(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記チップシュラウドにおいて径方向内側を向く内周面は、前記上流側から前記下流側に向かって径方向外側に傾斜している、請求項1から4の何れか一項に記載の軸流回転機械。
前記チップシュラウドの前記下流端は、下流側に向かって凸となる湾曲面を有し、該湾曲面は、長軸が前記中心軸方向に一致し、短軸が前記径方向に一致する半楕円の円周面である請求項1に記載の軸流回転機械。
前記チップシュラウドの前記下流端は、下流側に向かって凸となる湾曲面を有し、該湾曲面として、前記径方向の外側の第一湾曲面と、前記径方向の内側の第二湾曲面とが形成されており、
前記第一湾曲面の曲率半径は、前記第二湾曲面の曲率半径よりも大きい請求項1に記載の軸流回転機械。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、動翼の下流側で径方向に流れ出る作動流体の漏れ流れは、ケーシング内を中心軸方向に流れる作動流体の主流に対して、交差するように合流する。作動流体の主流と作動流体の漏れ流れとが交差して合流するときには、作動流体の主流と作動流体の漏れ流れとが衝突して混合されるため、混合損失と呼ばれるエネルギー損失が発生する。この混合損失の増加は、軸流回転機械の効率向上の妨げとなる場合があり、混合損失を低減することが望まれる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、作動流体の主流と作動流体の漏れ流れとの混合損失を低減し、軸流回転機械の効率を高めることができる軸流回転機械、動翼を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明の
一の態様では、軸流回転機械は、中心軸回りに回転する回転軸と、前記回転軸の径方向外側に配置され、その径方向内側を作動流体が前記中心軸方向に沿って上流側から下流側に向かって流れる筒状のケーシングと、前記ケーシングから径方向内側に向かって延びるよう設けられた静翼本体を有する静翼と、前記回転軸から径方向外側に設けられた動翼本体、前記動翼本体の径方向外側に設けられたチップシュラウド、及び、前記チップシュラウドにおいて径方向外側を向く外周面から径方向外側に延び、前記ケーシングの内周面に対向する動翼フィンを備えた動翼と、前記動翼フィンに対して上流側と下流側とにそれぞれ設けられ、前記ケーシングから径方向内側に延びて前記チップシュラウドの前記外周面に対向するケース側フィンと、を備え、前記動翼は、前記チップシュラウドの前記外周面において前記動翼フィンの前記上流側に形成された第一外周面と、前記チップシュラウドの前記外周面において前記動翼フィンの前記下流側に形成され、前記第一外周面よりも径方向内側に位置する第二外周面と、を、有する。前記動翼は、前記動翼フィンにおいて前記上流側を向く面の径方向内側の上流側内周端部が、前記動翼フィンの前記下流側を向く面の径方向内側の下流側内周端部よりも径方向外側に位置することで、前記チップシュラウドの前記上流側の上流端よりも前記チップシュラウドの前記下流側に位置する前記第二外周面の下流端の径方向の厚さ寸法が小さく形成されて
いる。前記動翼は、前記動翼フィンにおいて前記上流側を向く面の径方向内側の上流側内周端部が、前記動翼フィンの前記下流側を向く面の径方向内側の下流側内周端部よりも径方向外側に位置することで、前記チップシュラウドの前記上流側の上流端よりも前記チップシュラウドの前記下流側に位置する前記第二外周面の下流端の径方向の厚さ寸法が小さく形成され
、前記チップシュラウドの前記下流端は、下流側に向かって径方向の厚さが漸次小さくなる湾曲面又は傾斜面を有していてもよい。
【0008】
このような構成によれば、チップシュラウドの上流端よりもチップシュラウドの下流端の径方向の厚さ寸法が小さいので、チップシュラウドとケーシングの内周面との隙間を通った作動流体の漏れ流れがチップシュラウドの下流端から下流側で剥離する際に生じる剥離渦( 後縁のウェーク) が小さくなる。これにより、チップシュラウドの下流側における作動流体の漏れ流れによる損失が低減される。
