特許第6803612号(P6803612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803612
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】加圧式回転板型固液分離装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/121 20190101AFI20201214BHJP
   B01D 33/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C02F11/121ZAB
   B01D33/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-108620(P2018-108620)
(22)【出願日】2018年6月6日
(65)【公開番号】特開2019-209277(P2019-209277A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2019年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】592059622
【氏名又は名称】株式会社エイブル
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 敏機
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−134332(JP,A)
【文献】 特開2018−027521(JP,A)
【文献】 特開2016−013556(JP,A)
【文献】 特開2008−119633(JP,A)
【文献】 特開2006−334518(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1246792(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00−11/20
B01D 33/00−33/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数本のスリットバーの間に、回転板を回転可能に配置して上流部および下流部を形成するとともに、回転板の上方に加圧板を配置して上流部を重力脱水部、下流部を加圧板による加圧脱水部とし、最上流部の回転板の上方から汚泥含有水を供給して各回転板間の隙間および回転板とスリットバーに生じる隙間から液体を排除して分離することにより回転板上に載置された脱水汚泥を重力脱水部および加圧脱水部へと移動させて、脱水汚泥を最下流部に設けた脱水汚泥排出部から排出する加圧式回転板型固液分離装置において、
重力脱水部に配置する回転板の数量に対して加圧脱水部に配置する回転板の数量を少なくしたことを特徴とする加圧式回転板型固液分離装置。
【請求項2】
重力脱水部に配置する回転板の数量に対して加圧脱水部に配置する回転板の数量を、30%〜70%の範囲にした、請求項1に記載された加圧式回転板型固液分離装置。
【請求項3】
加圧脱水部に配置する回転板の数量を、重力脱水部に配置する回転板の45%〜55%の範囲にした、請求項1または請求項2に記載された加圧式回転板型固液分離装置。
【請求項4】
加圧脱水部における回転板の前後、左右に配置する回転板を一つ置きに排除することにより、加圧脱水部に配置する回転板の数量を、重力脱水部に配置する回転板の45%〜55%の範囲にした、請求項3に記載された加圧式回転板型固液分離装置。
【請求項5】
回転板が楕円形、長円形または角部を丸めるか切り取った長方形である、請求項1ないし請求4のいずれか1項に記載された加圧式回転板型固液分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場、し尿処理場、あるいはその他の施設において廃水の処理工程等で発生する汚泥水を脱水処理する固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場、し尿処理場あるいは他の業種において発生する汚泥水は下記に代表される方法により脱水処理して減容化されている。
【0003】
まず、予め汚泥水を凝集処理して汚泥粒子を粗大化させる。次いでフィルタープレス、ベルトプレス、スクリュープレス、遠心脱水装置、真空圧利用脱水機あるいは多重回転板型固液分離装置、加圧式回転板型固液分離装置等を用いて汚泥水中の水分を系外に排出しながら固形物濃度を高めるための、いわゆる脱水処理が施される。
【0004】
