(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記生成部は、前記物体の移動の有無を判定し、前記移動があると判定したときの前記信頼度に比べて、前記移動がないと判定したときの前記信頼度を高く評価し、前記信頼度が低い方に比べて高い方のバイタルサイン信号成分から前記バイタルサイン情報を生成する、請求項1又は2に記載のバックル。
前記検出部は、前記生成部が生成した前記バイタルサイン情報のフィードバックによって、前記生成部が前記信頼度を高く評価するように前記バイタルサイン信号成分の周期の検出方法を変更する、請求項9に記載のバックル。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係るシートベルト装置1の構成の一例を示す図である。シートベルト装置1は、車両に搭載された車載システムの一例である。シートベルト装置1は、例えば、シートベルト4と、リトラクタ3と、ショルダーアンカー6と、タング7と、バックル8とを備える。
【0013】
シートベルト4は、車両のシート2に座る乗員11を拘束するウェビングの一例であり、リトラクタ3に引き出し可能に巻き取られる帯状部材である。シートベルト4の先端のベルトアンカー5は、車体の床又はシート2に固定される。
【0014】
リトラクタ3は、シートベルト4の巻き取り又は引き出しを可能にする巻き取り装置の一例であり、車両衝突時等の所定値以上の減速度が車両に加わると、シートベルト4がリトラクタ3から引き出されることを制限する。リトラクタ3は、シート2又はシート2の近傍の車体に固定される。
【0015】
ショルダーアンカー6は、シートベルト4が挿通するベルト挿通具の一例であり、リトラクタ3から引き出されたシートベルト4を乗員の肩部の方へガイドする部材である。
【0016】
タング7は、シートベルト4が挿通するベルト挿通具の一例であり、ショルダーアンカー6によりガイドされたシートベルト4にスライド可能に取り付けられた部品である。
【0017】
バックル8は、タング7が着脱可能に連結される部品であり、例えば、車体の床又はシート2に固定される。
【0018】
バックル8は、本体部8aと、ステー8bとを有する。本体部8aは、タング7が着脱可能に連結される部位である。ステー8bは、バックル8の本体部8aを支持する支持部材の一例である。ステー8bは、車体の床又はシート2に固定される。
【0019】
タング7がバックル8に係合された状態で、ショルダーアンカー6とタング7との間のシートベルト4の部分が、乗員の胸部及び肩部を拘束するショルダーベルト部9である。タング7がバックル8に係合された状態で、ベルトアンカー5とタング7との間のシートベルト4の部分が、乗員の腰部を拘束するラップベルト部10である。
【0020】
図2は、シート2に座っている乗員11を上方からの視点で示す図である。
図2には、シート2の背もたれが示されている。
【0021】
シート2に着座している乗員11の呼吸によって、乗員11の体表(例えば、腰部の表面、腹部の表面、胸部の表面など)は微妙に変位する。例えば、乗員11が息を吸うと、乗員11の体表は車両前後方向及び車幅方向に膨らみ、乗員11が息を吐くと、乗員11の体表は車両前後方向及び車幅方向に萎む。したがって、乗員11の体表の変位を検知することによって、乗員11の呼吸を検出することができる。
【0022】
バックル8は、乗員11の体表の変位を検知する手段として、本体部8aに設けられたセンサ20を有する。センサ20は、ステー8bに設けられてもよい。バックル8は、シート2に座っている乗員11の側部の下方に配置されている。センサ20は、バックル8の乗員11側の側面部に設けられている。
【0023】
センサ20は、車両のシート2上の物体の動きを非接触で検知する物体検知部の一例である。シート2上の物体には、乗員11に限られず、乗員11のような人以外の物が含まれる。センサ20は、シート2上の物体の動きに応じて波形が変化するセンサ出力信号を出力する。なお、「物体の動き」とは、物体の表面の動きに限られず、物体の内部の動きでもよい。
【0024】
センサ20は、例えば、車両のシート2上の物体の動きを電波の送受により非接触で検知する。センサ20は、車両のシート2の座面の上方に向けて電波を送信し、送信した電波に対する反射波を受信することによって、当該座面上の物体の動きを検知する。
【0025】
センサ20が送受する電波の具体例として、VHF帯(Very High Frequency)の電波、UHF(Ultra-High Frequency)帯やSHF(Super High Frequency)帯のマイクロ波などが挙げられる。VHF帯は、30MHz〜0.3GHzの周波数帯を表す。UHF帯は、0.3GHz〜3GHzの周波数帯を表す。SHF帯は、3G〜30GHzの周波数帯を表す。
【0026】
あるいは、センサ20は、車両のシート2上の物体の動きを、当該物体とセンサ20のセンサ電極との間の静電容量の変化より非接触で検知する物体検知部でもよい。
【0027】
図3は、シートベルト装置1の一例であるシートベルト装置1Aの構成を示すブロック図である。シートベルト装置1Aは、センサ20が設けられたバックル8と、検出部40と、生成部70と、出力部80とを備える。検出部40と生成部70と出力部80とは、バックル8の外部に設けられている。検出部40と生成部70と出力部80は、例えば、バックル8とは別体の一つ又は複数の電子制御装置(いわゆる、ECU)により実現される。
【0028】
検出部40と生成部70と出力部80とのうちの一部又は全部は、バックル8に設けられてもよい。検出部40の構成(
