特許第6803789号(P6803789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803789
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】貼付薬用基材
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/34 20170101AFI20201214BHJP
   D04H 1/435 20120101ALI20201214BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20201214BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20201214BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20201214BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20201214BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   A61K47/34
   D04H1/435
   B32B5/24
   B32B27/36
   A61L15/26 110
   A61K9/70 401
   A61F13/02 310F
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-66487(P2017-66487)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-168090(P2018-168090A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武田 茂樹
【審査官】 梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−343125(JP,A)
【文献】 特開2008−163538(JP,A)
【文献】 特開2016−088855(JP,A)
【文献】 特開2006−230930(JP,A)
【文献】 特開平10−316558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/34
A61F 13/02
A61K 9/70
A61L 15/26
B32B 5/24
B32B 27/36
D04H 1/435
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが6〜25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の表面に、未延伸ポリエステル繊維を含む繊維ウエブを熱接着してなる不織布層が設けられた複合不織布層を含み、かつ該複合不織布層の単位面積当たりの結晶化熱が3.0×10−2J/cm以下である貼付薬用基材であって、
前記フィルムの他方の面にラミネートフィルムを配し、
前記ラミネートフィルムは、環状オレフィン系コポリマー樹脂と低密度ポリエチレン樹脂とをブレンドした単層フィルム、ポリエチレン樹脂からなる単層フィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂からなる単層フィルム、低密度ポリエチレン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを積層構成した複合フィルムから選択される、厚さが25μm以下のラミネートフィルムであって、
KES法の純曲げ試験(KES−FB2法)で求めた凹型応力が凸型応力よりも大きいことを特徴とする貼付薬用基材であって、
温度40℃、相対湿度90%における透湿度が40(g/m/日)以下であることを特徴とする貼付薬用基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の薬剤を含む粘着剤を塗布形成するための貼付薬用基材に関し、特にフィルムと不織布層との複合構造を有し、基材への薬剤吸着が少なく、かつ貼付薬としての密封療法に効果的な基材に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に薬効成分を塗布した貼付薬は、皮膚に貼付するのみで効果を有する利便性、或いは、注射に比べて侵襲性が低いことから、広く普及している。当初は消炎鎮痛を薬効とするものが主流であったが、現在では狭心症や喘息に対応するための血管拡張成分若しくは気管支拡張成分を塗布配合したものが使用されている。周知の通り、貼付薬は、薬効成分及びこれを安定化するための薬剤、皮膚に貼付するための粘着剤を膏体として基材に塗布して構成される。貼付された部位では、皮膚から分泌される汗に由来する水分、または膏体に含まれる水分、アルコールなどの補助成分が体温で皮膚を構成する角質に浸透して一種の蒸れを生じる。このような状態にある角質では、薬効成分の体内への透過性或いは浸透性が高まると考えられており、所謂、密封療法(以下、ODTと称する場合がある)として知られている。
