(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0014】
(実施の形態1)
<原子層成長装置に特有の事情>
例えば、プラズマCVD装置では、基板を保持する下部電極と、下部電極と対向配置される上部電極との間に複数の原料ガスを供給しながら、下部電極と上部電極との間にプラズマ放電を生じさせる。これにより、プラズマCVD装置では、プラズマ放電で生じた活性種(ラジカル)による化学反応により、基板上に膜を形成する。このとき、プラズマCVD装置では、主にプラズマ放電が形成されている領域(放電空間)に膜が形成される。これは、プラズマCVD装置で使用される原料ガスとして、放電空間に局在化させるために拡散しにくい性質を有している原料ガスが使用されるとともに、複数の原料ガスからプラズマ放電によって活性種(ラジカル)が生じて初めて膜材料が形成されるからである。したがって、プラズマCVD装置では、放電空間から離れた場所(プラズマ放電が生じない場所)には膜が形成されにくい傾向を示すことになる。
【0015】
これに対し、例えば、プラズマ原子層成長装置では、基板を保持する下部電極と、下部電極と対向配置される上部電極との間に、原料ガスと反応ガスとを交互に供給し、かつ、反応ガスを供給する際にプラズマ放電することにより、基板上に原子層単位で膜を形成する。このとき、プラズマ原子層成長装置では、原子層単位で膜を形成することにより、段差被覆性に優れた膜を形成することができる。特に、プラズマ原子層成長装置では、段差被覆性を良好にするため、原料ガスとして拡散しやすい材料が使用されるとともに、それぞれのガス(原料ガスやパージガスや反応ガス)が成膜容器内に充分に拡散するだけの時間を確保しながら、それぞれのガスを交互に供給している。このため、例えば、原料ガスや反応ガスは、基板上だけでなく、成膜容器の隅々まで行き渡ることになる。さらには、プラズマ原子層成長装置においては、反応ガスをプラズマ放電させることにより活性種(ラジカル)を形成して、この活性種と基板に吸着した原料ガスとが反応して膜が形成されるだけでなく、プラズマ放電によって活性種(ラジカル)が生じない状態においても、原料ガスと反応ガスとが反応しやすい傾向がある。したがって、プラズマ原子層成長装置では、プラズマ放電が生じていない成膜容器の微細な隙間においても、原料ガスと反応ガスが反応して膜が形成されることになる。つまり、原子層成長装置では、(1)原子層単位で膜を形成すること、(2)成膜容器の隅々まで原料ガスや反応ガスが行き渡ること、(3)プラズマ放電が生じていない場所でも原料ガスと反応ガスとが反応しやすいことという特徴を有する結果、微細な隙間にも膜が形成されることになる。
【0016】
このようにプラズマ原子層成長装置においては、基板上だけでなく、微細な隙間を含む成膜容器内の隅々まで膜が形成されてしまうという性質があることになる。
【0017】
例えば、プラズマ原子層成長装置において、上部電極は、例えば、絶縁支持部材で支持される。ここで、上述したように、プラズマ原子層成長装置では、成膜容器の隅々まで膜が形成されてしまうことから、絶縁支持部材にも膜が形成されることになる。そして、絶縁支持部材に付着した膜の膜厚が厚くなると、付着した膜の一部が絶縁支持部材から剥離して異物となる。この異物は、基板上に形成される膜の膜質を劣化させる要因となる。このことから、基板上に形成される膜の膜質(品質)を向上するためには、絶縁支持部材に付着した膜を除去する必要がある。
【0018】
この点に関し、例えば、成膜容器内に、例えば、NF
3ガスなどから構成されるクリーニングガスを導入してドライエッチングを実施することにより、絶縁支持部材に付着した膜を除去することが考えられる。ところが、プラズマ原子層成長装置では、微細な隙間を含む成膜容器の隅々まで膜が形成される一方、クリーニングガスによるドライエッチングでは、プラズマ放電が生じている場所しか膜の除去が行なわれないとともに、クリーニングガスが微細な隙間を含む成膜容器の隅々まで行き渡ることは困難である。さらには、例えば、プラズマ原子層成長装置で形成する膜として、酸化アルミニウム膜(Al
2O
3膜)を一例として挙げることができるが、この酸化アルミニウム膜は、ドライエッチングで除去することが困難である。したがって、プラズマ原子層成長装置においては、クリーニングガスを使用したドライエッチングでは、成膜容器の隅々まで形成された膜を除去することは困難であることから、例えば、絶縁支持部材に付着した膜の除去にもドライエッチングを使用することは困難となる。
【0019】
