(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ゴム弾性部材が有する粘着面に、硬化性樹脂組成物を配し、前記硬化性樹脂組成物上にシート状基材を配し、前記硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化物とし、前記硬化物及び前記シート状基材を一体的に剥離することによって、前記粘着面に付着していた異物を前記硬化物及び前記シート状基材とともに除去する、ゴム弾性部材の再生方法であって、
前記硬化性樹脂組成物は、ポリビニルアルコール、及びポリ酢酸ビニルからなる群から選択される少なくとも1種を含む、ゴム弾性部材の再生方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《ゴム弾性部材の再生方法》
本発明は、ゴム弾性部材が有する粘着面に、硬化性樹脂組成物を配し、前記硬化性樹脂組成物上にシート状基材を配し、前記硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化物とし、前記硬化物及び前記シート状基材を一体的に剥離することによって、前記粘着面に付着していた異物を前記硬化物及び前記シート状基材とともに除去する、ゴム弾性部材の再生方法である。
図1は、本発明のゴム弾性部材の再生方法を示すフロー図である。基体1の表面にゴム弾性部材2が積層されており、ゴム弾性部材2の粘着面には異物3が付着している。まず、ゴム弾性部材2の粘着面に、硬化性樹脂組成物4を配する(工程(a))。硬化性樹脂組成物4の上にシート状基材5を配して付着させる(工程(b))。硬化性樹脂組成物4を硬化させて硬化物4’とする(工程(c))。硬化物4’とシート状基材5とを一体的に剥離して、異物3を除去する(工程(d))。
以下、各構成について詳細に説明する。
【0011】
(ゴム弾性部材)
ゴム弾性部材の形状は、電子部品等の被粘着物を粘着して保持することが可能な粘着面を有する形状であればよく、例えば、シート状、板状等の平坦形状が挙げられる。ゴム弾性部材の厚みは特に限定されず、例えば0.005mm〜5mm程度に設定され得る。
ゴム弾性部材の粘着面の面積は用途に応じて適宜設定され、例えば、100cm
2(10cm×10cm)〜600cm
2(20cm×30cm)とすることができる。
【0012】
ゴム弾性部材の粘着面の全体が均一な粘着性を有していてもよいし、粘着面の一部が他の部分と異なる不均一な粘着性を有していてもよい。粘着面の粘着性が不均一である場合、その粘着面において、相対的に強い粘着性を有する強粘着部と、相対的に弱い粘着性を有する弱粘着部と、粘着性を有さない非粘着部とが、任意に配置された構成が例示できる。例えば、被粘着物を粘着して保持する主要な役割を果たす強粘着部が、弱粘着部又は非粘着部の間に一定間隔でアレイ状に配置された構成が挙げられる。
【0013】
ゴム弾性部材の粘着面は、電子部品等の被粘着物を粘着して保持することが可能な粘着力を有している。前記強粘着部の粘着力は、被粘着物を充分に保持する観点から、後述する測定方法で測定して、1〜60g/mm
2が好ましく、7〜60g/mm
2がより好ましい。
上記の粘着力を有すると、例えば、シリコンウエハ、フレキシブルプリント基板、大画面表示装置用のガラス板、チップコンデンサ、セラミックコンデンサ、コイルフィルター、抵抗素子、導電回路、コンデンサ、LSI、インダクタ等の電子部品を容易に粘着して保持し、必要に応じて容易に取り外すことができる。
【0014】
上記粘着力の測定方法は、粘着面の少なくとも測定部位が平坦である場合に適用され、次の通りに行われる。まず、測定する粘着面を備えたゴム弾性部材を水平に固定し、測定環境を21±1℃、湿度50±5%に設定する。次に、デジタルフォースゲージに取り付けられた直径10mmの円柱を成したステンレス鋼(SUS304)製の接触子を、下降速度10mm/分で下降させ、ゴム弾性部材の粘着面(例えば強粘着部)に接触させる。
