(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803790
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】排ガス後処理システムを有する内燃機関
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20201214BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20201214BHJP
F02B 25/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
F01N3/20 S
F01N3/08 B
F01N3/20 N
F02B25/00
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-67170(P2017-67170)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-207056(P2017-207056A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年9月11日
(31)【優先権主張番号】10 2016 205 299.3
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】プラーメン・トシェフ
(72)【発明者】
【氏名】フランシス・ナナ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・デリング
【審査官】
菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−097665(JP,A)
【文献】
特表2010−513773(JP,A)
【文献】
特開平07−317558(JP,A)
【文献】
特開2015−222074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス後処理システム(3)と複数のシリンダ(7)とを有している内燃機関(1)であって、
少なくとも1つの反応チャンバ(10)の内部に配置されている少なくとも1つの触媒コンバータ(9)と、
前記反応チャンバ(10)それぞれ及び前記触媒コンバータ(9)それぞれに通じている排ガス供給導管(8)と、
前記反応チャンバ(10)それぞれ及び前記触媒コンバータ(9)それぞれから離隔するように延在している排ガス排出導管(11)と、
を含んでいる前記内燃機関(1)において、
前記内燃機関が、一群のシリンダ(7)に対して共通する少なくとも1つの排ガスマニホールド(4)を有しており、
前記排ガスマニホールド(4)それぞれから排出された排ガスが、前記排ガス後処理システム(3)を介して、すなわち前記反応チャンバ(10)それぞれ及びSCR触媒コンバータ(9)それぞれを介して、及び、前記排ガス後処理システム(3)の下流では、前記内燃機関(1)の排ガス過給システム(2)の少なくとも1つの排ガスターボチャージャ(5)を介して誘導可能であり、
前記排ガス供給導管(8)の下流側端部(15)には、バッフル要素(19)が配設されており、前記バッフル要素(19)は、前記下流側端部(15)に対して変位可能であり、
前記バッフル要素(19)は、前記排ガスの流れの内部に存在する液状還元剤の液滴を前記バッフル要素(19)において吸収し、噴霧するように構成されている
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記排ガス後処理システム(3)が、SCR排ガス後処理システムであり、
前記排ガス後処理システム(3)が、還元剤を、特にアンモニア又はアンモニア前駆物質を前記排ガスに導入するために、前記排ガス供給導管(8)それぞれに配設された導入装置(16)と、前記SCR触媒コンバータ(9)それぞれの上流において前記排ガスを前記還元剤と混合するために、前記導入装置(16)それぞれの下流に配置された混合区間(18)と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記排ガスマニホールド(4)それぞれと、前記SCR触媒コンバータの前記混合区間(18)それぞれとが、共通アセンブリを形成するように結合されていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記排ガス供給導管(8)それぞれが、前記共通アセンブリによって提供されていることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記共通アセンブリそれぞれが、前記排ガスマニホールド