特許第6803655号(P6803655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6803655透明積層フィルム、透明導電フィルム、タッチパネル及び表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803655
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】透明積層フィルム、透明導電フィルム、タッチパネル及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20201214BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20201214BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   G06F3/041 490
   B32B7/023
   H01B5/14 A
   G06F3/041 400
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-143390(P2015-143390)
(22)【出願日】2015年7月17日
(65)【公開番号】特開2017-27241(P2017-27241A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】314017635
【氏名又は名称】株式会社トッパンTOMOEGAWAオプティカルフィルム
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森永 かおり
(72)【発明者】
【氏名】松井 幸子
【審査官】 梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−107557(JP,A)
【文献】 特許第5574253(JP,B1)
【文献】 特開2007−012466(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/041239(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/088836(WO,A1)
【文献】 特開2015−037000(JP,A)
【文献】 特開2012−226056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
B32B 7/023
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方の面に、基材側から順に高屈折率ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層、透明導電層を備えた透明導電フィルムであって、
前記高屈折率ハードコート層の屈折率が1.58以上1.71以下であり、
前記高屈折率層の屈折率が1.65以上1.76以下、かつ、前記高屈折率層の膜厚が10nm以上50nm以下であり、
前記低屈折率層の屈折率が1.45以上1.55以下、かつ、前記低屈折率層の膜厚が30nm以上50nm以下であり、
前記透明導電層の屈折率が1.80以上2.00以下、かつ、前記透明導電層の膜厚が25nm以上35nm以下であり、
前記透明導電フィルムの透明導電層側での反射光の、L表色系における色座標a及びbを、それぞれa及びbとし、前記透明導電フィルムの透過光のL表色系における色座標a及びbを、それぞれa及びbとし、550nmにおける前記透明導電フィルムの透過率をTとしたとき、下記式を満たす、透明導電フィルム。
0.52<a1.77
0.75<a−0.47
7.95<b−3.26
2.03<b3.28
88%<T
【請求項2】
基材の少なくとも一方の面に、基材側から順に高屈折率ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層を備え、屈折率が1.80以上2.00以下、かつ、膜厚が25nm以上35nm以下の透明導電層を有する透明導電フィルムに用いられる透明積層フィルムであって、
前記高屈折率ハードコート層の屈折率が1.58以上1.71以下であり、
前記高屈折率層の屈折率が1.65以上1.76以下、かつ、前記高屈折率層の膜厚が10nm以上50nm以下であり、
前記低屈折率層の屈折率が1.45以上1.55以下、かつ、前記低屈折率層の膜厚が30nm以上50nm以下であり、
前記透明積層フィルムの低屈折率層側での反射光のL表色系における色座標a及びbを、それぞれa及びbとし、前記透明積層フィルムの透過光のL表色系における色座標a及びbを、それぞれa及びbとし、550nmにおける前記透明積層フィルムの透過率をtとしたとき、下記式を満たす、透明積層フィルム。
−0.25<a<0.25
−0.05<a<0.05
0<b<3
−0.5<b<0
88%<t
【請求項3】
前記透明導電フィルムをアニール処理した後における透明導電層側の表面抵抗値が100Ω/□以下であることを特徴とする、請求項1記載の透明導電フィルム。
【請求項4】
請求項1に記載の透明導電フィルムを含む、タッチパネル。
【請求項5】
