特許第6803661号(P6803661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803661
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】棒状制振部材
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/08 20060101AFI20201214BHJP
   E01D 1/00 20060101ALI20201214BHJP
   E01D 19/04 20060101ALI20201214BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20201214BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20201214BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   F16F7/08
   E01D1/00 Z
   E01D19/04 101
   E04B1/58 D
   E04H9/02 311
   F16F7/12
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-211689(P2015-211689)
(22)【出願日】2015年10月28日
(65)【公開番号】特開2017-82904(P2017-82904A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年10月4日
【審判番号】不服2020-4370(P2020-4370/J1)
【審判請求日】2020年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】509200613
【氏名又は名称】株式会社横河NSエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】前島 稔
(72)【発明者】
【氏名】田中 好弓
【合議体】
【審判長】 田村 嘉章
【審判官】 尾崎 和寛
【審判官】 杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−36601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
E04B 1/38-1/61
E04H 9/00-9/16
F16F 7/00-7/14
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材本体の材軸方向両端部に継手部を有する棒状の芯材と、前記芯材本体の材軸直角方向外側に配置され、前記芯材本体の圧縮変形を拘束する変形拘束部材とを備え、前記芯材と前記変形拘束部材とは、2箇所以上の接合部で接合されており、前記接合部の少なくとも1箇所は材軸方向に可動な可動接合部となっており、所定以上の軸力が作用した時に、前記芯材と前記変形拘束部材とが材軸方向に相対的に摺動し得るようにした棒状制振部材において、前記芯材と前記変形拘束部材との接合部における接合耐力が、構造部材としての前記芯材の継手部に要求される継手耐力と同等以上となるようにしてあることで、当該棒状制振部材に設計以上の外力が作用した場合でも芯材と変形拘束部材との接合部における接合が維持されて棒状構造部材全体で外力に抵抗することができるようにしてあることを特徴とする棒状制振部材。
【請求項2】
請求項1記載の棒状制振部材において、前記可動接合部は材軸方向に延びる長孔に対し材軸直角方向に通したボルトによって接合され、該ボルトが前記長孔内で摺動可能となっていることを特徴とする棒状制振部材。
【請求項3】
請求項1または2記載の棒状制振部材において、前記芯材は弾塑性域を構成する芯材本体の材軸方向両端部に断面が拡大された弾性域を構成する継手部が形成されたものであり、前記芯材本体の材軸直角方向外側に芯材本体と平行に配置された芯材本体の板厚より厚いスペーサーを有し、前記変形拘束部材は前記芯材およびスペーサーを内側に挟み込んだ形で前記芯材との接合部および前記スペーサーに対しボルト接合されており、かつ前記芯材と前記変形拘束部材との接合部における接合耐力が前記芯材の継手部における継手耐力と同等以上となるようにしてあることを特徴とする棒状制振部材。