図13参照。詳細は後述)の一部又は全部は、バックル8に設けられてもよい。生成部70及び出力部80は、車両のシート2上の物体を移動させる車両挙動を表す車両挙動データ等の車両情報へのアクセスを容易にするため、車両に搭載されたECU内に設けられてもよい。車両挙動データとして、車速データ、加減速度データ、ヨーレートデータ、操舵角データなどが挙げられる。検出部40と生成部70と出力部80は、例えば、中央演算処理装置を備えるマイクロコンピュータにより実現される。
【0029】
図4は、バックル8の本体部8aの一例を示す側面図である。
図5は、バックル8の本体部8aの一例を示す斜視図である。
図6は、乗員側からの視点でバックル8の本体部8aの一例を示す平面図である。本体部8aは、タング7の金属プレートが挿入される挿入口8cと、乗員がタング7の着脱操作をするためのボタン8dとを有する。
【0030】
センサ20は、本体部8aのシート2側(シート2に座っている乗員側)の側面部に内蔵される。センサ20が電波を送受するセンサである場合、電波が不要な方向に放射されることが抑制されるように、センサ20は、遮蔽板21と、本体部8aのシート2側の側面との間に配置されることが好ましい。遮蔽板21は、本体部8aに内蔵され、センサ20から放射された電波を遮蔽する。
【0031】
図7は、電波の放射状態の一例をバックル8の側面視で示す図である。
図8は、電波の放射状態の一例をバックル8の上面視で示す図である。
【0032】
電波の放射範囲は、電波を送受するアンテナや電波の周波数によって異なる。アンテナは乗員がいる方向に傾いた状態でセンサ20に実装されてもよいし、乗員がいる方向にアンテナの指向性が制御されてもよい。
【0033】
バックル8に設けられたセンサ20の送信アンテナから送信された電波は、シート上の物体で反射され、その反射波をセンサ20の受信アンテナが受信する。センサ20は、定在波比(SWR:Standing Wave Ratio)の変化、反射波の反射強度の変化、反射波の送信波に対する伝搬遅延時間の変化、送信波と反射波との位相の変化、送信波と反射波との周波数の変化の少なくとも一つを測定する。センサ20は、これらの変化の少なくとも一つを測定することによって、シート2上の物体(検知対象物)とセンサ20との相対位置変化を検知できる。
【0034】
なお、定在波比等のこれらの変化は、センサ20と検知対象物との距離、検知対象物の大きさ、検知対象物の反射面の形、検知対象物の物性(例えば、金属平面、人体の表面など)に影響を受ける。
【0035】
センサ20は、例えば、100MHz〜5GHzの電波を送受する場合、定在波比の変化を測定し、その測定結果に基づいて検知対象物との相対位置変化を検知する。センサ20は、例えば、10GHz〜100GHzの電波を送受する場合、定在波比、伝搬遅延時間及びドップラー周波数の変化を測定し、その測定結果に基づいて検知対象物との相対位置変化を検知する。
【0036】
なお、センサ20は、例えば30kHz〜1MHzの周波数でセンサ20のセンサ電極を駆動する静電センサである場合、検知対象物とセンサ電極との間の静電容量の変化を測定し、その測定結果に基づいて検知対象物との相対位置変化を検知する。
【0037】
本実施例では、
図7及び
図8に示されるように、電波は40°以上90°以下の広がり角度でシート2の上方に向けて放射される。電波の指向性を絞れば、狭い範囲の相対位置変化を検知することができ、逆に、電波の指向性を広げれば、広い範囲の相対位置変化を検知することができる。
【0038】
なお、検知対象物がセンサ20の近傍に位置する場合、相対位置変化の検知精度は、センサ20の近傍の状況に強く影響される。したがって、センサ20以外の複数のセンサが車室内に存在していても、あるいは、電波の指向性が所望の広がり角度に対して多少ずれても、センサ20は、検知対象物との相対位置変化を高精度に検知できる。
【0039】
図1及び
図2に示されるように、バックル8の側面は、例えば、シート2に座っている乗員11の腰部側面と対向する。センサ20から所定の広がり角で送信された電波は、シート2及び乗員11の腹部(脇腹を含む)で反射し、その反射波がセンサ20に到来する。したがって、センサ20は、バックル8と腰部との相対位置変化に加えて、バックル8と腹部(脇腹を含む)との相対位置変化を検知する。
【0040】
例えば、乗員11が息を吸うと、脇腹は膨らんでセンサ20に近づき、腹前部は車両前方側にせり出して電波の反射面積が大きくなる。その結果、反射波の強度が大きくなる。特に乗員11がシートベルト4を着用した状態で息を吸うと、乗員11の胸部が膨らむことによりシートベルト4の張力が増加するので、バックル8は乗員11側に引き寄せられる。これにより、反射波の強度が更に大きくなる。
【0041】
逆に、乗員11が息を吐くと、脇腹はしぼんでセンサ20から遠ざかり、腹前部は車両後方側にしぼんで電波の反射面積が小さくなる。その結果、反射波の強度が小さくなる。特に乗員11がシートベルト4を着用した状態で息を吐くと、乗員11の胸部がしぼむことによりシートベルト4の張力が減少するので、バックル8は乗員11から離れる。これにより、反射波の強度が更に小さくなる。
【0042】
つまり、乗員11の呼吸動作は、反射波の強弱として捉えることができる。反射波の強弱を検知し、呼吸に同期した信号の周波数を分析して捉えることで、乗員11の呼吸を検知することができる。あるいは、電波の周波数が血流に反応する周波数帯に含まれる場合、乗員11の脈拍を検知することができる。
【0043】
