(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803668
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】継手金具の接合構造と接合方法
(51)【国際特許分類】
F16B 7/04 20060101AFI20201214BHJP
E21D 11/04 20060101ALI20201214BHJP
F16B 7/18 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
F16B7/04 301D
E21D11/04 A
F16B7/04 301B
F16B7/18 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-46854(P2016-46854)
(22)【出願日】2016年3月10日
(65)【公開番号】特開2017-161010(P2017-161010A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】小林 一博
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃司
【審査官】
鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−173625(JP,A)
【文献】
特開2005−290806(JP,A)
【文献】
特開2013−253678(JP,A)
【文献】
特開2002−227343(JP,A)
【文献】
特開2008−038550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/04
F16B 7/00, 7/04,
7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に凹陥部が一体形成されたナット部材と、該ナット部材の前記凹陥部に螺合させて先端側に突出するピン継手と、を備えた雄型継手金具と、
前記ピン継手を嵌合可能な複数のクサビ部材と、該複数のクサビ部材を先端側に押圧する弾性部材と、前記クサビ部材及び弾性部材を収納した先細のテーパ状筒部とを有する第一雌型金具と、アンカー部材を有していて前記第一雌型金具に螺合させることで前記弾性部材を押圧して前記クサビ部材を縮径する方向に付勢する第二雌型金具と、を有する雌型継手金具と、を備え、
前記クサビ部材の後部に段部が形成され、該段部内にリテーナを介して前記弾性部材が設置されており、前記第一雌型金具と前記第二雌型金具を螺合させることで前記弾性部材を前記第二雌型金具で押圧するようにし、
前記ピン継手を前記クサビ部材に嵌合させることで前記雄型継手金具と前記雌型継手金具を接合するようにしたことを特徴とする継手金具の接合構造。
【請求項2】
一方側の部材に固定された雄型継手金具と他方側の部材に固定された雌型継手金具とを接合させる継手金具の接合方法であって、
前記雌型継手金具において、先端側が先細のテーパ状筒部を有する第一雌型金具内に複数のクサビ部材と弾性部材を収納すると共に前記クサビ部材の後部に形成された段部内にリテーナを介して前記弾性部材を設置させ、
その後、前記第一雌型金具に第二雌型金具を螺合させて前記弾性部材を押圧し、
前記雄型継手金具に設けたナット部材に一体形成された凹陥部に螺合させたピン継手の先端を前記第一雌型金具のクサビ部材の間に嵌入させることで、前記雄型継手金具と雌型継手金具を接合させると共に前記弾性部材を前記第二雌型金具で押圧するようにしたことを特徴とする継手金具の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば筒状のトンネル壁体を構成するセグメント等のコンクリート構造物同士を接合するためのピン継手を、コンクリート構造物の接合端面に取り付ける継手金具の接合構造と接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
継手金具を用いた接合構造の一例として、トンネル工法におけるトンネル用セグメントの接合構造が知られている。トンネル工法として、シールドマシンによって地盤を掘削しながら、その後方において円弧板状のセグメントを継手金具で周方向に連結してリング状に形成したものを、更に継手金具によって軸方向に順次連結して円筒状のトンネル壁体(筒状壁体)を構築するシールド工法が一般的である。
