特許第6803806号(P6803806)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6803806導電性高分子分散液及びその製造方法、導電性フィルム及びその製造方法、並びに導電性ガラス基材及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803806
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】導電性高分子分散液及びその製造方法、導電性フィルム及びその製造方法、並びに導電性ガラス基材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/20 20060101AFI20201214BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20201214BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20201214BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20201214BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20201214BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20201214BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20201214BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20201214BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20201214BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20201214BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20201214BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20201214BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H01B1/20 D
   H01B1/20 A
   H01B1/12 F
   H01B5/14 A
   H01B13/00 Z
   H01B13/00 503B
   B32B27/00 M
   B32B27/18 J
   B32B27/30 A
   B32B17/10
   C08L65/00
   C08L25/08
   C09J133/00
   C09J9/02
   C09J11/08
【請求項の数】18
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-121524(P2017-121524)
(22)【出願日】2017年6月21日
(65)【公開番号】特開2019-8912(P2019-8912A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2019年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松林 総
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−131890(JP,A)
【文献】 特開2008−116947(JP,A)
【文献】 特開2007−051173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/20
B32B 17/10
B32B 27/00
B32B 27/18
B32B 27/30
C08L 25/08
C08L 65/00
C09J 9/02
C09J 11/08
C09J 133/00
H01B 1/12
H01B 5/14
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、アクリル系粘接着剤と、有機溶剤と、1分子中にイソシアネート基を2つ以上有する多官能イソシアネートと、を含有し、
前記アクリル系粘接着剤が、反応性官能基を有するアクリルモノマー単位を有するアクリル系重合体を含み、
前記多官能イソシアネートの含有量が、前記アクリル系重合体100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であり、
前記ポリアニオンの一部のアニオン基に、1分子中にエポキシ基を1つ以上有するエポキシ化合物が反応してエステルを形成している、導電性高分子分散液。
【請求項2】
前記アクリル系粘接着剤の固形分含有量が、前記エポキシ化合物が反応した前記導電性複合体100質量部に対して、100質量部以上10000質量部以下である、請求項1に記載の導電性高分子分散液。
【請求項3】
前記有機溶剤がケトン系溶剤である、請求項1又は2に記載の導電性高分子分散液。
【請求項4】
前記有機溶剤がメチルエチルケトンである、請求項3に記載の導電性高分子分散液。
【請求項5】
前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
【請求項6】
前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
【請求項7】
フィルム基材と、該フィルム基材の少なくとも一方の面に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液から形成された導電性粘接着剤層とを備える、導電性フィルム。
【請求項8】
前記フィルム基材が偏光フィルムである、請求項7に記載の導電性フィルム。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の導電性フィルムと、該導電性フィルムの導電性粘接着剤層に接着されたガラス基材とを備える、導電性ガラス基材。
【請求項10】
前記ガラス基材が液晶セルを構成するガラス板である、請求項9に記載の導電性ガラス基材。
【請求項11】
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液に、1分子中にエポキシ基を1つ以上有するエポキシ化合物を添加し、前記導電性複合体を析出させて析出物を形成させる析出工程と、
該析出物を回収する回収工程と、
回収した析出物にアクリル系粘接着剤と、1分子中にイソシアネート基を2つ以上有する多官能イソシアネートとを添加する粘接着剤添加工程とを、有し、
前記アクリル系粘接着剤が反応性官能基を有するアクリルモノマー単位を有するアクリル重合体を含み、
前記多官能イソシアネートの配合量が、前記アクリル重合体100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下である、導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項12】
前記粘接着剤添加工程では、前記析出物に有機溶剤をさらに添加する、請求項11に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項13】
前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項11又は12に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項14】
前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項11〜13のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項15】
フィルム基材の少なくとも一方の面に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液を塗工して導電性粘接着剤層を形成する粘接着剤層形成工程を有する、導電性フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記フィルム基材が偏光フィルムである、請求項15に記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の導電性フィルムの製造方法により導電性フィルムを製造する導電性フィルム製造工程と、前記導電性粘接着剤層をガラス基材に貼付することによって前記導電性フィルムをガラス基材に接着する接着工程とを有する、導電性ガラス基材の製造方法。
【請求項18】
前記ガラス基材が液晶セルを構成するガラス板である、請求項17に記載の導電性ガラス基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含む導電性高分子分散液及びその製造方法、導電性フィルム及びその製造方法、並びに導電性ガラス基材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、パーソナルコンピュータ、現金自動預け払い機、自動券売機、自動販売機等をはじめ様々な電子機器においては、液晶表示装置の画面側にタッチパネルを設けた入出力装置が広く使用されている。