請求項1に記載の透明導電フィルムを含む、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルに使用される透明積層フィルム及び透明導電フィルム、並びに当該透明積層フィルムを用いたタッチパネル及び表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルの大面積化を図るために、透明導電層(透明電極層)の低抵抗値化が進んでおり、透明導電層の膜厚を厚くする傾向がある。透明導電層の膜厚が厚くなると、透過率が低下すると共に、透過光及び反射光の着色が生じる。また、透明導電層を所定形状にパターニングした構成では、透明導電層の透過率が低下して反射率が上昇することにより、透明電極層が存在する領域と透明導電層が存在しない領域との反射率差が大きくなり、透明導電層のパターン形状が視認されやすくなるという問題もある。
【0003】
特許文献1には、透明基材、透明層、高屈折率層、低屈折率層及び透明導電層を積層した積層体が開示されている。特許文献1では、パターニングされた透明導電層を不可視化するために必要な、高屈折率層及び低屈折率層の屈折率と膜厚、透明導電層存在領域及び非存在領域のそれぞれにおける反射光の色座標、色差について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5574253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、透明導電層の厚膜化に伴う透過率低下や透過光の着色という課題に対しては何ら検討されていない。
【0006】
それ故に、本発明は、透明導電層を厚膜化した場合でも、高透過率を有し、反射光及び透過光の着色を抑制できる透明積層フィルム及び透明導電フィルム、並びに、透明積層フィルムを用いたタッチパネル及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る透明導電フィルムは、基材の少なくとも一方の面に、基材側から順に高屈折率ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層、透明導電層を備え、高屈折率ハードコート層の屈折率が1.58以上1.71以下であり、高屈折率層の屈折率が1.65以上1.76以下、かつ、高屈折率層の膜厚が10nm以上50nm以下であり、低屈折率層の屈折率が1.45以上1.55以下、かつ、低屈折率層の膜厚が30nm以上50nm以下であり、透明導電層の屈折率が1.80以上2.00以下、かつ、透明導電層の膜厚が25nm以上35nm以下であり、透明導電フィルムの透明導電層側での反射光の、L表色系における色座標a及びbを、それぞれa及びbとし、透明導電フィルムの透過光のL表色系における色座標a及びbを、それぞれa及びbとし、550nmにおける透明導電フィルムの透過率をTとしたとき、下記式を満たす。
.52<a1.77
0.75<a−0.47
7.95<b−3.26
2.03<b3.28
88%<T
【0008】
また、本発明に係る透明積層フィルムは、基材の少なくとも一方の面に、基材側から順に高屈折率ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層を備え、屈折率が1.80以上2.00以下、かつ、膜厚が25nm以上35nm以下の透明導電層を有する透明導電フィルムに用いられるものであって、高屈折率ハードコート層の屈折率が1.58以上1.71以下であり、高屈折率層の屈折率が1.65以上1.76以下、かつ、高屈折率層の膜厚が10nm以上50nm以下であり、低屈折率層の屈折率が1.45以上1.55以下、かつ、低屈折率層の膜厚が30nm以上50nm以下であり、透明積層フィルムの低屈折率層側での反射光のL表色系における色座標a及びbを、それぞれa及びbとし、透明積層フィルムの透過光のL表色系における色座標a及びbを、それぞれa及びbとし、550nmにおける透明積層フィルムの透過率をtとしたとき、下記式を満たす。
−0.25<a<0.25
−0.05<a<0.05
0<b<3
−0.5<b<0
88%<t
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、透明導電層を厚膜化した場合でも、高透過率を有し、反射光及び透過光の着色を抑制できる透明積層フィルム及び透明導電フィルム、並びに、透明積層フィルムを用いたタッチパネル及び表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】タッチパネルを備える画像表示装置の構成例を示す断面図
図2図1に示す透明導電フィルムに用いる積層フィルムの層構成の一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、タッチパネルを備える画像表示装置の構成例を示す断面図である。
【0012】
画像表示装置1は、背面側(図1の下側)から観察側(図1の上側)へと順に、バックライト4、偏光板5、液晶パネル6、偏光板7、透明導電フィルム9a及び9b、カバーガラス12を備える。偏光板7、透明導電フィルム9a及び9b、カバーガラス12は、透明光学粘着フィルム等の接着層8、10及び11を介して貼り合わされている。図1は、偏光板7と透明導電フィルム9aと、周縁部のみに接着層8を設けて空気層を介在させる、いわゆる、エアギャップ方式により貼り合わされた構成例を示す。
【0013】
図2は、図1に示す透明導電フィルムに用いる積層フィルムの層構成の一例を示す断面図である。
