特許第6803730号(P6803730)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803730
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】静電塗装装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/08 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
   B05B5/08 D
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-226751(P2016-226751)
(22)【出願日】2016年11月22日
(65)【公開番号】特開2018-83148(P2018-83148A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 富之
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−102693(JP,A)
【文献】 特開2008−168179(JP,A)
【文献】 特開平06−134352(JP,A)
【文献】 特開平06−238202(JP,A)
【文献】 特開2013−017921(JP,A)
【文献】 特開2009−045519(JP,A)
【文献】 特開2005−087997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00−17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を噴霧するためのノズルと、
前記ノズルから噴霧された塗料を帯電させるための放電電極と、
前記放電電極に高電圧を供給する高電圧発生器と、
先端部に前記ノズル及び前記放電電極が設けられて内部に前記高電圧発生器が設けられたガン本体と、
前記ガン本体とアクチュエータとを連結する連結機構と、を備え、
前記ガン本体は、前記ガン本体に前記連結機構を着脱可能に接続する接続部材を有し、
前記連結機構及び前記接続部材は、一組のねじ部を有して相互に嵌合可能に構成され、
前記連結機構は、
一方の端部にフランジ部を有するとともに他方の端部が前記アクチュエータに取り付けられる管部材と、
前記一組のねじ部の一方を有し筒状に形成され当該筒状の内側に前記管部材を通した状態で前記フランジ部に係止可能な筒状部材と、を有し、
前記接続部材及び前記管部材は、導電性を有する材料で構成され、
前記接続部材と前記管部材とは、相互に接触した状態で接続され、
前記高電圧発生器は、前記接続部材及び前記管部材を介して前記アクチュエータに接地されている、
静電塗装装置。
【請求項2】
前記連結機構は、前記アクチュエータに取り付けられるとともに前記一組のねじ部の一方を有するブラケットを有している、
請求項1に記載の静電塗装装置。
【請求項3】
前記接続部材及び前記ブラケットは、導電性を有する材料で構成され、
前記接続部材と前記ブラケットは、相互に接触した状態で接続され、
前記高電圧発生器は、前記接続部材及び前記ブラケットを介して前記アクチュエータに接地される、
請求項2に記載の静電塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、静電塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の車体等の塗装方法の一つとして静電塗装がある。静電塗装は、静電塗装用スプレーガン(以下、単にスプレーガンと称する)から噴霧した塗料を、静電引力によって車体等の被塗装物に吸着させることで、被塗装物を塗装する塗装方法である。通常、静電塗装では、被塗装物は陽極に設定され、スプレーガンは陰極に設定されると共に、これら被塗装物とスプレーガンとの間に高電圧が印加されて静電界が形成される。そして、塗料つまり塗料粒子は、負の高電圧に帯電された状態でスプレーガンから噴霧される。
【0003】
スプレーガンの種類として、いわゆる自動ガンと称されるものがある。自動ガンは、レシプロケータやロボットアーム等のアクチュエータの先端部に設けられて、被塗装物を自動で塗装するためのスプレーガンである。一般に、自動ガンとしてのスプレーガンは、アクチュエータの先端部に対して、ボルト等の締結部材を用いて固定される。そのため、ユーザは、例えばメンテナンスや清掃作業等のために、アクチュエータに対してスプレーガンを着脱する場合には、ドライバーやレンチ等の工具を用いて作業する必要があった。
【0004】
