特許第6803690号(P6803690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803690
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】半田ごて
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/03 20060101AFI20201214BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B23K3/03 B
   B23K1/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-125999(P2016-125999)
(22)【出願日】2016年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-226009(P2017-226009A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204136
【氏名又は名称】太洋電機産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】茂川 知寛
(72)【発明者】
【氏名】三島 晃
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和寛
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−256496(JP,A)
【文献】 特開平10−339674(JP,A)
【文献】 特開平02−247078(JP,A)
【文献】 実開昭58−194864(JP,U)
【文献】 特開2012−121043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 3/03
B23K 1/00
H05B 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端で半田を溶融可能に構成されたこて先を備えた半田ごてであって、
前記こて先は、熱伝導性材料からなるこて先本体と、
前記こて先本体を加熱するヒータと、
前記こて先の先端側の温度を検出する温度センサと、を少なくとも有し、
前記こて先本体の内部には、前記ヒータを収容する第一の穴部と、前記温度センサを収容する第二の穴部とがそれぞれ独立して形成され、
前記第一の穴部および前記第二の穴部は、それぞれ全長に渡って前記こて先本体の長手方向に沿って、互いに平行に形成され、
前記第一の穴部は前記こて先本体の前記長手方向に垂直な断面において中心領域に形成され、前記第二の穴部は前記第一の穴部の周縁領域に形成され、
前記第一の穴部の内周面と前記第二の穴部との内周面との間には、絶縁材料からなる壁部が形成されてなり、
前記ヒータは、出力が200W以上であることを特徴とする半田ごて。
【請求項2】
前記第一の穴部、および前記第二の穴部には、更に絶縁部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の半田ごて。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田ごてに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半田ごてのこて先にあっては、熱伝導性の有する材料を長手方向に沿って延びる空洞を有するこて先本体とし、そのこて先本体の内部にヒータおよび温度制御用の温度センサを内蔵させたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。 このような構成の半田ごては、従来、ヒータ出力が例えば70W〜150W程度であった。
【0003】
一方、特に自動車の車載用電装品などの半田付けを行う際には、ヒータ出力が例えば300W〜500Wといった大出力の半田ごてを用いている。こうした大出力の半田ごてはヒータの温度が高く、ヒータの中心部では1000℃程度まで達する。
半田ごての温度センサは、通常、熱電対が用いられており、ヒータの中心を貫通するように配線されている。一例として、一般的な素線径が0.65の温度センサでは、常用の耐熱温度が650℃〜850℃程度である。このため、こうした大出力の半田ごてでは、ヒータ線の熱によって温度センサが耐久温度を超過し、短期間で温度センサが高熱により断線する虞があるといった課題があった。
また、従来の半田ごてのように、温度センサのリード線がヒータの中心を貫通するように配線されていると、大出力のヒータに通電させた際に、温度センサにノイズが加わり、正確な温度測定の妨げになるという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−17060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、大出力のヒータを用いた半田ごてであっても、熱による温度センサの劣化や、ヒータのノイズによる温度センサの測定精度の低下を抑制し、大出力、長寿命で、こて先の正確な温度測定が可能な半田ごてを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の半田ごては、以下の構成を有する。
先端で半田を溶融可能に構成されたこて先を備えた半田ごてであって、前記こて先は、熱伝導性材料からなるこて先本体と、前記こて先本体を加熱するヒータと、前記こて先の先端側の温度を検出する温度センサと、を少なくとも有し、前記こて先本体の内部には、前記ヒータを収容する第一の穴部と、前記温度センサを収容する第二の穴部とがそれぞれ独立して形成され、前記第一の穴部および前記第二の穴部は、それぞれ全長に渡って前記こて先本体の長手方向に沿って、互いに平行に形成され、前記第一の穴部は前記こて先本体の前記長手方向に垂直な断面において中心領域に形成され、前記第二の穴部は前記第一の穴部の周縁領域に形成され、前記第一の穴部の内周面と前記第二の穴部との内周面との間には、絶縁材料からなる壁部が形成されてなり、前記ヒータは、出力が200W以上であることを特徴とする。