近年、薄型化及び光学性能の向上を目的として、入出力装置としてインセル型静電容量式タッチパネルが使用されることがある。インセル型静電容量式タッチパネルでは、液晶セルの内部に静電容量式タッチパネルが組み込まれており、画像表示用の電極とタッチパネルセンサ用の電極が共用されることで薄型化されている(例えば特許文献1)。また、電極を共用することによって、光の反射及び屈折を減少させ、光学性能を向上させることができる。
【0003】
前記インセル型静電容量式タッチパネルにおいては、一対のガラス基材の間に電極及び液晶分子が設けられた液晶セルと、該液晶セルの両面に貼付された偏光フィルムとを備えている。
ところで、液晶セルの内部に封入されている液晶分子の配向は静電気の影響を受けやすいが、偏光フィルムの貼付のときなどに静電気が生じることがある。そこで、液晶セルの帯電を防止するために、液晶セルに透明の帯電防止層を積層し、その帯電防止層に偏光フィルムを貼付することがあった。しかし、帯電防止層を設けると、インセル型静電容量式タッチパネルを製造する際の工程数が多くなるという問題がある。
特許文献2には、偏光フィルムを液晶セルに貼付するための粘着剤層に帯電防止剤を含有させて導電性を付与することが開示されている。粘着剤層に帯電防止剤を含有させることにより、帯電防止層を別途設ける工程を省略することができる。特許文献2には、粘着剤層に含有させる帯電防止剤として、ポリチオフェン等のπ共役系導電性高分子、イオン性化合物、界面活性剤等を使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/042248号
【特許文献2】特開2017−68026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されている帯電防止剤のうち、イオン性化合物又は界面活性剤を使用した場合には、粘着剤層の耐熱性が低下することがあった。これに対し、帯電防止剤としてπ共役系導電性高分子を使用した場合には、耐熱性を有する導電性の粘着剤層とすることができる。
π共役系導電性高分子は、そのままでは水にも有機溶剤にも分散しないため、通常、ポリスチレンスルホン酸等のポリアニオンと複合化されて親水性とされている。そのため、π共役系導電性高分子は、親水性が低いアクリル系粘着剤及びアクリル系接着剤(以下、アクリル系粘着剤及びアクリル系接着剤のことを総称して「アクリル系粘接着剤」という。)との親和性が低く、アクリル系粘接着剤中での分散性が低くなる傾向にある。しかし、特許文献2には、アクリル系粘接着剤層中においてπ共役系導電性高分子の分散性を向上させる手法について何ら開示されていない。そのため、特許文献2に記載の粘着剤層において帯電防止剤としてπ共役系導電性高分子を使用した場合には、π共役系導電性高分子が充分な導電ネットワークを形成できず、導電性が低くなることがあった。
【0006】
本発明は、導電性複合体の分散性が高く、導電性及び耐熱性が共に高い導電性粘接着剤層を容易に形成できる導電性高分子分散液及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、導電性及び耐熱性が共に高い導電性粘接着剤層を備える導電性フィルム及びその製造方法並びに導電性ガラス基材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、アクリル系粘接着剤と、有機溶剤とを含有し、
前記ポリアニオンの一部のアニオン基に、1分子中にエポキシ基を1つ以上有するエポキシ化合物が反応してエステルを形成している、導電性高分子分散液。
[2]1分子中にイソシアネート基を2つ以上有する多官能イソシアネートをさらに含有する、[1]に記載の導電性高分子分散液。
[3]前記有機溶剤がケトン系溶剤である、[1]又は[2]に記載の導電性高分子分散液。
[4]前記有機溶剤がメチルエチルケトンである、[3]に記載の導電性高分子分散液。
[5]前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、[1]〜[4]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液。
[6]前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、[1]〜[5]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液。
[7]フィルム基材と、該フィルム基材の少なくとも一方の面に、[1]〜[6]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液から形成された導電性粘接着剤層とを備える、導電性フィルム。
[8]前記フィルム基材が偏光フィルムである、[7]に記載の導電性フィルム。
[9][7]又は[8]に記載の導電性フィルムと、該導電性フィルムの導電性粘接着剤層に接着されたガラス基材とを備える、導電性ガラス基材。
[10]前記ガラス基材が液晶セルを構成するガラス板である、[9]に記載の導電性ガラス基材。
【0008】
[11]π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液に、1分子中にエポキシ基を1つ以上有するエポキシ化合物を添加し、前記導電性複合体を析出させて析出物を形成させる析出工程と、
該析出物を回収する回収工程と、
回収した析出物にアクリル系粘接着剤を添加する粘接着剤添加工程とを、有する、導電性高分子分散液の製造方法。
[12]前記粘接着剤添加工程では、前記析出物に有機溶剤をさらに添加する、[11]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[13]前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、[11]又は[12]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[14]前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、[11]〜[13]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[15]フィルム基材の少なくとも一方の面に、[1]〜[6]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液を塗工して導電性粘接着剤層を形成する粘接着剤層形成工程を有する、導電性フィルムの製造方法。
[16]前記フィルム基材が偏光フィルムである、[15]に記載の導電性フィルムの製造方法。
[17][15]又は[16]に記載の導電性フィルムの製造方法により導電性フィルムを製造する導電性フィルム製造工程と、前記導電性粘接着剤層をガラス基材に貼付することによって前記導電性フィルムをガラス基材に接着する接着工程とを有する、導電性ガラス基材の製造方法。
[18]前記ガラス基材が液晶セルを構成するガラス板である、[17]に記載の導電性ガラス基材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の導電性高分子分散液は、導電性複合体の分散性が高く、導電性及び耐熱性が共に高い導電性粘接着剤層を容易に形成できる。
本発明の導電性高分子分散液の製造方法によれば、前記効果を有する導電性高分子分散液を容易に製造できる。
本発明の導電性フィルムは、導電性及び耐熱性が共に高い導電性粘接着剤層を備える。
本発明の導電性フィルムの製造方法によれば、前記効果を有する導電性フィルムを容易に製造できる。
本発明の導電性ガラス基材は、導電性及び耐熱性が共に高い導電性粘接着剤層を備える。
本発明の導電性ガラス基材の製造方法によれば、前記効果を有する導電性ガラス基材を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の導電性ガラス基材の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<導電性高分子分散液>
本発明の一態様の導電性高分子分散液は、導電性複合体とアクリル系粘接着剤と有機溶剤とを含有する。
【0012】
(導電性複合体)
本態様における導電性複合体は、π共役系導電性高分子と、アニオン基を2つ以上有するポリアニオンとを含む。前記ポリアニオンは前記π共役系導電性高分子に配位し、ポリアニオンのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープするため、導電性を有する導電性複合体を形成する。
ポリアニオンにおいては、全てのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープせず、余剰のアニオン基を有している。エポキシ化合物との反応が起こる前の状態では、余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水分散性を有する。しかし、本態様の導電性高分子複合体に含まれる導電性複合体は、ポリアニオンのアニオン基、特に余剰のアニオン基にエポキシ化合物が反応してエステルを形成している。
ポリアニオンのアニオン基に対するエポキシ化合物の反応によって導電性複合体は、疎水化された導電性複合体(以下、「疎水化導電性複合体」ということがある。)とされている。
なお、導電性複合体の詳細な分析は必ずしも容易ではないが、ポリアニオンのアニオン基とエポキシ化合物との反応によって、下記化学式(A)で示される置換基(A)が形成されると推測される。
【0013】
【化1】
【0014】
化学式(A)におけるRは後述するエポキシ化合物に由来する置換基である。