この場合、ドライバーやレンチ等の工具を用いて行う作業は、細かい作業になり易く手間がかかるため、多くの工数を要する。また、スプレーガンの着脱作業中は、塗装作業を中断しなければならないため、塗装作業の効率つまり生産効率も低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−134352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、工具を用いることなくアクチュエータに対してガン本体を容易に着脱することができる静電塗装装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の静電塗装装置は、塗料を噴霧するためのノズルと、前記ノズルから噴霧された塗料を帯電させるための放電電極と、前記放電電極に高電圧を供給する高電圧発生器と、先端部に前記ノズル及び前記放電電極が設けられて内部に前記高電圧発生器が設けられたガン本体と、前記ガン本体とアクチュエータとを連結する連結機構と、を備える。前記ガン本体は、前記ガン本体に前記連結機構を着脱可能に接続する接続部材を有している。前記連結機構及び前記接続部材は、一組のねじ部を有して相互に嵌合可能に構成されている。前記連結機構は、一方の端部にフランジ部を有するとともに他方の端部が前記アクチュエータに取り付けられる管部材と、前記一組のねじ部の一方を有し筒状に形成され当該筒状の内側に前記管部材を通した状態で前記フランジ部に係止可能な筒状部材と、を有し、前記接続部材及び前記管部材は、導電性を有する材料で構成され、前記接続部材と前記管部材とは、相互に接触した状態で接続され、前記高電圧発生器は、前記接続部材及び前記管部材を介して前記アクチュエータに接地されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態よる静電塗装装置の一例として、ガン本体をレシプロケータに連結したものを示す図
図2】第1実施形態による静電塗装装置の電気的構成の一例を示す模式図
図3】第1実施形態による静電塗装装置を示す斜視図
図4】第1実施形態について、ガン本体と連結機構との連結部分周辺の構成を示す断面図
図5】第2実施形態よる静電塗装装置の一例として、ガン本体を多軸ロボットに連結したものを示す図
図6】第2実施形態について、ガン本体と連結機構との接続部分周辺の構成を示す断面図
図7】第3実施形態について、ガン本体と連結機構との接続部分周辺の構成を示す断面図
図8】第4実施形態について、ガン本体と連結機構との接続部分周辺の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態に係る静電塗装装置について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態で実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1及び図2に示す静電塗装装置1は、例えば図示しないレシプロケータやロボットアームの先端部に設けられて、被塗装物を自動で塗装するいわゆる自動ガンを備えた自動塗装装置である。本実施形態の静電塗装装置1は、図1に示すように、ガン本体10と、連結機構40と、後ろカバー50と、を備えている。ガン本体10は、いわゆる自動ガンであり、連結機構40を介して、ガン本体10を移動させるためのアクチュエータであるレシプロケータ95に連結されている。
【0011】
図2に示すように、ガン本体10は、塗料及び塗装用エア経路11、ノズル12、放電電極13、及び高電圧発生器20を有している。また、ガン本体10は、外殻を構成する要素として、図3示すように、本体ケース31、ノズルキャップ32、キャップナット33を有ししているとともに、図4に示すように接続部材35を有している。
【0012】
なお、本実施形態の説明では、図3等の前後の矢印で示すように、本体ケース31の長手方向をガン本体10の前後方向とする。この場合、本体ケース31の長手方向に対し、ノズルキャップ32側をガン本体10の前側とし、後ろカバー50側をガン本体10の後側とする。また、図3及び図4の上下の矢印で示すように、ガン本体10の前後方向に対して直角方向を、ガン本体10の上下方向とする。そして、ガン本体10の前後方向に対して直角方向でかつ上下方向に対して直角方向を、ガン本体10の幅方向とする。
【0013】
図2に示すように、塗料及び塗装用エア経路11は、ガン本体10の外部から供給される塗料及び塗装用エアを、ガン本体10のノズル12へ供給するための経路である。すなわち、塗料及び塗装用エア経路11は、ノズル12に塗料を供給するための塗料経路と、ノズル12に塗装用エアを供給するための塗装用エア経路とを、共通化させたものである。なお、塗料経路と塗装用エア経路とは、それぞれ別に構成しても良い。