【0003】
このような蒸れが重要なファクターであり、薬効成分の透過量を極大化するためには、基材の透湿度をコントロールする必要がある。つまり、人の安静時における不感蒸泄は600〜700g/m/日程度と言われるが、基材の透湿性が高すぎる場合、上記蒸れは生じず、基材を通して水分が外気に放出され易くなり、効果的な薬剤浸透を図ることが難しくなる。
【0004】
上述した透湿度に着目した技術として、例えば特開2005−343125号公報(以下、特許文献1)では、概略的な断面により示す図1のように、ポリアミド系樹脂からなる不織布11の両面に、ポリアミドエラストマー系樹脂からなる樹脂シート13を積層してなる不織布積層体15が提案されている。当該公報技術は不織布積層体15に粘着剤層17を塗布形成して用いられるが、従前、救急絆創膏等の皮膚用貼付剤の多くが、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のフィルムに粘着加工を施したものでは素材の透湿性に乏しく、皮膚の蒸れを引き起こすという点に着目している。従って、提案に係る不織布積層体15の透湿度は800g/m・24hr以上(以下、本明細書における透湿度の単位は当該公報技術と同義の「g/m/日」として統一表記する)が好ましいと規定され、好適態様を示す実施例欄では、前述した不感蒸泄を大幅に超える3000〜3600g/m/日の透湿度を有する不織布積層体が比較検討されている。このため、前述した不感蒸泄による発生水分量に較べて高い透湿度を基材に与えることで、貼着力の低下防止を図り得るとの開示がある。さらに、貼付時の身体の動きに違和感なく対応するためには、基材となる不織布積層体15の剛軟度(カンチレバー法)は15mm以上で50mm以下とするのが好ましく、かつ、基材がカールして両端の粘着剤塗布面同士が粘着するトラブルも防止し得る。尚、当該特許文献1では、このように剛軟度を選択することによってカールを抑制する特性を「自己支持性が良い」と表現されている。
【0005】
上述した説明からも理解できるように、特許文献1は、主として絆創膏用途に適した基材(本明細書では、貼付薬の粘着成分を除く構成成分を単に「基材」として包括的に表す。)を提案するものであって、蒸れによる薬剤の皮膚透過性を利用するODT効果の達成を意図した技術ではない。これに対して、本出願人は、例えば特開2008−163538号(以下、特許文献2)で、ポリエステルからなる厚さが6μmを超えるフィルムの少なくとも一方の面に、未延伸ポリエステル繊維を含む繊維ウエブを熱接着してなる不織布層が形成された貼付剤用複合不織布を提案している。図2は前述図1と同様に示す断面図であり、この技術では、薬剤吸着の少ないポリエステルフィルム21と、これに加熱接着された不織布層23とで基材となる複合不織布層25を構成する。次いで薬剤を含む粘着剤27を不織布層23側に塗布形成することで貼付剤として使用される。当該文献技術によれば、複合不織布層25を調製する加熱接着工程を経た後、基材自体が有する単位面積当たりの結晶化熱を3.0×10−2J/cm以下とすることによって、未延伸ポリエステル繊維の薬剤吸着能を解消し、しかも、粘着剤27に対する不織布層23の投錨性を付与することができる。尚、同図では、不織布層23の構成繊維が粘着剤27の層領域に混在するため、その界面を破線で示している。この複合不織布層25からなる基材を構成する各構成成分の好適形態は後段で詳述するが、ポリエステルフィルムの厚さは6〜25μm、不織布層の面密度は4〜25g/mとし、基材としての厚さは20〜100μmと開示している。また本明細書では、「ポリエステルフィルム21」と「不織布層23」とが熱接着された後の2層からなる構成成分、換言すれば特許文献2における基材相当の構成成分を「複合不織布層25」と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−343125号公報([特許請求の範囲]、[0002]、[0006]、[0020]、[0046]、[実施例]、[図1]など)