置換基(A)は、アニオン基の酸素原子に結合する。
【0015】
導電性高分子分散液の総質量に対する、疎水化導電性複合体の含有量は、例えば、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上10質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下がさらに好ましい。
【0016】
[π共役系導電性高分子]
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
【0017】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)が挙げられる。
前記π共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0018】
[ポリアニオン]
ポリアニオンとは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリメタクリルオキシベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボン酸基を有する高分子が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホン酸基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。本明細書における質量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィで測定し、分子量が既知の標準ポリスチレンをもとに求めた値である。
【0019】
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上500質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子を充分に含有させることができるから、充分な導電性を確保できる。
【0020】
[エポキシ化合物]
本態様において使用されるエポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を1つ以上有する化合物であり、1分子中にエポキシ基を1つ有する単官能エポキシ化合物、1分子中にエポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物が挙げられる。凝集又はゲル化を防止する点では、エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を1つ有する化合物が好ましい。エポキシ化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
エポキシ化合物は、ポリアニオンのアニオン基、特にπ共役系導電性高分子へのドープに関与しない余剰のアニオン基と反応してエステルを形成する。これにより、導電性複合体は親水性が低下して疎水化され、有機溶剤に対する分散性が向上する。
【0022】
単官能エポキシ化合物としては、例えば、プロピレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシテトラデカン、グリシジルメチルエーテル、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、エチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、tert−ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシエイコサン、2−(クロロメチル)−1,2−エポキシプロパン、グリシドール、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシ−9−デカン、2−(クロロメチル)−1,2−エポキシブタン、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−1H,1H,2H,2H,3H,3H−トリフルオロブタン、アリルグリシジルエーテル、テトラシアノエチレンオキサイド、グリシジルブチレート、1,2−エポキシシクロオクタン、グリシジルメタクリレート、1,2−エポキシシクロドデカン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタデカン、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシ−1H,1H,2H,2H,3H,3H−ヘプタデカフルオロブタン、3,4−エポキシテトラヒドロフラン、グリシジルステアレート、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシコハク酸、グリシジルフェニルエーテル、イソホロンオキサイド、α−ピネンオキサイド、2,3−エポキシノルボルネン、ベンジルグリシジルエーテル、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3−[2−(パーフルオロヘキシル)エトキシ]−1,2−エポキシプロパン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−(3−グリシジルオキシプロピル)トリシロキサン、9,10−エポキシ−1,5−シクロドデカジエン、4−tert−ブチル安息香酸グリシジル、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、2−tert−ブチル−2−[2−(4−クロロフェニル)]エチルオキシラン、スチレンオキサイド、グリシジルトリチルエーテル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−フェニルプリピレンオキサイド、コレステロール−5α,6α−エポキシド、スチルベンオキサイド、p−トルエンスルホン酸グリシジル、3−メチル−3−フェニルグリシド酸エチル、N−プロピル−N−(2,3−エポキシプロピル)ペルフルオロ−n−オクチルスルホンアミド、(2S,3S)−1,2−エポキシ−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−フェニルブタン、3−ニトロベンゼンスルホン酸(R)−グリシジル、3−ニトロベンゼンスルホン酸−グリシジル、パルテノリド、N−グリシジルフタルイミド、エンドリン、デイルドリン、4−グリシジルオキシカルバゾール、7,7−ジメチルオクタン酸[オキシラニルメチル]、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0023】
多官能エポキシ化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,7−オクタジエンジエポキシド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2:3,4−ジエポキシブタン、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、イソシアヌル酸トリグリシジルネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2:3,4−ジエポキシブタン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート等が挙げられる。
【0024】
エポキシ化合物は、有機溶剤への溶解性が高くなることから、分子量が50以上2,000以下であることが好ましく、炭素数が10以上30以下のものが好ましい。
【0025】
[アミン化合物]
本態様の導電性高分子分散液には、アミン化合物が含まれてもよい。
アミン化合物は、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。アミン化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アミン化合物は炭化水素基又はその置換基を有していてもよい。アミン化合物が有していてもよい炭化水素基又はその置換基としては、例えば、炭素数2以上12以下の直鎖、もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、炭素数7以上12以下のアラルキル基、炭素数2以上12以下のアルキレン基、炭素数6以上12以下のアリーレン基、炭素数7以上12以下のアラルキレン基、及び炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基等が挙げられる。また、アミン化合物がヒドロキシ基を有してもよい。
【0026】
アミン化合物は、ポリアニオンのアニオン基、特にπ共役系導電性高分子へのドープに関与しない余剰のアニオン基に付加することが可能である。これにより、導電性複合体は親水性が低下して疎水化され、有機溶剤に対する分散性が向上する。
【0027】
第一級アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
第二級アミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、ジナフチルアミン等が挙げられる。
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリナフチルアミン等が挙げられる。
