【課題を解決するための手段】
【0008】
この欠点を克服するため、ライナーの機械特性(抵抗、可とう性、および重量)を保持しつつ、本発明は以下を含む水素貯蔵のための樹脂ライナーを提案する。
・第1のバリア層、
・水素と直接接触する内側層である第2のバリア層、
・第1のバリア層と第2のバリア層との間に配置された少なくとも1つの中間層、
ここで、第2のバリア層が前記少なくとも1つの中間層内部の水素の移動を遅くするように、第2のバリア層が前記少なくとも1つの中間層と比較して低い水素透過性を有する。
【0009】
その結果、制御された拡散性を有する多層構造ライナーが提案される。より詳細には、第2のバリア層(すなわち、内側層)によって中間層が保護される多層構造ライナーが提案される。中間層は、第1のバリア層と一側面で接触し、第2のバリア層と他の側面で接触する。本発明によれば、内側層(ずなわち、水素と直接接触する層)は、多層構造体の内部の水素の移動を遅くする(すなわち拡散速度を小さくする)ように、中間層と比較して(例えば高結晶性の結果として)水素透過率が低い。言い換えれば、内側層(すなわち第2のバリア層)は、拡散遅延層として働く。そのような拡散遅延層を用いることにより、ブリスタリングに起因するクラック形成作用に対するライナーの保護を可能にする。
【0010】
媒体を通る化学種の質量移動の背後にある駆動力は、この媒体中の化学種の濃度勾配によって生じ、物質フラックスをもたらす。このフラックスは、濃度勾配と関連付けられ、質量拡散率は、フラックスと勾配との間の関係において比例係数として定義される。拡散率が高くなると、媒体内部への化学種の動きは速くなる。
【0011】
特定の実施形態において、単一の層(すなわち中間層)は、第1のバリア層と第2のバリア層との間に配置される。この実施形態において、単一の層は、例えば熱可塑性樹脂系の層であることができる。
【0012】
他の特定の実施形態において、少なくとも1つの熱可塑性樹脂系層および少なくとも1つの接着層は、第1のバリア層と第2のバリア層との間に配置される。この実施形態において、第1のバリア層と第2のバリア層との間に挟まれる熱可塑性樹脂系層および接着性層の構造体は、中間層を形成する。
【0013】
用語「熱可塑性」は、任意の熱可塑性ポリマーを意味すると理解され、これは熱可塑性エラストマーおよびそれらのブレンドも含む。用語「ポリマー」は、ホモポリマーおよびコポリマー(特に二元または三元コポリマー)の双方、例えばランダムコポリマー、線形ブロックコポリマー、他のブロックコポリマー、およびグラフトコポリマー、などを意味すると理解される。
【0014】
熱可塑性樹脂系層の樹脂は、一般的にポリオレフィンである。好ましくは、ポリオレフィンはポリエチレンである。高密度ポリエチレン(HDPE)で良好な結果を得ることができる。
【0015】
多層構造体は、第1のバリア層を含む。好ましくは、第1のバリア層は、エチレン含量が低いエチレン/ビニルアルコールコポリマー(EVOH)で作られる。
【0016】
好ましくは、内側層(すなわち第2のバリア層)は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルジクロライド(PVDC)、エチレン/ビニルアルコールコポリマー(EVOH)、芳香族ナイロン、脂肪族ナイロン、非晶質ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、LCP、およびアルギン酸プロピレングリコール(PGA)から選択される材料で作られる。内側層としてEVOH材料を使用する場合、エチレン/ビニルコポリマーのエチレン含量は、バリア層として使用されるEVOH材料中のエチレン含量よりも高くてよい。
【0017】
水素透過率が非常に低いEVOH材料の脆性に起因して、内側バリア層として、水素と接触する表面にそのような材料を配置することはできない。そのようなEVOHグレードは、構造体のより中央に位置付けられる(すなわち第1のバリア層)。それとは逆に、第1のバリア層と比較して高い水素透過性を有するEVOH材料は、内側バリア層として、表面に配置される。これにより、中間層におけるブリスタリングの影響を防ぐ。第1のバリア層の水素透過性は、内側層の水素透過性と比較して少なくとも20%低い。
