特許第6803605号(P6803605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803605
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】塗装制御装置及び塗装装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/025 20060101AFI20201214BHJP
   B05B 15/00 20180101ALI20201214BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B05B5/025 E
   B05B5/025 B
   B05B15/00
   B05D1/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-185603(P2016-185603)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-47432(P2018-47432A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 宣文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 善貴
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−072968(JP,A)
【文献】 特開2009−136860(JP,A)
【文献】 特開平11−057539(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00899015(EP,A1)
【文献】 特表2005−501715(JP,A)
【文献】 特開2014−018712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00−9/08,12/00−17/08
B05D 1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を噴射する状態と噴射を停止する状態とを含む複数の操作状態があるトリガを有する手吹き塗装ガンと前記塗料の噴射に係る附帯装置とを備える塗装装置に含まれる塗装制御装置であって、
複数の設定項目の設定値に基づいて前記附帯装置を制御する制御部と、
前記トリガの操作状態を検出するトリガ状態検出部と、
前記手吹き塗装ガンに設けられている操作部と、
を備え、
前記制御部は、設定値の変更対象となる前記設定項目を前記トリガの操作状態に応じて切り替え、変更対象となっている前記設定項目の設定値を前記操作部の操作に応じて変更し、
前記複数の設定項目は、前記塗料の単位時間当たりの吐出量が設定値として設定される設定項目を含み、
前記制御部は、前記トリガの操作状態が前記塗料を噴射する状態のときは、設定値の変更対象となる前記設定項目を、吐出量が設定される設定項目に切り替える、塗装制御装置。
【請求項2】
互いに異なる前記設定項目に設定される2以上の設定値の組み合わせをレシピと定義するとき、設定値として前記レシピの識別情報が設定される設定項目を更に有する、請求項1に記載の塗装制御装置。
【請求項3】
設定値の変更対象となる前記設定項目を前記トリガの操作状態に応じて切り替えるか又は前記トリガの操作状態にかかわらず一つに固定するかの設定を受け付ける操作パネルを備え、
前記制御部は、設定値の変更対象となる前記設定項目が一つに固定されている場合は、前記トリガの操作状態にかかわらず当該固定されている設定項目の設定値を変更する、請求項1又は請求項2に記載の塗装制御装置。
【請求項4】
塗料を噴射する状態と噴射を停止する状態とを含む複数の操作状態があるトリガを有する手吹き塗装ガンと、
前記塗料の噴射に係る附帯装置と、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の塗装制御装置と、
