(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
作業対象物の作業箇所に泡状物を放出する吐出ノズルを支持し、遠隔操作によって該吐出ノズルを制御するノズル制御機構を備える泡状物放出機と、該泡状物放出機に高圧水または高圧空気を圧送する圧送機構と、を有する粉塵抑制システムであって、
前記泡状物放出機は、前記泡状物の原料となる原液を貯留する原液タンクと、前記吐出ノズルに連通し、前記原液を前記高圧水または高圧空気に混合させる混合器と、を備え、
前記圧送機構は、前記混合器に前記高圧水または高圧空気を圧送し、
前記原液タンクが配置された後の前記泡状物放出機の重心位置の高さは、該原液タンクのない状態の該泡状物放出機の重心位置の高さ以下とされている
ことを特徴とする粉塵抑制システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で示す泡状物放出機では、泡状物の原料である原液が作業現場の地面に配置された圧送機構により圧送される。つまり、特許文献1では、泡状物放出機と圧送機構との距離が離れており、圧送機構による原液への圧力が増大している。これにより、水だけを圧送する場合に比べて、圧送機構のポンプ部における原液漏れ等を含むポンプ部の不具合(故障など)がより生じるおそれがある。このため、泡状物の原料である原液を貯留する原液タンクを泡状物放出機の近傍に配置させることが考えられるが、原液タンクの配置次第では、泡状物放出機を安定して配置することが困難となるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、前記問題点を解決するべくなされたもので、泡状物放出機から所定の作業箇所に泡状物を的確に放出可能としながら、且つ故障の可能性を少なくでき、泡状物放出機を安定して配置可能な粉塵抑制システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、作業対象物の作業箇所に泡状物を放出する吐出ノズルを支持し、遠隔操作によって該吐出ノズルを制御するノズル制御機構を備える泡状物放出機と、該泡状物放出機に高圧水または高圧空気を圧送する圧送機構と、を有する粉塵抑制システムであって、前記泡状物放出機が、前記泡状物の原料となる原液を貯留する原液タンクと、前記吐出ノズルに連通し、前記原液を前記高圧水または高圧空気に混合させる混合器と、を備え、前記圧送機構が、前記混合器に前記高圧水または高圧空気を圧送し、前記原液タンクが配置された後の前記泡状物放出機の重心位置の高さが、該原液タンクのない状態の該泡状物放出機の重心位置の高さ以下とされていることにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
本発明においては、圧送機構が、原液そのものではなく、高圧水あるいは高圧空気のいずれかを圧送する。このため、圧送機構に不具合を生じる可能性を少なくすることが可能となる。同時に、原液タンクの配置で、泡状物放出機の重心位置の高さが原液タンクのない状態の泡状物放出機の重心位置の高さよりも高くなることがない。即ち、原液タンクの配置で、結果的に泡状物放出機の転倒等のおそれを低減することが可能となる。
【0010】
なお、前記ノズル制御機構が、支持部材と、該支持部材に第1回転軸で水平面内の回転が可能となるように支持される回転部材と、該第1回転軸に直交する第2回転軸で該回転部材に傾斜可能に前記吐出ノズルを支持する傾斜部材と、を備える。そして、前記原液タンクが、前記支持部材あるいは前記回転部材に配置されていることで、原液タンクが配置された後の泡状物放出機の重心位置の高さが原液タンクのない状態の泡状物放出機の重心位置の高さ以下となる構成を、容易に実現することが可能となる。
【0011】
なお、前記混合器が、前記回転部材に取り付けられている場合には、泡状物放出機の重心位置の高さをより低くすることが可能となる。
【0012】
なお、前記混合器が、前記傾斜部材に取り付けられている場合には、混合器と吐出ノズルの連通する機構を簡素に実現することが可能となる。
【0013】
なお、前記混合器では、前記原液と前記高圧水または高圧空気との混合比率が調整可能とされている場合には、作業状況や作業環境、作業機械の状態などに対応して生成される泡状物の特徴(特に泡状物の寿命等)を調整することが可能となる。
