(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0021】
(回転電機の構成)
最初に、本発明の各実施形態に係る金属材の溶接方法を用いて製造される回転電機1の構成について説明する。
図1は、回転電機の全体構成を示す概略構成図(断面図)である。
図1に示すように、回転電機1は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車のような車両に搭載される走行用モータである。但し、本発明の構成は、走行用モータに限らず、発電用モータやその他用途のモータ、または車両用以外の回転電機(発電機を含む)にも適用可能である。
【0022】
回転電機1は、ケース3と、ステータ5と、ロータ7と、出力シャフト9と、を備えている。
出力シャフト9は、ケース3に回転可能に支持されている。
ロータ7は、出力シャフト9に外嵌された筒状に形成されている。
【0023】
図2は、ステータを示す斜視図である。
図2に示すように、ステータ5は、ステータコア11と、ステータコア11に装着されたステータコイル13と、ステータコイル13と外部電源(不図示)とを接続する複数のバスバー31と、を備えている。
【0024】
ステータコア11は、ロータ7(
図1参照)をその径方向の外側から取り囲む筒状に形成されている。具体的に、ステータコア11は、円筒状のバックヨーク19と、バックヨーク19の内周面上から径方向内側に向けて突出する複数のティース21と、を備えている。バックヨーク19は、上述したケース3(
図1参照)の内周面に嵌合等により固定されている。ステータコア11の周方向に隣接するティース21間には、溝状のスロット23が形成されている。すなわち、ステータコア11の周方向に沿って、ティース21およびスロット23が交互に配置されている。
【0025】
ステータコイル13は、U相、V相、W相により構成された3相コイルである。各相のステータコイル13は、対応する複数のセグメントコイル24が互いに接続されることで形成されている。各セグメントコイル24は、銅等の金属材料により形成され、ステータコア11のスロット23に挿入されてステータコア11に装着されている。複数のセグメントコイル24のうち、各相のステータコイル13の端部を除く途中部分を形成する同相のセグメントコイル24同士は、ステータコア11に対して軸方向の一方において、TIG溶接やレーザ溶接等で接合されている。なお、ステータコイル13の構成は、適宜変更が可能である。例えば、ステータコイル13は、セグメントコイル24に限らず、ティース21に巻回する等の方法でステータコア11に装着しても構わない。また、ステータコイル13は、分布巻きによりステータコア11に装着されているが、この構成のみに限らず、集中巻きによりステータコア11に装着されていても構わない。
【0026】
各バスバー31は、例えばアルミニウム等の金属材料により形成されている。各バスバー31は、例えば丸線や平角線等の線材により形成されている。図示の例では、各バスバー31は、一対の平角線により形成されている。各バスバー31は、一端部において各相のステータコイル13(セグメントコイル24)に各別に接合されている。また、各バスバー31の他端部には、図示しない外部電源の端子台に電気的に接続される接続端子33が設けられている。これにより、図示しない外部電源と各相のステータコイル13とが、各バスバー31を介して電気的に接続される。ステータコイル13には、接続端子33を通じて外部電源から電力が供給される。図示の例では、接続端子33は、各バスバー31を形成する一対の平角線の先端部をそれぞれ円弧状に湾曲させ、その湾曲した先端部同士を重ねた状態で互いに溶接することで、円環状に形成されている。
【0027】
続いて、上述した回転電機1における金属材同士の各溶接箇所に用いることが可能な金属材の溶接方法について説明する。以下の各実施形態で説明する金属材の溶接方法は、例えば回転電機1におけるステータコイル13とバスバー31との溶接や、接続端子33における平角線同士の溶接、ケース3を形成する際の金属板同士の溶接等に適用できる。また、本発明の実施形態に係る金属材の溶接方法では、以下の各実施形態で示すように、溶接する金属材の形状に応じて、後述するコイル部の形状を変更する。
【0028】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態の金属材の溶接方法について説明する。
(溶接装置の構成)
最初に、第1実施形態に係る金属材の溶接方法で用いる溶接装置101の構成について説明する。なお、以下では、溶接装置101が水平の設置面上に設置されている場合を例に挙げて説明する。
【0029】
図3は、第1実施形態に係る溶接装置の外観斜視図である。
図3に示すように、溶接装置101は、直方体状の筐体102と、筐体102の内部に配置された交流電源103と、筐体102の前方に設けられた通電部104と、通電部104に対応する位置に設けられた部材保持部105と、筐体102の側方に設けられた制御盤106と、を備えている。交流電源103は、通電部104に流す交流電流を発生させる。通電部104は、交流電源103から供給された電流を通電可能に形成され、磁場を発生させて誘導加熱により複数の金属材同士を溶接する。部材保持部105は、溶接させる金属材を保持する。制御盤106には、各種スイッチ等が設けられている。
【0030】
通電部104の詳細について説明する。
