになる。つまり、推力Tの作用点が機体2の鉛直下方からズレた位置に位置することになる。すると、機体2には、ダクトファン4,4が発生する推力によって機体2を傾斜させるトルクが発生する。そのトルクの大きさは、Tsinθr(式4、r:rは機体2の重心Gと推力Tの作用点の距離)となる。
【0074】
(鉛直姿勢の飛行状態から水平飛行状態への移行)
【0075】
ここで、機体2が鉛直姿勢となっている状態から水平姿勢の状態に遷移する場合、その過程では、ホバリング→姿勢変化過程→水平飛行、と変化するが(図3(A)参照)、姿勢変化過程において墜落しないためには、上記式3を満たす必要がある。
【0076】
また、上述したように、姿勢変化過程において、機体2の一定の高さを維持しつつ、水平方向に移動しながら水平飛行に移動するには(図3(A)参照)、式3を満たすと同時に、式2を満たすことも必要になる。つまり、揚力Lが翼3により発生する場合には、この揚力Lは機体2の速度Vの2乗に比例するので(式1参照)、上記式3を満たす揚力Lを発生するに足る速度Vを実現するため、式2も満たす推力Tをダクトファン4,4に発生させることが必要となる。
【0077】
ここで、機体2の傾斜βはセンサ等によって計測できる角度であり、この機体2の傾斜βは式4のトルクで制御可能である。
また、推力偏向の角度θ、推力Tは、ダクトファン4,4を制御することによって変更可能な物理量である。
さらに揚力Lは、機体2の速度V、つまり、ダクトファン4,4が発生する推力Tにより制御できる。
【0078】
したがって、機体2の傾斜βおよび機体2の速度Vを測定しつつ、式3を満たす推力Tおよび推力偏向の角度θとなるように、ダクトファン4,4の作動を制御することで、姿勢変化過程を経由した、鉛直姿勢の飛行状態から水平飛行状態への移行を実現することができる。つまり、機体2が一定の高さを維持しつつ水平方向に移動する姿勢変化過程を経由させて、鉛直姿勢の飛行状態から水平飛行状態に移行させることができる。
【0079】
(上昇しながら水平飛行に移動する場合)
飛行体1が鉛直姿勢の飛行状態から水平飛行に移行する際に、予め設定されている移行軌跡に沿って飛行しながら機体2の姿勢を変化させるようにしてもよい(図2および図3(B)参照)。
【0080】
この場合、切換機能13は、鉛直姿勢の飛行状態から水平飛行に移行する指令を受けると、鉛直姿勢維持機能11を解除する。そして、記憶手段に記憶されている軌跡(移行軌跡、図3(B)参照)に沿って飛行体1が飛行するように、2つのダクトファン4,4の推力と推力の方向を制御する。
【0081】
具体的には、切換機能13は、鉛直姿勢の飛行状態から水平姿勢の飛行状態に移行する指令を受けると、まず、飛行体1が上昇するように2つのダクトファン4,4の推力を増加させる。2つのダクトファン4,4の推力が増加すると、翼3に発生する揚力が増加して、機体2はその揚力の方向に移動しようとする。つまり、飛行体1は、上昇しつつ水平方向にも移動しようとする。
【0082】
かかる機体2の動きをIMU等のセンサが検出すると、その信号に基づいて、切換機能13は、機体2の中心軸2aが移行軌跡の接線方向と一致する方向に回転するように2つのダクトファン4,4の傾きを操作する。つまり、飛行体1の機体2の中心軸2aと移行軌跡の接線方向がほぼ一致した状態になるように(つまり所定の軌跡に対する仰角がほぼ0°となるように)、2つのダクトファン4,4の推力と推力の方向を制御する(図3(B)の真ん中の図参照)。
【0083】
ここで、図3(B)に示すように、移行軌跡が略弧状に設定されていれば、機体2の上昇に伴って、移行軌跡の接線方向は鉛直方向に対して傾きが大きくなる。したがって、切換機能13は、2つのダクトファン4,4の推力を大きくして機体2を上昇させつつ、鉛直方向に対する機体2の傾きが大きくなるように、2つのダクトファン4,4の推力の方向も調整する。
【0084】
やがて、機体2の傾きが水平姿勢の飛行状態に切り替わる切替角度となると、切換機能13から飛行制御機能12に切り替わり、2つのダクトファン4,4は、飛行体1が所定の姿勢で水平飛行するように制御される。つまり、飛行体1は、水平飛行状態で飛行するようになる。
【0085】
なお、機体2の傾きが切替角度となる前に、一対の翼3,3に発生する揚力が所定の大きさ以上となるように、2つのダクトファン4,4の推力を切換機能13が調整することが望ましい。この所定の大きさ以上の揚力とは、機体2を水平にした状態でも飛行できる揚力を意味している。切替角度においてかかる揚力が発生するようになっていれば、飛行制御機能12を作動させた際に、飛行体1は安定して水平飛行を維持することができる。
【0086】
また、移行軌跡は、飛行体1が高さを上昇させながら弧を描くように飛行するような軌跡を挙げることができるが、移行軌跡の曲率半径はとくに限定されないし、曲率半径は一定でなくてもよい。しかし、移行軌跡の曲率半径が小さすぎると機体2の姿勢変化が急激になるので、安定した飛行を実施させにくくなる。したがって、移行軌跡の曲率半径は、飛行体1の機体2の長さに合わせて適切な大きさに設定すればよい。
【0087】
