特許第6803721号(P6803721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6803721-アイアン型クラブヘッド 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803721
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】アイアン型クラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20201214BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20201214BHJP
【FI】
   A63B53/04 E
   A63B102:32
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-212487(P2016-212487)
(22)【出願日】2016年10月31日
(65)【公開番号】特開2018-68684(P2018-68684A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】502445073
【氏名又は名称】有限会社藤本技工
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】藤本 勝也
【審査官】 槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−234897(JP,A)
【文献】 特開2015−077399(JP,A)
【文献】 特開2005−034362(JP,A)
【文献】 国際公開第01/056666(WO,A1)
【文献】 特開平8−10359(JP,A)
【文献】 米国特許第7025695(US,B2)
【文献】 米国特許第7789772(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00−53/06
A63B 102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェイス部、フェイス部背後のヘッド本体及びホーゼル部が一体となった構造のアイアン型クラブヘッドにおいて、
ヘッド本体(12)がソール部(12A)とバックフェイス部(12B)とからなり、該バックフェイス部(12B)はフェイス部(11)の高さ方向半部の高さにてトウ・ヒール間に延び前後方向に厚みを有する上端縁(12C)を有するとともに、上記バックフェイス部(12B)と上記フェイス部(11)との間に上記フェイス部(11)の背面周縁の補強リブ(11A)の背後にて上記フェイス部(11)と平行にかつ上記バックフェイス部(12B)の上端縁(12C)の厚み内にて上記上端縁(12C)から上記ソール部(12A)に向けて延びる凹溝(13)を有し、該凹溝(13)の底面が背面視円弧凹状をなすことによって上記ヘッド本体(12)のソール部(12A)上のトウ側に重量が配分された構造となっている一方、鍛造による上記バックフェイス部(12B)の周縁部分のメタルフローと上記フェイス部(11)の周縁部分のメタルフローとが相互に連続されていることを特徴とするアイアン型クラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアイアン型クラブヘッド及びその製造方法に関し、特に所望のヘッドバランスが得られるとともに、ヘッド強度が大きく、ゴルフボールを強く打撃しても壊れるおそれのないクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、小学生から老人まで男女を問わず、多数の人がゴルフ競技を楽しむようになってきた。多くのゴルファーはドライバー型ゴルフクラブやアイアン型ゴルフクラブでゴルフボールを意図する方向に正確に十分な距離だけ安定に飛ばすことを望んでいる。アイアン型ゴルフクラブをスイングしたときのクラブのバランスがゴルフボールの飛距離や正確さに大きく影響するとされている。
【0003】
アイアン型ゴルフクラブのヘッド(以下、アイアン型クラブヘッド」という)では重心深度及び慣性モーメントを大きくすることによって打球の方向性を向上できることが知られている。
例えば、クラブヘッドのフェイス部背後のソールにトウ・ヒール方向に延びる隆起部を設け、大きな重心深度と慣性モーメントを得るようにしたアイアン型クラブヘッドが提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−59680号公報
【特許文献2】特開2015−29596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2記載のアイアン型クラブヘッドではヘッド本体を中空としこれをフェイス部とは別体に製造し、ヘッド本体のソール部に隆起部を一体的に形成し、このヘッド本体とフェイス部を嵌め合わせ、溶接によって相互に結合し、溶接箇所を研削し研磨するようにしていたので、研削研磨の仕方が悪いとヘッドのバランスが悪くなるばかりでなく、強度不足となってゴルフボールの打撃時にフェイス部が剥がれてしまうおそれがあった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑み、所望のヘッドバランスが得られるとともに、ヘッド強度が大きく、ゴルフボールを強く打撃しても壊れるおそれのないアイアン型クラブヘッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアイアン型クラブヘッドは、フェイス部の背後にヘッド本体を有する構造のアイアン型クラブヘッドにおいて、ヘッド本体がソール部とバックフェイス部とからなり、該バックフェイス部は上記フェイス部の高さ方向半部の高さにてトウ・ヒール間に延びる上端縁を有するとともに、上記バックフェイス部と上記フェイス部との間に背面視円弧凹状の底面の凹溝を有する一方、鍛造による上記ヘッド本体周縁部分のメタルフローと上記フェイス部周縁部分のメタルフローとが相互に連続されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の主たる特徴はフェイス部とヘッド本体とを一体的に形成し、フェイス部とヘッド本体バックフェイス部との間に背面視円弧凹状の底面を有する凹溝を形成するようにした点にある。
