【実施例1】
【0009】
(圧縮機1の構造)
図1は、本発明の一実施例に係る実施例1の圧縮機1の軸方向における縦断面図である。圧縮機1は、電機子2、及び、例えば平板形状の永久磁石3aを有する可動子3を備える。
【0010】
電機子2は、磁極4、磁極4それぞれに巻回される巻線6、及びブリッジ7を有する。磁極4は、例えば、積層した電磁鋼板からなり、供給部の一例である巻線6に交番電流を通電することにより、可動子3の永久磁石3aを往復運動させる電磁力を発生させることができるよう構成されている。
図1に示す圧縮機1は、その一例として、可動子3の軸方向(鉛直方向)に対し、その両側に空隙を介して可動子3を挟むよう対向配置される対をなす磁極4を二組有し、これら二組の対をなす磁極4は軸方向(鉛直方向)に沿ってブリッジ7により規定される間隔にて離間している。二組の対をなす磁極4に捲回される巻線6へ交番電流を制御装置5により通電することにより、永久磁石3aが各対をなす磁極4に交互に引き付けられることで、可動子3が往復運動する。なお、以下では、可動子3が鉛直方向に往復運動する場合を一例として説明するが、往復運動の方向は鉛直方向に限られるものではない。例えば、可動子3が水平方向に往復運動するよう構成しても良く、また、鉛直方向に対し任意の角度を有する方向に可動子3が往復運動する構成としても良い。
【0011】
可動子3は、平板形状の永久磁石3aを有し、一端がピストン12に固定され、他端が共振バネ14に接続されている。永久磁石3aの形状や個数は、適用する装置に応じて適宜設計でき、平板形状に限定されるものではない。例えば、可動子3を円筒形状或は円柱形状とし、永久磁石3aを可動子3の外周面に複数枚配置する構成としても良い。
電機子2及び可動子3の相対往復運動の方向において、可動子3の一端側にはピストン12が接続されている。このため、可動子3の往復運動に伴って、シリンダブロック11のシリンダ11a内において、ピストン112がシリンダブロック11の内面と摺動しつつ往復動可能である。シリンダ11a内のピストン12、シリンダブロック11の内面及びシリンダヘッド13で囲まれた領域は、流体が圧縮及び膨張される圧縮室となる。
【0012】
シリンダブロック11の端面には、ピストン12の端面に対向するシリンダヘッド13が接続しており、ピストン12の往復運動に伴って、シリンダ11a内のガスは圧縮、吐出を繰り返す。そのための構成としてシリンダヘッド13には、シリンダ11a内へ流入するガスが通過する吸入穴(図示せず)と、シリンダ11a外へ流出するガスが通過する吐出穴(図示せず)が設けられており、これら吸入穴及び吐出穴には逆止弁が設けられている。
【0013】
電機子2及び可動子3の相対往復運動の方向において、可動子3の他端側には共振ばね14が接続されており、可動子3の往復運動に伴って共振ばね14による復元力が可動子3に作用するよう構成されている。可動子3が鉛直方向(軸方向)に往復運動する場合、可動子3を含む往復運動する物体の質量及び共振ばね14のばね定数などで定まる共振周波数に一致した往復運動であれば、圧縮機1としてのエネルギー効率を高く維持することができる。
【0014】
本実施例では、電機子2が鉛直方向(軸方向)において静止し、可動子3が鉛直方向(軸方向)に沿って往復運動する構成を示すが、これに限られるものでは無い。例えば、電機子2が鉛直方向(軸方向)に沿って往復運動し、可動子3が鉛直方向(軸方向)において静止する構成としても良く、また、電機子2及び可動子3が互いに異なる速度で鉛直方向(軸方向)に沿って往復運動する構成としても良い。何れの場合においても、鉛直方向(軸方向)に沿って移動する物体に共振ばね14の一端を接続することが好ましい。
【0015】
(制御装置5の構成)
図2は、
図1に示す制御装置5のブロック図である。
図2に示すように、制御装置5は、目標電流値決定部51、目標周波数決定部52、電流更新部53、駆動周波数制御部54、タイミング制御部55、インバータ制御部56、及びインバータ57を備える。制御装置5の動作の詳細については後述するが、ここでは概略を説明する。目標電流値決定部51は、目標電流値Itargetを決定し、目標電流値Itargetを、目標周波数決定部52、電流更新部53、及び駆動周波数制御部54へ出力する。目標周波数決定部52は、目標電流値Itargetにおける共振周波数又は共振周波数以上となる目標周波数ωtargetを決定し、目標周波数ωtargetを駆動周波数制御部54へ出力する。電流更新部53は、入力される目標電流値Itarget及び現在の電流値Itに基づき、タイミング制御部55からの信号により、電流値をインバータ制御部56へ出力する。また、駆動周波数制御部54は、入力される目標周波数ωtarget、現在の周波数ωt、及びピストン12のストローク量に基づき、タイミング制御部55からの信号により、駆動周波数をインバータ制御部56へ出力する。インバータ制御部56は、インバータ57を制御し、インバータ57によって二組の対をなす磁極4に捲回される巻線6へ交番電流が通電される。
【0016】
(共振周波数)
以下では、圧縮機1の動作状態が無負荷の定常運転状態の場合、有負荷の定常運転状態の場合、非定常運転状態の場合のそれぞれについて、共振ばね14の一端に接続される物体である可動子3の共振周波数がどのように決定されるかを説明する。その後、効果的に共振制御を行うに際し、圧縮機1の駆動周波数をどのように制御することが好ましいかを説明する。
【0017】
[無負荷且つ定常運転状態の場合]
次に圧縮機1の駆動方法について説明する。可動子3に作用する主な力として、巻線6に交番電流を通電することで発生する電磁加振力Felec、共振ばね14による復元力Fspring、シリンダ11a内外のガスの差圧によるガス圧縮力Fgasが挙げられる。
ガス圧縮力Fgasを無視する場合、すなわち、圧縮機1として負荷の無い運転条件(無負荷条件)においては、可動子3の質量M及び共振ばね114のばね定数Ksにより定まる共振周波数が電磁加振力Felecの周波数と一致したときに共振状態となる。このとき、他の駆動周波数と比較して小さい電磁加振力Felec、すなわち、実効値の小さな交番電流にて可動子3を往復運動させることが可能となる。電磁加振力Felecの周波数は、巻線6に印加する交番電流の周波数によって操作することができる。
【0018】
無負荷時の共振周波数ωnは、減衰係数が無視できるほど小さい場合、次式(1)で与えられる。
【0019】
【数1】
【0020】
なお、定常運転状態とは、可動子3の振動振幅及び振動周波数が所定時間以上略一定に、例えば、5秒間以上略一定に保たれた状態をいうことができる。また、ばね定数Ksは、ばね以外の弾性体を用いる場合においては、この弾性体が単位長さ変形した場合の復元力の大きさと置き換えることができる。
【0021】
[有負荷且つ定常運転状態の場合]
ガス圧縮力Fgasを考える場合、ガス圧縮力Fgasに含まれるガスばね成分Frによって、共振周波数は無負荷条件の場合の値から乖離する。ガスばね成分Frとは、ガス圧縮力Fgasのうち、可動子3の振動振幅に比例する復元力の成分を指す。ガスばね成分Frはピストン12のストローク方向の移動量をXとすると、次式(2)で与えられる。
【0022】
【数2】
【0023】
右辺Xの係数はガスばね定数Kgasであり、ガスの吐出圧力や吸入圧力、シリンダ径やガスの物性によって変化する。ここでガス圧縮力Fgasについて詳細に説明する。
【0024】
ガス圧縮力Fgasは、シリンダ11a内外の差圧とシリンダ11aの横断面の面積(鉛直方向に対し垂直な面における断面積)との積により定まる。ここでは、シリンダ11a外が吸入圧力であるとする。