さらに、切換機能13では、上述したように、機体2の中心軸2aが移行軌跡の接線方向と一致するように制御するが、その制御方法もとくに限定されない。例えば、上述したフィードバック制御や、PID制御、H∞制御、古典制御、現代制御、最適制御、適応制御、ファジィ制御等を採用すれば、2つのダクトファン4,4の推力および推力の方向を制御して、機体2の中心軸2aを移行軌跡の接線方向と一致させた状態となるようにすることができる。
【0088】
(スラスタを設けた例)
上記例では、2つのダクトファン4,4の推力と推力の方向を変化させることによって、鉛直姿勢の飛行状態から水平飛行状態に変化する場合を説明した。
【0089】
一方、鉛直姿勢の飛行状態から水平飛行状態への飛行体1の姿勢変化を安定させる上では、飛行体1にスラスタを設けてもよい。例えば、一対の翼3,3の翼面と交差する回転軸を有するロータを機体2の先端部に設ければ、このロータをスラスタとして機能させることができる。
【0090】
かかるスラスタを設ければ、機体2の中心軸2aが鉛直方向から傾いても、スラスタの発生する揚力によって、機体2の先端を浮かせた状態に維持しておくことができる。つまり、飛行体1が水平飛行を維持できる程度の揚力が一対の翼3,3に発生するだけの推力が発生するまでの期間は、スラスタの揚力によって機体2を所望の姿勢に維持できる。すると、機体2が急激に傾いて失速することを防止することができるので、機体2を鉛直姿勢の飛行状態から水平飛行状態に安定して移行できる。
【0091】
なお、スラスタを設けることによって、機体2や翼3の構造が若干複雑になりスラスタによってスペースが占有されてしまう。しかし、本実施形態の飛行体1に設けるスラスタは、機体2の姿勢を維持する程度の揚力を発生できればよいので、スラスタの出力はそれほど大きくなくてもよい。したがって、スラスタを設けても、機体2の構造の複雑化を防止でき、機体2において有効利用できるスペースもある程度確保できる。
【0092】
かかる構成を採用した場合には、以下のように切換機能13に各部の作動が制御される(図4参照)。
【0093】
まず、切換機能13は、鉛直姿勢の飛行状態から水平飛行状態に移行する指令を受けると、鉛直姿勢維持機能11を解除する。そして、機体2が鉛直方向に対して傾斜するように、2つのダクトファン4,4の推力の方向を制御する。
【0094】
機体2が鉛直方向に対して傾斜を開始すると、切換機能13は、機体2が所定の停止角度になったときに、スラスタを作動させる。機体2が所定の停止角度になったか否かは、例えば、ジャイロセンサ等が検出する機体2が傾く角速度に基づいて算出する。このとき、切換機能13は、機体2の傾く角速度が一定の角速度以下となるように、スラスタが発生する揚力を調整する。一定の角速度以下とは、角速度が0の場合も含んでいる。具体的には、スラスタが発生する揚力と機体2が傾く角速度を入力とするフィードバック制御等を利用して、機体2が傾く角速度が一定の範囲内に維持されるようにスラスタの作動を制御する。すると、機体2を徐々に傾斜角度まで傾けたり、機体2を所定の角度で維持したりすることができる。
【0095】
そして、飛行体1が水平飛行を維持できる程度の揚力が一対の翼3,3に発生したことが加速度センサや圧力センサ等によって検出されると、切換機能13によってスラスタの作動が停止され、飛行制御機能12を作動させる。すると、飛行体1を水平飛行の状態に移行することができる。
【0096】
なお、飛行体1が水平飛行を維持できる程度の揚力が一対の翼3,3に発生すると同時に飛行制御機能12を作動させてもよいし、かかる揚力になった後、機体2の傾きが一定以上の角度となってから飛行制御機能12を作動させてもよい。機体2の傾きを一定以上の角度、例えば、ほぼ水平状態としてから飛行制御機能12を作動させれば、飛行制御機能12を作動させた際に、水平飛行の状態を維持しやすくなる。
【0097】
また、上述した停止角度はとくに限定されない。しかし、停止角度を大きくすると、スラスタを作動させるタイミングにおいて、機体2が傾く速度が大きくなり、機体2の慣性力(下方に移動しようとする慣性力)が大きくなる。すると、スラスタが発生する揚力を急激に大きくしなければならなくなるし、スラスタが発生する揚力と上記慣性力を適切に吊り合せることが難しくなる。したがって、停止角度は、鉛直方向に対して、20〜45°程度が望ましい。
【0098】
さらに、切換機能13において、機体2の傾く角速度が一定の角速度以下となるようにスラスタが発生する揚力を調整する制御方法はとくに限定されない。公知の制御方法を採用することができる。例えば、上述したフィードバック制御や、PID制御、H∞制御、古典制御、現代制御、最適制御、適応制御、ファジィ制御等を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の飛行体の制御方法は、推進型の飛行体において垂直姿勢から水平飛行に移行する制御に適している。
【符号の説明】
【0100】
1 飛行体
2 機体
3 翼
4 ダクトファン
10 制御手段
11 鉛直姿勢維持機能
12 飛行制御機能
13 切換機能
14 遷移姿勢制御機能
図1
図2
図3
図4
図5