そこで、例えば、上部電極を固定する絶縁支持部材を取り外して、絶縁支持部材に付着した膜をウェットエッチングにより除去することが考えられる。ところが、絶縁支持部材を取り外して、ウェットエッチングを施した後、再び、絶縁支持部材を取り付けると、上部電極の取り付け位置が以前の取り付け位置と異なることになる。この場合、上部電極と下部電極との間のプラズマ放電の状態が変化する。つまり、絶縁支持部材を取り外して、ウェットエッチングでクリーニングする方法では、絶縁支持部材の取り付け位置を再現できなくなる結果、絶縁支持部材で支持される上部電極の取り付け位置が変わり、プラズマ放電の状態に代表される成膜条件が変化してしまう。この場合、基板上に形成される膜の品質が変動するおそれがある。さらには、絶縁支持部材に付着した膜をウェットエッチングにより除去する方法では、成膜容器内を大気圧に開放した後、絶縁支持部材を取り出す必要があり、メンテナンス作業性が低下することになる。
【0020】
以上のことから、プラズマ原子層成長装置では、特に、基板上に形成される膜の膜質を向上し、かつ、成膜条件を変えることなく、上部電極を支持する絶縁支持部材に付着した膜を除去することが困難であることがわかる。そこで、本実施の形態1では、上部電極を支持する絶縁支持部材に膜が付着しにくい構成を採用している。以下では、まず、この構成を含むプラズマ原子層成長装置の全体構成について説明する。
【0021】
<プラズマ原子層成長装置の全体構成>
図1は、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100の全体構成を模式的に示す断面図である。本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100は、原料ガスと反応ガスとを交互に供給することにより、基板1S上に原子層単位で膜を形成するように構成されている。その際、反応活性を高めるため、基板1Sを加熱することができる。
【0022】
本実施の形態1では、原料として、TMA(Tri-Methyl-Aluminum)を使用し、反応活性を高めるため、プラズマ放電が行なわれる。本実施の形態1では、プラズマ放電を行なうため、平行平板電極が使用される。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100は、成膜容器CBを有している。この成膜容器CBには、基板1Sを保持するステージが配置されており、このステージは、下部電極BEとして機能する。また、ステージは、ヒータを備え、基板1Sの温度を調整することができるように構成されている。例えば、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100の場合、ステージ上に保持される基板1Sは、50℃〜200℃に加熱される。そして、成膜容器CBは、真空に維持される。
【0024】
次に、
図1に示すように、成膜容器CBには、原料ガスやパージガスや反応ガスを供給するガス供給部GSUが設けられているとともに、原料ガスやパージガスや反応ガスを排気するガス排気部GVUが設けられている。例えば、ガス供給部GSUとガス排気部GVUとは、互いに対向する位置に設けられており、ガス供給部GSUから供給されたガスは、成膜容器CB内の放電空間SPを通って、ガス排気部GVUから排気される。
【0025】
さらに、成膜容器CB内には、下部電極BE上に搭載されている基板1Sの上方に位置する放電空間を挟んで、導体防着部材10aと導体防着部材10bとが取り付けられた上部電極UEが配置されている。すなわち、上部電極UEは、導体防着部材10aと導体防着部材10bとを介して、基板1Sが搭載された下部電極BEと対向するように配置されている。そして、上部電極UEの上方に天板CTが配置されており、この天板CTには、上部電極UEを支持するための天板支持部CTSPが設けられている。さらに、天板支持部CTSPと密着するように絶縁支持部材ISMが配置されており、この絶縁支持部材ISMによって、上部電極UEが支持されている。そして、
図1に示すように、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100は、平面視において、上部電極UEを離間して囲む絶縁体からなる絶縁防着部材CTMを有しており、平面視において、絶縁防着部材CTMは、絶縁支持部材ISMと重なるように配置されている。
【0026】
ここで、本明細書でいう「平面視」とは、
図1に示す下部電極BEの上面と並行な平面をこの平面に垂直な方向から視る場合として定義される。言い換えれば、本明細書でいう「平面視」とは、
