【文献】
木村信啓,C4留分の選択的二量化プロセス,PETROTECH,公益社団法人 石油学会,2011年,第34巻第5号,第317-321頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記C4留分から、前記イソブテン及び前記イソブタンを含む留分(A)と、前記ノルマルブテン及び前記ノルマルブタンを含む留分(B)と、を得る分離工程を更に備える、請求項2に記載の製造方法。
前記留分(A)から、前記イソブテンを含む留分(A−1)と、前記イソブタンを含む留分(A−2)と、を得る第二の分離工程を更に備える、請求項3に記載の製造方法。
前記留分(B)を含む第三の原料を異性化触媒に接触させて、イソブテン及びイソブタンを得る異性化工程を更に備える、請求項3〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
前記二量化触媒が、硫酸、ゼオライト、固体リン酸、フッ化水素酸、イオン液体及びイオン交換樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の酸性触媒を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態に係るp−キシレンの製造方法は、重油留分の流動接触分解(FCC)による生成物であって、少なくともイソブテンを含むC4留分を準備する準備工程と、当該イソブテンを含む第一の原料を二量化触媒に接触させて、イソブテンの二量体を含むC8成分を生成させる二量化工程と、当該C8成分を含む第二の原料を脱水素触媒に接触させ、C8成分の環化脱水素反応によりp−キシレンを生成させる環化工程と、を備える。
【0020】
本実施形態に係る製造方法は、FCCによって生成されたC4留分から、化成品として有用なp−キシレンを効率良く製造でき、FCCによるC4留分の新たな用途として有用である。
【0021】
以下、本実施形態に係る製造方法の各工程について詳述する。
【0022】
(準備工程)
準備工程では、重油留分の流動接触分解による生成物であって、少なくともイソブテンを含むC4留分を準備する。C4留分には、例えば、原油を蒸留して得られるC4留分、重油留分やナフサの熱分解による生成物に由来するC4留分等が含まれていてもよい。
【0023】
C4留分は、炭素数4の炭化水素を主成分(例えば、80質量%以上、好ましくは95質量%以上)とする留分であり、イソブテン以外の炭化水素として、イソブタン、ノルマルブテン及びノルマルブタンを更に含有していてよい。また、C4留分は、ブタジエン等の他の炭化水素を更に含有していてもよい。
【0024】
C4留分は、硫黄分を含有していてよい。硫黄分の含有量は、例えば10000質量ppm以下であってよく、100質量ppm以下であってもよい。
【0025】
流動接触分解の原料となる重油留分は特に限定されず、例えば、重油間接脱硫装置から得られる間脱軽油、重油直接脱硫装置から得られる直脱重油、常圧残さ油、重油脱れき装置から得られる脱れき油等であってよい。
【0026】
流動接触分解で用いられる触媒は特に限定されず、公知の流動接触分解用触媒であってよい。流動接触分解用触媒としては、例えば、無定形シリカアルミナ、ゼオライト等が挙げられる。
【0027】
(二量化工程)
二量化工程は、C4留分に含まれるイソブテンを原料成分として用い、当該イソブテンを含む第一の原料を二量化触媒に接触させることで、イソブテンの二量体を含むC8成分を得る工程である。第一の原料は、ガス状で二量化反応に供されてよい。
【0028】
二量化工程では、C4留分をそのまま第一の原料に利用してよい。すなわち、第一の原料はC4留分を含んでいてよく、イソブテン以外の炭素数4の炭化水素(イソブタン、ノルマルブテン、ノルマルブタン等)を更に含んでいてよい。
【0029】
また、二量化工程では、C4留分からイソブテン濃度のより高い留分を分離し、当該留分を第一の原料に利用してもよい。すなわち、第一の原料には、C4留分に含まれるイソブテンが含まれていればよく、必ずしもイソブテン以外のC4留分が含まれていなくてもよい。
【0030】
第一の原料は、炭化水素以外の成分を更に含んでいてよい。第一の原料は、例えば、希釈剤として不活性ガスを更に含んでいてよい。不活性ガスとしては、例えば、窒素等が挙げられる。また第一の原料は、二酸化炭素等の他のガスを更に含んでいてもよい。
【0031】
第一の原料におけるイソブテン濃度は、例えば、1質量%以上であってよく、5質量%以上であってもよい。第一の原料におけるイソブテン濃度の上限は特に限定されず、例えば100質量%であってもよい。
【0032】
二量化触媒は、イソブテンの二量化反応に活性を有する触媒であればよい。二量化触媒としては、例えば、硫酸、ゼオライト、固体リン酸、イオン交換樹脂、フッ化水素酸、イオン液体等の酸性触媒が挙げられる。
【0033】
二量化工程において、二量化反応の反応条件は特に限定されず、用いる触媒の活性等に応じて適宜変更してよい。
【0034】
