(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取得部は、前記対象装置に設けられた計測器から前記対象装置の状態量に係る複数の計測値を取得し、前記計測値に基づいて他の状態量を推定することで推定値を取得する
請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
装置の故障検出及び性能判定等の用途に応じて複数の計測器により、装置の運用データが計測されることが広く行われており、複数の計測器のそれぞれが、対応するタイミングにおける同一の状態量について、複数の値が計測されることが発生し得る。この場合、監視装置が管理すべき保守及び監視用の状態量の値の設定をすることが困難である。
特許文献1等で提案されている方法によれば、欠落した状態量の値の補完は可能であるものの重複した値を適切に処理することは難しい。
本発明は、上記の課題に鑑みてされたものであって、対象装置の状態量について重複する値が取得された場合に、対象装置の管理に用いる状態量の値を適切に特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、情報処理装置は、対象装置の状態量に係る複数の値を取得する取得部と、取得した複数の値の中から、
同一の期間における同一の状態量に係る複数の値の時系列からなる状態値群を抽出する抽出部と、
前記状態値群に含まれる前記値の時系列の信頼度に基づいて、前記状態値群の中から前記期間における前記対象装置の管理に用いる値の時系列を特定する特定部とを備える。
【0007】
本発明の第
2の態様によれば、第
1の態様に係る情報処理装置は、前記特定部は、前記状態値群に含まれる各時系列の信頼度の差に基づいて、前記状態値群の中から前記期間における前記対象装置の管理に用いる値の時系列を特定するものであってよい。
【0008】
本発明の第
3の態様によれば、第1
又は第
2の態様に係る情報処理装置は、前記取得部は、前記対象装置に設けられた計測器から前記対象装置の状態量に係る複数の計測値を取得し、前記計測値に基づいて他の状態量を推定することで推定値を取得するものであってよい。
【0009】
本発明の第
4の態様によれば、第
3の態様に係る情報処理装置は、前記取得部は、前記対象装置と異なる装置の状態量に係る計測値に基づいて、前記対象装置の状態量に係る推定値を取得するものであってよい。
【0010】
本発明の第
5の態様によれば、第1から第
4の何れかの態様に係る情報処理装置は、前記特定部が特定した値に基づいて、前記状態量に係る値がない時刻に係る前記状態量の値を補完する補完部をさらに備えるものであってよい。
【0011】
本発明の第
6の態様によれば、第1から第
5の何れかの態様に係る情報処理装置は、前記状態値群に含まれる各値を用いて、他の状態量に係る値である比較値を算出する比較値算出部と、前記取得部が取得した前記他の状態量に係る値と、前記比較値算出部が算出した比較値との差に基づいて、前記状態値群に含まれる各値の信頼度を算出する信頼度算出部とをさらに備えるものであってよい。
【0012】
本発明の第
7の態様によれば、第1から第
6の何れかの態様に係る情報処理装置は、前記特定部は、前記状態値群に含まれる各値の統計量に基づいて、前記対象装置の管理に用いる値を特定するものであってよい。
【0013】
本発明の第
8の態様によれば、第1から第
7の何れかの態様に係る情報処理装置は、前記特定部は、前記状態値群に含まれる前記値の
時系列の信頼度に応じた重み付けによる前記状態値群に係る前記値の加重平均値を、前記対象装置の管理に用いる値として特定するものであってよい。
【0014】
本発明の第
9の態様によれば、情報処理方法は、対象装置の状態量に係る複数の値を取得することと、取得した複数の値の中から、
同一の期間における同一の状態量に係る複数の値の時系列からなる状態値群を抽出することと、
前記状態値群に含まれる前記値の時系列の信頼度に基づいて、前記状態値群の中から前記期間における前記対象装置の管理に用いる値の時系列を特定することとを備える。
【0015】
本発明の第
10の態様によれば、プログラムは、コンピュータに、対象装置の状態量に係る複数の値を取得することと、取得した複数の値の中から、
同一の期間における同一の状態量に係る複数の値の時系列からなる状態値群を抽出することと、
前記状態値群に含まれる前記値の時系列の信頼度に基づいて、前記状態値群の中から前記期間における前記対象装置の管理に用いる値の時系列を特定することと実行させる。
【発明の効果】
【0016】
