(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レンズ部の凹レンズは、非可視側が凹面、可視側が当該凹面に沿った階段状の面を含んで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の透明導電体を備える構造体。
前記レンズ部は、前記フランジの前記分割構造により分割され、分割された当該レンズ部が前記基材を挟み込んで固定することを特徴とする請求項5に記載の透明導電体を備える構造体。
前記位置決め構造体は、前記フランジの前記分割構造の分割方向とは交差する方向に分割するネジ部と、当該ネジ部にねじ込むことで当該フランジを前記設備に締め付ける締め付け部と、を有することを特徴とする請求項5または6に記載の透明導電体を備える構造体。
前記フランジは、前記位置決め構造体の数に応じた複数の前記レンズ部を有し、複数の当該レンズ部を接続する連結部を有することを特徴とする請求項1に記載の透明導電体を備える構造体。
前記給電部は、前記フランジと一体的に形成され、当該フランジから前記基材の取り付け側とは反対側の位置に形成されることを特徴とする請求項9に記載の透明導電体を備える構造体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、可視光透過アンテナなどの透明導電体を備える構造体は、構造体が透明で環境に溶け込むことを目指して設計されている。しかしながら、このような構造体には、例えば透明導電体に給電するための接続部や、例えばケーブルとの接続部などがある。そのため、構造体が天井などの設備に貫通孔などを設けて固定される際、接続部などの要素が例えば不透明であることから、透明導電体を備える構造体と設備との姿態を良好とするには限界があった。
【0005】
本発明の目的は、設備に取り付けられた際に、本技術を採用しない場合に比べて設備の可視側からの視覚的外観をより良好とする透明導電体を備える構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、透明導電体を有し、可視光を透過する基材と、前記基材を設備の非可視側から位置決めするための位置決め構造体と、前記基材を前記設備の可視側から位置決めするための、前記位置決め構造体に対向する位置にレンズ部を有し、可視光を透過するフランジとを備えることを特徴とする透明導電体を備える構造体である。
請求項2に記載の発明は、前記フランジの有する前記レンズ部は、凹レンズであることを特徴とする請求項1に記載の透明導電体を備える構造体である。
請求項3に記載の発明は、前記レンズ部の凹レンズは、非可視側が凹面、可視側が当該凹面に沿った階段状の面を含んで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の透明導電体を備える構造体である。
請求項4に記載の発明は、前記レンズ部の凹レンズは、フレネルレンズであることを特徴とする請求項2に記載の透明導電体を備える構造体である。
請求項5に記載の発明は、前記フランジは、前記基材の延びる方向と交差する方向に分割する分割構造であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の透明導電体を備える構造体である。
請求項6に記載の発明は、前記レンズ部は、前記フランジの前記分割構造により分割され、分割された当該レンズ部が前記基材を挟み込んで固定することを特徴とする請求項5に記載の透明導電体を備える構造体である。
請求項7に記載の発明は、前記位置決め構造体は、前記フランジの前記分割構造の分割方向とは交差する方向に分割するネジ部と、当該ネジ部にねじ込むことで当該フランジを前記設備に締め付ける締め付け部と、を有することを特徴とする請求項5または6に記載の透明導電体を備える構造体である。
請求項8に記載の発明は、前記フランジは、前記位置決め構造体の数に応じた複数の前記レンズ部を有し、複数の当該レンズ部を接続する連結部を有することを特徴とする請求項1に記載の透明導電体を備える構造体である。
請求項9に記載の発明は、前記透明導電体に対して給電するための給電部材が接続される給電部を備え、前記給電部は、前記設備に前記基材が取り付けられた際、当該基材に対して当該設備の非可視側に向けた位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の透明導電体を備える構造体である。
請求項10に記載の発明は、前記給電部は、前記フランジと一体的に形成され、当該フランジから前記基材の取り付け側とは反対側の位置に形成されることを特徴とする請求項9に記載の透明導電体を備える構造体である。
請求項11に記載の発明は、アンテナを構成する透明導電体を有し、可視光を透過する基材と、前記基材を設備の非可視側から位置決めするための位置決め構造体と、前記基材を前記設備の可視側から位置決めするための、前記位置決め構造体に対向する位置にレンズ部を有し、可視光を透過するフランジとを備えることを特徴とするアンテナ構造体である。
請求項12に記載の発明は、電波遮蔽膜を構成する透明導電体を有し、可視光を透過する基材と、前記基材を設備の非可視側から位置決めするための位置決め構造体と、前記基材を前記設備の可視側から位置決めするための、前記位置決め構造体に対向する位置にレンズ部を有し、可視光を透過するフランジとを備えることを特徴とする電波遮蔽構造体である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、設備に取り付けられた際に、本技術を採用しない場合に比べて設備の可視側からの視覚的外観を良好とすることができる。
請求項2の発明によれば、設備に取り付けられた際に、凹レンズでない場合に比べて設備の可視側からの視覚的外観をより良好とすることができる。
請求項3の発明によれば、階段状の面を含まない場合に比べて設備の可視側からの視覚的外観をさらに良好とすることができる。
請求項4の発明によれば、フレネルレンズとしない場合に比べて可視側へ突出する部分が少なくなる。
請求項5の発明によれば、分割構造を採用しない場合に比べてコストを軽減できる。
請求項6の発明によれば、可視側に設けられるフランジによる固定機能を、本構成を採用しない場合に比べて良好とすることができる。
