特許第6803793号(P6803793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 丸一株式会社の特許一覧 ▶ リンナイ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6803793-遠隔操作式排水栓装置 図000002
  • 特許6803793-遠隔操作式排水栓装置 図000003
  • 特許6803793-遠隔操作式排水栓装置 図000004
  • 特許6803793-遠隔操作式排水栓装置 図000005
  • 特許6803793-遠隔操作式排水栓装置 図000006
  • 特許6803793-遠隔操作式排水栓装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803793
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】遠隔操作式排水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20201214BHJP
   E03C 1/23 20060101ALI20201214BHJP
   A47K 1/14 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   E03C1/22 C
   E03C1/23 Z
   A47K1/14 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-77435(P2017-77435)
(22)【出願日】2017年4月10日
(65)【公開番号】特開2018-178459(P2018-178459A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 元幸
(72)【発明者】
【氏名】内川 篤
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 宏明
(72)【発明者】
【氏名】岡野 雄
(72)【発明者】
【氏名】川島 剛
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−253723(JP,A)
【文献】 特開平11−021968(JP,A)
【文献】 特開平10−212747(JP,A)
【文献】 特開2000−303530(JP,A)
【文献】 特開2003−105824(JP,A)
【文献】 特開2017−053166(JP,A)
【文献】 特開2004−211457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/22
A47K 1/14
E03C 1/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体底部の排水口を弁体の昇降で開閉させ、前記弁体の昇降について手動による遠隔操作と電気信号による遠隔操作とを兼用する遠隔操作式排水栓装置であって、
遠隔操作式排水栓装置上方に位置し、手動による遠隔操作の入力を受け付ける手動操作部と、
電気信号による遠隔操作の入力に基づいて動作指示を出力する電動操作指示部と、
手動操作部の操作および電動操作指示部からの動作指示のいずれかにより昇降するスイッチ軸と、
前記電動操作指示部の動作指示に基づいて作動するモーターと、前記モーターを収納するモーター収納部と、前記モーターの回転運動をスイッチ軸の昇降運動に変換させるギア部とを備え、前記弁体を昇降させるワイヤへスイッチ軸の昇降を伝達する駆動部と、
遠隔操作式排水栓装置内に流れ込んだ、手動操作部からの水および弁体側から逆流する水が前記駆動部のうちギア部のある空間へ流入するのを防ぐ止水部と、
遠隔操作式排水栓装置内に流れ込んだ水を通水させる通水部とを備える
ことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置。
【請求項2】
前記駆動部は、側面に着脱自在の蓋部を備える
ことを特徴とする請求項1記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項3】
前記駆動部は、さらに、
前記モーター収納部へ水が流入するのを防ぐ二重止水部を備える
ことを特徴とする請求項1又は2記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項4】
前記モーター収納部は、前記二重止水部と対向する面に着脱自在の蓋部を備える