【特許文献2】特開2008−163538号公報([特許請求の範囲]、[0012]、[0024]〜[0027]、など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の基材は、何れも粘着剤を伴って使用される。この際、基材には粘着剤の塗布面方向に所定の応力が加わり、所謂、カール現象が生じる場合がある。例えば、特許文献1の技術では、基材15の厚さ方向で不織布11を中心とした対称な層構造を有するため、基材15が十分な曲げ硬さを持っている場合には粘着剤層17に由来する応力との相対関係でカールを生じることが少ない。これに対して、特許文献2の技術では、基材となる複合不織布25が非対称な2層構成であること、並びに、20〜100μm程度の小さな厚さであることから、粘着剤27の塗布形成後に基材25との間で応力差を生じ、カールを生じる場合が有った。
【0008】
本出願に係る発明者は、上述した特許文献2に係る技術を基に、薬剤吸着の少ないポリエステルフィルムの厚さを増すことにより、カール低減が可能な基材設計を検討した。しかしながら、図2に示す粘着剤塗布後にポリエステルフィルム21の面側に凹となるカール(以下、凹型カールと称する)が強く表れ、これと異なる粘着剤27面側に凸となって、貼付剤とした場合に、その周縁が貼付対象から剥離する場合が有った。この現象は、高価で高濃度の薬剤を配合した粘着剤の場合、剤型が1cm角以下と小さいことから、実用に供するのは極めて不利となる場合が多く、さらには、衣服との擦れにより貼着した製剤が剥がれ落ちる場合もある。また、前述のとおりODT効果を期待するには基材の透湿性が重要な要素である。一例として、厚さ12μmのポリエステルフィルムの透湿性は50g/m/日以上であって、ODTを有効に機能させるのに必要とされる10g/m/日以下の条件を満足することが難しいという問題点も有った。本発明は上述した従来の問題点に鑑みなされたものであって、基材表面側の凹型カールを低減させ、かつ、上述した実用に十分な透湿性を発揮する基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的の達成を図るため、本発明の構成によれば、厚さが6〜25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の表面に、未延伸ポリエステル繊維を含む繊維ウエブを熱接着してなる不織布層が設けられた複合不織布層を含み、かつ、この複合不織布層の単位面積当たりの結晶化熱が3.0×10−2J/cm以下である貼付薬用基材であって、上述したフィルムの他方の面にラミネートフィルムを配し、前記ラミネートフィルムは、環状オレフィン系コポリマー樹脂と低密度ポリエチレン樹脂とをブレンドした単層フィルム、ポリエチレン樹脂からなる単層フィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂からなる単層フィルム、低密度ポリエチレン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを積層構成した複合フィルムから選択される、厚さが25μm以下のラミネートフィルムであって、KES法の純曲げ試験(KES−FB2法)で求めた凹型応力が凸型応力よりも大きい構成となっている。この「凹型応力」とは、基材のラミネートフィルムを内側として曲げようとする際に必要な応力相当の外力を言い、「凸型応力」とは基材の不織布層を内側として曲げようとする際に必要な外力を言う。尚、この2種類の外力は、測定によって得られた値が大きいほど、明示した方向に曲げ固いことを表し、JISL1096に規定のカンチレバー法による剛軟度のような、基材の自重に依存する静的な測定値とは異なり、反復的な屈曲操作で観測可能な動的な曲げ固さが、凹型カール若しくは凸型カールの、何れを生じ易い傾向があるのかを示すための値である。
【0010】
また、本発明の実施に当たり、上述した貼付薬用基材の温度40℃、相対湿度90%の条件下で測定される透湿度は40(g/m/日)以下である。この値は前述した不感蒸泄による水分量の20分の1以下程度の湿度しか透過しないものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の技術を適用することにより、粘着剤を塗布形成した後であっても、基材表面側への凹型カールを軽減し、しかも、実用に十分な透湿性を発揮することによって、ODT効果に優れた基材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】背景技術を説明するため、貼付剤の概略断面によって示す説明図。
図2】他の背景技術の好適形態を説明するため、図1と同様に示す説明図。
図3】本発明の好適形態を説明するため、上述の各図と同様に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照して、本発明の好適形態につき説明する。図3は、図2と同様に概略断面により示す説明図であり、同様の機能を有する構成成分には同一の符号及びハッチングを付す。
【0014】