図3は、
図1に示す圧縮機1の定常運転状態におけるガス圧縮力Fgasの履歴図である。すなわち、シリンダ11a内においてガスの吸入と吐出を繰り返す定常運転状態でのガス圧縮力Fgasの履歴である。
図3において、横軸はピストン12のストローク方向の移動量Xであり、上死点方向を正の向きとしている。縦軸はガス圧縮力Fgasである。このガス圧縮力Fgasの履歴は、圧縮機1の動作の順に、「吸入工程」、「圧縮工程」、「吐出工程」、及び「膨張工程」の4つの工程に分類することができる。
【0025】
「吸入工程」は、シリンダ11a内にガスが吸入される工程であり、圧縮機1としての負荷は小さい。「圧縮工程」は、シリンダ11a内のガスを吐出圧力にまで圧縮する工程であり、負荷が増大する区間となる。「吐出工程」は、圧縮されたシリンダ11a内のガスを吐出する工程である。「膨張工程」は、上死点にあるピストン12が下死点に向けて移動する工程であり、負荷が減少する区間となる。
【0026】
ここで、ガスばね定数Kgasについて考える。ガスばね定数Kgasは、上述の式(2)に示す通り、ガス圧縮力Fgasをピストン12のストローク方向の移動量Xで微分した値である。そのため、「吸入工程」及び「吐出工程」では値は小さなものとなり、工程中に、圧力損失における負荷脈動がなければ略ゼロとなる。一方、「圧縮工程」及び「膨張工程」はそれぞれ、ピストン12の鉛直方向(軸方向)に沿った移動に伴い負荷がそれぞれ増大及び減少する区間であるため、ガスばね定数Kgasが比較的大きな値となる。このようにガスばね定数Kgasはピストン12が一往復する間に変動する周期変数となる。
【0027】
このように、ガス圧縮負荷が存在する場合における共振周波数ωLは、減衰力の効果を無視する場合、上述の式(1)に示す無負荷時の共振周波数ωnに、ガスばね定数Kgasの影響を加味する次式(3)で表すことができる。
【0028】
【数3】
【0029】
ガスばね定数Kgasはピストン12の位置に応じて変化する変数のため、共振周波数ωLもピストン112の位置に応じて変化する変数となる。そのため、厳密にピストン12を共振させるには、電磁加振力Felecの周波数をピストン12の位置に応じて変化させる必要があるが、例えば、概略的にピストン12を共振させるべく、電磁加振力Felecの周波数ωaveを次式(4)のように設定しても良い。
【0030】
【数4】
【0031】
式(4)中、平均ガスばね定数Kaveは、ピストン12が一往復する時間に亘るガスばね定数Kgasの平均値である。
図3に示したガス圧縮力Fgasの履歴が変わらない条件(吐出圧力、吸入圧力、ピストン12のストローク量が一定の条件)では、平均ガスばね定数Kaveは一定値をとるため、周波数ωaveは一定値となる。平均ガスばね定数Kaveの算出法の一例は後述する。
【0032】
[非定常運転状態の場合]
次に圧縮機1の駆動状態を変化させる場合について考える。或る負荷が働いている場合のサイクル(以下、状態1と称する)で圧縮機1が駆動している状態において、ガス吐出流量を増加させるために、ピストン12のストローク量を増加させて別の状態に遷移(以下、状態2と称する)させることを想定する。すなわち、状態1から状態2に遷移する非定常運転状態での共振周波数がどのように決定されるかを説明する。
【0033】
まず、可動子3の指令振動振幅をY、動作時における圧縮機1の吐出圧力と吸入圧力の差をΔP、ピストン12のガス圧力の受圧面積をAとする。指令振動振幅Yは、実際のピストン12の往復運動長さ(ピストンストローク)として考えることもできる。
図4は、
図1に示す圧縮機1の非定常運転状態におけるガス圧縮力Fgasの履歴図である。ガス圧縮力Fgasの最大値は上死点で得られるが、具体的な値は、吐出圧力と吸入圧力の差ΔPとピストン12のガス圧力の受圧面積Aとの積で与えられる。ただしこの値は、吐出圧力と吸入圧力の脈動成分を除いた平均的な値である。また、
図4中の一点鎖線は、ガス圧縮力Fgasの履歴線においてピストン12の下死点の状態点と上死点の状態点とを繋いだ線分であり、ガス圧縮履歴の平均勾配を与えるものと考えられる。
【0034】
平均ガスばね定数Kaveは、ピストン12が一往復する間のガス圧縮力Fgasの履歴線のX(ピストンのストローク方向の移動量)に関する微分値を平均したものだが、その近似として、
図4中の一点鎖線にて示す線分の勾配を採用することができる。一点鎖線にて示す線分の勾配はΔP×A/Yである。ガス圧縮力Fgasの履歴線が略平行四辺形を形成するときに、平均ガスばね定数Kaveが一点鎖線にて示す線分の勾配と一致すると近似する。すると、この状態における共振周波数は次式(5)とすることができる。
【0035】
可動子3の指令振動振幅Yは、可動子3の位置を測定する位置センサを用いて求めても良いが、巻線6に印加される電流又は電圧の実効値から求めても良い。また、ΔPは、圧縮室となるシリンダ11a内の圧力を測定する圧力センサを設けることで測定することができるが、制御装置5に設けられる図示しないメモリに予め記憶させても良い。具体的には、圧縮機1については一般的に、巻線6への電流の実効値を定めればΔPが一意的に定まるため、予め各実効値とΔPとの対応関係を実測などで求め、制御装置5のメモリ(図示せず)に格納する。そして、巻線6への電流の実効値に対応するΔPを、メモリ(図示せず)に格納される、各実効値とΔPとの対応関係から抽出する構成とすることができる。
【0036】
【数5】
【0037】
(ピストンのストロークと共振周波数との関係)
[ストロークを変化させる場合]
図5は、
図1に示す圧縮機1のピストン12のストローク量を変更したときのガス圧縮力Fgasの履歴図である。
図5では、或る状態(状態1)と、状態1からピストン12のストローク量を増加させた状態(状態2)とのガス圧縮力Fgasの履歴を示している。ここではまず、状態1から状態2に遷移するものとして説明する。巻線6に印加する交番電流又は交番電圧の実効値を増大させて電磁加振力Felecを大きくすれば、ピストン12のストローク量を増加させることができる。ピストン12のストローク量変更時における、圧縮機1の吐出圧力及び吸入圧力の変化は、ピストン12のストローク量の変化に要する時間スケールで考えると、無視できるほど小さい。そのため、電磁加振力Felecの変化に伴い、即座にサイクルが状態2に遷移する。
図5において点線がピストン12のストローク量変更前の状態(状態1)、実線がピストン12のストローク量変更後の状態(状態2)のガス圧縮力Fgasの履歴線である。ピストン12のストローク量のみを変更するとしたため、吐出圧力と吸入圧力は変化せず、ガス圧縮力Fgasの最大値は変わらない。一方、ピストン12のストローク量が増大するため、「吸入工程」と「吐出工程」に要する時間が長くなる。
【0038】
これら二つの工程におけるガスばね定数Kgasは小さな値をとるため、これら二つの工程が長くなったことにより、平均ガスばね定数Kaveは低下する。つまり、ピストン12のストローク量を増大させると共振周波数が低下する。すなわち、ピストン12を共振駆動させるためには、ピストン12のストローク量の増大と共に電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωaveを小さくする必要がある。以上から、ピストン12のストローク量を増加させる場合は、巻線6に印加する交番電流又は交番電圧の実効値(振幅)を増大させた後に、交流磁界の周波数ωaveを小さくすることが望ましい。なお、交流磁界の周波数ωaveを小さくする態様としては、瞬時的に小さくさせても良いし、連続的に小さくさせても良い。交流磁界の周波数ωaveを連続的に小さくさせるときは、その減少速度を漸減させても良い。また、交番電流又は交番電圧の実効値を増大させる前又は直前に、交流磁界の周波数ωaveを小さくさせても良い。