上記態様のうち少なくとも1つの態様によれば、情報処理装置は、同一の状態量に係る複数の値が取得された場合に、その信頼度に基づいて管理に用いる値を特定する。これにより、情報処理装置は、対象装置の状態量について重複する値が取得されたとしても、対象装置の管理に用いる状態量の値を適切に特定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〈第1の実施形態〉
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
《全体構成》
図1は、第1の実施形態に係る管理システムの構成を示す概略ブロック図である。
管理システム1は、対象装置10と、複数の計測器20と、通信装置30と、管理装置40とを備える。
対象装置10は、管理装置40による管理対象の装置である。対象装置10の例としては、例えばガスタービン、蒸気タービン、ボイラ、石炭ガス化炉などが挙げられる。また、環境プラント、化学プラント、および航空機のような交輸システムであってもよい。
計測器20は、対象装置10に設けられ、対象装置10の状態量を計測する。
通信装置30は、計測器20が計測した状態量の計測値をネットワークNを介して管理装置40に送信する。
管理装置40は、通信装置30から受信した計測値に基づいて対象装置10を管理する。管理装置40は、情報処理装置の一例である。
【0019】
《管理装置の構成》
図2は、第1の実施形態に係る管理装置の構成を示す概略ブロック図である。
管理装置40は、計測値取得部41、推測値取得部42、信頼度算出部43、抽出部44、特定部45、管理部46を備える。
【0020】
計測値取得部41は、通信装置30から、複数の計測器20によって計測された状態量の計測値を受信する。
推測値取得部42は、計測値取得部41が取得した計測値に基づいて状態量の値を推測することで、推測値を取得する。例えば、推測値取得部42は、推測対象の状態量の値(例えば、燃焼器の圧力)を、推測対象でない他の状態量(例えば、燃焼器の温度)に係る計測値を所定の数式に代入することで推測してよい。また例えば、推測値取得部42は、対象装置10の状態量(例えば、燃焼器の温度)の値を、対象装置10の操作量(例えば燃料流量)の値に基づいて推測してよい。また例えば、推測値取得部42は、対象装置10を構成する推定対象の機器の状態量(例えば、ガスタービンの圧縮機の雰囲気温度)の値を、推定対象の機器以外の機器に係る状態量(例えば、ガスタービンに接続された電動機の雰囲気温度)の計測値を用いて類推してよい。また例えば、推測値取得部42は、対象装置10の状態量の値(例えば、場所Aに設けられたガスタービンの燃焼器の温度)を、対象装置10以外の装置(例えば、場所Bに設けられたガスタービンの燃焼器の温度)に係る状態量の計測値を用いて類推してよい。また例えば、推測値取得部42は、計測器20による計測値に基づいて、当該計測器20による計測周期の間の時刻における状態量の値を推測してもよい。また、推測値取得部42は、計測値に基づいて既に計算された推測値を、外部の装置から取得してもよい。
計測値取得部41および推測値取得部42は、対象装置の状態量に係る複数の値を取得する取得部の一例である。
【0021】
信頼度算出部43は、計測値および推測値に係る信頼度を算出する。信頼度算出部43は、例えば計測値と信頼度の関係を示すテーブルまたは関係式、もしくは既知の計測器20の信頼度に基づいて、計測値および推測値の信頼度を算出する。
例えば、計測器20は、計測対象の状態量の大きさに応じて、その誤差の大きさが変化することがある。一般的に、状態量の大きさが計測器20の計測対象範囲を超えると誤差が大きくなる傾向がある。この場合、信頼度算出部43は、計測器20が計測した計測値と信頼度の関係を示すテーブルまたは関係式により、当該計測値の信頼度を算出する。また例えば、計測値の応答遅れの早さは、計測器20によって異なる。この場合、信頼度算出部43は、計測器20が計測した計測値の変化速度と信頼度の関係を示すテーブルまたは関係式により、当該計測値の信頼度を算出する。つまり、変化速度が大きいほど応答遅れによる誤差が大きくなるため、信頼度算出部43は、変化速度が大きいほど信頼性を低く評価する。また例えば、計測器20は、計測対象とならない他の状態量の大きさによっても、計測値の誤差の大きさが変化することがある。例えば、温度センサによっては、流体の流速によって温度の計測値の信頼度が変化する場合がある。この場合、信頼度算出部43は、他の状態量の値と計測値の信頼度の関係を示すテーブルまたは関係式により、当該計測値の信頼度を算出する。また例えば、ある計測器20の信頼度が環境によって変動しない場合、計測値の信頼度として一定値を用いてもよい。