また、剥離渦が小さくなることで、チップシュラウドの下流端から剥離した作動流体の漏れ流れは、ケーシング内で径方向内側に寄りやすくなる。これによって、作動流体の主流と作動流体の漏れ流れとの混合が、チップシュラウドの下流端に近い位置で開始される。
また、チップシュラウドの上流側で、作動流体の主流から分離した作動流体の漏れ流れは、チップシュラウドとケーシングとの間を径方向外側に向かって流れる。チップシュラウドの上流端は、下流端よりも径方向の厚さ寸法が大きいので、径方向外側に向かって流れる作動流体の漏れ流れは、チップシュラウドの上流端に沿って長く流れる。これにより、チップシュラウドの上流端の径方向外側で作動流体の漏れ流れから剥離して生成される剥離渦が強くなる。チップシュラウドの上流端側における剥離渦が強くなると、作動流体の漏れ流れは、チップシュラウドと上流側のケース側フィンとの隙間を通り抜けにくくなり、漏れ流れが低減される。
また、チップシュラウドとケーシングの内周面との隙間を通った作動流体の漏れ流れがチップシュラウドの下流端から剥離する際に生じる剥離渦が、より一層小さくなる。これにより、チップシュラウドの下流側における作動流体の漏れ流れによる損失を、より一層低減することができる。
【0009】
本発明の
他の態様では
、前記動翼は、前記チップシュラウドの前記外周面において前記動翼フィンの前記上流側に形成された第一外周面と、前記チップシュラウドの前記外周面において前記動翼フィンの前記下流側に形成され、前記第一外周面よりも径方向内側に位置する第二外周面と、前記第一外周面と前記第二外周面との間に設けられ、前記中心軸方向の下流側を向く段差面と、を有していてもよい。
【0010】
このような構成により、チップシュラウドの上流端よりもチップシュラウドの下流端の径方向の厚さ寸法が小さくなる。
【0011】
本発明の
他の態様では
、前記動翼フィンは、前記第一外周面の前記下流側の端部から径方向外側に延びるように形成され、前記動翼フィンの前記下流側を向く面の径方向内側の一部が前記段差面を形成するようにしてもよい。
【0012】
このように構成することで、動翼フィンにおいて下流側を向く面の一部が段差面を形成するので、段差面よりも下流側に動翼フィンが突出することがない。これによって、熱伸び等によって、ケーシング及び静翼と、回転軸及び動翼とが中心軸方向に相対変位した場合に、下流側のケース側フィンが動翼フィンに干渉することを抑制できる。
【0013】
本発明の
他の態様では、前記チップシュラウドの前記外周面は、前記中心軸に平行に形成されていてもよい。
【0014】
これによって、ケース側フィンとチップシュラウドの外周面とのクリアランスを、容易に適正に維持することができる。
【0015】
本発明の
他の態様によれば
、前記チップシュラウドにおいて径方向内側を向く内周面は、前記上流側から前記下流側に向かって径方向外側に傾斜していてもよい。
【0016】
このように構成することで、チップシュラウドの上流端の径方向の厚さ寸法よりも、チップシュラウドの下流端の径方向の厚さ寸法を、より小さくすることが可能となる。
【0019】
本発明の
他の態様によれば
、前記チップシュラウドの前記下流端は、下流側に向かって凸となる湾曲面を有し、該湾曲面は半円の円周面であってもよい。
このような構成によれば、チップシュラウドの下流端から剥離する際に生じる剥離渦をより小さくでき、後縁ロスのさらなる低減が可能である。
【0020】
本発明の
他の態様によれば
、前記チップシュラウドの前記下流端は、下流側に向かって凸となる湾曲面を有し、該湾曲面は、長軸が前記中心軸方向に一致し、短軸が前記径方向に一致する半楕円の円周面であってもよい。
このような構成によれば、チップシュラウドの下流端から剥離する際に生じる剥離渦をより小さくでき、後縁ロスのさらなる低減が可能である。
【0021】
本発明の
他の態様によれば
、前記チップシュラウドの前記下流端は、下流側に向かって凸となる湾曲面を有し、該湾曲面として、前記径方向の外側の第一湾曲面と、前記径方向の内側の第二湾曲面とが形成されており、前記第一湾曲面の曲率半径は、前記第二湾曲面の曲率半径よりも大きくともよい。