【0014】
なお、前記混合器が、前記圧送機構が前記高圧水を圧送するときに該高圧水に前記原液を混合させる第1混合部と、該第1混合部で得られた原液混合高圧水に空気を混合させる第2混合部と、を備える場合には、第1混合部で高圧水に対する原液の正確な混合比率が安定して実現可能となる。そして、次にくる第2混合部で原液混合高圧水に空気を十分に含ませることが可能となる。つまり、このような混合器により、吐出ノズルにおいて泡状物を生成するための、より均質な泡生成流体を生成することが可能となる。
【0015】
なお、前記泡状物放出機が、前記高圧水を、前記混合器を介さずに前記吐出ノズルから前記作業箇所に吐出可能とする流路切替機構を備える場合には、原液を全く含まない高圧水を作業箇所に放出することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、泡状物放出機から所定の作業箇所に泡状物を的確に放出可能としながら、且つ故障の可能性を少なくでき、泡状物放出機を安定して配置可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態の一例を詳細に説明する。
【0019】
最初に、本実施形態に係る粉塵抑制システムが使用される作業現場について説明する。
【0020】
作業現場100には、
図1に示す如く、周囲に足場106が組まれ、足場106の外側に養生シート108が取り付けられている。足場106の内側の作業現場100には作業対象物である建築物104が位置している。建築物104では、後述する粉塵抑制システム120の泡状物放出機122から散布された泡状物BBの被覆した部分(包囲部分)である作業箇所102が、作業機械110で解体される。作業機械110は、例えば、無限軌道で方向自在に移動可能とされている。作業機械110には運転室112が設けられている。運転室112から、アーム体114の先端に設けられた作業アタッチメント116と、無限軌道と、を自在に操作することができる(運転室112で、作業者あるいは遠隔操作されたロボットが操作する)。本実施形態では、作業アタッチメント116は圧砕機であり、作業機械110はいわゆる「クラッシャー」とされている。なお、運転室112に持ち込まれた送信機(不図示)で泡状物放出機122を遠隔制御することができる(送信機は、運転室の外部で、操作されていてもよい)。なお、作業箇所102は、作業アタッチメント116が建築物104に直接的に接する部分を含むとともに、作業アタッチメント116による解体によって粉塵が直接的に発生する箇所をいう。泡状物BBは、気泡を含む流動性のある泡状物であればよい。
【0021】
次に、本発明に係る粉塵抑制システム120の概略構成について説明する。
【0022】
粉塵抑制システム120は、
図1、
図2(A)、(B)、
図3(A)、(B)に示す如く、建築物104の作業箇所102に泡状物BBを放出する吐出ノズル158を支持し、遠隔操作によって吐出ノズル158を制御するノズル制御機構130を備える泡状物放出機122と、泡状物放出機122に高圧水を圧送する圧送機構160と、を有している。そして、泡状物放出機122は、泡状物BBの原料となる原液を貯留する原液タンク150と、吐出ノズル158に連通し、原液を高圧水に混合させる混合器152と、を備える。また、圧送機構160は、混合器152に高圧水を圧送している。なお、原液タンク150が配置された後の泡状物放出機122の重心位置の高さは、原液タンク150のない状態の泡状物放出機122の重心位置CG1の高さH0以下とされている。
【0023】
なお、ノズル制御機構130を遠隔操作する図示せぬ送信機は、携帯可能な形状とされており、吐出ノズル158の向きを上下左右方向に変更し、且つ泡状物BBの吐出有無を制御できるようにされている。本実施形態では、1台の送信機で、最大で16台の泡状物放出機122を遠隔操作可能としている。
【0024】
以下に、各構成要素について詳細に説明する。
【0025】
泡状物放出機122のノズル制御機構130は、
図2(A)に示す如く、支持部材132と、回転部材134と、傾斜部材146と、を備える。回転部材134は、支持部材132に第1回転軸136Aで水平面内の回転が可能となるように支持されている。傾斜部材146は、第1回転軸136Aに直交する第2回転軸144Aで回転部材134に傾斜可能に吐出ノズル158を支持している。