【0003】
例えば特許文献1に記載されたセグメントの接合構造は、一方のセグメントの端面から内奥部に向けて内径が拡径するテーパ状の筒状ケーシングを設け、その内部に軸方向に沿って分割面を有すると共に径方向に分割可能な複数のクサビ状のピースをテーパ筒状に形成して軸方向に移動可能とした。筒状ケーシングにはクサビ状のピースの離脱を防ぐストッパを全周に設置していた。筒状ケーシングの周囲には複数のアンカー筋が溶接によって固着され、それぞれコンクリート中に埋設されている。
他方のセグメントの端面にはコンクリート中にボルトを挿通させる貫通孔を介してボルトボックスとなる継手凹所が形成され、継手凹所内にボルトロッドの頭部を配設し、その軸部は貫通孔を通して一方のセグメントの筒状ケーシングのクサビ状のピース内に挿入可能である。クサビ状の各ピースの外周面に形成した周溝内にバネが設けられてクサビ状のピースを縮径方向に締め込んでいる。
【0004】
継手凹所に挿入したボルトロッドの軸部をバネの付勢力に抗してクサビ状のピースの挿入孔に挿入して各ピースを拡径させる。ボルトロッドはばねによるくさび効果によってクサビ状の各ピースによって係止されて引き抜けない。
【0005】
また、
図4に示す他の継手金具の構造では、一方のセグメントに埋設したオス金物101はプレート102の開口部にナット103を溶接固定すると共にアンカー鉄筋104を溶接固定している。ナット103に螺合したピンボルト105の先端部は、他方のセグメントに埋設したメス金物106に嵌合させる。メス金物106は先細のテーパ枠107内に複数のクサビ部材108を収納して貫通孔を形成し、クサビ部材108の後部に設けたウレタン109でクサビ部材108を前方に押圧して保持させた。ウレタン109はテーパ枠107に固定した保持枠110内に保持し、テーパ枠107の外側にはアンカー鉄筋104を溶接で固定した。
継手金具の接合に際し、オス金物101のピンボルト105をメス金物106の複数のクサビ部材108で形成する貫通孔に嵌入させ、クサビ部材108を後退させて拡径する。クサビ部材108でピンボルト105を嵌合した状態で、ウレタン109の付勢力でクサビ部材108を前進させて縮径させてピンボルト105を押圧保持し、接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3375748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された継手金具の接合構造では、筒状ケーシングへのアンカー筋の溶接が必要であり、更にくさび状の複数のピースの外周面に周溝を形成した上でリング状のバネ等を装着する必要があった。更にピースの離脱を防ぐためのストッパを筒状ケーシングに取り付ける必要があった。
そのため、部品点数が多く、セグメントの接合構造が煩雑で組み立て工数が多いという欠点があった。
【0008】
また、
図4に示す他の継手金具ではアンカー鉄筋104を溶接でオス金物101やメス金物106に溶接し、更にナット103をプレート102に溶接している。しかもウレタン109の保持枠110はテーパ枠107等に係合させて固定している。そのため、溶接部が多くて製作に手間がかかる上にウレタン109の取り付け構造も煩雑であった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、構造が簡単で組立が容易な継手金具の接合構造と接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る継手金具の接合構造は、先端側に凹陥部が一体形成されたナット部材と、該ナット部材の前記凹陥部に螺合させて先端側に突出させるピン継手と、を備えた雄型継手金具と、ピン継手を嵌合可能な複数のクサビ部材と、該クサビ部材を先端側に押圧する弾性部材と、クサビ部材及び弾性部材を収納した先細のテーパ状筒部と、を有する第一雌型金具と、アンカー部材を有していて第一雌型金具に螺合させることで弾性部材を押圧してクサビ部材を縮径する方向に付勢する第二雌型金具と、を備えた雌型継手金具と、を備え、前記クサビ部材の後部に段部が形成され、該段部