このように、シートベルト4の非装着時も呼吸検知が可能となるが、特に、シートベルト4の装着時は、乗員11の体表の変位に応じてシートベルト4が変位し、シートベルト4の変位に応じて、タング7を介してバックル8が変位する。したがって、従来方式より安定した呼吸及び脈拍の検知が可能になる。
【0044】
図9は、センサ20の構成の一例を示す図である。センサ20は、発振部22と、出力部23と、検波部24と、アンテナ25とを有する。
【0045】
発振部22は、特定の安定した周波数で発振する信号を生成する。出力部23は、発振部22により生成された信号に基づいて、アンテナ25に給電する。アンテナ25のマッチングが良好であると、アンテナ25での反射ロスが抑えられた状態で、空間に電波がアンテナ25から放射される。定在波比(SWR)とは、出力部23からアンテナ25に流れる進行波の大きさに対する反射波の大きさの比をいう。出力が安定していれば、検知対象物からの反射波の変化がSWRの変化として現れる。乗員11の呼吸に同期して、バックル8が移動する又は検知対象物が移動することにより、SWRが周期的に変化する。
【0046】
検波部24は、受信波(反射波)を検波し、高周波の電波(送信波)が受けた変化を低周波の変化に変換する。
【0047】
検波部24による検波の具体例として、振幅検波、周波数検波、位相検波が挙げられる。位相検波では、出力部23の進行波の位相と反射波を含む受信波の位相とが比較され、進行波と同位相のI成分と、進行波に対して90°位相が異なるQ成分とが、低周波に変換された検波出力として出力される。検波出力は、物体の動きに応じて波形が変化するセンサ出力信号の一例である。
【0048】
検波出力の振幅の大きさは、I
2+Q
2により計算される。検波出力の実効電力は、電圧に電流のI成分(同相成分)を乗算するか、電流に電圧のI成分を乗算することによって演算される。I成分とQ成分のタンジェントが演算されることにより、進行波に対する反射波の位相変化が得られる。検波出力には、呼吸と脈拍の少なくとも一方であるバイタルサインを表す周期的なバイタルサイン信号成分や、物体の移動(体動)を表す非周期的な移動信号成分が含まれる。
【0049】
図10は、センサ20の一具体例であるドップラーセンサ20Aの構成の一例を示す図である。
【0050】
ドップラーセンサ20Aは、ドップラー効果により、進行波に対する反射波の位相変化から検知対象物の変位をより精度良く検知できる。検知対象物が動くと、反射波の位相が変化し、その位相の変化速度に応じたビート周波数で定在波が変化する。したがって、ドップラーセンサ20Aは、送信波と反射波との位相検波を行うことによって、進行波に対する反射波の位相変化速度に比例するドップラー周波数を検出できる。ドップラー周波数により、ドップラーセンサ20Aと検知対象物との相対速度を導出することが可能である。また、ドップラーセンサ20Aがドップラー周波数を選択的に検知することで、車両振動と脈拍と呼吸とを容易に分別することができる。
【0051】
車両振動の周波数は、5Hz〜20Hzである。車両振動の具体例として、車両の走行による振動、車両への衝撃による振動などが挙げられる。脈拍の周波数は、1Hzから3Hzであり、呼吸の周波数は0.5Hz〜0.2Hzである。ドップラーセンサ20Aと検知対象物との相対速度が速いほど、ドップラー周波数は高い周波数に変換される。振幅が大きく周波数の高い車両振動は、ドップラー周波数として高い周波数に変換される。したがって、車両振動はフィルタによって容易に除去されることが可能であるので、物体の移動(体動)に同期する移動信号成分と、呼吸と脈拍の少なくとも一方であるバイタルサインに同期するバイタルサイン信号成分とを選択的に抽出することが容易になる。
【0052】
ドップラーセンサ20Aは、ドップラー効果を利用し、送信波と反射波との周波数差(ドップラー周波数)に応じたドップラー周波数信号(I出力及びQ出力)を出力する。I出力とQ出力は、位相差が90°(π/2)異なる電圧信号である。
【0053】
ドップラーセンサ20Aは、例えば、発振器33と、送信アンテナ31と、受信アンテナ32と、遅延回路35と、ミキサ34,36とを有する。発振器33の発振信号により、電波(例えば、マイクロ波)が送信アンテナ31から送信される。送信アンテナ31から送信された電波は、シート2上の検知対象物で反射し、受信アンテナ32は、その反射波を受信する。遅延回路35は、受信アンテナ32の受信信号の位相を90°(π/2)遅らせる。ミキサ34は、発振器33の発振信号と受信アンテナ32の受信信号とが入力されることにより、I出力(I成分)を生成する。ミキサ36は、発振器33の発振信号と、遅延回路35により位相が遅れた受信アンテナ32の受信信号とが入力されることにより、Q出力(Q成分)を生成する。
【0054】
送信アンテナ31及び受信アンテナ32は、例えば、四角形に形成された平面状のパッチアンテナである。送信アンテナ31及び受信アンテナ32は、それぞれ、複数あってもよい。
【0055】
図11は、検知対象物の移動と検波出力との関係の一例を示す図である。
図11(a)は、検知対象物の移動を示す。横軸は、サンプリング数を表し、縦軸は、進行波に対する反射波の位相変化量を表す。
図11(b)は、検波出力(I出力とQ出力)を示す。横軸は、サンプリング数を表し、縦軸は、検波出力の振幅を表す。検波出力に基づいて、検知対象物の移動に同期する移動信号成分を判別することが可能である。例えば、検出部40(
図3参照)は、
図11(b)に示されるI出力及びQ出力を復調して、進行波に対する反射波の位相の変化(回転)を演算することによって、
