特許第6803735号(P6803735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803735
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】内面電子線滅菌設備
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20201214BHJP
   B65B 55/08 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   G01N27/00 B
   B65B55/08 B
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-237167(P2016-237167)
(22)【出願日】2016年12月7日
(65)【公開番号】特開2018-91793(P2018-91793A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生杉 浩一
(72)【発明者】
【氏名】福田 直晃
(72)【発明者】
【氏名】上野 絵理
(72)【発明者】
【氏名】井上 典洋
(72)【発明者】
【氏名】小林 慎平
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−038592(JP,A)
【文献】 米国特許第06139796(US,A)
【文献】 特開2014−040274(JP,A)
【文献】 特開2004−041381(JP,A)
【文献】 特開2004−236968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/2276、27/00−27/24
B65B 55/08
A61L 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器またはプリフォームの内面を電子線の照射により滅菌する内面電子線滅菌設備であって、
上記内面が滅菌されながら、上記容器またはプリフォームが搬送される滅菌経路と、
上記滅菌経路に搬送されている容器またはプリフォームの上方に位置しながら、当該滅菌経路の上方を上流側から下流側まで移動して、上記内面に電子線を照射する電子線照射装置とを備え、
上記電子線照射装置が、上記滅菌経路とは異なる経路の上方を移動して、上記滅菌経路の下流側の上方から上流側の上方まで戻るものであり、
上記滅菌経路とは異なる経路の大気の湿度が所定値以上かを判定する湿度判定システムをさらに備え、
上記湿度判定システムが、
上記滅菌経路とは異なる経路に配置されて、上記電子線照射装置から出射された電子線が照射される導電部材と、
上記導電部材に電気的に接続されて当該導電部材の電流値を計測する電流計と、
上記電流計で計測された電流値に基づき上記大気の湿度が所定値以上か否かを判定する判定手段とを具備することを特徴とする内面電子線滅菌設備
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度判定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子線照射装置が用いられる環境では、大気の湿度を調整することが求められる。なぜなら、電子線照射装置からの電子線と大気との化学反応により発生する腐食性のガス(例えば硝酸ガス)は、その環境における大気の湿度によって発生量が変動するからである。このため、電子線照射装置が用いられる環境に、大気の湿度を計測するための湿度計が配置される。
【0003】
電子線照射装置が用いられる環境に湿度計など様々なセンサを配置することは、従来から行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−40274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたセンサは、電子線照射装置が用いられる環境に配置されているので、電子線照射装置からの電子線と大気との化学反応により発生する腐食性のガスに晒されることになる。このようなセンサは、精密機器であるために、腐食性のガスに晒されると当然ながら劣化する。このため、電子線照射装置が用いられる環境に配置されたセンサは、高い頻度でメンテナンス(または交換)が必要になり、長期にわたって使用できない。このようなセンサを長期にわたって使用可能にするには、センサが腐食性のガスに晒されないようにするために、複雑な構成が必要となる。