まず、特許文献2に開示されるとおり、ポリエステルからなるフィルム21には周知のポリエステル系樹脂を種々に選択でき、芳香族ジカルボン酸を主な酸成分とし、アルキレングリコールを主なグリコール成分とし得る。具体的には、芳香族ジカルボン酸として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸等が挙げられる。また、アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘキシレングリコール等が知られている。これら重合成分の組み合わせとして、特に化学的に安定なテレフタル酸とエチレングリコールとの共重合体を用いることができる。基材の工程適性の観点から、係る共重合体からなるポリエステルフィルムは少なくとも1軸延伸されていることが望ましく、市販されているものとして「テトロンフィルム」(帝人デュポンフィルム(株)製,商品名)や「ルミラー」(東レ(株)製,商品名)のような2軸延伸フィルムを採用することができる。
【0015】
次いで、このフィルム21の一方の表面には、未延伸ポリエステル繊維を含む繊維ウエブを熱接着し、単位面積当たりの結晶化熱が3.0×10−2J/cm以下である不織布層23が設けられる。このうち、不織布層23の一原料となる未延伸ポリエステル繊維も、上述したポリエステルフィルムと実質的に同一の樹脂原料とするのが好ましい。また、この繊維ウエブには、未延伸ポリエステル繊維を35〜60質量%含むのが好ましく、残る構成繊維は、当該未延伸ポリエステル繊維を加熱結晶化した後の樹脂組成と実質的に同等なポリエチレンテレフタレート(PET)繊維とするのが良い。係るPET繊維として、例えば「ダクロン」(デュポン社製,商品名)や「テトロン」(東レ(株)製、商品名)として入手可能な延伸PET繊維が好適である。
【0016】
本発明では特許文献2の技術を応用し、フィルム21に設けられた不織布層23とは異なる他方の面にラミネートフィルム31を配して基材33を構成する。このラミネートフィルム31としては、ポリエステル製のフィルム21よりも透湿性の低い、環状オレフィン系コポリマー樹脂と低密度ポリエチレン樹脂とをブレンドした単層フィルム(以下、COC/PE−LDと略記)、ポリエチレン樹脂からなる単層フィルム(以下、PEと略記)、ポリ塩化ビニリデン樹脂からなる単層フィルム(以下、PVDCと略記)、低密度ポリエチレン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを積層構成した複合フィルム(以下、PE−LD+PE−LLDと略記)、或いは上述した何れかの熱可塑性樹脂をベースフィルムとして、アルミ蒸着や酸化アルミ蒸着を施したものなどから任意好適に選択することができる。
【0017】
また、ラミネートフィルムの透湿度は、当然、フィルムの構成樹脂によっても異なるが、一般に厚いほど透湿度は低くなり、ODT効果への寄与は大きくなる。一例としてPVDCの透湿度は、フィルムの厚さ15μmでは1.0(g/m/日)、厚さ25μmの場合には0.6(g/m/日)、及び厚さ38μmの場合には0.4(g/m/日)となることが知られている。しかしながら、基材が所定の厚さを超える場合には貼付薬の端部に加わる力によって、基材自体に剥離を来すなどの虞がある。従って、ラミネートフィルムの厚さは、貼り合わせにおけるピンホール発生の回避や工程内で加わるフィルム張力を考慮した加工適性を満足するため10μm以上、より好ましくは15μm以上とし、上記剥離を防ぐため25μm以下とするのが好ましい。
【0018】
さらに、上述したラミネートフィルムをフィルム21の表面に貼り合わせるにあたっては、フィルム21に熱接着可能な樹脂成分を採用した、所謂、熱ラミネート法、或いは種々のホットメルト樹脂をスプレー状に被着した後に貼り合わせる方法、熱溶融した樹脂を所定の厚さに押し出し、直接フィルムとして貼り付けるダイレクトラミネート法、フィルム21に予めプラズマ処理を施して積層接着強度を上げる手法など、周知の技術を適用することができる。
【0019】
このように構成された本発明の貼付薬用基材は、KES-FB2法による数値関係から理解できるように、前述した凹型カールを生じやすい方向に曲げ固く、これとは相対する方向に曲げる力が小さな値を示すことになる。従って、本発明に言う「凹型応力が凸型応力よりも大きい」とは、前述凹型のカールを生じにくい状態を表しており、粘着剤を塗布形成した後に前述の「凹型カール」を生じる傾向が低い。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の好適形態を適用した実施例と、背景技術を適用した比較例とを評価した結果について説明する。
【0021】
(実施例1及び比較例1)