図4は、第1実施形態に係る通電部の斜視図である。
図4に示すように、通電部104は、一対の取付部110と、両端がそれぞれ取付部110に接続する導線部120と、を備えている。
【0031】
各取付部110は、例えば銅等の金属材料により、直方体状に形成されている。各取付部110は、間隔をあけて並んで配置されている。各取付部110は、ネジ112により筐体102の前部に固定されている。各取付部110は、交流電源103に電気的に接続されている。各取付部110には、冷媒が流通するパイプ等を接続可能な継手114が取り付けられている。各取付部110の内部には、図示しない流路が形成されている。各取付部110の内部に形成された流路は、一端部において継手114と連通し、他端部において導線部120を形成する銅線の内部と連通する。
【0032】
導線部120は、例えば管状に形成された1本の銅線により形成されている。導線部120を形成する銅線の内部は、各取付部110の内部に形成された流路(不図示)を通じて、各取付部110に取り付けられた継手114と連通している。これにより、導線部120を形成する銅線の内部には、継手114に接続されたパイプから供給される冷媒を流通させることが可能となっている。導線部120は、取付部110から離間した位置に設けられたコイル部122と、コイル部122と各取付部110とを接続する一対の接続部124と、を備えている。
【0033】
コイル部122は、水平方向に沿う軸線C周りを周回するように延びる螺旋状に形成されている。コイル部122は、軸線C方向から見て円形状に形成されている。コイル部122は、軸線C周りを約2周している。コイル部122における銅線の両端部122a,122bは、それぞれコイル部122の上部に形成されている。
【0034】
一方の接続部124は、コイル部122における銅線の一端部122aと、一方の取付部110と、を接続している。一方の接続部124は、コイル部122における銅線の一端部122aから上方に向かって延び、略90°曲がって水平方向に延びて一方の取付部110に接続している。他方の接続部124は、コイル部122における銅線の他端部122bと、他方の取付部110と、を接続している。他方の接続部124は、コイル部122における銅線の他端部122bから上方に向かって延び、略90°曲がって水平方向に延びて他方の取付部110に接続している。
【0035】
(溶接方法)
次に、第1実施形態の溶接装置101の通電部104を用いた金属材の溶接方法について説明する。第1実施形態の溶接方法では、通電部104のコイル部122の内側に、溶接する複数の金属材を互いに隣接させた状態で配置する。すなわち、金属材の溶接する箇所(以下、溶接箇所という。)を通電部104のコイル部122の内側に配置する。なお、複数の金属材は、互いに接触した状態で配置されてもよいし、互いに僅かに離間した状態で配置されてもよい(以下の実施形態でも同様)。
【0036】
図5から
図9は、第1実施形態に係る通電部を用いた溶接方法を説明する図である。
まず、少なくとも一方がアルミニウムにより形成された一対の丸線W1(金属材)の先端同士を互いに溶接する場合について説明する。
図5に示すように、各丸線W1の先端面は、丸線W1の中心軸線に直交する方向に対して傾斜するように形成されている。そして、各丸線W1は、先端面同士を対向させ、かつ各丸線W1が軸線Cに直交する方向に沿うように配置された状態で、通電部104のコイル部122の内側に配置される。これにより、一対の丸線W1の溶接箇所がコイル部122の内側に配置される。各丸線W1は、その中心軸線に直交する方向に対して傾斜した先端面同士を対向させるので、先端面が中心軸線に直交する方向に沿うように形成された場合と比較して、接合面積が大きく確保することができる。
【0037】
ここで、各丸線W1の先端部の表面には、所定の添加剤130を配置することが望ましい。所定の添加剤130は、脱酸材である。脱酸材は、例えばスモークレスH(翼化工株式会社製)を用いることができる。添加剤130は、例えば水等の溶媒に溶かれた状態で丸線W1の先端部に塗布されることで、丸線W1の表面に配置される。なお、丸線W1に塗布された添加剤130は、塗布後に乾燥した状態で用いられてもよい。
【0038】
そして、通電部104のコイル部122に、金属に対する衝撃焼入れが可能な周波数の交流電流をパルス状に流す。衝撃焼入れとは、超高周波の電磁波による瞬間的な誘導加熱、および誘導加熱後の自己冷却による金属材への焼入れである。本実施形態では、衝撃焼入れが可能な周波数として27.12MHzの交流電流を通電部104のコイル部122に流す。通電時間は、例えば数100ミリ秒である。これにより、コイル部122の内側に配置された一対の丸線W1は、コイル部122において発生した磁場により誘導加熱されて溶融する。そして、コイル部122への交流電流の通電を停止させることで、溶融した丸線W1が冷却され、
図6に示すように一対の丸線W1の先端部同士が溶接される。なお、丸線W1同士の溶接に限らず、例えば平角線同士の溶接であっても同様である。
【0039】
続いて、少なくとも一方がアルミニウムにより形成された一対の丸線W1(金属材)をT字状に溶接する場合について説明する。