前記アミン化合物のうち、導電性複合体を容易に疎水化できることから、第三級アミンが好ましく、トリブチルアミン及びトリオクチルアミンの少なくとも一方がより好ましい。
【0028】
(アクリル系粘接着剤)
本態様において使用されるアクリル系粘接着剤は、同種又は異種の固体の面と面とを貼り合せて一体化するものであり、具体的には、アクリル系接着剤又はアクリル系粘着剤である。接着剤は、半永久的に接着できるものであり、粘着剤は、一時的に接着するものである。但し、粘着剤であっても硬化処理によって半永久接着的にすることも可能である。
【0029】
アクリル系粘接着剤は、アクリル系重合体を含む。アクリル系粘接着剤におけるアクリル系重合体の含有量は50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であってもよい。
アクリル系重合体を形成するアクリルモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ビスフェノールA・エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等のアクリレート;テトラエチレングリコールジメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、アリルメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート;ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリロイルホルモリン、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、アクリロイルピペリジン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらアクリルモノマーは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。アクリルモノマーを2種以上使用して接着力を調整することもできる。
【0030】
アクリル系重合体を形成するモノマーとして、アクリルモノマーと共に、アクリルモノマー以外のビニル系モノマーを共重合してもよい。
アクリルモノマー以外のビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸等が挙げられる。
ビニル系モノマーを共重合する場合、アクリル系重合体におけるアクリル系モノマー単位の含有量は、50モル%以上100モル%未満であることが好ましく、70モル%以上98モル%以下であることがより好ましい。アクリル系モノマー単位含有量が前記下限値以上であれば、粘接着性を容易に発現できる。
アクリル系重合体におけるビニル系モノマー単位の含有量は、例えば、2モル%以上20モル%以下とすることができる。
【0031】
アクリル系重合体を粘着剤とする場合には、アクリル系重合体の組成は、ガラス転移温度が好ましくは80℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは0℃以下になる組成とすることが好ましい。ガラス転移温度が80℃を超えるアクリル系重合体は、粘着性及び接着性が低いため、アクリル系粘接着剤に含まれないことが好ましい。アクリル系重合体のガラス転移温度は−80℃以上であり、それよりガラス転移温度が低いものを得ることは困難である。アクリル系重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量測定又は動的粘弾性測定により求めることができる。
アクリル系重合体のガラス転移温度を低くすることのできるモノマーとしては、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート(特にn−ブチルアクリレート)、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。アクリル系重合体において、これらモノマー由来の単量体単位の割合が多くなる程、ガラス転移温度が低くなる。
【0032】
アクリル系重合体の質量平均分子量は1万以上200万以下であることが好ましく、3万以上100万以下であることがより好ましい。アクリル系重合体の質量平均分子量が前記下限値以上であれば、充分な凝集力を確保でき、導電性高分子分散液から形成される導電性粘接着剤層の凝集破壊を防ぐことができる。一方、アクリル系重合体の質量平均分子量が前記上限値以下であれば、接着力をより向上させることができる。
【0033】
アクリル系重合体が、反応性官能基を有するアクリルモノマー単位を有する場合には、硬化剤と反応させて硬化させてもよい。アクリル系重合体を硬化させると、導電性高分子分散液から形成される導電性粘接着剤層の凝集力が向上して強度を向上させることができる。また、導電性粘接着剤層の凝集力を向上させることによって、接着と剥離を繰り返すことが可能な再剥離性の粘着剤層とすることもできる。
前記反応性官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、エポキシ基等が挙げられる。後述する多官能イソシアネートと反応させる場合には、反応性官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基が好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。
ヒドロキシ基を有するアクリルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。
カルボキシ基を有するアクリルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等が挙げられる。
アミノ基を有するアクリルモノマーとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
アミド基を有するアクリルモノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
エポキシ基を有するアクリルモノマーとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
硬化剤として多官能イソシアネートを用いる場合には、前記反応性官能基を有するアクリルモノマーのなかでも、硬化性及びコストを勘案すると、ヒドロキシ基を有するアクリルモノマーが好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートがより好ましい。
反応性官能基を有するアクリルモノマーは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
本態様の導電性高分子分散液において、アクリル系粘接着剤の固形分含有量は、疎水化導電性複合体100質量部に対して1質量部以上100000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上50000質量部以下であることがより好ましく、100量部以上10000質量部以下であることがさらに好ましい。アクリル系粘接着剤の固形分含有量が前記下限値以上であれば、導電性粘接着剤層が接着性を充分に発揮でき、前記上限値以下であれば、導電性粘接着剤層の導電性を充分に確保できる。
【0035】
(硬化剤)
上述したように、アクリル系重合体が、反応性官能基を有するアクリルモノマー単位を有する場合には、導電性高分子分散液が硬化剤を含有してもよい。
硬化剤としては、1分子中にイソシアネート基を2つ以上有する多官能イソシアネート等のイソシアネート系硬化剤、1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ化合物等のエポキシ系硬化剤等が挙げられる。これら硬化剤のなかでも、反応性及び入手容易性の点から、多官能イソシアネートが好ましい。特に、アクリル系重合体が、ヒドロキシ基を有するアクリルモノマー単位を有する場合には、硬化剤が多官能イソシアネートであることが好ましい。
【0036】
多官能イソシアネートとしては、脂肪族多官能イソシアネート、脂環族多官能イソシアネート及び芳香族多官能イソシアネートが挙げられる。
多官能イソシアネートの具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジシクロメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタトリイソシアネート、トリメチルへキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
多官能イソシアネートは、前記ジイソシアネートを、NCO/OHモル比が2/1以上となるように変性した変性多官能イソシアネートより形成した変性ジイソシアネートであってもよい。変性ポリイソシアネートとしては、例えば、前記多官能イソシアネートを多価アルコールと反応させて得られるポリウレタンポリイソシアネート、多官能イソシアネートを重合させることによって得られる、イソシアヌレート環を含んだポリイソシアネート、多官能イソシアネートと水と反応させて得られる、ビュレット結合を含んだポリイソシアネート等が挙げられる。
硬化剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
(有機溶剤)
本態様で使用される有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