【0026】
支持部材132は、鋼材でできており、
図2(A)に示す如く、リング部132Aと支持梁部132Bとシャフト部132Cとを備える。リング部132Aは円環形状であり、その底面132AAが足場106や建築物104などに直接接触する。支持梁部132Bは、リング部132A内側から径方向内側に延びる複数の板状部材であり、リング部132Aの中心に位置するシャフト部132Cに溶接されている。シャフト部132Cは、円筒形状の部材である。支持部材132は、第1回転装置136を介して回転部材134と連結されている。
【0027】
回転部材134は、アルミニウム材(アルミニウム或いはアルミニウム合金)でできており、
図2(A)に示す如く、ターンテーブル体134Aと、下部フレーム体134Bと、上部フレーム体134Cと、を備える。
【0028】
ターンテーブル体134Aは、円盤形状の部材であり、2つの貫通孔134AA、134ABを備えている。配管T4は、屈曲可能なホースであるが、圧送される高圧水に耐えられる構成となっている(以降、他の配管も同様)。貫通孔134AAは、配管T4が貫通するために設けたものである。貫通孔134ABは、第1回転装置136をターンテーブル体134Aの下面に脱着可能に取り付けた際の形状逃げのために設けたものである。ターンテーブル体134Aの上面の径方向内側には、充電池142と第2回転装置144とがそれぞれ脱着可能に配置されている。また、ターンテーブル体134Aの下面の径方向内側には、図示せぬ受信機と図示せぬ制御装置と電源アダプタ138と第1回転装置136と開閉装置140(
図3(A))とがそれぞれ脱着可能に配置されている。
【0029】
ここで、充電池142は、ノズル制御機構130全体を駆動させるための電源であり、ノズル制御機構130の電源アダプタ138に外部電源が接続できない際に用いられる。充電池142を使うことで例えば足場106等の点検の際に充電池142の交換が容易であり、且つノズル制御機構130の配置位置の変更が自在である。勿論、図示せぬ発電機に電源アダプタ138が接続されてもよい。
【0030】
受信機は、送信機からの無線信号を復号する。そして、制御装置は、受信機の出力信号に基づき、第1回転装置136と、第2回転装置144と、開閉装置140と、を制御する。
【0031】
第1回転装置136は、
図2(A)に示す如く、第1回転軸136Aと、変速機構を収納したケーシング136Bと、第1モータ部136Cと、を備える。第1回転装置136では、鋳造したケーシング136Bで、第1回転軸136Aと、第1モータ部136Cと、変速機構とを支持している。変速機構は、第1モータ部136Cの出力を減速して第1回転軸136Aから出力する構成となっている。なお、第1回転軸136Aと第1モータ部136Cとは、ケーシング136Bの同一側面側に突出するように設けられている。第2回転装置144は、第1回転装置136と同一の構成なので、説明は省略する。そして、第1回転装置136は、支持部材132に対して、回転部材134を回転させる。なお、第1回転軸136Aの軸心O1は、ターンテーブル体134A(回転部材134)の中心と一致するようにされている。
【0032】
開閉装置140は、例えばボール弁であり、配管T2から配管T4へ流れる高圧水の開閉を行う。
【0033】
下部フレーム体134Bは、
図2(A)、
図3(A)に示す如く、ターンテーブル体134Aの下面の外周に立設されている。具体的に、下部フレーム体134Bは、複数の支柱フレーム部134BAと、ターンテーブル体134Aの直径とほぼ同じ円環形状であって複数の支柱フレーム部134BAに支持されるリングフレーム部134BBと、を備える。支柱フレーム部134BAは、棒状部材であり、具体的には、受信機、制御装置、電源アダプタ138、第1回転装置136、及び開閉装置140の外側に配置されている。支柱フレーム部134BAの長さは、受信機、制御装置、電源アダプタ138、第1回転装置136、及び開閉装置140のターンテーブル体134Aの下面から占有する厚みよりも長くされている。このため、支柱フレーム部134BAの下端に接続されるリングフレーム部134BBが、受信機、制御装置、電源アダプタ138、第1回転装置136、及び開閉装置140よりも、支持部材側に位置することとなる。なお、ターンテーブル体134Aの外周には、