【請求項4】
請求項3記載の棒状制振部材において、前記芯材と前記変形拘束部材との接合部のボルト接合に用いるボルトの本数および前記ボルトの本数に対応するボルト孔の数を増やすことで、前記芯材と前記変形拘束部材との接合部における接合耐力が前記芯材の継手部に要求される継手耐力と同等以上となるようにしてあることを特徴とする棒状制振部材。
【請求項5】
請求項3記載の棒状制振部材において、前記芯材と前記変形拘束部材との接合部のボルト接合に用いるボルトに、前記継手部の接合に用いるボルトより耐力の大きいボルトを用いることで、前記芯材と前記変形拘束部材との接合部における接合耐力が前記芯材の継手部に要求される継手耐力と同等以上となるようにしてあることを特徴とする棒状制振部材。
【請求項6】
請求項1記載の棒状制振部材において、前記芯材の端部部分と前記変形拘束部材の端部に取り付けたリブプレートどうしをボルトでつなぐことで、前記芯材と前記変形拘束部材との接合部における接合耐力が前記芯材の継手部に要求される継手耐力と同等以上となるようにしてあることを特徴とする棒状制振部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振部材としての機能を有する棒状制振部材に関するものであり、例えば構造物のブレースや横架材などとして用いることができ、さらに橋梁においては、常時は変位拘束部材として、地震時は、落橋防止機能を兼ね備えた制振部材として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
構造物の耐震性能、制震性能を高めるものとして、制振部材と構造部材を兼ねた制振ブレースなどの棒状制振部材が種々開発され、製品化されている。
【0003】
例えば、特許文献1、特許文献2には、平板または断面十字形の鋼材からなる芯材とその座屈変形を拘束する山形鋼からなる拘束材を用いた座屈拘束型の軸力負担部材が記載されている。
【0004】
また特許文献3には、鋼製芯材の外周をアンボンド層を介して座屈拘束用コンクリート部材で覆い、その座屈拘束用コンクリート部材の外周を鋼管で覆って補強した軸降伏型弾塑性履歴ブレースの改良技術が記載されている。
【0005】
図11は、従来の棒状制振部材の一例として、平板芯材を用いた座屈拘束型の棒状制振部材の具体例を示したものである。
【0006】
基本的な構成は、低降伏点鋼あるいは普通鋼からなるエネルギー吸収材としての芯材1本体の両端部に断面が拡大された継手部2、3を形成し、芯材1本体を四方より変形拘束部材4としての山形鋼で抑え、スペーサー5を介して変形拘束部材4どうしを高力ボルト6で締め付けて、芯材1本体が座屈しないようにしたものである。
【0007】
この例で、芯材1と変形拘束部材4とは、図11(a)の奥側の固定側接合部と、手前側の可動側接合部の2箇所において、それぞれ高力ボルト7、8で接合されており、可動側接合部の高力ボルト8は芯材1に軸方向の引張力または圧縮力が作用したときに、変形拘束部材4に形成した長孔8aに沿って軸方向に摺動可能となっている。
【0008】
すなわち、芯材1に軸方向の引張力が作用したときは芯材1が弾性範囲または弾塑性範囲で伸び、芯材1に軸方向の圧縮力が作用したときは芯材1が弾性範囲または弾塑性範囲で縮み、変形拘束部材4には実質的に軸方向力が作用しないようになっている。
【0009】
また、芯材1に軸方向の圧縮力が作用したとき、変形拘束部材4が芯材1本体を四方から拘束していることで、芯材1本体の座屈変形が生じないため、制振部材としてのエネルギー吸収能力をフルに発揮させることができる。
【0010】
図12は、従来の棒状制振部材の一例として十字芯材を用いた座屈拘束ブレースの具体例を示したものであり、芯材1本体の断面を十字断面とした点以外の構成および作用効果は図11の平板の場合と同様であるが、芯材1の断面が大きい分、エネルギー吸収能力が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−265706号公報