図11(a)に示される移動信号成分を検出できる。
【0056】
図12は、乗員11の体表の変位と検波出力との関係の一例を示す図である。
図12(a)は、乗員11の体表の変位を示す。
図12(b)は、検波出力(I出力とQ出力)を示す。横軸は、サンプリング数を表し、縦軸は、検波出力の振幅を表す。検波出力に基づいて、乗員11の体表の変位を検出することが可能である。例えば、検出部40(
図3参照)は、
図12(b)に示されるI出力及びQ出力を復調して、進行波に対する反射波の位相の変化(回転)を演算することによって、
図12(a)に示される体表の変位を検出できる。
【0057】
図13は、検出部40(
図3参照)の構成の一例を示す図である。検出部40は、センサ20から出力された検波出力(センサ出力信号の一例)から、呼吸と脈拍の少なくとも一方であるバイタルサインを表すバイタルサイン信号成分の周期を検出する。検出部40には、センサ20による検波により低周波に変換されたセンサ出力信号が入力される。検出部40は、入力されたセンサ出力信号から、検知対象物の動きなどの有意な特徴を抽出し、呼吸又は脈拍のバイタルサインの周期的な変化を選択的に取り出す機能を有する。
【0058】
本実施例では、検出部40は、帯域通過フィルタ41と、信号抽出部42と、呼吸周期選択部43と、振幅検知部44と、オフセット検知部45とを有する。
【0059】
図14は、帯域通過フィルタ41の構成の一例を示す図である。帯域通過フィルタ41は、センサ20から供給されるセンサ出力信号の前処理を行う前処理部に相当する。帯域通過フィルタ41は、所定の周波数以下の信号を通過させる。帯域通過フィルタ41は、アナログ回路で構成されたアナログ回路ブロック50と、デジタル回路で構成されたデジタル回路ブロック60とを有する。
【0060】
アナログ回路ブロック50は、A/D変換のためのアンチエイリアス周波数で最大通過周波数の上限を決める。帯域通過フィルタ41は、必要な周波数帯域内の信号のみを通過させてノイズを除去する。デジタル回路ブロック60は、アナログ回路ブロック50のローパスフィルタ52,54を通過したアナログ信号をA/D変換した後、必要な信号通過帯域処理をデジタル処理により行う。
【0061】
ドップラーレーダーでは、相対速度の検出に、1Hz以上の交流信号が使用されることが多い。しかし、呼吸の周波数(周期)は、0.5Hz〜0.2Hz(2秒〜5秒)である。あくびの周期は、約10秒、乗員の移動の周期は、20秒から30秒程度である。このため、コンデンサ等を用いたCRフィルタにより30秒以上の減衰を行うためには、容量の大きなコンデンサが必要である。この場合、電源投入時の安定に時間がかかる。また、大きな容量のコンデンサはスペース的にバックルに内蔵することは容易ではない。
【0062】
そこで、
図14に示されるように、DCアンプ51,53がアナログアンプとして使用される。センサ20から出力される検波出力には、DC成分(直流成分)が含まれる。アナログ回路ブロック50は、センサ20から出力される検波出力を増幅するDCアンプと、DCアンプの出力をローパスフィルタ処理するローパスフィルタとを有する。DCアンプ51は、I出力を増幅し、ローパスフィルタ52は、DCアンプ51の出力が入力される。DCアンプ53は、Q出力を増幅し、ローパスフィルタ54は、DCアンプ53の出力が入力される。
【0063】
デジタル回路ブロック60は、A/D変換部55と、バンドパスフィルタ56と、A/D変換部57と、バンドパスフィルタ58と、D/A変換部59とを有する。A/D変換部55は、ローパスフィルタ52のアナログ出力をデジタル出力に変換する。バンドパスフィルタ56は、A/D変換部55のデジタル出力を所定の周波数帯域幅で通過させる。A/D変換部57は、ローパスフィルタ54のアナログ出力をデジタル出力に変換する。バンドパスフィルタ58は、A/D変換部57のデジタル出力を所定の周波数帯域幅で通過させる。D/A変換部59は、DCアンプ51,53がレンジオーバーせずに信号を増幅できるように、増幅器51,53のオフセットをデジタル制御で自動制御する。
【0064】
呼吸の周波数(周期)は、0.5Hz〜0.2Hz(2秒〜5秒)程度であり、脈拍の周波数(周期)は、3Hz〜1Hz(0.3秒〜1秒)程度であり、乗員の移動の周期は、0.05Hz〜0.03Hz(20秒〜30秒)程度である。したがって、呼吸と乗員の移動(体動)とを高精度に検出するためには、帯域通過フィルタ41の通過帯域は、呼吸の最大周波数0.5Hz以下に設定されることが好ましい。また、脈拍と乗員の移動(体動)とを高精度に検出するためには、帯域通過フィルタ41の通過帯域は、脈拍の最大周波数3Hz以下に設定されることが好ましい。
【0065】
信号抽出部42(
図13参照)は、検波出力(センサ出力信号の一例)を帯域制限する帯域通過フィルタ41から出力された出力信号を、検知対象物とセンサ20との距離に比例する呼吸信号SIG(距離検出信号)に変換ないしは換算する。
【0066】
例えば、センサ20の検波出力には、I出力とQ出力の2つの出力がある。I出力とQ出力は、位相が90°異なる検波信号である。検知対象物とセンサ20との距離が変化すると、送信波に対する反射波の位相が変わる。24GHzの送信波の場合、当該距離が6mm変化すると、位相は360°変化する。当該距離が30mm変化すると、位相は1800°(=360°×30mm/6mm)変化する。当該距離が1mm変化すると、位相は60°(=360°×1m/6mm)変化する。つまり、位相の回転は、検知対象物とセンサ20との距離の変化と等価である。
【0067】