また、信頼度算出部43は、推定値の推定に用いる計測値の信頼度と、推測値取得部42による推定値の算出手法の信頼度とに基づいて当該推定値の信頼度を算出する。この場合も、信頼度算出部43は、推定に用いる計測値と算出手法と推定値の信頼度との関係を示すテーブルまたは関係式により、当該推定値の信頼度を算出する。
【0022】
抽出部44は、計測値取得部41が取得した計測値および推測値取得部42が取得した推測値の中から、同一の時刻かつ同一の状態量(対象装置10の同一の箇所における同一の種類)に係る値の群を抽出する。例えば、抽出部44は、複数の計測値および複数の推測値の中から、0時0分10秒の時刻(同一の時刻)におけるタービンの入口温度(同一の状態量)を示す値からなる群を抽出する。ここで、時刻が同一であるということは、計測器20による計測値の取得時刻が同一であることに限られない。例えば、計測器20が応答遅れを有する場合、当該応答遅れに鑑みて特定される時刻を以て同一であるか否かが判定されてもよい。また、必ずしも時刻が一致している必要はなく、一定の誤差範囲内にある値どうしも、同一の時刻に係る値の組であると判定されてよい。以下、抽出部44によって抽出される群を状態値群とよぶ。
【0023】
特定部45は、抽出部44によって抽出された同一の時刻かつ同一の状態量に係る状態値群の中から対象装置10の管理に用いる値を特定する。特定部45は、計測値または推測値の信頼度に基づいて対象装置10の管理に用いる値を特定する。例えば、特定部45は、信頼度が最も高い値を対象装置10の管理に用いる値として特定する。
管理部46は、特定部45によって特定された値に基づいて対象装置10を管理する。対象装置10の管理の例としては、対象装置10の状態量が運転許容範囲を逸脱していないか監視すること、対象装置10の出力が目標を満たしているかを監視すること、および対象装置10に制御信号を出力することなどが挙げられる。
【0024】
《管理装置の動作》
図3は、第1の実施形態に係る管理装置の動作を示すフローチャートである。
管理装置40が対象装置10の管理を開始すると、計測値取得部41は、通信装置30から計測器20による状態量の計測値を取得する(ステップS1)。次に、推測値取得部42は、計測値取得部41が取得した計測値に基づいて状態量の推測値を算出する(ステップS2)。次に、信頼度算出部43は、取得した各値(計測値および推測値)について信頼度を算出する(ステップS3)。
次に、抽出部44は、取得した複数の値の中から、同一の時刻かつ同一の状態量に係る状態値群を抽出する(ステップS4)。特定部45は、抽出部44が抽出した状態値群を1つずつ選択し(ステップS5)、選択された状態値群に含まれる値のうち、信頼度が最も高いものを、対象装置10の管理に用いる値として特定する(ステップS6)。そして管理部46は、計測値取得部41が取得した計測値、推測値取得部42が取得した推測値、および特定部45が特定した値に基づいて対象装置10を管理する(ステップS7)。具体的には、管理部46は、重複のない値(状態値群を構成しない値)についてはその値を用い、重複する値については特定部45によって特定された値を用いて対象装置10を管理する。対象装置10がガスタービンの場合、例えば、ガスタービン出力指令値を変更する、IGVの開度設定を変更する、燃料流量を変更する、等により、特定された管理値に基づいて、対象装置10を管理する。
【0025】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態によれば、管理装置40は、計測器20から取得した同一の状態量に係る状態値群に含まれる値の信頼度に基づいて、当該状態値群の中から対象装置10の管理に用いる値を特定する。これにより、管理装置40は、対象装置10の状態量について重複する値が取得されたとしても、対象装置10の管理に用いる状態量の値を適切に特定することができる。
また、第1の実施形態に係る管理装置40は、ある状態量に係る計測値に基づいて他の状態量の推定値を取得する推測値取得部42を備える。これにより、管理装置40は、計測器20によって計測できない個所の状態量の値を推測することができる。また推測値の信頼度によっては、管理装置40は計測値に代えて当該推測値を用いて対象装置10を管理することができる。他方、他の実施形態においてはこれに限られず、管理装置40は、計測値のみに基づいて対象装置10を管理してもよい。
【0026】
〈第2の実施形態〉