(4)それぞれから排出された排ガスが、最大3回の方向転換をすることによって、好ましくは最大2回の方向転換をすることによって、特に好ましくは最大1回の方向転換をすることによって、前記混合区間(18)それぞれに供給されるように構成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記共通アセンブリそれぞれが、前記排ガスマニホールド(4)それぞれから排出された排ガスが、最大270°の方向転換をすることによって、好ましくは最大180°の方向転換をすることによって、特に好ましくは最大90°の方向転換をすることによって、前記混合区間(18)それぞれに供給されるように構成されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記共通アセンブリそれぞれが、前記排ガスマニホールド(4)それぞれから排出された排ガスが、方向転換をしないで、前記混合区間(18)それぞれに供給されるように構成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記内燃機関(1)が、バイパス(12)を含んでおり、
排ガスが、前記排ガスマニホールド(4)それぞれから、混合区間(18)それぞれに、前記排ガス供給導管(8)それぞれに、又は前記排ガス排出導管(11)それぞれに排出されるように、前記反応チャンバ(10)それぞれを通過して前記バイパスを介して供給されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項9】
前記排ガス排出導管(11)それぞれから排出された前記排ガスが、前記排ガス過給システム(2)の排ガスターボチャージャ(5)の前記排ガス後処理システム(3)の下流に配置されたタービン(6)に供給可能とされることを特徴とする請求項8に記載の内燃機関。
【請求項10】
前記排ガス供給導管(8)それぞれと前記排ガス排出導管(11)それぞれとが、前記反応チャンバ(10)それぞれの同一の面(22)から、前記反応チャンバ(10)それぞれに向かって開口しているか、又は、前記反応チャンバ(10)それぞれに接続されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項11】
共通アセンブリそれぞれが、前記触媒コンバータ(9)それぞれ又は前記反応チャンバ(10)それぞれから最も遠位に位置するシリンダ側の前記排ガスマニホールド(4)それぞれに通じている排ガス開口位置と、前記触媒コンバータ(9)それぞれ又は前記反応チャンバ(10)それぞれとの間の距離が、前記触媒コンバータ(9)それぞれ又は前記反応チャンバ(10)それぞれから最も遠位に位置するシリンダ側の前記排ガスマニホールド(4)それぞれに通じている前記排ガス開口位置と、前記触媒コンバータ(9)それぞれ又は前記反応チャンバ(10)それぞれに最も近位に位置するシリンダ側の前記排ガスマニホールド(4)それぞれに通じている排ガス開口位置との間の距離の最大で4倍、好ましくは最大で3倍、特に好ましくは最大で2倍に相当するように構成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項12】
すべてのシリンダ(7)について、単一の排ガスマニホールド(4)と単一の混合区間(18)と単一の反応チャンバ(4)とが設けられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項13】
第1のシリンダ群について、第1の共通排ガスマニホールドと第1の共通混合区間と第1共通の反応チャンバとが設けられており、
第2のシリンダ群について、第2の共通排ガスマニホールドと第2の共通混合区間と第2の共通反応チャンバとが設けられており、
前記第1の共通排ガスマニホールド、前記第1の共通混合区間、及び前記第1共通の反応チャンバと、前記第2の共通排ガスマニホールド、前記第2の共通混合区間、及び前記第2の共通反応チャンバとが、反応チャンバそれぞれが内燃機関の両側に配設されるように互いに対して180°オフセットされていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項14】
前記内燃機関(1)が、2サイクル内燃機関であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項15】
還元剤の供給が、シリンダの排ガスを前記排ガスマニホールド(4)に供給する地点より上流において行われることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項16】
