(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803693
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】スリット付き側溝
(51)【国際特許分類】
E03F 5/04 20060101AFI20201214BHJP
E01C 11/22 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
E03F5/04 A
E01C11/22 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-135221(P2016-135221)
(22)【出願日】2016年7月7日
(65)【公開番号】特開2018-3545(P2018-3545A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391013416
【氏名又は名称】ゴトウコンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】五藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】松林 秀佳
【審査官】
富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−339445(JP,A)
【文献】
特開2005−256324(JP,A)
【文献】
特開2006−088704(JP,A)
【文献】
特許第2957650(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B5/00−7/18、8/00
8/06−8/08
E02C1/00−5/02
E03F1/00−11/00
E01C11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側溝の幅方向一端部側上面から側溝の内部に設けられた空間に向けて上下方向に貫通したスリットが側溝長手方向に設けられ、前記側溝の上壁、両側壁及び底壁の壁厚表面側に寄せて、側溝強度を保持する補強用の補強筋が埋設されてなるスリット付き側溝であり、
前記側溝の上壁表面と前記側溝の上壁に埋設された前記補強用の補強筋の間には、前記側溝の上壁の幅方向端面を補強する平面状補強材が埋設され、
前記平面状補強材は、前記側溝の上壁の幅方向の範囲を覆い、かつ前記スリット付き側溝の長手方向全長を覆う長さに形成された、
ことを特徴とするスリット付き側溝。
【請求項2】
前記平面状補強材は、平面部に複数の空隙部を有する金属部材で構成されたこと、
を特徴とする請求項1記載のスリット付き側溝。
【請求項3】
前記平面状補強材は、平面部に複数の空隙部を網目状に有する網目状金属部材で構成されたこと、
を特徴とする請求項2記載のスリット付き側溝。
【請求項4】
前記複数の空隙部は、側溝形成時に側溝形成用のコンクリート粗骨材が通過すべく前記粗骨材の径より大径に形成された、
ことを特徴とする請求項2または請求項3記載のスリット付き側溝。
【請求項5】
前記平面状補強材は、防錆部材で構成された、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4記載のスリット付き側溝。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期の耐久性に優れ、破損しにくく、たとえ大きな衝撃や荷重によって破損したとしても破片ブロックが脱落せず亀裂が入る程度の破損で済み、破損箇所を容易に修復できるスリット付き側溝に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製のスリット付き側溝をたとえば脇側に埋設して形成した道路では、長年にわたりその側溝の上を通過する車両の走行振動や重量により側溝上面で亀裂や欠損が生じる。
特に、側溝上面にスリットを有する側溝にあっては、そのスリットの端部に亀裂や欠損が生じる。
またコンクリート自体の経年劣化により微少の振動や衝撃であってもコンクリートの剥離、剥落や亀裂等が生じていた。その結果、側溝の上面が陥没したり、側溝上面の欠損により、車両走行の際にガタツキが生じる原因となっていた。