この接触子を粘着面に対して、25g/mm
2の押込み荷重で垂直に3秒間押圧する。その後、180mm/分の上昇速度で前記接触子を粘着面から垂直に引き離す。このときにデジタルフォースゲージによって引き離し荷重を読み取る。この操作を、粘着面の複数箇所、例えば10箇所で行い、得られる複数の引き離し荷重を算術平均した値を粘着面の粘着力とする。
【0015】
上記粘着力の測定において用いる、ゴム弾性部材の固定装置としては、例えば、吸着固定装置(商品名:電磁チャック、KET−1530B、カネテック社製)や市販の真空吸引チャックプレートが挙げられる。上記の接触子を取り付けるデジタルフォースゲージとしては、例えば「商品名:ZP−50N、イマダ社製」が挙げられる。上記粘着力の測定は、手動で行ってもよいが、例えば、テストスタンド(例えば、商品名:VERTICAl MODEL MOTORIZED STAND シリーズ、イマダ社製)等の機器を用いて、自動で行ってもよい。
【0016】
粘着面の表面粗さは、被粘着物の取り付け及び取り外しを容易にする観点から調整されていてもよく、例えば、十点平均粗さRz(JIS B 0601−1994)が0.5〜3μmに調整されていることが好ましい。ここで例示した十点平均粗さRzは、カットオフ0.8mm、測定長さ2.4mmの条件で測定し、複数個所の測定値を算術平均した値である。
ここで、上記の粘着面の表面粗さは、粘着面に異物が付着していない状態の数値である。
【0017】
粘着面の硬度(JIS K6253[デュロメータA])は、被粘着物の取り付け及び取り外しを容易にする観点から調整されていてもよく、例えば、5〜60程度に調整されていることが好ましい。硬度が、5以上であると充分な粘着力が得られ易く、60以下であると被粘着物の取り外しを容易に行うことができる。
【0018】
ゴム弾性部材は、単独で使用されてもよいし、他の基体に装着されて使用されてもよい。
基体の形状は特に限定されず、ゴム弾性部材を支持する目的に適した形状が適宜採用される。基体を形成する材料は特に限定されず、例えば、金属、樹脂、セラミックス等が挙げられる。
【0019】
ゴム弾性部材の少なくとも粘着面は、粘着剤組成物によって形成され得る。粘着面を構成するゴム材料としては、例えば、シリコーンゴム、フッ素系エラストマー、ウレタン系エラストマー、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合エラストマー等の各種エラストマー等が挙げられる。なかでも、強度、耐薬品性に優れたシリコーンゴム、フッ素系エラストマーが好ましい。シリコーンゴムとしては、例えば、特許第4656582号公報に記載された粘着性組成物によって得られたものが好ましい。フッ素系エラストマーとしては、例えば、特許第4632031号公報、特許第2990646号公報、特開2000−007835号公報、特開2001−106893号公報、特開2003−201401号公報等に記載されたものが好ましい。
【0020】
(硬化性樹脂組成物)
ゴム弾性部材が有する粘着面に配する前記硬化性樹脂組成物としては、粘着面に配した後に粘着面上で硬化した硬化物が、シート状基材と一体的に粘着面から容易に剥離され得るものが好ましい。また、剥離の際に、粘着面に付着していた異物を硬化物と共に除去できるものが好ましい。ここで、「硬化」とは物理的作用又は化学的作用によって硬化性組成物の成分が固体に変化するこという。このような硬化性樹脂組成物としては、例えば、分散媒に樹脂が分散された樹脂組成物、分散媒に樹脂前駆体が分散若しくは溶解された樹脂前駆体組成物が挙げられる。ここで、「樹脂」には一般的な合成樹脂の他、ゴム及びエラストマーも含まれる。例えば、硬化性組成物から分散媒が蒸発することにより硬化性組成物を硬化させることができる。