内にリテーナを介して前記弾性部材が設置されており、前記第一雌型金具と前記第二雌型金具を螺合させることで前記弾性部材を前記第二雌型金具で押圧するようにし、ピン継手を複数のクサビ部材に嵌合させることで雄型継手金具と雌型継手金具を接合するようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、テーパ状筒部を有する第一雌型金具にクサビ部材及び弾性部材を収納し、その後、第一雌型金具の後部に第二雌型金具を螺合させることで弾性部材を押圧し、雄型継手金具に設けたナット部材に螺合させたピン継手の先端を第一雌型金具の複数のクサビ部材の間に嵌入させることで把持し、雄型継手金具と雌型継手金具を接合することができる。しかも第二雌型金具はアンカー部材を有しているので溶接等が必要なく第一雌型金具に螺合するだけで済む。
【0011】
しかも、本発明では、第一雌型金具と第二雌型金具を螺合させることで、第一雌型金具内でクサビ部材の段部に保持された弾性部材を第二雌型金具で押圧し、雄型継手金具のピン継手を複数のクサビ部材間の縮径された貫通孔に嵌合させることで弾性部材の付勢力に抗してピン継手がクサビ部材間に嵌入され、しかも弾性部材の反発する付勢力でクサビ部材を前進させて縮径してピン継手を拘束することで互いに固定させる。
なお、雄型継手金具にはそれぞれアンカー部材が一体に設けられていてもよい。
【0012】
本発明による継手金具の接合方法は、一方側の部材に固定された雄型継手金具と、他方側の部材に固定された雌型継手金具とを、互いに接合させる継手金具の接合方法であって、雌型継手金具において、先端側が先細のテーパ状筒部を有する第一雌型金具内に複数のクサビ部材と弾性部材を収納すると共に前記クサビ部材の後部に形成された段部
内にリテーナを介して前記弾性部材を設置させ、その後、第一雌型金具の後部に第二雌型金具を螺合させて弾性部材を押圧し、雄型継手金具に設けたナット部材に一体形成された凹陥部に螺合させたピン継手の先端を第一雌型金具のクサビ部材の間に嵌入させることで、雄型継手金具と雌型継手金具を接合させると共に前記弾性部材を前記第二雌型金具で押圧するようにしたことを特徴とする。
雌型継手金具の組み立てに際し、第一雌型金具と第二雌型金具を螺合させることで、弾性部材が圧縮されて複数のクサビ部材を押圧して縮径でき、雄型継手金具に設けたピン継手の先端を、第一雌型金具の複数のクサビ部材の間に嵌入させて拡径させた後に、弾性部材の付勢力によってクサビ部材が圧縮されてピン継手を堅固に保持し、雄型継手金具と雌型継手金具を接合することで一方側の部材と他方側の部材を接合できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による継手金具の接合構造と接合方法によれば、雄型継手金具はナット部材にピン継手を螺合させると共に、第一雌型金具内にクサビ部材と弾性部材を収納して第二雌型金具を螺合させることで雌型継手金具を形成できるため、構成が簡単であり捩じ込みだけで組み立てできて組立が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態による継手金具の雄型継手金具と雌型継手金具を示す断面図である。
【
図2】雄型継手金具と雌型継手金具の第一雌型金具及び第二雌型金具とを示す分解図である。
【
図3】雌型継手金具の組立状態を示す断面図である。
【
図4】従来の継手金具の接合構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態による継手金具の接合構造と接合方法について添付図面によって説明する。
本発明の実施形態による継手金具1について、
図1乃至
図3に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態による継手金具1の接合構造は、セグメント等のコンクリート構造物に設けられた雄型継手金具2と雌型継手金具3とからなるものである。
雄型継手金具2は一方のセグメント4内の端面4aに略直交する方向に埋設されている。この雄型継手金具2は例えば鋳物で形成されている。雄型継手金具2は略円筒形状で長軸の軸部2aを形成しており、軸部2aの端面4aとは反対側の後端部に拡径された略円盤状のアンカー部材6が形成されている。
【0016】
雄型継手金具2は軸部2aの端面4a側である先端側が例えばわずかに拡径された略円筒形状を有しており、