図7に示すように、一方の丸線W1は、軸線Cに直交する方向に沿うように配置された状態で、中間部分が通電部104のコイル部122の内側に位置するように配置される。他方の丸線W1は、先端面を他方の丸線W1の中間部分に対向させた状態で、先端部がコイル部122の内側に位置するように配置される。これにより、一対の丸線W1の溶接箇所がコイル部122の内側に配置される。一対の丸線W1の表面のうち、溶接箇所に対応する部分には、上述した添加剤130を配置する。
【0040】
そして、通電部104のコイル部122に、金属に対する衝撃焼入れが可能な周波数の交流電流を流す。これにより、コイル部122の内側に配置された一対の丸線W1は、コイル部122において発生した磁場により誘導加熱されて溶融する。そして、コイル部122への交流電流の通電を停止させることで、溶融した丸線W1が冷却され、
図8に示すように一対の丸線W1同士がT字状に溶接される。
【0041】
続いて、少なくとも一方がアルミニウムにより形成された丸線W1(金属材)と平角線W2(金属材)とをT字状に溶接する場合について説明する。
図9に示すように、丸線W1は、軸線Cに直交する方向に沿うように配置された状態で、中間部分が通電部104のコイル部122の内側に位置するように配置される。平角線W2は、先端部における主面を丸線W1の中間部分に対向させた状態で、先端部がコイル部122の内側に位置するように配置される。これにより、丸線W1および平角線W2の溶接箇所がコイル部122の内側に配置される。丸線W1および平角線W2の表面のうち、溶接箇所に対応する部分には、上述した添加剤130を配置する。
【0042】
そして、通電部104のコイル部122に、金属に対する衝撃焼入れが可能な周波数の交流電流を流す。これにより、コイル部122の内側に配置された丸線W1および平角線W2は、コイル部122において発生した磁場により誘導加熱されて溶融する。そして、コイル部122への交流電流の通電を停止させることで、溶融した丸線W1および平角線W2が冷却され、
図8に示す例と同様に、丸線W1および平角線W2同士がT字状に溶接される。
【0043】
このように、本実施形態の金属材の溶接方法によれば、金属に対する衝撃焼入れが可能な周波数の交流電流により金属材(本実施形態では丸線W1および平角線W2)を誘導加熱するので、金属材を瞬時に溶融させることができる。このため、複数の金属材同士を短時間で溶接することが可能となるので、溶融した金属材の溶け落ちを抑制して溶接箇所を所望の形状に形成できる。したがって、変形を抑制しつつ確実に溶接できる金属材の溶接方法を提供できる。
【0044】
また、一般に、アルミニウムにより形成された金属材を溶接する場合、金属材の表面にアルミニウムの酸化被膜が瞬時に形成されるので、金属材同士の接合が困難となる。
本実施形態の金属材の溶接方法によれば、金属材を瞬時に溶融させて金属材同士を短時間で溶接することができるので、アルミニウムの酸化被膜によって金属材同士の接合が阻害されることを抑制できる。よって、アルミニウムにより形成された金属材を確実に溶接できる。
【0045】
また、本実施形態の金属材の溶接方法によれば、金属材の表面に添加剤130を配置するので、金属材の表面における酸化被膜の形成の抑制や、金属材の表面に形成された酸化被膜の除去等が可能となる。したがって、金属材の表面の酸化被膜によって金属材同士の接合が阻害されることを抑制して、金属材同士を確実に溶接できる。
【0046】
また、本実施形態の金属材の溶接方法によれば、金属材の溶接箇所がコイル部122の内側に配置されるので、コイル部122において発生する磁場により、溶接箇所を効率よく誘導加熱することができる。このため、金属材同士をより短時間で溶接することが可能となる。
また、溶接箇所をコイル部122の内側に配置することで、溶融した金属材を磁気浮揚によりコイル部122の内側に保持することができる。このため、溶融した金属材の溶け落ちを抑制して溶接箇所を所望の形状に形成できる。
【0047】
そして、本実施形態の金属材の溶接方法により互いに溶接された複数の金属材を回転電機1に具備させることにより、複数の金属材が変形を抑制しつつ確実に溶接されるので、高品質な回転電機1とすることができる。
【0048】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態の金属材の溶接方法について説明する。
(溶接装置の構成)
最初に、第2実施形態に係る金属材の溶接方法で用いる溶接装置201の構成について説明する。なお、溶接装置201は、第1実施形態の溶接装置101の通電部104を通電部204に置き換えたものである。
【0049】
図10および
図11は、第2実施形態に係る通電部を用いた溶接方法を説明する図である。
図10に示すように、通電部204は、一対の取付部110と、両端がそれぞれ取付部110に接続する導線部220と、を備えている。
【0050】
導線部220は、例えば管状に形成された1本の銅線により形成されている。導線部220を形成する銅線の内部は、各取付部110の内部に形成された流路(不図示)と連通している。導線部220は、取付部110から離間した位置に設けられたコイル部222と、コイル部222と各取付部110とを接続する一対の接続部124と、を備えている。
【0051】
コイル部222は、水平方向に沿う軸線C周りを周回するように延びる螺旋状に形成されている。コイル部222は、軸線C方向から見て、長軸が水平方向に沿う長円形状に形成されている。コイル部222は、軸線C周りを約2周している。コイル部222における銅線の両端部222a,222bは、それぞれコイル部222の上部に形成されている。なお、軸線C方向から見たコイル部222の長軸方向の寸法は、後述する金属板W3の寸法に合わせて適宜設定される。