請求項7の発明によれば、本構成を採用しない場合に比べてアンテナが形成される基材をより良好に設備に取り付けることが可能となる。
請求項8の発明によれば、複数の位置決め構造体を有する構造体にて、設備の可視側からの視覚的外観をより良好とすることができる。
請求項9の発明によれば、可視側から給電部が見え難くなり、景観が良好となる。
請求項10の発明によれば、可視側に位置するフランジと非可視側に延伸する給電部との一体性が得られる。
請求項11の発明によれば、設備に取り付けられた際に、本技術を採用しない場合に比べてアンテナ構造体の設備の可視側からの視覚的外観を良好とすることができる。
請求項12の発明によれば、設備に取り付けられた際に、本技術を採用しない場合に比べて電波遮蔽構造体の設備の可視側からの視覚的外観を良好とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施の形態]
以下、添付図面を参照して、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。ここでは、透明導電体を備える構造体の一例として、透明導電体が透明アンテナであるアンテナ構造体1を説明する。後述するように、透明導電体は、透明アンテナ以外であってもよい。
(アンテナ構造体)
図1〜
図6を用いて、第1の実施の形態が適用されるアンテナ構造体1について説明する。
図1は、第1の実施の形態が適用されるアンテナ構造体1の構成を示した斜視図である。
図1(a)は、アンテナ構造体1の構成、
図1(b)は、設備の一例である天井100にアンテナ構造体1を取り付けた状態を説明するための図である。また
図2は、アンテナ構造体1の詳細な構成を示した斜視図である。また
図3は、
図2に示すアンテナ構造体1から位置決め構造体60のナット71を取り外した状態を示す斜視図である。また
図4は、給電部20を説明するための図である。更に
図5は、フランジ50、位置決め構造体60のネジ部61、およびナット71を説明するための構成図である。
図5(a)は、フランジ50、
図5(b)は、位置決め構造体60のネジ部61、
図5(c)は、位置決め構造体60のナット71を示す。更にまた
図6は、フランジ50におけるレンズ部30の構成及びレンズ部30の作用を説明する図である。
図6(a)は、レンズ部30の構成、
図6(b)は、レンズ部30を備える場合(w 30)を説明する図、
図6(c)は、レンズ部30を備えない場合(w/o 30)を説明する図である。
【0010】
図1(a)、(b)、
図2、および
図3において、X方向は、例えば設備の一例である天井100の面の下方に起立したフィルム11の、天井100の表面に沿う延伸方向であり、Y方向は、天井100の表面に沿う、X方向に直交する方向である。また、Z方向は、X方向およびY方向に対して直交する、天井100の非可視側(上方)に向けた方向である。
【0011】
図1(a)に示すように、第1の実施の形態が適用されるアンテナ構造体1は、高周波回路が形成され、例えばフレキシブルプリント基板の一つであるアンテナ部10と、アンテナ部10に対して給電するための給電部材の一つである同軸ケーブル40が接続される給電部20とを備えている。そして、アンテナ構造体1は、アンテナ部10や給電部20を、天井100などの設備に位置決めするためのフランジ50および位置決め構造体60を備えている。後述するように、給電部20は、位置決め構造体60の内部に設けられている。そして、フランジ50は、位置決め構造体60に対向して可視側に設けられたレンズ部30を備えている。レンズ部30は、可視側から見た場合、給電部20などを見えにくくする。そして、フランジ50(レンズ部30を含む。)は、透明な部材で構成されている。
【0012】
なお、
図1(a)において、レンズ部30は、
図1(a)に見える部分のアンテナ部10を対称面とする構造体がアンテナ部10の裏面側に構成されている。つまり、レンズ部30は、アンテナ部10により分割されている。なお、アンテナ部10は、可視光透過部材で構成されているので、レンズ部30は、全体として凹レンズとなる。
そして、アンテナ構造体1は、天井100に設けられた貫通孔(後述する
図6(b)、(c)の貫通孔110)に、可視側のフランジ50と非可視側の位置決め構造体60とにより天井100に取り付けられている。
【0013】
図1(b)に示すように、天井100の下方(居住スペース)である可視側から、天井100に取り付けられたアンテナ構造体1を眺めると、アンテナ部10とフランジ50の可視側の部分とが見える。そして、貫通孔110の部分を眺めても、透明な部材で構成されたレンズ部30により、貫通孔110の部分が見えにくいようになっている。このように、ユーザから見える露出部分の構造物を全て透明とするとともに、フランジ50にレンズ部30を設けることで、アンテナ構造体1を環境に溶け込ますことが可能となる。
以下、詳細に説明する。
【0014】
〔アンテナ部10〕
図2に示すように、アンテナ部10は、フィルムアンテナとして構成することが可能であり、例えばPET(Poly Ethylene Terephthalate)樹脂などの可視光を透過する光透過性の高い透明な樹脂製素材からなるフィルム11を基材としている。そして、このフィルム11に、光透過性が高くなるように導電材(透明導電体)の材料が選定され、および/または光透過性が高くなるように導電材(透明導電体)の配置が行なわれたアンテナ12が形成されている。アンテナ12は、例えば800MHz帯と2.1GHz帯との2周波を共用する2周波共用アンテナ12aと、グランド(GND)に接続されるアンテナGND部12bとを備えている。
【0015】
アンテナ構造体1では、2組のアンテナ12が設けられており、複数個のアンテナ12を組み合わせてデータ送受信のスループットを上げるMIMO(multiple-input and multiple-output)システムに対応している。そして、個々のアンテナ12に対応して給電部20が設けられており、
図2に示すアンテナ構造体1の例では2組のアンテナ12、および給電部20が形成されている。
【0016】
〔フランジ50〕