このような構成によれば、径方向内側の第二湾曲面の方が、径方向外側の第一湾曲面よりも曲率半径が小さいので、第二湾曲面側で第一湾曲面側よりも蒸気がチップシュラウドの下流端で剥離しやすくなる。即ち、第一湾曲面側で径方向内側に蒸気が向かう一方、第二湾曲面側で中心軸方向に蒸気が向かう。これによって、蒸気の主流が、径方向外側から合流する蒸気の漏れ流れに巻き込まれることを抑制し、蒸気の主流と蒸気の漏れ流れとが混合するときの損失を抑制することができる。
【0022】
本発明の
第一の態様では、作動流体が上流側から下流側に向かって流れるケーシング内で、中心軸回りに回転可能に支持される回転軸の径方向外側に設けられる動翼であって、前記回転軸から径方向外側に延びるよう設けられる動翼本体と、前記動翼本体の径方向外側に設けられるチップシュラウドと、前記チップシュラウドにおいて径方向外側を向く外周面に設けられ、前記外周面から径方向外側に延びる動翼フィンと、を備える。前記動翼は、前記動翼フィンにおいて前記上流側を向く面の径方向内側の上流側内周端部が、前記動翼フィンの前記下流側を向く面の径方向内側の下流側内周端部よりも径方向外側に位置することで、前記チップシュラウドの前記上流側の上流端よりも前記チップシュラウドの前記下流側の下流端の径方向の厚さ寸法が小さく形成さ
れ、前記チップシュラウドの前記下流端は、下流側に向かって径方向の厚さが漸次小さくなる湾曲面又は傾斜面を有している。
【0023】
このような構成によれば、チップシュラウドの上流端よりもチップシュラウドの下流端の径方向の厚さ寸法が小さいので、チップシュラウドとケーシングの内周面との隙間を通った作動流体の漏れ流れがチップシュラウドの下流端から剥離する際に生じる剥離渦が小さくなる。これにより、チップシュラウドの下流側における作動流体の漏れ流れによる損失が低減される。
また、チップシュラウドとケーシングの内周面との隙間を通った作動流体の漏れ流れがチップシュラウドの下流端から剥離する際に生じる剥離渦が、より一層小さくなる。これにより、チップシュラウドの下流側における作動流体の漏れ流れによる損失を、より一層低減することができる。
本発明の第二の態様では、上記第一の態様において、前記チップシュラウドの前記下流端は、下流側に向かって凸となる湾曲面を有し、該湾曲面は半円の円周面であってもよい。
このような構成によれば、チップシュラウドの下流端から剥離する際に生じる剥離渦をより小さくでき、後縁ロスのさらなる低減が可能である。
本発明の第三の態様では、上記第一の態様において、前記チップシュラウドの前記下流端は、下流側に向かって凸となる湾曲面を有し、該湾曲面は、長軸が前記中心軸方向に一致し、短軸が前記径方向に一致する半楕円の円周面であってもよい。
このような構成によれば、チップシュラウドの下流端から剥離する際に生じる剥離渦をより小さくでき、後縁ロスのさらなる低減が可能である。
本発明の第四の態様では、上記第一の態様において、前記チップシュラウドの前記下流端は、下流側に向かって凸となる湾曲面を有し、該湾曲面として、前記径方向の外側の第一湾曲面と、前記径方向の内側の第二湾曲面とが形成されており、前記第一湾曲面の曲率半径は、前記第二湾曲面の曲率半径よりも大きくともよい。
このような構成によれば、径方向内側の第二湾曲面の方が、径方向外側の第一湾曲面よりも曲率半径が小さいので、第二湾曲面側で第一湾曲面側よりも蒸気がチップシュラウドの下流端で剥離しやすくなる。即ち、第一湾曲面側で径方向内側に蒸気が向かう一方、第二湾曲面側で中心軸方向に蒸気が向かう。これによって、蒸気の主流が、径方向外側から合流する蒸気の漏れ流れに巻き込まれることを抑制し、蒸気の主流と蒸気の漏れ流れとが混合するときの損失を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る軸流回転機械、動翼によれば、作動流体の主流と作動流体の漏れ流れとの混合損失を低減し、軸流回転機械の効率を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る軸流回転機械、動翼を図面に基づき説明する。