を備える塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、塗装制御装置及び塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料を噴射する手吹き塗装ガンと塗料の噴射に係る附帯装置とを備える塗装装置において、手吹き塗装ガンから附帯装置を遠隔操作するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、特許文献1に記載の静電塗装システムでは、静電ガンに静電ガン用スイッチユニットを取り付け、この静電ガン用スイッチユニットを操作することにより、高電圧発生回路から静電ガンに高電圧を供給する電力供給路に設けられている接点(附帯装置に相当)のオン/オフを遠隔操作している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−328013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に塗装装置は複数の設定項目の設定値に基づいて附帯装置を制御している。しかしながら、特許文献1に記載の静電塗装システムは静電ガンから設定値を変更できる設定項目が接点のオン/オフだけであるので、それ以外の設定項目の設定値を変更したい場合には、作業者は塗装現場から離れた場所まで行って変更しなければならない。
その場合、設定項目毎に静電ガン用スイッチユニットを静電ガンに取り付けることも考えられるが、そのようにすると静電ガンの構成が複雑になってしまうという問題がある。
【0005】
本明細書では、手吹き塗装ガンの構成を複雑にすることなく手吹き塗装ガンから多くの設定項目の設定値を変更することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される塗装制御装置は、塗料を噴射する状態と噴射を停止する状態とを含む複数の操作状態があるトリガを有する手吹き塗装ガンと前記塗料の噴射に係る附帯装置とを備える塗装装置に含まれる塗装制御装置であって、複数の設定項目の設定値に基づいて前記附帯装置を制御する制御部と、前記トリガの操作状態を検出するトリガ状態検出部と、前記手吹き塗装ガンに設けられている操作部と、を備え、前記制御部は、設定値の変更対象となる前記設定項目を前記トリガの操作状態に応じて切り替え、変更対象となっている前記設定項目の設定値を前記操作部の操作に応じて変更する。
【0007】
上記の塗装制御装置によると、作業者は手吹き塗装ガンから設定項目の設定値を変更するとき、トリガを操作することにより、設定値の変更対象となる設定項目を切り替えることができる。このため、手吹き塗装ガンの構成を複雑にすることなく手吹き塗装ガンから多くの設定項目の設定値を変更することができる。
【0008】
また、互いに異なる前記設定項目に設定される2以上の設定値の組み合わせをレシピと定義するとき、設定値として前記レシピの識別情報が設定される設定項目を更に有してもよい。
【0009】
上記の塗装制御装置によると、作業者は手吹き塗装ガンでレシピを変更することができる。
【0010】
また、前記複数の設定項目は、前記塗料の単位時間当たりの吐出量が設定値として設定される設定項目を含み、前記制御部は、前記トリガの操作状態が前記塗料を噴射する状態のときは、設定値の変更対象となる前記設定項目を、吐出量が設定される設定項目に切り替えてもよい。
【0011】
上記の塗装制御装置によると、作業者は実際に塗料を噴射しながら吐出量を変更することができるので、吐出量の変更が容易になる。
【0012】
また、設定値の変更対象となる前記設定項目を前記トリガの操作状態に応じて切り替えるか又は前記トリガの操作状態にかかわらず一つに固定するかの設定を受け付ける操作パネルを備え、前記制御部は、設定値の変更対象となる前記設定項目が一つに固定されている場合は、前記トリガの操作状態にかかわらず当該固定されている設定項目の設定値を変更してもよい。
【0013】
上記の塗装制御装置によると、作業者は、設定項目を一つに固定したい場合は操作パネルを操作することによって一つに固定することができる。
【0014】
また、本明細書によって開示される塗装装置は、塗料を噴射する状態と噴射を停止する状態とを含む複数の操作状態があるトリガを有する手吹き塗装ガンと、前記塗料の噴射に係る附帯装置と、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の塗装制御装置と、を備える。
【0015】
上記の塗装装置によると、手吹き塗装ガンの構成を複雑にすることなく手吹き塗装ガンから多くの設定項目の設定値を変更することができる。
【発明の効果】
【0016】
本明細書によって開示される技術によれば、手吹き塗装ガンの構成を複雑にすることなく手吹き塗装ガンから多くの設定項目の設定値を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る塗装装置の全体構成を示す模式図