【0006】
そこで、本発明は、簡素な構成で長期にわたって大気の湿度を判定し得る湿度判定システムを備える内面電子線滅菌設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の発明に係る内面電子線滅菌設備は、容器またはプリフォームの内面を電子線の照射により滅菌する内面電子線滅菌設備であって、
上記内面が滅菌されながら、上記容器またはプリフォームが搬送される滅菌経路と、
上記滅菌経路に搬送されている容器またはプリフォームの上方に位置しながら、当該滅菌経路の上方を上流側から下流側まで移動して、上記内面に電子線を照射する電子線照射装置とを備え、
上記電子線照射装置が、上記滅菌経路とは異なる経路の上方を移動して、上記滅菌経路の下流側の上方から上流側の上方まで戻るものであり、
上記滅菌経路とは異なる経路の大気の湿度が所定値以上かを判定する湿度判定システムをさらに備え、
上記湿度判定システムが、
上記滅菌経路とは異なる経路に配置されて、上記電子線照射装置から出射された電子線が照射される導電部材と、
上記導電部材に電気的に接続されて当該導電部材の電流値を計測する電流計と、
上記電流計で計測された電流値に基づき上記大気の湿度が所定値以上か否かを判定する判定手段とを具備するものである。
【発明の効果】
【0011】
上記湿度判定システムを備える内面電子線滅菌設備によると、電子線照射装置から電子線が出射される大気の湿度を、精密機器のセンサではなく、導電部材、電流計および判定手段で判定するので、簡素な構成で長期にわたって大気の湿度を判定することができる。

【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態1に係る湿度判定システムの概略構成図である。
図2】同湿度判定システムの電子線が出射される部分および導電部材の拡大図であり、一次電子が導電部材に直接的に到達する状態を示す。
図3】同湿度判定システムの電子線が出射される部分および導電部材の拡大図であり、水分子からの二次電子が導電部材に到達する状態を示す。
図4】同湿度判定システムの付加的な構成を示す概略構成図である。
図5】本発明の実施の形態2に係る湿度判定システムの概略構成図である。
図6】本発明の実施の形態2をより具体的に示した実施例に係る湿度判定システムを備える内面電子線滅菌設備の斜視図であり、滅菌経路側からの視点で示す。
図7】同内面電子線滅菌設備の斜視図であり、滅菌経路の反対側からの視点で示す。
図8】本発明の実施の形態3に係る湿度判定システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態1に係る湿度判定システムについて図1図4に基づき説明する。
【0014】
この湿度判定システムは、大気(電子線が照射される空間およびその近傍)の湿度が所定値以上かを判定するものである。このため、図1に示すように、上記湿度判定システム1は、上記大気Aに電子線Eを出射する電子線照射装置2と、この電子線照射装置2から出射された電子線Eが照射される導電部材3とを具備する。また、上記湿度判定システム1は、上記導電部材3に電気的に接続されて当該導電部材3の電流値を計測する電流計4と、上記電流計4で計測された電流値に基づき上記大気Aの湿度が所定値以上か否かを判定する判定手段5とを具備する。上記電流計4は、導電部材3の電流値を適切に計測するようにされており、例えば接地されている。上記判定手段5は、大気Aの湿度が所定値となる場合における上記電流計4で計測される電流値を閾値として予め記録しており、電流計4で計測されている電流値がこの閾値以上の場合に、大気Aの湿度が所定値以上であると判定するものである。
【0015】
ここで、上記大気Aの湿度によって、導電部材3の電流値(つまり電流計4で計測される電流値)が変動する理由について説明する。
【0016】