【0052】
(溶接方法)
次に、第2実施形態の溶接装置201の通電部204を用いた金属材の溶接方法について説明する。第2実施形態の溶接方法では、第1実施形態と同様に、通電部204のコイル部222の内側に、溶接する複数の金属材を互いに隣接させた状態で配置する。すなわち、金属材の溶接箇所を通電部204のコイル部の内側に配置する。
【0053】
本実施形態では、少なくとも一方がアルミニウムにより形成され、重ねて配置された一対の金属板W3(金属材)の一端辺W3a同士を全体に亘って互いに溶接する場合について説明する。
図10に示すように、一対の金属板W3は、略同形同大に形成され、互いに一端辺W3aを揃えた状態で配置されている。この際、一対の金属板W3は、軸線C方向から見て一端辺W3aがコイル部222の長軸と略一致するように、かつ金属板W3の主面が軸線C方向に向くように配置される。各金属板W3の一端辺W3aには、上述した添加剤130を配置してもよい。なお、金属板W3の一端辺W3aを全長に亘って溶接する場合、金属板W3の一端辺W3aの長さは、軸線C方向から見たコイル部222の長径と比べて同等または小さいことが望ましい。つまり、溶接する金属板W3の一端辺W3aの長さに応じて、軸線C方向から見たコイル部222の長径を設定することが望ましい。これにより、一対の金属板W3の溶接箇所の全体がコイル部222の内側に配置される。
【0054】
そして、通電部204のコイル部222に、金属に対する衝撃焼入れが可能な周波数の交流電流を流す。これにより、コイル部222の内側に配置された一対の金属板W3の一端辺W3aは、コイル部222において発生した磁場により誘導加熱されて溶融する。そして、コイル部222への交流電流の通電を停止させることで、溶融した金属板W3の一端辺W3aが冷却され、
図11に示すように一対の金属板W3の一端辺W3a同士が溶接される。
【0055】
このように、本実施形態の金属材の溶接方法によれば、金属に対する衝撃焼入れが可能な周波数の交流電流により金属材(本実施形態では金属板W3)を誘導加熱するので、上述した第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0056】
[第3実施形態]
以下、第3実施形態の金属材の溶接方法について説明する。
(溶接装置の構成)
最初に、第3実施形態に係る金属材の溶接方法で用いる溶接装置301の構成について説明する。なお、溶接装置301は、第1実施形態の溶接装置101の通電部104を通電部304に置き換えたものである。
【0057】
図12から
図14は、第3実施形態に係る通電部を用いた溶接方法を説明する図である。
図12に示すように、通電部304は、一対の取付部110と、両端がそれぞれ取付部110に接続する導線部320と、を備えている。
【0058】
導線部320は、例えば管状に形成された1本の銅線により形成されている。導線部320を形成する銅線の内部は、各取付部110の内部に形成された流路(不図示)と連通している。導線部320は、取付部110から離間した位置に設けられたコイル部322と、コイル部322と各取付部110とを接続する一対の接続部324と、を備えている。
【0059】
コイル部322は、水平方向に沿う軸線C周りを周回するように延びる螺旋状に形成されている。コイル部322は、軸線C方向から見て、長軸が水平方向に沿う長円形状に形成されている。コイル部322は、軸線C周りを1.5周から2周程度周回している。コイル部322における銅線の両端部322a,322bは、それぞれ軸線C方向から見たコイル部322の長軸方向の一端部に形成されている。
【0060】
一方の接続部324は、コイル部322における銅線の一端部322aと、一方の取付部110と、を接続している。一方の接続部324は、コイル部322における銅線の一端部322aから水平方向に延びて一方の取付部110に接続している。他方の接続部324は、コイル部322における銅線の他端部322bと、他方の取付部110と、を接続している。他方の接続部324は、コイル部322における銅線の他端部322bから水平方向に延びて他方の取付部110に接続している。
【0061】
(溶接方法)
次に、第3実施形態の溶接装置301の通電部304を用いた金属材の溶接方法について説明する。第3実施形態の溶接方法では、第1実施形態と同様に、通電部304のコイル部322の内側に、溶接する複数の金属材を互いに隣接させた状態で配置する。すなわち、金属材の溶接箇所を通電部304のコイル部322の内側に配置する。
【0062】
まず、少なくとも一方がアルミニウムにより形成され、重ねて配置された一対の金属板W3(金属材)の第1角部W3b同士を互いに溶接する場合について説明する。
図12に示すように、一対の金属板W3は、略同形同大に形成され、互いに第1角部W3bを揃えた状態で配置されている。この際、一対の金属板W3は、軸線C方向から見て第1角部W3bに接続する一端辺W3aがコイル部322の長軸と略一致するように、かつ金属板W3の主面が軸線C方向に向くように配置される。各金属板W3の第1角部W3bには、上述した添加剤130を配置してもよい。
【0063】
そして、通電部304のコイル部322に、金属に対する衝撃焼入れが可能な周波数の交流電流を流す。これにより、コイル部322の内側に配置された一対の金属板W3の第1角部W3bは、コイル部322において発生した磁場により誘導加熱されて溶融する。そして、コイル部322への交流電流の通電を停止させることで、溶融した金属板W3の第1角部W3bが冷却され、