ことを特徴とする請求項3記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項5】
前記駆動部は、前記モーター収納部の蓋部と対向する面に、前記通水部と前記駆動部とを同時に密閉する着脱自在の蓋部を備える
ことを特徴とする請求項4記載の遠隔操作式排水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面台や浴槽等の槽体の排水口を、遠隔的に開閉操作する遠隔操作式排水栓装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗面台や浴槽などの槽体の排水口を、排水口に直接手を触れることなく、槽体の近傍に設けられた操作部に操作を加えることで遠隔的に開閉操作する遠隔操作式排水栓装置が知られている。電動操作部からの電気信号に基づいてモーターを駆動し、弁体を昇降させて排水口を開閉するものも知られている。浴槽排水口を例に挙げれば、電動操作部を浴室外(例えば、台所)に設置し、浴槽の上縁に手動操作を受け付ける手動操作部を設置して、電動および手動の両操作部を兼ね備えた排水装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−73426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の排水装置では、手動操作部の下方に駆動部が位置しているため、手動操作部から水が流入して駆動部の故障を招いてしまうという問題がある。手動操作部からに限らず、わずかでも駆動部内に水が流入することは好ましくない。故障までには至らなくても、排水中のゴミやヌメリ、水の表面張力などによって駆動部の誤作動が発生するおそれがあるからである。
【0005】
また、駆動部内の点検やメンテナンスを行うためには、すべての部品を分解して行う必要があり、水の流入により故障や誤作動が頻発すれば手間や労力を要するという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、電動操作部および手動操作部を兼ね備える遠隔操作式排水栓装置において、水が流入することによって駆動部の故障や誤作動を生じさせることのない遠隔操作式排水栓装置を提供することを目的とする。また、駆動部内の点検やメンテナンスを容易に行うことができる遠隔操作式排水栓装置を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る遠隔操作式排水栓装置は、槽体底部の排水口を弁体の昇降で開閉させ、前記弁体の昇降について手動による遠隔操作と電気信号による遠隔操作とを兼用する遠隔操作式排水栓装置であって、遠隔操作式排水栓装置上方に位置し、手動による遠隔操作の入力を受け付ける手動操作部と、電気信号による遠隔操作の入力に基づいて動作指示を出力する電動操作指示部と、手動操作部の操作および電動操作指示部からの動作指示のいずれかにより昇降するスイッチ軸と、前記電動操作指示部の動作指示に基づいて作動するモーターと、前記モーターを収納するモーター収納部と、前記モーターの回転運動をスイッチ軸の昇降運動に変換させるギア部とを備え、前記弁体を昇降させるワイヤへスイッチ軸の昇降を伝達する駆動部と、遠隔操作式排水栓装置内に流れ込んだ、手動操作部からの水および弁体側から逆流する水が前記駆動部のうちギア部のある空間へ流入するのを防ぐ止水部と、遠隔操作式排水栓装置内に流れ込んだ水を通水させる通水部とを備えることを特徴とする。
【0008】
これにより、通水区画となる通水部と分離して駆動部を防水区画とするので、流入する水によって駆動部の故障や誤作動を生じさせることのない遠隔操作式排水栓装置が実現可能となる。
【0009】
ここで、前記駆動部は、側面に着脱自在の蓋部を備えるのが好ましい。
【0010】
これにより、駆動部内の点検やメンテナンスを容易ならしめることができる。
【0011】
また、前記駆動部は、さらに、前記モーター収納部へ水が流入するのを防ぐ二重止水部を備えるのが好ましい。
【0012】
これによれば、駆動部の故障や誤作動を招きやすい通電部材を二重の防水区画に配置するので、故障や誤作動の発生をより低減させることができる。
【0013】
さらに、前記モーター収納部は、前記二重止水部と対向する面に着脱自在の蓋部を備えるとしてもよい。
【0014】
これにより、通電部材が配置されている箇所の点検やメンテナンスを容易に行うことができる。
【0015】
また、前記駆動部は、前記モーター収納部の蓋部と対向する面に、前記通水部と前記駆動部とを同時に密閉する着脱自在の蓋部を備えるとしてもよい。
【0016】
