特許第6803739号(P6803739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6803739-タッチペン 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803739
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】タッチペン
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20201214BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   G06F3/03 400F
   G06F3/044 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-242912(P2016-242912)
(22)【出願日】2016年12月15日
(65)【公開番号】特開2018-97703(P2018-97703A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 宏和
(72)【発明者】
【氏名】竹内 栄史
【審査官】 滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第203858594(CN,U)
【文献】 中国実用新案第202600635(CN,U)
【文献】 特開平10−171580(JP,A)
【文献】 特開2013−077105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端が形成されたペン先軸部と、
前記ペン先軸部が進退可能に通された開口部を有するペン本体と、
前記ペン本体内に設けられ、前記ペン先軸部を前記入力端の方向へ付勢する弾性部材と、
を備え、
前記ペン先軸部、前記ペン本体、及び前記弾性部材は、導電性を有し、
前記入力端と前記ペン本体とが前記弾性部材を介して互いに導通しており、
前記ペン本体は、前記開口部が形成された先端部と、把持部と、を含み、前記先端部と前記把持部とは分離可能に係合されており、
前記弾性部材は、前記先端部及び前記把持部の係合状態において、前記先端部と前記把持部とによって挟持されることにより前記ペン本体に固定されており、
前記先端部及び前記把持部の少なくとも一方が前記弾性部材を介して前記入力端と導通しているタッチペン。
【請求項2】
入力端が形成されたペン先軸部と、
前記ペン先軸部が進退可能に通された開口部を有するペン本体と、
前記ペン本体内に設けられ、前記ペン先軸部を前記入力端の方向へ付勢する弾性部材と、
前記ペン本体内に設けられ、静電容量入力装置との間の静電容量を増大させる導電体と、
を備え、
前記ペン先軸部及び前記弾性部材は、導電性を有し、
前記入力端と前記導電体とが前記弾性部材を介して導通しているタッチペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に静電容量入力装置に使用されるタッチペンに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル等の静電容量入力装置への入力に使用されるタッチペンは、入力装置の画面にペン先を近づけたとき、入力装置側の電極との間に静電容量が生じることで、ペン先の位置が検出される。そして、ペン先の位置検出を可能とするための十分な静電容量を得るためには、ユーザの手指とペン先とが導通していることが重要である。
【0003】
従来、ペン先とユーザの手指との導通状態を向上させたタッチペンがあった(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載されているタッチペンは、導電性のペン本体(軸体)と、導電性のペン先軸部(入力突端)とからなり、ペン本体とペン先軸部とが互いに導通する様に構成されている。これにより、ペン本体の把持部をユーザが把持したとき、ユーザの手指からペン先軸部の入力端(ペン先)までの導通が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−252525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のタッチペンでは、ペン先とペン本体との導通を確保するために、ペン先軸部がペン本体に固定されている。このため、タッチペンの使用中、入力端(ペン先)はペン本体に対して動かず、従って、ユーザの筆圧が弱い場合や、ユーザの手指にブレが生じた場合、パネルから入力端が僅かに浮き上がる。ペン先から浮き上がった箇所では静電容量が小さくなり、パネルへの入力中の線や文字が途切れる(いわゆる線飛び)といった問題が生じる虞があった。