(第一実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る蒸気タービンの構成を示す模式図である。
図2は、上記蒸気タービンの動翼の先端部を示す拡大図である。
図1に示すように、本実施形態に係る蒸気タービン(軸流回転機械)100は、回転軸1と、ケーシング2と、複数の静翼7を備える静翼段6と、複数の動翼4を備える動翼段3と、を備えている。
【0027】
回転軸1は、中心軸Acに沿って延びる円柱状をなしている。回転軸1は、中心軸Acに沿った中心軸方向Daの両端部が、軸受装置5によって中心軸Ac回りに回転自在に支持されている。軸受装置5は、回転軸1の中心軸方向Da両側に1つずつ設けられたジャーナル軸受5Aと、中心軸方向Daの第一側のみに設けられたスラスト軸受5Bと、を有している。ジャーナル軸受5Aは、回転軸1による径方向Drへの荷重を支持する。スラスト軸受5Bは、回転軸1による中心軸方向Daへの荷重を支持する。
【0028】
ケーシング2は、中心軸方向Daに延びる筒状をなしている。ケーシング2は、回転軸1を外周側から覆う。
ケーシング2は、吸気口10と、排気口11と、を備えている。吸気口10は、ケーシング2の中心軸方向Daの第一側に形成され、外部からケーシング2内に蒸気(作動流体)を取り入れる。排気口11は、ケーシング2の中心軸方向Daの第二側に形成され、ケーシング2内を通過した蒸気を外部に排気する。
以降の説明では、排気口11から見て吸気口10が位置する側を上流側と呼び、吸気口10から見て排気口11が位置する側を下流側と呼ぶ。
【0029】
静翼段6は、ケーシング2の内周面に、中心軸方向Daに沿って間隔をあけて、複数段が設けられている。各静翼段6は、各動翼段3の上流側に配置されている。各静翼段6は、中心軸Ac回りの周方向に間隔をあけて配列された複数の静翼7を有している。
【0030】
静翼7は、静翼本体70と、静翼シュラウド71と、を備えている。
静翼本体70は、ケーシング2の内周面2Sから径方向Dr内側に向かって延びるよう設けられている。静翼本体70は、径方向Drから見て翼型の断面を有している。
静翼シュラウド71は、静翼本体70の径方向Dr内側の端部に取り付けられている。
【0031】
回転軸1の径方向Dr外側を向く外周面1S上において、各動翼段3の上流側には、回転軸1の外周面1Sから径方向Dr内側に向かって窪み、中心軸Ac回りの周方向に連続する溝状の静翼キャビティ8が形成されている。各静翼7の静翼シュラウド71は、静翼キャビティ8内に収容されている。
【0032】
動翼段3は、回転軸1の外周面1Sに、中心軸方向Daの第一側から第二側に向かって間隔をあけて、複数段が設けられている。各動翼段3は、回転軸1の外周面1S上で、中心軸Ac回りの周方向に間隔をあけて配列された複数の動翼4を有している。
【0033】
動翼4は、動翼本体40と、チップシュラウド41と、を有している。
【0034】
動翼本体40は、回転軸1から径方向Dr外側に向かって延びるよう形成されている。動翼本体40は、径方向Drから見て翼型の断面を有している。
本実施形態では、動翼本体40と静翼本体70との径方向Dr寸法は互いに同一とされている。言い換えると、中心軸方向Daから見た場合、動翼本体40と静翼本体70とは互いに重なるように配列されている。
【0035】
図2に示すように、チップシュラウド41は、動翼本体40の径方向Dr外側の端部に設けられている。チップシュラウド41は、中心軸方向Daにおける寸法が、同中心軸方向Daにおける動翼本体40の寸法よりも大きく設定されている。
【0036】
ケーシング2の内周側であって、チップシュラウド41と径方向Drで対向する領域には、チップシュラウド41を収容するための動翼キャビティ20が形成されている。動翼キャビティ20は、ケーシング2の内周面2Sから径方向Dr外側に向かって窪み、中心軸Ac回りの周方向に連続する溝状をなしている。
【0037】