フランジ50は、2組のアンテナ12を結ぶアンテナ部10の延びる方向(図のX方向)を長手方向とする長尺状の構造物である。このフランジ50は、基材であるアンテナ部10のフィルム11の延びる方向と直交する方向(図のY方向)に分割する分割構造を有し、設備(例えば天井100)の可視側(例えば天井100の下側)からフィルム11を位置決めする機能を有する。つまり、2つ(一対)のフランジ50が、天井100などの設備の可視側からアンテナ部10を位置決めしている。そして、フランジ50は、可視光を透過する、すなわち光透過性を有する透明な樹脂部材(可視光透過部材)によって形成されている。天井100などの設備の色に適合させて色彩のついた可視光透過部材を採用してもよいし、設備の色や模様に適合させて、色彩や模様がついた可視光透過部材を採用してもよいが、他との互換性を高めるためには、無色の可視光透過部材で構成されることがより好ましい。このように無色の可視光透過部材で構成されることにより、設置場所に合わせて部材を選定する必要がなくなる。これにより多種類の部材を作る必要がなくなるため、大量生産しやすくなる。なお、フランジという用語は、個々のフランジ50の他、2つ(一対)のフランジ50をまとめたものに用いる。なお、フランジ50は、基材であるアンテナ部10のフィルム11の延びる方向と交差する方向に分割する分割構造であってもよい。
【0017】
2つ(一対)のフランジ50は、天井100などの設備の可視側からアンテナ部10を位置決めしている。すなわち、アンテナ部10のフィルム11は、2組のアンテナ12の間にて、一対のフランジ50(後述する対峙面51)に挟まれ、2組のアンテナ12の間のフィルム11の姿勢が、フランジ50によって安定して保たれている。このように、フィルム11は、一対のフランジ50に挟まれて固定されることで、撓みなどが抑制されている。
【0018】
図5(a)には、個々のフランジ50の構成が示されている。設備に取り付けられる一対のフランジ50は、部品点数を減らすために、同一の形状のものが採用されている。
図5(a)に示すように、フランジ50は、長尺部52を有し、この長尺部52の一端および他端には、給電部20を組み付けるための組み付け構造(組付構造)が形成されるとともに、レンズ部30を構成するための2つの半凹レンズ(半凹レンズ32、33)を含む半レンズ部31が形成される。なお、半凹レンズ32と半凹レンズ33とは、個々の端部が接続されている。半レンズ部31の組付構造に接する面は、組付構造を取り囲むように幅広くなった面(幅広面32a)を有している。そして、半レンズ部31の幅広面32aは、長尺部52の上面52aと同一面となるように構成されている。すなわち、フランジ50は、給電部20の数に応じた複数の組付構造及び半レンズ部31を有し、この複数の組付構造及び半レンズ部31を結ぶ連結部として長尺部52を有する、とも言い換えられる。
【0019】
2つのフランジ50が合わさる際に対峙する対峙面51は、アンテナ部10のフィルム11を挟み込んで固定する機能を備えている。対峙面51は、長尺部52、組付構造および半レンズ部31の側面であって、長尺部52および半レンズ部31の側面にアンテナ部10のフィルム11が当接する。フィルム11を挟む対峙面51は、可視側(−Z方向)に延びた半レンズ部31の側面を含むことから、フィルム11の姿勢が安定に保たれる。
なお、2つのフランジ50の半レンズ部31が合わされることで、レンズ部30が構成される。
【0020】
フランジ50の長尺部52の一端および他端に形成される給電部20の組付構造は、天井100(設備)の非可視側(Z方向)に向けて伸びる位置に形成されており、給電部20を押圧する押圧面53よりもさらに非可視側に、凹部54、凸部55を有する。そして、押圧面53にてネジを用いて給電基板(後述)を押圧するために、一方の押圧面53の一端(可視側(−Z方向))には、ネジ締め付け孔56が形成され、他方の押圧面53には、ネジ切り孔57が形成されている。凹部54および凸部55は、その後の組み付けにて、位置決め構造体60のネジ部61と嵌合する。
【0021】
フランジ50の長尺部52の一端および他端に形成される半レンズ部31は、天井100(設備)の可視側(−Z方向)に向けて伸びる位置に形成されており、組付構造側の半凹レンズ32と組付構造から遠い側の半凹レンズ33とを備えている。つまり、第1の実施の形態では、半レンズ部31で構成されるレンズ部30は、2つの凹レンズ(二重凹レンズ)で構成されている。そして、半凹レンズ32と半凹レンズ33との間は、中空である。なお、半レンズ部31が構成するレンズ部30の詳細については、後述する。なお、レンズ部という用語は、レンズ部30の他、半レンズ部31についても用いる。
【0022】
フランジ50は、例えばポリカーボネート、アクリル、スチロール、ABSなどの可視光透過部材にて、射出成型にて形成されうる。ここでは、フランジ50の長尺部52、組付構造、および半レンズ部31は、一体成型されているとするが、組付構造を別部材として構成して、一体成型された長尺部52および半レンズ部31に組み込むようにしてもよい。
【0023】
〔位置決め構造体60〕
位置決め構造体60は、ネジ部61、および締め付け部の一例としてのナット71を有している。
位置決め構造体60は、
図3に示すように、2組の給電部20の各々に、それぞれ2つのネジ部61によって、給電部20から伸びる基板(後述)を覆う円筒状の雄ネジ構造が形成されている。そして、この円筒状の雄ネジ構造は、設備の非可視側(Z方向)である天井裏に向けて起立するように設けられる。部品点数を減らすために、組み合わせて用いられる2つのネジ部61は同一の形状を有しており、例えば、各々にて4つのビス69によって固定されている。また、対峙する2つのネジ部61には互換性があることから、2つのネジ部61を反転させることで、組み合わせて雄ネジ構造を形成することが可能である。2つのネジ部61が反転して組み込まれることから、ビス69の締め付け方向は、左右(周方向の対応する位置)にて反対方向となっている。通常、円筒状の雄ネジ構造を1本の部品で作ると、金型との関係で、型に対して捻りながら部品を取り出すことが必要となる。しかしながら、円筒状の雄ネジ構造をフランジ50の分割方向と直交する方向で縦に分割することで、成型に要する手間を軽減できる。なお、雄ネジ構造は、フランジ50の分割方向と交差する方向で縦に分割されてもよい。