C8成分は、第一の原料中の炭素数4の炭化水素(イソブテン、イソブタン等)の2分子が反応して生成した、炭素数8の炭化水素である。C8成分は、例えば、イソブテンの二量体、イソブテンとイソブタンとの反応物等を含んでいてよい。C8成分は、例えば、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、2,4,4−トリメチル−2−ペンテン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキセン及び2,5−ジメチルヘキサジエンからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよい。二量化工程で得られるC8成分は、これらのいずれか一種であってよく、二種以上の混合物であってもよい。
【0035】
二量化工程においては、第一の原料から、C8成分を含む第一の生成物が得られる。本実施形態では、第一の生成物をそのまま後述する環化工程の原料として使用してよい。また、本実施形態では、第一の生成物からC8成分以外の成分(例えば、未反応のイソブテン、イソブタン、ノルマルブテン、イソブタン等)の一部又は全部を分離してから、環化工程の原料として使用してもよい。また、本実施形態では、第一の生成物からC8成分の一部又は全部を取出して環化工程の原料として使用してもよい。分離された成分が未反応のイソブテンを含む場合、当該成分は二量化工程の原料として再利用してもよい。
【0036】
(環化工程)
環化工程では、C8成分を含む第二の原料を脱水素触媒に接触させて、C8成分の環化脱水素反応の生成物であるp−キシレンを得る。第二の原料は、ガス状で脱水素反応に供されてよい。
【0037】
環化工程では、二量化工程で得られる第一の生成物をそのまま第二の原料に利用してよい。すなわち、第二の原料は第一の生成物を含んでいてよく、C8成分以外の炭化水素(イソブテン、イソブタン、ノルマルブテン、ノルマルブタン等)を更に含んでいてよい。
【0038】
また、環化工程では、二量化工程で得られる第一の生成物から、C8成分濃度のより高い留分を分離し、当該留分を第二の原料に利用してもよい。また、環化工程では、二量化工程で得られる第一の生成物から、C8成分の一部又は全部を取出して、第二の原料に利用してもよい。
【0039】
第二の原料は、炭化水素以外の成分を更に含んでいてよい。第二の原料は、例えば、希釈剤として不活性ガスを更に含んでいてよい。不活性ガスとしては、例えば、窒素等が挙げられる。また第二の原料ガスは、二酸化炭素等の他のガスを更に含んでいてもよい。
【0040】
C8成分は、炭素数8の炭化水素である。C8成分は、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、2,4,4−トリメチル−2−ペンテン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキセン及び2,5−ジメチルヘキサジエンからなる群より選択されるp−キシレン前駆体を含むことが望ましい。C8成分中で上記p−キシレン前駆体の占める割合は、例えば50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
【0041】
脱水素触媒は、C8成分の環化脱水素反応に活性を有する触媒であればよい。脱水素触媒は、例えば、担体と当該担体に担持された活性金属とを有していてよい。
【0042】
担体としては、無機担体が好ましく、無機酸化物担体がより好ましい。また、担体は、Al、Mg、Si、Zr、Ti及びCeからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含むことが好ましく、Al、Mg及びSiからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含むことがより好ましい。また、担体としては、副反応が抑制され、p−キシレンがより効率良く得られる観点から、Al及びMgを含む無機酸化物担体が特に好適に用いられる。
【0043】
脱水素触媒の好適な一態様について、以下に示す。
【0044】
本態様の脱水素触媒(以下、第一の脱水素触媒ともいう。)は、Al及び第2族金属元素を含む担体に、第14族金属元素及びPtを含む担持金属を担持させた触媒である。ここで、第2族金属元素とは、IUPAC(国際純正応用化学連合)の規定に基づく長周期型の元素の周期表における周期表第2族に属する金属元素を意味し、第14族金属元素とは、IUPAC(国際純正応用化学連合)の規定に基づく長周期型の元素の周期表における周期表第14族に属する金属元素を意味する。
【0045】
第2族金属元素は、例えば、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)からなら群より選択される少なくとも一種であってよい。これらの中でも、第2族金属元素は、Mgであることが好ましい。
【0046】
第14族金属元素は、例えば、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)及び鉛(Pb)からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。これらの中でも、第14族金属元素は、Snであることが好ましい。
【0047】
本態様の脱水素触媒において、Alの含有量は、脱水素触媒の全質量基準で、15質量%以上であってよく、25質量%以上であってよい。また、Alの含有量は、40質量%以下であってよい。
【0048】
本態様の脱水素触媒において、第2族金属元素の含有量は、脱水素触媒の全質量基準で、10質量%以上であることが好ましく、13質量%以上であることがより好ましい。第2族金属元素の含有量は、脱水素触媒の全質量基準で、20質量%以下であることが好ましく、16質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
