(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る一実施形態のマスキング部材を図面を参照して以下に説明する。本実施形態のマスキング部材は、対象部品に塗装を行う際に塗膜のない非塗装面を形成するためのものである。
【0010】
図1に示すように、本実施形態のマスキング部材10は、弾性材料からなる有底筒状のマスキング部材本体11と、マスキング部材本体11よりも剛性の高い金属材料からなる円筒状の押圧体12とを有している。
【0011】
マスキング部材本体11は、
図1および
図2に示すように、軸方向の一端部が開口する開口20であって軸方向の中央部よりも他端部側が閉塞された有底筒状体21と、有底筒状体21に対して着脱可能な
図1に示す板状の閉塞体22(閉塞部)とを有している。
【0012】
有底筒状体21は、軸方向の一端部に上記開口20を有する筒状の筒状部31と、筒状部31の軸方向の中央よりも他端部側の内側を閉塞するように広がる円板状の閉塞部32とを有しており、これら筒状部31および閉塞部32が一体成形により形成されている。
【0013】
筒状部31は、軸方向の一端部に上記開口20を有する筒状の主体部41と、主体部41の軸方向一端部側から径方向外側に突出する環状の外側突出部42と、主体部41の軸方向他端部側から径方向外側に突出する環状のフランジ部43と、主体部41の軸方向他端部側から径方向内側に突出する環状の内側突出部44とを有している。主体部41は、内側突出部44と軸方向に重なり合う基部45と、基部45よりも開口20側の筒部46(被覆部)とからなっており、内側突出部44は筒部46よりも径方向内方に突出している。
【0014】
主体部41の筒部46と、外側突出部42とには、開口20側の端部の外周側に、開口20から軸方向に離れるほど大径となるよう傾斜するテーパ面41Aが形成されている。主体部41の外側突出部42とフランジ部43との間位置の外周側には、外側突出部42側に円筒面41Bが、フランジ部43側にフランジ部43側ほど小径となるように傾斜するテーパ面41C(傾斜面)が形成されている。言い換えれば、筒状部31には、外周側に開口20側つまり一端部側ほど大径となるよう傾斜するテーパ面41Cが形成されている。円筒面41Bは全体が主体部41の筒部46に設けられ、テーパ面41Cは一部が筒部46に、残りの一部が基部45に設けられている。外側突出部42およびフランジ部43の外径は、同等であり、円筒面41Bよりも大径となっている。テーパ面41Aの最小外径は、円筒面41Bの外径よりも小径となっている。
【0015】
主体部41には、内周側の開口20と内側突出部44との間に、内側突出部44側ほど大径となるように傾斜するテーパ面41Dが形成されている。言い換えれば、テーパ面41Dは開口20に向かうにつれ先細りとなっている。内側突出部44は、テーパ面41D側の端部に開口20側を向いて軸直交方向に広がる平坦な端面44Aを有しており、内周側に円筒面44Bを有している。これにより、端面44Aの全部と円筒面44Bの端面44A側の一部とが段状部51(当接部)を構成している。
【0016】
内側突出部44には、円筒面44Bの軸方向の中間位置に上記した閉塞部32が形成されている。閉塞部32は筒状部31の軸直交方向に広がる板状をなしている。閉塞部32には、軸方向に貫通する貫通穴63が、
図2に示すように一カ所のみ、閉塞部32の中心位置を通ることなく、この中心位置よりも円筒面44B側に寄って形成されている。
【0017】
また、
図1に示すように、内側突出部44には、円筒面44Bの閉塞部32よりも開口20とは反対側に、円筒面44Bよりも径方向外方に凹む環状の装着溝65が形成されている。内側突出部44の内周側には、装着溝65の開口20とは反対側に、開口20とは反対側ほど大径となるように傾斜するテーパ面44Cが形成されている。テーパ面44Cは、装着溝65の最大内径に対し、最小内径が小径であり、最大外径が同等以上となっている。テーパ面44Cは、筒状部31の内周側において最も開口20とは反対側に位置する。装着溝65には、
図3に示すように、円周方向の一部に径方向内方に溝底から突出する凸部67が形成されている。
【0018】
閉塞体22は、外周側が円筒面22Aとなっており、円周方向の一部に円筒面22Aよりも径方向内方に凹む凹部72が形成されている。閉塞体22には、軸方向に貫通する貫通穴73が一カ所のみ、閉塞体22の中心位置を通ることなく、この中心位置よりも円筒面22A側に寄って形成されている。閉塞体22は、有底筒状体21に