図13に示すように一対の金属板W3の第1角部W3b同士が互いに溶接される。
【0064】
続いて、アルミニウムにより形成された複数本の平角線W2(金属材)を束ねて先端部同士を溶接する場合について説明する。
図14に示すように、複数本の平角線W2は、互いに主面同士を対向させるとともに、先端部を揃えた状態で配置される。複数本の平角線W2の先端部は、通電部304のコイル部322の内側に下方から挿入されて配置される。この際、各平角線W2は、軸線C方向から見て先端面がコイル部322の短軸方向に向くように、かつ軸線C方向から見て主面がコイル部322の長軸方向に向くように配置される。各平角線W2の先端部の表面には、上述した添加剤130を配置してもよい。
【0065】
そして、通電部304のコイル部322に、金属に対する衝撃焼入れが可能な周波数の交流電流を流す。これにより、コイル部322の内側に配置された複数の平角線W2の先端部は、コイル部322において発生した磁場により誘導加熱されて溶融する。そして、コイル部322への交流電流の通電を停止させることで、溶融した平角線W2の先端部が冷却され、複数の平角線W2の先端部同士が互いに溶接される。
【0066】
このように、本実施形態によれば、本実施形態の金属材の溶接方法によれば、金属に対する衝撃焼入れが可能な周波数の交流電流により金属材(本実施形態では金属板W3および平角線W2)を誘導加熱するので、上述した各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0067】
[第4実施形態]
以下、第4実施形態の金属材の溶接方法について説明する。
(溶接装置の構成)
最初に、第4実施形態に係る金属材の溶接方法で用いる溶接装置401の構成について説明する。なお、溶接装置401は、第1実施形態の溶接装置101の通電部104を通電部404に置き換えたものである。
【0068】
図15および
図16は、第4実施形態に係る通電部を用いた溶接方法を説明する図である。
図15に示すように、通電部404は、一対の取付部110と、両端がそれぞれ取付部110に接続する導線部420と、を備えている。
【0069】
導線部420は、例えば管状に形成された1本の銅線により形成されている。導線部420を形成する銅線の内部は、各取付部110の内部に形成された流路(不図示)と連通している。導線部420は、取付部110から離間した位置に設けられたコイル部422と、コイル部422と各取付部110とを接続する一対の接続部424と、を備えている。
コイル部422は、水平方向に沿う軸線C周りを、軸線Cに直交する平面内で周回するように延びる平面コイルである。コイル部422は、軸線C周りを約1周している。
【0070】
一方の接続部424は、コイル部422における銅線の一端部422aと、一方の取付部110と、を接続している。一方の接続部424は、コイル部422における銅線の一端部422aから軸線C方向に延びて一方の取付部110に接続している。他方の接続部424は、コイル部422における銅線の他端部422bと、他方の取付部110と、を接続している。他方の接続部424は、コイル部422における銅線の他端部422bから軸線C方向に延びて他方の取付部110に接続している。
【0071】
(溶接方法)
次に、第4実施形態の溶接装置401の通電部404を用いた金属材の溶接方法について説明する。第4実施形態の溶接方法では、溶接する複数の金属材を互いに隣接させ、通電部404のコイル部422に対して金属材の溶接箇所を軸線C方向に対向させる。
【0072】
本実施形態では、少なくとも一方がアルミニウムにより形成され、重ねて配置された一対の金属板W3(金属材)の一端辺W3a同士を局所的に互いに溶接する場合について説明する。
図15に示すように、一対の金属板W3は、略同形同大に形成され、互いに一端辺W3aを揃えた状態で配置されている。この際、一対の金属板W3は、一端辺W3aの溶接箇所がコイル部422に軸線C方向で対向するように配置される。各金属板W3の一端辺W3aの溶接箇所には、上述した添加剤130を配置してもよい。
【0073】
そして、通電部404のコイル部422に、金属に対する衝撃焼入れが可能な周波数の交流電流を流す。これにより、コイル部422に近接して配置された一対の金属板W3の一端辺W3aの一部は、コイル部422において発生した磁場により誘導加熱されて溶融する。そして、コイル部422への交流電流の通電を停止させることで、溶融した金属板W3の一端辺W3aが冷却され、
図16に示すように一対の金属板W3の一端辺W3a同士が局所的に溶接される。
【0074】
このように、本実施形態の金属材の溶接方法によれば、金属に対する衝撃焼入れが可能な周波数の交流電流により金属材(本実施形態では金属板W3)を誘導加熱するので、上述した各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0075】
[第5実施形態]
以下、第5実施形態の金属材の溶接方法について説明する。
(溶接装置の構成)
最初に、第5実施形態に係る金属材の溶接方法で用いる溶接装置501の構成について説明する。なお、溶接装置501は、第1実施形態の溶接装置101の通電部104を通電部504に置き換えたものである。