さらに、側溝上面に亀裂が生じることによりコンクリート製側溝自体の耐久性は著しく低下するものとなっていた。
【0003】
また、そのような陥没等した側溝上を、乗用車、トラックやオートバイなどの車両が通過すると、たとえばタイヤが嵌って動けなくなったり、タイヤがパンクするおそれがあった。また、オートバイに至っては、転倒したり、転倒した際に他の車両と接触することも考えられる。
【0004】
また、近年では通勤あるいは通学などの脚として自転車が頻繁に利用されており、スリット付き側溝が敷設された道路において、当該側溝の陥没やガタツキは自転車走行上の安全面においても大きな課題となっていた。
【0005】
さらに、緊急時に警察車両や救急車などの緊急車両がやむを得ず路肩を走行する際、前記スリット付き側溝の陥没等が障害となり走行の遅れが生じることがある。
【0006】
ここで破損した側溝を修繕するための従来法としては、側溝の周りを掘削して破損したコンクリート製側溝自体を取り換える方法や破損した箇所を専用の機械で切断し、切断した箇所に新たに補強金具を取り付けコンクリートを打設する方法がある(特開2005−273382号公報)。
【0007】
しかしながら前記従来の方法では、大型の重機を使用することが多く、近隣に騒音の問題が生じさせる。また、工事するにあたり道路を一車線占有してしまうため、交通量の多い道路や片側一車線の道路では一般通行車両に大きな障害となる。そのため、工事期間が長期となり、また多くの人員が必要となるため工事費用が高くなるなどの課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−273382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かくして、本発明は前記従来の課題に対処すべく創案されたものであって、コンクリート製のスリット付き側溝をたとえば脇側に埋設して形成した道路において、長年にわたりその側溝の上を通過しても車両の走行振動や重量により側溝上面で亀裂や欠損が簡単には生ぜず、特に、側溝上面にスリットを有する側溝にあっても、そのスリットの端部に簡単には亀裂や欠損が生ぜず、またコンクリート自体の経年劣化により微少の振動や衝撃であってもコンクリートの剥離、剥落や亀裂等が生ぜず、側溝の上面が陥没したり、側溝上面の欠損により、車両走行の際にガタツキが生ぜず、側溝上面に亀裂が生じることによりコンクリート製側溝自体の耐久性が低下することがなく、陥没等した側溝上を、乗用車、トラックやオートバイなどの車両が通過してもタイヤが嵌って動けなくなったり、タイヤがパンクするおそれがなく、オートバイが転倒したり、転倒した際に他の車両と接触することもなく、通勤あるいは通学などの脚として自転車が頻繁に利用されているスリット付き側溝が敷設された道路において、当該側溝の陥没やガタツキによる自転車走行上の安全面に不安がなく、緊急時に警察車両や救急車などの緊急車両がやむを得ず路肩を走行する際、前記スリット付き側溝の陥没等が障害となり走行の遅れが生じることがなく、従来のように、破損した側溝を修繕するため、側溝の周りを掘削して破損したコンクリート製側溝自体を取り換えたり、破損した箇所を専用の機械で切断し、切断した箇所に新たに補強金具を取り付けコンクリートを打設する必要がなく、もって、大型の重機を使用することがなく、近隣に騒音の問題を生じさせず、また、従来のように、工事するにあたり道路を一車線占有し、交通量の多い道路や片側一車線の道路では一般通行車両に大きな障害を生じさせ、そのため工事期間が長期となり、また多くの人員が必要となるため工事費用が高くなることがないスリット付き側溝を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
側溝
の幅方向一端部側上面から側溝の内部に設けられた空間に向けて上下方向に貫通したスリットが側溝長手方向に設けられ、
前記側溝の上壁、両側壁及び底壁の壁厚表面側に寄せて、側溝強度を保持する補強用の補強筋が埋設されてなるスリット付き側溝であり、
前記側溝の上壁表面と
前記側溝の上壁に埋設された前記補強用の補強筋の間には、
前記側溝の上壁の幅方向端面を補強する平面状補強材が埋設さ
れ、
前記平面状補強材は、前記側溝の上壁の幅方向の範囲を覆い、かつ前記スリット付き側溝の長手方向全長を覆う長さに形成された、