混合管(18)が、前記排ガスマニホールド(4)に組み込まれていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス後処理システムを有する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発電所において用いられるような固定された内燃機関における燃焼プロセス、及び、例えば船舶において用いられるような固定されていない内燃機関における燃焼プロセスでは、窒素酸化物が発生し、これらの窒素酸化物は、典型的には、石炭、瀝青炭、褐炭、石油、重油、又は、ディーゼル燃料のような硫黄を含有する、化石燃料の燃焼に際して発生する。従って、このような内燃機関には、内燃機関から排出される排ガスの浄化、特に脱窒に用いられる排ガス後処理システムが配設されている。
【0003】
排ガス中の窒素酸化物を還元するために、実践から知られた排ガス後処理システムでは、まず、いわゆるSCR触媒コンバータが使用される。SCR触媒コンバータでは、窒素酸化物の選択的接触還元が行われ、窒素酸化物の還元のために、還元剤としてアンモニア(NH
3)が必要とされる。このために、アンモニア又はアンモニア前駆物質である尿素等は、SCR触媒コンバータの上流で、液体の形状において排ガスに導入され、アンモニア又はアンモニア前駆物質は、SCR触媒コンバータの上流において、排ガスと混合される。このために、実践によると、アンモニア又はアンモニア前駆物質の導入部とSCR触媒コンバータとの間に、混合区間が設けられている。
【0004】
SCR触媒コンバータを含む、実践から知られた排ガス後処理システムを用いて、排ガス後処理、特に窒素酸化物の還元が、すでに成功裏に実施可能ではあるが、排ガス後処理システムをさらに改善する必要性が存在する。特に、構造を小型化した場合に、効果的な排ガス後処理と、排ガス後処理システムを有する内燃機関の効果的な運転とを可能にする必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような必要性を基点にして、本発明の課題は、構造が小型化され、効果的な排ガス後処理が保証される場合に、効果的に運転され得るような、排ガス後処理システムを有する新型の内燃機関、特に2サイクル内燃機関を創出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、請求項1に記載の内燃機関によって解決される。本発明によると、内燃機関は、1つのシリンダ群に共通の、少なくとも1つの排ガスマニホールドを有しており、排ガスは、それぞれの排ガスマニホールドから、排ガス後処理システム、すなわちそれぞれの反応チャンバ及びそれぞれのSCR触媒コンバータを通るように、及び、排ガス後処理システムの下流では、排ガス過給システムの少なくとも1つの排ガスターボチャージャを通るように誘導可能である。本発明は、小型化された構造において、効果的な排ガス後処理と、内燃機関、特に2サイクル内燃機関の効果的な運転とを可能にする。
【0007】
有利なさらなる発展形態によると、それぞれの混合区間と、それぞれの排ガスマニホールドと、さらに、好ましくはそれぞれの排ガス供給導管とは、共通アセンブリにまとめられている。これによって、特に内燃機関が小型化された構造を有する場合に、効果的な排ガス後処理と、内燃機関、特に2サイクル内燃機関の効果的な運転とが可能になる。
【0008】
好ましくは、それぞれの共通アセンブリは、排ガスが、それぞれの排ガスマニホールドから、最大3回の方向転換、好ましくは最大2回の方向転換、特に好ましくは最大1回の方向転換を経て、最も好ましくは方向転換を経ずに、それぞれの混合区間に供給され得るように構成されている。これによって、内燃機関が小型化された構造を有する場合に、効果的な排ガス後処理と、好ましくは2サイクル内燃機関として構成された内燃機関の効果的な運転とが可能になる。
【0009】
有利なさらなる発展形態によると、それぞれの排ガス供給導管とそれぞれの排ガス排出導管とは、それぞれの反応チャンバの同じ面から反応チャンバに開口しているか、又は、それぞれの反応チャンバの同じ面において、反応チャンバに接続されている。これによって、特に内燃機関が小型化された構造を有する場合に、効果的な排ガス後処理と、好ましくは2サイクル内燃機関として構成された内燃機関の効果的な運転とが可能になる。
【0010】
別の有利なさらなる発展形態によると、それぞれの共通アセンブリは、それぞれの触媒コンバータ又はそれぞれの反応チャンバから最も離れた、シリンダ側のそれぞれの排ガスマニホールドへの排ガス開口位置と、それぞれの触媒コンバータ又はそれぞれの反応チャンバとの間の距離が、それぞれの触媒コンバータ又はそれぞれの反応チャンバから最も離れた、シリンダ側のそれぞれの排ガスマニホールドへの排ガス開口位置と、それぞれの触媒コンバータ又はそれぞれの反応チャンバに最も近い、シリンダ側のそれぞれの排ガスマニホールドへの排ガス開口位置との間の距離の、最大で4倍、好ましくは最大で3倍、特に好ましくは最大で2倍に相当するように構成されている。これによって、特に内燃機関が小型化された構造を有する場合に、効果的な排ガス後処理と、好ましくは2サイクル内燃機関として構成された内燃機関の効果的な運転とが可能になる。