多重回転板型固液分離装置は、上部の円形回転板群と下部の円形回転板群との間に汚泥水を挟み込み両回転板の回転によって汚泥水を下流側に押し出す過程で液体を回転板の隙間から排出させ、脱水汚泥を最下流部に設けられた脱水汚泥排出部から排出させるものである。また、加圧式回転板型固液分離装置は、多数本のスリットバーの間に、楕円形の回転板を回転可能に配置して上流部および下流部を形成するとともに、回転板の上方に加圧板を配置して上流部を重力脱水部、下流部を前記加圧板の押圧による加圧脱水部とし、最上流部の回転板の上方から汚泥含有水を供給して各回転板間の隙間および回転板とスリットバーに生じる隙間から液体を排除して分離することにより回転板上に載置された脱水汚泥を重力脱水部および加圧脱水部へと移動させて、脱水汚泥を最下流部に設けられた脱水汚泥排出部から排出するものである。
【0005】
多重回転板型固液分離装置および加圧式回転板型固液分離装置ともに操作が簡単でろ布の交換等がなく、メンテナンスがし易いという利点があるが、加圧式回転板型固液分離装置は、加圧板によって加圧が可能であること、さらに楕円形回転板の回転によって径から径に変化する際に、脱水汚泥に対して下流側へ強力な推進力が加わるなどの効果によって、多重回転板型固液分離装置と比較して、加圧式回転板型固液分離装置の方が、含水率が低下された脱水汚泥が得られ、かつ処理容量も大であり、単位処理容量に対する装置価格が廉価である。したがって、近年は多重回転板型固液分離装置より加圧式回転板型固液分離装置の方が多用されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−13556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来の加圧式回転板型固液分離装置は下記のような欠点がある。
【0008】
すなわち含水率をより低下させようとして回転板の上方に存在する加圧板をさらに下方向に向かって押し付けると加圧脱水部の回転板上に載置されている脱水汚泥に回転板が食い込み空回りし、脱水汚泥が脱水汚泥排出部から排出されなくなる。要するに脱水汚泥が加圧脱水部で詰まってしまうのである。
【0009】
したがって、従来では脱水汚泥が加圧脱水部で詰まらないような加圧板の押圧で脱水処理しているが、それでは満足する含水率の脱水汚泥を得ることができない。
【0010】
本発明は従来の加圧式回転板型固液分離装置の上記欠点を解決し、脱水汚泥を加圧脱水部に詰まらせることがなく、かつ含水率をより低下させた脱水汚泥が得られる加圧式回転板型固液分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明らは、従来から用いられている加圧式回転板型固液分離装置の構造を若干変更するのみで、脱水汚泥を加圧脱水部に詰まらせることがなく、かつ含水率をより低下させた脱水汚泥が得られることを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち本発明に係る加圧式回転板型固液分離装置は、多数本のスリットバーの間に、回転板を回転可能に配置して上流部および下流部を形成するとともに、回転板の上方に加圧板を配置して上流部を重力脱水部、下流部を加圧板による加圧脱水部とし、最上流部の回転板の上方から汚泥含有水を供給して各回転板間の隙間および回転板とスリットバーに生じる隙間から液体を排除して分離することにより回転板上に載置された脱水汚泥を重力脱水部および加圧脱水部へと移動させて、脱水汚泥を最下流部に設けた脱水汚泥排出部から排出する加圧式回転板型固液分離装置において、
重力脱水部に配置する回転板の数量に対して加圧脱水部に配置する回転板の数量を少なくしたことを特徴とするものからなる。
【0013】
このような本発明に係る加圧式回転板型固液分離装置において、重力脱水部に配置する回転板の数量に対して加圧脱水部に配置する回転板の数量を、30%〜70%の範囲にすることが好ましく、45%〜55%の範囲にすることがさらに好ましい。このような数量にて回転板を構成することにより、加圧脱水部に脱水汚泥が詰まることを効果的に防止することができる。
【0014】