第1の実施形態に係る管理装置40は、同一の時刻における同一の状態量に係る状態値群から対象装置10の管理に用いる値を特定する。これに対し、第2の実施形態に係る管理装置40は、同一の期間における同一の状態量に係る複数の値の時系列からなる状態値群から対象装置10の管理に用いる値を特定する。時系列とは、状態量の時間的な変化を、連続的に観測して得られた値の系列をいう。第2の実施形態に係る管理装置40の構成は第1の実施形態と同様である。
【0027】
《管理装置の動作》
図4は、第2の実施形態に係る管理装置の動作を示すフローチャートである。
管理装置40が対象装置10の管理を開始すると、計測値取得部41は、通信装置30から計測器20による状態量の計測値を取得する(ステップS101)。このとき、計測値取得部41は、計測器20ごとに計測値の時系列を特定する。例えば、計測値取得部41は、ある排気流量センサが計測した排気流量の値の時系列を特定する。
次に、推測値取得部42は、計測値取得部41が取得した計測値に基づいて状態量の推測値を算出する(ステップS102)。このとき、推測値取得部42は、推測手段ごとに推測値の時系列を特定する。なお、推測値取得部42が計測器20による計測周期の間の時刻における状態量の値を推測した場合、計測値の時系列に当該推測値を加えてもよい。
【0028】
次に、信頼度算出部43は、取得した各時系列の値(計測値および推測値)について信頼度を算出する(ステップS103)。次に、抽出部44は、取得した複数の時系列の中から、同一の期間かつ同一の状態量に係る時系列からなる状態値群を抽出する(ステップS104)。特定部45は、抽出部44が抽出した状態値群を1つずつ選択し(ステップS105)、選択された状態値群に含まれる時系列のうち、当該時系列を構成する信頼度の総和が最も高いものを、対象装置10の管理に用いる時系列として特定する(ステップS106)。そして管理部46は、計測値取得部41が取得した計測値の時系列、推測値取得部42が取得した推測値の時系列、および特定部45が特定した時系列に基づいて対象装置10を管理する(ステップS107)。具体的には、管理部46は、重複のない値(状態値群を構成しない値)についてはその値を用い、重複する値については特定部45によって特定された値を用いて対象装置10を管理する。
【0029】
《作用・効果》
このように、第2の実施形態によれば、管理装置40は、同一の期間における同一の状態量の値の時系列からなる状態値群に含まれる時系列の信頼度に基づいて、状態値群の中から対象装置10の管理に用いる値の時系列を特定する。これにより、対象装置10の管理に用いる状態量の値の由来が頻繁に変動することを防ぐことができる。すなわち、状態量(例えば、燃焼器の温度)の値はその由来(計測器20による計測値か、燃料流量に基づく推定値かなど)が異なると、異なる値を示す可能性がある。この場合、状態量の値の変動が不規則になり、対象装置10の管理が困難になる可能性がある。したがって、第2の実施形態に係る管理装置40は、状態値群の中から対象装置10の管理に用いる値の時系列を特定することで、対象装置10を適切に管理することができる。
【0030】
なお、第2の実施形態では、管理装置40は、時系列を構成する信頼度の総和が最も高いものを、対象装置10の管理に用いる時系列として特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態では、各時系列の信頼度の差に基づいて対象装置10の管理に用いる時系列を特定してもよい。例えば、ある状態量について、誤差が大きく時間遅れが小さい計測器20によって計測された値の時系列Aと、誤差が小さく時間遅れが大きい計測器20によって計測された値の時系列Bとがある場合について説明する。このとき、時系列Aと時系列Bの信頼度の差が所定の閾値以下である場合に、管理装置40は時系列Bを用いて対象装置10を管理し、時系列Aと時系列Bの信頼度の差が所定の閾値より大きい場合に、管理装置40は時系列Aを用いて対象装置10を管理する。
【0031】
また、他の実施形態では、管理装置40は、時系列を構成する信頼度の統計量に基づいて対象装置10の管理に用いる時系列を特定してもよい。具体的には、管理装置40は、時系列を構成する信頼度の散布度(分散、標準偏差など)が最も小さいものを、対象装置10の管理に用いる時系列として特定してもよい。また、他の実施形態では、管理装置40は、時系列を構成する信頼度の代表値(平均値、最大値など)が最も大きいものを、対象装置10の管理に用いる時系列として特定してもよい。また、他の実施形態では、管理装置40は、時系列を構成する信頼度の統計量に応じた重み付けによって、時系列の加重平均値を算出し、当該加重平均値に係る時系列を、対象装置10の管理に用いる時系列として特定してもよい。また、他の実施形態では、管理装置40は、時系列を構成する信頼度の統計量と、実験等によって予め特定された対象装置10における状態量に係る信頼度のの統計量との差が最も小さい時系列を、対象装置10の管理に用いる時系列として特定してもよい。