電子線照射装置2から出射された電子線Eは、図1に示すように、電子雲Eとして広がりながら、導電部材3に照射される。導電部材3に到達する電子雲Eは、電子線Eが出射される部分および導電部材3を拡大した図2に示すように、多数の電子から構成される(図2では代表して3つの電子e1のみを示す)。すなわち、図2に示す電子e1は、電子線照射装置2から出射されて、直接的に一次電子e1として導電部材3に到達するものである。図2に示す電子e1以外で導電部材3に到達する電子は、図3に示すように、電子線照射装置2から出射された電子線Eを構成する多数の電子(図3では代表して2つの電子e1のみを示す)が次々と大気Aの中に存在する水分子wに衝突することで、当該水分子wから発生する二次電子e2である。このため、電子線照射装置2から出射された電子線Eを構成する電子e1の数が一定であれば、大気Aの中に存在する水分子wが多いほど、当該電子e1と当該水分子wとの衝突が増えるので、発生する二次電子e2も多くなる。このような二次電子e2は、図3に示すような導電部材3に向かうものだけに限られない。しかしながら、発生する二次電子e2が多いほど、導電部材3以外に向かう二次電子e2とともに、導電部材3に向かう二次電子e2も多くなる。結果として、大気Aの中に存在する水分子wが多いほど、つまり大気Aの湿度が高いほど、導電部材3に向かう二次電子e2も多くなるので、導電部材3の電流値が高くなる。逆に言えば、大気Aの中に存在する水分子wが少ないほど、つまり大気Aの湿度が低いほど、導電部材3に向かう二次電子e2が少なくなるので、導電部材3の電流値が低くなる。
【0017】
このように、上記湿度判定システム1によると、電子線照射装置2から電子線Eが出射される大気Aの湿度を、精密機器のセンサではなく、導電部材3、電流計4および判定手段5で判定するので、極めて簡素な構成で長期にわたって判定することができる。
【0018】
上記湿度判定システム1として図1に示した構成は、本発明の発明特定事項として最低限のものである。すなわち、上記湿度判定システム1は、図4に示すように、付加的な構成を具備してもよい。当該付加的な構成の一つとして、上記大気Aの組成を定常にする定常手段61〜63がある。この定常手段61〜63は、上記大気Aを囲う筐体61と、この筐体61の内部に組成が調整された気体を供給する給気部62と、筐体61の内部から大気Aを排出する排気部63とを有する。導電部材3の電流値は、大気Aの湿度だけでなく大気Aの組成によっても変動するので、定常手段61〜63により上記大気Aの組成が定常になると、大気Aの湿度を一層正確に反映することになる。また、上記付加的な構成の一つとして、判定手段5で大気Aの湿度が所定値以上と判断された場合に電子線照射装置2および/または定常手段61〜63の出力を制御する制御手段7がある。この制御手段7は、電子線照射装置2および/または定常手段61〜63の出力を制御することにより、大気Aの湿度を所定値の状態で維持し得るものである。上記導電部材3は、例えば導電板3であり、電子線Eが照射される面31を凹凸にしたものであってもよい。導電板3において電子線Eが照射される面31では、電子が到達することにより、二次電子が発生する。ここで、当該面31が凹凸であることにより、当該面31の一部分から発生した二次電子が当該面31の他の部分で捕らわれやすくなるので、導電部材3の電流値が高くなる。すなわち、電子線Eが照射される面を平坦にした導電板よりも、当該面31を凹凸にした導電板3の方が、電流計4で計測される電流値が高くなるので、大気Aの湿度によって変動する導電部材3の電流値が鋭敏になる。
【0019】
このように、付加的な構成として上記定常手段61〜63を具備した上記湿度判定システム1によると、大気Aの湿度を簡素な構成で長期にわたって判定できるとともに、導電部材3の電流値が大気Aの湿度を一層正確に反映するので、当該判定の精度を向上させることができる。
【0020】
また、付加的な構成として上記制御手段7を具備した上記湿度判定システム1によると、大気Aの湿度を簡素な構成で長期にわたって判定できるとともに、大気Aの湿度が所定値の状態で維持され得るので、上記湿度判定システム1を電子線滅菌設備などの他の用途に適用することができる。
【0021】
加えて、導電部材3として電子線Eが照射される面31を凹凸にした導電板3を採用した上記湿度判定システム1によると、大気Aの湿度を簡素な構成で長期にわたって判定できるとともに、大気Aの湿度によって変動する導電部材3の電流値が鋭敏になるので、当該判定の精度を向上させることができる。
【0022】
[実験例]
上記実施の形態1に係る湿度判定システム1で、上記判定の精度が向上する条件を知るために、以下の実験を行った。
【0023】