【0014】
塗料及び塗装用エア経路11は、図4に示すように、本体ケース31内に設けられており、電気的絶縁性を有する例えば合成樹脂製のホースなどで構成されている。この場合、塗料及び塗装用エア経路11を構成するホースは、剛性を有しているが、柔軟性を有するものであっても良い。塗料及び塗装用エア経路11は、図2及び図4に示すように、ジョイント111を有している。塗料及び塗装用エア経路11は、図2に示すように、ジョイント111を介して塗料バルブ81及び塗装用エアバルブ82に接続される。
【0015】
図2に示す塗料バルブ81及び塗装用エアバルブ82は、例えばガン本体10とは別体に構成された電磁弁であって、図示しない上位の制御装置に電気的に接続されている。塗料バルブ81及び塗装用エアバルブ82は、この上位の制御装置からの動作指令に基づいて開閉制御される。
【0016】
塗料バルブ81は、塗料ポンプ91及び塗料タンク92に接続される。塗料タンク92内には、液体又は粉体の塗料が貯蔵されている。塗料タンク92内の塗料は、塗料ポンプ91によって塗料バルブ81へ供給される。塗装用エアバルブ82は、コンプレッサ93に接続されている。コンプレッサ93で生じた圧縮空気の一部は、塗装用エアバルブ82へ供給される。そして、塗料バルブ81の吐出側及び塗装用エアバルブ82の吐出側は、塗料及び塗装用エア経路11のジョイント111に至るまでの間に合流している。
【0017】
ノズル12は、塗料を所定のパターンに噴霧するためのものであり、本体ケース31の先端部に設けられている。図示しない制御装置からの動作指令によって塗料バルブ81及び塗装用エアバルブ82が開放されると、塗料ポンプ91から供給される塗料とコンプレッサ93から供給される圧縮エアとが混合した状態で塗料及び塗装用エア経路11に供給された後、ノズル12に供給される。そして、ノズル12に供給された塗料は、圧縮エアによって微粒子化されるとともに塗装に適した形状つまり塗装パターンに形成されてノズル12から噴霧される。
【0018】
図2に示す高電圧発生器20は、入力される交流電圧に比例した直流の高電圧を出力する。本実施形態において、高電圧発生器20は、外部から入力された入力電圧を5000〜6000倍程度に昇圧して出力する。ガン本体10は、図示しない静電コントローラに対してケーブル接続されている。図示しない静電コントローラは、ガン本体10に対して交流電圧を供給する。
【0019】
高電圧発生器20は、入力トランス21、昇圧回路22、及び出力抵抗23を有している。入力トランス21の入力側つまり1次側は、外部の静電コントローラに接続されている。入力トランス21の出力側つまり2次側は、例えば金属線によって昇圧回路22の入力側つまり低電圧部221に接続されている。入力トランス21は、外部の静電コントローラと昇圧回路22との間を電気的に絶縁し、外部の静電コントローラから供給される交流電圧を昇圧回路22の低電圧部221へ出力する。
【0020】
昇圧回路22は、例えばコッククロフト・ウォルトン型の昇圧整流回路で構成されている。昇圧回路22は、入力トランス21から入力された交流電圧を昇圧及び整流して直流の高電圧に変換する。昇圧回路22の出力側つまり高電圧部222は、例えば金属線によって出力抵抗23に接続されている。
【0021】
出力抵抗23は、例えば板状に構成された抵抗体であり、昇圧回路22の高電圧部222と放電電極13との間に設けられている。昇圧回路22から出力された直流の高電圧は、出力抵抗23を介して放電電極13に供給され、放電電極13から直流の出力電圧として出力される。放電電極13は、例えばピン形状の金属電極で構成され、ノズル12の近傍又はノズル12の内部に設けられている。これにより、ノズル12から噴霧された塗料の微粒子には、放電電極13から出力される直流の出力電圧が印加される。
【0022】
本実施形態の場合、図示しない静電コントローラは、例えば12V〜20Vの交流電圧を、ガン本体10の入力トランス21の1次側に供給する。入力トランス21は、静電コントローラから供給された交流電圧を、2次側において2kV〜4kV程度の交流電圧に変換して、昇圧回路22に入力する。昇圧回路22は、入力トランス21から供給された交流電圧を、60kV〜100kVの直流電圧に昇圧して放電電極13に供給する。そして、放電電極13は、ノズル12から噴霧された塗料を高電圧に帯電させる。これにより、被塗装物100に対して静電塗装が行われる。なお、本明細書中において、出力電圧の値は、便宜上、正負の区別無く絶対値で表している。