このような本発明に係る加圧式回転板型固液分離装置において、加圧脱水部における回転板の前後、左右に配置する回転板を一つ置きに排除することにより、加圧脱水部に配置する回転板の数量を、重力脱水部に配置する回転板の45%〜55%の範囲にすることが、均質かつ低含水率の脱水処理を実現できる点で好ましい。また、回転板が楕円形、長円形または角部を丸めるか切り取った長方形であることも、均質かつ低含水率の脱水処理を実現できる点で好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の加圧式円板型固液分離装置は、重力脱水部に配置する回転板の数量に対して加圧脱水部に配置する回転板の数量を少なくしたことにより、たとえば重力脱水部に配置する回転板の数量に対して加圧脱水部に配置する回転板の数量を、30%〜70%の範囲、好ましくは上記数量を45%から50%の範囲、最も好ましくは加圧脱水部における回転板の前後、左右に配置する回転板を一つ置きに排除することにより、加圧脱水部に配置する回転板の数量を、重力脱水部に配置する回転板の45%〜50%の範囲にしたことにより、脱水汚泥を加圧脱水部に詰まらせることがなく、かつ含水率をより低下させた脱水汚泥を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の加圧式回転板型固液分離装置の一例を示す説明図である。
図2】加圧式回転板型固液分離装置の要部を拡大した説明図である。
図3】本発明の加圧式回転板型固液分離装置の回転板とスリットバーを上方から見た一部切欠説明図である。
図4】従来の加圧式回転板型固液分離装置の回転板とスリットバーの上方から見た一部切欠説明図である。
図5】本発明に用いることができる回転板を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の加圧式回転板型固液分離装置1の説明図であり、2は加圧式回転板型固液分離装置1のハウジングである。ハウジング2の上端に汚泥含有水の供給管3が接続されているとともに、ハウジング2の下端に分離液の放出管4が付設されている。
【0018】
ハウジング2内には多数の楕円形の回転板5を嵌装した回転軸6が上流側から下流側に並べて軸支されており、各回転軸6の上方にはスリットバー7が横設されている。
【0019】
図2は加圧式回転板型固液分離装置1の要部を拡大した外観図であり、多数本のスリットバー7の間に回転板5が配置され、各回転板5はスペーサーリング8を介して回転軸6に嵌装されている。
【0020】
各スリットバー7および回転板5の厚みは1〜2mmであり、スリットバー7の数は処理量によって異なるが、100〜500本、さらに一本の回転軸6に嵌装される回転板5は100〜500枚程度となっている。また回転板5の楕円の長径は100〜200mm、短径は50〜100mmのものが採用され、スリットバー7間には、上流から下流に向かって回転板5が8〜10列配置されることが多い。
【0021】
各回転板5の回転方向は同一であり、同じ2本のスリットバー7間に位置して縦方向に隣接する回転板5は互いに接触せずに回転するように設定されている。
【0022】
ハウジング2の上部には上流側から下流側にかけてイ、ロ、ハの三種の傾斜角を有する加圧板9が設置されており、傾斜角イの部分が重力脱水部A、傾斜角ロおよびハの部分が加圧脱水部Bとなっている。なお加圧板9の下流側には加圧機構10が付設されており、加圧板支持軸11を支点として加圧板9を加圧機構10で上下することにより、スリットバー7の下流の先端部と下流の加圧板9との隙間を可変することができ、また当該隙間が脱水汚泥排出部12となっている。
【0023】
脱水汚泥排出部12から排出される脱水汚泥13は脱水汚泥受け槽14に落下する。なお前記加圧機構10としてはエアーシリンダー等が用いることができる。
【0024】
図3は加圧式回転板型固液分離装置1の回転板5とスリットバー7を上方から見た一部切欠説明図であり、加圧脱水部Bに配置される回転板5は、重力脱水部Aのそれと比較すると、前後、左右に配置されるべき回転板が一つ置きに排除され、加圧脱水部Bに配置される回転板の数量は、重力脱水部Aのそれと比較すると約50%となっている。なお図3において点線は回転軸6を示している。
【0025】
図4は従来の加圧式回転板型固液分離装置の回転板5とスリットバー7を上方から見た一部切欠説明図であり、重力脱水部Aおよび加圧脱水部Bに配置される回転板5は全く同じ数量となっている。
【0026】
本発明の加圧式回転板型固液分離装置と従来の加圧式回転板型固液分離装置とでは、図3に示したように重力脱水部Aに配置する回転板5の数量に対して加圧脱水部Bに配置する回転板5の数量を少なくした点が大きく異なっている。
【0027】
[作用]
次に本発明の加圧式回転板型固液分離装置1の操作を説明する。
各回転板5を回転させながら、汚泥水に有機高分子凝集剤単独あるいは有機高分子凝集剤と無機凝集剤によって予め凝集処理された含水率97〜99%の汚泥水が汚泥含有水の供給管3から加圧式回転板型固液分離装置1の最上流の回転板5の上方に供給される。
【0028】