これにより、通水部の清掃や点検と、駆動部の点検やメンテナンスを同時に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係る遠隔操作式排水栓装置によれば、通水区画となる通水部と分離した防水区画に駆動部を配置しているので、流入する水により駆動部の故障や誤作動を生じさせることがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】遠隔操作式排水栓装置の平面図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3図1のB−B線断面を示す斜視図である。
図4図1のC−C線断面図である。
図5図2のD−D線断面図である。
図6】駆動部側蓋部の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る遠隔操作式排水栓装置について図を参照しながら説明する。
【0020】
図1は遠隔操作式排水栓装置の平面図であり、図2はA−A線断面を示す図である。図3はB−B線断面を示す斜視図であり、図4はC−C線断面を示す図である。図5は、図2のD−D線断面を示す図である。
【0021】
本実施形態に係る遠隔操作式排水栓装置1は、洗面台や浴槽等の槽体の排水口を、遠隔的に開閉操作する装置であり、槽体50の底部の排水口51内に設けられた弁体52と、弁体52に接続され内部のインナーワイヤーの進退により弁体52を昇降させるワイヤ21と、手動操作および電動操作のいずれかの操作入力により昇降するスイッチ軸12の動きをワイヤ21へ伝達する駆動部18とを備えている。
【0022】
手動スイッチ11は、手動による遠隔操作の入力を受け付け、手動操作の入力によりスイッチ軸12を昇降させる。手動操作部である手動スイッチ11は、遠隔操作式排水栓装置1の上面に配置され、槽体50が浴槽の場合は、浴槽の上縁に配置される。以下では、槽体50が浴槽の場合を例に挙げて説明する。
【0023】
スイッチ軸12は、手動スイッチ11の操作により昇降し、また、電動操作によっても昇降する軸部材であり、その昇降の動きが駆動部18を介してワイヤ21へ伝達される。
【0024】
上方止水部13は、手動スイッチ11からの水が駆動部18内へ流入しないようにするためのパッキン等の止水部材である。上方止水部13は、駆動部18の上端(手動スイッチ11側)のスイッチ軸12を周方向に被覆して水密性を維持し、スイッチ軸12を伝って駆動部18内に水が流入することを防いでいる。
【0025】
電動操作部基板14は、電気回路が搭載された基板であり、入力された電動操作に基づいて動作の指示を出力する電動操作指示部である。すなわち、電動操作部基板14は浴室外(例えば、台所)に設置された電動操作部からの操作入力に基づいてモーター23を起動させる。電動操作部基板14およびモーター23はモーター収納部20に格納されており、ラックとピニオンギアのギア部16によってスイッチ軸12を昇降させる動力が駆動部18へ伝達される。
【0026】
通水部15は、駆動部18の外郭となり、手動スイッチ11からの水を下方へ通水させるための空隙部分である。この通水部15が駆動部18の外側の通水区画となり、駆動部18は通水区画と区分けされた防水区画となる。つまり、駆動部18の内側は、上方止水部13を含む止水部によって水の流入が防がれている区画(防水区画)となり、止水部の外側は通水区画となるので、駆動部18の内部へ手動スイッチ11からの水が流入することがなくなる。
【0027】
通水部15および駆動部18の側面、すなわち、モーター収納部20の反対側は開口されており、着脱自在の駆動部側蓋部24により密閉される。このように、通水部15および駆動部18のうち、電動機器側の反対側面を開口し、通水部15および駆動部18を同時に密閉する駆動部側蓋部24を設けることで、通水部15および駆動部18内部の清掃や点検、メンテナンスを容易に行うことを可能にしている。
【0028】
図6は、駆動部側蓋部24の背面図である。駆動部側蓋部24は、駆動部18を密閉する蓋と通水部15を密閉する蓋とが段差をつけて一体化されている。段差の内側の部分には駆動部18への水の流入を防止するためのパッキン等の止水部材として駆動部側止水部25が設けられている。段差の外側の部分には通水部15から水が装置外へ漏れ出さないようにするためのパッキン等の止水部材として通水部止水部26が設けられている。このように、駆動部側蓋部24は、段差をつけて内側に駆動部18への水の流入を防ぐ駆動部側止水部25を備え、外側に通水部15から装置外への水の流出を防ぐ通水部止水部26を備えることで、通水部15と駆動部18とを同時に密閉している。