本態様の脱水素触媒において、第14族金属元素の含有量は、脱水素触媒の全質量基準で、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。第14族金属元素の含有量は、脱水素触媒の全質量基準で、9質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましい。
【0050】
本態様の脱水素触媒において、Ptの含有量は、脱水素触媒の全質量基準で、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。Ptの含有量は、脱水素触媒の全質量基準で、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。Ptの含有量が0.1質量%以上であると、触媒量当たりの白金量が多くなり、反応器サイズを小さくできる。また、Ptの含有量が5質量%以下であると、触媒上で形成されるPt粒子が脱水素反応に好適なサイズとなり、単位白金重量あたりの白金表面積が大きくなるため、より効率的な反応系が実現できる。
【0051】
本態様の脱水素触媒において、Ptに対する第14族金属元素のモル比(第14族金属元素のモル数/Ptのモル数)は、副反応が抑制され、反応効率が一層向上する観点から、3以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましい。Ptに対する第14族金属元素のモル比は、第14族金属元素によるPt粒子の過剰な被覆を防ぎ、反応効率を高くする観点から、15以下であることが好ましく、13以下であることがより好ましい。
【0052】
本態様の脱水素触媒において、Alに対する第2族金属元素のモル比(第2族金属元素のモル数/Alのモル数)は、副反応を抑制し、反応効率が一層向上する観点から、0.30以上であることが好ましく、0.40以上であることがより好ましい。Alに対する第2族金属元素のモル比は、脱水素触媒中のPtの分散性を高くする観点から、0.60以下であることが好ましく、0.55以下であることがより好ましい。
【0053】
脱水素触媒におけるAl、第2族金属元素、第14族金属元素及びPtの含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)により、下記の測定条件で測定できる。なお、脱水素触媒は、アルカリ融解後希塩酸により水溶液化して測定に用いる。
・装置:日立ハイテクサイエンス製 SPS−3000型
・高周波出力:1.2kw
・プラズマガス流量:18L/min
・補助ガス流量:0.4L/min
・ネブライザーガス流量:0.4L/min
【0054】
本態様の脱水素触媒は、細孔径が6nm以上18nm以下の細孔(a)を有する。脱水素触媒は、細孔径が3nm以下の細孔(以下、「細孔(b)」という。)を有していてもよく、細孔径が3nm超6nm未満の細孔(以下、「細孔(c)」という。)を有していてもよく、細孔径が18nmを超える細孔(「以下、細孔(d)」という。)を有していてもよい。
【0055】
本態様の脱水素触媒において、細孔(a)の細孔容積の割合は、脱水素触媒の全細孔容積の60%以上であってよい。細孔(a)の細孔容積の割合が上記割合以上であると、副反応が十分に抑制されると共に、十分な脱水素活性が得られる。細孔(a)の細孔容積の割合は、脱水素触媒の全細孔容積の70%以上であることが好ましく、75%以上であることが更に好ましい。細孔(a)の細孔容積の割合は、脱水素触媒の全細孔容積の90%以下であってよい。なお、所定の細孔の細孔容積の割合は、窒素吸着法により窒素相対圧0〜0.99で測定した結果を、BJH法で解析して求めることができる。
【0056】
細孔(b)の細孔容積の割合は、脱水素触媒の全細孔容積の10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。細孔(b)の細孔容積の割合は、脱水素触媒の全細孔容積の1%以上であってよい。
【0057】
細孔(c)の細孔容積の割合は、脱水素触媒の全細孔容積の15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。細孔(c)の細孔容積の割合は、脱水素触媒の全細孔容積の5%以上であってよい。
【0058】
細孔(d)の細孔容積の割合は、脱水素触媒の全細孔容積の30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。細孔(d)の細孔容積の割合は、脱水素触媒の全細孔容積の10%以上であってよい。
【0059】
細孔(a)及び細孔(c)の合計細孔容積の割合は、脱水素触媒の全細孔容積の70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。細孔(a)及び細孔(c)の合計細孔容積の割合は、脱水素触媒の全細孔容積の95%以下であってよい。
【0060】
本態様の脱水素触媒の比表面積は、後述する担体の比表面積と同じであってよい。
【0061】
担体は、例えば、Al及び第2族金属元素を含む金属酸化物担体であってよい。金属酸化物担体は、例えば、アルミナ(Al
2O
