特許第6803807号(P6803807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803807
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】産業用ハイブリッドエンジン
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/40 20071001AFI20201214BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20201214BHJP
   F02B 67/06 20060101ALI20201214BHJP
   F02B 77/00 20060101ALI20201214BHJP
   F02B 61/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B60K6/40ZHV
   B60K6/485
   F02B67/06 A
   F02B67/06 F
   F02B77/00 N
   F02B61/00 B
   F02B61/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-128565(P2017-128565)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-10952(P2019-10952A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】高見 雅保
(72)【発明者】
【氏名】久野 完
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−299844(JP,A)
【文献】 特開2016−191365(JP,A)
【文献】 特開2015−025538(JP,A)
【文献】 特開平08−100670(JP,A)
【文献】 特開平04−031632(JP,A)
【文献】 米国特許第06244239(US,B1)
【文献】 特開2000−045787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20− 6/547
F02B 61/00
F02B 67/06
F02B 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸の駆動プーリ及び動力用電動モータのモータプーリに巻回される無端回動帯が設けられ、前記電動モータを支持ブラケットを用いてエンジン本体に取付けるとともに、前記支持ブラケットに、前記無端回動帯を張る方向に付勢する緊張機構が支持され、
前記支持ブラケットとは別に前記電動モータを支持する第2支持ブラケットが設けられ、
前記第2支持ブラケットは、前取付部と後取付部と前記後取付部から後方突出される作用片とを備え、
前記前取付部がシリンダヘッドの前面にボルト止めされ、かつ、前記後取付部が前記シリンダヘッドの左側面にボルト止めされている産業用ハイブリッドエンジン。
【請求項2】
前記電動モータの下側が前記支持ブラケットを用いて位置固定で支持されるとともに、前記電動モータの上側が前記第2支持ブラケットを用いて支持され、
前記緊張機構は、テンションプーリと、前記テンションプーリを先端に軸支する揺動アームと、前記支持ブラケットに支持されて前記揺動アームを心を中心として付勢させる緊張本体と、を備えて構成されている請求項1に記載の産業用ハイブリッドエンジン。
【請求項3】
前記支持ブラケットの前記エンジン本体からの突設方向に対する一方に前記電動モータが、かつ、他方に前記緊張機構がそれぞれ配置されている請求項1又は2に記載の産業用ハイブリッドエンジン。
【請求項4】
前記支持ブラケットは、前記エンジン本体における排気マニホルド配置側に取付けられている請求項1〜3の何れか一項に記載の産業用ハイブリッドエンジン。
【請求項5】
前記支持ブラケットは、シリンダブロックの一端に装備される伝動ケースに取付けられている請求項1〜の何れか一項に記載の産業用ハイブリッドエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド式のトラクタ用エンジンや建機用エンジンなど、産業用ハイブリッドエンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の排ガス規制や公害対策、さらには燃費向上の課題が、自動車用エンジンのみならず、農機用エンジンなどの産業用エンジンにも適用されつつある。そのため、特許文献1において開示されるように、電動モータによりエンジン出力をアシスト可能とされたハイブリッド建機用エンジンも開発されてきている。