【0007】
実施形態の半田ごてによれば、こて先本体の内部にヒーターを収容する第一の穴部と、温度センサを収容する第二の穴部とをそれぞれ独立して形成した。これによって、ヒーターで生じた熱がダイレクトに温度センサのリード線に伝搬することを防止できる。
【0008】
即ち、従来の半田ごてのように、ヒータに温度センサのリード線が直接露出する構成では、ヒータの熱がダイレクトに温度センサのリード線に伝搬し、温度センサが高熱に晒されることによる劣化促進や断線といったことが生じていた。
【0009】
しかし、本実施形態のように、第一の穴部と第二の穴部とをそれぞれ独立して形成し、ヒーター、温度センサをそれぞれ収容することによって、ヒーターで生じた熱がダイレクトに温度センサに伝搬することを防止し、温度センサの熱劣化や断線を抑制することが可能になる。特に、高出力のヒータ線を用いた際に、温度センサの過熱を効果的に防止して、簡易な構成で長寿命かつ、高出力な半田ごてを実現することができる。
【0012】
前記第一の穴部、および前記第二の穴部には、更に絶縁部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半田ごてによれば、大出力のヒータを用いた半田ごてであっても、熱による温度センサの劣化を抑制し、大出力、かつ長寿命な半田ごてを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態に係る半田ごてを示す外観斜視図である。
図2】こて先を示す断面図である。
図3図2のA−A’線での断面図である。
図4】ヒータの他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した一実施形態である半田ごてについて図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0016】
以下に、本発明に係る半田ごての一実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る半田ごてを示す外観斜視図である。図2はこて先を示す断面図である。また、図3は、図2のA−A’線での断面図である。
半田ごて10は、その先端部11aで低融点合金である半田を溶融し、はんだ付けしたり、付けられていた半田を取り除いたりすることを目的として使用されるものである。半田ごて10は、大まかに分けて、先端11aで半田を溶融可能にされたこて先11と、そのこて先11の基端11b側に、こて先11と一体とされるように設けられるこて本体12とから構成されている。こて本体12には、グリップ部23が形成されている。
【0017】
また、こて本体12の基端12bには、ゴムで形成されたコードアーマ13が取り付けられている。そして、このコードアーマ13には、電源と接続可能なコード14が貫通形成されている。なお、以下の説明において、単に「先端」と称する場合は、その部材のこて先11の先端11a方向の端部を意味し、単に「基端」と称する場合は、その部材のこて本体12の基端12b方向の端部を意味する。
【0018】
図2に示すように、こて先11は、大きく分けて、こて先本体21と、このこて先本体21に内蔵される加熱装置22と、こて先本体21の先端21aの反対側となる基端21b側には、外装管28が接続されている。外装管28は、例えば、SUS管からなる。
【0019】
こて先本体21は、熱伝導性に優れた材料、例えば銅から構成されている。また、このこて先本体21の外面にはメッキ層25が形成されている。メッキ層25は、例えば、鉄メッキによって形成されている。こて先本体21の先端部分は、こて先11の先端11aとされている。本実施形態のこて先11は、先端部分が直線状の楔形を成している。なお、こうしたこて先11の形状は、先端部分が尖った円錐形状など、半田接合部分の形状に合わせて任意の形状にすることができる。
こうしたこて先本体21内に加熱装置22と温度センサ33とが収容される。
【0020】
なお、本実施形態では、こて先本体21は銅によって形成され、その周囲に鉄メッキからなるメッキ層25が形成されているが、こて先本体21やこれを覆うメッキ層25の構成材料は限定されるものでは無く、熱伝導性のよい金属によって形成されていればよい。
【0021】
加熱装置22は、絶縁材料、例えばセラミックスからなる絶縁管31と、こて先本体21を加熱するヒータ線(ヒータ)32とを有している。ヒータ線32は、こて先11の先端11aに向けて延びる往路部32aと、こて先11の先端11aの近傍で往路部32aが折り返されて、こて先11の基端11bに向けて延びる復路部32bとを有する。なお、往路部32aに替えて電力線38aを延長してそのままヒータの中心部を通し、こて先11aの近傍で復路部32bと接合させた構造であってもよい。
【0022】
なお、こうしたヒータ線(ヒータ)32の往路部32aと復路部32bとは、一連の電熱線からなる。電熱線としては、例えば、アルミニウム含有鉄クロム合金、タングステン線、ニクロム線などが挙げられる。また、本実施形態におけるヒータ線32は、出力が200W〜1000Wの高出力ヒータである。
【0023】
ヒータ線32の往路部32aは、絶縁管31の中心に形成されたヒータ線穴を介して、基端21b側から先端21a側に向かって延びている。また、ヒータ線32の復路部32bは、先端21a側で往路部32aに接続され、絶縁管31の外周面にコイル状に巻回されつつ先端21a側から基端21b側に向かって延びている。
【0024】