3)と第2族金属の酸化物とを含む担体であってよく、Alと第2族金属との複合酸化物であってもよい。金属酸化物担体は、Alと第2族金属元素との複合酸化物と、アルミナ及び第2族金属元素の酸化物からなる群より選択される少なくとも一種と、を含む担体であってもよい。Alと第2族金属との複合酸化物は、例えば、MgAl
2O
4であってよい。
【0062】
担体におけるAlの含有量は、担体の全質量基準で、20質量%以上であってよく、30質量%以上であってもよい。また、担体におけるAlの含有量は、担体の全質量基準で、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってもよい。
【0063】
担体における第2族金属元素の含有量は、担体の全質量基準で、10質量%以上であってよく、15質量%以上であってもよい。また、担体における第2族金属元素の含有量は、担体の全質量基準で、30質量%以下であってよく、20質量%以下であってもよい。
【0064】
担体におけるAlと第2族金属元素との複合酸化物の含有量は、担体の全質量基準で60質量%以上であってよく、80質量%以上であってもよい。担体におけるAlと第2族金属元素との複合酸化物の含有量は、担体の全質量基準で100質量%以下であってよく、90質量%以下であってもよい。
【0065】
担体におけるアルミナの含有量は、担体の全質量基準で10質量%以上であってよく、30質量%以上であってもよい。担体におけるアルミナの含有量は、担体の全質量基準で90質量%以下であってよく、80質量%以下であってもよい。
【0066】
担体における第2族金属元素の酸化物の含有量は、担体の全質量基準で15質量%以上であってよく、25質量%以上であってもよい。担体における第2族金属元素の酸化物の含有量は、担体の全質量基準で50質量%以下であってよく、35質量%以下であってもよい。
【0067】
担体は、Al及び第2族金属元素以外に他の金属元素を含んでいてもよい。他の金属元素は、例えば、Li、Na、K、Zn、Fe、In、Se、Sb、Ni及びGaからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。他の金属元素は酸化物として存在していてもよいし、Al及び第2族金属元素からなる群より選択される少なくとも一種との複合酸化物として存在していてもよい。
【0068】
担体は、細孔(a)を有してよく、細孔(b)を有していてもよく、細孔(c)を有していてもよく、細孔(d)を有していてもよい。
【0069】
担体における細孔(a)、細孔(b)、細孔(c)及び細孔(d)の細孔容積の割合は、例えば、上述した脱水素触媒におけるそれぞれの細孔の細孔容積の割合と同程度であってよい。これにより、細孔容積の割合が上述の好適な範囲にある脱水素触媒が得られ易くなる。
【0070】
担体の酸性度は、副反応が抑制されるという観点から中性付近であることが好ましい。ここで、担体の酸性度に対する基準は、一般的に水に担体を分散させた状態におけるpHで区別する。すなわち、本明細書中、担体の酸性度は、担体1質量%を懸濁させた懸濁液のpHで表すことができる。担体の酸性度は、好ましくはpH5.0〜9.0であってよく、より好ましくはpH6.0〜8.0であってよい。
【0071】
担体の比表面積は、例えば50m
2/g以上であってよく、80m
2/g以上であることが好ましい。これにより、担持されるPtの分散性が上昇しやすいという効果が奏される。また、担体の比表面積は、例えば300m
2/g以下であってよく、200m
2/g以下であることが好ましい。このような比表面積を有する担体は、担体が高温となる焼成時に潰れてしまい易いマイクロ孔を持たない傾向がある。そのため、担持されるPtの分散性が上昇しやすい傾向がある。なお、担体の比表面積は、窒素吸着法を用いたBET比表面積計で測定される。
【0072】
担体の調製方法は特に制限されず、例えば、ゾルゲル法、共沈法、水熱合成法、含浸法、固相合成法等であってよい。細孔(a)の細孔容積の割合を上述の好適な割合とすることが容易となる観点からは、含浸法が好ましい。
【0073】
担体の調製方法の例として、含浸法の一態様を以下に示す。まず、第一の金属元素(例えば第2族金属元素)の前駆体が溶媒に溶解した溶液に、第二の金属元素(例えばAl)を含む担体前駆体を加え、溶液を撹拌する。その後、減圧下で溶媒を除去し、得られた固体を乾燥させる。乾燥後の固体を焼成することで、第一の金属元素及び第二の金属元素を含む担体が得られる。この態様において、担体に含まれる目的の金属元素の含有量は、目的の金属元素を含む溶液における当該金属元素の濃度、当該溶液の使用量等によって調整することができる。
【0074】
金属前駆体は、例えば、金属元素を含む塩又は錯体であってよい。金属元素を含む塩は、例えば、無機塩、有機酸塩又はこれらの水和物であってよい。無機塩は、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩、炭酸塩等であってよい。有機塩は、例えば、酢酸塩、しゅう酸塩等であってよい。金属元素を含む錯体は、例えば、アルコキシド錯体、アンミン錯体等であってよい。
【0075】
金属前駆体を溶解する溶媒としては、例えば、塩酸、硝酸、アンモニア水、エタノール、クロロホルム、アセトン等が挙げられる。
【0076】
第二の金属元素を含む担体前駆体としては、例えば、アルミナ(例えばγ−アルミナ)等が挙げられる。担体前駆体は、例えば、ゾルゲル法、共沈法、水熱合成法等によって調製できる。担体前駆体として、市販のアルミナを用いてもよい。