したがって、信号抽出部42は、I出力とQ出力を含む検波出力から位相の回転角度を計算することで、検知対象物の動きを表す呼吸信号SIGを検波出力から抽出できる。
【0068】
また、位相の回転が180°より小さい場合には、I出力及びQ出力にも、呼吸を表す信号の振幅情報が含まれるため、振幅が小さい場合には、信号抽出部42は、呼吸信号SIGの抽出にI出力及びQ出力を選択的に使用できる。検知に使用する信号源を信号の大きさや角度の変化範囲に応じて選択的に使用することによって、または、重み付けにより信頼度が高くなる信号を用いることによって、呼吸の検知精度を上げることができる。
【0069】
信号抽出部42が行う変換とは、物理パラメータを変えたり信号形態を変えたりすることを意味する。例えば、信号抽出部42は、ピークホールド検波する。あるいは、信号抽出部42は、I出力とQ出力から位相の回転を計算し、I出力とQ出力の2つの信号から距離に比例する1つの信号に物理パラメータを変換する。また、信号抽出部42が行う換算とは、この1つの信号を実際の距離変化のスケールに拡大縮小すること又はログスケールに合わせることを意味する。位相の回転が90°より小さな領域では、I出力及びQ出力は、そのまま距離スケールに換算可能である。
【0070】
検波出力の振幅は、検知対象物とセンサ20との距離の2乗や3乗に比例することが多い。そこで、ルックアップテーブル等を用いて非線形に信号と距離とを対応付けることを、信号抽出部42が行う変換又は換算の意味に含まれてもよい。信号抽出部42が何もしないことも、信号に係数1を乗算する変換とみなす。
【0071】
呼吸周期選択部43(
図13参照)は、信号抽出部42により抽出された呼吸信号SIG(検知対象物とセンサ20との距離に比例する距離検出信号)から、呼吸の周期成分を含むバイタルサイン信号成分の周期を検出する。
【0072】
呼吸周期選択部43は、呼吸信号SIGから特定のバイタルサイン信号成分の周期を効率よく選択する。また、呼吸周期選択部43は、呼吸信号SIGの波形に含まれる呼吸の周期成分の特徴を強めることによりバイタルサイン信号成分を生成し、生成したバイタルサイン信号成分の波形からピーク点やゼロクロス点を検出することによって呼吸周期を検出する。呼吸周期は、バイタルサイン信号成分の周期の一例である。
【0073】
呼吸信号SIGに重畳するノイズは、ピークの検出や周期の検出に誤差を与える。従って、呼吸周期選択部43は、呼吸信号SIGの波形に含まれる呼吸の周期成分の特徴を強める等の波形整形を行うことによって、ピークからピークの検出や周期の検出を容易に実施できる。
【0074】
一般的に、特定の周波数成分の検出には、FFT(高速フーリエ変換)が使用される。FFTにより導出された特定周波数領域の振幅の大小に基づいて、呼吸や脈拍の周波数成分の有無の検出が可能である。しかし、呼吸と脈拍の少なくとも一方であるバイタルサインを表すバイタルサイン信号成分の周期、オフセット又は波形は、一振動毎に変化する。したがって、FFTを使用する場合、信号波形を一振動毎に抽出してノイズを除去した後にFFTなどの後処理が実行されることが有用である。
【0075】
呼吸などの生体信号は、絶えず変動する。そのため、センサ20の検波部から出力された種々の信号に含まれる呼吸の周期情報は、一方の検波出力からは大きく検出されるが、他方の検波出力からは小さく検出される場合がある。従って、1つの信号に頼るよりも、複数の信号から複数のバイタルサイン信号成分が選択されることで、バイタルサインに関する情報の確度を高めることができる。
【0076】
図15は、呼吸周期選択部43の構成の一例を示す図である。呼吸周期選択部43は、I出力及びQ出力、位相信号、振幅信号などの複数の信号から、乗員11の呼吸周期を検知して選択し、その選択結果を生成部70に送出する。呼吸周期選択部43は、波形整形部61と、周期検知部62と、周期選択部63とを有する。
【0077】
波形整形部61は、呼吸周期の検知を行うため、呼吸信号SIGの波形に含まれる呼吸の周期成分の特徴(例えば、波形のピーク点、ゼロクロス点、変曲点など)を際立たせるための数値的演算処理を行う。たとえば、波形整形部61は、ノイズ除去やオフセット除去を行うため、フィルタ演算、差分、積算、ダンピング等の演算処理を行う。波形整形部61は、一つの呼吸信号SIGに対して複数の波形整形処理を行ってもよい。たとえば、呼吸信号SIGを微分した信号にも、呼吸周期情報が含まれる。波形整形部61は、波形整形内容が相互に異なる複数の波形整形フィルタを用いて、呼吸信号SIGの波形に含まれる呼吸の周期成分の特徴を強めることによって、複数のバイタルサイン信号成分を生成できる。
【0078】
周期検知部62は、波形整形部61により波形整形された一つ又は複数のバイタルサイン信号成分の波形に含まれる呼吸の周期成分の特徴を一つ又は複数の検出器(周期検出ロジック)により検出することによって、一つ又は複数の呼吸周期を検知(算出)する。周期検出ロジックは、周期検出方法を規定するプログラムの一例であり、例えば、中央演算処理装置により実行される。周期検知部62は、呼吸の周期成分の特徴の違いに応じて最適な検出器を使用することにより、当該特徴を精度良く検出できる。例えば、波形のピークの特徴として、三角ピーク、台形ピーク、なだらかな曲線ピークなどが挙げられる。
【0079】
周期選択部63は、周期検知部62により検知された一つ又は複数の呼吸周期の中から、適切な一つ又は複数の呼吸周期候補を選択する。例えば、周期選択部63は、周期検知部62により検知された複数の呼吸周期の平均値または中央値を呼吸周期候補として選択する。
【0080】