【0076】
図17は、第5実施形態に係る通電部を用いた溶接方法を説明する図である。
図17に示すように、通電部504は、一対の取付部110と、両端がそれぞれ取付部110に接続する導線部520と、を備えている。
【0077】
導線部520は、例えば管状に形成された1本の銅線により形成されている。導線部520を形成する銅線の内部は、各取付部110の内部に形成された流路(不図示)と連通している。導線部520は、取付部110から離間した位置に設けられたコイル部522と、コイル部522と各取付部110とを接続する一対の接続部524と、を備えている。
【0078】
コイル部522は、上下方向に沿う軸線C周りを周回するように延びる螺旋状に形成されている。コイル部522は、大径部526と、大径部526の上方に設けられ、大径部526よりも小径に形成された小径部528と、を備えている。小径部528は、軸線C方向から見て大径部526よりも内側に位置するように、かつ水平方向から見て大径部526よりも上方に位置するように形成されている。大径部526および小径部528は、それぞれ軸線C周りを約1周しており、これによりコイル部522は、軸線C周りをおよそ2周している。
【0079】
一方の接続部524は、コイル部522における銅線の一端部522aと、一方の取付部110と、を接続している。一方の接続部524は、コイル部522における銅線の一端部522aから水平方向に延びて一方の取付部110に接続している。他方の接続部524は、コイル部522における銅線の他端部522bと、他方の取付部110と、を接続している。他方の接続部524は、コイル部522における銅線の他端部522bから水平方向に延びて他方の取付部110に接続している。
【0080】
(溶接方法)
次に、第5実施形態の溶接装置501の通電部504を用いた金属材の溶接方法について説明する。第5実施形態の溶接方法では、第1実施形態と同様に、通電部504のコイル部522の内側に、溶接する複数の金属材を互いに隣接させた状態で配置する。すなわち、金属材の溶接箇所を通電部504のコイル部522の内側に配置する。以下では、上述した回転電機1の接続端子33(
図2参照)の形成方法を例に挙げて説明する。
【0081】
図2および
図17に示すように、まず、バスバー31を形成する一対の平角線の先端部をそれぞれ円弧状に湾曲させる。そして、円弧状に湾曲した先端部同士が径方向で重なるように一対の平角線を配置する。これにより、一対の平角線からなる束の先端部には、孔部35に形成される。続いて、コイル部522の内側に、孔部35が形成された平角線の束の先端部を配置する。この際、孔部35の中心軸線がコイル部522の中心軸線である軸線Cに略一致するように平角線の束の先端部を配置する。なお、平角線の束の先端部の外径は、軸線C方向から見たコイル部522の大径部526の内径よりも小さいことが望ましい。つまり、平角線の束の先端部の外径に応じて、軸線C方向から見たコイル部522の大径部526の内径を設定することが望ましい。これにより、平角線の束の先端部を大径部526により囲うことができる。
【0082】
そして、通電部504のコイル部522に、金属に対する衝撃焼入れが可能な周波数の交流電流を流す。これにより、コイル部522の内側に配置された平角線W2の束の先端部は、コイル部522において発生した磁場により誘導加熱されて溶融する。そして、コイル部522への交流電流の通電を停止させることで、溶融した平角線W2が冷却され、平角線W2の先端部同士が溶接される。これにより、バスバー31の端部に接続端子33が形成される。
【0083】
このように、本実施形態の金属材の溶接方法によれば、金属に対する衝撃焼入れが可能な周波数の交流電流により金属材(本実施形態では平角線W2)を誘導加熱するので、上述した各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0084】
[第6実施形態]
以下、第6実施形態の金属材の溶接方法について説明する。
(溶接装置の構成)
最初に、第6実施形態に係る金属材の溶接方法で用いる溶接装置601の構成について説明する。なお、溶接装置601は、第1実施形態の溶接装置101の筐体102から延びる不図示のケーブルに手持ち治具640を接続したものである。
【0085】
図18は、第6実施形態に係る溶接装置を用いた溶接方法を説明する図である。
図18に示すように、手持ち治具640は、通電部620と、通電部620を保持する本体部642と、本体部642に取り付けられる一対のホルダ650と、を備えている。
本体部642は、直方体状に形成された台座部644と、台座部644から延びる把持部646と、を備え、これらが樹脂材料等により一体形成されている。なお、手持ち治具640の説明では、互いに直交する第1方向L1、第2方向L2および第3方向L3を用いる。第1方向L1、第2方向L2および第3方向L3は、直方体状に形成された台座部644が延びる3方向である。
【0086】
台座部644は、第1方向L1に長い直方体状に形成されている。台座部644のうち第2方向L2の一方側を向く第1面644aには、第2方向L2の他方側に向かって窪む凹部648およびガイド溝649が形成されている。凹部648は、第3方向L3に沿って延在し、第3方向L3の両側に開口している。凹部648は、台座部644における第1方向L1の中央部に形成されている。凹部648は、第3方向L3から見て矩形状に窪んでいる。
【0087】