【0024】
また、第1の実施の形態におけるネジ部61は、可視光透過部材で形成したフランジ50とは異なり、可視光を透過しない不透明樹脂などの不透明部材によって形成されている。不透明部材を用いることで外からの光を遮断し、2つのネジ部61によって形成される雄ネジ構造の内部を見え難くしている。
【0025】
図5(b)には、個々のネジ部61の構成が示されている。
図5(b)に示すように、ネジ部61は、ネジ切り部62と、平面部63と、平面部63から延びる嵌合部64とを有している。また、分割された雄ネジ構造を組み立てて固定するためのネジ切り65と、ねじ穴66とを有している。更に、同軸ケーブル40を通過させ固定するためのケーブルガイド溝67を有している。
【0026】
ネジ切り部62は、二条ネジ構造を有している。二条ネジは、ネジ山を形成する螺旋部を2列、存在させ、ネジが一回転でピッチの2倍分、移動するネジである。一条ネジ構造とすると、雄ネジ構造を2つに分割した場合に、互いのピッチがずれることから、共通の分割部品を合わせてもネジの山と山、谷と谷とが一致せず、分割部品として共通の部品を採用することができない。しかしながら、二条ネジ構造を採用することで、左右対称とすることができ、共通のネジ部61を合わせて雄ネジ構造を採用した場合でも、2つのネジ山の1つは連続させることが可能となり、雄ネジ構造としての機能を実現することができる。また、ネジ部61を一つの金型で制作することができるため、型代費用の発生を抑えられるとともに、高い生産性で生産することも可能となる。
【0027】
また、第1の実施の形態では、ネジ部61にて、ネジの一部が二条ネジ構造を有しない平面部63を、2面、形成している。ネジ切り部62の間を平面とすることで、ネジ部61の形成に際して用いられる金型を単純化させている。すなわち、ネジ切り部62を分割部分まで形成すると、その分割部分のネジの端が急峻となり、これを形成しようとすると抜きの型が複雑となる。そこで、平面部63を設けることで、金型の複雑化を回避した。また、平面部63に製品の銘板を取り付けることもできる。またネジ部61は、平面部63に連続する位置に嵌合部64が設けられている。
図5(b)では凸形状が示されているが、
図3に示すように、凸形状に嵌合する相手側は凹形状となっている。これにより、嵌合時に長手方向へのずれをなくすことが出来、ナット71でスムーズに締め付けをすることが可能となる。なお、この平面部63は必ずしも平面である必要はなく、例えば曲面であってもよい。
【0028】
位置決め構造体60のナット71は、2つのネジ部61によって形成される雄ネジ構造に非可視側からねじ込まれ、締め付けられることで、天井100の裏側(非可視側)からアンテナ構造体1を固定する。第1の実施の形態が適用されるナット71は、
図2および
図5(c)に示すように、内側に雌ネジ76を有する小外径部72と、内部77が袋状である大外径部73と、大外径部73の端部に形成される円環状の底面74とを有している。小外径部72と大外径部73との間にはリブ75が設けられている。ナット71を締め付ける際、ユーザはリブ75に指をかけることで、締め付けが容易となる。
【0029】
第1の実施の形態におけるナット71は、可視光透過部材で形成したフランジ50とは異なり、可視光を透過し難い不透明樹脂などの不透明部材によって形成されている。
【0030】
ここで、通常のネジとナットとの構造では、ネジ切りのなされている部分までしか締め付けることができない。しかしながら、第1の実施の形態におけるナット71では、内部77を袋状としていることで、ナット71の底面74が、天井100などの設備の裏面に押し当てられるまで締め付けることができるため、厚さの薄い天井板等にも確実に固定することができる。このとき、給電部20は、袋状である内部77に被さる。この給電部20を覆うナット71の内部77が袋状となっていることで、例えば天井100の裏側である非可視側からの光が天井100の可視側に漏れ難い。
【0031】
〔給電部20〕
次に、第1の実施の形態が適用される給電部20について説明する。第1の実施の形態では、複数のアンテナ12の個々のアンテナ12から延伸し、この個々のアンテナ12に対して給電するための給電部材である同軸ケーブル40が接続される複数の給電部20を有している。
図4に示すように、個々の給電部20は、同軸ケーブル40が接続される給電基板21を有しており、アンテナ部10の接点13をフランジ50の押圧面53によって給電基板21に押圧している。給電基板21は、例えば、FR−4(Flame Retardant-4)やCEM−3(Composite epoxy material-3)などのガラスエポキシ(ガラエポ)素材の基板上であってアンテナ部10の接点13と対峙する面に、例えば銅によってパターンが形成されている。この給電基板21は、中央に給電基板アンテナ給電部21aと、給電基板アンテナ給電部21aの周囲に給電基板アンテナ給電部21aとは絶縁された給電基板GND部21bとが形成されている。そして、給電基板21上の中央に設けられた給電基板アンテナ給電部21aと同軸ケーブル40の芯線41とが半田接合され、給電基板21上の給電基板GND部21bと同軸ケーブル40の外導体42とが半田接合されている。
【0032】
給電部20の組み立てでは、同軸ケーブル40が半田付けされた給電基板21の給電基板アンテナ給電部21aと給電基板GND部21bとを、アンテナ部10の接点13に対峙させ、2つのフランジ50にて押し当てる。そして、一方のフランジ50のネジ締め付け孔56にネジ58を通し、他方のフランジ50のネジ切り孔57にねじ込むことで、給電基板21とアンテナ部10とを2つのフランジ50に挟み込む。このとき、アンテナ部10は、接点13だけではなく、フィルム11の上端部領域11aも2つのフランジ50に挟まれ、アンテナ部10の基材となるフィルム11の姿勢が良好に保たれる。なお、2つのフランジ50が重ね合わされた長尺部52の一端側と他端側とでは、ネジ58を通す方向が逆となる。
また、このように給電基板21を2つのフランジ50にて押し当てる構造とすることで、別途押し当てる部材を必要とせずに給電基板21とアンテナ部10の接点13を押圧し、確実に接続できるようにする。そして、給電部20は、アンテナ部10より非可視側に配置されることになる。