図1に示す上部電極UEの下面と並行な平面をこの平面に垂直な方向から視る場合として定義される。
【0027】
続いて、
図1に示すように、天板CTには、成膜容器CB内に窒素ガスなどの不活性ガスを供給する不活性ガス供給部IGSUが設けられている。このように、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100には、原料ガスやパージガスや反応ガスを供給するガス供給部GSUの他に、不活性ガスを供給する不活性ガス供給部IGSUが別個に設けられている。
【0028】
<絶縁防着部材の構成>
次に、本実施の形態1における絶縁防着部材CTMの構成について説明する。
図2は、上部電極UEを離間して囲むように設けられた本実施の形態1における絶縁防着部材CTMの構成を模式的に示す図である。
図2において、二点鎖線で示す直方体が上部電極UEの模式的な構成を示している。
図2に示す上部電極UEは、導体防着部材10a(
図2では、図示を省略)と導体防着部材10b(
図2では、図示を省略)とを介して、
図1に示す下部電極BEと対向する表面SURと、表面SURと交差する側面SS1と、側面SS1の反対側に位置する側面SS2と、表面SURおよび側面SS1と交差する側面SS3と、側面SS3の反対側に位置する側面SS4とを有する。
【0029】
そして、
図2に示すように、本実施の形態1における絶縁防着部材CTMは、上部電極UEを離間して取り囲むように構成されている。具体的に、本実施の形態1における絶縁防着部材CTMは、上部電極UEの側面SS1と対向する部位(part)PT1と、上部電極UEの側面SS2と対向する部位PT2と、上部電極UEの側面SS3と対向する部位PT3と、上部電極UEの側面SS4と対向する部位PT4とを有する。一方、本実施の形態1における絶縁防着部材CTMは、
図2に示すように、上部電極UEの表面SURに取り付けられた導体防着部材10b(
図2では、図示を省略)を露出するように、絶縁防着部材CTMの底部に開口部が形成されている。この結果、
図2に示すように、本実施の形態1における絶縁防着部材CTMの部位PT1〜PT4のそれぞれは、水平部位と垂直部位とを有するL字形状をしていることになる。
【0030】
ここで、絶縁防着部材CTMの部位PT1〜PT4のそれぞれには、固定部材を埋め込む複数の固定穴SHと、固定部材を支持する複数の凸部SUとが形成されている。これにより、防着部材CTMは、
図2では図示されない固定部材で支持されることになる。このようにして、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置には、上部電極UEを囲む絶縁防着部材CTMが設けられていることになる。
【0031】
<絶縁防着部材による利点>
本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100には、例えば、
図2に示すように、平面視において、上部電極UEを囲むように絶縁防着部材CTMが設けられている。これにより、上部電極UEの周囲に設けられた絶縁支持部材ISMに膜が付着することを防止できる。すなわち、プラズマ原子層成長装置100では、(1)原子層単位で膜を形成すること、(2)成膜容器の隅々まで原料ガスや反応ガスが行き渡ること、(3)プラズマ放電が生じていない場所でも原料ガスと反応ガスとが反応しやすいことという性質を有することから、上部電極UEと下部電極BEで挟まれた放電空間から離れた場所に設けられている絶縁支持部材ISMにおいても膜が付着する。特に、上部電極UEの周囲に設けられた絶縁支持部材ISMは、放電空間に近いこともあり、膜の付着が生じやすい。したがって、本実施の形態1では、平面視において、上部電極UEの周囲を囲むように絶縁防着部材CTMを設けている。これにより、上部電極UEの周囲に配置された絶縁支持部材ISMに膜が付着することを効果的に防止することができる。
【0032】
さらに、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100では、例えば、