【0018】
他の特定の実施形態において、内側層は、PVOHコーティングの形態であってよい。例えば、このPVOHコーティングは、溶射によって得ることができる。
【0019】
他の特定の実施形態において、内側層は、HDPE系層上に例えばフッ素化またはスルホン化などの表面処理を施すことによって得ることができる。
【0020】
さらに他の特定の実施形態において、内側層は、典型的には金属で作られる(複合材料圧力容器の)ラインボスとの結合を増すために、グラフト化無水マレイン酸であってよい。
【0021】
特に有利な実施形態において、内側層は、例えば繊維状フィラー(炭素繊維、天然繊維、ガラス繊維…)、ガラス(中空)球、2Dフィラー(モンモリロナイト、バーミキュライト、タルクなどの粘土、グラフェンおよび膨張黒鉛のような炭素化合物)、またはガラス(一般的に中空)球および粉末(カーボンブラック、硫酸バリウム、破砕粘土、およびタルク)などのフィラーをさらに含むことができる。内側層(例えば、PVDF系層)中へのそのようなフィラーの添加は、迷路効果を与え、その結果水素拡散率を減少させる。
【0022】
或いは、その結晶性を高めるために、1つまたは複数の極性基を、内側層に追加することができ、その結果水素拡散速度が低下する。
【0023】
ライナーの機械特性(抵抗、可とう性、および重量)を可能な限り保持するために、内側層は好ましくは出来る限り薄い。
【0024】
特定の実施形態において、多層構造ライナーの厚みは、0.5mmから5mmの間、好ましくは0.75mmから4mmの間であり、およびより好ましくは1mm以上である。その結果、そのような厚みで、多層構造ライナーは、重量が低減され、最適化された内部容積を有して、車両構造内部の構造の容易な統合を可能にする。
【0025】
本発明のさらなる態様は、以下の段階を含む樹脂ライナーの第1の製造方法を提供する。
・第1のバリア層、少なくとも1つの中間層、および前記少なくとも1つの中間層と比較して水素透過性が低い内側層(すなわち第2のバリア層)を有する多層パリソンチューブを押し出す段階、
・中空キャビティ成形型内部にパリソンチューブを固定する段階、
・キャビティに対してパリソンに空気を吹き込む段階、および
・成形された樹脂ライナーを成形型から取り外す段階。
【0026】
本発明のさらなる他の態様は、以下の段階を含む樹脂ライナーの第2の製造方法を提供する。
・第1のバリア層、および少なくとも1つの中間層を有する多層パリソンチューブを押し出す段階、
・中空キャビティ成形型内部にパリソンチューブを固定する段階、
・キャビティに対してパリソンに空気を吹き込む段階、
・成形された樹脂ライナーを成形型から取り外す段階、および
・成形された樹脂ライナーの内側の壁を、前記少なくとも1つの中間層と比較して水素透過性が低い内側層(すなわち第2のバリア層)でコーティングする段階。
【0027】
代替的な実施形態において、樹脂ライナーは、射出成形を用いて形成することができる。例えば、樹脂ライナーの様々な層は、共射出することができ、または連続して射出することができる。
【0028】
本発明による内側層は、中間層と比較して水素透過率が低い。透過率は、拡散率と溶解度の積である。1つの代替態様によれば、少なくとも1つの中間層および前記少なくとも1つの中間層と比較して水素溶解度が低い内側層を含む、水素貯蔵のための樹脂ライナーが提案される。そのような代替態様において、内側層は、(結果として得られる透過率が中間層の透過率と比較して低い限りは)中間層と比較して低い水素溶解度、および中間層と比較して高い水素拡散率を有することができる。
【0029】
上述のように、ライナーは、単に流体バリアとして働くだけではなく、そのような方法を用いて容器が製造されるとき、フィラメントを巻く間マンドレルとして働くように設計され得る。フィラメント巻き付け工程の間、圧力容器の破損をもたらす気泡を防ぐように複合材料構造体の良好なパッケージングを得るために、含浸された繊維に重要な圧力を与えることが必要である。市場における現在の解決方法は、重要な厚みのライナーからなり、これは圧力容器の重量を大きく増加させ、その結果燃費を増大させる。