【0033】
〔レンズ部30〕
図6(a)は、フランジ50における半レンズ部31の側面を示している。つまり、2つ(一対)のフランジ50が合わせられる半レンズ部31の対峙面51を示している。そして、フランジ50の半レンズ部31は、
図1(a)、(b)に示したように、2つ(一対)のフランジ50を合わせた際に、この対峙面51を断面とする回転体となってレンズ部30を構成する。
【0034】
半レンズ部31は、前述したように、2つの半凹レンズ(半凹レンズ32、半凹レンズ33)を備えている。そして、2つの半凹レンズ(半凹レンズ32、半凹レンズ33)の間は、空洞になっている。
【0035】
半凹レンズ32は、一方の面(Z方向)が平坦で、他方の面(−Z方向)が凹状になった片凹レンズである。一方、半凹レンズ33は、両面が凹状になった両凹レンズである。つまり、半凹レンズ33は、中央に凹面(α)を有し、その周りが階段状になった一方の面(β)と、凹面(γ)を有する他方の面とで構成されている。この階段状の面(β)は、
図6(a)の左側に示すように、破線で示す平坦な面(δ)を、予め定められた間隔の同心円の円筒で分割して、他方の面である凹面(γ)に沿って凹面(γ)に近づける(オフセットする)ことで構成されている。このように平坦な面(δ)を面(β)のように階段状にすることで、厚さ(樹脂の厚み)が大きく異ならないようになる。よって、射出成型などによるフランジ50の形成がしやすくなる。また、厚さが大きく異なる部分を通して見ると像に歪みが生じるが、厚さが大きく異ならないようにすることで像の歪みが低減される。さらに、斜め方向から眺めても、レンズの縁辺の影響がなく像が見られる。なお、階段状の面(β)の角の部分に丸みを設けると、その部分が凸レンズとして働き、凹レンズとしての機能が損なわれる恐れがある。つまり、階段状の面(β)はX方向の面とZ方向の面とで構成されていることがよい。
【0036】
なお、第1の実施の形態において、フランジ50の長尺部52の厚さ(対峙面51の幅)は約3mmとしている。この厚さが厚すぎると透過性が低下し、この厚さが薄すぎるとフィルム11を安定して固定できない。この厚さを適正に設定することにより、透過性を保ちつつ、フィルム11を安定して固定することができる。そこで、半レンズ部31の厚さも約3mmとなるように、階段状の面(β)を設けている。
【0037】
図6(b)、(c)では、アンテナ構造体1を取り付けるために天井100に設けた貫通孔110(左側)、および貫通孔110にアンテナ構造体1を取り付けた状態(右側)を示している。
図6(b)に示すように、レンズ部30を備えるフランジ50(w 30)を通して天井100を見ることにより、アンテナ構造体1を取り付けるために天井100に設けられた貫通孔110および貫通孔110内に設けられた給電部20が小さく見える。これに対して、
図6(c)に示すように、レンズ部30を備えない場合には、貫通孔110および給電部20がそのままの大きさで見えてしまう。このように、フランジ50がレンズ部30を備えることで、可視側から見た場合、天井100に設けた貫通孔110が見えにくくなる。また、給電部20を貫通孔110の内部に配置することにより、可視側からは、貫通孔110とともに、給電部20も見えない様にしている。
【0038】
前述したように、ネジ部61と同様にナット71に不透明部材を用いることで、外から(例えば天井100の裏側から)の光の透過を抑制(または遮断)して、アンテナ部10側(例えば天井100の表側)に光が漏れないようにし、ナット71の内部77に含まれる構造物を見えにくくしている。このようにすることで、可視側からの視覚的外観をより良好とすることができる。
【0039】
図7は、レンズ部30を用いることにより天井100に設けた貫通孔110や給電部20が小さく見えることを説明する図である。
天井100には、貫通孔110が設けられている。そして、凹レンズ200が、天井100より可視側(−Z方向)の貫通孔110に対向する位置に設けられているとする。なお、凹レンズ200は、レンズ部30を等価的に表す凹レンズである。そして、この貫通孔110を、可視側(−Z方向)から凹レンズ200を介して眺めるとする。ここで、貫通孔110の径は、天井100を横切る方向(Z方向)に同じであるとする。つまり、貫通孔110の径は、可視側(端110a)から非可視側(端110b)にかけて同じであるとする。つまり、貫通孔110の側面110cは、円筒状である。
【0040】
ここで、凹レンズ200の焦点Fが天井100より可視側(−Z方向側)にあるとする。すると、貫通孔110の可視側の端110aの虚像110a′は、焦点Fと中心Oとの間に形成される。そして、貫通孔110の非可視側の端110bの虚像110b′は、虚像110a′と焦点Fとの間に形成される。そして、虚像110a′が虚像110b′に比べて大きくなる。つまり、凹レンズ200を介して貫通孔110を見ると、非可視側の径(虚像110b′)が可視側の径(虚像110a′)より小さく見える。つまり、虚像110a′と虚像110b′との間に、貫通孔110の側面110cが見えることになる。つまり、貫通孔110は、円錐状に見えることになる。
【0041】
よって、貫通孔110の可視側の端110aの像が可視側から見えにくくなるように、凹レンズ200の焦点Fおよび凹レンズ200の位置を設定すればよい。このようにすれば、貫通孔110及び貫通孔110の内部に設けられた給電部20の部分に、天井100の色及び模様が広がって見える。
なお、貫通孔110の内部に給電部20などを設けない場合であって、貫通孔110の側面が見えてもよい場合には、貫通孔110の非可視側の端110bが見えにくくなるようにすればよい。
【0042】
また、凹レンズ200は天井100より可視側(−Z方向)にあるとしたが、凹レンズ200を貫通孔110の内部に設けてもよい。貫通孔110の側面が見えてもよい場合には、有効である。なお、凹レンズ200を天井100より可視側(−Z方向)に設けると、凹レンズ200の中心Oと貫通孔110との間の距離を稼ぐことができ、凹レンズとして働く凹レンズ200の面積が大きくなり、凹レンズ200の設計が容易になる。
【0043】