【0006】
本発明の目的は、使用中において静電容量入力装置と入力端との間に十分な静電容量が生じている状態を維持することが可能なタッチペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るタッチペンは、ペン先軸部と、ペン本体と、弾性部材と、を備える。ペン先軸部は入力端が形成されており、このペン先軸部が進退可能に通された開口部を有するペン本体内に設けられる。弾性部材は、ペン本体内に設けられ、ペン先軸部を入力端の方向へ付勢する。ペン先軸部、ペン本体、及び弾性部材は、導電性を有しており、入力端とペン本体とが弾性部材を介して互いに導通している。
【0008】
上記タッチペンによれば、ペン先軸部が弾性部材に付勢されているため、タッチペンの使用中において、ユーザの筆圧の強弱によらず、また、ユーザの手指にブレが生じても、弾性部材によって付勢されたペン先軸部の進退動作により、静電容量入力装置の画面に対して適度な圧力で接触させることができる。また、入力端とペン本体とが弾性部材を介して互いに導通しているため、ペン先軸部が進退動作した場合でも、その導通は維持される。
【0009】
上記タッチペンにおいて、ペン本体は、開口部が形成された先端部と、把持部と、を含み、先端部と把持部とは分離可能に係合されており、弾性部材は、先端部及び把持部の係合状態において、先端部と把持部とによって挟持されることによりペン本体に固定されており、先端部及び把持部の少なくとも一方が弾性部材を介して入力端と導通していることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、先端部と把持部との間に弾性部材を挟むだけでよいので、ペン本体への弾性部材の固定が簡略化される。
【0011】
本発明に係るタッチペンは、ペン先軸部と、ペン本体と、弾性部材と、導電体と、を備える。ペン先軸部は、入力端が形成されており、このペン先軸部が進退可能に通された開口部を有するペン本体内に設けられる。弾性部材は、ペン本体内に設けられ、ペン先軸部を入力端の方向へ付勢する。導電体は、ペン本体内に設けられ、静電容量入力装置との間の静電容量を増大させる。ペン先軸部及び弾性部材は、導電性を有する。入力端と導電体とが弾性部材を介して互いに導通している。
【0012】
上記タッチペンによれば、ペン先軸部が弾性部材に付勢されているため、使用中におけるユーザの筆圧の強弱によらず、また、使用中にユーザの手指にブレが生じても、付勢されているペン先軸部の進退動作により、静電容量入力装置の画面に対して適度な圧力で接触させることができる。また、入力端と導電体とが弾性部材を介して互いに導通しているため、ペン先軸部が進退動作した場合でも、その導通は維持される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るタッチペンによれば、使用中において、静電容量入力装置と入力端との間に十分な静電容量が生じた状態を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係るタッチペンを模式的に示した破断面図である。
図2】第2実施形態に係るタッチペンを模式的に示した破断面図である。
図3】第3実施形態に係るタッチペンを模式的に示した破断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るタッチペンの実施形態について具体的に説明する。
【0016】
[第1実施形態]
本実施形態のタッチペン100は、携帯式タブレットやスマートフォンに採用される静電容量入力型座標入力装置等の画面(いわゆる、「タッチパネル」と称されるものであり、以降、本明細書では単に、「パネル」と称する。)に線や文字等を入力する際に使用される。図1に示される様に、タッチペン100は、ペン先軸部10、ペン本体20、及び弾性部材30を備える。尚、図1では、タッチペン100の特徴構成のみを図示し、他の構成に関しては省略する。他の図においても同様である。
【0017】
ペン先軸部10は、線や文字等をパネルに入力するとき、パネルに接触または近接させる入力端11が形成されている。具体的には、ペン先軸部10の長手方向においてペン先となる第1端部側に形成されている。ペン先軸部の長手方向の長さは、後述する進退動作時におけるペン先軸部10の移動量や、弾性部材30との位置関係に応じて設定される。