【0011】
好ましくは、内燃機関はバイパスを含んでおり、当該バイパスを通じて、排ガスは、それぞれの反応チャンバを通過して、それぞれの排ガスマニホールド又はそれぞれの混合区間又はそれぞれの排ガス供給導管から、それぞれの排ガス排出導管に、及び、それぞれの排ガス排出導管から、排ガス後処理システムの下流に配置された排ガス過給システムのタービンに供給され得る。これによって、内燃機関が小型化された構造を有する場合に、効果的な排ガス後処理と、好ましくは2サイクル内燃機関として構成された内燃機関の効果的な運転とが可能になる。
【0012】
内燃機関は、好ましくは2サイクル内燃機関である。
【0013】
本発明の好ましいさらなる発展形態は、下位請求項及び以下の説明から明らかになる。図面を用いて、本発明の実施例を詳細に説明するが、それに限定されるものではない。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る排ガス後処理システムを有する内燃機関の概略的な斜視図である。
【
図2】
図1に係る排ガス後処理システムの詳細を示す図である。
【
図4】本発明に係る排ガス後処理システムを有する第2の内燃機関の概略的な斜視図である。
【
図5】本発明に係る排ガス後処理システムを有する第3の内燃機関の概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、排ガス後処理システムを有する内燃機関、例えば発電所の固定された内燃機関、又は、船舶で用いられる固定されていない内燃機関、に関するものである。特に、本発明は、重油で運転される2サイクル船舶用ディーゼル内燃機関に関する。
【0016】
図1は、排ガス過給システム2及び排ガス後処理システム3を有する内燃機関1から成るアセンブリを示している。内燃機関1は、固定されていない、又は、固定された内燃機関、特に固定されずに稼働する船舶用内燃機関であり得る。内燃機関1のシリンダ7から排出される排ガスは、排ガス過給システム2において、排ガスの熱エネルギーから、内燃機関1に供給されるべき過給空気を圧縮するための力学的エネルギーを得るために用いられる。
【0017】
図1は、排ガス過給システム2を有する内燃機関1を示しており、当該排ガス過給システムは、少なくとも1つの排ガスターボチャージャ5を含んでいる。内燃機関1のシリンダ7から排出される排ガスは、排ガスターボチャージャ5のタービン6を通って流れ、当該タービン内で膨張し、その際に得られたエネルギーは、過給空気を圧縮するために、排ガスターボチャージャ5の圧縮機内で利用される。好ましくは、内燃機関1は、高圧ターボチャージャと低圧ターボチャージャとを有する2段排ガス過給システム2を含んでいる。
【0018】
排ガス過給システム2に加えて、内燃機関1は、排ガス後処理システム3を含んでおり、排ガス後処理システム3は、SCR排ガス後処理システムである。SCR排ガス後処理システム3は、内燃機関1のシリンダ7と排ガス過給システム2との間に接続されているので、内燃機関1のシリンダ7から排出される排ガスは、まずSCR排ガス後処理システム3を通り、その後に排ガス過給システム2を通るように誘導され得る。
【0019】
図1は、排ガス供給導管8を示しており、当該排ガス供給導管を通って、排ガスは、内燃機関1のシリンダ7から、反応チャンバ10の内部に配置されたSCR触媒コンバータ9の方向に誘導され得る。さらに、
図1は、排ガス排出導管11を示しており、当該排ガス排出導管は、排ガスをSCR触媒コンバータ9から、排ガスターボチャージャ5のタービン6の方向に排出するために用いられる。
【0020】
図1の内燃機関1は、全てのシリンダ7に共通の排ガスマニホールド4を有している。内燃機関1のシリンダ7から排出される排ガスは、排ガスマニホールド4から、排ガス供給導管8を通って、排ガス後処理システム3、すなわちそれぞれの反応チャンバ10及びそれぞれのSCR触媒コンバータ9の方向に誘導可能であり、排ガス後処理システム3の下流では、排ガス過給システム2の排ガスターボチャージャ5を通じて誘導可能である。
【0021】
反応チャンバ10ひいては反応チャンバ10の内部に配置されたSCR触媒コンバータ9に通じているまで延伸している排ガス供給導管8、及び、反応チャンバ10ひいてはSCR触媒コンバータ9から離隔するように延伸している排ガス排出導管11、又は、排ガスマニホールド4及び排ガス排出導管11は、遮断要素13を内蔵するバイパス12(