上記では、凹レンズ200の焦点Fが天井100より可視側(−Z方向)にあるとして説明したが、凹レンズ200の焦点Fは、天井100より非可視側(Z方向)にあってもよく、天井100の断面(表面と裏面との間)にあるようにしてもよい。なお、凹レンズ200は、レンズ部30の等価的な凹レンズである。凹レンズ200は、半凹レンズ32、33のそれぞれから構成される2つの凹レンズで構成してもよく、1つの凹レンズや3以上の凹レンズで構成してもよい。
【0044】
〔位置決め構造体60の組み立て〕
前述の
図4を用いて説明したように、給電部20をフランジ50によって組み立てた後、
図5(b)に示すネジ部61を用いて、
図3に示すような構造体を組み立てる。より具体的には、フィルム11を挟んで2つのフランジ50を重ね合わせた方向(Y方向)とは直交する方向(X方向)に、一方のネジ部61を押し当て、Z方向に上下方向を反転させた他方のネジ部61を押し当てる。図示しないが、ネジ部61の内部には、フランジ50の凹部54および凸部55に合わせて切り込みが形成されている。そして、一方のネジ部61の嵌合部64の凸形状と、他方のネジ部61の嵌合部64の凹形状とが噛み合い、
図3に示すように組み立てられる。ネジ部61の内部の切り込みと、フランジ50の凹部54および凸部55とによって、フランジ50とネジ部61との位置が一意に決定され、組み合わさる。このとき、同軸ケーブル40は、
図5(b)に示すケーブルガイド溝67に案内される。その後、ビス69を、1つの給電部20に対して4本ずつ、Y方向にて方向を変えて挿入し、締め付けることで、位置決め構造体60のネジ部61と、アンテナ部10と給電部20と同軸ケーブル40とがフランジ50と一体的に構成(一体化)されて、
図3に示すような一つの構造物として形成される。
【0045】
〔天井100への取り付け〕
例として天井100にアンテナ構造体1を取り付ける場合を説明する。
天井100には、フランジ50の組付構造(押圧面53、凹部54、凸部55)、および位置決め構造体60のネジ部61が通るとともに、フランジ50の半レンズ部31の幅広面32aが通らない、という寸法範囲の貫通孔110があけられている。
そして、
図3に示した構造物の同軸ケーブル40、および位置決め構造体60のネジ部61が可視側から貫通孔110に通される。そして、天井100の上方(天井裏)では、ネジ部61にナット71がねじ込まれ、ナット71の底面74(
図5(c)参照)が、天井100の裏面に押し当てられて締め付けられる。これによって、天井100の可視側からフランジ50の長尺部52の上面52aおよびレンズ部30の幅広面32aが天井100に当接し、天井100の非可視側からナット71の底面74が押し当てられ、アンテナ部10は、天井100に固定される。
【0046】
以上説明したように、天井100の可視側からは、アンテナ構造体1を構成するアンテナ部10と、フランジ50(フランジ50の長尺部52および半レンズ部31)だけが現われ、それ以外の構造体は表面に現われない。アンテナ部10の基材であるフィルム11は、可視光の透過性が高い透明な素材が使用され、アンテナ12は可視光の透過性が高くなるように透明導電体で形成されており、アンテナ部10は全体として光透過性が高い。更に加えて、可視側に現われるフランジ50は、可視光を透過する、すなわち光透過性を有する可視光透過部材によって形成されている。また、ナット71は、前述のように非透過性の部材であり、ナット71の内部77が袋状であることから、天井100の非可視側から可視側に光が漏れることが抑制される。このように、ユーザから見える露出部分の構造物は全て透明であるとともに、アンテナ構造体1を取り付けるために天井100に設けた貫通孔110や給電部20は、フランジ50のレンズ部30により見えにくくなっている。よって、アンテナ構造体1を環境に溶け込ますことが可能となる。
【0047】
2つ(一対)のフランジ50とするとともに、半レンズ部31を、2つの半凹レンズ32、33で構成して中空とすることで、フランジ50を射出成型で形成する際に必要となる型が、フランジ50を挟み込む2つ(上下型)で済む。これにより、フランジ50の製造が容易になる。
【0048】
〔変形例〕
図8は、アンテナ構造体1の変形例を示した図である。
図8(a)は、4つのアンテナ部10を備える場合、
図8(b)は、1つのアンテナ部10を備える場合、
図8(c)は、アンテナ部10の大きさが異なる場合である。
図8(a)に示すアンテナ構造体2は、アンテナ部10に4つのアンテナ12が設けられ、位置決め構造体60のネジ部61およびナット71も4つ、備えられている。フランジ50は、
図5(a)の変形として、4つのレンズ部30とそれらの間を接続する長尺部52を備えている。このように、第1の実施の形態では、アンテナ12の個数は、2つのみならず、4つ、6つなど、複数個のアンテナ12を一つの構造体に形成することが可能である。そして、これらのように構成した場合でも、フランジ50に可視光透過部材を用い、天井100の可視側から見えるものは可視光透過とすることで、天井100にアンテナ構造体2を取り付けた場合であっても、環境に溶け込ませることが可能となる。また、4つ、6つなど、数が増えた場合でも、フランジ50の長尺部52の側面を含む対峙面51によって、アンテナ部10のフィルム11を挟み込み、フィルム11を伸ばした状態で保持することができる。なお、2つのアンテナ12に対応するフランジ50を2個用いてもよい。
【0049】
図8(b)に示すアンテナ構造体3は、1つの構造体に形成されるアンテナ12の個数が1つである。このように、第1の実施の形態では、アンテナ12の個数は複数個とせず、単一のアンテナ12と、ネジ部61およびナット71が単一の位置決め構造体60を用いている。そして、フランジ50は、1つのレンズ部30を備えている。なお、長尺部52を備えていない。かかる場合でも、フランジ50に可視光透過部材を用いることで、天井100にアンテナ構造体3を取り付けた場合であっても、構造体の取り付けに伴いユーザに生じ得る違和感を軽減できる。
なお、ここで示したフランジ50を、複数のアンテナ12を有するアンテナ構造体1に適用してもよい。この場合は、アンテナ12毎にレンズ部30を備えたフランジ50を設けることになる。このようにすることで、用いるアンテナ12の個数に対応するフランジ50を設けることを要しない。