図4(A)の破線で示す如く、下部フレーム体134Bを覆う弾性部材(例えば板状の合成ゴム)が、全周を覆うように配置されていてもよい。
【0034】
上部フレーム体134Cは、
図2(A)、
図3(A)に示す如く、1対の逆U字形状を互いに連結した形状であり、第1回転軸136Aの軸心O1を挟んでターンテーブル体134Aの上面に立設されている。具体的に、上部フレーム体134Cは、4つの立設フレーム部134CAと、2つの立設フレーム部134CAの端部を互いに接続する円弧フレーム部134CBと、円弧フレーム部134CB同士を連結する連結フレーム部134CCと、を備えている。立設フレーム部134CAは、第2回転装置144の第2回転軸144Aが上側となり第2モータ部144Cが下側となる状態で、脱着可能に第2回転装置144を支持する構成となっている。即ち、上部フレーム体134Cは、第2回転軸144Aが第1回転軸136Aに直交するように、第2回転装置144を支持している。このとき、第2回転装置144の第2回転軸144Aと第2回転軸144Aを回転させる第2モータ部144Cとは共に回転部材134の径方向内側に向けられている。第2回転軸144Aは、傾斜部材146を脱着可能に支持している。
【0035】
傾斜部材146は、アルミニウム材でできており、
図2(A)、
図3(A)に示す如く、導入部材147と、混合器152と、吐出ノズル158と、を支持している。つまり、混合器152と吐出ノズル158とは、傾斜部材146に取り付けられている。このため、第2回転装置144は、第2回転軸144Aで泡状物BBを放出する吐出ノズル158を回転部材134に対して傾斜可能に支持している構成である。導入部材147は、内部に高圧水を導く流路が設けられた部材であり、配管T4が接続され、混合器152に連通している。混合器152は、吐出ノズル158に連通し、泡状物BBの原料となる原液を高圧水に混合させる。なお、原液は、原液タンク150に貯留されている。吐出ノズル158は、混合器152で原液と高圧水とから生成された泡生成流体を通過させることで、建築物104の作業箇所102に泡状物BBを放出する。
【0036】
なお、ターンテーブル体134Aの下面には、回転部材134よりも比重の大きな支持部材132と、受信機と、制御装置と、第1回転装置136と、開閉装置140とが配置されている。これに対して、ターンテーブル体134Aの上面には、(第1回転装置136と同一の)第2回転装置144と、アルミニウム材でできた傾斜部材146と、導入部材147と、混合器152と、吐出ノズル158と、充電池142とが配置されている。このため、ノズル制御機構130(原液タンク150のない状態の泡状物放出機122)の重心位置CG1の高さH0は、
図3(A)に示す如く、ほぼターンテーブル体134Aの高さ近傍となっている。
【0037】
以下に、原液タンク150、混合器152、吐出ノズル158について、より詳細に説明する。
【0038】
泡状物放出機122の原液タンク150は、
図2(A)、
図3(B)に示す如く、例えば、ノズル制御機構130の外周に沿うように円弧形状とされたポリタンクである(これに限らず、原液タンクは汎用的な形状であってもよい)。原液タンク150の上面中央には、開口部150Aが設けられている。開口部150Aには、配管T3が変位自在に挿入される。ただし、実使用上において、配管T3は、吐出ノズル158がどのような向きとされても、配管T3の下端が原液タンク150の底に接触する長さとされている。一方、原液タンク150の下端には、内周面から内側に突出した2つの係合部150Bが設けられている(係合部の数は2つ以外でもよい)。係合部150Bは、凹部150BBを下面に備え、内側に配置される支持部材132のリング部132Aを上から挟持可能としている。つまり、原液タンク150は、支持部材132に配置されている構成となっている。なお、原液タンク150の高さは、例えば、ほぼノズル制御機構130の重心位置CG1の高さH0と同じである。このため、原液タンク150の原液が満杯(例えば、原液タンク150の容量は50L程度であるが、100L未満であればよい)となった状態で、原液タンク150の重心位置CG2の高さH1は、重心位置CG1の高さH0の約半分と同じとなる(これに限らず、H1≦H0であればよい)。つまり、原液タンク150が配置された後の泡状物放出機122の重心位置の高さは、原液タンク150のない状態の泡状物放出機122の重心位置CG1の高さH0以下とされている。原液タンク150には、クレーン等で吊下げ可能となり、且つ作業員が移動可能とする図示せぬ取手が設けられている。なお、原液は、主成分が界面活性剤であり、例えば、市販の中性洗剤を数倍〜十数倍に希釈したものが使用されてもよい。