図2を参照)を介して連結されている。遮断要素13が閉じられている場合には、バイパス12も閉じられているので、排ガスがバイパス12を介して流通することはできない。対照的に、遮断要素13が開いている場合には、排ガスはバイパス12を介して通過する、すなわち、反応チャンバ10ひいては反応チャンバ10の内部に配置されたSCR触媒コンバータ9を通過することができる。
図2の矢印14は、遮断要素13によってバイパス12が閉じられている場合の、排ガス後処理システム3を通過する排ガスの流れを示しており、
図2から明らかなように、排ガス供給導管8が、下流側端部15において反応チャンバ10に通じており、排ガスの流れは、排ガス供給導管8の当該端部15の領域において約180°又は180°に近い角度で方向転換され、排ガスは、方向転換後にSCR触媒コンバータ9を介して誘導される。
【0022】
排ガス後処理システム3の排ガス供給導管8には、導入装置16が配設されており(
図2を参照)、当該導入装置を通じて、排ガス流れに、特にアンモニア又はアンモニア前駆物質等の、SCR触媒コンバータ9の領域において、排ガスの窒素酸化物を所定の通り変換するために必要な還元剤が導入され得る。排ガス後処理システム3の導入装置16は、好ましくは噴射ノズルであり、当該噴射ノズルを通じて、アンモニア又は尿素等のアンモニア前駆物質が、排ガス供給導管8内で排ガス流れに注入される。
図2は、円錐17によって、排ガス供給導管8の領域における排ガス流れへの還元剤の注入を示している。
【0023】
排ガスの流れる方向に見て、導入装置16の下流及びSCR触媒コンバータ9の上流に位置している排ガス後処理システム3の区間は、混合区間18と称される。特に、排ガス供給導管8は、導入装置16の下流において、混合区間18を提供しており、当該混合区間においては、排ガスが、SCR触媒コンバータ9の上流において、還元剤と混合され得る。
【0024】
内燃機関1の排ガスマニホールド4及び混合区間18は、好ましくは、排ガス供給導管8と共に、共通アセンブリに統合されている。その際、
図2の好ましい実施形態によると、少なくとも部分的に混合区間18を構成する排ガス供給導管8は、排ガスの流れる方向に見て、排ガスマニホールド4の後方に同軸に配置されており、一定量の還元剤の添加は、
図1の16cの位置において行われる。混合区間を延長するために、排ガスマニホールドにおける一定量の還元剤の添加を、各シリンダから排出された排ガスの排ガスマニホールドへの供給の前、又は、供給の間に行うことも可能である(16a、16b)。その際、混合管18aを排ガスマニホールド4の内部に拡張し、そこで一定量の還元剤の添加を行うことが考えられる。
【0025】
図2によると、排ガスマニホールド4、混合区間18、及び、排ガス供給導管8を構成する内燃機関1のそれぞれのアセンブリは、排ガスがそれぞれの排ガスマニホールド4から、方向転換を経ずに、それぞれの混合区間18に供給可能であるように構成されている。
【0026】
従って、
図1では、排ガスは、シリンダ側の排ガス開口位置21の領域において排ガスマニホールド4に流入する際、及び、SCR触媒コンバータ9の上流で、排ガス供給導管8の下流側端部15の領域において反応チャンバ10に流入する際にのみ、方向転換が行われる。これは、小型化された構造を有し、効果的な排ガス後処理が行われる場合に、内燃機関の効果的な運転を保証するために有利である。
【0027】
排ガスマニホールド4、混合区間18、及び、排ガス供給導管8を構成する共通アセンブリは、好ましくは、触媒コンバータ9又は反応チャンバ10から最も離れた、シリンダ側のそれぞれの排ガスマニホールド4への排ガス開口位置21と、触媒コンバータ9又は反応チャンバ10との間の距離が、触媒コンバータ9又は反応チャンバ10から最も離れた、シリンダ側の排ガスマニホールド4への排ガス開口位置21と、触媒コンバータ9又は反応チャンバ10に最も近い、シリンダ側の排ガスマニホールド4への排ガス開口位置との間の距離の、最大で4倍、好ましくは最大で3倍、特に好ましくは最大で2倍に相当するように構成されている。これもまた、小型化された構造を有し、効果的な排ガス後処理が行われる場合に、内燃機関の効果的な運転を保証するために有利である。
【0028】
排ガス供給導管8は、下流側端部15において反応チャンバ10に通じている。排ガス供給導管8の当該下流側端部15には、バッフル要素19(
図2、
図3を参照)が配設されており、当該バッフル要素は、排ガス供給導管8の下流側端部15に対して変位可能である。図示された実施例では、バッフル要素19は、反応チャンバ10に通じている排ガス供給導管8の端部15に対して、直線的に変位可能である。反応チャンバ10の内部に配置され、排ガス供給導管8の下流側端部15に向かい合うバッフル要素19は、排ガス供給導管8の下流側端部15に対して変位可能であり、それによって、排ガス供給導管8は、下流側端部15において遮断されるか、又は、下流側端部15において開放される。