【0032】
〈第3の実施形態〉
第1、第2の実施形態に係る管理装置40では、推測値取得部42が計測器20による計測周期の間の時刻における状態量の値を推測し、これに基づいて対象装置10の管理に用いる値として特定する。これに対し、第3の実施形態に係る管理装置40は、特定部45によって対象装置10の管理に用いる値を決定した後に、特定された値を用いて、状態量に係る値がない時刻に係る当該状態量の値を補完する。
【0033】
《管理装置の構成》
図5は、第3の実施形態に係る管理装置の構成を示す概略ブロック図である。
第3の実施形態に係る管理装置40は、第1の実施形態の構成に加え、さらに補完部47を備える。補完部47は、特定部45によって特定された値を用いて、状態量に係る値がない時刻に係る当該状態量の値を補完する。
具体的には、特定部45が、時刻T1の状態量として計測器20Aの計測値を採用し、時刻T3の状態量として計測器20Bの計測値を採用した場合、補完部47は、時刻T1における計測器20Aの計測値と時刻T3における計測器20Bの計測値とに基づいて時刻T2の状態量の値を補完する。例えば、時刻T1における計測器20Aの計測値と時刻T3における計測器20Bの計測値とに基づいて、時刻T2の状態量の値として内挿する。また例えば、補完部47は、時刻T1における計測器20Aの計測値と時刻T3における計測器20Bの計測値とについて、それぞれの信頼度に対応する重みを適用した荷重平均値を、時刻T2の状態量の値として内挿してもよい。また例えば、補完部47は、時刻T1における計測器20Aの計測値と時刻T3における計測器20Bの計測値とのうち信頼度の高い方を、時刻T2の状態量の値として内挿してもよい。
【0034】
《管理装置の動作》
図6は、第3の実施形態に係る管理装置の動作を示すフローチャートである。
管理装置40が対象装置10の管理を開始すると、計測値取得部41は、通信装置30から計測器20による状態量の計測値を取得する(ステップS201)。次に、推測値取得部42は、計測値取得部41が取得した計測値に基づいて状態量の推測値を算出する(ステップS202)。このとき、推測値取得部42は、計測器20による計測周期の間の時刻における状態量の値を推測しない。次に、信頼度算出部43は、取得した各値(計測値および推測値)について信頼度を算出する(ステップS203)。
次に、抽出部44は、取得した複数の値の中から、同一の時刻かつ同一の状態量に係る状態値群を抽出する(ステップS204)。特定部45は、抽出部44が抽出した状態値群を1つずつ選択し(ステップS205)、選択された状態値群に含まれる値のうち、信頼度が最も高いものを、対象装置10の管理に用いる値として特定する(ステップS206)。
次に、補完部47は、特定部45によって特定された状態量の値に基づいて、状態量に係る値がない時刻を特定する(ステップS207)。補完部47は、特定部45によって特定された値を用いて、状態量に係る値がない時刻に係る当該状態量の値を補完する(ステップS208)。そして管理部46は、計測値取得部41が取得した計測値、推測値取得部42が取得した推測値、特定部45が特定した値、および補完部47によって補完された値に基づいて対象装置10を管理する(ステップS209)。
【0035】
《作用・効果》
このように、第3の実施形態によれば、管理装置40は、対象装置10の状態量の欠落部分を信頼できる値で補完することができ、対象装置10の評価において必要情報を一式揃えることで、より適切な意思決定を行うことができる。これにより、時刻の揃った計測値を使うことでできる判断、例えばきめ細かいサンプルピッチでの予測や診断を実現することができる。
【0036】
〈第4の実施形態〉
第1から第3の実施形態に係る管理装置40の信頼度算出部43は、状態量の値と信頼度の関係を示すテーブルまたは関係式等に基づいて値の信頼度を算出する。これに対し、第4の実施形態に係る管理装置40は、状態値群に含まれる各値に基づいて他の状態量の値を算出し、その算出結果に基づいて信頼度を算出する。
【0037】
《管理装置の構成》
図7は、第4の実施形態に係る管理装置の構成を示す概略ブロック図である。
第4の実施形態に係る管理装置40は、第1の実施形態の構成に加え、さらに比較値算出部48を備える。比較値算出部48は、抽出部44が抽出した状態値群に含まれる各値を用いて、他の状態量(以下、比較状態量という)に係る値である比較値を算出する。例えば、比較値算出部48は、燃焼器の圧力に係る値に基づいて燃焼器の温度を算出し、これを比較値とする。