図2に示すように、上部電極UE(導体防着部材10a、10b)を離間して囲むように絶縁防着部材CTMを設けている。これにより、上部電極UE(導体防着部材10a、10b)および絶縁防着部材CTMのそれぞれの変形や破損を防止することができる。例えば、上部電極UE(導体防着部材10a、10b)は、導体から構成される一方、絶縁防着部材CTMは、絶縁体(セラミック)から構成される。したがって、上部電極UE(導体防着部材10a、10b)の熱膨張率と、絶縁防着部材CTMの熱膨張率は大きく相違する。この場合、例えば、上部電極UE(導体防着部材10a、10b)を密着して囲むように絶縁防着部材CTMを形成すると、上部電極UE(導体防着部材10a、10b)の熱膨張率と、絶縁防着部材CTMの熱膨張率との相違によって、上部電極UE(導体防着部材10a、10b)および絶縁防着部材CTMのそれぞれに歪みが発生して変形するおそれがある。そして、歪みが大きくなると、特に、セラミックから構成されている絶縁防着部材CTMが破損するおそれがある。このため、本実施の形態1では、例えば、
図1に示すように、上部電極UE(導体防着部材10a、10b)を離間して囲むように絶縁防着部材CTMを設けている。言い換えれば、上部電極UE(導体防着部材10a、10b)と絶縁防着部材CTMとの間に隙間を設けている。これにより、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100によれば、成膜容器内が加熱される場合であっても、上部電極UE(導体防着部材10a、10b)および絶縁防着部材CTMのそれぞれの体積膨張が隙間によって吸収されるため、上部電極UE(導体防着部材10a、10b)および絶縁防着部材CTMの変形および破損を抑制することができる。
【0033】
<不活性ガス供給部による利点>
ただし、上部電極UE(導体防着部材10a、10b)と絶縁防着部材CTMとの間に隙間が形成されると、微細な隙間を含む成膜容器内の隅々まで膜が形成されてしまうというプラズマ原子層成長装置の特性から、上部電極UE(導体防着部材10a、10b)と防着部材CTMとの隙間に膜が形成されてしまうことになる。つまり、上部電極UEを支持する絶縁支持部材ISMに膜が付着することをほぼ完全に防止して、絶縁支持部材ISMのメンテナンスフリー化を実現する観点からは、上部電極UE(導体防着部材10a、10b)と絶縁防着部材CTMとの間に隙間を設けるという構成では、充分とは言えず、さらなる工夫が必要とされるのである。そこで、本実施の形態1では、上部電極UE(導体防着部材10a、10b)と絶縁防着部材CTMとの間に隙間を設けながら、上部電極UEを支持する絶縁支持部材ISMに膜が付着することをほぼ完全に防止するために工夫を施している。
【0034】
具体的に、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置では、例えば、
図1に示すように、上部電極UE(導体防着部材10a、10b)と絶縁防着部材CTMとの隙間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部IGSUを有している。これにより、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100によれば、不活性ガス供給部IGSUから供給された不活性ガスは、絶縁防着部材CTMと上部電極UEとの間の隙間、絶縁支持部材ISMと上部電極UEとの間の隙間、および、導体防着部材10a、10bと絶縁防着部材CTMとの間の隙間に充填される。したがって、不活性ガス供給部IGSUから供給される不活性ガスによって、絶縁防着部材CTMと上部電極UE(導体防着部材10a、10b)との間に形成される隙間に原料ガスや反応ガスが侵入することが阻止される。この結果、上部電極UE(導体防着部材10a、10b)と絶縁防着部材CTMとの間の隙間の不要な膜が形成されることを抑制することができる。
【0035】
さらに、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100では、例えば、
図1に示すように、原料ガスや反応ガスを成膜容器内に供給するガス供給部GSUとは別個に、不活性ガスを供給する不活性ガス供給部IGSUが設けられている。これにより、特に、ガス供給部GSUの配置位置に左右されることなく、不要な膜の付着を防止したい場所に効率良く不活性ガスを供給することができるように不活性ガス供給部IGSUを設ける位置を設計することができる。さらには、原料ガスや反応ガスを供給するガス供給部GSUとは別経路で不活性ガスを供給することができるため、放電空間SPに供給される原料ガスや反応ガスの流れに対して、不活性ガスの流れが悪影響を及ぼすことを抑制することができる。この結果、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置によれば、不活性ガスを成膜容器内に供給することに起因する原料ガスおよび反応ガスの基板1S上での均一性の低下を抑制することができ、これによって、不活性ガスを供給しながらも、基板1S上に形成される膜の均一性の低下を防止することができる。