【0014】
図2に示す透明導電フィルム9a及び9bは、透明積層フィルム20と、透明積層フィルム20上に積層される透明導電層25とを備える。透明積層フィルム20は、透明基材21と、高屈折率ハードコート層22と、高屈折率層23と、低屈折率層24とを備える。尚、図示を省略しているが、透明導電層25を所定形状にパターニングすることによって、透明電極が形成されている。
【0015】
以下、透明導電フィルムが備える各層の詳細を説明する。
【0016】
(透明基材)
透明基材21は、透明導電フィルムの基体となるフィルムであり、可視光線の透過性に優れた材料により形成される。透明基材21の形成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、セルローストリアセテート等の透明樹脂や無機ガラスを利用できる。また、透明基材21は、複数の材料が積層された複合フィルムであってもよい。透明基材21の厚みは、特に限定されないが、10〜200μmとすることが好ましい。
【0017】
(高屈折率ハードコート層)
高屈折率ハードコート層22は、ウェットコーティング法により形成できる。高屈折率ハードコート層22は、アクリレートモノマー等の電離放射線硬化型樹脂と、高屈折率粒子と、重合開始剤とを含有する高屈折率ハードコート層形成用塗工液を透明基材に塗布し、硬化させることによって形成できる。アクリレートモノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学株式会社製、新中村化学工業株式会社製、サートマー製)を使用できる。高屈折粒子としては、ジルコニア微粒子、チタン微粒子等を使用できる。
【0018】
高屈折率ハードコート層22の屈折率は、1.58〜1.71とする。高屈折率ハードコート層22の屈折率が1.58未満の場合、透明導電層25の成膜後の透過率が低下する。一方、高屈折率22ハードコート層の屈折率が1.71より大きくなると、透明導電層25の成膜後に反射光及び透過光の着色を生じる。
【0019】
高屈折率ハードコート層22の膜厚は、透明積層フィルム20に必要な機械強度を付与でき、かつ、透明積層フィルム20のカールを抑制できる限り、特に限定されない。高屈折率ハードコート層の膜厚は、例えば、1〜10μmである。
【0020】
(高屈折率層)
高屈折率層23は、ウェットコーティング法で形成できる。高屈折率層23は、アクリレートモノマー等の電離放射線硬化型樹脂と、高屈折率微粒子と、重合開始剤とを含有する高屈折率層形成用塗工液を透明基材21に塗布し、塗膜を硬化させることによって形成できる。高屈折率微粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化スズ、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、酸化インジウム、ITO(スズドープ酸化インジウム)、酸化亜鉛等の高屈折率材料からなる微粒子を用いることができる。アクリレートモノマーとしては、高屈折率ハードコート層に例示したものを用いることができる。
【0021】
高屈折率層23の屈折率は、1.65〜1.76とする。高屈折率層23の屈折率が1.65未満になると、透明導電層25の成膜後に着色が生じる。また、高屈折率微粒子を塗液化する都合上、得られる高屈折率層23の屈折率は、1.76程度が現実的な上限値となる。
【0022】
高屈折率層23の膜厚は、10〜50nmとする。高屈折率層23の膜厚がこの範囲から外れると、透明導電層の成膜後に着色が生じる。また、ウェットコーティング法で高屈折率層23を形成する場合、膜厚は10nm程度が現実的な下限値となる。
【0023】
(低屈折率層)
低屈折率層24は、ウェットコーティング法により形成できる。低屈折率層24は、エーテル結合を有するアクリレートモノマー等の電離放射線硬化型樹脂と、重合開始剤とを含有する低屈折率層形成用塗工液を、高屈折率層23に塗布し、塗膜を光重合により硬化させることによって形成できる。エーテル結合を有するアクリレート化合物としては、トリプロピレングリコールジアクリレート(商品名:APG−200、新中村化学工業株式会社製)、プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名:SR492、巴工業株式会社製)、プロポキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名:CD501、巴工業株式会社製)等を利用できる。
【0024】
低屈折率層24の屈折率は、1.45〜1.55とする。低屈折率層24の屈折率が1.45未満になると、透明導電層25の成膜後に着色が生じる。また、低屈折率層24の屈折率が1.55を超えると、透明導電層25の成膜後の透過率が低下する。
【0025】
低屈折率層24の膜厚は、30〜50nmとする。低屈折率層24の膜厚が30nm未満になると、透明導電層25の成膜後の透過率が低下する。また、低屈折率層24の膜厚が50nmを超えると、透明導電層25の成膜後に着色が生じる。
【0026】