図1に示すテーパ面44C側から押し込まれて、装着溝65に嵌合される。このとき、閉塞体22は、
図3に示すように、装着溝65の凸部67に凹部72を嵌合させることで、有底筒状体21に対し周方向に位置決めされて、有底筒状体21に対し回転不可に固定される。
【0019】
この状態で、
図1に示すように、閉塞体22と有底筒状体21の閉塞部32とは所定の間隔をあけて平行に配置され、閉塞部32の貫通穴63と、閉塞体22の貫通穴73とが、閉塞体22および閉塞部32の円周方向において180°異なる位置に配置される。これにより、閉塞部32の貫通穴63と閉塞体22の貫通穴73とが、閉塞体22および閉塞部32の広がる方向における位置を完全にずらす。マスキング部材本体11の閉塞部32と閉塞体22との間の空間部75は、これら貫通穴63,73のみを介して外部に連通する。よって、マスキング部材本体11は、貫通穴63、空間部75および貫通穴73で屈曲形状となった流路77を有している。
【0020】
このように別体の閉塞体22が有底筒状体21に取り付けられてなるマスキング部材本体11は、筒状部31の段状部51よりも開口20とは反対側を閉塞する複数の閉塞部としての閉塞部32および閉塞体22を有する。また、マスキング部材本体11は、複数の閉塞部としての閉塞部32および閉塞体22に、それぞれに貫通穴63,73の対応する一つが位置をずらして形成されている。また、マスキング部材本体11は、複数の閉塞部としての閉塞部32および閉塞体22のうち最も開口20とは反対側の閉塞体22が、筒状部31に対して着脱可能に設けられている。
【0021】
押圧体12は、
図4に示すように、円筒状の本体部材81と、複数、具体的には6つの押圧部材82とを有している。本体部材81には、径方向に貫通するネジ穴85が、軸方向の位置を合わせて周方向に等間隔で複数、具体的には6カ所形成されている。押圧部材82はノーズ付スクリュであり、ノーズを本体部材81の径方向内方に向けた状態で、6カ所のネジ穴85のそれぞれに一つずつ螺合されている。複数の押圧部材82の本体部材81に対する螺合位置を調整することで、押圧体12の内径となる複数の押圧部材82の内接円の直径が調整可能となっている。
【0022】
図1に示すように、押圧体12は、筒状部31と閉塞部32と閉塞体22とを有するマスキング部材本体11の径方向の外側に、マスキング部材本体11の外周側を覆うように配置されている。その際に、押圧体12は、マスキング部材本体11の外側突出部42とフランジ部43との間に複数の押圧部材82を配置する。ここで、複数の押圧部材82の内接円の直径は、外側突出部42およびフランジ部43の外径よりも小径にされている。これにより、押圧体12は、マスキング部材本体11に対し、複数の押圧部材82が外側突出部42とフランジ部43との間の範囲で軸方向に移動可能となっている。
【0023】
押圧体12は、その内径となる複数の押圧部材82の内接円の直径が、主体部41の円筒面41Bの外径よりも小径、言い換えればテーパ面41Cの最大外径よりも小径であり、テーパ面41Cの最小内径よりも大径にされている。押圧体12は、複数の押圧部材82が、マスキング部材本体11のテーパ面41Cのフランジ部43側に位置すると、マスキング部材本体11の筒部46を変形させることはない。
図1に示すこの状態をマスキング部材10の基本状態とする。
【0024】
マスキング部材10は、この基本状態から、押圧体12が複数の押圧部材82を外側突出部42側に移動させるようにマスキング部材本体11に対して移動すると、これら複数の押圧部材82が、テーパ面41Cに接触し、テーパ面41Cの傾斜でマスキング部材本体11の筒部46を径方向内側に押圧して円筒面41Bに乗り上げる。マスキング部材10は、この状態を、押圧体12でマスキング部材本体11を径方向内方に最も押圧する押圧状態とする。
【0025】
マスキング部材本体11を構成する、有底筒状体21および閉塞体22は、絶縁材料からなっており、具体的には耐熱性および耐薬品性の高いシリコン樹脂製となっている。有底筒状体21は、射出成形等によって上記形状に一体成形されている。閉塞体22も射出成形等によって上記形状に一体成形されている。なお、マスキング部材本体11の材料としては、硬度50°〜70°のシリコン樹脂を採用でき、この硬度の範囲内で、形状や作業性等により適宜の硬度を選択できる。他の材料としては、フッ素系樹脂であるバイトン(登録商標)を用いることも可能であるが、コスト増となり、また表面に塗料の残存が生じてしまって繰り返し使用が困難になってしまう。よって、低コストであり、塗料をはじき水洗で除去可能となるシリコン樹脂を採用するのが好ましい。