【0050】
図8(c)に示すアンテナ構造体4は、複数のアンテナ12のうち隣り合う2つのアンテナ12によって形成される距離dが、
図1に示すアンテナ構造体1に比べて短いことに特徴がある。例えば、アンテナ12の中心のピッチが、アンテナ構造体1で約200mmであるが、アンテナ構造体4ではアンテナ12の中心のピッチ(距離d)が約70mmと短い。ここでも、フランジ50には可視光透過部材を採用し、天井100の可視側からの視認性を低くして、環境への違和感を軽減している。
【0051】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、2つの半凹レンズ(半凹レンズ32、33)から構成されるレンズ部30を用いた。第2の実施の形態では、凹レンズとして機能するフレネルレンズを備えるレンズ部(後述する
図9(a)、(b)に示すレンズ部35)を用いる。
【0052】
図9は、第2の実施の形態が適用されるアンテナ構造体5の構成を示した斜視図である。
図9(a)は、アンテナ構造体5の構成、
図9(b)は、設備の一例である天井100にアンテナ構造体5を取り付けた状態を説明するための図である。
【0053】
図9(a)に示すように、第2の実施の形態が適用されるアンテナ構造体5は、第1の実施の形態が適用されるアンテナ構造体1と同様に、高周波回路が形成されたアンテナ部10と、アンテナ部10に対して給電するための同軸ケーブル40が接続される給電部20とを備えている。そして、アンテナ構造体5は、アンテナ部10や給電部20を、天井100などの設備に位置決めするためのフランジ50および位置決め構造体60を備えている。フランジ50は、凹レンズとして機能するフレネルレンズで構成されたレンズ部35を備えている。フランジ50は、可視光透過部材で構成されている。そして、アンテナ構造体5は、天井100に設けられた貫通孔(
図10(b)、(c)参照の貫通孔110)により天井100に取り付けられている。
【0054】
なお、
図9(a)において、レンズ部35は、
図9(a)に見える部分に対してアンテナ部10を対称面とする構造体がアンテナ部10の裏面側に構成されている。つまり、レンズ部35は、アンテナ部10により分割されている。なお、アンテナ部10は、可視光透過部材で構成されているので、レンズ部35は、全体として凹レンズとして機能するフレネルレンズとなる。
【0055】
アンテナ部10、給電部20は、第1の実施の形態と同様である。また、レンズ部(
図9(a)に示すレンズ部35)を除くフランジ50も、第1の実施の形態と同様である。よって、同様の部分には、同じ符号を付して説明を省略する。
【0056】
そして、
図9(b)に示すように、天井100の下方(居住スペース)である可視側から、天井100に取り付けられたアンテナ構造体5を眺めると、アンテナ部10とフランジ50の可視側部分のみが見えるようになっている。そして、可視光透過部材で構成されたフランジ50を介して貫通孔110の部分を眺めても、フランジ50に設けられたレンズ部35により貫通孔110の部分が見えにくいようになっている。このように、ユーザから見える露出部分の構造物を全て透明とすることで、アンテナ構造体5を環境に溶け込ますことが可能となる。
【0057】
以下では、アンテナ構造体5の第1の実施の形態におけるアンテナ構造体1と異なるフランジ50のレンズ部35を説明する。
図9(a)に示すように、2組のアンテナ12を結ぶアンテナ部10の延びる方向(図のX方向)を長手方向とする長尺状の構造物であるフランジ50の両端部に、2つのレンズ部35が設けられている。そして、レンズ部35は、可視側にフレネルレンズとして機能する溝が設けられている。そして、レンズ部35の可視側の表面(フレネルレンズの溝の頂部をつないだ面)は、フランジ50の長尺部52の上面52aと同一面となっている。
【0058】
〔レンズ部35〕
図10は、フランジ50におけるレンズ部35の構成及びレンズ部35の作用を説明する図である。
図10(a)は、レンズ部35の構成、
図10(b)は、レンズ部35を備える場合(w 35)を説明する図、
図10(c)は、レンズ部35を備えない場合(w/o 35)を説明する図である。なお、
図10(c)は、
図6(c)と同じである。
図10(a)は、フランジ50における半レンズ部36の側面を示している。つまり、第1の実施の形態と同様に、アンテナ構造体5は、2つ(一対)のフランジ50を備えている。そして、個々のフランジ50は、半レンズ部36を備えている。半レンズ部36が合わせられてレンズ部35が構成される。つまり、
図10(a)は、2つ(一対)のフランジ50が合わせられる半レンズ部36の対峙面51を示している。そして、フランジ50のレンズ部35は、2つ(一対)のフランジ50を合わせた際に、この対峙面51を断面とする回転体となるように構成されている。
【0059】
そして、レンズ部35は、可視側(−Z方向)にフレネルレンズとして機能するための溝が設けられている。この溝は、一方の面を平坦とし、他方の面を凹状にした凹レンズを厚さ方向に等間隔の切断面で切断して、予め定められた厚さになるように、凹状の表面をシフトさせることで構成されている。なお、凹レンズの形状は、焦点距離などにより任意に設定可能である。また、フレネルレンズとして機能するための溝は、上記の凹レンズを等間隔の同心円となる円筒を切断面として切断して、予め定められた厚さになるように、凹状の表面をシフトさせることで構成してもよい。また、他の方法で構成してもよい。なお、フレネルレンズとして機能する溝を、目視で識別できないほど細かくすれば、アンテナ構造体5を環境により溶け込ますことが可能となる。
【0060】
図10(b)、(c)では、アンテナ構造体5を取り付けるために天井100に設けた貫通孔110(左側)、および貫通孔110にフランジ50を取り付けた状態(右側)を示している。
図10(b)に示すように、レンズ部35を通して天井100を見ることにより、アンテナ構造体5を取り付けるために天井100に設けられた貫通孔110および貫通孔110内に設けられた給電部20が小さく見える。これに対して、