窒素原子含有化合物系溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
また、有機溶剤として、前記のアクリルモノマーを使用することもできる。有機溶剤としてアクリルモノマーを使用する場合には、導電性粘接着剤層を形成する際にアクリルモノマーを重合させるために、ラジカル重合開始剤をさらに含むことが好ましい。ラジカル重合開始剤としては公知の熱重合開始剤又は光重合開始剤を使用できる。
【0038】
本態様では、導電性複合体及びアクリル系粘接着剤の両方を容易に分散できることから、有機溶剤として、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤を用いることが好ましく、ケトン系溶剤を用いることがより好ましい。また、ケトン系溶剤のなかでも、メチルエチルケトンが特に好ましい。
また、本態様では、導電性複合体の製造過程では水を使用するため、導電性高分子分散液には水が少量含まれてもよい。有機溶剤と水の合計に対する水の含有量は50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。導電性高分子分散液に水が含まれていなくてもよい。
【0039】
(高導電化剤)
導電性高分子分散液は、導電性をより向上させるために、高導電化剤を含んでもよい。
ここで、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、アクリル系粘接着剤は、高導電化剤に分類されない。エポキシ化合物、アミン化合物及び硬化剤は、高導電化剤として機能することもある。
高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
導電性高分子分散液に含有される高導電化剤は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
高導電化剤の含有割合は導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上5000質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上2500質量部以下であることがさらに好ましい。高導電化剤の含有割合が前記下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止できる。
【0040】
(その他の添加剤)
導電性高分子分散液には、公知のその他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、エポキシ化合物、アミン化合物、硬化剤及び高導電化剤以外の化合物からなる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、エポキシ基、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
導電性高分子分散液が前記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体の固形分100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
【0041】
(導電性高分子分散液の第1の製造方法)
前記導電性高分子分散液を得るための本態様の導電性高分子分散液の第1の製造方法は、析出工程と回収工程と粘接着剤添加工程とを有する。
【0042】
[析出工程]
析出工程は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液にエポキシ化合物を添加し、前記導電性複合体を析出させて析出物を形成させる工程である。析出工程においては、アミン化合物を添加してもよい。
前記水系分散液にエポキシ化合物を添加すると、前記導電性複合体を構成するポリアニオンの一部のアニオン基、具体的にはπ共役系導電性高分子へのドープに関与しないアニオン基にエポキシ化合物のエポキシ基が反応してエステルを形成する。これにより、アニオン基が消失するため、導電性複合体が疎水化される。
但し、π共役系導電性高分子へのドープに関与しないアニオン基の全てにエポキシ化合物が反応しなくてもよく、ドープに関与しないアニオン基が一部残留してもよい。
疎水化された導電性複合体は、水系分散媒中で分散することができないため、析出して析出物となる。
【0043】
エポキシ化合物の添加量は、導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上100000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上50000質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上10000質量部以下であることがさらに好ましい。エポキシ化合物の添加量が前記下限値以上であれば、導電性複合体の疎水性を充分に向上させることができ、前記上限値以下であれば、導電性粘接着剤層の導電性低下を防止できる。
【0044】
アミン化合物を添加する場合、アミン化合物の添加量は、導電性複合体100質量部に対して、10質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、100質量部以上5000質量部以下であることがより好ましく、200質量部以上500質量部以下であることがさらに好ましい。アミン化合物の添加量が前記下限値以上であれば、導電性複合体の疎水性を充分に向上させることができ、前記上限値以下であれば、導電性粘接着剤層の導電性低下を防止できる。
【0045】
該析出工程において、エポキシ化合物が添加される前記導電性高分子水分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体が水系分散媒中に含まれる分散液である。ここで、水系分散媒は、水を含有し、水溶性有機溶剤を含んでもよい。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。水溶性有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
水系分散媒における水の含有量は50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であってもよい。
導電性高分子水系分散液は、例えば、ポリアニオンの水溶液中で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合することにより得られる。また、導電性高分子水系分散液は市販のものを使用しても構わない。
前記化学酸化重合には、公知の触媒を適用してもよい。例えば、触媒及び酸化剤を用いることができる。触媒としては、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。酸化剤は、還元された触媒を元の酸化状態に戻すことができる。
導電性高分子水分散液に含まれる導電性複合体の含有量としては、導電性高分子分散液の総質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.3質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上4質量%以下がより好ましい。
【0046】
導電性高分子水分散液にエポキシ化合物を添加する前、添加と同時又は添加した後には、有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。水溶性有機溶剤を含む場合、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
導電性高分子水系分散液にエポキシ化合物を添加する前、添加している最中、又は添加した後には、加熱してもよい。特に、アニオン基とエポキシ基との反応を促進するために、加熱することが好ましい。加熱温度は、40℃以上100℃以下が好ましい。
【0048】
[回収工程]
回収工程は、疎水化導電性複合体からなる前記析出物を回収する工程である。
析出物を、水系分散媒から分取して回収する方法としては、例えば、ろ過、沈殿、抽出等の公知の分取方法を適用できる。これらの分取方法のなかでも、ろ過が好ましく、導電性複合体の形成に用いたポリアニオンがろ液とともに通過する程度に粗い目のフィルターを用いてろ過することが好ましい。このろ過方法によれば、析出物を分取するとともに、導電性複合体を形成していない余剰のポリアニオンをろ液側に残して、析出物と余剰のポリアニオンとを分離することができる。余剰のポリアニオンを除くことにより、析出物の導電性を高めることができる。
【0049】
ろ過に使用するフィルターとしては、化学分析分野で用いられるろ紙が好ましい。このろ紙としては、例えば、アドバンテック社製ろ紙、保留粒子径7μm等が挙げられる。ここで、ろ紙の保留粒子径は目の粗さの目安であり、JIS P 3801〔ろ紙(化学分析用)〕で規定された硫酸バリウムなどを自然ろ過したときの漏えい粒子径により求められる。ろ紙の保留粒子径は、例えば2μm以上10μm以下とすることができる。この保留粒子径は、余剰のポリアニオンを透過させて容易に分離できることから、5μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0050】
回収工程によって得られる析出物の水分量はできるだけ少ないことが好ましく、水分を全く含まないことが最も好ましいが、実用の観点からは、水分を10質量%以下の範囲で含んでも構わない。