本実施形態において、動翼4は、動翼側フィン42をさらに有している。動翼側フィン42は、チップシュラウド41の中心軸方向Daの中間部に設けられている。動翼側フィン42は、チップシュラウド41において径方向Dr外側を向く外周面41sから径方向Dr外側に延び、その先端部がケーシング2の動翼キャビティ20との間に間隔を空けて対向するよう設けられている。この動翼側フィン42は、中心軸方向Daの上流側を向く上流面43と、中心軸方向Daの下流側を向く下流面44と、を有している。ここで、上流面43は、中心軸方向Daに直交する面内に位置している。下流面44は、中心軸方向Daに沿って上流側から下流側に向かって、漸次径方向内側に延びるよう傾斜して形成されている。
この動翼側フィン42は、チップシュラウド41と一体成形することで形成されている。
【0038】
チップシュラウド41は、第一外周面45Aと、第二外周面45Bと、段差面46と、を有している。
【0039】
第一外周面45Aは、チップシュラウド41の外周面41sにおいて動翼側フィン42の上流側に形成されている。第二外周面45Bは、チップシュラウド41の外周面41sにおいて動翼側フィン42の下流側に形成されている。第二外周面45Bは、第一外周面45Aよりも径方向Dr内側に位置するよう形成されている。チップシュラウド41の外周面41sを構成する第一外周面45A及び第二外周面45Bは、それぞれ、中心軸Ac(
図1参照)に平行に形成されている。
【0040】
段差面46は、第一外周面45Aと第二外周面45Bとの間に設けられ、中心軸方向Daの下流側を向くよう形成されている。この段差面46の径方向Drの外側に、動翼側フィン42が連続して設けられている。言い換えると、動翼側フィン42は、第一外周面45Aの下流側の端部から径方向Dr外側に延びるように形成されている。動翼側フィン42は、下流側を向く下流面44の径方向Dr内側の一部が、段差面46を形成している。
【0041】
このようにして、動翼側フィン42は、上流面43の径方向Dr内側の上流側内周端部43aが、下流面44の径方向Dr内側の下流側内周端部44aよりも径方向Dr外側に位置している。
また、チップシュラウド41において径方向Dr内側を向く内周面41tは、上流側から下流側に向かって径方向Dr外側に傾斜して形成されている。
これにより、動翼4は、チップシュラウド41の上流側の上流端41aよりもチップシュラウド41の下流側の下流端41bの径方向Drの厚さ寸法が小さく形成されている。
【0042】
上記したようなチップシュラウド41の径方向Drの外側には、ケース側フィン22A,22Bが設けられている。ケース側フィン22A,22Bは、動翼側フィン42に対して上流側と下流側とに設けられている。ケース側フィン22A,22Bは、それぞれ、ケーシング2から径方向Dr内側に延び、その径方向Drの内側の先端部が、チップシュラウド41の第一外周面45A,第二外周面45Bに間隔を隔てて対向している。
ここで、第一外周面45A及び第二外周面45Bの径方向Drの位置の差分は、ケース側フィン22Aの径方向Drの内側の先端部と第一外周面45Aとの間の間隔(クリアランス)よりも大きくなっているとよい。
【0043】
以上のように構成された蒸気タービン100の動作について
図1を参照して説明する。
蒸気タービン100を運転するに当たっては、まずボイラ等の蒸気供給源(図示省略)から供給された高温高圧の蒸気が、吸気口10を通じてケーシング2の内部に導入される。
ケーシング2内に導入された蒸気は、動翼4(動翼段3)、及び静翼7(静翼段6)に順次衝突する。各静翼段6においては、上流側から流れてきた蒸気が静翼7に当たることで、この蒸気の流れに回転軸1周りの旋回成分が付与される。これにより、各静翼段6の下流側では、蒸気の流れは回転軸1周りに旋回している。各動翼段3は、上流側の静翼段6を経て回転軸1周りに旋回した蒸気の流れが到達する。この旋回した蒸気の流れが各動翼4に当たることで、回転軸1は回転エネルギーを得て、中心軸Ac回りに回転する。この回転軸1の回転運動は、軸端に連結された発電機等(図示省略)によって取り出される。