【0039】
一方、ピストン12のストローク量を減少させる場合、すなわち、印加電流値を小さくする場合、「吸入工程」と「吐出工程」に要する時間が短くなるため、共振周波数は増大する。しかし、ピストン12を共振駆動させるために、ピストン12のストローク量の減少と共に電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωaveを大きくすると、加振周波数ωeが共振周波数より低周波側に位置し易くなってしまい、ピストン12のストローク量の急変を招来し易い。このため、加振周波数ωeの制御方法を検討する必要がある。
【0040】
以上の知見を用いてさらに検討する。
図6は、
図1に示す圧縮機1のピストン12のストローク量の周波数特性図である。
図6では、巻線6に通電する交番電流の実効値(振幅)を一定とする条件の下で、各駆動周波数における最大ピストンストローク量Xmaxを結んだ解曲線を3つ示している。
図6において、横軸は電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωe、縦軸はピストン12の最大ストローク量Xmaxである。
図6では、印加電流が大(鎖線)、中(点線)、小(実線)の3つの場合の概略図を示している。ここでは、印加電流が大の場合を状態2、印加電流が小の場合を状態1とする。
【0041】
まず、解曲線の形状について検討する。交番電流の実効値を一定とする条件で駆動周波数を変化させた場合、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeが共振周波数(共振駆動点)と一致する点で、ピストン12のストローク量は最大となる。すなわち、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeが共振周波数に近づくにつれ、最大ピストンストローク量Xmaxは大きくなる。そのため、電流値が一定という条件下における解曲線は共振周波数でピークを持った山型(上に凸)となる。
また、或る解曲線(或る実効電流値)において、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを、共振周波数より低い側から共振周波数(共振駆動点)に近づけると、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeが共振周波数(共振駆動点)に近づくことに伴いピストン12のストローク量の増大と、ピストン12のストローク量の増大に伴う共振周波数の低下とが同時に進行するため、解曲線の傾きが大きくなる。一方、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを、共振周波数(共振駆動点)より高い側から共振周波数(共振駆動点)に近づけると、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeが共振周波数(共振駆動点)に近づくことに伴ってピストン12のストローク量が増大するところ、ピストン12のストローク量の増大に伴って共振周波数が低下するため、解曲線の傾きは比較的小さくなる。そのため、共振周波数よりも低周波側においては、わずかな電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数の違いによってピストン12のストローク量が急変するから、共振周波数に近づけるに際しては、高周波側から低下させていくことが好ましい。
【0042】
一方、上述のように、ピストン12のストローク量の変動に伴いガスばね定数Kgasが変動する。ピストン12のストローク量が大きくなると、ガスばね定数Kgasの平均値Kaveは低下するから、共振周波数も低下する。すなわち、印加電流が大きくなることでピストン12のストローク量が増すと、共振周波数が低下する。このため、印加電流が大きい解曲線ほど、共振駆動点(共振周波数)が低周波側に存在する。なお、何れの印加電流値であっても、負荷が存在する系の共振周波数(共振駆動点)が無負荷時の共振周波数(共振駆動点)より大きくなることは、上述した式(1)、式(3)〜式(5)より読み取ることができる。
【0043】
次に、このような解曲線の特性を考慮しつつ、圧縮機1の制御方法について検討する。例えば、本実施例における制御は、ピストン12のストローク量(流量)の変化が必要な場合もそうでない場合も、次の様にすることができる。
まず、制御装置5を構成する目標電流値決定部51(
図2)がターゲットとする目標電流値Itargetを決定すると共に、目標周波数決定部52が目標周波数ωtargetを決定する(ターゲット電流決定ステップ)。目標周波数ωtargetは、目標電流値Itargetにおける共振周波数又は共振周波数以上となることが好ましい。この値は、ピストン12のストローク量の変更が必要であれば、目標電流値Itargetは現在の電流値Itと異なる値となり、ピストン12のストローク量の変更が必要でなければ目標電流値Itargetとして現在の電流値Itと同値にできる。なお、通常、圧縮機1は、現在の電流値Itにおける共振周波数(共振駆動点)で駆動するように制御される。このため、前提として、現在の電流値Itにおける共振周波数(共振駆動点)で圧縮機1が駆動していると仮定して、適切な制御を考える。
【0044】
次に、制御装置5を構成する駆動周波数制御部54(
図2)は、現在の周波数ωtが目標周波数ωtarget以上又は超となるように、加振周波数をωtから遷移させる又は維持する(周波数遷移ステップ)。すなわち、周波数遷移ステップでは、加振周波数が目標電流値Itargetにおける共振周波数以上又は超になるように制御する。
【0045】
周波数遷移ステップと同時又は直後若しくは後(遷移の前又は直前でも良い)、電流更新部53は、電流値を現在の電流値Itから目標電流値Itargetに変更する(電流更新ステップ)。周波数遷移ステップと電流更新ステップのタイミングは、タイミング制御部55により制御される。なお、周波数遷移ステップと電流更新ステップのタイミングは、ピストン12のストローク量の急変が抑制できる範囲で適宜設定して良いが、好ましくは、周波数遷移ステップの直後又は後に電流更新ステップを行うと、ピストン12のストローク量の急変、例えば急増、を効果的に抑制できる。ここで、「制御Aの直前」とは、例えば、制御Aが行われる3,2,又は1秒前以内をいうと考えても良い。また、「制御Aの直後」とは、例えば、制御Aが行われてから3,2,又は1秒以内をいうと考えても良い。
【0046】