水分量を少なくする方法としては、例えば、有機溶剤で析出物を洗い流す方法、析出物を乾燥する方法等が挙げられる。
【0051】
[粘接着剤添加工程]
粘接着剤添加工程は、回収した析出物にアクリル系粘接着剤を添加する工程である。析出物に添加するアクリル系粘接着剤は、前記アクリル系重合体を含む固形物であってもよいし、アクリル系重合体が有機溶剤に溶解又は分散した液状物であってもよい。
アクリル系粘接着剤の固形分添加量は、疎水化導電性複合体100質量部に対して1質量部以上100000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上50000質量部以下であることがより好ましく、100量部以上10000質量部以下であることがさらに好ましい。アクリル系粘接着剤の固形分添加量を前記下限値以上にすれば、導電性粘接着剤層が接着性を充分に発揮でき、前記上限値以下にすれば、導電性粘接着剤層の導電性を充分に確保できる。
【0052】
粘接着剤添加工程では、有機溶剤をさらに添加してもよい。有機溶剤の添加は、アクリル系粘接着剤添加の前でもよいし、アクリル系粘接着剤添加の後でもよいし、アクリル系粘接着剤添加と同時でもよい。
有機溶剤の添加量は、導電性高分子分散液100質量%に対して疎水化導電性複合体の含有量が0.1質量%以上10質量%以下になる量とすることが好ましい。疎水化導電性複合体の含有量が前記下限値以上になるように有機溶剤を添加すれば、導電性高分子分散液から導電性粘接着剤層の導電性を容易に確保できる。一方、疎水化導電性複合体の含有量が前記上限値以下になるように有機溶剤を添加すれば、フィルム基材に対する導電性高分子分散液の塗工性が向上し、塗工面に対してムラなく均一に塗布することが容易になる。
【0053】
析出物に有機溶剤を添加した後には、得られた液を攪拌して分散処理を施してもよい。攪拌の方法は特に制限されず、スターラー等の剪断力が弱い攪拌であってもよいし、高剪断力の分散機(ホモジナイザ等)を用いて攪拌してもよい。有機溶剤への析出物の分散性を高くできる点では、分散処理において、加圧可能な高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
【0054】
アクリル系粘接着剤を構成するアクリル系重合体が反応性官能基を有する場合には、粘接着剤添加工程において、アクリル系粘接着剤と共に硬化剤を添加してもよい。
硬化剤の固形分添加量は、アクリル系重合体100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下とすることが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下とすることがより好ましい。硬化剤の固形分添加量を前記下限値以上にすれば、アクリル系重合体を充分に硬化でき、前記上限値以下にすれば、過度の硬化によるゲル化を抑制できる。
【0055】
[高導電化剤、添加剤の添加]
高導電化剤、添加剤等を導電性高分子分散液に含有させる場合には、粘接着剤添加工程において、高導電化剤、添加剤等を添加すればよい。
【0056】
(導電性高分子分散液の第2の製造方法)
前記導電性高分子分散液は、下記第2の製造方法で製造することもできる。
導電性高分子分散液の第2の製造方法は、乾燥工程と粘接着剤添加工程とを有する。
【0057】
[乾燥工程]
乾燥工程は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体が水系分散媒中に含まれる水分散液を乾燥して導電性複合体の乾燥物を得る工程である。
前記乾燥工程における乾燥方法としては、凍結乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥、風乾、温風乾燥、加熱乾燥等の公知方法が適用できる。
凍結乾燥では、前記導電性高分子水分散液中の水分を凍結させ、真空乾燥する。
凍結乾燥の際の温度は、−60〜60℃とすることが好ましく、−40〜40℃とすることがより好ましい。凍結乾燥温度が前記下限値以上であれば、温度調整しやすく、前記上限値以下であれば、導電性高分子水分散液を容易に凍結乾燥できる。
真空乾燥の際には、水系分散媒を充分に揮発させるために、前記凍結乾燥温度にした後に、例えば40℃以上に加熱してもよい。
噴霧乾燥では、前記導電性高分子水分散液を真空容器中に噴霧することにより水分を蒸発させて乾燥する。
噴霧乾燥の際の温度は、−20〜40℃とすることが好ましく、0〜30℃とすることがより好ましい。噴霧乾燥温度が前記下限値以上であれば、導電性高分子水分散液を容易に乾燥でき、前記上限値以下であれば、導電性複合体の熱劣化を防止できる。
乾燥工程によって得られる乾燥物の水分量はできるだけ少ないことが好ましく、水分を全く含まないことが最も好ましいが、実用の観点からは、水分を10質量%以下の範囲で含んでも構わない。
水分量を少なくするためには、例えば、乾燥時間を長く、乾燥温度を高く、真空度を高くすればよい。
【0058】
[粘接着剤添加工程]
本製造方法における粘接着剤添加工程は、前記乾燥物にエポキシ化合物とアクリル系粘接着剤とを添加する工程である。
本製造方法における粘接着剤添加工程では、前記乾燥物に有機溶剤をさらに添加することが好ましい。粘接着剤添加工程では、アミン化合物を添加してもよい。
エポキシ化合物と有機溶剤との添加の順序は特に制限はなく、エポキシ化合物と有機溶剤とを同時に添加してもよい。また、エポキシ化合物よりも有機溶剤を先に添加してもよいし、有機溶剤よりもエポキシ化合物を先に添加してもよい。
アクリル系粘接着剤と有機溶剤との添加の順序は特に制限はなく、アクリル系粘接着剤と有機溶剤とを同時に添加してもよい。また、アクリル系粘接着剤よりも有機溶剤を先に添加してもよいし、有機溶剤よりもアクリル系粘接着剤を先に添加してもよい。
該工程では、乾燥物にエポキシ化合物を添加することで、ポリアニオンのアニオン基とエポキシ化合物とを反応させてエステルを形成することができる。これにより、導電性複合体を疎水化できる。
エポキシ化合物を添加した際には、アニオン基との反応を促進させるために加熱してよい。加熱温度は、40℃以上100℃以下とすることが好ましい。
【0059】
(作用効果)
上述した本態様の導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体は、ポリマー型の導電材であり、しかもπ共役系導電性高分子はそれ単体では、加熱しても溶融しないものであり、界面活性剤、金属粒子及びイオン性化合物等の導電材に比べて熱による変質が起こりにくく、耐熱性が高い。
本態様の導電性高分子分散液においては、エポキシ化合物によって、π共役系導電性高分子へのドープに関与しないポリアニオンのアニオン基が疎水化されているから、本態様における導電性複合体は、有機溶剤に対する分散性が高い。
また、アクリル系粘接着剤も疎水性が高いものであり、有機溶剤に対する分散性が高く、疎水化導電性複合体との親和性も高い。そのため、アクリル系粘接着剤に導電性複合体が含まれても、導電性複合体の分離、偏在が起こり難く、アクリル系粘接着剤層に対する導電性複合体の分散性が高いから、導電性を充分に発揮できる。したがって、本態様の導電性高分子分散液から、導電性及び耐熱性が共に高い導電性粘接着剤層を容易に形成できる。
また、疎水化導電性複合体はアクリル系粘接着剤の接着性を阻害しにくいものであるから、導電性粘接着性は充分に高い接着性を有する。
【0060】
<導電性フィルム>
本発明の一態様の導電性フィルムは、フィルム基材と、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に、前記導電性高分子分散液から形成された導電性粘接着剤層とを備える。
【0061】
前記フィルム基材としては、例えば、プラスチックフィルムが挙げられる。
プラスチックフィルムを構成するフィルム基材用樹脂としては、例えば、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのフィルム基材用樹脂のなかでも、安価で機械的強度に優れる点から、ポリエチレンテレフタレート、セルローストリアセテートが好ましい。
前記フィルム基材用樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
また、フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
また、フィルム基材には、導電性高分子分散液から形成される導電層の密着性をさらに向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
【0062】
前記フィルム基材の平均厚みとしては、10μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
本明細書における部材の厚さは、任意の10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0063】
また、前記フィルム基材として、偏光フィルムを使用することもできる。
偏光フィルムは、一対の透明フィルムと、該一対の透明フィルムの間に配置された偏光子とを備える。
透明フィルムを構成する透明樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂等が挙げられる。
透明フィルムの厚さは、例えば、10μm以上500μm以下とすることができ、薄型化と強度の両立の点では、20μm以上300μm以下であることが好ましい。