【0039】
混合器152は、
図4、
図5に示す如く、配管T3、T2を介して、原液タンク150、圧送機構160にそれぞれ連通している。混合器152は、ケーシング152Aを備えている。ケーシング152Aの反吐出ノズル側の側面には、外気と連通するための空気孔152Bが設けてある。空気孔152Bがケーシング152Aの反吐出ノズル側の側面にあることで、粉塵の発生位置から空気孔152Bの位置を遠ざけている。このため、混合器152における粉塵による目詰まりの可能性を低減している。混合器152は、ケーシング152Aの内部に、圧送機構160が圧送する高圧水に原液を混合させる第1混合部153と、第1混合部153で得られた原液混合高圧水に空気を混合させる第2混合部154と、を備える。第1混合部153、第2混合部154はともに、流体の流路を絞ることで流体の流速を増加させ、負圧を発生させるベンチュリ効果を利用する構成とされている。具体的に、混合器152の構成を、
図5を用いて以下に説明する。
【0040】
混合器152は、前段部材FEと、後段部材SEと、調整ダイヤル153Eと、を備える。混合器152は、
図5に示す如く、空気孔153F、154Cを備え、空気を吸い込む構成となっている。
【0041】
第1混合部153において、
図5に示す如く、前段部材FEには、十字形に接続された流路153A、153B、153C、153Dがそれぞれ設けられている。流路153Aは、開閉装置140を介して、圧送機構160に連通している。流路153Aに流れ込む高圧水は、絞り153AA(例えば2mmφ以下)を介して、十字形の中心MC近傍まで突出した先端部153ABから広い流路153D(例えば5〜10mmφ程度)に流れていく。流路153Bは、配管T3を介して、原液タンク150に連通している。流路153Bに流れ込む原液は、基本的に、高圧水により発生する流路153Dの負圧により、絞り153BB(例えば4mmφ以下)を介して、流路153Dに流れ込む。このため、原液は高圧水と混合され、原液混合高圧水が生成される。流路153Cは、複数(例えば4つ)の空気孔153Fを介して、外気と連通している。流路153Cに流入する空気は、絞り153CC(例えば4mmφ以下)を介して、流路153Dに合流する。絞り153CCには、調整ダイヤル153Eの回転量を変化させることにより、先端部153EE(例えば3mmφ以下)が出し入れ可能とされている。このため、先端部153EEの絞り153CCに対する位置を変化させることで、流路153Cから流路153Dへの空気の流入量を調整できる。つまり、調整ダイヤル153Eによって高圧水により発生する流路153Dにおける負圧を調整でき、高圧水に対する原液の混合比率を調整することができる。即ち、混合器152では、原液と高圧水との混合比率が調整可能とされている構造となっている。流路153Dを流れる原液混合高圧水は、絞り153DD(例えば4mmφ以下)を通過して、第2混合部154の流路154Aに流れ込む。
【0042】
本実施形態では、調整ダイヤル153Eの回転量が手動で予め調整されるが、リモコンで適宜調整されてもよい。なお、本実施形態では、調整ダイヤル153Eの回転位置の調整により、高圧水により発生する流路153Dの負圧をゼロとすることで、敢えて原液を高圧水に混合しないようにすることも可能である。
【0043】
第2混合部154において、
図5に示す如く、流路154A(例えば8mmφ未満)の形成されている突出した先端部154AAの外側を覆うように、円筒形状の後段部材SEが取り付けられている。なお、符号SL1は、前段部材FEと後段部材SEとの密着を確実にするために設けられたOリングである。後段部材SEの内側に設けられた流路154B(流路154Bの最大径は、例えば20mmφ未満ではあるが、流路153Dの最大径よりも大きくされている)は徐々に狭くなり、絞り154BB(例えば5mmφ以下)を介してノズル部材TEの流路158Bに接続されている。後段部材SEの前段部材FEとの接続部分近傍に、複数(例えば後段部材SEの周方向に等間隔で4つ)の空気孔154Cが設けられている。このため、原液混合高圧水が流路154Aから流路154Bに流入することで負圧が発生し、空気孔154Cから空気が原液混合高圧水に混合され泡生成流体が生成される。