【0023】
なお、昇圧回路22は、回路内の図示しないダイオードの向きを変えることにより、出力電圧の極性を接地電位に対して正または負のいずれかに設定することができる。例えば昇圧回路22の出力電圧の極性は、接地電位に対して負になるように構成されている。この場合、微粒子化された塗料は負の極性に荷電される。
【0024】
高電圧発生器20は、図4に示すように、本体ケース31の内部に設けられている。高電圧発生器20の外殻は、絶縁ケース24によって構成されている。絶縁ケース24は、例えば電気絶縁性を有するポリアセタール樹脂やフッ素樹脂などの合成樹脂によって構成されている。この場合、絶縁ケース24は、全体として前後方向に長細く、下側の全面が開口した容器状に形成されている。入力トランス21、昇圧回路22、及び出力抵抗23は、絶縁ケース24内に収容されている。この場合、入力トランス21、昇圧回路22、及び出力抵抗23の周囲は、絶縁ケース24内に充填されて固化されたモールド樹脂によって覆われている。入力トランス21、昇圧回路22、及び出力抵抗23の周囲は、このモールド樹脂によって電気的に絶縁されている。
【0025】
図3に示すように、ガン本体10の外殻を構成する本体ケース31、ノズルキャップ32、及びキャップナット33は、例えば電気絶縁性を有するポリアセタール樹脂やフッ素樹脂などの合成樹脂によって構成されている。ノズル12は、詳細は図示しないが、本体ケース31の先端部にあって、本体ケース31から露出する形態で設けられている。ノズルキャップ32は、キャップナット33を介して本体ケース31の先端部に設けられており、ノズル12の周囲を覆っている。
【0026】
図4に示すように、接続部材35は、ガン本体10に連結機構40を着脱可能に接続するためのものである。接続部材35は、例えば導電性樹脂や金属等の導電性を有する材料によって構成されている。接続部材35は、全体として円板状に形成されており、本体ケース31の後端部に設けられて本体ケース31の後端部の開口を閉塞している。接続部材35は、ボルト36等によって、本体ケース31に固定されている。
【0027】
接続部材35は、突出部351と、雄ねじ部352と、を有している。突出部351は、接続部材35の中心部分を本体ケース31とは反対側つまり後方へ向かって突出するように形成されている。雄ねじ部352は、突出部351の外側面に設けられている。突出部351には、エア経路11が通されているとともに、コネクタ14が設けられている。この場合、高電圧発生器20は、電力供給用の配線25及びアース線26を有している。配線25は、コネクタ14に接続されている。そして、アース線26は、接続部材35に接続されている。
【0028】
連結機構40は、図1に示すように、ガン本体10を移動させるためのアクチュエータである例えばレシプロケータ95と、ガン本体10とを連結するためのものである。本実施形態の場合、連結機構40は、図4に示すように、管部材41と、筒状部材42と、を有している。管部材41は、導電性樹脂や金属等の導電性を有する材料によって、剛性を有する中空の円管状に構成されている。また、管部材41は、長手方向の一方の端部つまりガン本体10側の端部にフランジ部411を有している。そして、管部材41の長手方向の他方の端部は、図1に示すように、レシプロケータ95の駆動部分に接続されている。この場合、ジョイント111とバルブ81、82とを繋ぐホース、及びコネクタ14と図示しない静電コントローラとを繋ぐ電気配線は、管部材41の内側に通される。
【0029】
筒状部材42は、例えば電気的絶縁性を有する合成樹脂製であって、全体として円筒容器状に構成されている。筒状部材42は、雌ねじ部421と、穴部422と、を有している。雌ねじ部421は、筒状部材42の内側面に形成された雌ねじであって、接続部材35に設けられた雄ねじ部352と嵌合可能に構成されている。すなわち、接続部材35に設けられた雄ねじ部352と、筒状部材42に設けられた雌ねじ部421とは、相互に嵌合可能な一組のねじ部を構成している。
【0030】
穴部422は、筒状部材42の容器状の底部を円形に貫くようにして形成されている。この場合、管部材41においてフランジ部411を除いた部分を主体部412とすると、穴部422の内径は、主体部412の外径よりも大きく、かつ、フランジ部411の外径よりも小さい。また、フランジ部411の外径は、筒状部材42の内径よりも小さい。したがって、図4に示すように、筒状部材42の穴部422に主体部412を通した場合、フランジ部411は、穴部422の周囲に係止される。このため、筒状部材42が、筒状部材42の穴部422から抜け落ちることが防止される。