以上のサイクルが連続的に繰り返される。
【0044】
上記のようにして、蒸気が、静翼7と動翼4とを交互に経て上流側から下流側に向かって流れることで、主流FMを形成する。この主流FMは、上記のように静翼7と動翼4とに順次衝突することで整流されるとともに、動翼4に対してエネルギーを与える。
【0045】
ここで、各動翼段3においては、上流側から流れてきた蒸気のうち、主流FMを除く成分は、上記の動翼キャビティ20に流れ込み、動翼漏れ流れFLを形成する。
この動翼漏れ流れFLは、チップシュラウド41に対して上流側で、チップシュラウド41の上流端41aと、その上流側に位置する動翼キャビティ20の上流側面21Aとの間を径方向Drの外側に向かって流れる。
ここで、チップシュラウド41の上流端41aの径方向Dr外側では、径方向Drの外側に向かう作動流体の漏れ流れFLの一部が剥離し、剥離渦S1が生成される。チップシュラウド41の上流端41aは、下流端41bよりも径方向Drの厚さ寸法が大きいので、径方向Dr外側に向かって流れる作動流体の漏れ流れFLは、チップシュラウド41の上流端41aに沿って長く流れる。これにより、生成される剥離渦S1が強くなる。
【0046】
径方向Drの外側に向かった作動流体の漏れ流れFLの一部は、上流側のケース側フィン22Aとチップシュラウド41の第一外周面45Aとの間、動翼側フィン42と動翼キャビティ20との間、下流側のケース側フィン22Bとチップシュラウド41の第二外周面45Bとの間を通り抜ける。
【0047】
下流側のケース側フィン22Bとチップシュラウド41の第二外周面45Bとの間を通り抜けた作動流体の漏れ流れFLは、チップシュラウド41の下流端41bから後方に流れ、作動流体の主流FMと合流する。ここで、チップシュラウド41の上流端41aよりもチップシュラウド41の下流端41bの径方向Drの厚さ寸法が小さいので、チップシュラウド41と動翼キャビティ20との隙間を通った蒸気の漏れ流れFLがチップシュラウド41の下流端41bから剥離する際に生じる剥離渦S2が小さくなる。剥離渦S2が小さくなることで、チップシュラウド41の下流端41bから剥離した蒸気の漏れ流れFLは、径方向Dr内側に寄りやすくなる。これによって、蒸気の主流FMと蒸気の漏れ流れFLとの混合が、チップシュラウド41の下流端41bに、より近い位置で開始される。
このようにして蒸気の主流FMと混合した蒸気の漏れ流れFLは、下流側の静翼7へと流れていく。
【0048】
上述したような蒸気タービン100、動翼4によれば、チップシュラウド41の上流端41aよりもチップシュラウド41の下流端41bの径方向Drの厚さ寸法が小さいので、蒸気の漏れ流れFLがチップシュラウド41の下流端41bから剥離する際に生じる剥離渦S2が小さくなる。これにより、チップシュラウド41の下流側における蒸気の漏れ流れFLによる損失が低減される。
また、剥離渦S2が小さくなることで、チップシュラウド41の下流端41bから剥離した蒸気の漏れ流れFLは、径方向Dr内側に寄りやすくなる。これによって、蒸気の主流FMと蒸気の漏れ流れFLとの混合が、チップシュラウド41の下流端41bに近い位置で開始される。これによって、蒸気の漏れ流れFLが、チップシュラウド41の下流端41bに対向する動翼キャビティ20の下流側面21Bにまで到達することを抑制する。したがって、蒸気の漏れ流れFLが下流側面21Bに衝突することで生じる損失が低減される。
また、チップシュラウド41の上流端41aは、下流端41bよりも径方向Drの厚さ寸法が大きいので、チップシュラウド41の上流端41aの径方向Dr外側で蒸気の漏れ流れFLから剥離して生成される剥離渦S1が強くなる。このように、チップシュラウド41の上流端41a側における剥離渦S1が強くなると、蒸気の漏れ流れFLは、チップシュラウド41と上流側のケース側フィン22Aとの隙間を通り抜けにくくなる。したがって、蒸気の漏れ流れFLの量が低減される。
【0049】