図2に示すように先端面2bには軸方向に沿って略円筒状の凹陥部5が形成されている。なお、アンカー部材6を除く軸部2aは同一外径で形成されていてもよい。この凹陥部5の内周面には雌ねじ部5aが形成されたナット部材が構成されている。そして、凹陥部5内には後部に後部雄ねじ部7aが形成された軸状のピンボルト7がピン継手として設置され、後部雄ねじ部7aが凹陥部5に形成した雌ねじ部5aに螺合されて固定されている。
ピンボルト7は略円柱状に形成され、その長手方向の一端部側に後部雄ねじ部7aが形成され、一端部と反対側の他端部側には全周に亘って例えば楔形状の歯部が略平行に配列された前部鋸歯部7bが形成されている。
【0017】
また、雌型継手金具3は、例えば鋳物で形成された第一雌型金具9と第二雌型金具10とを備えている。雌型継手金具3は、他方のセグメント8の端面8aに略直交する方向に埋設されている。
第一雌型金具9は雌型継手金具3の長手方向中間部に形成された拡径筒部11から先端側に向けて次第に縮径された先細のテーパ形状を備えたテーパ状筒部12が形成され、更にその先端にはピンボルト7を挿通させる先端筒部13が形成されている。拡径筒部11の内面には雌ねじ部11aが形成されており、先端筒部13の内面には薄板状の円筒板13aが固着されているが、円筒板13aは省略してもよい。
【0018】
また、第二雌型金具10は先端側に略円柱状の拡径部15が形成され、その先端面には若干縮径された円筒部の外周面に雄ねじ部16aが形成された突部16が設けられている。拡径部15の後部側には、テーパ状に縮径するテーパ部17と、小径の軸部18と、拡径された略円盤状のアンカー部材19とが形成されている。
【0019】
また、
図1及び
図3において、第一雌型金具9のテーパ状筒部12の内面には例えば断面視略直角三角形状のクサビ部材21が複数個(例えば3つまたはそれ以上)周方向に配設されている。複数のクサビ部材21で形成するその内周面はピンボルト7の外径より小径の円柱状の貫通孔21aを形成する。各クサビ部材21の第二雌型金具10側の端面には段部21bが形成されている。複数のクサビ部材21によって段部21bは全周に亘って例えば略円形の溝部22が形成されている。この溝部22内に金属製プレートからなるリテーナ23が設置され、その後部には例えばウレタン25等からなる弾性部材が設置されている。
クサビ部材21は、上述した従来例ではテーパ角が約10°であったが、本実施形態では例えば約17°と大きく設定したので、クサビ部材21の長手方向の長さを短く設定でき、雌型継手金具3の全長を短くして小型化できる。
【0020】
ウレタン25の背面には第二雌型金具10の先端面に受け部を有する突部16が配設されて所定厚みのウレタン25を押圧している。本実施形態では、第一雌型金具9のテーパ状筒部12内に複数のクサビ部材21を配設し、その後部にリテーナ23及びウレタン25を設置した状態で、第二雌型金具10の突部16の雄ねじ部16aを第一雌型金具9の拡径筒部11の内面に形成した雌ねじ部11aに螺合させて一体化する。
これによって、第二雌型金具10の突部16で、ウレタン25を介してクサビ部材21がテーパ状筒部12内で前方に押し込まれて貫通孔21aを縮径させる。そして、雄型継手金具2の雌ねじ部5aに固定されたピンボルト7の先端部を雌型継手金具3の第一雌型金具9のクサビ部材21で形成する貫通孔21a内に押し込むことで拡径させ、ピンボルト7の前部鋸歯部7bをクサビ部材21に喰い込ませて固定する。
なお、リテーナ23とウレタン25は予め固着していてもよいし、ウレタン25を第二雌型金具10の突部16の表面に固着してもよい。
【0021】
本実施形態による継手金具1は上述した構成を備えており、次にセグメント4,8の雄型継手金具2と雌型継手金具3の接合方法について説明する。
まず、雄型継手金具2と雌型継手金具3の組み立て方法について
図1から
図3により説明する。雄型継手金具2はその凹陥部5内にピンボルト7の後部雄ねじ部7aを螺合することで一体化させ、ピンボルト7の先端側を突出させる。
また、雌型継手金具3は、まず第一雌型金具9の内面に複数個のクサビ部材21を収納し、中央に貫通孔21aを形成する。複数のクサビ部材21の後面に形成された段部21bにリテーナ23を介してウレタン25を設置した状態で、第二雌型金具10の突部16の雄ねじ部16aを第一雌型金具9の拡径筒部11の雌ねじ部11aに捩じ込み固定し、一体化する。