汚泥水中の凝集された固形物は脱水汚泥13となって回転板5あるいはスリットバー7の上部に留まり、水は回転板5間の隙間あるいは回転板5とスリットバー7の隙間から下部に落下する。回転板5の上部あるいはスリットバー7の上部に脱水汚泥13を載せながら各回転板5の上流側から下流側に各回転板5の回転によって脱水汚泥13を移動させ、かつこの間にも順次脱水汚泥13中の水分は排除される。そして回転板5の上部の脱水汚泥13は最終的には最下流に存するスリットバー7と加圧板9との隙間である脱水汚泥排出部12から脱水汚泥13として脱水汚泥受け槽14内に排出される。
【0029】
含水率97〜99%の汚泥水は、加圧式回転板型固液分離装置1の重力脱水部Aでは含水率92%前後の脱水汚泥となり、加圧脱水部Bでは加圧板9による押圧力により更に脱水され、脱水汚泥排出部12から排出される際には、含水率80〜85%の脱水汚泥まで脱水される。またこの間に排除された水は分離水の放出管4から放出される。
【0030】
本発明においては加圧脱水部Bにおける回転板5の前後、左右に配置する回転板を一つ置きに排除することにより、加圧板9を強く押圧しても加圧脱水部Bにおける脱水汚泥13に回転板5が食い込んで空回りすることがなく、脱水汚泥排出部12から良好に脱水汚泥13を排出することができる。すなわち脱水汚泥13が加圧脱水部Bで詰まることがない。
【0031】
なお図4に示した従来の加圧式回転板型固液分離装置においては、重力脱水部Aおよび加圧脱水部Bに配置される回転板は全く同じ数量となっているので、上述した本発明装置と同じような押圧力で加圧板を押圧すると、加圧脱水部Bにおける脱水汚泥に回転板が食い込んで空回りし、加圧脱水部Bに脱水汚泥が詰まり、脱水汚泥排出部から脱水汚泥を排出することができない。
【0032】
したがって従来の加圧式回転板型固液分離装置においては、加圧脱水部Bにおける脱水汚泥に回転板が食い込むことがなく、空回りしないような弱い押圧力でしか加圧板を押圧することができず、その結果、含水率88〜91%程度の脱水汚泥しか得ることができない。
【0033】
図1に示した本発明の加圧式回転板型固液分離装置の回転板5に用いることができる回転板5としては、図5に示したように楕円形D、長円形E、角部を丸めるか切り取った長方形Fを挙げることができる。
【0034】
また本発明の加圧式回転板型固液分離装置は、重力脱水部Aに配置する回転板5の数量に対して加圧脱水部Bに配置する回転板5の数量を少なくしたことを特徴とするが、重力脱水部Aに配置する回転板5の数量に対して加圧脱水部に配置する回転板5の数量を、30%〜70%の範囲、好ましくは45%から55%の範囲にするとよい。
【0035】
たとえば29%以下にした場合は、回転板5の数量が少なすぎるため、脱水汚泥を下流に移動させる推進力が弱くなり、加圧脱水部Bに脱水汚泥が詰まり易くなり、脱水汚泥排出部から脱水汚泥を排出することができない傾向になる。
【0036】
また71%以上にした場合は、回転板5の数量が多すぎるため、脱水汚泥に回転板5が食い込み易く、加圧脱水部Bに脱水汚泥が詰まり易くなり、同じように脱水汚泥排出部から脱水汚泥を排出することができない傾向になる。
【0037】
図3に示したように、加圧脱水部Bにおける回転板5の前後、左右に配置する回転板5を一つ置きに排除することにより、加圧脱水部Bに配置する回転板5の数量を、重力脱水部Aに配置する回転板5の45%〜55%の範囲とすることが最も好ましい。
【0038】
なお、図3に示した実施態様は加圧脱水部における回転板5全体の前後、左右に配置する回転板5を一つ置きに排除しているが、最下流に位置する回転軸に嵌装されている回転板5がたとえ脱水汚泥に食い込んだとしても、その脱水汚泥はそのまま脱水汚泥排出部から排出されるだけなので、脱水汚泥の詰まりに関しては特に影響を与えるものではなく、したがってこの最下流に位置する回転軸に嵌装されている回転板のみ排除せずに、従来装置と同様にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る加圧式回転板型固液分離装置は、各種廃水の処理工程で発生する汚泥水を脱水処理するために広く利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1・・・加圧式回転板型固液分離装置 2・・・ハウジング
3・・・汚泥含有水の供給管 4・・・分離液の放出管
5・・・回転板 6・・・回転軸
7・・・スリットバー 8・・・スペーサーリング
9・・・加圧板 10・・加圧機構
11・・加圧支持軸 12・・脱水汚泥排出部
13・・脱水汚泥 14・・脱水汚泥受け槽
A・・・重力脱水部 B・・・加圧脱水部
図1
図2
図3
図4
図5