【0029】
バッフル要素19が、排ガス供給導管8を下流側端部15で遮断している場合、好ましくは、バイパス12の遮断要素13が開放され、それによって、排ガスは、完全に、SCR触媒コンバータ9、又は、SCR触媒コンバータ9を受容する反応チャンバ10を通過する。バッフル要素19が、排ガス供給導管8の下流側端部15を開放する場合、バイパス12の遮断要素13は、完全に閉じられているか、又は、少なくとも部分的に開放され得る。バッフル要素19が、排ガス供給導管8の下流側端部15を開放している場合、排ガス供給導管8の下流側端部15に対するバッフル要素19の相対位置は、特に排ガス供給導管8を通る排ガス質量流量、及び/又は、排ガス供給導管8内の排ガスの排ガス温度、及び/又は、導入装置16を通じて排ガス流れに導入された還元剤の量に依存する。排ガス供給導管8の下流側端部15が開放されている場合におけるバッフル要素19のさらなる機能は、排ガス流れの内部に存在する液状還元剤の液滴がバッフル要素19に到達した場合に、バッフル要素19において液滴を吸収し、噴霧することによって、このような液状還元剤の液滴がSCR触媒コンバータ9の領域に到達するのを回避することにある。下流側端部15が開放された場合の、排ガス供給導管8の下流側端部15に対するバッフル要素19の相対位置を通じて、特に、排ガス供給導管8の下流側端部15の領域において、バッフル要素19の領域に方向転換する排ガスを、SCR触媒コンバータ9の径方向内側に位置するセクションの方向により強く、又は、SCR触媒コンバータ9の径方向外側に位置するセクションの方向により強く誘導する、又は、転換するか否かを決定することができる。
【0030】
好ましい一態様によると、排ガス供給導管8は、その下流側端部15の領域において、漏斗状に拡幅し、ディフューザを形成している。それによって、排ガス供給導管8の流れ断面が、下流側端部15の領域において拡大しており、特に
図2から明らかであるように、排ガスの流れる方向に見て、排ガス供給導管8の下流側端部15の上流において、その流れ断面がまず減少することを規定し得る。
【0031】
つまり、
図2によると、排ガス供給導管8の流れ断面は、排ガスの流れる方向に見て、還元剤の導入装置16の下流において、まずほぼ一定であり、その後、まず次第にテーパ状になり、最後に下流側端部15の領域において拡大する。その際、排ガス供給導管8の下流側端部15における流れ断面の拡大は、好ましくは排ガス供給導管8の、排ガス供給導管8が下流側端部15の上流でまずテーパ状になる区間よりも短い区間に亘って行われる。バッフル要素19は、好ましくは排ガス供給導管8に対向する面20において湾曲し、好ましくは鐘状に湾曲し、排ガスのための流路を形成している。排ガス供給導管8の下流側端部15に対向しているバッフル要素19の面20は、バッフル要素19の径方向内側の部分において、排ガス供給導管8の下流側端部15に対して、径方向外側の部分においてよりも短い距離を有している。バッフル要素19は、面20の中央で、排ガス供給導管8の下流側端部15の方向において、排ガスの流れる方向に反して湾曲している。
【0032】
排ガス供給導管8と排ガス排出導管11とは、反応チャンバ10の共通の第1の面22に接続されているか、若しくは、開口しているか、又は、この共通の面22から反応チャンバ10の中へと延在している。その際、排ガス供給導管8は、排ガス供給導管8の下流側端部15が、反応チャンバ10の第1の面22に向かい合う反応チャンバ10の第2の面23に隣接して位置するように、反応チャンバ10の内部に延在しているが、それに対して、排ガス排出導管11は、第1の面22において、反応チャンバ10に開口している。排ガス供給導管8を通じて供給された排ガスは、排ガス供給導管8の下流側端部15に向かい合う反応チャンバ10の第2の面23の領域において、約180°の角度で方向転換された後、SCR触媒コンバータ9を通り、引き続いて下側面22を通り、排ガス排出導管11の領域へと流れる。排ガス排出導管11は、排ガス供給導管8を、反応チャンバ10の面22に隣接して、部分的に外側で、好ましくは同心に包囲している。
【0033】
図1の実施例では、排ガスマニホールド4、混合区間18、及び、排ガス供給導管8を構成する共通アセンブリは、排ガスが、排ガスマニホールド4からそれぞれの混合区間18へ、方向転換を経ずに供給され得るように構成されている。これは、すでに述べたように、好ましい構成である。
【0034】
それに対して、
図4及び