本実験例に係る湿度判定システム1は、図1に示した構成の他に、図4に示す付加的な構成として定常手段61〜63を具備するものとした。また、この湿度判定システム1は、導電部材3として電子線Eが照射される面31を平坦にした導電板3を採用し、電子線照射装置2としてノズル式の(ノズルの先端から電子線Eを出射するタイプ)のものを採用した。
【0024】
上記電子線照射装置2から電子線Eを出射させるための電力を、125kVの電圧および2.0mAの電流とした。上記導電板3を、20mm×300mmの短冊状で厚さ1mmのアルミニウム板とした。上記電子線Eが照射される前の筐体61の内部における大気Aの温度および湿度を、25℃および70%とした。
【0025】
このような環境において、電子線Eが照射されている大気Aの湿度が30%、50%および80%のそれぞれの場合における、ノズル23の先端と導電板3との距離が20mm、80mmおよび150mmのそれぞれの場合において、導電板3の電流値を電流計4で計測した。このように計測された電流値は、下の表1の通りである。
【0026】
【表1】
【0027】
上の表1から明らかなとおり、本実験例では、ノズルの先端と導電板3との距離がいずれの場合も、大気Aの湿度が高いほど、導電板3の電流値が高くなることを示した。また、ノズルの先端と導電板3との距離が80mmの場合、大気Aの湿度によって変動する導電板3の電流値が最も鋭敏になった。これは、ノズルの先端と導電板3との距離が、20mm以下の場合、20mm超で150mm未満の場合、150mm以上の場合に分けられるとすれば、20mm超で150mm未満の場合で、大気Aの湿度によって変動する導電板3の電流値が最も鋭敏になったと言える。したがって、本実験例により、ノズルの先端と導電板3との距離が20mm超で150mm未満の場合(特に80mmの場合)で、上記判定の精度を一層向上させることができたと言える。
[実施の形態2]
以下、本発明の実施の形態2に係る湿度判定システムについて図5に基づき説明する。
【0028】
本発明の実施の形態2に係る湿度判定システムは、上記実施の形態1に係る湿度判定システム1を複数備えて、これらうちの一またはいくつかについての不具合を検出し得るように構成したものである。以下、上記実施の形態1と異なる部分に着目して説明するとともに、上記実施の形態1と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0029】
図5に示すように、本発明の実施の形態2に係る湿度判定システム10は、図1で示した上記実施の形態1に係る湿度判定システム1を複数(図5では一例として3つ)備え、それぞれの判定手段5に接続される不具合検出手段8を具備するものである。この不具合検出手段8は、複数(図5では一例として3つ)の判定手段5のうち、少数(一定数)の判定手段5のみで大気Aの湿度が所定範囲外と判定した場合に、不具合が発生したとみなす(つまり不具合を検出する)ものである。ここで、上記一定数とは、半数未満であればよい。上記一定数は、少ない数であるほど(数が1つに近いほど)不具合の検出漏れが少なくなる一方、多い数であるほど(数が半数に近いほど)大気Aの中の湿度にムラが発生した場合などによる不具合の誤検出が少なくなる。逆に言えば、上記一定数は、少ない数であるほど(数が1つに近いほど)大気Aの中の湿度にムラが発生した場合などによる不具合の誤検出が多くなり、多い数であるほど(数が半数に近いほど)不具合の検出漏れが多くなる。なお、上記一定数は、上記所定範囲に応じて変化させてもよい。
【0030】
ここで、不具合検出手段8は、上記所定範囲により不具合を検出するものに限られず、判定手段5による電子線照射装置2ごとの判定に基づき不具合を検出するものであればよい。この例としては、電子線照射装置2ごとの判定手段5での電流値(電流計4から入力されたもの)の時間変化量に基づき不具合を検出する不具合検出手段8が挙げられる。この不具合検出手段8は、ある時点において、時間変化量が最も増加した電子線照射装置2と、時間変化量が最も減少した電子線照射装置2との、時間変化量の差が基準値を超えた場合に、不具合を検出する。他の例としては、電子線照射装置2ごとの判定手段5での電流値(電流計4から入力されたもの)と、これら電流値の平均値との差に基づき不具合を検出する不具合検出手段8が挙げられる。この不具合検出手段8は、ある時点において、平均値から最も外れた電流値と、当該平均値との差が基準値を超えた場合に不具合を検出する。勿論、不具合検出手段8が不具合を検出する条件として、基準値を超えるものが1つの場合に限られず、上記一定数の場合であってもよい。