始めに、評価に用いた各種基材について説明すれば、市販のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する場合がある)からなる、厚さ12.0(μm)、面密度16.8(g/m)の2軸延伸フィルムを準備した。このフィルムに熱接着する繊維ウエブとして、未延伸PET繊維(繊度4.0(デシテックス)×繊維長38(mm))と延伸PET繊維(繊度1.3(デシテックス)×繊維長38(mm))とを質量比40:60に混綿してフラットカード機でウエブ形成した。これら繊維ウエブとフィルムとの熱接着は、195(℃)とした金属ロールと弾性ロールからなるカレンダーにより、線圧30(kg/cm)、生産速度5(m/分)で行ない、上述したフィルムに面密度12(g/m)の不織布層を設けた厚さ50(μm)の比較例1の複合不織布層(基材)を得た。次いで、この比較例1に係る複合不織布層のPETフィルム面に、アクリルゴム系樹脂からなるホットメルト樹脂を約2(g/m)の塗布量となるようにスプレーで施し、市販のPVDCフィルム(厚さ25μm)を積層圧着することによってラミネートフィルムを配し、実施例1に係る基材とした。
【0022】
(実施例2〜実施例4)
上述の実施例1におけるラミネートフィルムに代えて、厚さ15μmのPVCDフィルム(実施例2)、COC/PE−LDの溶融樹脂を20μmの厚さに調整したフィルム(実施例3)、厚さ25μmの市販のPEフィルム(実施例4)を用い、各々、基材とした。
【0023】
(実施例5〜実施例6)
比較例1に係る複合不織布層のPETフィルム面にPE−LD+PE−LLDの溶融樹脂を15μm厚さになるように直接ラミネートした基材(実施例5)、並びにPE−LD+PE−LLDの溶融樹脂を厚さ20μmの厚さになるように直接ラミネートした基材(実施例6)を用い、基材とした。
【0024】
(比較例2及び比較例3)
比較例1とは、繊維ウエブの目付のみが異なる比較例2(繊維ウエブの目付18g/m)並びに比較例3(繊維ウエブの目付30g/m)を得た。
【0025】
(透湿度の測定)
これら実施例1〜実施例6、並びに比較例1〜3の各基材について、JIS L 1099 2012の7.1.1「塩化カルシウム法(A―1法)」に準じて透湿度を測定した。まず、各基材を直径98mmの円形に裁断する。予め約40℃に調製したアルミ製の円筒状透湿カップ(内径60mm、外径90mm、高さ22mm)に、吸湿剤となる塩化カルシウムをカップ上端に3mmのスペースが生じるように平坦に収容し、秤量した。次いで、この透湿カップの上端を評価対象である基材で覆い、パッキン等を使用して円筒状透湿カップを密閉し、試験体とした。この状態の試験体を、人体に貼付した状態に近い温度40℃、相対湿度90%の条件に保つ恒温恒湿装置内に容れて1時間静置し、取り出して秤量した。この秤量値を記録した後、再度、上記恒温恒湿装置内に1時間静置して2度目の秤量を行った。各基材に関して、このような2回の秤量値を記録した。この秤量値のうち、下記の式に示すように、測定開始後1時間経過後の1回目の秤量値をa(g)、測定開始後2時間経過した時点の2回目の秤量値をa(g)とし、これら秤量値の差を透湿面積S(m)で除し、24時間あたりの透湿量に換算することで透湿度P(g/m/日)とした。
P=[(a−a)/S]×24
【0026】
(KES−FB2の測定)
市販の純曲げ試験機(KES−FB2,カトーテック(株)製)を用いて、20cm角に裁断した各基材を[曲率K=―2.5〜2.5cm−1]、[変形速度0.5cm−1/秒]の条件で単位長さ当たりの曲げ剛性を各3回測定した。得られたチャートから、基材の不織布面側に曲げた際の曲げ剛性の最大値を『凸型応力』、ラミネートフィルム(又はフィルム)面側に曲げた際の最大値を『凹型応力』として、各々の平均値で求めた。
上述した各評価用基布の構成、透湿度、KES−FB2の測定結果を[表1]に示す。

【0027】
【表1】
【0028】
この表1から理解できるように、本発明を適用し、ラミネートフィルムを配した各実施例では、各比較例に較べて凸型応力が比較的低く、このラミネートフィルムを内側にしたカールを生じさせるためにより大きな外力を要する傾向が確認できた。このことから、本発明の基材を用いて薬効成分を塗膏した貼付薬では、凹型カールによる、貼付対象からの剥離解消を期待し得ることが理解できる。また、各実施例と各比較例との比較から、複合不織布層に含まれるPETフィルム単独の場合に較べ、何れの実施例でも透湿度の低減を図ることができる。特に実施例5と比較例3とは同一の基材目付であるが、本発明の構成を採用することによって、およそ2分の1の透湿度を達成しており、ODT効果を有効に発揮させ得ることが理解できる。
【符号の説明】
【0029】
11:不織布、13:樹脂シート、15:不織布積層体、17:粘着剤層、21:(ポリエステル)フィルム、23:不織布層、25:複合不織布層(基材)、27:粘着剤、31:ラミネートフィルム、33:基材。

図1
図2
図3