上述した高屈折率ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層を形成するためのバインダー樹脂の例としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリアクリレート、グリセリントリアクリレート等のトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能のアクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサアクリレート等の3官能以上の多官能アクリレート化合物や、これらアクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能アクリレート化合物等が挙げられる。
【0027】
上述した重合開始剤の例としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。
【0028】
尚、ウェットコーティング法で層形成を行う場合、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等の公知のウェットコーティング法により塗工液を塗布した後、塗膜を硬化させる。塗工液の塗膜を硬化させる方法としては、例えば、紫外線照射、加熱等を用いることができる。紫外線照射の場合、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、フュージョンランプ等を使用することができる。紫外線照射量は、通常100〜800mJ/cm程度である。
【0029】
(透明導電層)
透明導電層25は、ITO(Indiumu Tin Oxide)、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン等の屈折率が1.80〜2.00の透明導電材料を用いて形成される。透明導電層25の形成方法は、特に限定されないが、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレート法、化学気相成長法(CVD法)等により成膜できる。透明導電層25の成膜後、アモルファスの材料を結晶化させるため、一般に、100〜170℃の温度で5〜120分間のアニール処理が行われる。
【0030】
透明導電フィルム9a及び9bを100〜170℃で5〜120分間加熱した後における透明導電層25の表面抵抗値は100Ω/□以下とする。当該条件でアニール処理を行った後の透明電極層25の表面抵抗値が100Ω/□を超えて大きくなると、大型のタッチパネルへの適用が困難となる。
【0031】
透明導電層25の膜厚は、25〜35nmとする。透明導電層25の膜厚が25nm未満になると、透明導電層25の低抵抗値化を図ることができなくなるので、大面積のタッチパネルへの適用が困難となる。また、透明導電層25の膜厚が35nmを超えると、透明導電層25の透過率が低下する。
【0032】
上述した透明積層フィルム20は、ロール状に巻回された透明基材21を引き出して搬送しながら、透明基材21の一方面に対して順次層形成を行い、得られた透明積層フィルム20を再度巻き取るロール・ツー・ロール法により形成することができる。その後、巻回した透明積層フィルム20を引き出して搬送しながら、低屈折率層24上に透明導電層25を形成することによって、透明導電フィルム9a及び9bを得ることができる。
【0033】
(透明導電フィルムの特性)
高屈折率ハードコート層22、高屈折率層23、低屈折率層24及び透明導電層25の屈折率及び膜厚を上記の範囲に設定することによって、得られた透明導電フィルム9a及び9bは、下記条件式(1)〜(5)を同時に満足する。
0.52<a1.77 ・・・(1)
0.75<a−0.47 ・・・(2)
7.95<b−3.26 ・・・(3)
2.03<b3.28 ・・・(4)
88%<T ・・・(5)
ここで、
:透明導電層側での反射光のL表色系における色座標a
:透明導電層側での反射光のL表色系における色座標b
:透過光のL表色系における色座標a
:透過光のL表色系における色座標b
T:透明導電フィルムの、波長550nmの光の透過率
である。
【0034】
条件式(1)及び(3)を同時に満足しない場合、透明導電層25が存在する領域の反射光が着色する。条件式(2)及び(4)を同時に満足しない場合、透明導電層25が存在する領域を透過した光が着色する。また、条件式(5)を満足しない場合、透明導電層25がある領域の反射光が相対的に増え、透明導電層25が存在する領域と存在しない領域との反射率差が大きくなり、透明導電層25のパターンが視認されやすくなる。
(透明積層フィルムの特性)
また、高屈折率ハードコート層22、高屈折率層23及び低屈折率層24の屈折率及び膜厚を上記の範囲に設定することによって、得られた透明積層フィルム20は、下記条件式(6)〜(10)を同時に満足する。
−0.25<a<0.25 ・・・(6)
−0.05<a<0.05 ・・・(7)
0<b<3 ・・・(8)
−0.5<b<0 ・・・(9)
88%<t ・・・(10)
【0035】
ここで、
:低屈折率層側での反射光のL表色系における色座標a
:低屈折率層側での反射光のL表色系における色座標b
:透過光のL表色系における色座標a
:透過光のL表色系における色座標b
t:透明積層フィルムの、波長550nmの光の透過率
である。
【0036】