【0022】
第二雌型金具10を第一雌型金具9に螺合することで、ウレタン25及びリテーナ23でクサビ部材21を第一雌型金具9のテーパ状筒部12の前方に押し込んで貫通孔21aをピンボルト7の外径よりも小径に縮径させる。この状態で、第二雌型金具10によってウレタン25が圧縮され、その付勢力が複数のクサビ部材21の貫通孔21aを縮径するように作用する。
このように形成された雄型継手金具2と雌型継手金具3をそれぞれセグメント4、8の型枠内に設置してコンクリートを流し込んで固定し、セグメント4,8を形成する。
【0023】
そして、セグメント4,8の接合に際し、各セグメント4,8の端面4a,8a同士を当接させ、雄型継手金具2の端面4aから突出するピンボルト7の先端側を雌型継手金具3の先端筒部13を通して第一雌型金具9内の貫通孔21a内に押し込む。
すると、貫通孔21aを形成するピンボルト7の前部鋸歯部7bが複数のクサビ部材21をウレタン25の付勢力に抗してテーパ状筒部12に沿って後退させ、貫通孔21aを拡径してピンボルト7の挿入を許す。挿入後にウレタン25の付勢力で各クサビ部材21は前方に押されて縮径し、各クサビ部材21にはピンボルト7の前部鋸歯部7bの楔部が喰い込み接合状態で固定される。なお、クサビ部材21の材質をピンボルト7よりも軟質の鉄材等の金属で形成すれば、前部鋸歯部7bの食い込みが強くなりより高強度で固着できる。
【0024】
上述のように本実施形態による継手金具1によれば、溶接等することなくアンカー部材6,19を雄型継手金具2と雌型継手金具3に形成することができる。しかも、雌型継手金具3は第一雌型金具9に第二雌型金具10を捩じ込むだけで内部に収納したウレタン25を圧縮してクサビ部材21に付勢力を付与することができる。そのため、構成が簡単で、溶接等することなく螺合によって継手金具1を組み立てることができて組み立て作業が容易であるという利点がある。
【0025】
なお、本発明は上述の実施形態による継手金具1に限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜の変更や置換等が可能であり、これらはいずれも本発明に含まれる。以下に、本発明の他の実施形態や変形例について説明するが、上述の実施形態と同一または同様な部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
【0026】
例えば、上述した実施形態ではクサビ部材21の後部に段部21bを形成し、複数の段部21bからなる溝部22にリテーナ23とウレタン25等の弾性部材を着座させて、第二雌型金具10で押圧するようにした。しかしながら、クサビ部材21に段部21bは形成しなくてもよく、リテーナ23を介してウレタン25を複数のクサビ部材21の後面に押圧させるようにしてもよい。また、リテーナ23は必ずしも設置しなくてもよい。
【0027】
また、上述した実施形態では、雄型継手金具2と雌型継手金具3にそれぞれアンカー部材6、19を設けたが、アンカー部材6,19は任意の形状を採用できる。また、アンカー部材6,19は設置しなくてもよい。
なお、弾性部材としてウレタン25を設置したが、弾性部材はウレタン25に限定されるものではなく、バネやゴム等の他の弾性体を用いてもよい。
【0028】
また、上述した実施形態による継手金具1におけるセグメント4,8の端面4a、8aは主桁板の位置でもよいし、継手板の位置でもよい。また、本発明は継手金具1を設置する部材としてセグメント4を一方側の部材とし、セグメント8を他方側の部材としたが、本発明はこのような構成や部材に限定されることはない。セグメント4,8以外の他の各種のコンクリート構造物やその他の各種の部材に本発明による継手金具を採用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 継手金具
2 雄型継手金具
3 雌型継手金具
5 凹陥部
5a、11a 雌ねじ部
7 ピンボルト
7a 後部雄ねじ部
7b 前部鋸歯部
9 第一雌型金具
10 第二雌型金具
12 テーパ状筒部
16 突部
16a 雄ねじ部
21 クサビ部材
21a 貫通孔
21b 段部
23 リテーナ
25 ウレタン