【0018】
ペン先軸部10は、導電性を有するものである。ペン先軸部10には、例えば、導電性樹脂から形成されるものや、樹脂に金属メッキされたものが好適である。
【0019】
ペン本体20は、入力時にユーザに把持される部分である。ペン本体20は、その中心線(ペン本体20の長手方向に平行な中心線)に沿う仮想平面で二分割されたパーツ20a及びパーツ20bから構成されている。パーツ20a及びパーツ20bの夫々の一端部には切り欠き部が形成されており、パーツ20a及びパーツ20bを連結すると、ペン本体20の先端部201に開口部202が形成される。ペン先軸部10の入力端11は、この開口部202からペン本体20の外側に突出する様に設けられる。
【0020】
ペン本体20は、導電性を有するものである。ペン本体20には、例えば、導電性樹脂や金属から形成されたものや、樹脂に金属メッキや導電物を塗装したものが用いられる。また、ペン本体20は、ある程度の強度(例えば、ユーザがタッチペン100を床に落としても容易に壊れない程度の強度。)を備えていることが好ましい。
【0021】
弾性部材30は、ペン本体20内において、先端部201に近い位置に設けられる。弾性部材30は、ペン先軸部10の第2端部12(入力端11とは反対側の端部)と接続されており、ペン先軸部10を入力端11の方向(ペン先の方向)へ付勢する。これにより、ペン先軸部10は、開口部202から進退動作が可能となる。
【0022】
弾性部材30は、入力端11と平行な面301に孔302が形成されている。孔302にペン先軸部10の第2端部12が通されて、弾性部材30がペン先軸部10に接続されている。
【0023】
弾性部材30は、長手方向における外縁部303及び外縁部304が、ペン本体20内に設けられている保持部21及び保持部22に取り付けられている。或いは、保持部21及び保持部22を設けず、弾性部材30の外縁部303及び外縁部304をペン本体20の内壁に、接着剤にて直接取り付けても構わない。
【0024】
弾性部材30には、例えば、板バネやコイルバネが用いられる。このとき、低負荷のものが採用される。尚、弾性部材30には、これらに限定されない種々の弾性部材を用いることができる。また、弾性部材30は、導電性を有するものである。弾性部材30に対する導電処理としては、例えば、弾性部材30を導電性ポリマーや金属で被履すること等が挙げられる。
【0025】
上記の様にして構成されたタッチペン100は、パネルに線や文字を入力中、ユーザの筆圧の強弱によらず、また、ユーザの手指にブレが生じても、弾性部材30に付勢されたペン先軸部10の進退動作により、入力端11をパネルに対して適度な圧力で接触させることができる。また、入力端11とペン本体20とが弾性部材30を介して互いに導通しているため、ペン先軸部10が進退動作した場合でも、その導通は維持される。その結果、パネルに対する操作性が向上する。
【0026】
[第2実施形態]
図2に示される様に、本発明の第2実施形態に係るタッチペン101は、ペン本体20が先端部203(第1実施形態に係る先端部201と区別するため、第2実施形態においては「先端部203」とする。)、及びユーザが把持する把持部204から構成されている。先端部203には、ペン先軸部10の入力端11を進退可能に通す開口部202が形成されている。
【0027】
先端部203及び把持部204の係合部分には、何れか一方に雄ネジ、もう一方に雌ネジが設けられており、雌ネジに雄ネジを嵌め込むことにより、先端部203及び把持部204は係合する。このとき、弾性部材30の外縁部303及び外縁部304の夫々が、先端部203及び把持部204の間に挟持される。これにより、弾性部材30は、ペン本体20に固定される。
【0028】
先端部203及び把持部204に挟持されることにより、ペン本体20と係合された弾性部材30は、第1実施形態に係るタッチペン100の弾性部材30と同様に、ペン先軸部10と接続する。これにより、ペン先軸部10は、弾性部材30に入力端11の方向へ付勢されることにより、開口部202から進退可能となる。
【0029】
また、ペン本体20は、先端部203及び把持部204の少なくとも一方が導電性を有する。ユーザは、ペン本体20の導電性を有する方を把持すれば、その部材(先端部203または把持部204)、弾性部材30、及びペン先軸部10の入力端11は導通する。