また、動翼側フィン42は、下流側を向く下流面44の一部が段差面46を形成するので、段差面46よりも下流側に動翼側フィン42が突出することがない。これによって、熱伸び等によってケーシング2及び静翼7と、回転軸1及び動翼4とが中心軸方向Daに相対変位した場合に、下流側のケース側フィン22Bが動翼側フィン42に干渉することを抑制できる。
【0050】
また、チップシュラウド41の外周面41sは、中心軸Acに平行に形成されている。これによって、ケース側フィン22A,22Bとチップシュラウド41の第一外周面45A,第二外周面45Bとのクリアランスを、容易に適正に維持することができる。
【0051】
また、チップシュラウド41において径方向Dr内側を向く内周面41tは、上流側から下流側に向かって径方向Dr外側に傾斜している。このように構成することで、チップシュラウド41の上流端41aの径方向Drの厚さ寸法よりも、チップシュラウド41の下流端41bの径方向Drの厚さ寸法を、より小さくすることが可能となる。
【0052】
(第二実施形態)
次に、本発明にかかる軸流回転機械、動翼の第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態とチップシュラウド41の下流端41bの形状のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0053】
図3は、本発明の第二実施形態に係る蒸気タービンの動翼の先端部の形状を示す断面図である。
この実施形態における蒸気タービン100の動翼4は、上記第一実施形態と同様の、動翼本体40と、チップシュラウド41と、動翼側フィン42(
図2参照)を有している。
【0054】
図3に示すように、この実施形態におけるチップシュラウド41の下流端41bは、下流側に向かって径方向Drの厚さが漸次小さくなるように、周方向からみて半円状をなす湾曲面48Aによって形成されている。
【0055】
このような構成によれば、チップシュラウド41と動翼キャビティ20との隙間を通った蒸気の漏れ流れFLがチップシュラウド41の下流端41bから剥離する際に生じる剥離渦S2が、より一層小さくなる。これにより、チップシュラウド41の下流側における蒸気の漏れ流れFLによる損失を、より一層低減することができる。
【0056】
(第二実施形態の第一変形例)
図4は、上記第二実施形態に係る蒸気タービンの動翼の先端部の形状の第一変形例を示す図である。
図4に示すように、チップシュラウド41の下流端41bは、下流側に向かって径方向Drの厚さが漸次小さくなる半楕円状の湾曲面48Bによって形成されている。ここで、湾曲面48Bは、中心軸方向Daに長軸方向A1が一致し、径方向Drに短軸方向A2が一致した半楕円状に形成するのが好ましい。
【0057】
このような構成によっても、チップシュラウド41と動翼キャビティ20との隙間を通った蒸気の漏れ流れFLがチップシュラウド41の下流端41bから剥離する際に生じる剥離渦S2が、より一層小さくなる。これにより、チップシュラウド41の下流側における蒸気の漏れ流れFLによる損失を、より一層低減することができる。
【0058】
(第二実施形態の第二変形例)
図5は、上記第二実施形態に係る蒸気タービンの動翼の先端部の形状の第二変形例を示す図である。
図5に示すように、チップシュラウド41の下流端41bは、下流側に向かって漸次径方向内側に傾斜することで、径方向Drの厚さが漸次小さくなる傾斜面48Cによって形成されている。
【0059】
このような構成によっても、チップシュラウド41と動翼キャビティ20との隙間を通った蒸気の漏れ流れFLがチップシュラウド41の下流端41bから剥離する際に生じる剥離渦S2が、より一層小さくなる。これにより、チップシュラウド41の下流側における蒸気の漏れ流れFLによる損失を、より一層低減することができる。
【0060】
(第二実施形態の第三変形例)
図6は、上記第二実施形態に係る蒸気タービンの動翼の先端部の形状の第三変形例を示す図である。
傾斜面48Cは下流側に突出する湾曲面であってもよい。この湾曲面では、径方向Drの中央部付近での接線の径方向Drに対する傾斜角度θが、0度<θ<90度を満たす。
【0061】
(第二実施形態の第四変形例)