【0044】
吐出ノズル158は、
図5に示す如く、泡生成流体が衝突通過することで泡状物BBを生成するメッシュ体MSを備え、混合器152に取り付けられている。具体的に、吐出ノズル158は、後段部材SEの先端部とノズル部材TEとを備える。ノズル部材TEは、例えば、円筒形状とされたガラス繊維を含むプラスチックで成形されている。
【0045】
ノズル部材TEは、後段部材SEの先端外周部への螺合により脱着可能に取り付けられている。このため、ノズル部材TEの周囲には断熱効果の高い空気層が存在する構成となっている。なお、符号SL2は、後段部材SEとノズル部材TEとの密着を確実にするためのOリングである。
【0046】
図5に示す如く、後段部材SEに設けられた流路158Aは、絞り154BBから再び広げられている。ノズル部材TEに設けられた流路158Bには、メッシュ体MSが脱着可能に配置されている(例えば、メッシュ体MSは単に流路158Bの絞り158Cの側に押し込められている)。つまり、メッシュ体MSは、ノズル部材TEを後段部材SEから分離し、ノズル部材TEの内側への取り付けと取り外しを可能とすることで、吐出ノズル158から脱着可能とされている。そして、流路158Bは、絞り158Cで再び狭められている。なお、絞り158Cは、泡状物BBを放出する際の放出形状を定めるものであり、例えば5mmφ以下の円形として等方的な泡状物の放出を実現することができる(あるいは、長方形として扁平形状の泡状物の放出を実現してもよい)。メッシュ体MSは、相応の目開き(例えば1mm程度の目開き)のステンレス製メッシュを円柱形状(例えば、20mmφ以下*10mm程度)に成形したものを使用することができる。勿論、メッシュ体MSは、単なるメッシュを複数枚重ねただけでもよい。
【0047】
吐出ノズル158において、泡生成流体が流路158Aを流れ、流路158Bに配置されたメッシュ体MSに衝突通過することで、泡状物BBが生成される。つまり、吐出ノズル158は、泡生成流体を吐出させることで作業箇所102に泡状物BBを放出することが可能とされている。
【0048】
前記圧送機構160は、
図4に示す如く、配管T2を介して泡状物放出機122の混合器152に高圧水を圧送する。このとき、圧送機構160は、混合器152を介して吐出ノズル158から高圧水を吐出可能となるように、例えば水を10MPa〜20MPaに圧縮している。圧送機構160は、
図2(B)に示す如く、高圧水を圧送するポンプ部160Aと、配管T1を介してポンプ部160Aに連通しているタンク部160Bと、を備える。タンク部160Bは、水を貯留しており、外部から水道水等を導入することができる。圧送機構160は、
図1に示す如く、作業現場100における環境の変動の少ないところでメンテナンスが比較的容易である場所、例えば、作業箇所102から離れた地面に設置されている。圧送機構160は、例えば図示せぬ発電機に電源が接続されて駆動される。
【0049】
なお、1台の圧送機構160から1台の泡状物放出機122に高圧水が供給されてもよいが、1台の圧送機構160から複数の泡状物放出機122に高圧水が供給されていてもよい。その際には、1台の圧送機構160に複数の泡状物放出機122が並列に接続されてもよいし、直列に接続されてもよい(例えば、並列の場合は平面的に並んだ複数の泡状物放出機122に兼用とされる構成でもよい。また、直列の場合は足場106の高さ方向に並んで載置される構成でもよい)。配管T2は、建築物104を囲む足場106に固定されている(勿論、配管T2が、足場に固定されていなくてもよい)。
【0050】