【0021】
前記樹脂組成物としては、例えば、次に例示する水分散系接着剤組成物が挙げられる。
ここで、水分散系接着剤組成物は、エマルションであってもよいし、非エマルションであってもよい。水分散系接着剤組成物は、配する粘着面を劣化させたり、粘着面に付着している異物を変性させたりする恐れが少ないので好ましい。
具体的な水分散系接着剤組成物としては、例えば、水にポリ酢酸ビニル(酢酸ビニル樹脂)が分散されたポリ酢酸ビニル分散液、水にエチレン−酢酸ビニル樹脂共重体(EVA)が分散されたEVA分散液、水にポリビニアルコールが分散されたポリビニルアルコール分散液、水に天然ゴム(ラテックス)が分散されたラテックス分散液、水にエーテルセルロース(セルロースのエーテル誘導体:例えばメチルセルロース)が分散されたエーテルセルロース分散液、水に澱粉が分散された澱粉分散液、水にαオレフィン(例えばイソブチレン)と無水マレイン酸の共重合体が分散されたαオレフィン系樹脂分散液、水にラテックス状のスチレン−ブタジエンゴム(SBRラテックス)が分散されたSBRラテックス分散液、水に(メタ)アクリル系樹脂が分散された(メタ)アクリル系樹脂分散液、水にウレタン系樹脂が分散されたウレタン系樹脂分散液、水に公知の水性高分子及びイソシアネートが分散されたイソシアネート架橋型樹脂分散液、水にフェノール樹脂が分散されたフェノール樹脂分散液、水にメラミン樹脂が分散されたメラミン樹脂分散液、水にウレア樹脂が分散されたウレア樹脂分散液等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
これらの分散液には、公知の添加剤が含まれていてもよい。
【0022】
前記樹脂組成物としては、例えば、次に例示する有機溶剤系接着剤組成物が挙げられる。有機溶剤系接着剤組成物は、粘着面に配した後に有機溶剤を除去するための乾燥が水に比べて容易であるため好ましい。
具体的な有機溶剤系接着剤組成物としては、例えば、溶剤に天然ゴムが含まれた天然ゴム溶液、溶剤にカゼインが含まれたカゼイン溶液、溶剤に(メタ)アクリル系樹脂が含まれた(メタ)アクリル系樹脂溶液、溶剤にウレタン系樹脂が含まれたウレタン系樹脂溶液、溶剤に塩化ビニル樹脂が含まれた塩化ビニル樹脂溶液、溶剤にクロロプレンゴムが含まれたクロロプレンゴム溶液、溶剤にスチレン−ブタジエンゴム(SBR)が含まれたSBR溶液、溶剤にニトリルゴムが含まれたニトリルゴム溶液、溶剤にニトロセルロースが含まれたニトロセルロース溶液、溶剤にフェノール樹脂が含まれたフェノール樹脂溶液、溶剤にメラミン樹脂が含まれたメラミン樹脂溶液、溶剤にウレア樹脂が含まれたウレア樹脂溶液、溶剤にフッ素系エラストマー(フッ素含有エラストマー)が含まれたフッ素系エラストマー溶液、溶剤にシリコーンゴムが含まれたシリコーンゴム溶液、等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
これらの溶液には、公知の添加剤が含まれていてもよい。これらの溶液を構成する溶剤は、目的の樹脂を溶解又は分散可能な公知の有機溶剤が適用される。
【0023】
前記樹脂前駆体は、樹脂モノマー又はプレポリマーをいう。
前記樹脂前駆体組成物は、配された粘着面上において、前記樹脂前駆体が反応し樹脂を形成するものである。具体的な樹脂前駆体組成物としては、例えば、水又は有機溶剤に酢酸ビニルが含まれたポリ酢酸ビニル前駆体組成物、水又は有機溶剤にエチレン及び酢酸ビニルが含まれたEVA前駆体組成物、水又は有機溶剤にビニルアルコールが含まれたポリビニルアルコール前駆体組成物、水又は有機溶剤に(メタ)アクリル酸又はそのアルキルエステルが含まれた(メタ)アクリル系樹脂前駆体組成物、水又は有機溶剤にポリオール及びポリイソシアネートが含まれたウレタン系樹脂前駆体組成物、水又は有機溶剤にエポキシ樹脂プレポリマーが含まれたエポキシ樹脂前駆体組成物、架橋成分を含むフッ素ゴム及び補強フィラーと架橋剤が含まれたフッ素樹脂前駆体組成物、水又は有機溶剤にオルガノポリシロキサン(その末端が例えば水酸基又はビニル基であるもの。)及び架橋剤が含まれたシリコーン系樹脂前駆体組成物等が挙げられる。