図2】手吹き塗装ガンに設けられている操作部の模式図
図3】コントローラの電気的構成を示すブロック図
図4】操作パネルの模式図
図5】設定値変更処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
実施形態を図1ないし図5によって説明する。なお、以降の説明では実質的に同一の構成には一部を除いて図面の符号を省略している場合がある。
【0019】
(1)塗装装置の全体構成
先ず、図1を参照して、実施形態に係る塗装装置としての粉体塗装装置1の全体構成について説明する。粉体塗装装置1は塗料としての粉体塗料18をエアとともに噴射して被塗物を塗装するものであり、粉体塗料タンク10、エア供給装置11、インジェクタ12、流量絞り弁13及び14、減圧弁15、静電塗装ガン16(手吹き塗装ガンの一例)、コントローラ17、エアホース19〜21、搬送ホース27、静電塗装ガン16とコントローラ17とを電気的に接続する複数の電線28などを備えている。
【0020】
粉体塗料タンク10は下部が多孔質板10Aによって仕切られており、多孔質板10Aの下方から除湿除油されたコンプレッサーエアが導入されている。粉体塗料タンク10内の粉体塗料18は多孔質板10Aから吐出される流動エアによって除湿され、流動状態になって分散している。
【0021】
エア供給装置11は粉体塗料18を搬送するエアを供給するものであり、エアホース19〜21を介してインジェクタ12に接続されている。具体的には、エア供給装置11に接続されているエアホース19は他端がエアホース20とエアホース21とに分岐している。分岐した一方のエアホース20はインジェクタ12のメインエアノズル22に接続されており、他方のエアホース21はサブエアノズル23に接続されている。
【0022】
減圧弁15はエアホース19に設けられている。減圧弁15はエア供給装置11から供給されるエアの圧力が所定の圧力以上になると開弁してエアを外に逃がすものである。
流量絞り弁13はエアホース20に設けられており、流量絞り弁14はエアホース21に設けられている。流量絞り弁13及び14は例えば電磁弁であり、コントローラ17によって絞り量(言い換えると弁の開度)が調整される。なお、流量絞り弁13及び14は絞り量を調整できるものであれば電磁弁に限られない。
【0023】
インジェクタ12は粉体塗料タンク10の上部に設置されている。インジェクタ12は粉体塗料タンク10内の粉体塗料18をベンチュリーの原理で吸引し、搬送ホース27を介して静電塗装ガン16にエア搬送するものである。インジェクタ12には前述したメインエアノズル22とサブエアノズル23とが設けられている。
【0024】
静電塗装ガン16は粉体塗料18を帯電させて噴射するものであり、ガン本体16A、トリガ16B、図示しないトリガセンサ、ガン本体16A内の粉体流路内に設けられている図示しない電極、操作部16C(図2参照)、グリップ16Dなどを備えている。
トリガ16Bは粉体塗料18の噴射/停止を切り替えるものである。本実施形態ではトリガ16Bが引かれると粉体塗料18が噴射され、トリガ16Bが引かれていないときは粉体塗料18が噴射されないものとする。
【0025】
図示しないトリガセンサはトリガ16Bの操作状態を検出するためのものである。トリガセンサは例えばトリガ16Bに設けられている磁石とガン本体16Aに設けられている近接センサとで構成されており、トリガ16Bが引かれると近接センサがオンになり、トリガ16Bが引かれていないときは近接センサがオフになる。なお、トリガセンサはトリガ16Bの操作状態を検出できるものであれば近接センサ以外のセンサであってもよい。
図示しない電極は粉体塗料18を帯電させるためのものであり、電線28を介してコントローラ17に接続されている。電極としては例えばコロナ電極が用いられる。
【0026】
図2に示すように、操作部16C(上ボタン25及び下ボタン26)は静電塗装ガン16の背面においてグリップ16Dの上側に設けられている。操作部16Cは後述する設定項目の設定値を変更するためのものである。作業者はグリップ16Dを握ったままトリガ16Bの操作と操作部16Cの操作とを片手で同時に行うことができる。なお、操作部16Cは上ボタン25や下ボタン26などのボタンスイッチに限定されるものではなく、例えばボリュームスイッチのようなものであってもよい。