このように、本実施形態では、圧送機構160が、原液そのものではなく、高圧水を圧送する。このため、例えば、圧送機構160のポンプ部160Aに不純物の混入による腐食の発生や劣化のおそれを低減できる。また、原液の固化物の付着などによる漏れ等が生じるおそれを低減できる。即ち、圧送機構160に不具合を生じる可能性を少なくすることが可能である。同時に、原液タンク150のノズル制御機構130への配置で、泡状物放出機122の重心位置の高さが原液タンク150のない状態の泡状物放出機122の重心位置CG1の高さH0よりも高くなることがない。即ち、原液タンク150の配置で、結果的に泡状物放出機122の転倒等のおそれを低減することが可能である。
【0051】
このとき、本実施形態では、ノズル制御機構130が、支持部材132と、支持部材132に第1回転軸136Aで水平面内の回転が可能となるように支持される回転部材134と、第2回転軸144Aで回転部材134に傾斜可能に吐出ノズル158を支持する傾斜部材146と、を備える。そして、原液タンク150が、支持部材132に取り付けられている。そして、原液タンク150の重心位置CG2の高さH1は、原液で満杯となっていても、ノズル制御機構130の重心位置CG1の高さH0以下とされている。加えて、
図2(A)に示す如く、原液タンク150が、係合部150Bで支持部材132に取り付けられているものの、ノズル制御機構130と原液タンク150とは同一平面上に配置されている。このため、本実施形態では、原液タンク150が配置された後の泡状物放出機122の重心位置の高さが、原液タンク150のない状態の泡状物放出機122の重心位置CG1の高さH0以下となることを、容易に実現している。なお、これに限らず、支持部材で回転部材を傾斜させ、傾斜した回転部材上で吐出ノズルが回転するように構成されてもよい。あるいは、原液タンクが、ノズル制御機構に非接触の状態で単に隣接して配置された状態であってもよい。
【0052】
また、本実施形態では、混合器152が、傾斜部材146に取り付けられている。このため、
図5に示す如く、混合器152と吐出ノズル158の連通する機構を簡素に実現することが可能である。
【0053】
また、本実施形態では、混合器152において、原液と高圧水との混合比率が調整可能とされている。このため、作業状況や作業環境、作業機械の状態などに対応して生成される泡状物の特徴(特に泡状物の寿命等)を調整することが可能である。なお、これに限らず、原液と高圧水との混合比率が固定されていてもよい。その際には、混合器の構成を、より簡易にすることができる。
【0054】
また、本実施形態では、混合器152が、高圧水に原液を混合させる第1混合部153と、第1混合部153で得られた原液混合高圧水に空気を混合させる第2混合部154と、を備える。このため、第1混合部153で高圧水に対する原液の正確な混合比率が安定して実現可能である。そして、次にくる第2混合部154で原液混合高圧水に空気を十分に含ませることが可能である。つまり、このような混合器152により、吐出ノズル158において泡状物BBを生成するための、より均質な泡生成流体を生成することが可能である。なお、これに限らず、混合器では、高圧水に原液と空気とを同時に混合させてもよいし、高圧水に原液だけを混合し、吐出ノズルで空気を混合するようにしてもよい。
【0055】
即ち、本実施形態によれば、泡状物放出機122から所定の作業箇所102に泡状物BBを的確に放出可能としながら、且つ故障の可能性を少なくでき、泡状物放出機122を安定して配置可能である。
【0056】
本発明について第1実施形態を挙げて説明したが、本発明は第1実施形態に限定されるものではない。即ち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
【0057】
例えば、第1実施形態では、泡状物放出機122から、泡状物BBのみが放出されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図6に示す第2実施形態の如くであってもよい。第2実施形態では、新たに流路切替機構が傾斜部材に支持され、泡状物放出機から水が放出可能とされている。なお、第2実施形態では、傾斜部材に支持されている要素が異なるだけなので、符号上1桁を変更して、基本的に流路切替機構以外の説明を省略する。
【0058】
本実施形態では、傾斜部材246が、導入部材247と、混合器252と、吐出ノズル258と、新たに流路切替機構255と、を支持している。流路切替機構255は、圧送機構260から圧送される高圧水を、混合器252を介さずに吐出ノズル258から作業箇所に吐出可能としている。具体的に、流路切替機構255は、