【0077】
担体前駆体は、上記細孔(a)を有していてよい。担体前駆体における細孔(a)の細孔容積の割合は、担体前駆体の全細孔容積の50%以上であってよく、60%以上であってよく、70%以上であってよい。この場合、脱水素触媒における細孔(a)の細孔容積の割合を上述の好適な割合とすることが容易となる。細孔(a)の細孔容積の割合は、90%以下であってよい。なお、担体前駆体における所定の細孔の細孔容積の割合は、脱水素触媒における所定の細孔径の細孔容積の割合と同様の方法で測定される。
【0078】
焼成は、例えば、空気雰囲気下又は酸素雰囲気下で行うことができる。焼成は一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよい。焼成温度は、金属前駆体を分解可能な温度であればよく、例えば200〜1000℃であってよく、400〜800℃であってもよい。なお、多段階の焼成を行う場合、少なくともその一段階が上記焼成温度であればよい。他の段階での焼成温度は、例えば上記と同じ範囲であってよく、100〜200℃であってもよい。
【0079】
撹拌時の条件としては、例えば撹拌温度0〜60℃、撹拌時間10分〜24時間とすることができる。また、乾燥時の条件としては、例えば乾燥温度100〜250℃、乾燥時間3時間〜24時間とすることができる。
【0080】
本態様の脱水素触媒には、第14族金属元素及びPtを含む担持金属が担持されている。担持金属は、酸化物として担体に担持されていてよく、単体の金属として担体に担持されていてもよい。
【0081】
担体には、第14族金属元素及びPt以外の他の金属元素が担持されていてもよい。他の金属元素の例は、上記担体が含みうる他の金属元素の例と同様である。他の金属元素は、単体の金属として担体に担持されていてもよいし、酸化物として担持されていてもよいし、第14族金属元素及びPtからなる群より選択される少なくとも一種との複合酸化物として担持されていてもよい。
【0082】
担体に担持される第14族金属元素の量は、担体100質量部に対して、好ましくは1.5質量部以上であり、より好ましくは3質量部以上である。また、担体に担持される第14族金属元素の量は、担体100質量部に対して、10質量部以下であってよく、8質量部以下であってもよい。第14族金属元素の量が上記範囲であると、触媒劣化が一層抑制され、高い活性がより長期間にわたり維持される傾向がある。
【0083】
担体に担持されるPtの量は、担体100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは0.5質量部以上である。また、担体に担持されるPtの量は、担体100質量部に対して、5質量部以下であってよく、3質量部以下であってもよい。このようなPt量であると、触媒上で形成されるPt粒子が脱水素反応に好適なサイズとなり、単位白金重量あたりの白金表面積が大きくなるため、より効率的な反応系が実現できる。また、このようなPt量であると触媒コストを抑制しながら、高い活性をより長期間にわたり維持できる。
【0084】
担体に金属を担持する方法は特に限定されず、例えば、含浸法、沈着法、共沈法、混練法、イオン交換法、ポアフィリング法が挙げられる。
【0085】
担体に金属を担持する方法の一態様を以下に示す。まず、目的の金属(担持金属)の前駆体が溶媒に(例えばアルコール)に溶解した溶液に、担体を加え、溶液を撹拌する。その後、減圧下で溶媒を除去し、得られた固体を乾燥させる。乾燥後の固体を焼成することで、目的の金属を担体に担持させることができる。
【0086】
上記の担持方法において、担体金属の前駆体は、例えば、金属元素を含む塩又は錯体であってよい。金属元素を含む塩は、例えば、無機塩、有機酸塩又はこれらの水和物であってよい。無機塩は、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩、炭酸塩等であってよい。有機塩は、例えば、酢酸塩、しゅう酸塩等であってよい。金属元素を含む錯体は、例えば、アルコキシド錯体、アンミン錯体等であってよい。
【0087】
撹拌時の条件としては、例えば撹拌温度0〜60℃、撹拌時間10分〜24時間とすることができる。また、乾燥時の条件としては、例えば乾燥温度100〜250℃、乾燥時間3時間〜24時間とすることができる。
【0088】
焼成は、例えば、空気雰囲気下又は酸素雰囲気下で行うことができる。焼成は一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよい。焼成温度は、担体金属の前駆体を分解可能な温度であればよく、例えば200〜1000℃であってよく、400〜800℃であってもよい。なお、多段階の焼成を行う場合、少なくともその一段階が上記焼成温度であればよい。他の段階での焼成温度は、例えば上記と同じ範囲であってよく、100〜200℃であってもよい。
【0089】
本態様の脱水素触媒におけるPtの分散度は、10%以上であってよく、好ましくは15%以上であってよい。このようなPt分散度を有する脱水素触媒によれば、副反応が一層抑制され、高い活性がより長期間にわたり維持される傾向がある。なお、Ptの分散度は、吸着種としてCOを用いた金属分散度測定法により、下記の装置及び測定条件で測定される。
・装置:株式会社大倉理研製金属分散度測定装置R−6011