前記樹脂前駆体組成物には、光重合開始剤、熱重合開始剤、硬化剤、安定剤等の公知の添加剤が含まれていてもよい。
【0024】
前記硬化性樹脂組成物に含まれる前記樹脂又は前記樹脂前駆体の含有量は、前記硬化性樹脂組成物が前記粘着面に配され得る粘度を呈し、その硬化後に、前記粘着面上に硬化物を形成可能な量であればよい。具体的な前記含有量は、前記樹脂又は前記樹脂前駆体の種類にもよるが、前記硬化性樹脂組成物の総質量に対して、例えば、0.1〜50質量%の範囲で調整することができる。
【0025】
(硬化性樹脂組成物を粘着面に配する方法)
ゴム弾性部材の粘着面に前記硬化性樹脂組成物を配する(設ける)方法としては、例えば、前記粘着面に前記硬化性樹脂組成物を塗布(塗工)する方法、前記粘着面に前記硬化性組成物を転写する方法等が挙げられる。
【0026】
前記塗布する方法としては、所望の厚みで塗布可能な公知方法が適用でき、例えば、フィルムコーター、フィルムアプリケーター、バーコーター、ダイコーター、スピンコーター、ロールコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬、噴霧、キャスティング、吐出、刷毛塗り等が挙げられる。また、前記硬化性樹脂組成物の粘度が低い場合には、塗布領域の周囲に囲い(土手)を設けて、硬化性樹脂組成物をその囲いの中へ注入するように塗布してもよい。
上記の塗布方法のうち、粘着面に付着している異物を、ゴム弾性部材の内部へ刺し込んだり、粉砕したりする恐れが少ない方法が好ましい。この観点から、粘着面に付着している異物が、ガラス、金属又は半導体によって形成された小片である場合、囲いを設けて注入する塗布方法が好ましい。
【0027】
前記転写する方法としては、例えば、まず、離型フィルムの表面に前記硬化性樹脂組成物を配し(硬化性樹脂組成物層/離型フィルム層)の層構成を有する積層フィルムを準備する。次に、この積層フィルムの硬化性樹脂組成物層を前記粘着面に接触させ、その硬化前の粘着性を利用して前記硬化性樹脂組成物層を前記粘着面に付着させるとともに、前記積層フィルムの前記離型フィルム層を引き離すことによって、前記硬化性樹脂組成物層を前記粘着面に転写する方法が挙げられる。この転写方法においても、前記粘着面に付着している異物をゴム弾性部材の内部へ刺し込んだり、粉砕したりする恐れが少ない。
【0028】
前記粘着面における前記硬化性樹脂組成物を配する領域は、少なくとも粘着面に付着した異物が存在する領域の全体を覆う領域が好ましく、粘着面の全面に配してもよい。また、配した領域を上方から見たときの形状は、硬化後の硬化物を上方から見たときの形状に対応する。この形状は硬化物を剥離することを考慮して決定され、例えば、矩形、楕円形、円形、その他の多角形等の任意の形状に設定される。その形状が剥離方向に沿って充分に長い(例えば50〜200mm)と、硬化物を剥離することが容易になり、粘着面上の異物の除去も容易になる。したがって、前記硬化性樹脂組成物を配する領域の長手方向、即ち硬化物の長手方向は、剥離方向と一致していることが好ましい。
【0029】
前記粘着面に配した前記硬化性樹脂組成物の厚みは、目的の硬化物の厚みに合わせて適宜設定すればよく、粘着面に付着した異物の全体を覆う程度の厚みで配することが好ましく、例えば、5μm〜1000μm程度、好ましくは10μm〜500μmの厚みで配することができる。
【0030】