【0026】
上記したマスキング部材10は、
図5〜
図7に示すようにシリンダ130に装着されてシリンダ130のマスキングを行うものである。シリンダ130は、金属部品であり、円筒状の胴部131と、この胴部131の軸方向一端側を閉塞させる底部132とを有し、胴部131の底部132とは反対側が開口部133とされた有底筒状をなすシリンダ本体134と、シリンダ本体134の底部132の外側に溶接により固定される円筒状の取付アイ135とを有している。開口部133は外周面133Aおよび内周面133Bがそれぞれ一定径の円筒面をなしており、端面133Cが外周面133Aおよび内周面133Bに直交する平坦面となっている。そして、マスキング部材10は、このシリンダ130の開口部133に装着される。
【0027】
マスキング部材10は、
図1,
図5に示すように、マスキング部材本体11がフランジ部43を押圧体12の複数の押圧部材82に近接させた基本状態で、
図5から
図6に示すように筒状部31の筒部46の内側にシリンダ130の開口部133が開口20から嵌合されることでこの開口部133に装着されることになる。その際に、シリンダ130は開口部133の端面133Cを、マスキング部材本体11の段状部51の端面44Aに当接させるまでマスキング部材本体11に押し込まれる。言い換えれば、マスキング部材本体11の段状部51が、端面44Aにおいてシリンダ130の開口部133の端面133Cに当接するまで、シリンダ130が基本状態のマスキング部材10に押し込まれる。
【0028】
ここで、
図5に示すようにシリンダ130への装着前のマスキング部材本体11の筒部46の最大内径つまりテーパ面41Dの最大内径が、シリンダ130の開口部133の外径つまり開口部133の外周面133Aの径と同等あるいは外周面133Aの径よりも締め代分小径となっている。よって、マスキング部材10は、
図6に示すようにシリンダ130の開口部133に装着された状態では、筒部46が開口部133の外周面133Aを覆うことになり、その際に、筒部46のテーパ面41Dが、開口部133の外周面133Aに倣って円筒面になり、外周面133Aに全面的に密着して外周面133Aを覆うことになる。
【0029】
シリンダ130が、開口部133を段状部51に当接させるまでマスキング部材本体11に押し込まれた後、マスキング部材10にさらに押し込まれると、マスキング部材本体11はシリンダ130の開口部133に段状部51が押されてシリンダ130と一体的に押圧体12に対して軸方向に移動する。その結果、
図6から
図7に示すように、押圧体12が、フランジ部43側にあった複数の押圧部材82を外側突出部42側に移動させる。すると、マスキング部材本体11は、テーパ面41Cが押圧体12の複数の押圧部材82に接触し、その傾斜で複数の押圧部材82から筒部46が径方向内側に押圧されつつ、円筒面41Bが複数の押圧部材82に接触する状態となり、外側突出部42が複数の押圧部材82に近接して、マスキング部材10が押圧状態となる。この押圧状態では、押圧体12で筒部46が径方向内方に押圧されて、筒部46のテーパ面41Dが開口部133の外周面133Aに一層密着する。
【0030】
このように筒部46が開口部133の外周面133Aを被覆すると、シリンダ130内は、マスキング部材10の閉塞部32の貫通穴63および閉塞体22の貫通穴73を含む流路77を介してのみ外部に連通することになる。
【0031】
マスキング部材10は、シリンダ130の開口部133への装着状態で、筒状部31の軸方向一側の筒部46が開口部133の外周面133Aに全面的に密着してこれを覆う。これにより、開口部133の外周面133Aおよび端面133Cを含むシリンダ130の外面130Aのうち、外周面133Aと端面133Cとを除く部分が外部に露出する。この部分が塗装により塗膜が形成される施工面130Aaとなる。
【0032】