・ガス流速:30mL/分(ヘリウム、水素)
・試料量:約0.1g(小数点以下4桁目まで精秤した)
・前処理:水素気流下で400℃まで1時間かけて昇温し、400℃で60分間還元処理を行う。その後、ガスを水素からヘリウムに切り替えて400℃で30分間パージした後、ヘリウム気流下で室温まで冷却する。室温で検出器が安定するまで待った後、COパルスを行う。
・測定条件:常圧ヘリウムガス流通下、室温(27℃)で一酸化炭素を0.0929cm3ずつパルス注入し、吸着量を測定する。吸着回数は、吸着が飽和するまで行う(最低3回、最大15回)。測定された吸着量から、分散度を求める。
【0090】
脱水素触媒は、上記以外の脱水素触媒であってもよい。例えば、上記以外の脱水素触媒の好適な一例として、上記態様における担持金属としてCrを用いた触媒が挙げられる。
【0091】
脱水素触媒は押出成形法、打錠成型法等の方法で成形されていてよい。
【0092】
脱水素触媒は、成形工程における成形性を向上させる観点から、触媒の物性や触媒性能を損なわない範囲において、成形助剤を含有してよい。成型助剤は、例えば、増粘剤、界面活性剤、保水剤、可塑剤、バインダー原料等からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。脱水素触媒を成形する成形工程は、成形助剤の反応性を考慮して脱水素触媒の製造工程の適切な段階で行ってよい。
【0093】
成形された脱水素触媒の形状は、特に限定されるものではなく、触媒を使用する形態により適宜選択することができる。例えば、脱水素触媒の形状は、ペレット状、顆粒状、ハニカム状、スポンジ状等の形状であってよい。
【0094】
脱水素触媒は、前処理として還元処理が行われたものを用いてもよい。還元処理は、例えば、還元性ガスの雰囲気下、40〜600℃で脱水素触媒を保持することで行うことができる。保持時間は、例えば0.05〜24時間であってよい。還元性ガスは、例えば、水素、一酸化炭素等であってよい。
【0095】
還元処理を行った脱水素触媒を用いることにより、脱水素反応の初期の誘導期を短くすることができる。反応初期の誘導期とは、触媒が含有する活性金属のうち、還元されて活性状態にあるものが非常に少なく、触媒の活性が低い状態をいう。
【0096】
次いで、環化工程における反応条件等について詳述する。
【0097】
環化工程は、第二の原料を脱水素触媒に反応させて、C8成分の環化脱水素反応を行い、p−キシレンを得る工程である。
【0098】
環化工程は、例えば、脱水素触媒を充填した反応器を用い、当該反応器に第二の原料を流通させることにより実施してよい。反応器としては、固体触媒による気相反応に用いられる種々の反応器を用いることができる。反応器としては、例えば、固定床型反応器、ラジアルフロー型反応器、管型反応器等が挙げられる。
【0099】
環化脱水素反応の反応形式は、例えば、固定床式、移動床式又は流動床式であってよい。これらのうち、設備コストの観点からは固定床式が好ましい。
【0100】
環化脱水素反応の反応温度、すなわち反応器内の温度は、反応効率の観点から300〜800℃であってよく、400〜700℃であってよく、500〜650℃であってよい。反応温度が300℃以上であれば、p−キシレンの生成量が一層多くなる傾向がある。反応温度が800℃以下であれば、コーキング速度が大きくなりすぎないため、脱水素触媒の高い活性がより長期にわたって維持される傾向がある。
【0101】
反応圧力、すなわち反応器内の気圧は0.01〜1MPaであってよく、0.05〜0.8MPaであってよく、0.1〜0.5MPaであってよい。反応圧力が上記範囲にあれば脱水素反応が進行し易くなり、一層優れた反応効率が得られる傾向がある。
【0102】
環化工程を、第二の原料を連続的に供給する連続式の反応形式で行う場合、重量空間速度(以下、「WHSV」という。)は、例えば0.1h
−1以上であってよく、0.5h
−1以上であってもよい。また、WHSVは、20h
−1以下であってよく、10h
−1以下であってもよい。ここで、WHSVとは、脱水素触媒の質量Wに対する原料ガス(第二の原料)の供給速度(供給量/時間)Fの比(F/W)である。WHSVが0.1h
−1以上であると、反応器サイズをより小さくできる。WHSVが20h
−1以下であると、C8成分の転化率をより高くすることができる。なお、原料ガス及び触媒の使用量は、反応条件、触媒の活性等に応じて更に好ましい範囲を適宜選定してよく、WHSVは上記範囲に限定されるものではない。
【0103】
環化工程では、第二の原料から、p−キシレンを含む第二の生成物が得られる。本実施形態に係る製造方法は、第二の生成物からp−キシレンを単離する単離工程を更に含んでいてもよい。第二の生成物には、p−キシレン以外の炭化水素が含まれていてよく、当該炭化水素は、二量化工程又は環化工程の原料として再利用してもよい。例えば、第二の生成物には、環化脱水素反応の副生成物として、イソブテン、イソブタン等が含まれていてよい。第二の生成物中のイソブテンを二量化工程の原料に再利用することでp−キシレンの収量を増加させることができる。また、第二の生成物中のイソブタンを二量化工程又は環化工程の原料として再利用すると、環化工程の脱水素触媒によってイソブタンがイソブテンに変換される。イソブタン由来のイソブテンを更に二量化工程の原料に再利用することで、p−キシレンの収量を一層増加させることができる。