(シート状基材)
シート状基材としては、通気性基材、吸湿性基材、メッシュ構造を有する基材、又は不織布が好ましい。
通気性基材とは、水蒸気の通過は許すが、液体水に対しては実質的に不透過性の基材を意味する。通気性基材は、JIS K 7129B法によって23℃で測定したときの水蒸気透過度が、100〜5000g/m
2・dayであることが好ましい。水蒸気透過度が上記範囲内であると、硬化性樹脂組成物に含まれる溶媒が気化して通過しやすくなるため、硬化性樹脂組成物が硬化しやすくなる。
通気性基材としては、多孔質シートが挙げられる。
多孔質シートを構成する材料としては、例えば、LDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)またはメタロセン系触媒PE等の各種ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、EVAおよびエチレン、プロピレン、ブテン、オクテン等のポリオレフィン共重合系、ポリアミド系、ポリエステル系等が挙げられる。
【0031】
吸湿性基材とは、水蒸気を吸収するものである。
吸湿性基材を構成する材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、ナイロン、アクリル樹脂、ABS樹脂、ベンジルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、フェニルセルロース等が挙げられる。あるいは、吸湿性基材は、ゼオライトやシリカゲルなどの乾燥剤を含む樹脂からなるものであってもよい。
基材は通気性と吸湿性の両方を備えていてもよい。
【0032】
メッシュ構造を有する基材とは、交差する繊維により構成される複数の格子を含む構造を有する基材を意味する。格子の構造としては、例えば、正方形、矩形、ひし形等が挙げられる。
前記繊維を構成する材料としては、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、テフロン(登録商標)、ガラス繊維等が挙げられる。
格子の一辺の長さは、0.5〜5mmが好ましい。格子の一辺の長さが上記範囲内であると、硬化性樹脂組成物に含まれる溶媒を通過させやすくなるため、硬化性樹脂組成物が硬化しやすくなる。また、硬化性樹脂組成物が硬化した後の硬化物と一体的な剥離が容易になる。
【0033】
不織布とは、繊維を織らずに絡み合わせたシート状のものである。
前記繊維としては、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維等が挙げられる。また、低密度ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、共重合ポリアミド樹脂、共重合ポリエステル樹脂等の樹脂を不織布状に絡み合せたものであってもよい。
【0034】
シート状基材の厚みは、10〜500μmが好ましく、25〜100μmがより好ましい。
シート状基材の厚みが上記上限値以下であると、硬化性樹脂組成物の硬化物と一体的に剥離しやすい。
シート状基材の厚みが上記下限値以上であると、剥離時の破れや破損が生じる可能性が低くなる。
【0035】
(硬化性樹脂組成物の硬化方法)
ゴム弾性部材の粘着面に配した前記硬化性組成物を硬化させる方法としては、例えば、大気圧又は真空下で乾燥する方法、加熱する方法、紫外線等のエネルギー線を照射する方法等の公知方法が適用される。硬化の程度は、完全硬化であってもよいし、半硬化であってもよい。上記の硬化方法うち、ゴム弾性部材を繰り返し使用する目的のために、粘着面を劣化させることを防止する観点から、大気圧又は真空下で乾燥する方法が好ましい。
シート状基材は、完全に硬化する前の硬化性組成物の上に配されている。硬化後の硬化物は、ゴム弾性部材の粘着面とシート状基材に接着する。