そして、制御装置5を構成する駆動周波数制御部54は、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)ωeを変化、例えば減少、させて共振周波数に一致させていく(周波数更新ステップ)。上述のように、周波数遷移ステップでは、目標周波数決定部52が目標電流値Itargetにおける共振周波数以上となるように目標周波数ωtargetを設定して、駆動周波数制御部54が電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)を目標周波数ωtargetに向けて遷移させるが、共振周波数の高精度な推定が困難な場合もあるため、必ずしも目標周波数ωtargetが共振周波数に一致又は共振周波数以上になるとは限らず、共振周波数未満にもなり得る。しかし、例えば、上述の式(1)、式(3)、式(4)又は式(5)、好ましくは式(3)乃至(5)、さらに好ましくは式(5)を用いてこれら式における周波数以上になるように、目標周波数決定部52が目標周波数ωtargetを設定することで、共振周波数以上にし易くなる。これらの式で得られる周波数の、例えば、100%以上、102%以上又は105%以上の値を用いると、目標周波数ωtargetが共振周波数以上になることを保障し易くなる。例えばそのような場合、周波数更新ステップでは、駆動周波数制御部54が電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)ωeを減少させて共振周波数に一致させていくことができる。なお、仮に、周波数遷移ステップ及び電流更新ステップを行った直後、又は、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)ωeを減少させるように周波数更新ステップを実行していった結果、ピストン12のストローク量の急変を駆動周波数制御部54が検知した場合は、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)ωeを増加させる例外処理を行っても良い。このときの電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)ωeの増加量は、先立って行われた周波数遷移ステップの実行後の周波数より大きい値にする。このときの電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)ωeの更新速度(単位時間当たりの増加/減少量)は、周波数遷移ステップにおける遷移速度より遅いことが好ましい。また、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)ωeの更新は、連続的に変化させても良いし、離散的に変化させてから適当な時間略維持することを繰り返しても良い。周波数遷移ステップは、ピストン12のストローク量の急変を回避すべく行うものであり、共振周波数そのものを探索する必要はないため、即座に遷移させることが好ましく、周波数更新ステップでは、共振周波数を探索すべく、周波数を比較的緩やかに遷移させることが好ましいためである。なお、周波数遷移ステップの結果によっては、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)ωeを増加させなければ共振駆動に至らない場合が考えられるが、共振周波数の探索は種々公知の方法を用いることができる。
【0047】
この方法について、通常、目標電流値Itargetにおける共振周波数は、公差等の事情により、推定精度に限界がある。しかし、上述したように、共振駆動点(共振周波数)の座標については、圧縮機1を駆動させる電流値に基づき推定可能である。例えば、現在の電流値It≦目標電流値Itargetの関係が成り立つときは、周波数遷移ステップにおいて、目標周波数ωtargetを現在の周波数ωtと略同値又はそれ以上の値にすると、電流更新ステップ後にピストン12のストローク量が急変することを抑制できることが分かる。また、共振周波数が低周波側に遷移することから、或る程度の範囲ならば、周波数遷移ステップ後の加振周波数を、周波数遷移ステップ前の加振周波数より小さくすることが許容される。
【0048】
また、現在の電流値It≧目標電流値Itargetの関係が成り立つときは、周波数遷移ステップにおいて、目標周波数ωtargetを現在の周波数ωtより大きい値にするべきであると分かる。共振周波数が高周波側に遷移することから、或る程度以上、周波数遷移ステップ後の加振周波数を、周波数遷移ステップ前の加振周波数より大きくしなければ、ピストン12のストローク量の急変を抑制しにくいことがわかる。
【0049】
このことから、電流値の変更前の値及び変更後の値の差(It―Itarget)と、加振周波数の遷移後の値及び遷移前の値の差(ωtarget―ωt)と、の間に、正の相関が成立するように制御することが好ましい。さらに好ましくは、(It―Itarget)<0が成り立つ場合、(ωtarget―ωt)<0が成り立つように制御し、(It―Itarget)>0が成り立つ場合、(ωtarget―ωt)>0が成り立つように制御することが好ましい。
【0050】
電流値を大きい値に変更する(It―Itarget<0)と、共振周波数は低周波側に遷移するため、周波数遷移ステップにおける加振周波数は、遷移後の値が遷移前の値以下にされることが許容される(ωtarget―ωt)<0を許容)。
また、電流値を小さい値に変更する(It―Itarget>0)と、共振周波数は高周波側に遷移するため、周波数遷移ステップにおける加振周波数は、遷移後の値が遷移前の値より大きい値にされることが好ましい(ωtarget―ωt)>0)。このように制御することで、例えば、電流更新ステップ後の加振周波数が、共振周波数より大きい値になり易くなる。
【0051】
なお、(It―Itarget)の正負に拘らず正の相間を持たせても良いし、例えば、定数Aについて、(It―Itarget)>Aの場合に限定して正の相関を持たせても良いし、(It―Itarget)<Aの場合に限定して正の相関を持たせても良い。Aとしては、例えば0でもよいし、その他の実数でも良い。また、Aを時間的に変化する値にしてもよい。
【0052】
以下、さらに詳細に説明する。
[ストローク量を大きくする場合について]
電流更新ステップ後の電流値に対応する解曲線における共振周波数(共振駆動点)より低周波側にある状態から電流値を大きくさせると、ピストン12のストローク量が急変する。一方で、電流値を大きくするとピストン12のストロークが伸長するため、共振周波数が低周波側に遷移する。このため、電流値を増加させる電流更新ステップ直前以降の電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)ωeは、電流更新ステップ前の電流値に対応する共振周波数近傍、特に低周波側の近傍にすることが好ましい。こうすると、電流更新ステップ直後の電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)が共振周波数に近くなり易い上、ピストン12のストローク量の変動量を比較的抑制できる。例えば、電流更新ステップの前若しくは直前又は直後に周波数更新ステップを実行することができる。さらにその後、周波数更新ステップで電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)ωeを低下させれば、ピストン12のストローク量の急変を抑制できる。
【0053】
[ストローク量を小さくする場合について]
次に、圧縮機1のガス吐出流量を減少させるために、ピストン12のストローク量を減少させることについて詳細に説明する。すなわち、状態2から状態1に遷移する場合を考える。
図7は、
図1に示す圧縮機1の動作を説明する周波数特性図である。
図7では、状態1及び状態2の間を遷移する圧縮機1の周波数制御の概要を示している。
図6と同様、横軸は電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωe、縦軸はピストン11の最大ストローク量Xmaxである。ピストン12のストローク量を減少させる方法としては、例えば巻線6に通電する交番電流の実効値を小さくすることが挙げられる。破線の解曲線がピストン12のストローク量減少前の状態(状態2)であり、実線の解曲線がピストン12のストローク量減少後の状態(状態1)である。