【0003】
例えば、トラクタ用ディーゼルエンジンの出力をアシストできるようにハイブリッド化する場合には、電動モータは、従来のエンジンに用いられるオルタネータに比べて、明確に大型で、かつ、重いものが必要になる。
【0004】
従って、オルタネータの片方を1本のボルトで揺動移動可能に枢支し、他方を円弧移動可能にボルト止めする、という従来のベルトテンション機能を兼ねた支持構造では強度不足になることが分かってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−182512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
つまり、産業用エンジンにおいては、フルハイブリッド、マイルドハイブリッド、マイクロハイブッリドなど、いずれのハイブリッド構造を採るにせよ、従来のオルタネータ支持構造を踏襲することはできず、さらなる構造工夫が必要である。
【0007】
本発明の目的は、鋭意研究により、主に電動モータの支持構造に工夫を凝らすことにより、重く大きな電動モータを合理的に支持できるようにして、より改善された産業用ハイブリッドエンジンを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、産業用ハイブリッドエンジンにおいて、
クランク軸6の駆動プーリ6a及び動力用電動モータ8のモータプーリ8aに巻回される無端回動帯9が設けられ、前記電動モータ8を支持ブラケット19を用いてエンジン本体hに取付けるとともに、前記支持ブラケット19に、前記無端回動帯9を張る方向に付勢する緊張機構18が支持され
前記支持ブラケット19とは別に前記電動モータ8を支持する第2支持ブラケット20が設けられ、
前記第2支持ブラケット20は、前取付部20Aと後取付部20Bと前記後取付部20Bから後方突出される作用片20Dとを備え、
前記前取付部20Aがシリンダヘッド2の前面にボルト止めされ、かつ、前記後取付部20Bが前記シリンダヘッド2の左側面にボルト止めされていることを特徴とする。
【0009】
第2の本発明は、本発明による産業用ハイブリッドエンジンにおいて、
前記電動モータ8の下側が前記支持ブラケット19を用いて位置固定で支持されるとともに、前記電動モータ8の上側が前記第2支持ブラケット20を用いて支持され、
前記緊張機構18は、テンションプーリ18aと、前記テンションプーリ18aを先端に軸支する揺動アーム18Aと、前記支持ブラケット19に支持されて前記揺動アーム18Aを軸心Pを中心として付勢させる緊張本体18Bと、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0010】
第3の本発明は、本発明又は第2の本発明による産業用ハイブリッドエンジンにおいて、
前記支持ブラケット19の前記エンジン本体hからの突設方向に対する一方に前記電動モータ8が、かつ、他方に前記緊張機構18がそれぞれ配置されていることを特徴とする。
【0011】
第4の本発明は、本発明〜第3の本発明の何れか一つによる産業用ハイブリッドエンジンにおいて、
前記支持ブラケット19は、前記エンジン本体hにおける排気マニホルド配置側に取付けられていることを特徴とする。
【0012】
第5の本発明は、本発明〜第4の本発明の何れか一つによる産業用ハイブリッドエンジンにおいて、
前記支持ブラケット19は、シリンダブロック1の一端に装備される伝動ケース5に取付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電動モータを支持ブラケットを用いて位置固定でエンジン本体に取付け、無端回動帯を張るための緊張機構を別途に設けたので、無端回動帯を常に良好に緊張させながら、大きくて重い電動モータを強度十分に支持させることができる。
一つの支持ブラケットで、電動モータの支持と緊張機構の支持とが行えるので、構成の兼用化によるコンパクト化やコストダウンが可能となる利点もある。
【0014】
その結果、鋭意研究により、主に電動モータの支持構造に工夫を凝らすことにより、重く大きな電動モータを合理的に支持できるようにして、より改善された産業用ハイブリッドエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】産業用ハイブリッドディーゼルエンジンの正面図
図2図1のエンジンの平面図
図3図1のエンジンの左側面図
図4図1のエンジンの電動モータ付近の拡大正面図