信頼度算出部43は、比較値算出部48が算出した比較値と比較状態量の計測値または推測値との差に基づいて、状態値群に含まれる各値の信頼度を算出する。例えば、比較値と計測値または推測値の差が小さいほど、信頼度は高くなる。
【0038】
《管理装置の動作》
図8は、第4の実施形態に係る管理装置の動作を示すフローチャートである。
管理装置40が対象装置10の管理を開始すると、計測値取得部41は、通信装置30から計測器20による状態量の計測値を取得する(ステップS301)。次に、推測値取得部42は、計測値取得部41が取得した計測値に基づいて状態量の推測値を算出する(ステップS302)。次に、比較値算出部48は、取得した各値(計測値および推測値)を用いて、比較状態量に係る値である比較値を算出する(ステップS303)。次に、信頼度算出部43は、取得した各値について、比較値と比較状態量の計測値または推測値との差に基づいて信頼度を算出する(ステップS304)。
次に、抽出部44は、取得した複数の値の中から、同一の時刻かつ同一の状態量に係る状態値群を抽出する(ステップS305)。特定部45は、抽出部44が抽出した状態値群を1つずつ選択し(ステップS306)、選択された状態値群に含まれる値のうち、信頼度が最も高いものを、対象装置10の管理に用いる値として特定する(ステップS307)。そして管理部46は、計測値取得部41が取得した計測値、推測値取得部42が取得した推測値、および特定部45が特定した値に基づいて対象装置10を管理する(ステップS308)。
【0039】
《作用・効果》
このように、第4の実施形態によれば、管理装置40は、対象装置10の状態量の欠落部分を補完する際の信頼度を把握することができ、対象装置10の評価において、その信頼度に応じて意思決定を行うことができ、また必要に応じて状態量の再取得など信頼度向上のアクションをとることができる。
【0040】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、上述した実施形態に係る管理システム1における管理装置40は、対象装置10の管理に用いる値の抽出および特定をする機能を有するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る管理システム1においては、管理装置40と別個に対象装置10の管理に用いる値の抽出および特定をする情報処理装置を備え、管理装置40は、情報処理装置が特定した値を用いて対象装置10を管理してもよい。
また例えば、上述した実施形態に係る管理装置40は、ネットワークNを介して計測値を取得するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る管理装置は、計測器20から直接計測値を取得してもよい。この場合、管理システム1は通信装置30を備えなくてもよい。
【0041】
また例えば、上述した実施形態に係る管理装置40は、状態値群の中から1つの値を選択して、管理に用いる値として特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る管理装置40は、状態値群を構成する複数の値から、その信頼度に応じた重みによって加重平均値を求め、当該加重平均値を管理に用いる値として特定してもよい。
【0042】
図9は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、CPU91、主記憶装置92、補助記憶装置93、インタフェース94を備える。
上述の管理装置40は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置93に記憶されている。CPU91は、プログラムを補助記憶装置93から読み出して主記憶装置92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。
【0043】
補助記憶装置93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。補助記憶装置93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムを主記憶装置92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0044】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置93に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。