また、周期選択部63は、位相の回転が小さい変化状態(例えば90°未満)の場合にI出力及びQ出力に付加された重みを加味して、平均値又は中央値を選択してもよい。あるいは、周期選択部63は、位相の回転が大きい変化状態(例えば90°以上)の場合にI出力及びQ出力から算出された位相信号又は距離信号に付加された重みを加味して、平均値又は中央値を選択してもよい。重みは、上記の位相の回転情報に限られず、振幅の大小や信号の周期の乱れなどに応じて付加されてもよい。
【0081】
このように、検出部40の呼吸周期選択部43は、センサ20から出力されたセンサ出力信号から、バイタルサイン信号成分の複数の周期候補を複数の異なる周期検出方法によって検出する。これにより、生成部70は、呼吸周期選択部43によって検出された複数の周期候補から、信頼のあるバイタルサイン信号成分の周期を高精度に特定できる。
【0082】
周期選択部63は、選択した呼吸周期候補とその選択した呼吸周期候補の属性情報とを生成部70に送る。生成部70は、選択した呼吸周期候補の信頼度の評価にその属性情報を使用する。
【0083】
また、周期選択部63から出力される呼吸周期候補の数は、複数でもよい。たとえば、選択された複数の呼吸周期候補のうち、中央値と上限値と下限値とが生成部70に送られる。
【0084】
周期選択部63は、呼吸又は体動などの検知目的の動きを分離するため、例えば、呼吸周期候補を選択する複数の検出器(周期検出ロジック)を少なくとも一つ選択するか、呼吸周期候補を選択する選択フィルタの種類と通過帯域の少なくとも一方を変更する。呼吸などの生体信号の周期は絶えず変わるため、生成部70が呼吸周期候補の信頼度を評価した結果又は信頼のある呼吸周期候補から生成したバイタルサイン情報に応じて、周期選択部63は、検出器(周期検出ロジック)、選択フィルタの種類、選択フィルタの通過帯域のうちの少なくとも一つを変更してもよい。周期選択部63は、フィルタ定数の異なる選択フィルタを並列的に演算することによって適切な選択周期候補を選択してもよい。
【0085】
呼吸周期選択部43は、一つの信号に対して一つ以上のフィルタ処理と周期検出処理とを行う。たとえば、速い呼吸の周期と遅い呼吸の周期とでは、検出処理に最適な処理パラメータが異なる。そこで、呼吸周期選択部43は、生成部70が生成したバイタルサイン情報のフィードバックによって、生成部70が選択周期候補の信頼度を高く評価するようにバイタルサイン信号成分の周期の検出方法を変更する。これにより、現在の呼吸周期に適した検出方法を選択することができる。
【0086】
また、複数のフィルタ処理や複数の周期検出処理を並列的に実行できない場合がある。この場合、呼吸周期選択部43は、生成部70からフィードバックされた現在確定している呼吸周期に応じて、目的とする信号の振幅や揺らぎが小さくなるように、使用するフィルタ処理の特性や周期検出方法を動的に変更する。これにより、生成部70で生成されるバイタルサイン情報の確度が向上する。
【0087】
検出部40は、付加処理部64(
図15参照)を有する。付加処理部64は、
図13に示されるように、振幅検知部44と、オフセット検知部45と、雑音検知部46とを有する。
【0088】
振幅検知部44は、波形整形部61により波形整形されたバイタルサイン信号成分の振幅を検出する付加処理を実行し、検出した振幅を付加情報として生成部70に送信する。生成部70は、振幅検知部44により検知され且つ所定の振幅よりも小さな振幅を有するバイタルサイン信号成分から検出された呼吸周期の信頼度を低下させる。
【0089】
オフセット検知部45は、呼吸周期の振幅の中心値などのオフセットの情報を検知する。オフセット検知部45は、呼吸周期の振幅の中心値などのオフセットの情報を検知することによって、物体の非周期的な移動を表す移動信号成分を検知できる。
【0090】
雑音検知部46は、波形整形部61により波形整形されたバイタルサイン信号成分の雑音レベルを検出する付加処理を実行し、検出した雑音レベルを付加情報として生成部70に送信する。雑音レベルは、呼吸周期候補の信頼度を生成部70が評価するための指標の一つである。
【0091】
図16は、検出部40が処理する信号波形の一例を示す図である。
図16では、検出部40は、信号のフィルタ処理に、移動平均フィルタを使用する。
【0092】
図16において、周期選択部63は、基準呼吸周期の1/4〜1/2の区間で移動平均する移動平均フィルタを呼吸周期選択フィルタとして用いる。また、オフセット検知部45(
図13参照)は、基準呼吸周期の1倍〜2倍の区間で移動平均する移動平均フィルタをオフセット検知フィルタとして用いる。振幅検知部44(
図13参照)は、バイタルサイン信号成分の振幅の上ピークと下ピークとの差を算出する。移動平均区間は、生成部70が信頼のあると判定した平均呼吸周期に応じて適切な値に可変する、あるいは、複数の移動平均の結果から選択される。
【0093】
図16(a)は、呼吸信号SIGの波形の一例を示す。帯域通過フィルタ41後の信号抽出部42により抽出された呼吸信号SIGには、車両振動、体動及び呼吸の成分が含まれている。
【0094】
図16(b)は、波形整形部61が、呼吸信号SIGの波形を基準呼吸周期の1/2の区間で移動平均フィルタにより移動平均することによって生成したバイタルサイン信号成分SW−0.5の波形の一例を示す。呼吸の周期成分の特徴が強調されている。
【0095】