図5図1のエンジンの電動モータ付近の拡大平面図
図6】第1支持ブラケットを示し、(a)は正面図、(b)は底面図
図7】第1支持ブラケットを示し、(a)は左側面図、(b)は背面図
図8】第2支持ブラケットを示し、(a)は正面図、(b)は平面図
図9】第2支持ブラケットを示し、(a)は左側面図、(b)は背面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明による産業用ハイブリッドエンジンの実施の形態を、農機用のディーゼルエンジンに適用した場合について図面を参照しながら説明する。この産業用エンジンEにおいては、伝動ベルト9のある方を前、フライホイールハウジング17のある方を後、排気マニホルド10のある方を左、オイルフィルタ13のある方を右として定義する。また、エンジン本体hは、シリンダブロック1、シリンダヘッド2、ヘッドカバー3、伝動ケース5を有する概念である。
【0017】
図1図3に示されるように、直列3気筒の産業用ハイブリッドディーゼルエンジン(以下、単にエンジンと略称する)Eは、シリンダブロック1の上にシリンダヘッド2が組み付けられ、シリンダブロック1の下にオイルパン4が組み付けられている。シリンダブロック1の下部はクランクケース1bに形成され、上部はシリンダ1aにそれぞれ形成されている。シリンダヘッド2の上にヘッドカバー(シリンダヘッドカバー)3が組み付けられている。シリンダブロック1の前には伝動ケース5が組み付けられている。
【0018】
図1図3に示されるように、エンジンEの前部に、クランク軸6の駆動プーリ6a、冷却ファン(図示省略)駆動用のファンプーリ7、及びモータジェネレータである電動モータ8のモータプーリ8aに跨る伝動ベルト(無端回動体の一例)9が配備されている。エンジンEの左側には、排気マニホルド10、過給器(ターボ)11、電動モータ8などが装備されている。エンジンEの右側にはオイルフィルタ13、吸気マニホルド14、オイルレベルゲージ12などが装備され、上方には3つのインジェクタ15が配置されている。エンジンEの後部には、フライホイール16やフライホイールハウジング17が装備されている。
【0019】
図1図4に示されるように、駆動プーリ6aとモータプーリ8aの間において、可撓性を有する伝動ベルト9をファンプーリ7側に押圧付勢するベルト緊張機構(緊張機構の一例)18が、伝動ケース5の左に位置する状態で装備されている。ベルト緊張機構18は、伝動ベルト9の背面(外周面)に圧接されるテンションプーリ18aと、テンションプーリ18aを先端に軸支する揺動アーム18Aと、揺動アーム18Aを軸心Pを中心として矢印Z方向(左方向)に回動付勢させる緊張本体18Bとを備えて構成されている。
【0020】
図1図5に示されるように、電動モータ8は、前後方向視で円形を呈する比較的大型(大出力)の動力用電動モータであり、重量も一般的なものより重い。そのため、下側の第1支持ブラケット(支持ブラケット)19と上部右側の第2支持ブラケット20とを用い、しっかりとエンジン本体hに取付けられている。そして、ベルト緊張機構18は、緊張本体18Bの上側を第1支持ブラケット19に、かつ、下側をエンジン本体hにそれぞれボルト止めにより取付けられている。
【0021】
図6図7に示されるように、第1支持ブラケット19は、ブラケット基部19Aと、先端ボス部19Bと、突出部19Cとを有して正面視で三角形状を為す金属部品である。ブラケット基部19Aは、伝動ケース5にボルト止めするための前後向きで2か所の取付孔19a,19aを基端側(右側)に備えている。ブラケット基部19Aには、他部品取付用の補助孔19dが貫通形成され、裏側には他部品取付用の取付ネジ19eが形成されている。
【0022】
先端ボス部19Bは、電動モータ8をボルト止めするための装着孔19bを備えており、ブラケット基部19Aより後方に寄った段付形状の部分に形成されている。突出部19Cは、緊張本体18Bをボルト止めするためのナット部であるネジ孔19cを備えて、ブラケット基部19Aの先端側(左側)から下方に突設されている。
【0023】
図8図9に示されるように、第2支持ブラケット20は、前取付部20A、後取付部20B、これら前後の取付部20A,20Bの上部どうしを繋ぐ状態でそれら20A,20Bの前後間に位置するブラケット本部20Cとを有する金属部品である。前取付部20Aは、その下部に、シリンダヘッド2の前面にボルト止めするための前後向き孔20aを備えている。後取付部20Bは、その下部に、シリンダヘッド2の左側面にボルト止めするための左右向き孔20bを備え、その上部には上下向きの雌ネジ22が前後一対形成されている。