【0036】
硬化後の硬化物をプレスして、硬化物の粘着面に対する接着力、及びシート状基材に対する接着力を強化しても構わないが、プレスによって、粘着面に付着している異物を、ゴム弾性部材の内部へ刺し込んだり、粉砕したりする可能性を検討すべきである。
【0037】
硬化物の厚みは、少なくとも粘着面に付着した異物の全体を覆う程度の厚みであることが好ましく、例えば、5μm〜1000μm程度、好ましくは10μm〜500μmの厚みにすることができる。このような厚みであると、硬化物は粘着面上で被膜を形成する。
被膜の剥離は容易であり、被膜に取り込まれた異物の除去も容易である。
なお、本明細書において厚みは、シックネスゲージを用いて任意の10箇所について厚みを測定し、その測定値を平均した値である。
硬化物を上方から見たときの形状は硬化物を剥離することを考慮して決定され、例えば、矩形、楕円形、円形、その他の多角形等の任意の形状に設定される。その形状が剥離方向に沿って充分に長い(例えば50〜200mm)と、硬化物を剥離することが容易になり、粘着面上の異物の除去も容易になる。したがって、硬化物の長手方向は、剥離方向と一致していることが好ましい。硬化物の形状は、硬化性樹脂組成物の塗工時に調整してもよいし、硬化後にナイフやレーザー加工等で成形してもよい。
また、シート状基材の平面視の形状は、硬化物と同じでもよいし、異なっていてもよい。シート状基材の平面視の面積は、硬化物の平面視の面積よりも広い方が好ましい。
【0038】
粘着面上で硬化した硬化物は、粘着面よりもシート状基材に対してより強く接着している。この関係により、シート状基材を剥離すると、硬化物を伴って剥離させることができる。
上記の関係は、粘着面の材料が、シリコーンゴム又はフッ素系エラストマーである場合、シート状基材が粘着面の材料と異なる材料であれば、前述した多様な硬化性組成物によって実現することができる。硬化物のシリコーンゴム又はフッ素系エラストマーに対する接着力が過度に大きくなることは通常生じないからである。
【0039】
(硬化物及びシート状基材の剥離方法)
粘着面上で硬化した硬化物及びシート状基材を粘着面から一体的に剥離する方法は特に限定されず、例えば、シート状基材の開放端をつかみ、上方へ向かって又はシート状基材の長手方向に沿って平行に、分離が進行するように任意の速度で引き剥がす方法が挙げられる。
引き剥がす速度としては、例えば、50〜300mm/分程度が好ましい。
上記速度範囲であると、硬化物の破れが生じ難く、硬化物が異物を取り込んだ状態で容易に剥離することができる。
【0040】
硬化物及びシート状基材を粘着面から剥離する際の剥離力は、硬化物が異物を保持する保持力に相関する場合がある。上記の剥離力は、JISZ0237:2009 「粘着テープ・粘着シート試験方法の90度はく離」に準じて測定され、例えば0.2〜3N/10mmが好ましく、0.5〜2N/10mmがより好ましい。上記範囲の下限値以上であると、硬化物が異物を保持した状態で剥離することが容易になり、異物除去効率を高められる。上記範囲の上限値以下であると、硬化物を剥離する操作が容易になり、ゴム弾性部材の変形や破損を防ぐことができる。
【0041】
(粘着面から除去される異物)
ゴム弾性部材の粘着面から除去される異物とは、そのゴム弾性部材の本来の用途において粘着面に粘着させる被粘着物とは異なる物であり、その被粘着物を粘着させることを妨げる恐れのある物である。例えば、被粘着物がセラミックコンデンサ、チップ抵抗、コイル、半導体ウエハ、ガラス基板等の電子部品である場合、異物としては、例えば、埃、塵、金属片、ガラス片、シリコンウエハ片等が挙げられる。
【0042】