【0054】
いま、状態2において共振駆動点Bにて動作しているとする。このとき、電流更新ステップを実行して電流値を小さくすると、解曲線は状態1へと遷移して、共振駆動点は高周波側に移動する。そのため、図中の点線矢印のように、電流値をわずかに小さくしただけで、ピストン12のストローク量が大幅に減少してしまう。状態変化後(電流値を減少させる電流更新ステップ後)の共振駆動点Aよりも低周波側の領域は、僅かな電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数や印加電流実効値の変化によってピストン12のストローク量が急変する領域であるため、制御が容易ではない。そのため、この周波数領域において電流更新ステップ(ピストン12のストローク量の制御)を実行した場合、制御が追いつかずにピストン12がシリンダヘッド13に衝突するおそれが生じる。
このため、電流値を減少させる電流更新ステップの直前又は直後(好ましくは直前)、周波数遷移ステップを実行することで、共振駆動点Bより大きい値に電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを設定する。周波数遷移ステップ後の加振周波数は、電流更新ステップ後の電流値に対応する共振周波数又はこの近傍、特に共振周波数超が好ましい。なお、上述のように、例えば、電流値の減少量と、電流値を減少させる直前又は直後の駆動周波数の増加量とが正の相間を持つように制御することができる。
【0055】
[ステップの順番等]
本実施例の圧縮機1は、まず、制御装置5を構成する目標電流値決定部51が、目標電流Itargetを決定する制御(ターゲット電流決定ステップ)を行い、さらに駆動周波数制御部54が、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを増加させる制御(周波数遷移ステップ)を行った後に、電流更新部53が、印加電流の実効値を低下させる制御(電流更新ステップ)を行い、さらにその後、駆動周波数制御部54が、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを減少させる制御(周波数更新ステップ)を行う。例えば、周波数遷移ステップにおいて、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを、現在の(周波数遷移ステップ前の)印加電流の実効値に対応する共振駆動点Bよりも高周波側、好ましくは遷移後の状態の共振駆動点Aよりも高周波側の値にとってから、電流更新ステップを実行して印加電流の実効値を低下させる。その後、周波数更新ステップを実行して電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを低下させて、共振駆動点Aに近付ける。こうすることで、何れのステップにおいても、共振周波数より低周波側で圧縮機1を駆動させることを抑制できるため、ピストン12のストローク量の制御を高精度に行うことができる。
【0056】
また、本実施例の圧縮機1は、共振駆動点又はこの近傍で駆動している場合に印加電流の実効値を増加させる制御を行うときは、周波数遷移ステップとして、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを、周波数遷移ステップ前の共振駆動点又はこの近傍、好ましくは共振周波数超に維持させる制御を行っても良い。そして、電流更新ステップ後に周波数更新ステップを実行して、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを低下させる。例えば、
図7において、状態1から状態2に遷移させる場合を考えると、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを現在の印加電流の実効値に対応する共振駆動点Aに略維持して、電流更新ステップが行われるまで効果的な駆動を行う。その後、印加電流の実効値を増加させるべき状況に至ったら、実効値を増加させる。その後、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを低下させて、共振駆動点Bに近付ける。こうすることで、共振状態を長く維持しつつ、共振周波数より低周波側で圧縮機1を駆動させることを抑制できるため、ピストンストロークの制御を高精度に行うことができる。
【0057】
ここで、非定常運転状態の場合も考慮した共振周波数が式(5)で与えられることから、周波数遷移ステップにおける指令値ω0(目標周波数ωtarget)が次式(6)を満たすように設定することができる。Yは、電流更新ステップ後に対応する値を用いることができる。
【0058】
【数6】
【0059】
このようにすることで、ピストン12のストローク量が急変する領域を回避することができ、ピストン12がシリンダヘッド13に衝突することを抑制できる。
【0060】
なお、圧縮機1の負荷が小さい場合等は、式(1)のように近似した周波数を利用して、式(7)のように指令値ω0(目標周波数ωtarget)を設定しても良い。負荷に接続する実際の機器、例えば圧縮機1では、ガスばねなどによる影響が存在するため、指令値ω0(目標周波数ωtarget)は√(Ks/M)超とするのが好ましい。
【0061】
【数7】
【0062】
また、定常運転状態の場合等は、式(3)のように近似した周波数を利用して、式(8)、式(9)のように指令値ω0(目標周波数ωtarget)を設定しても良い。
【0063】
【数8】
【0064】
【数9】
【0065】
(制御フローチャート)
図8は、
図1に示す圧縮機1について、電流実効値を低下させる場合の制御装置5の動作フローを示すフローチャートである。圧縮機1が、或る電流実効値It、或る駆動周波数ωtで駆動している状態(状態1)に注目する(ステップS101)。ステップS100は、圧縮機1を略共振駆動点で駆動させる共振駆動ステップであると好ましい。すなわち、或る駆動周波数ωtは、或る電流実効値Itに対応する共振周波数以外の値でも良いが、共振周波数であることが好ましい。
【0066】
この状態(状態1)から、電流実効値を低下させて別の状態(状態2)に遷移する場合の制御について説明する。まず、圧縮機1は、例えば、圧縮室による流体の吐出流量を減少させるべきと判断すると、ステップS102では、制御装置5を構成する目標電流値決定部51は、現在の電流実効値Itより小さな電流実効値I0を目標電流Itargetとして決定する(ターゲット電流決定ステップ)。そして、目標周波数決定部52は、目標電流Itargetとして決定された電流実効値I0に対応する共振周波数を演算し、目標周波数ωtargetを決定する(ターゲット周波数決定ステップ)。ここで、目標周波数ωtargetは、例えば、上述の式(3)、式(4)又は式(5)のωL又はωaveとして求めることができる。
【0067】
ここで、現在の電流実効値It>I0(目標電流Itarget)であるため、電流更新ステップ後の共振周波数は増大することに留意する。圧縮機1は通常、共振駆動点で動作するように制御される(共振駆動ステップ)ため、初期の駆動周波数ωtは、現在の電流実効値Itにおける共振周波数近傍であることが多い。すなわち、演算されたI0(目標電流Itarget)の解曲線における共振周波数は、初期の駆動周波数ωtより大きくなり易い。よって、後述するステップS103では、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを増加させることが多い。
【0068】