【0029】
駆動部18は、手動操作および電動操作のいずれかの操作入力により昇降するスイッチ軸12の動きをワイヤ21へ伝達する。この駆動部18の上方は上方止水部13により止水されている。駆動部18の下方は、駆動部18の下端(ワイヤ21側)に配置されるパッキン等の止水部材である下方止水部19によって止水されている。下方止水部19は、弁体52側(ワイヤ21やワイヤ21を収容し駆動部18側と排水口51側とをつなぐホース)からの逆流水が駆動部18内へ流入することを防いでいる。通水区画である通水部15と区画分けがされて防水区画となっている駆動部18と同じ空間内にモーター23からの動力をスイッチ軸12へ伝達するギア部16も配置されている。この駆動部18は、さらに、ギア部16が配置されている空間とモーター収納部20との間を隔てる壁(隔壁)が形成されており、モーター収納部20が二重の防水区画とされている。ギア部16のピニオンギアの回転軸だけがこの隔壁を貫通し、この回転軸周りにパッキン等の止水部材が設けられている。
【0030】
この隔壁と止水部材とで構成されるのがモーター側止水部17である。このモーター側止水部17が二重止水部として機能することにより、電動操作部基板14やモーター23が収納されるモーター収納部20を二重の防水区画とし、駆動部18の故障や誤作動を招きやすい通電箇所への水の流入を防ぐことができる。
【0031】
モーター収納部20のうち、ギア部16が配置されている空間とモーター収納部20との間の壁と対向する面は開口されて、これを密閉するための着脱自在のモーター側蓋部22が設けられており、モーター収納部20内部の清掃や点検、メンテナンスを容易に行うことが可能となっている。モーター側蓋部22が設けられている面は、通水部15と反対側に位置する面であるから水が流入することは考えにくい。しかしながら、モーター収納部20の完全防水を図るうえでモーター側蓋部22もパッキン等の止水部材を備えておくのが好ましい。
【0032】
このように構成された遠隔操作式排水栓装置1は、通水区画となる通水部15と分離された防水区画に駆動部18を配置しているので、水が駆動部18内に流入して駆動部18の故障や誤作動を招くことを防止することができる。さらに、駆動部内18にモーター側止水部17を設けて、モーター収納部20を二重防水の区画としているので、駆動部18の故障や誤作動を招きやすい通電箇所へ水が流入することを極力防ぐことができる。
【0033】
また、通水部15および駆動部18の一方の側面が開口され、これを密閉する駆動部側蓋部24が設けられているので、通水部15および駆動部18内部の清掃や点検、メンテナンスが容易となる。さらに、モーター収納部20も通水区画と反対側の側面が開口され、これを密閉するモーター側蓋部22が設けられているので、モーター収納部20内の清掃、電動操作部基板14やモーター23の点検およびメンテナンスが容易となる。このように、駆動部18の両側を開口し、着脱自在の蓋部を設けることで、全ての部品を分解することなく装置内部を点検等することを可能にしている。また、一方の側面は通水部15の開口部にもなっているため、駆動部18の点検等と同時に通水区画の清掃やメンテナンスを実施可能にしている。
【0034】
以上、本発明に係る遠隔操作式排水栓装置について、実施形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
【0035】
例えば、上記実施の形態では、槽体が浴槽の場合を例に挙げて説明したが、槽体は浴槽に限られるものではなく、洗面台やシンクなどであってもよい。
【0036】
また、上記実施の形態では、止水部として、上方止水部、下方止水部、および、駆動部側蓋部の駆動部側止水部を説明したが、上記構成のいずれか1つだけ備えるとしてもよく、駆動部内への水の流入を防ぐものであれば、止水位置はこれらに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、洗面台や浴槽等の槽体の排水口を、遠隔的に開閉操作する遠隔操作式排水栓装置として有用であり、特に電動および手動の両操作部を兼ね備えた遠隔操作式排水栓装置に好適である。
【符号の説明】
【0038】
1 遠隔操作式排水栓装置
11 手動スイッチ
12 スイッチ軸
13 上方止水部
14 電動操作部基板
15 通水部
16 ギア部
17 モーター側止水部
18 駆動部
19 下方止水部
20 モーター収納部
21 ワイヤ
22 モーター側蓋部
23 モーター
24 駆動部側蓋部
25 駆動部側止水部
26 通水部止水部
50 槽体
51 排水口
52 弁体
図1
図2
図3
図4
図5
図6