異物が上記の小片である場合、その最大径が5mm以下、好ましくは3mm以下、より好ましくは1mm以下であると、本態様の方法により容易に除去することができる。ここで、小片の最大径とは、小片の全体を含む最小の仮想球の直径をいう。小片の最大径の測定方法としては、粘着面の上方から小片を顕微鏡で観察し、仮想球を円で代用して設定し、その直径を定規で測定する方法が挙げられる。
【0043】
本発明にかかるゴム弾性部材の再生方法は、異物が粘着面の表面に対して単に粘着している場合に限られず、異物の一部分が粘着面を突き刺して、粘着面の内部(ゴム弾性部材の内部)にその一部分が存在する場合にも有効であり、粘着面から容易に異物を除去することができる。
【0044】
<作用効果>
本発明のゴム弾性部材の再生方法によれば、その粘着面上で硬化物を形成することよって、粘着面に付着した異物を硬化物が確実に保持することがでる。硬化物は粘着面よりもシート状基材に対してより強く接着している。この硬化物をシート状基材と一体的に剥離することによって、異物を充分に除去することができるとともに、硬化物が剥離途中でちぎれるのを防ぐことができる。粘着テープを利用した従来の異物除去方法とは異なり、剥離した硬化物を再度粘着面に押し付ける操作は必要ない。
また、本発明の方法において、硬化性樹脂組成物の配置、及びその硬化物の剥離からなる一連の操作は、ゴム弾性部材の粘着面が大面積である場合にも、小面積である場合と同様に容易に行うことができる。
【実施例】
【0045】
[実施例1]
(電子部品保持治具の準備)
粘着面を有するゴム弾性シートを備えた電子部品保持治具を次のように準備した。
まず、120mm四方のステンレス鋼板の一方の表面をアセトンで脱脂処理した後、シリコーンゴム接着用プライマー(商品名「X−33−156−20」、信越化学工業株式会社製)を適量塗布して、23℃の環境中で乾燥し、プライマー層(厚さ3μm)を形成した。そのステンレス鋼板を金型に収納して、下記のシリコーン組成物を金型に注入し、120℃、10MPaでトランスファー成形し、200℃で4時間の硬化を行った。これにより、基材のステンレス鋼板の表面にシリコーン製粘着シートが形成された、電子部品保持治具を得た。
【0046】
(付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物の組成)
・シリコーンゴム(商品名「X−34−632 A/B」、信越化学工業株式会社製)99質量%及びシリカ系充填材(株式会社龍森製、商品名「クリスタライト」)1質量%を含有する粘着性シリコーン組成物 60質量部
・粘着力調整組成物として液状シリコーンゴム組成物(商品名「KE−1950/40
A/B」、信越化学工業株式会社製) 40質量部
【0047】
上記で作製した電子部品保持治具の粘着面に、金属粉末(平均粒子径:10μm)5mgを均一に付着させ、ゴムローラーで金属粉末を圧着した。
上記の金属粉末が付着したシリコーンゴムの粘着面の全体に対して、ポリビニルアルコール水溶液を厚さ約100μmとなるように、バーコーターで塗布した。この上にポリビニルアルコールフィルム(厚さ25μm、商品名:ポバールフィルム、株式会社クラレ製)を貼り付けた。続いて室温で24時間自然乾燥させると、ポリビニルアルコール水溶液は厚さ約50μmの透明な被膜になった。
ポリビニルアルコールフィルムの端部を治具でつかみ、ポリビニルアルコールフィルムの長手方向へ剥離速度100mm/分で剥離した。
上記の方法によって再生した粘着面を拡大顕微鏡で観察したところ、粘着面に粘着したり突き刺さったりしていた金属粉末は、殆ど全て粘着面から除去されていた。
【0048】
[実施例2]
実施例1と同様にして、金属粉末が付着したシリコーンゴムを作製した。
上記の金属粉末が付着したシリコーンゴムの粘着面の全体に対して、ポリビニルアルコール水溶液を厚さ約100μmとなるように、バーコーターで塗布した。この上にポリビニルアルコールフィルム(厚さ40μm、商品名:ポバールフィルム、株式会社クラレ製)を貼り付けた。続いて乾燥機中で100℃にて20分間乾燥させると、ポリビニルアルコール水溶液は、厚さ約50μmの透明な被膜になった。