【特許文献2】特開2006−328688号公報
【特許文献3】特開2014−031654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したような従来の棒状制振部材の用途としては、例えば、橋梁の構造部材の一部として、ブレースあるいは横架材などに用いられ、橋梁に作用する地震力などにより、軸方向の引張力や圧縮力が作用したときに、芯材の弾性領域および弾塑性領域に応じてエネルギーの吸収が図れる。
【0013】
ところで、従来の設計においては、芯材と変形拘束部材の接合部における接合耐力に対し、構造部材としての継手部、すなわち芯材の継手部における継手耐力が優先されているため、設計以上の軸力が作用した場合には接合部の高力ボルトが破断し、芯材と変形拘束部材との接合が切れる恐れがある。
【0014】
また、橋梁においては、万が一、橋梁に設計以上の荷重が作用して大きな損傷を受けた場合にも、橋桁など上部構造の落下を防止するための落橋防止装置が設けられているが、構造部材とは別途に設計され、設置されるのが一般的である。
【0015】
本発明は、上述のような制振部材としての機能を有する棒状制振部材について、変形拘束部材の接合部における接合耐力が芯材の継手部における継手耐力と同等以上となるようにすることで、設計以上の軸力が作用した場合でも芯材と変形拘束部材との接合が維持されて棒状部材全体で外力に抵抗することができる棒状制振部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、芯材本体の材軸方向両端部に継手部を有する棒状の芯材と、前記芯材本体の材軸直角方向外側に配置され、前記芯材本体の圧縮変形を拘束する変形拘束部材とを備え、前記芯材と前記変形拘束部材とは、2箇所以上の接合部で接合されており、前記接合部の少なくとも1箇所は材軸方向に可動な可動接合部となっており、所定以上の軸力が作用した時に、前記芯材と前記変形拘束部材とが材軸方向に相対的に摺動し得るようにした棒状制振部材において、前記芯材と前記変形拘束部材の接合部における接合耐力が前記芯材の継手部における継手耐力と同等以上になるようにしてあることを特徴とする。
【0017】
可動接合部については、従来技術として説明した図11図12と同様に、芯材に軸方向の引張力または圧縮力が作用したときに、可動側接合部の高力ボルトなどの接合ボルトが変形拘束部材に形成した長孔に沿って軸方向に摺動可能としたものや、逆に芯材側に長孔を形成して接合ボルトが長孔に沿って摺動可能としたものなどを用いることができるが、これらに限定されない。
【0018】
例えば、芯材の端部と変形拘束部材の端部に、それぞれ材軸方向と直交するリブプレートを設け、リブプレートどうしボルトでつなぐ構成とし、そのボルト孔に余裕を持たせてリブプレートの間隔が縮まったり広がったりする構造の可動接合部を構成することもできる。
【0019】
好ましい形態として、主として鋼材のみで構成されるいわゆる座屈拘束ブレースの基本形態を有する構成においては、前記芯材は弾塑性域を構成する芯材本体の材軸方向両端部に断面が拡大された弾性域を構成する継手部が形成されたものであり、前記芯材本体の材軸直角方向外側に芯材本体と平行に配置された芯材本体の板厚より厚いスペーサーを有し、前記変形拘束部材は前記芯材およびスペーサーを内側に挟み込んだ形で前記芯材との接合部および前記スペーサーに対しボルト接合されており、かつ前記芯材と前記変形拘束部材との接合部における接合耐力が前記芯材の継手部における継手耐力と同等以上となる構成とすることができる。
【0020】
その場合において、変形拘束部材の両端の接合部における接合耐力が芯材の継手部における継手耐力と同等以上となるようにする手段の一つとしては、変形拘束部材と芯材の継手部とのボルト接合に用いるボルトの本数を増やす手段がある。
【0021】
また、変形拘束部材と前記芯材の継手部とのボルト接合に用いるボルトに耐力の大きいボルトを用いることで、変形拘束部材の両端の接合部における接合耐力が芯材の継手部における継手耐力と同等以上となるようにすることもできる。
【0022】