ガイド溝649は、第1方向L1に沿って延在し、第1方向L1の両側に開口している。ガイド溝649は、台座部644における第3方向L3の中央部に形成されている。ガイド溝649は、第1方向L1から見てV字状に窪んでいる。ガイド溝649は、凹部648よりも浅く形成されている。
【0088】
把持部646は、台座部644のうち第2方向L2の他方側を向く第2面644bから、第1方向L1に延びている。把持部646は、作業者が把持可能となるように形成されている。
【0089】
通電部620は、例えば1本の銅線により形成されている。通電部620は、凹部648内の略中央部に配置されたコイル部622と、コイル部622における銅線の両端部622a,622bから延びる一対の接続部624と、を備えている。
【0090】
コイル部622は、第3方向L3に沿う軸線C周りを周回するように延びる螺旋状に形成されている。コイル部622は、第3方向L3から見て円形状に形成されている。コイル部622は、軸線C周りを約1.5周している。コイル部622における銅線の両端部622a,622bは、第3方向L3から見たコイル部622の第1方向L1両側の箇所に形成されている。コイル部622の内側には、ガイド溝649内に配置され、第1方向L1に沿って延在する線材(例えば丸線や平角線等)が配置可能となっている。
【0091】
各接続部624は、コイル部622における銅線の端部622a,622bから凹部648の底面648aに向かって延び、台座部644および把持部646の内部を延びて、把持部646の先端に至る。各接続部624は、把持部646の先端において、溶接装置601の交流電源103に接続された図示しないケーブルに接続される。これにより、通電部620は、ケーブルを介して溶接装置601の交流電源103に接続される。
【0092】
一対のホルダ650は、凹部648の第1方向L1の両側において、ガイド溝649を埋めるように配置されている。各ホルダ650は、基部651と、基部651に立設された嵌入部653と、を備えている。基部651は、第1方向L1および第3方向L3の双方向に延びる矩形板状に形成されている。基部651は、凹部648の第1方向L1の両側において、台座部644の第1面644aに対向するように配置されている。嵌入部653は、基部651に対して第2方向L2の他方側に設けられている。嵌入部653は、第1方向L1に沿って延在している。嵌入部653は、ガイド溝649に嵌入される。これにより、各ホルダ650は、本体部642に取り付けられる。嵌入部653の先端は、ガイド溝649の底部に対して第2方向L2に離間している。嵌入部653の先端とガイド溝649の底部との離間距離については後述する。
【0093】
(溶接方法)
次に、第6実施形態の溶接装置601を用いた金属材の溶接方法について説明する。第6実施形態の溶接方法では、通電部620のコイル部622の内側に、溶接する複数の金属材を互いに隣接させた状態で配置する。すなわち、金属材の溶接箇所を通電部620のコイル部622の内側に配置する。
【0094】
本実施形態では、少なくとも一方がアルミニウムにより形成された一対の丸線W1(金属材)の先端同士を互いに溶接する場合について説明する。
図18に示すように、各丸線W1の先端面は、丸線W1の中心軸線に直交する方向に対して傾斜するように形成されている。そして、各丸線W1は、先端面同士を対向させ、かつ各丸線W1が軸線Cに直交する方向に沿うように配置された状態で、通電部620のコイル部622の内側に配置される。この際、手持ち治具640における第1方向L1を各丸線W1の延在方向に沿わせた状態で、各丸線W1を本体部642のガイド溝649内に入り込ませることで、コイル部622の内側に各丸線W1の先端部を容易に配置することができる。各丸線W1の先端部には、上述した添加剤130を配置してもよい。
【0095】
続いて、一対のホルダ650それぞれの嵌入部653をガイド溝649に嵌入し、ホルダ650を本体部642に取り付ける。丸線W1は、嵌入部653の先端と、ガイド溝649の底部と、の隙間に配置されることで、ガイド溝649内に保持される。つまり、ホルダ650は、嵌入部653の先端とガイド溝649の底部との離間距離が、ガイド溝649内に配置される金属材の形状に対応するように形成される。なお、ホルダ650を本体部642に取り付けなくてもよい。
【0096】
そして、通電部620のコイル部622に、金属に対する衝撃焼入れが可能な周波数の交流電流を流す。これにより、コイル部622の内側に配置された一対の丸線W1の先端部は、コイル部622において発生した磁場により誘導加熱されて溶融する。そして、コイル部622への交流電流の通電を停止させることで、溶融した丸線W1の先端部が冷却され、一対の丸線W1の先端部同士が溶接される。
【0097】
このように、本実施形態の金属材の溶接方法によれば、金属に対する衝撃焼入れが可能な周波数の交流電流により金属材(本実施形態では丸線W1)を誘導加熱するので、上述した各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0098】
しかも、本実施形態では、筐体102から延びる不図示のケーブルに接続した手持ち治具640に通電部620が設けられているので、筐体102から離れた位置において金属材の溶接作業を行うことができる。
【0099】
[第7実施形態]
以下、第7実施形態の金属材の溶接方法について説明する。
(溶接装置の構成)