また、ヒータ線32の往路部32aおよび復路部32bは、こて先本体21の基端21b側において、電力線38a,38bに接続されている。これにより、ヒータ線32は、電力線38a,38bから電力が供給されることで発熱し、こて先11の先端11aを加熱することができる。
【0025】
なお、ヒーター線32は、絶縁性を高めるために表面を焼成するなどして酸化膜によって被覆することもできる。これにより、より配置密度を高くすることができ、ヒータ線どうしの間隔を詰めて配置することができる。これによって、より小さなこて先にすることも可能であり、ヒータ線の密度が高いので、熱効率を良くすることができる。
【0026】
温度センサ33は、こて先11の先端11a側に配される温度検出部34と、この温度検出部34から延びるセンサ線(リード線)35とからなる。温度検出部34は、加熱装置22の先端側に配される。温度検出部34は、例えば、アルメル−クロメル接合体などのK型熱電対、クロメル−コンスタンタン接合体などのE型熱電対、鉄−コンスタンタン接合体などのJ型熱電対および、熱電対と同等の働きをするセンサを用いることができる。
【0027】
温度センサ33の温度検出部34を、こて先11の先端11a近傍に形成することで、こて先11の温度をより正確に検出することができる。なお、温度センサを並列、直列に形成する場合には、温度検出部34をこて先11に接触させないようにする。
【0028】
こて先本体21内には、基端21b側から先端21a側に向けて延びる閉管である、第一の穴部35Aと、第二の穴部35Bとが形成されている。このうち第一の穴部35Aはこて先本体21内の長手方向に垂直な断面(図3を参照)において中心領域に形成されている。また、第二の穴部35Bは第一の穴部35Aの外側である周縁領域に形成されている。
【0029】
第一の穴部35Aには、往路部32aおよび復路部32bからなるヒータ線(ヒータ)32と、このヒータ線32の復路部32bが外周面に巻回された絶縁管31とが収容される。一方、第二の穴部35Bには、温度検出部34とセンサ線(リード線)35とからなる温度センサ33が収容される。第一の穴部35Aと第二の穴部35Bとは、こて先本体21内において互いに独立して形成され、熱的に分離されている。
【0030】
また、第一の穴部35Aの内面と、ヒータ線(ヒータ)32との隙間、および第二の穴部35Bの内面と温度センサ33との隙間には、それぞれ絶縁材が充填されてなる絶縁部29が形成されている。絶縁部29を構成する絶縁材としては、熱伝導性に優れたセラミックスなどを用いることができる。
【0031】
以上のような構成の半田ごて10の作用、効果について説明する。
本実施形態の半田ごて10は、こて先本体21の内部に、ヒーター線32を収容する第一の穴部35Aと、温度センサ33を収容する第二の穴部35Bとをそれぞれ独立して形成した。これによって、ヒーター線32で生じた熱がダイレクトに温度センサ33に伝搬することを防止できる。
【0032】
即ち、従来の半田ごてのように、ヒータに対して直接露出するように温度センサを配した構成、例えば、コイル状に巻回されたヒータ線の中心に温度センサのセンサ線(リード線)を通す構成では、ヒータ線の熱がダイレクトに温度センサに伝搬し、温度センサが高熱に晒されることによる劣化促進や断線といったことが生じていた。
【0033】
しかし、本実施形態のように、こて先本体21内に第一の穴部35Aと第二の穴部35Bとをそれぞれ独立して形成し、ヒーター線32、温度センサ33をそれぞれこの第一の穴部35A、第二の穴部35Bに収容することによって、ヒーター線32で生じた熱がダイレクトに温度センサ33に伝搬することを防止し、温度センサ33の熱による劣化や断線を抑制することが可能になる。特に、出力が200W以上の高出力のヒータ線32を用いた際に、温度センサ33の過熱を効果的に防止して、簡易な構成で長寿命かつ、高出力な半田ごて10を実現することができる。
【0034】
また、ヒーター線32、温度センサ33をそれぞれ第一の穴部35A、第二の穴部35Bにそれぞれ収容することによって、ヒーター線32と温度センサ33とが離間されるため、大出力のヒータ線32に通電させた際に、ヒータ線32で生じたノイズが温度センサ33に伝搬することを抑制し、温度センサ33による温度測定の精度低下を確実に防止することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、こて先を加熱するためのヒータとして、ヒータ線をコイル状に巻回させたコイルヒータの例を示したが、ヒータの形態はこれに限定されるものでは無い。
図4は、ヒータの他の例を示す斜視図である。このヒータ40は、セラミックスヒーターであり、熱伝導性に優れたセラミックス、例えばアルミナからなるシート状の基材41の表面に、所定のパターンで薄膜の発熱体42を形成し(図4(a)参照)、これを巻回させて筒状に形成して焼成し、接続端子43を設けたものである(図4(b)参照)。
こうしたヒータ40を、上記実施形態のこて先本体21内に形成した第一の穴部35Aに挿入し、加熱装置とすることもできる。こうしたヒータ40(セラミックスヒーター)は、信頼性に優れ、かつ効率的にこて先の加熱を行うことができる。
【0036】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0037】
以上、説明した本発明の半田ごては、上述した実施形態以外にも、例えば、互いに開閉可能な2本のこて先を備えた、電子部品の脱着用のホットピンセット(半田ごて)にも適用することができる。これによって、微細な電子部品を把持、取り外しが可能な脱着用のホットピンセットを実現できる。また、熱カシメ機(ヒュージングマシン)における固体同士を熱接合するための加熱具(コテ)として用いることもできる。
【符号の説明】
【0038】
10 半田ごて
11 こて先
21 こて先本体
22 加熱装置
28 外装管
31 絶縁管
32 ヒータ線
33 温度センサ
35A 第一の穴部
35B 第二の穴部
図1
図2
図3
図4