さらに、変形拘束部材に補剛リブを設けたり、あるいは補剛材を重ねで配置するなどして、変形拘束部材芯材の継手部との接合部における断面を、芯材の両側の継手部間における変形拘束部材の断面より大きくして、変形拘束部材の両端の接合部における接合耐力が芯材の継手部における継手耐力と同等以上となるようにすることもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の棒状制振部材では、芯材と変形拘束部材を2箇所以上の接合部で高力ボルトで接合し、所定以上の軸力が作用した時に、ボルト接合部の長孔により芯材と変形拘束部材とが材軸方向に相対的に摺動し得るようにした構成において、芯材と変形拘束部材の接合部における接合耐力が芯材の継手部における継手耐力と同等以上となるようにしてあることで、設計以上の外力が作用した場合でも芯材と変形拘束部材との接合が維持されて棒状構造部材全体で外力に抵抗することができる。
【0024】
本発明の棒状制振部材を橋梁に用いる場合においては、落橋防止機能を兼ね備えた構造部材として用いることができる。例えば、橋脚と主桁をつなぐ部材として用いた場合、設計範囲の地震に対しては、芯材の弾性範囲あるいは弾塑性範囲においてエネルギーを吸収し、橋梁の地震応答を低減させることができ、想定以上の地震により、設計した弾塑性範囲以上の外力が作用した場合でも、芯材と変形拘束部材との接合が維持されて棒状制振部材全体で外力に抵抗し、落橋防止装置として機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a)は本発明の棒状制振部材の実施例1における可動側端部の外観を示す斜視図、(b)はその芯材のみを表示した斜視図である。
図2】(a)は本発明の棒状制振部材の実施例2における可動側端部の外観を示す斜視図、(b)はその芯材のみを表示した斜視図である。
図3】(a)は本発明の棒状制振部材の実施例3における可動側端部の外観を示す斜視図、(b)はその芯材のみを表示した斜視図である。
図4】(a)は本発明の棒状制振部材の実施例4における可動側端部の外観を示す斜視図、(b)はその芯材のみを表示した斜視図である。
図5】(a)は本発明の棒状制振部材の実施例5における可動側端部の外観を示す斜視図、(b)はその芯材のみを表示した斜視図である。
図6】(a)は本発明の棒状制振部材の実施例6における固定側端部の外観を示す斜視図、(b)はその芯材のみを表示した斜視図である。
図7】(a)は本発明の棒状制振部材の実施例7における固定側端部の外観を示す斜視図、(b)はその芯材のみを表示した斜視図である。
図8】本発明の棒状制振部材の設置例1を示す斜視図である。
図9】本発明の棒状制振部材の設置例2を示す斜視図である。
図10】本発明の棒状制振部材の設置例3を示す斜視図である。
図11】(a)は従来の棒状制振部材としての座屈拘束ブレースの一例(平板芯材の場合)を示す部分透過斜視図、(b)は軸直角方向の断面図である。
図12】(a)は従来の棒状制振部材としての座屈拘束ブレースの他の例(十字芯材の場合)を示す部分透過斜視図、(b)は軸直角方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の具体的な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0027】
以下の実施例1〜7は、背景技術の項で説明した図10の平板芯材を用いた座屈拘束型の棒状制振部材を基本形態として、それに本発明の構成を適用したものである。構成上、共通する部分については図10の符号も引用して説明し、また共通する部分については一部説明を省略する。
【0028】
〔実施例1〕
図1は実施例1における可動側端部の外観および芯材を示したものである。
【0029】
芯材1は図1(a)に示すように本体部分の平板部分が弾塑性域で変形し、十字断面に拡大した継手部2、3は弾性域で変形する形態となっている。
【0030】
図10の例では、芯材1と変形拘束部材4の可動側接合部において、変形拘束部材4に形成した材軸方向に長い長孔8aとそれに対応する高力ボルト8が、各面について1つずつであるのに対し、実施例1では十字断面の弾性域を長くとり、長孔8aとそれに対応する高力ボルト8を各面3つずつとすることで、可動側接合部における芯材1と変形拘束部材4の接合耐力が構造部材としての継手部3における継手耐力と同等またはより大きくなるようにしている。