【0027】
(2)コントローラ
次に、図3を参照して、コントローラ17について説明する。コントローラ17は制御部30、電圧供給部31、電流値検出部32、操作検出部33、トリガ状態検出部34、絞り弁制御部35、操作パネル36などを備えている。ここで、電圧供給部31は附帯装置の一例である。また、流量絞り弁13と絞り弁制御部35との組み合わせ、及び、流量絞り弁14と絞り弁制御部35との組み合わせもそれぞれ附帯装置の一例である。
【0028】
制御部30はCPU30A、ROM30B、RAM30Cなどを備えており、操作パネル36で設定された設定値に基づいて粉体塗装装置1の各部を制御する。制御部30、静電塗装ガン16に設けられている操作部16C、及び、トリガ状態検出部34は塗装制御装置の一例である。
【0029】
電圧供給部31は電線28を介して静電塗装ガン16の電極に接続されており、制御部30による制御の下で電極に電圧を引加する。
電流値検出部32は電線28を介して電極に接続されており、電極に流れる電流の電流値を検出する。
操作検出部33は電線28を介して静電塗装ガン16の操作部16Cに接続されており、操作部16Cの操作を検出する。
【0030】
トリガ状態検出部34は静電塗装ガン16の前述したトリガセンサに接続されており、トリガ16Bの操作状態を検出する。
絞り弁制御部35は流量絞り弁13及び14にそれぞれ接続されており、制御部30による制御の下で流量絞り弁13及び14の絞り量を調整する。
操作パネル36は附帯装置を制御するための設定値を作業者が設定項目毎に設定あるいは変更するためのものである。
【0031】
(3)操作パネル及び設定項目
図4を参照して、操作パネル36及び設定項目について具体的に説明する。操作パネル36には設定項目毎にその設定項目の設定値を表示する表示部40、及び、操作ボタン41(上ボタン41A及び下ボタン41B)が設けられており、作業者は上ボタン41Aや下ボタン41Bを操作することによって各設定項目の設定値を設定あるいは変更することができる。
【0032】
具体的には、本実施形態では設定項目として電圧値(kV)、電流値(μA)、吐出量(%)、塗料搬送風量(L/min)などがある。
電圧値は静電塗装ガン16の電極に印加する電圧の値が設定値として設定される設定項目であり、電流値は静電塗装ガン16の電極に流れる電流の電流値が設定値として設定される設定項目である。以下、具体的に説明する。
【0033】
一般に電極に流れる電流は電圧が一定であっても静電塗装ガン16と被塗物との距離によって変化する。制御部30は電流値検出部32によって検出される電流値を監視し、電流値が設定値を超える場合は電圧を下げることによって電流値が設定値を超えないように制御する。逆に、制御部30は、電流値が設定値を下回っている場合は電圧を上げることによって電流値を上げる。ただし、制御部30は、電圧値が設定値に達している場合は電流値が設定値に達していなくても電圧をそれ以上上げない。すなわち、電圧値及び電流値はそれぞれ最大値であり、必ずしも設定値に維持されるものではない。
【0034】
吐出量は単位時間当たりに吐出する粉体塗料18の量が設定値として設定される設定項目であり、塗料搬送風量は単位時間当たりにインジェクタ12に供給されるエアの総量が設定値として設定される設定項目である。以下、具体的に説明する。
【0035】
一般に粉体塗料18の吐出量は重さではなく最大吐出量を100%としたときの割合として設定される。制御部30は、設定されている吐出量に応じて流量絞り弁13の絞り量を調整することにより、吐出量が設定された割合になるように制御する。
塗料搬送風量は流量絞り弁14の絞り量によって調整される。例えば吐出量の設定値が60%であり、塗料搬送風量の設定値が60L/minであるとする。そして、吐出量を60%にするためにはエアホース20に50L/minを供給する必要があるとする。その場合、制御部30はエアホース20に供給されるエア量が50L/minになるように流量絞り弁13の絞り量を調整する。
【0036】
そして、制御部30はエアホース21に供給されるエア量が、塗料搬送風量(60L/min)からエアホース20に供給されるエア量(50L/min)を減じたエア量である10L/min(=60L/min―50L/min)になるように流量絞り弁14の絞り量を調整する。これにより、吐出量を60%としつつ塗料搬送風量が60L/minに調整される。
【0037】