図5は、内燃機関1の実施例を示しており、これらの実施例においては、排ガスは、排ガスマニホールド4から混合区間18の領域に、ひいては排ガス供給導管8の領域へと流れる際に、単一の方向転換を経る。すなわち、一回の方向転換であって、それぞれ90°の角度での方向転換であり、排ガスマニホールド4から排ガス供給導管8へ、従って混合区間18の領域へと移行する際に行われる方向転換である。内燃機関における建設空間の理由から、排ガスの複数回の方向転換が必要である場合、本発明によると、排ガスマニホールド4、排ガス供給導管8、及び、混合区間18を構成するアセンブリは、排ガスが、排ガスマニホールド4から、最大で3回の方向転換、好ましくは最大で2回の方向転換を経て、混合区間18に供給されるように構成されている。
【0035】
図1の実施例では、排ガスは、排ガスマニホールド4から、方向転換を経ずに、それぞれの混合区間18に供給され得るが、
図4及び
図5の実施例では、排ガスは、約90°の方向転換を経ている。複数回の方向転換の場合、排ガスマニホールド4と混合区間18との間の排ガスの方向転換は、最大で270°、好ましくは最大で180°の角度で行われる。しかしながら、排ガスマニホールド4と混合区間18との間の排ガスの方向転換は、最大で90°の角度で行われることが好ましく、排ガスが方向転換を経ずに、排ガスマニホールド4から混合区間18の方向へ供給されることが最も好ましい。
【0036】
図1及び
図4の実施例では、排ガス後処理システム3の水平配置が選択されている。それによると、排ガスマニホールド4と混合区間18と排ガス供給導管8とは、水平方向に延在している。反応チャンバ10は、反応チャンバ10の内部に受容されたSCR触媒コンバータ9と共に、内燃機関1の側面において、水平に配置されている。この場合、内燃機関1の全てのシリンダ7は、保守作業のために自由にアクセス可能である。内燃機関1での保守作業の実施のために、排ガス後処理システム3を分解することは不要である。
【0037】
それに対して、
図5は、本発明に係る内燃機関1の、排ガス後処理システム3が直立して配置された実施形態を示しており、それによると、反応チャンバ10は、反応チャンバ10の内部に受容されたSCR触媒コンバータ9と共に、内燃機関1のシリンダ7の上側に配置されている。すなわち、
図1及び
図4の実施例において、排ガスは、反応チャンバ10の内部に受容されたSCR触媒コンバータ9を、水平方向において貫流するが、
図5の実施例では、SCR触媒コンバータ9の貫流は垂直方向に行われる。
【0038】
図1、
図4及び
図5に示された実施例では、内燃機関1の全てのシリンダ7に、共通の排ガスマニホールド4が配設されている。全ての排ガスは、この排ガスマニホールド4に流入し、排ガスマニホールド4から、混合区間18、排ガス供給導管8の領域へと流れた後、反応チャンバ10の内部に受容されたSCR触媒コンバータ9の領域へと流れる。
【0039】
これとは異なり、内燃機関1のシリンダ7を、例えば2つのシリンダ群に分割することも可能であり、その場合、それぞれのシリンダ群には、シリンダ群ごとに排ガスマニホールド4がそれぞれ配設されている。この場合、好ましくは、各シリンダ群には、シリンダ群ごとに、反応チャンバ10も、反応チャンバ10の内部に受容されたSCR触媒コンバータ9と共に配設されている。
【0040】
この場合、
図1に示されたアセンブリ、すなわち排ガスマニホールド4、混合区間18、排ガス供給導管8、反応チャンバ10、SCR触媒コンバータ9、及び、排ガス排出導管11は、2倍の個数で存在しており、排ガス後処理システム3が水平配置されている場合は、第1の反応チャンバ10は、内燃機関1の第1の面に、第2の反応チャンバ10は、内燃機関1の向かい側の第2の面に配置されており、それによって、利用可能な建設空間を最適に利用することができる。
【0041】
上述した詳細は、特に、残油、重油、又は、天然ガスによっても運転可能な2サイクル内燃機関での適用に適している。しかしながら、本発明は、4サイクル内燃機関でも利用可能である。
【0042】
好ましくは、反応チャンバ10の壁厚は、少なくとも3bar、好ましくは少なくとも4bar、特に好ましくは少なくとも6barの圧力に耐え得るように設定されている。
【0043】
本発明は、SCR排ガス後処理システムだけではなく、CH
4及びHCHO酸化触媒コンバータにも適用される。
【符号の説明】
【0044】
1 内燃機関
2 排ガス過給システム
3 排ガス後処理システム
4 排ガスマニホールド
5 排ガスターボチャージャ
6 タービン
7 シリンダ
8 排ガス供給導管
9 SCR触媒コンバータ
10 反応チャンバ
11 排ガス排出導管
12 バイパス
13 遮断要素
14 排ガスの誘導
15 端部
16 導入装置
17 注入円錐
18 混合区間
19 バッフル要素
20 面
21 排ガス開口位置
22 面
23 面