このようにマスキング部材10が取り付けられた状態のシリンダ130が、取付アイ135において図示略の吊り具に吊り下げられた状態で搬送され、この搬送中に、塗装前処理工程、静電塗装工程、加熱乾燥工程が行われて塗装される。つまり、有底筒状のシリンダ130は開口部133を下向きにして塗装されることになり、その際に、マスキング部材10がシリンダ130の開口部133に装着された状態で塗装されることになる。
【0033】
塗装前処理工程ではマスキング部材10が取り付けられた状態のシリンダ130に前処理液を吹き付ける。その際に、マスキング部材10の流路77が特に下方向からの前処理液のシリンダ130内への浸入を防ぐ。
【0034】
次に行われる静電塗装工程では、マスキング部材10が取り付けられた状態のシリンダ130に塗料を吹き付ける。その際に、マスキング部材10の流路77が、特に塗料の回り込みによるシリンダ130内への浸入を防ぐ。
【0035】
次に行われる加熱乾燥工程では、マスキング部材10が取り付けられた状態のシリンダ130を、高温乾燥雰囲気で加熱乾燥することになる。その際に、温度上昇によりシリンダ130およびマスキング部材10で覆われた内部の空気が膨張するが、マスキング部材10に形成された流路77がシリンダ130の内外を連通させているため、シリンダ130およびマスキング部材10で覆われた内部の圧力上昇を抑制して、シリンダ130からのマスキング部材10の脱落を抑制する。
【0036】
施工面130Aaが塗装されたシリンダは、
図8に示すように、シリンダ装置としての緩衝器151を構成する。緩衝器151は、有底筒状の上記したシリンダ130と、このシリンダ130内に配置される無底筒状のシリンダ152と、シリンダ130,152から一部突出するようにシリンダ152内に挿入されるロッド155と、このロッド155に取り付けられシリンダ152内に摺動可能に挿入されてシリンダ152内を二つの室156,157に区画するピストン158とを有している。シリンダ130,152間はリザーバ室159となっており、シリンダ152内には作動流体としての油液が封入され、リザーバ室159には作動流体としての油液および高圧ガスが封入される。
【0037】
緩衝器151は、シリンダ130,152におけるロッド155の突出側の端部位置に配置されるロッドガイド161およびオイルシール162と、シリンダ130の底部132側に配置されるベースバルブ163とを有している。ロッドガイド161はロッド155の軸方向移動を案内し、オイルシール162はロッド155の軸方向移動を許容しつつシリンダ152内の油液およびリザーバ室159内の高圧ガスおよび油液が外部に漏出するのを規制する。
【0038】
シリンダ130は、上記したように、円筒状の胴部131と、この胴部131におけるロッド155の突出側とは反対の一端側を閉塞させる底部132とを有する有底筒状をなしている。そして、シリンダ130は、上記した塗装後に、塗装されていない開口部133が径方向内方に折り曲げ加工されることにより径方向内方に突出する係止部165が形成されている。シリンダ152は、円筒状をなしており、軸方向の一端側がシリンダ130の底部132の内側に配置されたベースバルブ163に嵌合状態で支持され、軸方向の他端側がシリンダ130の開口部133の内側に嵌合されるロッドガイド161に嵌合状態で支持されている。
【0039】
ベースバルブ163は、室157とリザーバ室159とを連通可能な油通路171,172と、内側の油通路171を開閉可能な縮み側減衰バルブとしてのディスクバルブ173と、外側の油通路172を開閉可能なチェックバルブとしてのディスクバルブ174とを有している。ピストン158には、室156,157を連通可能な油通路176,177と、外側の油通路176を開閉可能な縮み側減衰バルブであるディスクバルブ178と、内側の油通路177を開閉可能な伸び側減衰バルブとしてのディスクバルブ179とが設けられている。
【0040】
ロッドガイド161は、軸方向一側に大径外径部181が形成され、軸方向他側に大径外径部181よりも小径の小径外径部182が形成された外形形状をなしており、大径外径部181においてシリンダ130の胴部131の内周部に嵌合し、小径外径部182においてシリンダ152の内周部に嵌合する。オイルシール162は、ゴム材からなるシール部185と、シール部185内に埋設されオイルシール162の形状を維持し、固定のための強度を得るための金属製の円環状の環状部材186とを有している。オイルシール162は、環状部材186の位置がロッドガイド161とシリンダ130の加締められた係止部165とに挟持される。