偏光子としては、例えば、親水性フィルムに二色性物質を付着させ、一軸延伸して二色性物質を配向させたものが挙げられる。親水性フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化フィルム等が挙げられる。二色性物質としては、例えば、ヨウ素、二色性染料等が挙げられる。
偏光子の厚さは、例えば、10μm以上500μm以下とすることができ、薄型化と偏光性の両立の点では、20μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0064】
導電性フィルムを光学用途に使用する場合には、フィルム基材が透明であることが好ましい。具体的には、フィルム基材の全光線透過率が65%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。全光線透過率は、JIS K7136に従って測定した値である。
【0065】
本態様における導電性粘接着剤層は形成された層である。すなわち、前記導電性粘接着剤層は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、アクリル系粘接着剤とを含有する。また、導電性粘接着剤層に含まれる導電性複合体においては、前記アニオン基と前記エポキシ化合物とが反応してエステルを形成している。アクリル系粘接着剤は、硬化剤との反応によって形成された架橋構造を有してもよい。
前記導電性粘接着剤層の平均厚さとしては、1μm以上1000μm以下であることが好ましく、5μm以上500μm以下であることがより好ましく、10μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。導電性粘接着剤層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い接着性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電性粘接着剤層を容易に形成できる。
【0066】
本態様の導電性フィルムが、液晶セル内にタッチパネルが組み込まれたインセル型静電容量式タッチパネルに用いられる場合、導電性粘接着剤層の導電性が低すぎると、液晶分子帯電による表示不具合が生じることがある。一方、導電性粘接着剤層の導電性が高すぎると、タッチパネルの静電容量変化の検知に悪影響を及ぼすことがある。そのため、導電性粘接着剤層においては、適度な導電性、例えば1×10Ω/□以上1×1012Ω/□以下の表面抵抗値を有することが好ましい。
【0067】
(導電性フィルムの製造方法)
本態様の導電性フィルムの製造方法は、フィルム基材の少なくとも一方の面に、前記導電性高分子分散液を塗工して導電性粘接着剤層を形成する粘接着剤層形成工程を有する。
【0068】
前記塗工工程において導電性高分子分散液を塗工する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた塗工方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
前記塗工方法のうち、簡便に塗工できることから、バーコーターを用いることがある。バーコーターにおいては、種類によって塗工厚が異なり、市販のバーコーターでは、種類ごとに番号が付されており、その番号が大きい程、厚く塗工できるものとなっている。
前記導電性高分子分散液のフィルム基材への塗工量は特に制限されないが、固形分として、0.1g/m以上10.0g/m以下の範囲であることが好ましい。
【0069】
前記塗工工程後には、塗工した導電性高分子分散液からなる塗膜を乾燥させる乾燥工程を有してもよい。
該乾燥工程において乾燥する方法としては、例えば、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定され、例えば、50℃以上150℃以下に設定できる。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。
【0070】
(作用効果)
本態様の導電性フィルムを構成する導電性粘接着剤層は、前記導電性高分子分散液から形成されたものであるから、導電性粘接着剤層内における導電性複合体の分散性が高い。また、導電性複合体は、π共役系導電性高分子を導電材とするものであり、耐熱性が高いポリマー型の導電材である。したがって、本態様の導電性フィルムを構成する導電性粘接着剤層は、導電性及び耐熱性が共に高い。また、本態様における導電性粘接着剤層は接着性も充分に高い。
π共役系導電性高分子を含む本実施形態における導電性粘接着剤層は、界面活性剤を含む導電性粘接着剤層に比べて導電性を高くすることができる。π共役系導電性高分子は界面活性剤に比べて、分子量が大きいため導電性粘接着剤層中での移動が起こり難く、層表面へのブリードアウトが生じにくい。そのため、本実施形態の導電性フィルムをガラス基材に接着した際には、ガラス基材の帯電を充分に防止できる。界面活性剤は導電性粘接着剤層内で容易に移動し、ブリードアウトして帯電防止剤としての機能を充分に発揮できないため、ガラス基材に接着した際にガラス基材の帯電を充分に防止できない。
また、π共役系導電性高分子を含む本実施形態における導電性粘接着剤層は、金属粒子を含む導電性粘接着剤層に比べて透明性を高くすることができる。そのため、本実施形態の導電性フィルムは、光学部材に適している。金属粒子を含む導電性粘接着剤層は透明性が低いため、光学部材には適さない。
【0071】
<導電性ガラス基材>
本発明の一態様の導電性ガラス基材は、前記導電性フィルムと、該導電性フィルムの導電性粘接着剤層に接着されたガラス基材とを備える。すなわち、図1に示すように、本態様の導電性ガラス基材1は、フィルム基材11と、フィルム基材11の一方の面に形成された導電性粘接着剤層12と、導電性粘接着剤層12に接着されたガラス基材20とを備える。フィルム基材11と導電性粘接着剤層12とは導電性フィルム10を構成する。
ガラス基材20としては、例えば、無アルカリガラス基材、ソーダ石灰ガラス基材、ホウケイ酸ガラス基材、石英ガラス基材等が挙げられる。ガラス基材20にアルカリ成分が含まれると、導電性粘接着剤層12の導電性が低下する傾向にあるため、ガラス基材20のなかでも、無アルカリガラス基材が好ましい。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ酸化物の含有量が0.1質量%以下のガラス組成物のことである。
ガラス基材20の平均厚さとしては、100μm以上3000μm以下であることが好ましく、100μm以上1000μm以下であることがより好ましい。ガラス基材20の平均厚さが前記下限値以上であれば、破損しにくくなり、前記上限値以下であれば、導電性ガラス基材1を使用する部材の薄型化に充分に寄与できる。
【0072】
ガラス基材20は、液晶セルを構成するガラス板であってもよい。
ここで、液晶セルは、一対のガラス板と、該一対のガラス板の間に設けられた一対の透明電極層と、該一対の透明電極層の間に設けられた液晶層とを備えるものが好ましい。液晶層は、一対の配向層の間に液晶分子が封入された層であるものが好ましい。
インセル型静電容量式タッチパネルにおいては、透明導電層が、液晶分子に電圧をかけて液晶分子の配向を変化させるための電極と、タッチパネルのセンサ用電極とを兼ねることが好ましい。
【0073】
(導電性ガラス基材の製造方法)
本態様の導電性ガラス基材1を製造する方法としては、前記導電性フィルムの製造方法により、フィルム基材11及び導電性粘接着剤層12を備える導電性フィルム10を製造する導電性フィルム製造工程と、導電性粘接着剤層12をガラス基材20に貼付することによって導電性フィルム10をガラス基材20に接着する接着工程とを有する方法が挙げられる。
接着工程においては、ガラス基材20が破損しない程度の圧力で導電性フィルムを圧着することが好ましい。また、接着工程においては、必要に応じて、加熱してもよい。例えば、導電性粘接着剤層に含まれるアクリル系粘接着剤が、硬化可能なタイプの場合には、接着工程時に加熱して粘接着剤を硬化させることが好ましい。
【0074】
また、ガラス基材20に前記導電性高分子分散液を塗工して導電性粘接着剤層12を形成し、導電性粘接着剤層12にフィルム基材11を貼着することにより導電性ガラス基材1を製造することも可能である。
【0075】
(作用効果)
本態様の導電性ガラス基材を構成する導電性粘接着剤層は、前記導電性高分子分散液から形成されたものであるから、導電性粘接着剤層内における導電性複合体の分散性が高い。また、導電性複合体は、耐熱性が高いポリマー型の導電材である。したがって、本態様の導電性ガラス基材は、導電性及び耐熱性が共に高い。導電性が高い導電性ガラス基材は、帯電防止性に優れ、帯電しにくい。
さらに、本態様の導電性ガラス基材においては、ガラス基材に対して導電性粘接着剤層が高い接着力で接着している。
【実施例】
【0076】
(製造例1)
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法によりポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。さらに、得られたポリスチレンスルホン酸溶液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0077】
(製造例2)
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、1.2%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS水分散液)溶液を得た。なお、PEDOT−PSS固形分に対するPSSの含有量は75質量%である。