図16(c)は、オフセット検知部45が、バイタルサイン信号成分SW−0.5の波形を基準呼吸周期の2倍の区間で移動平均フィルタにより移動平均することによって生成したバイタルサイン信号成分SW−2.0の波形の一例を示す。バイタルサイン信号成分SW−2.0は、振幅中心値を示し、呼吸の周期成分の特徴が抑制されている。物体の非周期的な移動を表す移動信号成分が存在すると、バイタルサイン信号成分SW−2.0に変化が生じる。
【0096】
図16(d)は、波形整形部61が、バイタルサイン信号成分SW−0.5とバイタルサイン信号成分SW−2.0との差分を演算することによって生成した差分信号Deltaの波形の一例を示す。周期検知部62は、差分信号Deltaから呼吸周期を検知し、周期選択部63は、差分信号Deltaから検知された呼吸周期を呼吸周期候補として選択する。
【0097】
図16(e)は、振幅検知部44により検知された差分信号Deltaの振幅Magの波形の一例を示す。振幅Magは、呼吸周期候補の信頼度を生成部70が評価するための指標の一つである。
【0098】
図17は、生成部70の構成の一例を示す図である。生成部70は、検出部40が検出したバイタルサイン信号成分の信頼度を評価し、信頼のあるバイタルサイン信号成分から、呼吸と脈拍の少なくとも一方であるバイタルサインに関するバイタルサイン情報を生成する。生成部70は、信頼度が低い方に比べて高い方のバイタルサイン信号成分から、前記バイタルサイン情報を生成する。
【0099】
生成部70は、検出部40からの信号を受けて、呼吸周期候補の信頼度を考慮し、呼吸の有無及び呼吸周期を確定する。生成部70は、検出部40が検出したバイタルサイン信号成分の呼吸周期候補の信頼度を評価する評価部73と、信頼のある呼吸周期候補から、バイタルサインに関するバイタルサイン情報を生成する呼吸判断部74とを有する。バイタルサイン情報として、現在の呼吸の有無、現在の呼吸周期、平均呼吸周期、自発呼吸周期、呼吸ばらつき、呼吸異常などが挙げられる。
【0100】
例えば、評価部73は、シート2上の物体の移動の有無を判定し、当該移動があると判定したときのバイタルサイン信号成分の呼吸周期候補の信頼度に比べて、当該移動がないと判定したときの信頼度を高く評価する。シート2上の物体の移動には、当該物体が乗員である場合の当該乗員の運転操作による身体の移動や、車両挙動による当該物体の移動とが含まれる。呼吸判断部74は、信頼度が低い方に比べて高い方のバイタルサイン信号成分の呼吸周期候補からバイタルサイン情報を生成する。これにより、信頼度の低いバイタル信号成分の呼吸周期候補からバイタルサイン情報が生成されることを防止することができる。
【0101】
評価部73は、検出部40のオフセット検知部45により検知された移動信号成分に応じて、シート2上の物体の有無を判定する。評価部73は、シート2上の物体を移動させる車両挙動を表す車両挙動データに応じて、シート2上の物体の移動の有無を判定してもよい。評価部73は、移動信号成分と車両挙動データとを組み合わせて、シート2上の物体の移動の有無を判定してもよい。
【0102】
例えば、評価部73は、検出部40の振幅検知部44が検知した振幅が小さいときのバイタルサイン信号成分の呼吸周期候補の信頼度に比べて、振幅検知部44が検知した振幅が大きいときの信頼度を高く評価する。呼吸判断部74は、信頼度が低い方に比べて高い方のバイタルサイン信号成分の呼吸周期候補からバイタルサイン情報を生成する。これにより、信頼度の低いバイタル信号成分の呼吸周期候補からバイタルサイン情報が生成されることを防止することができる。
【0103】
例えば、評価部73は、検出部40の雑音検知部46が検知した雑音レベルが大きいときのバイタルサイン信号成分の呼吸周期候補の信頼度に比べて、雑音検知部46が検知した雑音レベルが小さいときの信頼度を高く評価する。呼吸判断部74は、信頼度が低い方に比べて高い方のバイタルサイン信号成分の呼吸周期候補からバイタルサイン情報を生成する。これにより、信頼度の低いバイタル信号成分の呼吸周期候補からバイタルサイン情報が生成されることを防止することができる。
【0104】
例えば、評価部73は、検出部40の周期選択部63が選択した呼吸周期候補のばらつきが大きいときのバイタルサイン信号成分の呼吸周期候補の信頼度に比べて、周期選択部63が選択した呼吸周期候補のばらつきが小さいときの信頼度を高く評価する。呼吸判断部74は、信頼度が低い方に比べて高い方のバイタルサイン信号からバイタルサイン情報を生成する。これにより、信頼度の低いバイタル信号成分の呼吸周期候補からバイタルサイン情報が生成されることを防止することができる。
【0105】
例えば、呼吸判断部74は、信頼度が低い方に比べて高い方のバイタルサイン信号成分の周期の経時的な変化に基づいて、バイタルサイン情報を生成する。これにより、バイタルサイン信号成分の周期が経時的に変化しても、生成されるバイタルサイン情報の確度を向上させることができる。
【0106】
具体的には、呼吸判断部74は、信頼度が低い方に比べて高い方のバイタルサイン信号成分の周期の経時的な変化に基づいて、当該周期の安定期間を選択し、当該安定期間でのバイタルサイン信号成分から、バイタルサイン情報を生成する。これにより、当該周期が安定している期間でのバイタルサイン信号成分の周期が、バイタルサイン情報の生成に利用されるので、生成されるバイタルサイン情報の確度を向上させることができる。
【0107】
たとえば、呼吸判断部74は、自発呼吸している状況の呼吸周期を選択的に集めて平均化処理することによって、自発呼吸周期を確定する。また、呼吸判断部74は、信頼度のある呼吸周期を評価部73により選び、信頼度と共に現在の呼吸周期を出力する。また、呼吸判断部74は、信頼度が高いと評価部73により評価された区間における呼吸周期候補の平均値を平均呼吸周期として出力する。また、呼吸判断部74は、信頼度が高いと評価部73により評価された区間における呼吸の変動ばらつきを呼吸ばらつきとして出力する。