【0041】
つまり、塗装後のシリンダ130内に、開口部133から、ベースバルブ163、シリンダ152、ピストン158およびロッド155が挿入されることになり、さらに、ロッドガイド161がシリンダ130の胴部131およびシリンダ152に嵌合させられ、オイルシール162がシリンダ130の胴部131に嵌合させられる。この状態で、シリンダ130の塗装が施されていない開口部133が径方向内側に折り曲げ加工されて係止部165が形成されると、係止部165がオイルシール162をロッドガイド161とで挟持する。
【0042】
上記特許文献1に開示されたマスキング部材には、空気抜き用の穴が形成されている。この穴は、温度上昇が生じた場合にシリンダ内の空気を排気してマスキング部材のシリンダからの抜けを抑制するためのものである。しかしながら、この空気抜き用の穴からシリンダの内面側に前処理液や塗料が浸入してシリンダの非塗装面に付着する等、コンタミネーションを生じる可能性がある。
【0043】
本実施形態のマスキング部材10によれば、一端部に開口20を有する筒状部31が、筒部46においてシリンダ130の開口部133の外周面133Aを覆い、段状部51においてシリンダ130の開口部133の端面133Cに当接することになるが、筒状部31の段状部51よりも開口20とは反対側を閉塞する閉塞部32および閉塞体22が設けられており、閉塞部32および閉塞体22には貫通穴63,73が位置をずらして形成されている。よって、貫通穴63,73を含んで屈曲形状となった流路77を介してシリンダ130の内側が外側に連通する。よって、空気抜き用の貫通穴63,73を含む流路77からシリンダ130の内面側に前処理液や塗料が浸入してシリンダ130の内面に付着する等の、コンタミネーションの発生を抑制することができる。
【0044】
また、閉塞部32および閉塞体22のうち最も開口20とは反対側の閉塞体22は、マスキング部材本体11の筒状部31に対して着脱可能に設けられているため、前処理液や塗料が付着して劣化しやすい閉塞体22を交換することが可能となる。
【0045】
また、筒状部31には、外周側に開口20ほど大径となるテーパ面41Cが形成されており、筒状部31と閉塞部32および閉塞体22とを有するマスキング部材本体11の外側に、テーパ面41Cの最大外径よりも内径が小径で、マスキング部材本体11に対して軸方向に移動可能に設けられた押圧体12を備えるため、マスキング部材本体11に対して押圧体12を軸方向に移動させることで、押圧体12が筒状部31の円筒面41Bを径方向内方に押圧する状態となる。すると、筒状部31が開口部133の外周面133Aに密着することになる。よって、筒状部31のマスキング性能を向上させることができる。
【0046】
以上に述べた本実施形態の第1の態様は、有底筒状のシリンダを開口部を下向きにして塗装する際に前記開口部に装着されるマスキング部材であって、一端部が開口すると共に前記シリンダの前記開口部の外周面を覆う被覆部と前記開口部の端面に当接する当接部とを有する筒状部と、前記筒状部の前記当接部よりも前記一端部とは反対側を閉塞する複数の閉塞部と、を有し、前記複数の閉塞部には、それぞれに貫通穴が位置をずらして形成されていることを特徴とする。よって、空気抜き用の貫通穴からシリンダの内面側に塗料が浸入してシリンダの内面に付着する等の、コンタミネーションの発生を抑制することができる。
【0047】
第2の態様は、上記第1の態様において、前記複数の閉塞部のうち最も前記一端部とは反対側の閉塞部は、前記筒状部に対して着脱可能に設けられていることを特徴とする。塗料が付着しやすい複数の閉塞部のうち最も前記一端部とは反対側の閉塞部を交換することが可能となる。
【0048】
第3の態様は、上記第1または第2の態様において、前記筒状部には、外周側に前記一端部側ほど大径となる傾斜面が形成されており、前記筒状部と前記複数の閉塞部とを有するマスキング部材本体の外側に、前記傾斜面の最大外径よりも内径が小径で、前記マスキング部材本体に対して軸方向に移動可能に設けられた押圧体を備えることを特徴とする。マスキング部材本体に対して押圧体を軸方向に移動させることで、押圧体が筒状部の傾斜面を径方向内方に押圧する。すると、筒状部が開口部の外周面に密着することになる。よって、筒状部のマスキング性能を向上させることができる。