次にステップS103では、制御装置5を構成する駆動周波数制御部54は、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを、ステップS102で求めた電流実効値I0に対応する共振周波数(目標周波数ωtarget)以上又は超に設定する(周波数遷移ステップ)。すなわち、上述の式(8)又は式(9)のω0を電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeに置換した関係式が成り立つようにする。この際、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeは、初期の駆動周波数ωtから瞬時的に遷移させることが好ましい。すなわち、後述するステップS105の低下速度よりも大きい速度で電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを移動させることが好ましい。
【0069】
次にステップS104では、電流更新部53は、インバータ制御部56及びインバータ57を介して巻線6へ印加される電流の実効値を現在の電流実効値Itより小さい電流実効値I0に変更する(電流更新ステップ)。
その後、ステップS105では、駆動周波数制御部54は、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを低下させインバータ制御部56へ出力する(周波数更新ステップ)。この際、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)ωeは、目標周波数ωtargetを下回っても良い。電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)ωeを低下させていって、電流実効値I0に対応する共振周波数に到達したら、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)ωeを維持する。なお、共振周波数に達したことは、種々公知の方法で判定できる。また、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)ωeを低下させていった結果、ピストン12のストローク量の急変を検知した場合は、駆動周波数制御部54は、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)ωeを増加させる例外処理を行うことができる。
【0070】
このように制御することで、電流実効値を低下させる際の制御性を好適に維持することができる。なお、電流実効値に代えて電圧実効値を採用しても同様に制御することができる。また、上述の電流更新部53及び駆動周波数制御部54による処理の実行タイミングは、タイミング制御部55により制御される。
【0071】
図9は、
図1に示す圧縮機1について、電流実効値を増加させる場合の制御装置5の動作フローを示すフローチャートである。圧縮機1が、或る電流実効値It、或る駆動周波数ωtで駆動している状態(状態1)に注目する(ステップS201)。或る駆動周波数ωtは、或る電流実効値Itに対応する共振周波数以外の値でも良いが、共振周波数であることが好ましい。ここでは、或る駆動周波数ωtが或る電流実効値Itに対応する共振周波数に略一致する場合を想定して説明する。
【0072】
この状態(状態1)から、電流実効値を増加させて別の状態(状態2)に遷移する場合の制御について説明する。まず、圧縮機1は、例えば、圧縮室による流体の吐出流量を増加させるべきと判断すると、ステップS102では、制御装置5を構成する目標電流値決定部51は、現在の電流実効値Itより大きな電流実効値I0を目標電流Itargetとして決定する(ターゲット電流決定ステップ)。そして、目標周波数決定部52は、目標電流Itargetとして決定された電流実効値I0に対応する共振周波数を演算し、目標周波数ωtargetを決定する(ターゲット周波数決定ステップ)。ここで、目標周波数ωtargetは、例えば、上述の式(3)、式(4)又は式(5)のωL又はωaveとして求めることができる。
【0073】
次にステップS103では、制御装置5を構成する駆動周波数制御部54は、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを、ステップS102で求めた電流実効値I0に対応する共振周波数(目標周波数ωtarget)以上又は超で、且つ初期の駆動周波数ωt以下又は未満となるような目標周波数ωtargetに遷移させる(周波数遷移ステップ)。なお、初期の駆動周波数ωtが現在の電流実効値Itにおける共振周波数から乖離している場合もあるため、初期の駆動周波数ωt以下又は未満という条件は、除外しても良い。また、目標周波数ωtargetへは、後述するステップS205(周波数更新ステップ)の低下速度よりも大きい速度で遷移することが好ましい。目標周波数ωtargetの具体的な設定方法としては、上述したように、正の相関を用いた算出方法でも良いし、目標電流Itargetとして決定された電流実効値I0における共振周波数を推定して算出しても良い。
【0074】
次にステップS204では、電流更新部53は、インバータ制御部56及びインバータ57を介して巻線6へ印加される電流の実効値を現在の電流実効値Itより大きい電流実効値I0に変更する(電流更新ステップ)。
その後、ステップS205では、駆動周波数制御部54は、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを低下させインバータ制御部56へ出力する(周波数更新ステップ)。この際、駆動周波数制御部54は、電磁加振力Felec(交流磁界)のの周波数ωeを低下させて、電流実効値I0に対応する共振周波数に近づける。電流実効値I0に対応する共振周波数に到達したら、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)ωeを維持する。
【0075】
このように制御することで、電流実効値を増加させる際の制御性を好適に維持することができる。なお、電流実効値に代えて電圧の実効値を制御する方法でも同様の効果を奏することができる。
【0076】
なお、本実施例では、弾性体に接続した可動子を備える機器の一例として圧縮機1を説明したがこれに限られるものでは無い。例えば、弾性体に接続した可動子を備えるモータを搭載したその他の機器にも同様に本実施例の構成要素や制御方法を適用可能である。また、弾性体に接続した可動子を備えるモータ単体としても用いることができる。弾性体に接続した可動子を備えるモータやこれを搭載した機器としては、圧縮機1の圧縮室のように、負荷、好ましくは変動する負荷に接続しているものが良い。
また、本実施例に示した圧縮機1は、凝縮器又は蒸発器として機能する熱交換器を備える空気調和器において、冷媒を圧送するための圧縮機に適用できる。また、エアサスペンションにおいて車高を調整するために圧縮空気を供給する圧縮機、更には、凝縮器及び蒸発器を有する冷蔵庫において、液冷媒を圧送する圧縮機にも適用可能である。
【0077】
以上の通り、本実施例によれば、可動子の振動振幅の急変を抑制可能な、弾性体に接続した可動子を備える機器及び圧縮機を提供することが可能となる。
また、本実施例によれば、電流実効値を低下させる際の制御性を好適に維持することができると共に、電流実効値を増加させる際の制御性を好適に維持することも可能となる。
【実施例2】
【0078】