【0108】
評価部73は、呼吸周期候補の信頼度を、以下の評価基準(1)〜(9)のうち少なくとも一つの評価基準に従って評価する。
(1)ある範囲の周期の信号が連続したときに信頼できるとする(周期ばらつきが小さい、または平均周期が安定している)。
(2)信号振幅が一定以上のときに信頼できるとする。
(3)体が大きく動いていないときに信頼できるとする(オフセットや信号に急峻な変化が無い)。
(4)信号前処理部や信号抽出部の処理や信号強度が適正であるとき信頼できるとする(レンジオーバーやオフセットエラーなどが無いか、通過した信号振幅が適正範囲など)。
(5)呼吸信号以外の情報(その他の信号72の一例である車両走行データなど)が特定範囲にあるとき信頼できるとする。
(6)複数の呼吸周期候補が入力された場合、平均値に一番近い呼吸周期候補又は多数決によって決まる呼吸周期候補を信頼できるとする。
(7)重み付けや、優先順位に従って選択や加重平均された結果を信頼できるとする。
(8)シートベルトが装着されているときに信頼できるとする。
(9)現在の判断情報に基づいて入力情報が信頼できると判断される場合を信頼できるとする。
【0109】
呼吸判断部74は、評価部73による評価結果に従い、現在の呼吸の有無、現在の呼吸周期、平均呼吸周期、呼吸ばらつきなどを、信頼度情報と信頼区間に基づいて判断し、その判断結果を出力する。
【0110】
この判断された呼吸の有無、周期、周期のゆらぎ、振幅等は、出力部80で選択的に利用できる。かつ、後段での、あくび、無呼吸などの乗員状態判断に利用できる。
【0111】
出力部80は、生成部70での判断結果および必要に応じて、バイタルサイン情報などの情報を外部に送出する。出力部80は、以下の少なくとも一つ以上の情報を出力する。
(1)乗員についてのバイタルサイン情報:呼吸有り無し、呼吸周期ランク、呼吸の安定状態(信頼度)など。
(2)乗員についてのバイタルサイン:呼吸周期、振幅、体動などのデータ。
(3)バイタルサイン情報以外の情報(自己診断情報):自己診断結果(正常/異常)。
(4)バイタルサイン情報以外の付加情報:乗員の有無、呼吸振幅から推定したベルトのテンションに関する情報など。
【0112】
図18は、検出部40が処理する信号波形の一例を示す図である。
図19は、
図18の信号波形に基づいて乗員のステータスを導出する実施例を示す図である。
図18の凡例は、
図16の凡例と同じであるので、説明を省略する。
図19(a)において、Detectは、生成部70から出力(推定)された呼吸周期の経時的変化(経時的に変化する呼吸周期を連続させたもの)を示す。
図19(a)において、点線は、呼吸センサにより実際に検出された呼吸の経時的変化を示す。
図19(b)において、Moveは、体動情報の経時的変化(経時的に変化する体動情報を連続させたもの)を示す。Moveの急激な変化は、胸の位置がブレーキで少し前に変位したときの情報を示す。
図19(c)において、D-dwXは、車両が減速中に乗員が受ける力を示し、D-upYは、車両が右カーブを旋回走行中に乗員が受ける力を示す。
【0113】
本実施例において、乗員ステータスが安定状態にあるか否かは以下のように行われる。Detectには、時折、呼吸周期に乱れがある非安定期間が存在する(約250から約370までのサンプリング期間、及び、約700から約760までのサンプリング期間)。しかし、Moveの情報と統合すると、Detectでの呼吸の乱れは、乗員の体動による検知乱れであることが推定できる。つまり、呼吸判断部74は、Moveの急変期間に対応する期間に現れる呼吸周期の乱れを、体動の急変による乱れと推定できる。
【0114】
さらに、
図19(c)で示される車両挙動データが利用できる場合は、呼吸判断部74は、その体動の急変を、ブレーキとその後に続く旋回により生じた受動的体動と推定できる。
【0115】
従って、このような情報から、外来要因を排除して、自発的体動、呼吸期間のみに注目すれば、運転乗員の自発呼吸周期は非常に安定しているとの乗員ステータスが導出できる。
同様に安定からの逸脱や無呼吸、並びに、音や光やベルトによるワーニングを車両から乗員に与えたときの、乗員反応、体動を検知し、乗員状態を検証することも出来る。
【0116】
図20は、車載システムの一例であるシートベルト装置1Bの構成を示すブロック図である。センサ20の発振周波数としてVHF-UHF帯の周波数が選択されると、伝播波の一部が皮膚表面から少し内部に侵入して反射する。従って、血流の大小によりわずかに反射が異なる。このような周波数が選択された場合、波長が長いため、検出は主に定在波比の変化を検出する。この変化には、センサと腰部の距離変化、反射面積変化、血流による反射率の変化を合わせた信号成分が含まれる。脈拍は1Hzから3Hz、呼吸は0.5Hzから0.2Hzとなる。従って、対象とする信号の周波数が異なるが、呼吸検出と同じ手法が適応できる。
【0117】
図20は、呼吸と脈拍を検知するブロック構成を示す。本実施例では、呼吸と脈拍でセンサ20が共通に使用され、検出部40と生成部70については、呼吸と脈拍とで専用に設けられている(呼吸検出部40A,脈拍検出部40B,生成部70A,70B)。
【0118】
以上、バックル及び車載システムを実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0119】
例えば、シート2は、車両の前側座席でもよいし、後部座席でもよい。