【0031】
芯材1と変形拘束部材4の固定側接合部については図示を省略しているが、同様に芯材1と変形拘束部材4を接合する高力ボルト7の本数を3本とすることで、固定側接合部における芯材1と変形拘束部材4の接合耐力が構造部材としての継手部3における継手耐力と同等またはより大きくなるようにする。
【0032】
なお、図示した例で、十字断面の継手部3のボルト孔3aは各面2つずつ(合計8つ)であるが、単純に高力ボルト6、7、8のボルト本数で決まるわけではなく、本発明では芯材1と変形拘束部材4との接合部における接合耐力が芯材1の両端の継手部2、3における継手耐力と同等以上となることを条件としている。
【0033】
〔実施例2〕
図2は実施例2における可動側端部の外観および芯材を示したものである。
【0034】
実施例1との違いは、3つの長孔のうち、真ん中の長孔8aのみを変形拘束部材4とし、両側の長孔8bを芯材1側に設けた点である。
【0035】
芯材1側に長孔8bを設けた場合、外からの目視では変形量がみえないが、真ん中の長孔8aが変形拘束部材4に設けられていることで、変形量を目視することができる。
【0036】
〔実施例3〕
図3は実施例3における可動側端部の外観および芯材を示したものである。
【0037】
実施例3では、3つの長孔8bを全て芯材1側に形成している。この場合、変形拘束部材4の断面欠損を最小に抑えることができる反面、変形量を目視することができない。
【0038】
〔実施例4〕
図4は実施例4における可動側端部の外観および芯材を示したものである。
【0039】
実施例4は、高力ボルト7、8の本数を増やす代わりに、長孔8a部分によりサイズが大きく耐力の大きい高力ボルト7、8(固定側の高力ボルト7は図示していないが、可動側の高力ボルト8と同様のものとする)を用いることで、芯材1と変形拘束部材4との接合部における接合耐力が芯材1の両端の継手部2、3における継手耐力と同等以上となるようにしたものである。
【0040】
なお、この場合、図示のようにアングル材11を重ねるなどして、芯材1と変形拘束部材4の接合部を補剛することが好ましい。
【0041】
〔実施例5〕
図5は実施例5における可動側端部の外観および芯材を示したものである。
【0042】
実施例5は、芯材1の十字断面とした部分と変形拘束部材4の端部に、それぞれリブプレート12、13を溶接等により取り付け、これらのリブプレート12、13どうしをボルト14でつなぐことで、芯材1と変形拘束部材4との接合部における接合耐力が芯材1の両端の継手部2、3における継手耐力と同等以上となるようにしたものである。
【0043】
この実施例においてはリブプレート12、13に形成されるボルト孔の内径をボルト14の軸径より大きくし、長孔8aと高力ボルト8部分での摺動に加え、リブプレート12、13どうしをつなぐボルト14部分でも材軸方向の相対変位が可能な構造となっている。
【0044】
〔実施例6〕
図6は実施例6における固定側端部の外観および芯材を示したものである。
【0045】
実施例6は固定側端部について、芯材1とアングル材からなる変形拘束部材4との固定側接合部について、高力ボルト7による接合を1面について2つ以上(図では2つ)とし、芯材1と変形拘束部材4との接合部における接合耐力が芯材1の継手部2における継手耐力と同等以上となるようにしたものである。
【0046】
〔実施例7〕
図7は実施例7における固定側端部の外観および芯材を示したものである。
【0047】
実施例7は可動側端部に関する実施例4と同様に、高力ボルト7の本数を増やす代わりに、サイズが大きく耐力の大きい高力ボルト7を用いることで、芯材1と変形拘束部材4との接合部における接合耐力が芯材1の継手部2における継手耐力と同等以上となるようにしたものである。
【0048】
〔設置例1〕
図8は本発明の棒状制振部材Aの設置例の一例として、橋梁の橋台21の側面に取り付けた受け材24と主桁22の下面に突出させた受け材23との間をつなぐ形で、本発明の棒状制振部材Aを設置した場合を示したものである。この棒状制振部材Aは、上述した実施例1〜7のいずれでもよく、また本発明の基本構成を備えるものであれば、実施例1〜7のものに限定されない。