図7は、上記第二実施形態に係る蒸気タービンの動翼の先端部の形状の第四変形例を示す図である。
図7に示すように、チップシュラウド41の下流端41bは、下流側に向かって径方向Drの厚さが漸次小さくなるよう形成されている。この変形例において、チップシュラウド41の下流端41bには、径方向Drの外側に第一湾曲面48Dが、径方向Drの内側に第二湾曲面48Eが形成されている。径方向Drの外側の湾曲面48Dの曲率半径Rdは、径方向Drの内側の湾曲面48Eの曲率半径Reよりも大きく設定されている。また、湾曲面48Dと湾曲面48Eとの間は、径方向Drに延びる平面49によって滑らかに連結されている。
【0062】
このような構成によっても、チップシュラウド41と動翼キャビティ20との隙間を通った蒸気の漏れ流れFLがチップシュラウド41の下流端41bから剥離する際に生じる剥離渦S2が、より一層小さくなる。これにより、チップシュラウド41の下流側における蒸気の漏れ流れFLによる損失を、より一層低減することができる。
ここで、チップシュラウド41の下流端41bにおいて、径方向Drの外側の第一湾曲面48Dの方が、径方向Drの内側の第二湾曲面48Eよりも曲率半径R1が大きいので、チップシュラウド41の径方向Drの外側を流れる蒸気の漏れ流れFLがチップシュラウド41の下流端41bから剥離しにくくなる。これによって、蒸気の漏れ流れFLを、第一湾曲面48Dの下流側で、径方向Drの内側に向かって転向させることができる。一方、チップシュラウド41の下流端41bにおいて、径方向Drの内側の第二湾曲面48Eの方が、径方向Drの外側の第一湾曲面48Dよりも曲率半径R2が小さいので、蒸気の主流FMがチップシュラウド41の下流端41bで剥離しやすくなる。即ち、第一湾曲面48D側で径方向Drの内側に蒸気が向かう一方、第二湾曲面48E側で中心軸方向Dcに蒸気が向かう。これによって、蒸気の主流FMが、径方向Drの外側から合流する蒸気の漏れ流れFLに巻き込まれることを抑制し、蒸気の主流FMと蒸気の漏れ流れFLとが混合するときの損失を抑制する。
【0063】
ここで、上記の第三変形例、及び第四変形例のさらなる変形例として、径方向Drの外側の湾曲面48Dの曲率半径Rdと、径方向Drの内側の湾曲面48Eの曲率半径Reとが同一であってもよい。この場合、湾曲面48Dと湾曲面48Eとの間の径方向Drに延びる平面49の径方向Drに対する角度θは0度である。
【0064】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。即ち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上記各実施形態およびその変形例では、動翼側フィン42がチップシュラウド41と一体化されているが、これに限らない。
図8は、上記各実施形態の蒸気タービンの動翼の変形例を示す図である。
例えば、
図8に示すように、動翼側フィン42Fを、チップシュラウド41Fとは別体とするようにしてもよい。この場合、動翼側フィン42Fは、チップシュラウド41Fの外周面41sに形成された第一外周面45Aと第二外周面45Bとの段差面46Fに沿わせるように配置される。動翼側フィン42Fは、その基端部42gを、第二外周面45Bに形成された溝47に嵌め込んで固定される。
【0065】
このような構成において、動翼側フィン42Fは、段差面46Fに突き当たることで、第一外周面45Aよりも径方向Drの外側の部分のみが、動翼側フィン42Fにおいて上流側を向く上流面43Fを形成する。したがって、動翼側フィン42Fにおいて上流側を向く上流面43Fの径方向Dr内側の上流側内周端部43fは、動翼側フィン42Fにおいて下流側を向く下流面44Fの径方向Dr内側の下流側内周端部44gよりも径方向Dr外側に位置している。これにより、上記第一、第二実施形態と同様、チップシュラウド41Fの上流側の上流端(図示無し)よりもチップシュラウド41の下流端41bの径方向Drの厚さ寸法が小さく形成される。
【0066】
また、上述した実施形態、及び各変形例の構成は、適宜組み合わせてよい。