ことを特徴とし、
または、
前記平面状補強材は、平面部に複数の空隙部を有する金属部材で構成されたこと、
を特徴とし、
または、
前記平面状補強材は、平面部に複数の空隙部を網目状に有する網目状金属部材で構成されたこと、
を特徴とし、
または、
前記複数の空隙部は、側溝形成時に側溝形成用のコンクリート粗骨材が通過すべく前記粗骨材の径より大径に形成された、
ことを特徴とし、
または、
前記平面状補強材は、防錆部材で構成された、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるスリット付き側溝であれば、
コンクリート製のスリット付き側溝をたとえば脇側に埋設して形成した道路において、長年にわたりその側溝の上を通過しても車両の走行振動や重量により側溝上面で亀裂や欠損が簡単には生ぜず、特に、側溝上面にスリットを有する側溝にあっても、そのスリットの端部に簡単には亀裂や欠損が生ぜず、またコンクリート自体の経年劣化により微少の振動や衝撃であってもコンクリートの剥離、剥落や亀裂等が生ぜず、側溝の上面が陥没したり、側溝上面の欠損により、車両走行の際にガタツキが生ぜず、側溝上面に亀裂が生じることによりコンクリート製側溝自体の耐久性が低下することがなく、陥没等した側溝上を、乗用車、トラックやオートバイなどの車両が通過してもタイヤが嵌って動けなくなったり、タイヤがパンクするおそれがなく、オートバイが転倒したり、転倒した際に他の車両と接触することもなく、通勤あるいは通学などの脚として自転車が頻繁に利用されているスリット付き側溝が敷設された道路において、当該側溝の陥没やガタツキによる自転車走行上の安全面に不安がなく、緊急時に警察車両や救急車などの緊急車両がやむを得ず路肩を走行する際、前記スリット付き側溝の陥没等が障害となり走行の遅れが生じることがなく、従来のように、破損した側溝を修繕するため、側溝の周りを掘削して破損したコンクリート製側溝自体を取り換えたり、破損した箇所を専用の機械で切断し、切断した箇所に新たに補強金具を取り付けコンクリートを打設する必要がなく、もって、大型の重機を使用することがなく、近隣に騒音の問題を生じさせず、また、従来のように、工事するにあたり道路を一車線占有し、交通量の多い道路や片側一車線の道路では一般通行車両に大きな障害を生じさせ、そのため工事期間が長期となり、また多くの人員が必要となるため工事費用が高くなることがないとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の構成を説明する構成説明図(1)である。
【
図2】本発明の構成を説明する構成説明図(2)である。
【
図3】本発明の構成を説明する構成説明図(3)である。
【
図4】本発明によるスリット付き側溝を作製する型枠装置の構成を説明する構成説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
【0014】
図1に、本発明であるスリット付き側溝の第一実施例を示す。
図1において、符号1はスリット付き側溝を示し、該スリット付き側溝1は、
図1の正面図から理解されるように、底壁5、両側壁6、6及び上壁4により略方形状をなして構成されており、内部には水路となる空間部2が設けられている。この空間部2の形状については何ら限定されるものではないが、一般的には略縦長の楕円形状に形成されてれている。
【0015】
そして、この空間部2の上方で側溝1の幅方向一端部側には、前記空間部2と外部とを連通させるスリット3が側溝1の上壁4の一部を上下方向に貫通させて設けられている。ここで、このスリット3の幅長には何ら限定はないが、本実施例では、上部の幅長より下部の幅長の方を狭くして形成してある。そして、このスリット3は、側溝1の長手方向に向かって連続して設けられている。
【0016】
さらに、
図1から理解されるように、スリット付き側溝1を構成する上壁4、両側壁6、6及び底壁5の中には、それらの上壁4、両側壁6、6及び底壁5の壁厚表面側に寄せて、該コンクリート製スリット付き側溝1の強度を保持するために補強用の補強筋7が配筋されて埋設されている。
【0017】
また、前記補強筋7の上には
図1(b)に示す平面状補強材8が、所定のスペーサを介在させ、前記補強筋7と所定の間隔を設けて配置され取り付けられている。