図10は、本発明の他の実施例に係る実施例2の圧縮機の動作を説明する周波数特性図である。本実施例では、印加電流の実効値が略一定である下で、可動子3の駆動周波数ωtが共振周波数よりも低周波数である場合における制御を行う点が、上述の実施例1と異なる。
図1に示した圧縮機1の構成、
図2に示した制御装置の構成などは実施例1と同様である。
【0079】
図10に示すように、本実施例では、例えば、印加電流の実効値が略一定である下で、可動子3の駆動周波数ωtが共振周波数よりも低周波数である場合(
図10中、駆動点C)における制御に関するものである。駆動周波数が駆動点Cにある状態で、印加電流の実効値を保ったまま共振動作させるために電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数(加振周波数)ωeを共振周波数に近付けた場合(
図10中、点線矢印)、実施例1で説明した現象と同様の理由により、ピストン12のストローク量が急激に変化するため、ピストン12のストローク量の制御が困難になる。
【0080】
本実施例では、まず、駆動中の電流値Itにおける共振周波数を推定等する共振周波数推定ステップを行い、さらに、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを共振駆動点よりも高周波側に増加させる周波数遷移ステップを実行した後に、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを共振駆動点に近付ける周波数更新ステップを行う(
図10中、実線矢印)。なお、共振周波数推定ステップは、実際に演算することで共振周波数を算出又は推定しても良いし、予め理論値などを制御装置5(
図2)のメモリ(図示せず)に格納又は外部記憶装置に格納し、それを読み出すことで共振周波数を得ても良い。
【0081】
このように、共振駆動点より低い駆動点Cから共振駆動点より高い周波数に遷移すると、駆動点Cから共振駆動点に向かって周波数を増加させるよりも、最大ピストンストローク量Xmaxの差が小さくなる。すなわち、共振に至るまでのピストン12のストローク量の変化量が小さいために、容易にピストン12のストローク量の制御ができるようになり、ピストン12がシリンダヘッド13に衝突することを抑制できる。
【0082】
図11は、本実施例の制御装置5の動作フローを示すフローチャートである。本フローチャートは、印加電流Itを略一定とした状態における制御に係る。圧縮機1が、或る電流実効値It、或る駆動周波数ωtで駆動している状態(状態1)に注目する(ステップS301)。或る駆動周波数ωtは、或る電流実効値Itに対応する共振周波数以外の値である。
【0083】
この状態(状態1)から、ステップ302では、制御装置5を構成する目標周波数決定部52は、電流実効値Itに対応する共振周波数を演算により求める(共振周波数推定ステップ)。次にステップS303では、制御装置5を構成する駆動周波数制御部54は、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを、ステップS302で求めた電流実効値I0に対応する共振周波数以上又は超、且つ、無負荷時の共振周波数超に遷移させる(周波数遷移ステップ)。すなわち、上述した式(8)又は式(9)、且つ、式(7)の関係式が成立する値ω0を目標周波数ωtargetとして設定する。ステップS302で求めた値に基づいて決定すれば、通常、共振周波数以上の値が得られるが、何らかの誤差等によって異常値が出る場合に備えて、無負荷時の共振周波数超という条件を課している。
【0084】
その後、ステップS304では、制御装置5を構成する駆動周波数制御部54は、電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeを低下させる(周波数更新ステップ)。なお、上述したように、式(7)そのものよりも、式(7)の等号不成立の関係式が好ましい。実施例1同様、周波数遷移ステップにおける電磁加振力Felec(交流磁界)の周波数ωeの移動速度は、高周波側から共振周波数に向けて低下する周波数更新ステップにおける、周波数ωeの移動速度よりも大きいことが好ましい。
【0085】
このように制御することで、電流実効値を維持させる際の制御性を好適に維持することができる。なお、電流実効値に代えて電圧の実効値を採用しても同様の効果を奏することができる。
【0086】
以上の通り、本実施例によれば、実施例1の効果に加え、仮に、可動子3の駆動周波数ωtが共振周波数よりも低周波数である場合であっても、電流実効値を維持させる際の制御性を好適に維持することができる。
【0087】
上述の実施例1又は実施例2に掲げた制御は、変動する負荷に接続した、弾性体に接続した可動子を備えるモータ等についても同様に成り立ち、圧縮機以外の機器にも同様の制御を適用できる。また、無負荷又は一定の有負荷のモータ等についても同様に成り立ち、圧縮機以外の機器にも同様の制御を適用できる。例示した圧縮機は、圧縮される流体を負荷とする、本明細書での開示に係る技術的思想を適用し得る機器の一例に過ぎない。本明細書の記載から明らかなように、モータは、例えば、弾性体に接続した可動子を往復振動させるものである。
その他、本明細書での開示に係るそれぞれの発明は、それぞれの発明の技術的思想に変更のない範囲で、種々公知の機器に適用できる。また、掲げた不等式においては、等号の成立及び不成立は、数値計算精度の観点から、変更してもよい。例えば、不等号「≦」を不等号「<」に置換してもよい。また、電流値等については、文脈において支障のない限り、実効値を指すものと解釈することができる。
【0088】
[他の技術的思想]
本願は、次の技術的思想を包含する。
【0089】
[付記1]
一端が弾性体に接続される可動子と、磁極に捲回される巻線に交番電流を印加し前記可動子を往復運動させる機器であって、
前記交番電流の周波数を増加させ実効値を減少させる、又は、前記交番電流の実効値を増加させ周波数を減少させるよう制御する制御装置を備えることを特徴とする弾性体に接続した可動子を備える機器。
【0090】
[付記2]
前記制御装置は、前記交番電流の周波数を増加させる場合、共振周波数以上の周波数に設定した後、共振周波数となるまで前記周波数を低下させることを特徴とする付記1に記載の弾性体に接続した可動子を備える機器。
【0091】
[付記3]
前記制御装置は、少なくとも、
前記交番電流の周波数を増加又は減少させるよう制御する駆動周波数制御部と、
前記交番電流の実効値を減少又は増加させるよう制御する電流更新部と、
前記駆動周波数制御部及び前記電流更新部の動作タイミングを制御するタイミング制御部と、を備えることを特徴とする付記1又は付記2に記載の弾性体に接続した可動子を備える機器。
【0092】
[付記4]
前記タイミング制御部は、前記駆動周波数制御部により前記交番電流の周波数を増加した後に、前記電流更新部により前記交番電流の実効値を減少させ、更に、前記駆動周波数制御部により前記交番電流の周波数を減少するよう制御することを特徴とする付記3に記載の弾性体に接続した可動子を備える機器。
【0093】
[付記5]
前記駆動周波数制御部は現在の交番電流の実効値よりも小さい目標実効値に対応する共振周波数以上の周波数に設定し、前記電流更新部が前記目標実効値となるよう前記交番電流の実効値を低下させた後、前記駆動周波数制御部が前記目標実効値に対応する共振周波数まで周波数を減少させる制御を実行することを特徴とする付記3に記載の弾性体に接続した可動子を備える機器。
【0094】
[付記6]