【0031】
後ろカバー50は、例えば電気絶縁性を有するポリアセタール樹脂やフッ素樹脂などの合成樹脂によって構成されている。後ろカバー50は、全体として筒状に構成されており、本体ケース31の後端部に設けられて、ガン本体10と連結機構40との連結部分を覆っている。すなわち、管部材41のフランジ部411、筒状部材42、及び接続部材35は、後ろカバー50の内側に配置されている。また、後ろカバー50と接続部材35の外周面との間には、シール部材51が設けられている。
【0032】
次に、ガン本体10と連結機構40との着脱方法について説明する。なお、筒状部材42及び後ろカバー50は、予め管部材41の主体部412に通されている。
ガン本体10を連結機構40に装着する際、まず、ユーザは、管部材41のフランジ部411におけるガン本体10側の端面を、接続部材35の端面つまり突出部351における管部材41側の端面に押し当てる。そして、ユーザは、筒状部材42の内側に突出部351を挿入するように筒状部材42をガン本体10側へ移動させ、その後、ねじ部352、421が相互に締め付けられる方向へ筒状部材42を回転させる。これにより、管部材41のフランジ部411が接続部材35の突出部351に密着するように接触した状態で、接続部材35と管部材41とが固定される。そして、ユーザは、後ろカバー50をガン本体10側へ移動させて、後ろカバー50をガン本体10に取り付ける。このようにして、ガン本体10が連結機構40に装着される。
【0033】
ここで、接続部材35及び管部材41は導電性を有する材料で構成されている。そのため、ガン本体10が連結機構40に装着された状態において、高電圧発生器20は、アース線26、接続部材35及び管部材41を介して、アクチュエータ95に接地される。なお、本体ケース31内に設けられた他の電子機器のアース線も、接続部材35に接続することができる。これにより、高電圧発生器20と同様に、図示しない他の電子機器も、接続部材35、及び連結機構40の管部材41を介して、アクチュエータ95に接地される。
【0034】
また、連結機構40からガン本体10を取り外す場合は、上記手順とは逆の手順を行う。すなわち、ユーザは、まず、後ろカバー50をガン本体10とは反対側つまり後方へ移動させて、ガン本体10から後ろカバー50を取り外す。次に、ユーザは、ねじ部352、421が相互に緩められる方向へ筒状部材42を回転させ、突出部351から筒状部材42を取り外す。これにより、接続部材35と管部材41との固定が解除されて、ガン本体10が、連結機構40から取外し可能になる。
【0035】
以上説明した実施形態によれば、静電塗装装置1は、塗料を噴霧するためのノズル12と、ノズルから噴霧された塗料を帯電させるための放電電極13と、放電電極13に高電圧を供給する高電圧発生器20と、先端部にノズル12及び放電電極13が設けられて内部に高電圧発生器20が設けられたガン本体10と、ガン本体10とアクチュエータ95とを連結する連結機構40と、を備えている。ガン本体10は、ガン本体10に連結機構40を着脱可能に接続する接続部材35を有している。そして、接続部材35及び連結機構40は、一組のねじ部352、421を有して相互に嵌合可能に構成されている。
【0036】
この場合、連結機構40は、管部材41と、筒状部材42と、を有している。管部材41は、一方の端部にフランジ部411を有するとともに他方の端部がアクチュエータ95に取り付けられる。筒状部材42は、一組のねじ部352、421の一方、この場合、雌ねじ部421を有している。また、筒状部材42は、筒状に形成され当該筒状の内側に管部材41を通した状態でフランジ部411に係止可能に構成されている。
【0037】
これによれば、ユーザは、一組のねじ部352、421が相互に嵌合する方向へ接続部材35と連結機構40とを相対的に回転させることで、ガン本体10を連結機構40の管部材41に装着することができる。また、ユーザは、一組のねじ部352、421の嵌合が解除される方向へ、接続部材35と連結機構40とを相対的に回転させることで、連結機構40からガン本体10を取り外すことができる。この場合、ユーザは、筒状部材42を回転させることで、連結機構40からガン本体10を装着又は取り外すことができる。
【0038】
このように、ユーザは、ドライバーやレンチ等の工具を用いることなく、ガン本体10と連結機構40の筒状部材42とを相対的に回転させるだけで、連結機構40に対するガン本体10の着脱を容易に行うことができる。これにより、連結機構40に対するガン本体10の着脱のために、ドライバーやレンチ等の工具を用いて行う細かい作業が不要となる。その結果、ガン本体10の着脱の際の手間が減って工数も低減され、ひいては塗装作業の効率を向上させることができる。