条件式(6)及び(8)を同時に満足しない場合、低屈折率層24上に透明導電層25を成膜した後に、透明導電層25が存在する領域の反射光が着色する。条件式(7)及び(9)を同時に満足しない場合、低屈折率層24上に透明導電層25を成膜した後に、透明導電層25が存在する領域を透過した光が着色する。また、条件式(10)を満足しない場合、低屈折率層24上に透明導電層25を成膜した後に、透明導電層25がある領域の反射光が相対的に増え、透明導電層25が存在する領域と存在しない領域との反射率差が大きくなり、透明導電層25のパターンが視認されやすくなる。
【0037】
以上説明したように、高屈折率ハードコート層22、高屈折率層23、低屈折率層24及び透明導電層25の屈折率及び膜厚を上述した範囲内とすることによって、透明導電層25を厚膜化した場合でも、高透過率を有し、反射光及び透過光の着色を抑制できる透明積層フィルム20及び透明導電フィルム9a、9bを実現できる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を具体的に実施した実施例を説明する。
【0039】
実施例1〜11及び比較例1〜14で使用した材料は次の通りである。
【0040】
[透明基材]
ポリエチレンテレフタレートフィルム 商品名:50UH13(東レ株式会社製)、厚み50μm
【0041】
[高屈折率ハードコート層形成用塗液]
UV硬化型機能性ハードコート剤 商品名:リオデュラス(登録商標)TYZシリーズ(東洋インキ株式会社製、高屈折粒子:ZrO
より具体的には、TYZ65(実施例1、3〜9、比較例1〜12)、TYZ63(実施例2)、TYZ58(実施例10)、TYZ71(実施例11)、TYZ57(比較例13)、TYZ72(比較例14)を使用した。
【0042】
[高屈折率層形成用塗液]
UV硬化型機能性ハードコート剤 商品名:リオデュラス(登録商標)TYZシリーズ(東洋インキ株式会社製、高屈折粒子:ZrO)、または、TYTシリーズ(東洋インキ株式会社製、高屈折粒子:TiO
より具体的には、TYZ71(実施例1、4〜10、比較例3〜14)、TYZ65(実施例2)、TYZ76(実施例3)、TYZ72(実施例11)、TYZ60(比較例1)、TYT90(比較例2)を使用した。
【0043】
[低屈折率層形成用塗液(実施例1〜3、6〜11、比較例1、2、5〜14)]
・プロポキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート
商品名:CD501(巴工業株式会社製) 100質量部
・光重合開始剤:イルガキュア184(BASF社製) 5質量部
・溶剤:メチルエチルケトン(東洋インキ株式会社性) 50質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル(東洋インキ株式会社性)50質量部
【0044】
[低屈折率層形成用塗液(実施例4)]
・1,2−ジアクリロキシメチル-パーフルオロシクロヘキサン
商品名:LINC−102A(共栄社化学株式会社製) 100質量部
・光重合開始剤:イルガキュア184(BASF社製) 5質量部
・溶剤:メチルエチルケトン(東洋インキ株式会社性) 50質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル(東洋インキ株式会社性)50質量部
【0045】
[低屈折率層形成用塗液(実施例5)]
・ビスフェノールAEO3.8モル付加物ジアクリレート
商品名:ビスコート#700HV(大阪有機化学工業株式会社製) 100質量部
・光重合開始剤:イルガキュア184(BASF社製) 5質量部
・溶剤:メチルエチルケトン(東洋インキ株式会社性) 50質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル(東洋インキ株式会社性)50質量部
【0046】
[低屈折率層形成用塗液(比較例3)]
・1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート
商品名:ビスコート8FM(大阪有機化学工業株式会社製) 100質量部
・光重合開始剤:イルガキュア184(BASF社製) 5質量部
・溶剤:メチルエチルケトン(東洋インキ株式会社性) 50質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル(東洋インキ株式会社性)50質量部
【0047】
[低屈折率層形成用塗液(比較例4)]
・UV硬化型機能性ハードコート剤
商品名:リオデュラス(登録商標)TYZ65(東洋インキ株式会社製、高屈折粒子:ZrO
【0048】
(透明積層フィルムの作製)
透明基材の一方面に、高屈折率ハードコート層形成塗液を乾燥後の膜厚が1.5μmとなるように塗布し、乾燥させた。その後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させて、高屈折率ハードコート層を形成した。
【0049】
次に、高屈折率ハードコート層上に、高屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が表1に示す膜厚となるように塗布し、乾燥させた。その後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させて、高屈折率層を形成した。
【0050】
次に、高屈折率層上に、低屈折率層形成用塗液を乾燥後の膜厚が表1に示す膜厚となるように塗布し、乾燥させた。その後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させて、低屈折率層を形成した。