【0104】
以下、本実施形態に係る製造方法の具体的な態様について例示する。
【0105】
(1)第一の態様
第一の態様に係る製造方法は、C4留分から、イソブテン及びイソブタンを含む留分(A)とノルマルブテン及びノルマルブタンを含む留分(B)とを得る第一の分離工程と、留分(A)から、イソブテンを含む留分(A−1)とイソブタンを含む留分(A−2)とを得る第二の分離工程と、を更に備えており、留分(A−1)を含む第一の原料を二量化工程で使用する。
【0106】
第一の分離工程は、例えば、反応蒸留、精密蒸留、膜分離、TBA脱水法(イソブテンを水和してtert−ブチルアルコール(TBA)を得て他の成分と分離し、TBAを脱水してイソブテンを得る方法)等により実施でき、これらのうち経済に優れる観点からは反応蒸留が好ましい。
【0107】
反応蒸留の触媒及び条件は特に限定されず、公知の触媒及び条件であってよい。
【0108】
第二の分離工程は、例えば、常圧蒸留、減圧蒸留、膜分離、TBA脱水法等により実施でき、これらのうち経済性に優れる観点からはTBA脱水法が好ましい。
【0109】
第一の態様に係る製造方法は、留分(B)を含む第三の原料を脱水素触媒に接触させて、ブタジエンを得るブタジエン生成工程を更に備えていてよい。このような工程によれば、p−キシレンに加えて化成品として有用なブタジエンが得られるため、C4留分をより有効に利用できる。
【0110】
ブタジエン生成工程で使用される脱水素触媒は、ノルマルブタン及び/又はノルマルブテンの脱水素反応に活性を有する触媒であればよく、例えば、環化工程で使用される脱水素触媒と同じ触媒が例示できる。ブタジエン生成工程で使用される脱水素触媒は、環化工程で使用される脱水素触媒と同じであってよく、異なっていてもよい。
【0111】
ブタジエン生成工程では、例えば、上述した好適な態様に係る脱水素触媒(第一の脱水素触媒)とそれ以外の触媒とを用いてもよい。
【0112】
例えば、ブタジエン生成工程では、反応器の第一の脱水素触媒より後段に、オレフィンから共役ジエンへの脱水素反応を触媒する固体触媒(第二の脱水素触媒)が更に充填されていてよい。第一の脱水素触媒は、アルカンからオレフィンへの脱水素反応の活性に優れるため、第一の脱水素触媒の後段に第二の脱水素触媒を充填することで、ブタジエンの収率を高めることができる。
【0113】
また、ブタジエン生成工程は、第三の原料を第一の脱水素触媒に接触させて得られた第三の生成物を、更に第二の脱水素触媒に接触させて、ブタジエンを含む第四の生成物を得る工程であってもよい。このような工程によれば、ブタジエンをより収率良く得ることができる。
【0114】
第二の脱水素触媒は、オレフィンの脱水素反応の触媒であれば特に限定されない。第二の脱水素触媒としては、例えば、単純脱水素反応の触媒としてよく用いられるPt/Al
2O
3系触媒、酸化脱水素反応の触媒としてよく用いられるBi−Mo系触媒等を用いることができる。
【0115】
(2)第二の態様
第二の態様に係る製造方法は、C4留分から、イソブテン及びイソブタンを含む留分(A)とノルマルブテン及びノルマルブタンを含む留分(B)とを得る第一の分離工程を更に備えており、留分(A)を含む第一の原料を二量化工程で使用する。
【0116】
第二の態様では、第一の原料がイソブタンを含むため、二量化工程で得られる第一の生成物に未反応のイソブタンが含まれる。第二の態様において、第一の生成物に含まれるイソブタンを、C8成分と共に環化工程に供してよい。これにより、イソブタンが環化工程の脱水素触媒によって反応し、イソブテンが形成される。形成されたイソブテンは環化工程の第二の生成物中に含まれ、これを二量化工程に再利用することでp−キシレンの収量を増加させることができる。
【0117】
第二の態様では、留分(B)を含む第三の原料を脱水素触媒に接触させて、ブタジエンを得るブタジエン生成工程を更に備えていてよい。このような工程によれば、p−キシレンに加えて化成品として有用なブタジエンが得られるため、C4留分をより有効に利用できる。
【0118】
また、第二の態様では、留分(B)を含む第三の原料を異性化触媒に接触させて、イソブテン及びイソブタンを得る異性化工程を更に備えていてよい。このような工程によって得られたイソブテン及びイソブタンは二量化工程の原料として使用でき、これによりp−キシレンの収量を一層増加させることができる。
【0119】
異性化触媒は、ノルマルブタン及びノルマルブテンをイソブタン及びイソブテンに異性化できる触媒であればよく、公知の異性化触媒を使用してよい。異性化触媒としては、例えば、ゼオライト、固体超強酸、シリカアルミナ等が挙げられ、これらのうち、反応性に優れる観点からは固体超強酸を好適に用いることができる。
【0120】
(3)第三の態様
第三の態様に係る製造方法では、イソブテン及びノルマルブテンを含む第一の原料を二量化工程で使用する。第三の態様では、イソブテン及びノルマルブテンを含むC4留分をそのまま第一の原料に利用してもよい。
【0121】
第三の態様では、第一の原料がノルマルブテンを含むため、二量化工程で得られる第一の生成物に未反応のノルマルブテンが含まれる。第三の態様では、第一の生成物に含まれるノルマルブテンを、C8成分と共に環化工程に供してよい。これにより、ノルマルブテンが環化工程の脱水素触媒によって脱水素され、ブタジエンが形成される。これにより、化成品として有用なp−キシレンとブタジエンを同時に得ることができる。