【0039】
ここで、従来構成では、ガン本体10に内蔵される高電圧発生器20等は、専用のアース線を介してアクチュエータ95等に接地されていた。この高電圧発生器20の接地は、静電塗装装置1を運用するうえでの必須の要件となる。しかしながら、アクチュエータ95がガン本体10を移動させる際には、ガン本体10の移動に伴ってアース線も移動する。したがって、従来構成では、捩れや擦れ等によって専用のアース線が断線する危険性があった。
【0040】
そこで、本実施形態において、接続部材35及び管部材41は、導電性を有する材料で構成されている。また、接続部材35と管部材41とは、相互に接触した状態で接続される。そして、高電圧発生器20は、接続部材35及び管部材41を介してアクチュエータ95に接地される。
【0041】
これによれば、高電圧発生器20を、専用のアース線を設けることなく接地させることができる。したがって、専用のアース線が捩れや擦れ等によって断線する危険性を大幅に低減することができる。この場合、管部材41は、合成樹脂製であるため、アース線に比べて剛性の高い材料で構成される。そのため、専用のアース線を設ける場合に比べて、捩れや擦れ等によって断線する危険性は殆ど無いといえる。
【0042】
更に、この構成によれば、連結機構40にガン本体10を接続することで、高電圧発生器20は、自動的に接続部材35及び管部材41を介してアクチュエータ95に接地される。すなわち、この構成によれば、連結機構40に対するガン本体10の着脱に伴って、アース線を着脱する必要がない。したがって、ユーザがアース線の装着を忘れたまま、静電塗装装置1を動作させてしまうことを防止することができる。その結果、より安全に静電塗装装置1を運用することができる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図5及び図6を参照して説明する。
第2実施形態において、ガン本体10は、第1実施形態のレシプロケータ95に換えて、多軸ロボット96に取り付けられている。ロボット96は、ガン本体10を移動させるためのアクチュエータを構成する。この場合、静電塗装装置1は、後ろカバー50を備えていない。また、この場合、連結機構40は、管部材41及び筒状部材42に換えて、ブラケット43を有している。ブラケット43は、ロボット96のアーム先端部に取り付けられる。なお、本実施形態において、ガン本体10の構成は、上記第1実施形態のものと同一である。
【0044】
ブラケット43は、ガン本体10とロボット96の先端部との間に設けられており、ロボット96の先端部に対してガン本体10を着脱可能に連結するためのものである。ブラケット43は、管部材41と同様に、導電性樹脂や金属等の導電性を有する材料によって構成されている。ブラケット43は、図6に示すように、全体として断面が略U字のブロック状に形成されている。ブラケット43は、第1穴部431、第2穴部432、ザグリ部433、及び雌ねじ部434を有している。
【0045】
第1穴部431及び第2穴部432は、ブラケット43を例えば円形に貫いて構成されている。この場合、第2穴部432の内径は、突出部351の外径よりも小さい。したがって、突出部351の後ろ側の端面は、第2穴部432の周囲に係止されて、突出部351が第2穴部432から飛び出ることが防止される。
【0046】
ザグリ部433は、ブラケット43の前側の端部からブラケット43の中央へ向かって掘るように形成されたいわゆるザグリ穴である。この場合、ザグリ部433の内径は、接続部材35の外径よりも大きい。そして、ブラケット43におけるザグリ部433の内周面と、接続部材35の外周面との間には、シール部材51が設けられている。本実施形態において、ブラケット43は、上記第1実施形態における後ろカバー50を兼用している。
【0047】
雌ねじ部434は、第2穴部432とザグリ部433との間に設けられた雌ねじである。雌ねじ部434は、突出部351の雄ねじ部352と嵌合可能に構成されている。この場合、雄ねじ部352と雌ねじ部434とは、相互に嵌合可能な一組のねじ部を構成する。すなわち、ブラケット43は、一組のねじ部352、434のうちの一方、この場合雌ねじ部434を有している。
【0048】
この構成において、ガン本体10をブラケット43に取り付ける際、ユーザは、まず、ジョイント111及びコネクタ14を第2穴部432に通すようにして、接続部材35全体をザグリ部433の内側に挿入する。そして、ユーザは、ブラケット43に対し、雄ねじ部352と雌ねじ部434とが相互に締め付けられる方向へガン本体10を相対的に回転させる。これにより、ねじ部352、434が相互に締め付けられて、第2穴部432の周囲と突出部351とが密着するように接触した状態で、接続部材35とブラケット43とが固定される。