かかるヘッド構造によってヘッドの重心深度は大きく、しかも慣性モーメント(打撃時の重心廻りの回転抵抗)は大きくなるので、所望のヘッドバランスが得られ、打撃したゴルフボール所望の方向に正確かつ安定に飛球させることができる。
【0009】
また、本発明の第2の特徴はフェイス部とヘッド本体とを鍛造によって一体的に形成し、フェイス部とヘッド本体バックフェイス部との間に背面視円弧凹状の底面を有する凹溝を切削によって形成するようにした点にある。
これにより、ヘッド表面を仕上げ研磨すると、フェイス部周縁部分のメタルフロー(鍛流線)とヘッド本体周縁部分(ソール部及びバックフェイス部)のメタルフロー(鍛流線)とを連続させた高い強度の製品が得られるので、ゴルフボールを強く打撃してもヘッドが壊れることがない。
【0010】
ヘッド鍛造の素材は軟鉄棒から切り出してもよく、軟鉄のヘッド形状のブロックを鋳造して素材としてもよい。鍛造は型鍛造でもよく、自由鍛造でもよい。鍛造は熱間鍛造でもよく、温間鍛造でもよい。凹溝の切削は例えばフライス刃による切削を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るアイアン型クラブヘッドの好ましい実施形態を示す背面斜視図である。
図2図1の拡大図である。
図3図2のII-II 線断面図である。
図4】本発明に係るアイアン型クラブヘッドの製造方法の1例を模式的に示す工程図である。
図5】上記工程における凹溝切削工程における治具の1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図5は本発明に係るアイアン型ゴルフクラブの好ましい実施形態を示す。本例のアイアン型ゴルフヘッド10はフェイス部11、ヘッド本体12及びホーゼル部14から構成され、ヘッド本体12はソール部12Aとバックフェイス部12Bとから構成され、又ホーゼル部14はフェイス部11及びヘッド本体12のヒール側に一体的に形成され、筒状をなしてシャフトが嵌め込まれて結合されるようになっている。
【0013】
フェイス部11の背面周縁には補強リブ11Aが形成され、フェイス部11の背面にはヘッド本体12が一体的に形成され、ヘッド本体12のバックフェイス部12Bはフェイス部11の高さ方向ほぼ半部の高さに上端縁12Cが設けられ、ヘッド本体12のバックフェイス部12Bとフェイス部11との間には凹溝13が形成され、凹溝13は底面が背面視で円弧凹状とすることによって、ヘッド本体12のソール部12A上のトウ側に重量が配分された構造となっている。
【0014】
本例のアイアン型クラブヘッド10を製造する場合、図4上段に示されるように、軟鉄を原料として、フェイス部、ヘッド本体及びホーゼル部が一体となった立体形状のヘッド素材40を鋳造によって製造する。この場合、軟質の棒材を所定の長さに切断して次の鍛造工程の素材とすることもできるが、鍛練比が大きくなるおそれがあり、鍛造時間が長くなる。
【0015】
次に、図4中段に示されるように、ヘッド素材40を鍛造温度、例えば温間鍛造では200°C〜800°C、熱間鍛造では1100°C〜1250°Cの温度に加熱し、
このヘッド素材40を鍛造型41、42にセットし、繰り返し荷重を加えて型鍛造を行い、ほぼアイアン型クラブヘッドの寸法及び立体形状のヘッド素形材43を製造する。この場合、型鍛造では、ハンマーなどを用いた自由鍛造によってヘッド素形材43を製造することもできる。
【0016】
こうしてヘッド素形材43が得られると、ヘッド素形材43を図5に示されるような治具20にセットしてフライス盤などにセットし、図4下段に示されるように、フライス刃44によってフェイス部11とヘッド本体12の間に凹溝13を切削し、表面を仕上げ研磨すると、製品のアイアン型クラブヘッド10を製造することができる。
治具20は3本のピン21と2本のベース23を立設してなり、ヘッド素形材43を位置決めできるようになっている。
【0017】
本例のアイアン型クラブヘッド10ではフェイス部11とヘッド本体12とが一体的に形成され、フェイス部11とヘッド本体12の間に円弧凹状底面の凹溝13を形成するようにしているので、ヘッドのヒール側に重量が配分された構造となっており、このヘッド構造によってヘッドの重心深度は大きく、又慣性モーメントは大きくなるので、所望のヘッドバランスが得られ、打撃したゴルフボール所望の方向に正確かつ安定に飛球させることができる。
【0018】
また、フェイス部11とヘッド本体12とを鍛造によって一体的に製造し、フェイス部11とヘッド本体12の間に底面円弧状の凹溝13を切削によって形成するようにしているので、フェイス部11の周縁部分とヘッド本体12のソール部12A及びバックフェイス部12Bの周縁部分とは凹溝13の切削によって、メタルフロー(鍛流線)が切断されることはなく、メタルフローの連続した高い強度のヘッド10が得られ、ゴルフボールを強く打撃してもヘッド10が壊れることがない。
【符号の説明】
【0019】
10 クラブヘッド
11 フェイス部
12 ヘッド本体
13 凹溝
14 ホーゼル
図1
図2
図3
図4
図5