【0122】
第三の態様では、環化工程の反応器に、上述した好適な態様に係る脱水素触媒(第一の脱水素触媒)以外の触媒(例えば、上述の第二の脱水素触媒)を更に充填してもよい。
【0123】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0124】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0125】
(実施例1)
<触媒A−1の調製>
担体前駆体として、0.5〜1mmに分級されたγ−アルミナ6.0g(ネオビードGB−13、(株)水澤化学工業製、1質量%の濃度で水に懸濁させた懸濁液のpH:7.9)を用意した。担体前駆体と、15.1gのMg(NO
3)
2・6H
2Oを45mLの水に溶解させた溶液とを混合した。得られた混合液を、ロータリーエバポレーターを用いて、40℃、0.015MPaAで30分間撹拌した後、40℃、常圧で更に30分間撹拌した。その後、混合液を撹拌しながら減圧下で水を除去した。得られた固体を130℃のオーブン中で一晩乾燥させた。次に、乾燥後の固体を、空気流通下、550℃で3時間、800℃で3時間の2段階で焼成し、MgAl
2O
4を含む担体A−1を得た。
【0126】
10.0gの担体A−1に対し、ジニトロジアンミン白金(II)の硝酸溶液(田中貴金属工業製、[Pt(NH
3)
2(NO
2)
2]/HNO
3)を用いて、白金担持量が約1質量%になるよう白金を含浸担持し、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行った。次いで、スズ酸ナトリウム(昭和化工製、Na
2SnO
2・3H
2O)0.82gを約30mlの水に溶解した水溶液と混合し、エバポレータにて約50℃で水を除去した。その後、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行い、触媒A−1を得た。得られた触媒A−1をICP法で分析したところ、Ptの担持量は0.92質量%、Snの担持量は3.0質量%であった。
【0127】
<p−キシレンの製造>
中東系原油を流動接触分解装置にて処理して得られたC4留分を反応蒸留装置にて分留し、塔頂からイソブタン及びイソブテン、塔底からノルマルブタン及びノルマルブテンをそれぞれ得た。塔頂ガス中のイソブタンは76質量%、イソブテンは24質量%であった。この塔頂ガスを、固定床流通式反応装置を用い、強酸性のイオン交換樹脂であるアンバーリスト35にて120℃、常圧、WHSV=50h
−1の条件にて処理し、イソブタン76質量%、2,4,4−トリメチルペンテン23質量%、その他1質量%の生成物(第一の生成物)を得た。
【0128】
次いで、第一の生成物を原料とし、固定床流通式反応装置を用い、550℃、常圧、WHSV=20h
−1の条件で環化脱水素反応を行った。触媒は触媒A−1を用いた。反応開始から9時間後の反応生成物を分析し、2,4,4−トリメチルペンテンの転化率、パラキシレンの収率、及び、キシレン中のパラキシレン分率を求めた。得られた結果を表1に示す。なお、表1で、パラキシレンの収率は、2,4,4−トリメチルペンテン基準の収率を示す。
【0129】
(実施例2)
<触媒A−2の調製>
実施例1と同じ方法で担体A−1を調製した。次いで、10.0gの担体A−1に対し、硝酸クロム水溶液(和光純薬製、[Cr(NO
3)
2]6H
3O)を用いて、クロム担持量が約5質量%になるようクロムを含浸担持し、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行い、触媒A−2を得た。
【0130】
<p−キシレンの製造>
触媒として触媒A−2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして環化脱水素反応を行い、反応開始から9時間後の反応生成物を分析した。分析結果は表1に示すとおりであった。
【0131】
(実施例3)
<触媒A−3の調製>
γ−アルミナ6.0g(ネオビードGB−13、(株)水澤化学工業製、1質量%の濃度で水に懸濁させた懸濁液のpH:7.9)に対し、硝酸クロム水溶液(和光純薬製、[Cr(NO
3)
2]6H
3O)を用いて、クロム担持量が約5質量%になるようクロムを含浸担持し、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行い、触媒A−3を得た。
【0132】
<p−キシレンの製造>
触媒として触媒A−3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして環化脱水素反応を行い、反応開始から9時間後の反応生成物を分析した。分析結果は表1に示すとおりであった。
【0133】
実施例1〜3の結果を表1に示す。なお、表1中、TMP転化率は、2,4,4−トリメチルペンテンの転化率を示し、パラキシレン収率は、2,4,4−トリメチルペンテン基準のパラキシレンの収率を示し、パラキシレン分率は、生成物中のキシレンに占めるパラキシレンの割合を示す。
【0134】
【表1】
【0135】
表1に示すとおり、各実施例で、流動接触分解生成物のC4留分からパラキシレンを効率良く製造することができる。また、実施例1では、実施例2及び3と比較して、より高いパラキシレン収率が得られ、パラキシレン分率も高いものとなった。