【0049】
このようにして、ガン本体10がブラケット43つまり連結機構40に装着される。そして、この場合も、上記実施形態と同様に、高電圧発生器20は、アース線26、接続部材35、及び連結機構40つまりブラケット43を介して、アクチュエータ96に接地されている。
【0050】
また、ブラケット43からガン本体10を取り外す場合は、上記手順とは逆の手順を行う。すなわち、ユーザは、まず、ねじ部352、434が相互に緩められる方向へガン本体10を相対的に回転させる。これにより、接続部材35とブラケット43との固定が解除されて、ガン本体10が、ブラケット43つまり連結機構40から取外し可能になる。
【0051】
以上説明した第2実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、第2実施形態によっても、ユーザは、ドライバーやレンチ等の工具を用いることなく、ガン本体10と連結機構40のブラケット43とを相対的に回転させるだけで、連結機構40に対するガン本体10の着脱を容易に行うことができる。
【0052】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図7を参照して説明する。第3実施形態は、第1実施形態の変形例であり、突出部351に設けられた雄ねじ部352と筒状部材42に設けられた雌ねじ部421との関係を逆にした例である。
【0053】
すなわち、本実施形態において、筒状部材42は、雌ねじ部421に換えて、雄ねじ部423を有している。雄ねじ部423は、筒状部材42の内側ではなく外側に設けられた雄ねじである。また、突出部351は、雄ねじ部352に換えて、雌ねじ部353を有している。雌ねじ部353は、突出部351の外側ではなく内側に設けられた雌ねじである。この場合、突出部351の内側には、円形に窪んだ窪み部354が形成されている。そして、雌ねじ部353は、窪み部354を構成する周囲の壁に形成されている。これら雄ねじ部423と雌ねじ部353とは、相互に嵌合可能な一組のねじ部を構成する。
【0054】
この構成によっても、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、ユーザは、筒状部材42を回転させることで、ドライバーやレンチ等の工具を用いることなく管部材41に対するガン本体10の着脱を容易に行うことができる。
【0055】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図8を参照して説明する。第4実施形態は、第2実施形態の変形例であり、突出部351に設けられた雄ねじ部352とブラケット43に設けられた雌ねじ部434との関係を逆にした例である。この場合、接続部材35の構成は、上記第3実施形態のものと同一である。
【0056】
本実施形態において、ブラケット43は、雌ねじ部434に換えて、雄ねじ部435を有している。すなわち、本実施形態において、ブラケット43は、筒部436を有している。筒部436は、ザグリ部433の底部からガン本体10側へ向かって突出するように設けられており、内側に第2穴部432が形成されている。そして、雄ねじ部435は、筒部436の外周面に設けられている。雄ねじ部435は、接続部材35に設けられた雌ねじ部353と嵌合可能に構成されている。この場合、雌ねじ部353と雄ねじ部435とは、相互に嵌合可能な一組のねじ部を構成する。
【0057】
この構成によっても、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、ユーザは、ガン本体10をブラケット43に対して相対的に回転させることで、ドライバーやレンチ等の工具を用いることなくブラケット43に対するガン本体10の着脱を容易に行うことができる。
【0058】
なお、各実施形態は、上記したかつ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0059】
図面中、1は静電塗装装置、10はガン本体、35は接続部材、352は雄ねじ部(ねじ部)、353は雌ねじ部(ねじ部)、40は連結機構、41は管部材、411はフランジ部、42は筒状部材、421は雌ねじ部(ねじ部)、423は雄ねじ部(ねじ部)、43はブラケット、434は雌ねじ部(ねじ部)、435は雄ねじ部(ねじ部)を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8