【0030】
本発明のさらなる態様は、フィラメント巻き付け工程を支持するために良好な機械強度を保持すると同時に、フィラメントの巻き付け工程の後の、または複合材料圧力容器を製造するためにライナーの周囲に複合強化材を固めることを可能にする任意の他の工程の後の、構造的なライナーの完全性を危うくすることなく、厚みが低減された水素貯蔵のための樹脂ライナーを提供することである。
【0031】
したがって、本発明の1つの対象は、少なくとも1つの中間層および強化された熱可塑性樹脂組成物に基づく少なくとも1つの層を含む、水素を貯蔵するための樹脂ライナーである。
【0032】
強化された熱可塑性樹脂組成物は、強化されていない材料と比較して、弾性率を10%増加させる。
【0033】
強化された熱可塑性樹脂組成物は、それ自体知られているが、水素貯蔵のためのライナーの多層構造体にそのような組成物を使用していない。
【0034】
本発明による樹脂ライナーは、強化された熱可塑性樹脂組成物の1つまたは複数の層を含むことができる。
【0035】
用語「強化」は、本発明の意味するところにおいては、組成物の機械的特性に実質的な影響を与えるように、分散された状態(すなわち、織布またはマットのように織られたまたは絡まった粒子(繊維)とは対照的に、「自由」粒子の形態で、樹脂と混合されて)で強化材(の混合物)を含むことを意味すると理解される。この段階で、(i)充填濃度が高い場合(典型的には10%を超える)に特性に強い影響が得られる微視的なフィラー/強化材と、(ii)ほんの数%の強化材で特性に様々な変化が得られるナノフィラーとは、区別されるべきである。
【0036】
一般的に、繊維状の強化材(炭素繊維、天然繊維、ガラス繊維など)、ビード(例えば、ガラスビード、一般的には中空のビード)、またはプレートレット(例えば、タルク、粘土、モンモリロナイト、バーミキュライト、膨張黒鉛、グラフェン)が存在する。強化材は、好ましくは繊維である。粉末(カーボンブラック、白亜、タルク、硫酸バリウムなど)は、本発明の意味するところにおいては、組成物の機械的特性に実質的な影響を有し得るものはもちろん除いて、概して強化材とみなされない。ガラス繊維は、特に短いガラス繊維および長いガラス繊維は、本発明の意味するところにおいては、良好な結果を与える。短い繊維については、HDPE中に、10から20μmの間の直径および2から8mmの間の初期長さを有する、Eタイプのガラス(特に、PE−g−MAHなど、サイズ剤および/または相溶化剤を備えるもの)に基づく繊維を分散することによって、良好な結果が得られている。
【0037】
好ましい一変形例によれば、ガラス繊維は、10−50%の量で(好ましくは均一に、一般的にはマスターバッチ粒子を作るために押出機で混合することによって)組み込まれる強化材として選択される。
【0038】
有利な一実施形態において、本発明による樹脂ライナーは、少なくとも1つの中間層、前記少なくとも1つの中間層と比較して水素透過率が低い内側層、および強化された熱可塑性組成物に基づく少なくとも1つの層を含む。
【0039】
好ましくは、強化された熱可塑性樹脂組成物の層は、多層構造体の内側層である。
【0040】
好ましくは、強化された熱可塑性樹脂組成物の層は、多層構造体の外側層である。他の特定の実施形態において、強化熱可塑性樹脂組成物の層は、多層構造体の中間層であってよい。
【0041】
強化熱可塑性樹脂組成物のそのような層を使用することにより、ライナーの厚み(特に、中間層の厚み)の低減が可能となり、その結果貯蔵システム全体の重量を低減し、繊維の巻き付けの数を低減し、車両でのパッケージングを改善する(車両に与えられる空間の使用可能な体積が多い)。
【0042】
本発明は、添付の
図1〜4を用いて以下の実施例により非制限的に説明される。これらの図において、同じ層は同じ参照番号を有する。