【0031】
このように、本発明の実施の形態2に係る湿度判定システム10によると、上記実施の形態1に係る湿度判定システム1が奏する効果に加えて、不具合検出手段8により、不具合を検出することができる。
【0032】
また、不具合検出手段8の設定(上記一定数)を切り換えることにより、不具合の検出漏れの防止/不具合の誤検出の防止、のいずれを重視するかにつき容易に切り換えることができる。
【実施例】
【0033】
以下、上記実施の形態2をより具体的に示した実施例に係る湿度判定システム10について図6および図7に基づき説明する。
【0034】
本実施例に係る湿度判定システム10は、容器など(開口部を有する滅菌対象物)の内面を電子線Eの照射により滅菌する内面電子線滅菌設備に適用されたものである。ここで、容器などとは、開口部を有する滅菌対象物を意味するので、容器以外にもプリフォームを含む。しかしながら、以下では説明を簡単にするために、容器などの一例として、容器について説明する。
【0035】
図6に示すように、本実施例に係る湿度判定システム10が適用された内面電子線滅菌設備9、すなわち、当該湿度判定システム10を備える内面電子線滅菌設備9は、さらに、多数の容器Vがその内面を滅菌されながら半円経路に搬送される滅菌経路92と、この滅菌経路92に容器Vを搬入する搬入経路91と、当該滅菌経路92から容器Vを搬出する搬出経路93とを備える。これら搬入経路91、滅菌経路92および搬出経路93における容器Vの搬送は、内面電子線滅菌設備9が備える図示しない搬送装置により行われる。図6は滅菌経路92が手前側となる視点で示した斜視図であり、図7は滅菌経路92が奥側となる視点で示した斜視図である。なお、図6および図7において、滅菌経路92で照射されている電子線Eの図示は省略する。また、上記内面電子線滅菌設備9は、図6および図7に示すように、上記滅菌経路92の上方に位置して当該滅菌経路92と同心のターンテーブル94を備える。
【0036】
上記ターンテーブル94は、上記滅菌経路92の直上方に等間隔で多数のノズル式の電子線照射装置2を配置するとともに、滅菌経路92に搬送される容器Vの直上方に一定の電子線照射装置2が位置するように回転するものである。上記ノズル式の電子線照射装置2は、内部が真空雰囲気の真空チャンバー21と、この真空チャンバー21を上記ターンテーブル94に固定する固定具22と、上記真空チャンバー21から下方に延びるノズル23とを有する。上記真空チャンバー21は、図示しないが、内部に電子線発生源が配置されることにより、多数の電子を発生させて下方に加速するものである。上記ノズル23は、上記真空チャンバー21に連通して内部が真空雰囲気であり、上記真空チャンバー21で加速された多数の電子を電子線Eとして下端から出射するものである。したがって、容器Vの内面を滅菌するために、上記ノズル23は、容器Vの内部に開口部mから挿入されながら当該容器Vの内面に電子線Eを照射させる必要がある。このため、容器Vを上記滅菌経路92から上昇させることにより、上記ノズル23を容器Vの内部に開口部mから挿入する昇降装置も、図示しないが上記内面電子線滅菌設備9に備えられる。
【0037】
上記内面電子線滅菌設備9が備える湿度判定システム10は、図7に示すように、電子線照射装置2の下方における滅菌経路92以外の箇所に配置された複数の導電板3を具備する。各電子線照射装置2におけるノズル23の下端と導電板3との距離は、大気Aの湿度によって変動する導電板3の電流値が鋭敏になるように予め調整される。また、上記湿度判定システム10は、判定部5(判定手段5の一例である)および不具合検出部8(不具合検出手段8の一例である)の他に、当該不具合検出部8に接続された制御部7(制御手段7の一例である)を具備する。この制御部7は、不具合検出部8が不具合を検出した場合に、内面電子線滅菌設備9が備える機器を停止または減速させるなど制御するものである。なお、上記判定部5、不具合検出部8および制御部7は、例えばパーソナルコンピュータまたは制御盤など、一つの制御装置70に格納されてもよい。さらに、上記湿度判定システム10は、定常手段として、図6および図7に示すように、内部を内面滅菌室とする筐体61と、図示しないが給気部および排気部とを有する。
【0038】
以下、上記湿度判定システム10を備える内面電子線滅菌設備9の動作および作用について説明する。
【0039】