【0078】
(製造例3)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液100gに、メタノール300gとC12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル(共栄社化学株式会社製、エポライトM−1230)25gを添加し、60℃で4時間加熱攪拌した。これにより、π共役系導電性高分子とポリアニオンとエポキシ化合物とから形成された導電性複合体の析出物1.575gを得た。その析出物を315gのメチルエチルケトンに添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散処理して、濃度0.5質量%の導電性混合液を得た。
【0079】
(製造例4)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液100gに、メタノール300gとブチレンオキシド25gを添加し、60℃で4時間加熱攪拌した。これにより、π共役系導電性高分子とポリアニオンとエポキシ化合物とから形成された導電性複合体の析出物1.45gを得た。その析出物を290gのメチルエチルケトンに添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散処理して、濃度0.5質量%の導電性混合液を得た。
【0080】
(実施例1)
製造例3で得た導電性混合液40gに、アクリル系粘着剤(綜研化学社製、SKダイン1499M、固形分濃度35質量%、酢酸エチル・酢酸ブチル混合溶液)60gと、硬化剤であるトルエンジイソシアネート−トリメチロールプロパン付加物(綜研化学社製、L−45、固形分濃度45質量%、トルエン・酢酸エチル混合溶液)1.62gを混合して、導電性高分子分散液を得た。
【0081】
(実施例2)
導電性混合液の量を60g、アクリル系粘着剤の量を40g、硬化剤の量を1.08gに変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0082】
(実施例3)
導電性混合液の量を80g、アクリル系粘着剤の量を20g、硬化剤の量を0.54gに変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0083】
(実施例4)
アクリル系粘着剤の種類を綜研化学社製SKダイン1499Mから綜研化学社製SKダイン1498B(固形分濃度35質量%、酢酸エチル・メチルエチルケトン混合溶液)に変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0084】
(実施例5)
アクリル系粘着剤の種類を綜研化学社製SKダイン1499Mから綜研化学社製SKダイン1498Bに変更したこと以外は実施例2と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0085】
(実施例6)
アクリル系粘着剤の種類を綜研化学社製SKダイン1499Mから綜研化学社製SKダイン1498Bに変更したこと以外は実施例3と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0086】
(実施例7)
アクリル系粘着剤の種類を綜研化学社製SKダイン1499Mから綜研化学社製SKダイン1495(固形分濃度35質量%、酢酸エチル・トルエン混合溶液)に変更し、硬化剤の量を0.5gに変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0087】
(実施例8)
アクリル系粘着剤の種類を綜研化学社製SKダイン1499Mから綜研化学社製SKダイン1495に変更し、硬化剤の量を0.27gに変更したこと以外は実施例2と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0088】
(実施例9)
アクリル系粘着剤の種類を綜研化学社製SKダイン1499Mから綜研化学社製SKダイン1495に変更し、硬化剤の量を0.13gに変更したこと以外は実施例3と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0089】
(実施例10)
アクリル系粘着剤の種類を綜研化学社製SKダイン1499Mから日本カーバイド工業社製ニッセツKP−1282(固形分濃度40質量%、トルエン・アセトン混合溶液)に変更し、硬化剤の量を0.8gに変更したこと以外は実施例2と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0090】
(実施例11)
アクリル系粘着剤の種類を綜研化学社製SKダイン1499Mから日本カーバイド工業社製ニッセツKP−1282(固形分濃度40質量%、トルエン・アセトン混合溶液)に変更し、硬化剤の量を0.4gに変更したこと以外は実施例3と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0091】
(実施例12)
アクリル系粘着剤の種類を綜研化学社製SKダイン1499Mから日本カーバイド工業社製ニッセツKP−1410(固形分濃度40質量%、トルエン・酢酸エチル混合溶液)に変更し、硬化剤をヘキサメチレンジイソシアネート0.8gに変更したこと以外は実施例2と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0092】
(実施例13)
アクリル系粘着剤の種類を綜研化学社製SKダイン1499Mから日本カーバイド工業社製ニッセツKP−1410に変更し、硬化剤をヘキサメチレンジイソシアネート0.4gに変更したこと以外は実施例3と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0093】
(実施例14)
製造例3で得た導電性混合液を製造例4で得た導電性混合液に変更したこと以外は実施例3と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0094】
(比較例1)
導電性混合液の代わりにメチルエチルケトンを使用したこと以外は実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0095】
(比較例2)
導電性混合液の代わりにメチルエチルケトンを使用したこと以外は実施例4と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0096】
(比較例3)
導電性混合液の代わりにメチルエチルケトンを使用したこと以外は実施例7と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0097】
(比較例4)
製造例3で得た導電性混合液を製造例2で得た導電性混合液に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得た。しかしながら、導電性高分子(PEDOT−PSS)とアクリル系粘着剤が液中で2層に分離したため検討を中止した。
【0098】
<評価>
[表面抵抗値]
各例の導電性高分子分散液を、No.16のバーコーターを用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、ルミラーT60)上に塗工し、100℃で1分間乾燥させ、粘接着剤層を形成して、粘接着フィルムを得た。各例の粘接着剤層について、表面抵抗値を、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリティック製ハイレスタ)を用い、印加電圧10Vの条件で測定した。表面抵抗値の測定結果を表1に示す。なお、表中、「OVER」は、表面抵抗値の測定可能上限(1.0×1012Ω/□)を超えたことを意味する。
【0099】
[剥離強度]
前記粘接着フィルムの粘接着剤層の一部にポリエチレンテレフタレートを圧着し、残りに無アルカリガラス板(厚さ0.7mm)を圧着し、室温で48時間養生した。次いで、圧着した前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを幅10mmの短冊状に裁断し、JIS Z0237に従い、180°剥離における剥離強度を測定した。剥離強度の測定結果を表1に示す。剥離強度が大きい程、接着力が高い。
【0100】
[帯電圧]
前記のように粘着フィルムを貼着し、室温で48時間養生した無アルカリガラス板を不織布で擦って帯電させた後に、JIS C61340−2−2:2006に従い、無アルカリガラスの表面電位を、デジタル低電位測定器(春日電機社製、KSD−3000)を用いて測定した。この表面電位を、無アルカリガラス板における帯電圧とした。帯電圧の測定結果を表1に示す。帯電圧が低い程、帯電防止性に優れる。
【0101】
【表1】
【0102】
<結果>
エポキシ化合物によって疎水化した導電性複合体を用いた実施例1〜14では、粘接着剤層の表面抵抗値が低いため、帯電圧が低く、帯電防止性に優れていた。これは、粘接着層の主成分となっているアクリル系粘着剤中での導電性複合体の分散性が高く、導電性を充分に発揮できたためと推測される。また、実施例1〜14における粘接着剤層は充分な接着力を有していた。
導電性複合体を含まない比較例1〜3では、粘接着剤層の表面抵抗値が高いため、帯電圧も高く、帯電防止性を有していなかった。
【符号の説明】
【0103】
1 導電性ガラス基材
10 導電性フィルム
11 フィルム基材
12 導電性粘接着剤層
20 ガラス基材
図1