最初に、第7実施形態に係る金属材の溶接方法で用いる溶接装置701の構成について説明する。なお、溶接装置701は、第6実施形態の溶接装置601の手持ち治具640を手持ち治具740に置き換えたものである。
【0100】
図19は、第7実施形態に係る溶接装置を用いた溶接方法を説明する図である。
図19に示すように、手持ち治具740は、通電部720と、通電部720を保持する本体部742と、を備えている。
本体部742は、第6実施形態の本体部642のガイド溝649が形成されていない点を除いて、第6実施形態の本体部642と略同一の構成を有している。
【0101】
通電部720は、例えば1本の銅線により形成されている。通電部720は、凹部648内に配置されたコイル部722と、コイル部722における銅線の両端部から延びる一対の接続部724と、を備えている。
コイル部722は、第2方向L2に沿う軸線C周りを、第2方向L2に直交する平面内で周回するように延びる平面コイルである。コイル部722は、台座部644の第1面644aよりも、僅かに第2方向L2における凹部648の底面648a側に位置している。コイル部722は、軸線C周りを約1周している。
【0102】
各接続部724は、コイル部722における銅線の端部から凹部648の底面648aに向かって延び、台座部644および把持部646の内部を延びて、把持部646の先端に至る。各接続部724は、把持部646の先端において、溶接装置701の交流電源103に接続された図示しないケーブルに接続される。これにより、通電部720は、ケーブルを介して溶接装置701の交流電源103に接続される。
【0103】
(溶接方法)
次に、第7実施形態の溶接装置701を用いた金属材の溶接方法について説明する。第7実施形態の溶接方法では、溶接する複数の金属材を互いに隣接させ、通電部720のコイル部722に対して金属材の溶接箇所を軸線C方向に対向させた状態で配置する。
【0104】
本実施形態では、少なくとも一方がアルミニウムにより形成され、並べて配置された一対の金属板W3(金属材)の端辺同士を局所的に互いに溶接する場合について説明する。
図19に示すように、一対の金属板W3は、略同等の厚さを有し、互いに端面同士を対向させた状態で配置されている。そして、一対の金属板W3上に手持ち治具740を配置する。この際、手持ち治具740の本体部642における凹部648の底面648aを金属板W3に対向させるように、かつ一対の金属板W3の溶接箇所に対して軸線C方向でコイル部722を対向させるように、手持ち治具740を配置する。これにより、一対の金属板W3における溶接箇所が手持ち治具740のコイル部722に近接する。
【0105】
そして、通電部720のコイル部722に、金属に対する衝撃焼入れが可能な周波数の交流電流を流す。これにより、コイル部722に近接して配置された一対の金属板W3の端辺は、コイル部722において発生した磁場により誘導加熱されて溶融する。そして、コイル部722への交流電流の通電を停止させることで、溶融した金属板W3の端辺が冷却され、一対の金属板W3の端辺同士が局所的に溶接される。
【0106】
このように、本実施形態の金属材の溶接方法によれば、金属に対する衝撃焼入れが可能な周波数の交流電流により金属材(本実施形態では金属板W3)を誘導加熱するので、上述した各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0107】
しかも、本実施形態では、筐体102から延びる不図示のケーブルに接続した手持ち治具740に通電部720が設けられているので、第6実施形態と同様に、筐体102から離れた位置において金属材の溶接作業を行うことができる。
【0108】
そして、上述した各実施形態で説明したように、コイル部122〜722の形状を溶接する複数の金属材の形状に応じて変更することで、溶接する金属材の形状に応じて、コイル部122〜722の内側に発生する磁場を調整でき、金属材の形状に応じて金属材同士を適切に溶接することができる。
【0109】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記各実施形態においては、一対の金属材を互いに溶接する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、3つ以上の金属材を溶接する場合に上述した溶接方法を適用してもよい。
【0110】
また、通電部が備えるコイル部の形状は、上述した各実施形態で述べた形状に限定されず、溶接する金属材の形状等に応じて適宜変更可能である。例えば、磁束密度の分布が金属材の形状に対応するようにコイル部の形状を設定してもよい。
【0111】
また、上記実施形態においては、回転電機1が備える金属材(例えばバスバー31やステータコイル13、ケース3等)同士の溶接を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、パワーコントロールユニットや、パワードライブユニット、バッテリーボックス等が備えるアルミニウムにより形成されたバスバー等の溶接に、上記実施形態で説明した金属材の溶接方法を適用してもよい。また、アルミニウムにより形成された車体や建造物等の溶接に、上記実施形態で説明した金属材の溶接方法を適用してもよい。
【0112】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各実施形態を適宜組み合わせてもよい。