図10(c)に示すように、レンズ部35を備えない場合には、貫通孔110がそのままの大きさで見えてしまう。このように、フランジ50がレンズ部35を備えることで、可視側から見た場合、天井100に設けた貫通孔110が見えにくくなる。また、給電部20を貫通孔110の内部に配置することにより、可視側からは、貫通孔110とともに、給電部20も可視側からは見えにくくしている。
【0061】
第2の実施の形態に、第1の実施の形態の
図8(a)、(b)及び(c)に示した変形例を適用してもよい。
【0062】
なお、レンズ部35をフレネルレンズとしたことで、フランジ50を射出成型で形成する際に必要となる型が、フランジ50を挟み込む2つの型に加えて、フレネルレンズとして機能する溝を形成する型との3方向の型が必要となる。しかし、フレネルレンズとしたレンズ部35を用いることで、第1の実施の形態におけるレンズ部30に比べて、可視側に飛び出す部分が小さくなる(薄くなる)。
【0063】
また、フランジ50は、長尺部52、組付構造、およびレンズ部35が一体成型されているとするが、組付構造を別部材として構成して、一体成型された長尺部52およびレンズ部35に組み込むようにしてもよい。このとき、レンズ部35は、フレネルレンズを可視側及び非可視側の両側に設けてもよく、可視側に設けず非可視側に設けてもよい。
【0064】
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態および第2の実施の形態では、透明導電体を備える構造体をアンテナ構造体として説明した。
第3の実施の形態では、透明導電体を備える構造体を電波遮蔽構造体としている。
【0065】
図11は、第3の実施の形態が適用される電波遮蔽構造体6の構成を示した斜視図である。
図11(a)は、電波遮蔽構造体6の構成、
図11(b)は、設備の一例である天井100に電波遮蔽構造体6を取り付けた状態を説明するための図である。
図11(a)に示しように、第1の実施の形態におけるアンテナ構造体1において、アンテナ部10が電波遮蔽部80に置き換えられている。
【0066】
図11(a)に示すように、第3の実施の形態が適用される電波遮蔽構造体6は、第1の実施の形態が適用されるアンテナ構造体1のアンテナ部10と同様に、例えばフレキシブルプリント基板の一つである電波遮蔽部80と、電波遮蔽部80に対して給電するための給電部材の一つである同軸ケーブル40が接続される給電部20とを備えている。そして、電波遮蔽構造体6は、電波遮蔽部80や給電部20を、天井100などの設備に位置決めするためのフランジ50および位置決め構造体60を備えている。フランジ50は、透明な部材で構成されている。そして、電波遮蔽構造体6は、天井100に設けられた貫通孔(
図6(b)、(c)参照)により天井100に取り付けられている。
【0067】
給電部20およびフランジ50は、第1の実施の形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0068】
そして、
図11(b)に示すように、天井100の下方(居住スペース)である可視側から、天井100に取り付けられた電波遮蔽構造体6を眺めると、電波遮蔽部80とフランジ50の可視側部分のみが見えるようになっている。さらに、透明な部材で構成されたフランジ50を介して、貫通孔110の部分を眺めても、フランジ50に設けられたレンズ部(後述するレンズ部58)により貫通孔110の部分が見えにくいようになっている。このように、ユーザから見える露出部分の構造物を全て透明とすることで、電波遮蔽構造体6を環境に溶け込ますことが可能となる。
【0069】
以下では、第1の実施の形態におけるアンテナ構造体1と異なる電波遮蔽構造体6の電波遮蔽部80を説明する。
〔電波遮蔽部80〕
電波遮蔽部80は、フィルム状に構成することが可能であり、例えばPET樹脂などの可視光を透過する光透過性の高い透明な樹脂製素材からなるフィルム81を基材としている。そして、このフィルム81に、光透過性が高くなるように導電材(透明導電体)の材料が選定された電波遮蔽膜82が形成されている。給電部20を介して、電波遮蔽膜82を例えばグランド(GND)に設定することで、電波遮蔽膜82により電波が反射されることで、電波遮蔽膜82がシールドとして機能して、電波遮蔽膜82を通過して電波が伝搬することを遮断する。
【0070】
なお、電波遮蔽膜82は、GNDに設定されればよいため、給電部20は、給電基板アンテナ給電部21aと給電基板GND部21bとが分かれていることを要しない。また、同軸ケーブル40の代わりに、外導体42を備えないケーブルであってもよい。また、電波が遮断されるのであれば、電波遮蔽膜82をGNDに設定することを要しない。
【0071】
さらに、電波遮蔽構造体6は、電波遮蔽膜82を電波遮蔽に必要な面積とすればよく、
図8(a)に示したアンテナ構造体2のように、横長に構成して、複数の位置決め構造体60により天井100に固定するようにしてもよい。また、電波遮蔽構造体6は、
図8(b)、(c)のアンテナ構造体3、4のように、構成されてもよい。
【0072】
また、フランジ50のレンズ部30を第2の実施の形態で説明したフレネルレンズとしたレンズ部35としてもよい。
【0073】
さらに、第1の実施の形態から第3の実施の形態では、レンズ部30、35は、凹レンズとしたが、凸レンズとしてもよい。凸レンズとして構成し、天井100部分に対する距離や焦点距離を調整することで、貫通孔110がぼやけて見られるようにすることで、貫通孔110や給電部20が見えにくくなるように構成してもよい。
【0074】
以上において、透明導電体を備える構造体として、アンテナ構造体1〜5、および電波遮蔽構造体6を説明したが、透明導電体を備える他の構造体として構成してもよい。
また、第1の実施の形態から第3の実施の形態では、アンテナ構造体1〜5および電波遮蔽構造体6を設備の一例として天井100に取り付けることで説明したが、垂直壁などの他の設備に取り付けることも可能である。かかる場合には、アンテナ12または電波遮蔽膜82が向く面が可視側、その可視側と反対側の面が非可視側となる。
【0075】
以上、第1の実施の形態から第3の実施の形態を説明したが、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形を行っても構わない。