【0030】
上記の様にして構成されたタッチペン101は、パネルに線や文字を入力中、ユーザの筆圧の強弱によらず、また、ユーザの手指にブレが生じても、弾性部材30に付勢されたペン先軸部10の進退動作により、入力端11をパネルに対して適度な圧力で接触させることができる。また、入力端11とペン本体20とが弾性部材30を介して互いに導通しているため、ペン先軸部10が進退動作した場合でも、その導通は維持される。その結果、パネルに対する操作性が向上する。
【0031】
また、第2実施形態に係るタッチペン101の構成は、ペン本体20の形成時に、弾性部材30を挟持して、弾性部材30をペン本体20に固定する。このため、タッチペン101の製造が簡単となる。このため、第1施形態に係るタッチペン100の様に、別途部材(保持部21、保持部22や接着剤)を必要としないため、コスト削減に寄与する。
【0032】
[第3実施形態]
図3に示される様に、本発明の第3実施形態に係るタッチペン102は、ペン本体20内に導電体40が設けられている。
【0033】
導電体40は、静電容量入力装置との間の静電容量を増大させるものである。導電体40は、ペン本体20内に設けられ、弾性部材30と接続される。このとき、弾性部材30と導電体40との導通を妨げない様に接続する。図3では、弾性部材30と導電体40とは、板バネとコイルバネとで接続されているが、これに限られない。
【0034】
ペン本体20は、第1実施形態に係るタッチペン100と同様に、2つのパーツ20a及びパーツ20bから構成してもよく、また、第2実施形態に係るタッチペン101と同様に、先端部203及び把持部204から構成してもよい。
【0035】
導電体40を備えたタッチペン102は、パネルに線や文字を入力中、ユーザの筆圧の強弱によらず、また、ユーザの手指にブレが生じても、弾性部材30に付勢されたペン先軸部10の進退動作により、入力端11をパネルに対して適度な圧力で接触させることができる。また、入力端11と導電体40とが弾性部材30を介して互いに導通しているため、ペン先軸部10が進退動作した場合でも、その導通は維持される。その結果、パネルに対する操作性が向上する。
【0036】
[その他の実施形態]
近年、静電容量入力装置(パネル)とコンピュータとを接続し、パネルにタッチすると、コンピュータが起動する様に構成されているタッチペンが普及している。この様なタッチペンは、タッチペンの内部に、パネルとコンピュータとの間でデータの送受信を行うための通信モジュールを備えていることが一般的である。
【0037】
本実施形態においても、この様な通信モジュールをペン本体20内に備えることができる。第1〜第3実施形態に係るタッチペン100〜102において、ペン先軸部10の第2端部12に検知センサを設け、通信モジュールを検知センサに接続する。ペン先軸部10が弾性部材30に抗して後退したとき、センサが押圧される。そして、通信モジュールに検知したことを送信し、通信モジュールを介したデータの送受信が可能となる。
【0038】
この様に構成すれば、例えば、タッチペンの入力端がパネルに接触すると、パネルに接続されているコンピュータをONすることができる。また、所定時間、タッチペンの入力端がパネルに非接触状態である場合、コンピュータをOFFする様に設定することが可能となる。
【0039】
また、ペン先軸部10が進退可能に動作することを利用して、ユーザの筆圧の強弱によって、パネルに入力される線の太さを自動的に変更可能な様に構成することもできる。例えば、第1〜第3実施形態に係るタッチペン100〜102において、ペン先軸部10の第2端部12の後方に、感圧センサを設ける。感圧センサは、ペン先軸部10が第2端部12の方向へ移動したとき、ペン先軸部10に押圧される位置に配する。ユーザがパネルに線を描くとき、ユーザの筆圧の強弱により、感圧センサに対するペン先軸部10の押圧力は異なる。感圧センサにこの押圧力を検知させて、押圧力の強弱に応じて線の太さを決定する。
【0040】
上記の様に、通信モジュールや感圧センサを第1〜第3実施形態に係るタッチペン100〜102に備えることにより、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0041】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
10…ペン先時部
11…入力端
20…ペン本体
202…開口部
30…弾性部材
40…導電体
100〜102…タッチペン
図1
図2
図3