前記駆動周波数制御部は現在の交番電流の実効値よりも大きい目標実効値に対応する共振周波数以上の周波数に設定し、前記電流更新部が前記目標実効値となるよう前記交番電流の実効値を増加した後、前記駆動周波数制御部が前記目標実効値に対応する共振周波数まで周波数を減少させる制御を実行することを特徴とする付記3に記載の弾性体に接続した可動子を備える機器。
【0095】
[付記7]
前記駆動周波数制御部は、現在の交番電流の周波数が共振周波数よりも低周波数である場合、現在の交番電流の実効値に対応する共振周波数以上に前記周波数を設定した後、前記現在の交番電流の実効値に対応する共振周波数まで周波数を減少させる制御を実行することを特徴とする付記3に記載の弾性体に接続した可動子を備える機器。
【0096】
[付記8]
一端が弾性体に接続され他端がピストンに接続される可動子と、磁極に捲回される巻線に交番電流を印加し前記可動子を往復運動させることにより前記ピストンをシリンダ内で摺動しつつ往復運動させる圧縮機であって、
前記交番電流の周波数を増加させ実効値を減少させる、又は、前記交番電流の実効値を増加させ周波数を減少させるよう制御する制御装置を備えることを特徴とする圧縮機。
【0097】
[付記9]
前記制御装置は、前記交番電流の周波数を増加させる場合、共振周波数以上の周波数に設定した後、共振周波数となるまで前記周波数を低下させることを特徴とする付記8に記載の圧縮機。
【0098】
[付記10]
前記制御装置は、少なくとも、
前記交番電流の周波数を増加又は減少させるよう制御する駆動周波数制御部と、
前記交番電流の実効値を減少又は増加させるよう制御する電流更新部と、
前記駆動周波数制御部及び前記電流更新部の動作タイミングを制御するタイミング制御部と、を備えることを特徴とする付記8又は付記9に記載の圧縮機。
【0099】
[付記11]
前記タイミング制御部は、前記駆動周波数制御部により前記交番電流の周波数を増加した後に、前記電流更新部により前記交番電流の実効値を減少させ、更に、前記駆動周波数制御部により前記交番電流の周波数を減少するよう制御することを特徴とする付記10に記載の圧縮機。
【0100】
[付記12]
前記駆動周波数制御部は現在の交番電流の実効値よりも小さい目標実効値に対応する共振周波数以上の周波数に設定し、前記電流更新部が前記目標実効値となるよう前記交番電流の実効値を低下させた後、前記駆動周波数制御部が前記目標実効値に対応する共振周波数まで周波数を減少させる制御を実行することを特徴とする付記10に記載の圧縮機。
【0101】
[付記13]
前記駆動周波数制御部は現在の交番電流の実効値よりも大きい目標実効値に対応する共振周波数以上の周波数に設定し、前記電流更新部が前記目標実効値となるよう前記交番電流の実効値を増加した後、前記駆動周波数制御部が前記目標実効値に対応する共振周波数まで周波数を減少させる制御を実行することを特徴とする付記10に記載の圧縮機。
【0102】
[付記14]
前記駆動周波数制御部は、現在の交番電流の周波数が共振周波数よりも低周波数である場合、現在の交番電流の実効値に対応する共振周波数以上に前記周波数を設定した後、前記現在の交番電流の実効値に対応する共振周波数まで周波数を減少させる制御を実行することを特徴とする付記10に記載の圧縮機。
【0103】
[付記15]
弾性体に接続した可動子を有し、
交番電流を巻線に印加することで発する交流磁界で前記可動子を往復動させるモータ又はモータを備える機器であって、
以下の(1)及び(2)の実行後に(3)の制御を行い、
以下の(4)及び(5)の実行後に(6)の制御を行い、並びに/又は、
以下の(7)、(8)及び(9)の制御を、この順で行う、ことを特徴とするモータ又は機器。
(1)前記交番電流の周波数を増加させる。
(2)前記交番電流の実効値を低下させる。
(3)前記交番電流の周波数を低下させる。
(4)前記交番電流の周波数を略維持又は低下させる。
(5)前記交番電流の実効値を増加させる。
(6)前記交番電流の周波数を低下させる。
(7)前記交番電流の実効値に基づいて、或る周波数を演算する。
(8)前記交番電流の周波数を前記(7)で求めた周波数以上又は超に設定する。
(9)前記交番電流の周波数を低下させる。
(1)乃至(3)の制御によれば、交番電流の実効値を低下させる際の可動子のストロークの急変を抑制できる。(4)乃至(6)の制御によれば、交番電流の実効値を増加させる際の可動子のストロークの急変を抑制できる。(7)乃至(9)の制御によれば、交番電流の実効値を維持した状態で共振周波数を探索する際の可動子のストロークの急変を抑制できる。
【0104】
[付記16]
弾性体に接続した可動子を有し、
交番電流を巻線に印加することで発する交流磁界で前記可動子を往復動させるモータ又はモータを備える機器であって、
以下の(1)の後に(2)制御を行い、及び/又は、
以下の(4)の後に(5)の制御を行うことを特徴とするモータ又は機器。
【0105】
[付記17]
弾性体及びピストンに接続した可動子と、
前記ピストンの運動により流体が圧縮される圧縮室と、
前記可動子に交流磁界を与える供給部と、を備える圧縮機であって、
前記弾性体の単位長さ変形した場合の復元力をk、前記可動子の質量をmとしたとき、前記供給部は、供給する交流磁界の周波数を、√(k/m)超にした後低下させることを特徴とする圧縮機。
付記3によれば、ピストンストロークの急変を抑制しようとする際に、設定すべき交流磁界の周波数の下限値を効果的に定めることができる。
[付記18−1]
弾性体に接続した可動子を有し、
巻線に流す交番電流を用いて前記可動子を往復動させるモータを備える機器であって、
前記交番電流の周波数を増加させる周波数遷移ステップと、
前記交番電流の実効値を減少させる電流更新ステップと、
を実行することを特徴とする機器。
付記18−1によれば、可動子のストロークの急変を抑制できる。
【0106】
[付記18−2]
前記電流更新ステップの前に、前記可動子を略共振駆動点で駆動させる共振駆動ステップを実行し、
前記周波数遷移ステップの後に、前記交番電流の周波数を変化させる周波数更新ステップを実行し、
該周波数更新ステップにおける周波数の変化の速さは、前記周波数遷移ステップにおける周波数の変化の速さよりも小さいことを特徴とする付記18−1に記載の機器。
【0107】
[付記18−3]
前記周波数更新ステップでは、前記交番電流の周波数を減少させ、
前記電流更新ステップの後に、前記周波数遷移ステップを実行することを特徴とする付記18−2に記載の機器。
【0108】
[付記18−4]
弾性体に接続した可動子を有し、
巻線に流す交番電流を用いて前記可動子を往復動させるモータを備える機器であって、
前記交番電流の実効値を増大させる電流更新ステップと、
該電流更新ステップの後に行われ、前記交番電流の周波数を減少させる周波数更新ステップと、を実行することを特徴とする機器。
【0109】
[付記18−5]
前記交番電流の周波数を変化させる周波数遷移ステップを実行し、
該周波数遷移ステップ後の周波数値ωtargetから該周波数遷移ステップ前の周波数値ωtを引いた値は、前記電流更新ステップ前の電流値Itから前記電流更新ステップ後の電流値Itargetを引いた値に対して正の相関を有することを特徴とする付記18−1乃至18−4何れか一項に記載の機器。
【0110】
[付記18−6]
弾性体に接続した可動子を有し、
巻線に流す交番電流を用いて前記可動子を往復動させるモータであって、
前記交番電流の周波数を増大させる周波数遷移ステップと、
前記交番電流の周波数を減少させる周波数更新ステップと、をこの順で実行し、
前記周波数更新ステップにおける周波数の減少速さは、前記周波数遷移ステップにおける周波数の増大速さよりも小さいことを特徴とするモータ。