ポリビニルアルコールフィルムの端部を治具でつかみ、ポリビニルアルコールフィルムの長手方向へ剥離速度100mm/分で剥離した。
上記の方法によって再生した粘着面を拡大顕微鏡で観察したところ、粘着面に粘着したり突き刺さったりしていた金属粉末は、殆ど全て粘着面から除去されていた。
【0049】
[実施例3]
実施例1と同様にして、金属粉末が付着したシリコーンゴムを作製した。
上記の金属粉末が付着したシリコーンゴムの粘着面の全体に対して、酢酸ビニルエマルジョン接着剤を厚さ約500μmとなるように、バーコーターで塗布した。この上にナイロンメッシュ(厚さ1mm、商品名:ナイロンメッシュシート、株式会社サンテック製)を貼り付けた。続いて室温で24時間自然乾燥させると、酢酸ビニルエマルジョン接着剤は厚さ約300μmの透明な被膜になった。
ナイロンメッシュの端部を治具でつかみ、ナイロンメッシュの長手方向へ剥離速度300mm/分で剥離した。
上記の方法によって再生した粘着面を拡大顕微鏡で観察したところ、粘着面に粘着したり突き刺さったりしていた金属粉末は、殆ど全て粘着面から除去されていた。
【0050】
[比較例1]
実施例1と同様にして、金属粉末が付着したシリコーンゴムを作製した。
上記の金属粉末が付着したシリコーンゴムの粘着面の全体に対して、ポリビニルアルコール水溶液を厚さ約100μmとなるように、バーコーターで塗布した。これを室温で24時間自然乾燥させると、ポリビニルアルコール水溶液は厚さ約50μmの透明な被膜になった。
被膜の端部を治具でつかみ、被膜の長手方向へ剥離速度100mm/分で剥離した。しかし、完全に剥離するまでに被膜が数回ちぎれてしまった。
【0051】
[比較例2]
実施例1と同様にして、金属粉末が付着したシリコーンゴムを作製した。
上記の金属粉末が付着したシリコーンゴムの粘着面の全体に対して、ポリビニルアルコール水溶液を厚さ約100μmとなるように、バーコーターで塗布した。この上にPETシート(厚さ100μm、商品名:ルミラー、株式会社東レ製、水蒸気透過度:7g/m
2・day)を貼り付けた。続いて室温で24時間自然乾燥させても、ポリビニルアルコール水溶液は硬化しなかった。
【0052】
[比較例3]
実施例1と同様にして、金属粉末が付着したシリコーンゴムを作製した。
上記の金属粉末が付着したシリコーンゴムの粘着面の全体に対して、ポリビニルアルコール水溶液を厚さ約100μmとなるように、バーコーターで塗布した。この上にPETシート(厚さ100μm、商品名:ルミラー、株式会社東レ製、水蒸気透過度:7g/m
2・day)を貼り付けた。続いて乾燥機中で100℃にて20分間乾燥させたところ、ポリビニルアルコールの被膜は形成されず、ウロコ状に割れて乾燥した。PETシートは浮き上がり、ポリビニルアルコールの硬化物に接着しなかったため、PETシートと硬化物を一体的に剥離できなかった。
【0053】
[比較例4]
実施例1と同様にして、金属粉末が付着したシリコーンゴムを作製した。
上記の金属粉末が付着したシリコーンゴムの粘着面の全体に対して、酢酸ビニルエマルジョン接着剤を厚さ100μmとなるように、バーコーターで塗布した。この上にPETシート(厚さ100μm、商品名:ルミラー、株式会社東レ製)を貼り付けた。続いて乾燥機中で100℃にて20分間乾燥させても、酢酸ビニルエマルジョン接着剤は硬化しなかった。
【0054】
以上の結果から、本発明にかかるゴム弾性部材の再生方法において、硬化物とシート状基材の剥離を一体的に行うことによって、硬化物がちぎれることなく、ゴム弾性部材の粘着面に付着した金属片、ガラス片、シリコンウエハ片等の異物を容易に除去できることは明らかである。