図6に示すように、開口部mを上にした多数の容器Vが、搬送装置により、電子線照射装置2の下方で滅菌経路92に連続して搬送される。個々の容器Vは、昇降装置により上昇することで、その内部にノズル23が開口部mから挿入される。ノズル23の下端からは電子線Eが出射されているので、容器Vの内部で出射された電子線Eにより当該容器Vの内面が滅菌される。
【0040】
一方で、図7に示すように、滅菌経路92以外の箇所の直上方に位置する電子線照射装置2のノズル23からも、電子線Eが出射される。これら電子線Eは、無駄に捨てられることなく導電板3に照射されて、大気Aの湿度を判定するのに用いられる。判定部5により大気Aの湿度が所定値以上であるかが判定されるとともに、不具合検出部8により不具合が検出され得る。そして、不具合検出部8により不具合が検出された場合は、制御部7により内面電子線滅菌設備9の機器が制御される。
【0041】
このように、本実施例に係る湿度判定システム10を備える内面電子線滅菌設備9によると、上記実施の形態2に係る湿度判定システム10が奏する効果に加えて、容器Vなどの内面を滅菌するのに用いられていない電子線Eを、無駄に捨てることなく湿度の判定に用いるので、内面の滅菌および湿度の判定を効率的に行うことができる。
[実施の形態3]
以下、本発明の実施の形態3に係る湿度判定システムについて図8に基づき説明する。
【0042】
本発明の実施の形態3に係る湿度判定システムは、複数の電子線照射装置2を具備して、これらのうちの一またはいくつかについての不具合を検出し得るように構成したものであるが、上記実施の形態2に係る湿度判定システム10と異なり、導電部材3、電流計4および判定手段5を、上記複数の電子線照射装置2よりも数を少なくしたものである。以下、上記実施の形態1および2と異なる部分に着目して説明するとともに、上記実施の形態1および2と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。なお、導電部材3、電流計4および判定手段5は、上述した通り上記複数の電子線照射装置2の数よりも少なければよいが、説明を簡単にするために、以下では1つずつとする。
【0043】
図8に示すように、本発明の実施の形態3に係る湿度判定システム100は、上記実施の形態2に係る湿度判定システム10と同様に電子線照射装置2a〜2cを複数(図8では一例として3つ)と、それぞれ1つずつの導電部材3、電流計4、判定手段5および不具合検出手段8とを備える。これら複数の電子線照射装置2a〜2cは、1つの導電部材3に電子線Ea〜Ecを順次照射していくように、例えばターンテーブル94に配置される。このため、導電部材3には、所定時間において、全ての電子線照射装置2a〜2cからの電子線Ea〜Ecが照射されることになる。したがって、本発明の実施の形態3に係る湿度判定システム100は、判定手段5が1つであっても、所定時間において、この判定手段5で上記複数(電子線照射装置2a〜2cと同数)の判定がされ、上記不具合検出手段8は上記実施の形態2に係る不具合検出手段8と同様に複数の判定に基づいて不具合を検出することになる。
【0044】
このように、本発明の実施の形態3に係る湿度判定システム100によると、上記実施の形態2に係る湿度判定システム10が奏する効果に加えて、当該湿度判定システム10よりも簡素な構成にすることができる。
【0045】
ところで、上記実施の形態1〜3および実施例では、導電部材3として導電板3について説明したが、ファラデーカップであってもよい。導電部材3がファラデーカップであることにより、電流計4で計測される電流値が高くなるので、大気Aの湿度によって変動するファラデーカップの電流値が鋭敏になるので、当該判定の精度を一層向上させることができる。
【0046】
また、上記制御手段7(または制御部7)は、判定手段5(または判定部5)による判断に基づき制御するとして説明したが、電流計4で計測された電流値に基づき制御するものであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
A 大気
E 電子線
e1 一次電子
e2 二次電子
w 水分子
1 湿度判定システム(実施の形態1)
2 電子線照射装置
3 導電部材
4 電流計
5 判定手段
7 制御手段
8 不具合検出手段
10 湿度判定システム(実施の形態2)
100 湿度判定システム(実施の形態3)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8