【0051】
(透明導電フィルムの作製)
次に、低屈折率層上にITOからなる透明導電層を形成した。透明導電層は、DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて真空中でスパッタリングを行うことにより、表1に示す膜厚に成膜した。尚、実施例1〜11、比較例1〜10、13及び14では、スパッタリングターゲットとして、スズ含有率が5質量%のITOを用い、比較例11では、スズ含有率が3質量%のITOを用い、比較例12では、スズ含有率が7質量%のITOを用いた。成膜後、150℃で1時間のアニール処理を施して、透明導電フィルムを得た。
【0052】
また、実施例1〜11、比較例1〜8及び13〜14については、透明導電層形成前の透明積層フィルムについて、反射光及び透過光の色座標(上述したa3、、a、b)、550nmの光の透過率を測定し、透明導電層形成後の透明導電フィルムについて、反射光及び透過光の色座標(a、b、a、b)、550nmの光の透過率(t、T)、表面抵抗値を測定した。残りの比較例9〜12については、透明導電層形成後の透明導電フィルムについて、反射光及び透過光の色座標(a、b、a、b)、550nmの光の透過率(T)、表面抵抗値を測定した。測定条件は次の通りである。
【0053】
[光学特性(a、b、t、T)]
色座標a及びbの値は、透明導電層側から入射角5°で光を照射し、角度可変式絶対反射測定装置(U−4100;株式会社日立製作所製)を用いて測定した。また、透過率t及びTは、波長550nmの光を用いて測定した。
【0054】
[表面抵抗値]
表面抵抗値は、抵抗率計(ロレスタGP MCP−T610型;株式会社三菱化学アナリテック)を用いて、印可電圧10Vで測定した。
【0055】
表1に、実施例1〜11及び比較例1〜14の各層の屈折率、膜厚、透明導電層形成前後の各測定値を示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示すように、実施例1〜11では、高屈折率ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層及び透明導電層の屈折率及び膜厚を上述した範囲内としたことによって、透明電極層形成前及び形成後のいずれにおいても、色座標の値と透過率とが好ましい範囲内となり、反射光及び透過光の着色が抑制されると共に、高い光透過率を有することが確認された。また、実施例1〜11では、表面抵抗値の値も100Ω/□未満であり、大型のタッチパネルに適していることが確認された。
【0058】
これに対して、比較例1〜4、6〜8、13及び14では、高屈折率ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層の屈折率及び膜厚のいずれかが上述した範囲から外れたことによって、透明導電層を形成した後の透明導電フィルムにおいて、色座標の値が好ましい範囲から外れて、反射光及び透過光の着色が認められるか、あるいは、透過率が低下した。
【0059】
また、比較例5では、高屈折率層をウェットコーティング法により膜厚5nmで成膜しようとしたが、膜が薄すぎるため、ウェットコーティング法で形成することはできず、サンプルを得ることができなかった。
【0060】
また、比較例9〜12は、高屈折率ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層の屈折率及び膜厚が実施例1と同じであるが、透明導電層の屈折率または膜厚が上述した範囲から外れたものである。実施例1と比較例9〜12との対比から、高屈折率ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層の屈折率及び膜厚の全てが上述した範囲内にある透明積層フィルムは、屈折率が1.80以上2.00以下、かつ、膜厚が25nm以上35nm以下である透明導電層を成膜した透明導電フィルムに好適であることが確認された。これに対して、比較例9では、透明導電層の膜厚が薄すぎることによって、表面抵抗値が100Ω/□を越えた。比較例10では、透明導電層の膜厚が厚すぎることによって、反射光及び透過光の着色が認められ、更に、透過率も低くなった。比較例11では、実施例1〜11と比べてスズ含有率が少ないITOを用いて透明導電層を形成したため、表面抵抗値が100Ω/□を越えた。比較例12では、透明導電層の屈折率が高すぎることによって、反射光及び透過光の着色が認められ、更に、透過率も低くなった。
【0061】
以上より、本発明によれば、透明導電層を厚膜化した場合でも、高透過率を有し、反射光及び透過光の着色を抑制できる透明積層フィルム及び透明導電フィルムを実現できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、タッチパネルを備えた画像装置等に利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 画像表示装置
4 バックライト
5 偏光板
6 液晶パネル
7 偏光板
8 接着層
9a、9b 透明導電フィルム
10 接着層
11 接着層
12 カバーガラス
20 透明積層フィルム
21 高屈折率ハードコート層
22 高屈折率層
24 低屈折率層
25 透明導電層
図1
図2