【0018】
ここで、前記平面状補強材8は、本発明のスリット付き側溝1における上壁4の幅方向の範囲をほぼ覆い、かつスリット付き側溝1の長手方向全長をほぼ覆う長さに形成されている。
【0019】
さらに、本実施例の平面状補強材8は、スリット3を構成する上壁4の幅方向端面9の部分を覆う様略鈎状に折曲した、例えばコ字状に折り曲げられた先端補強部12を設けて形成される。
【0020】
また、前記平面状補強材8には全体に亘って複数の空隙部11が設けられており、例えば、網目状の空隙部11を複数有する金属製の網目部材で形成される。
【0021】
すなわち、ステンレス製のエキスパンドメタルなどが平面状補強材8の具体例としてあげられる。かかる部材であれば、防錆性に優れ、コンクリートとの付着性にも優れているからである。
【0022】
ここで、本実施例によるスリット付き側溝1の施工に付き説明すると、
図4に示すように、下型枠13上に両側型枠14、14を立設する。また、符号15は前記空間部2形成用内型枠であり、符号16はスリット形成用内型枠である。
図4に示す様に、補強筋7と平面状補強材8とを配設した後、型枠内にコンクリートを充填する。
【0023】
ここで、コンクリートの材料としては、所定の大きさの径を有する粗骨材が投入されている。この粗骨材の径の大きさは、一般的に15mm乃至25mmであり、もって、平面状補強材8の空隙部11の径は、前記粗骨材が通過できる大きさのものとしてあるのである。
【0024】
しかして、所定時間養生した後、前記空間部形成用内型枠15とスリット形成用内型枠16を長手方向に向かって引き抜く。
【0025】
その後、両側型枠14、14を開いて、本実施例のスリット付き側溝1を取り出すのである。
【0026】
ここで、本実施例のスリット付き側溝1は、特に上壁の幅方向端面9の部分が、平面状補強材8によって補強されている。よって、スリット3の端部、すなわち上壁の幅方向端面9の部分に簡単には亀裂や欠損が生ぜず、またコンクリート自体の経年劣化により微少の振動や衝撃であってもコンクリートの剥離、剥落や亀裂等が生ぜず、さらにはスリット付き側溝1の上壁4が陥没したり、欠損することがないため、車両走行の際にガタツキが生ぜず、スリット付き側溝1自体の耐久性が低下することがなく、陥没等した側溝上を、乗用車、トラックやオートバイなどの車両が通過してもタイヤが嵌って動けなくなったり、タイヤがパンクするおそれがなく、オートバイが転倒したり、転倒した際に他の車両と接触することもなく、通勤あるいは通学などの脚として自転車が頻繁に利用されているスリット付き側溝1が敷設された道路において、当該側溝の陥没やガタツキによる自転車走行上の安全面に不安がなく、緊急時に警察車両や救急車などの緊急車両がやむを得ず路肩を走行する際、前記スリット付き側溝1の陥没等が障害となり走行の遅れが生じることがなく、従来のように、破損した側溝を修繕するため、側溝の周りを掘削して破損したコンクリート製側溝自体を取り換えたり、破損した箇所を専用の機械で切断し、切断した箇所に新たに補強金具を取り付けコンクリートを打設する必要がなく、もって、大型の重機を使用することがなく、近隣に騒音の問題を生じさせず、また、従来のように、工事するにあたり道路を一車線占有し、交通量の多い道路や片側一車線の道路では一般通行車両に大きな障害を生じさせ、そのため工事期間が長期となり、また多くの人員が必要となるため工事費用が高くなることがないのである。
【0027】
次に、
図2、
図3に本発明の他の実施例を示す。
図2では、平面状補強材8をその先端に、コ字状の先端補強部12を形成しないタイプとした(
図2(b)参照)。この様な平面状補強材8であっても充分に、スリット3の端部、すなわち上壁の幅方向端面9の部分を補強することが出来る。
【0028】
さらに、
図3に示す実施例は、先端補強部12をコ字状ではなく、L字状に形成したものであり、この様な先端補強部12であっても充分にスリット3の端部、すなわち上壁の幅方向端面9の部分を補強することが出来る。
【符号の説明】
【0029】
1 スリット付き側溝
2 空間部
3 スリット
4 上壁
5 底壁
6 側壁
7 補強筋
8 平面状補強材
9 上壁の幅方向端面
11 空隙部
12 先端補強部
13 下型枠
14 側型枠
15 空間部形成用内型枠
16 スリット形成用内型枠