図6に示す如く、切替弁256と、2つの逆止弁CV1、CV2と、を備える。切替弁256は、例えば、リモコン制御される三方ボール弁で構成される。切替弁256は、配管T5、導入部材247の流路、開閉装置240、及び配管T2を介して圧送機構260と連通し、配管T6を介して混合器252に連通し、逆止弁CV1と連通している。つまり、切替弁256は、図示せぬリモコンで、圧送機構260から圧送される高圧水を、混合器252か逆止弁CV1のどちらかに切り替える構成となっている。なお、逆止弁CV1、CV2はそれぞれ、下流の配管T8、T9で連通しており、逆止弁CV2、CV1を通過する泡生成流体の逆流、高圧水の逆流を阻止するために設けられている。
【0059】
本実施形態においては、原液を全く含まない高圧水を作業箇所に放出することが可能である。つまり、作業状況に応じて、作業箇所に水と泡状物を個別に放出することが可能である。
【0060】
また、第2実施形態においては、混合器252と流路切替機構255とが傾斜部材246に取り付けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図7に示す第3実施形態の如くであってもよい。第3実施形態では、例えば、混合器と流路切替機構とが回転部材に取り付けられている構成を示している。なお、第3実施形態では、関連する構成の説明を以下行い、その他については、符号上1桁を変更して、説明を省略する。
【0061】
本実施形態においては、第2実施形態の開閉装置240の代わりに、回転部材334に混合器352と流路切替機構355を取り付けた構成となっている。つまり、切替弁356は、配管T2を介して圧送機構360に連通している。そして、逆止弁CV1、CV2はそれぞれ、下流の配管T8、T9を介して導入部材347の流路に連通している。傾斜部材346は導入部材347と吐出ノズル358とを支持しており、導入部材347の流路に導かれた泡生成流体あるいは高圧水が、そのまま吐出ノズル358を通過する構成となっている。このため、本実施形態では、上記実施形態に比べて、泡状物放出機322の重心位置の高さをより低くすることが可能である。
【0062】
また、第3実施形態においては、原液タンク350が支持部材332に配置されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図8に示す第4実施形態の如くであってもよい。第4実施形態では、例えば、原液タンクが回転部材に配置されている構成を示している。なお、第4実施形態では、関連する構成の説明を以下行い、その他については、符号上1桁を変更して、説明を省略する。
【0063】
本実施形態においては、原液タンク450が、例えば、リング形状の袋体とされ、回転部材434のターンテーブル体の外周に吊持されている。このとき、原液タンク450の下端は、支持部材432の配置された面に非接触の状態を保っている。即ち、原液タンク450は、原液が満杯となっても、その重心位置の高さをターンテーブル体の高さ以下とすることが可能である。
【0064】
また、上記実施形態においては、圧送機構が高圧水を圧送することで、泡状物BBを生成する構成であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、圧送機構が高圧空気を圧送する構成であってもよい。
【0065】
また、第1実施形態では、泡状物放出機122が足場106に配置され、圧送機構160が地面に配置されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、泡状物放出機は作業対象物(地面を含む)の上に単においてあるだけでもよいし、圧送機構も泡状物放出機と同じ位置に隣り合わせに配置されていてもよい。
【0066】
また、上記実施形態においては、作業機械として所謂「クラッシャー」を例に説明しているが、本発明の適用はこれに限られない。例えば、杭打ち機、杭抜き機、ブルドーザー、トラクターショベル、パワーショベル、バックホー、ドラグライン、クラムシェル、クローラドリル、アースドリル、クレーン、ロードカッター、ブレーカー等に適用しても同様の効果を得ることができる。要するに、土木作業や建設作業、解体作業において、粉塵が発生し得る作業を行う作業機械に対して幅広く適用することが可能である。