ところで、一般に上述した各設定項目(すなわち電圧値、電流値、吐出量、搬送風量)の設定値は被塗物毎に決まった組み合わせになることが多い。その場合、被塗物が切り替わる毎に各設定項目の設定値を個別に変更しなければならないとすると作業者にとって負担である。そこで、操作パネル36ではそれら複数の設定項目に設定される4つの設定値の組み合わせであるレシピを選択することによって複数の設定項目の設定値を一括して変更することもできる。以下にレシピの例を示す。
【0038】
レシピ番号1=60kV、50μA、60%、60L/min
レシピ番号2=50kV、40μA、30%、80L/min
レシピ番号3=60kV、70μA、50%、50L/min
【0039】
上述したように各レシピにはそれぞれレシピ番号(識別情報の一例)が付与されており、作業者は操作パネル36を操作してレシピ番号を選択することによってレシピを選択することができる。ここではレシピ番号が設定される項目も設定項目の一つであるとする。
【0040】
(4)静電塗装ガンを用いた設定値の変更
前述したように作業者は操作パネル36を操作することによって各設定項目の設定値を設定あるいは変更することができるが、本実施形態ではそれに加えて静電塗装ガン16の操作部16Cを操作することによって設定項目の設定値を変更することもできる。言い換えると静電塗装ガン16から操作パネル36を遠隔操作することもできる。
【0041】
ただし、その場合、設定値を変更することができる設定項目が一つに固定されていると作業者にとって不便な場合もある。そこで、本実施形態では、作業者は静電塗装ガン16のトリガ16Bを操作することによって設定項目を切り替えることができる。
具体的には、静電塗装ガン16のトリガ16Bの操作状態には引かれている状態(粉体塗料18が噴射される状態)と引かれていない状態(噴射が停止している状態)との二つの状態がある。各操作状態にはそれぞれ互いに異なる設定項目が対応付けられており、作業者はトリガ16Bの操作状態を所望の設定項目が対応付けられている状態にすることにより、設定項目を選択することができる。そして、作業者は所望の設定項目が対応付けられている操作状態にした状態で操作部16Cを操作することにより、その設定項目の設定値を変更することができる。
【0042】
ここで、粉体塗装装置1では、静電塗装ガン16で設定値を変更する設定項目をトリガ16Bの操作状態にかかわらず一つに固定しておくこともできる。トリガ16Bの操作状態に設定項目を対応付けておくか又はトリガ16Bの操作状態にかかわらず設定項目を一つに固定しておくかは、作業者が操作パネル36の図示しない所定の操作ボタンを操作して予め設定しておくことができる。
また、トリガ16Bの操作状態にかかわらず設定項目を一つに固定しておく場合、作業者は操作パネル36の図示しない所定の操作ボタンを操作して一つに固定する設定項目を予め選択しておくことができる。
【0043】
次に、図5を参照して、静電塗装ガン16を用いて設定値を変更するために制御部30によって実行される設定値変更処理について説明する。本処理は無限ループであり、粉体塗装装置1に電源が投入されてから電源が遮断されるまで継続して実行される。なお、本処理を無限ループとするのではなく、1μ秒などの一定周期で実行される処理としてもよい。
【0044】
理解を容易にするため、ここではトリガ16Bの操作状態にかかわらず設定項目が吐出量に固定されている場合、トリガ16Bの操作状態にかかわらず設定項目がレシピに固定されている場合、及び、トリガ16Bの操作状態に吐出量とレシピとが対応付けられている場合の3つがある場合を例に説明する。
【0045】
S101では、制御部30は操作部16Cが操作されたか否かを判断し、操作された場合はS102に進み、操作されていない場合は本ステップを繰り返す。
S102では、制御部30は設定項目がトリガ16Bの操作状態にかかわらず吐出量に固定されているか否かを判断し、吐出量に固定されている場合はS103に進み、吐出量に固定されていない場合はS104に進む。
【0046】
S103では、制御部30は操作部16Cの操作に応じて吐出量の設定値を増減(すなわち変更)する。
S104では、制御部30は設定項目がトリガ16Bの操作状態にかかわらずレシピに固定されているか否かを判断し、レシピに固定されている場合はS106に進み、レシピに固定されていない場合(すなわちトリガ16Bの操作状態に吐出量とレシピとが対応付けられている場合)はS105に進む。
【0047】