【0024】
ブラケット本部20Cは、前後向きの支持孔21aを備えて左方突出する支持ボス部21を備えている。電動モータ8には、右向き突出する二股ブラケット23が設けられており、二股ブラケット23の前後一対のアーム部23a,23aが支持ボス部21を挟んだ状態で通されるボルト24により、二股ブラケット23とブラケット本部20Cとが連結されている(図5参照)。なお、20Dは、後取付部20Bから後方突出される作用片である。
【0025】
図4図5に示されるように、第1支持ブラケット19は、ブラケット基部19Aが2個のボルト(図示省略)により伝動ケース5の上部左側部位に螺着されることにより、左斜め上方に突出する状態で取付けられている。電動モータ8下側の二股ブラケット25のアーム部25aと先端ボス部19Bとがボルト連結され、緊張本体18Bの上ステー18bと突出部19Cとがボルト連結されている。緊張本体18Bの下右ステー18cは、伝動ケース5の取付部5aにボルト止めされている。
【0026】
つまり、第1支持ブラケット19は、電動モータ8の下側を伝動ケース5(エンジン本体h)に支持するために介装される強度部材であるとともに、ベルト緊張機構18を支持する強度部材でもある。第1支持ブラケット19の上側に電動モータ8が配置され、下側にベルト緊張機構18が配置されている。ベルト緊張機構18は、その1箇所(上ステー18b)が第1支持ブラケット19を介して、かつ、もう1箇所(下右ステー18c)が直接にそれぞれ伝動ケース5にボルト止めされる構造によりエンジン本体hに支持されている。
【0027】
図4図5に示されるように、第2支持ブラケット20は、前取付部20Aがシリンダヘッド2の前面側に、かつ、後取付部20Bがシリンダヘッド2の左側面にそれぞれボルト止めされることでエンジン本体hに取付けられている。そして、支持ボス部21の前後に電動モータ8の二股ブラケット23がボルト止めされている。つまり、第2支持ブラケット20を介して電動モータ8の上部がシリンダヘッド2に支持されている。
【0028】
以上述べたように、第1支持ブラケット19の左斜め上方向(エンジン本体hからの突設方向)に対する一方(上側)に電動モータ8が、かつ、他方(下側)にベルト緊張機構18がそれぞれ配置されている。第1支持ブラケット19は、エンジン本体hにおける排気マニホルド10配置側(左側)に取付けられている。第1支持ブラケット19は、シリンダブロック1の一端(前端)に装備される伝動ケース5に取付けられ、第1支持ブラケット19とは別に電動モータ8を支持する第2支持ブラケット20は、シリンダヘッド2に取付けられている。
【0029】
本発明による産業用ハイブリッドエンジンEによれば、次の(1)〜(5)の作用効果が期待できる。
(1)電動モータを位置固定でエンジン本体に取付け、無端回動帯を張るための緊張機構を別途に設けたので、無端回動帯を常に適度に緊張させて良好な状態としながら大きくて重い電動モータを強度十分に支持させることができる。
【0030】
(2)第1及び第2支持ブラケット19,20による電動モータ8の支持構造により、大きくて重い電動モータ8を強度十分にエンジン本体hに支持できており、エンジンレイアウトのコンパクト化も可能なマイクロハイブリッド仕様のエンジンEが実現できている。
(3)第1及び第2支持ブラケット19,20のエンジン本体hへの取付構造は、従来から存在しているボルト孔を用いた共締め構成であるから、両支持ブラケット19,20の有る無しによりハイブリッド仕様と通常エンジン仕様とを、構造簡単で廉価な手段で選択的に仕様設定できる利点がある。
【0031】
(4)第1支持ブラケット19は緊張機構18も支持しているので、伝動ケース5(シリンダブロック1)やシリンダヘッド2に新たな取付用ボスなどを付設する必要が無い。従って、従来エンジンにおけるオルタネータに置き換える形で電動モータ8を配置することができ、簡単でコンパクトなエンジンレイアウトで済む利点がある。
(5)1つの支持ブラケット(第1支持ブラケット)19で、電動モータ8と緊張機構18との2種類の構造物の支持が行える合理性がある。
【符号の説明】
【0032】
1 シリンダブロック
2 シリンダヘッド
5 伝動ケース
6 クランク軸
6a 駆動プーリ
8 電動モータ
8a モータプーリ
9 無端回動帯(伝動ベルト)
18 緊張機構
18A 揺動アーム
18B 緊張本体
18a テンションプーリ
19 支持ブラケット(第1支持ブラケット)
20 第2支持ブラケット
h エンジン本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9