【0049】
橋梁に作用する輪荷重、風荷重等の常時荷重に対しては、棒状制振部材の芯材を弾性範囲に留めることで外力に抵抗し、大規模な地震力に対しては、棒状制振部材の芯材の一部を塑性化させ弾塑性域で繰り返し変形し、そのエネルギー吸収能力によって橋梁の振動を抑制する。
【0050】
本発明の棒状制振部材Aは、さらに芯材と変形拘束部材の接合部における接合耐力が芯材の継手部における継手耐力と同等以上となるようにしてあることで、万が一、想定を超える大きな地震力が作用した場合でも芯材と変形拘束部材との接合が維持されて棒状構造部材A全体で外力に抵抗することができる。
【0051】
すなわち、図8の構成において大地震などにより、主桁22の支承が破断した場合などにおいては、棒状制振部材Aに制振ダンパーとしての性能を超える軸荷重及び曲げ荷重がかかることになるが、本発明の棒状制振部材Aによれば芯材と変形拘束部材との接合が維持されて棒状制振部材A全体で外力による軸荷重及び曲げ荷重に抵抗し、落橋防止装置として機能させることができる。
【0052】
〔設置例2〕
図9は本発明の棒状制振部材Aの他の設置例として、橋梁の橋台21の側面に取り付けた受け材26と主桁22の両側面に取り付けた受け材25との間をつなぐ形で、本発明の棒状制振部材Aを設置した場合を示したものである。
【0053】
通常の設計範囲の外力に対しては、棒状制振部材Aの芯材が弾性域あるいは弾塑性域で繰り返し変形し、そのエネルギー吸収能力によって橋梁の振動を抑制し、万が一、想定を超える大きな地震力が作用した場合でも芯材と変形拘束部材との接合が維持されて棒状構造部材A全体で外力に抵抗し、落橋防止装置として機能させることができる点は図8の設置例1と同様である。
【0054】
〔設置例3〕
図10は本発明の棒状制振部材Aの他の設置例として、橋軸直角方向に対する棒状制振部材Aを橋台の中間に設けられた支柱31と主桁22とを介するように、左右それぞれに設置した場合を示したものである。
【0055】
この例での橋梁は、橋脚27の上に、橋軸方向への主桁22、橋軸直角方向への横梁29、これらの上に設置される床版30等からなる。この橋梁は機能分離型制振構造となっており、支柱31、棒状制振部材A(水平荷重支持部材)、受け材32、補剛材33等からなる水平荷重支持機構が橋軸直角方向に備わっている。鉛直荷重支持機構は支承28による。
【0056】
橋軸方向に互いに平行に相対向して並立する主桁22間における橋軸直角方向の中間の橋脚27の上部に棒状制振部材Aを支持するための支柱31が設けられ、各主桁22には棒状制振部材Aを支持固定する受け材32が設けられ、支柱31を中心に線対称に一対の棒状制振部材Aからなる水平荷重支持部材が橋軸直角方向に水平に配置され、各棒状制振部材Aの一端は支柱31に取付けられ他端は受け材32に固定されている。
【0057】
支柱31は、この例ではH形鋼を主体としたH形状のものであり、橋脚27の上面に載置されている。このような構成において、例えば、地震等により橋梁が揺れ、棒状制振部材Aの軸力が設定荷重に達した時、ダンパー機能が発揮されることで上部構造からの水平荷重をそのまま下部構造へ伝えることなく、これらの荷重を低減させることが可能となる。
【0058】
さらに、想定以上の大地震などにより、支承28位置での支持が不能となった場合などにおいては、棒状制振部材Aに制振ダンパーとしての性能を超える軸荷重及び曲げ荷重がかかることになるが、本発明の棒状制振部材Aによれば芯材と変形拘束部材との接合が維持されて棒状制振部材A全体で外力による軸荷重及び曲げ荷重に抵抗し、落橋防止装置として機能させることができる。
【符号の説明】
【0059】
A…棒状制振部材、
1…芯材、2…継手部、3…継手部、4…変形拘束部材、5…スペーサー、6…高力ボルト、7…高力ボルト、8…高力ボルト、8a…長孔、8b…長孔(芯材側)、11…アングル材、12…リブプレート、13…リブプレート、
21…橋台、22…主桁、23…受け材、24…受け材、25…受け材、26…受け材、27…橋脚、28…支承、29…横梁、30…床版、31…支柱、32…受け材、33…補剛材
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