S105では、制御部30はトリガセンサがオンであるか否か(言い換えるとトリガ16Bが引かれているか否か)を判断し、オンの場合(すなわちトリガ16Bが引かれている場合)はS103に進み、オフの場合(すなわちトリガ16Bが引かれていない場合)はS106に進む。
S106では、制御部30は操作部16Cの操作に応じてレシピ番号を増減(すなわち変更)する。
【0048】
なお、ここでは理解を容易にするため3つの場合を例に説明したが、一つに固定する設定項目として、あるいはトリガ16Bの操作状態に対応付ける設定値として電圧値、電流値、搬送風量なども設定できる場合はそれに応じて条件を分岐させればよい。
【0049】
(5)実施形態の効果
以上説明した実施形態に係る塗装制御装置によると、作業者は静電塗装ガン16から設定項目の設定値を変更するとき、トリガ16Bを操作することにより、設定値の変更対象となる設定項目を切り替えることができる。このため、静電塗装ガン16の構成を複雑にすることなく静電塗装ガン16から多くの設定項目の設定値を変更することができる。
【0050】
更に、塗装制御装置によると、作業者は静電塗装ガン16でレシピを変更することができる。
【0051】
更に、塗装制御装置によると、トリガ16Bが引かれている状態(すなわち粉体塗料18を噴射する状態)のときは設定値の変更対象となる設定項目を吐出量に切り替えるので、作業者は実際に粉体塗料18を噴射しながら吐出量を変更することができる。このため吐出量の変更が容易になる。
【0052】
更に、塗装制御装置によると、作業者は、トリガ16Bの操作状態にかかわらず設定項目を一つに固定したい場合は操作パネル36を操作することによって一つに固定することができる。
【0053】
また、実施形態に係る粉体塗装装置1によると、静電塗装ガン16の構成を複雑にすることなく静電塗装ガン16から多くの設定項目の設定値を変更することができる。
【0054】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
【0055】
(1)上記実施形態ではトリガ16Bが引かれている状態に設定項目として吐出量が対応付けられており、引かれていない状態に設定項目としてレシピが対応付けられている場合を例に説明したが、各操作状態に対応付ける設定項目は適宜に選択することができる。
【0056】
(2)上記実施形態では設定値の変更対象となる設定項目をトリガ16Bの操作状態に応じて切り替える場合に、トリガ16Bの操作状態と設定項目との対応関係が予め固定されている。これに対し、トリガ16Bの操作状態と設定項目との対応関係を作業者が操作パネル36で任意に設定できるようにしてもよい。
【0057】
(3)上記実施形態では塗料として粉体塗料18を例に説明したが、塗料は液体塗料であってもよい。
【0058】
(4)上記実施形態ではトリガ16Bの操作状態として引かれている状態と引かれていない状態との2つを例に説明したが、トリガ16Bの操作状態は3つ以上あってもよい。例えば、液体塗料をエアによって噴射する手吹き塗装ガンの場合、トリガ16Bを引いていない状態ではエアが噴射されず、トリガ16Bを半引きするとエアだけが噴射され、トリガ16Bを全引きするとエアとともに液体塗料が噴射される場合がある。すなわちトリガ16Bに3つの操作状態がある場合がある。その場合はそれら3つの操作状態に異なる設定項目を対応付けてもよい。
【0059】
(5)上記実施形態では設定値の変更対象となる設定項目をトリガ16Bの操作状態に応じて切り替えるか又はトリガ16Bの操作状態にかかわらず一つに固定するかを作業者が操作パネル36で設定できる場合を例に説明した。これに対し、設定項目がトリガ16Bの操作状態に応じて切り替えられる構成に固定されていてもよい。
【0060】
(6)上記実施形態では操作部16Cが静電塗装ガン16に固定で組み付けられている場合を例に説明したが、操作部16Cは静電塗装ガン16に着脱可能に取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…粉体塗装装置(塗装装置の一例)、13,14…流量絞り弁(附帯装置の一例)、16…静電塗装ガン(手吹き塗装ガンの一例)、16B…トリガ、16C…操作部(塗装制御装置の一例)、18…粉体塗料(塗料の一例)、30…制御部(塗装制御装置の一例)、31…電圧供給部(附帯装置の一例)、34…トリガ状態検出部(塗装制御装置の一例)、35…絞り弁制御部(附帯装置の一例)、36…操作パネル
図1
図2
図3
図4
図5