【0036】
<さらなる改善の余地>
上述したように、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100では、平面視において、上部電極UEの周囲を囲むように絶縁防着部材CTMが設けられている。これにより、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100によれば、上部電極UEの周囲に配置された絶縁支持部材ISMに膜が付着することを効果的に防止することができる。この結果、上部電極UEを固定する絶縁支持部材ISMを取り外して、絶縁支持部材ISMに付着した膜をウェットエッチングにより除去する必要性が低減される。これにより、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100によれば、絶縁支持部材ISMで支持される上部電極の取り付け位置が変わることに起因する成膜条件の変化を抑制することができ、これによって、基板1S上に形成される膜の品質の変動を抑制することができると考えられる。ところが、上部電極の取り付け位置が変わることに起因する成膜条件の変化を抑制する観点からは、上述した対策では不充分であることを本発明者は新たに見出したので、この点について説明する。
【0037】
例えば、
図1において、絶縁防着部材CTMを設けることにより、絶縁支持部材ISMに膜が付着することを防止することができるとしても、基板1Sと対向する上部電極UEの対向面自体に膜が付着すると、付着した膜が剥がれて異物となる可能性が大きくなる。そして、この異物は、基板1S上に形成される膜の膜質を劣化させる要因となる。したがって、基板1S上に形成される膜の膜質の劣化を抑制する観点からは、絶縁支持部材ISMに膜が付着することを防止する対策だけでは充分ではなく、基板1Sと対向する上部電極UEの対向面自体に膜が付着する対策も施す必要がある。
【0038】
この点に関し、基板1Sと対向する上部電極UEの対向面に導体防着部材を配置することが考えられる。ところが、この導体防着部材は、例えば、ビスによって、上部電極UEに固定される。この点に関し、プラズマ原子層成長装置100においては、基板1S上だけでなく、微細な隙間を含む成膜容器内の隅々まで膜が形成されてしまうという性質があることから、ビスによる上部電極UEの固定部位に存在する微細な隙間にも膜が形成されてしまう。このことは、基板1Sと対向する上部電極UEの対向面に導体防着部材を配置したとしても、ビスによる固定部位を介して、上部電極UE自体に膜が形成されてしまうことを意味する。そして、上部電極UE自体に膜が形成されてしまうと、膜の上部電極UEからの剥離に起因する異物が発生するポテンシャルが大きくなることから、上部電極UE自体に付着した膜を除去する必要がある。
【0039】
ここで、例えば、成膜容器内にクリーニングガスを導入してドライエッチングを実施することにより、上部電極UEに付着した膜を除去することが考えられる。ところが、プラズマ原子層成長装置100では、微細な隙間を含む成膜容器の隅々まで膜が形成される一方、クリーニングガスによるドライエッチングでは、プラズマ放電が生じている場所しか膜の除去が行なわれないとともに、クリーニングガスが微細な隙間を含む成膜容器の隅々まで行き渡ることは困難である。特に、ビスによる固定部位に存在する微細な隙間には、クリーニングガスが入り込みにくいことから、ビスによる固定部位に存在する微細な隙間に形成された膜を除去するためには、現実的ではない程の長時間のクリーニング時間を要することになる。さらには、例えば、プラズマ原子層成長装置100で形成する膜として、酸化アルミニウム膜(Al
2O
3膜)を一例として挙げることができるが、この酸化アルミニウム膜は、ドライエッチングで除去することが困難である。したがって、プラズマ原子層成長装置100においては、クリーニングガスを使用したドライエッチングでは、ビスによる上部電極UEの固定部位に存在する微細な隙間に形成された膜の除去にドライエッチングを使用することは困難となる。
【0040】
そこで、例えば、上部電極UE自体を取り外して、上部電極UEに付着した膜をウェットエッチングにより除去することが考えられる。ところが、上部電極UEを取り外して、ウェットエッチングを施した後、再び、上部電極UEを取り付けると、上部電極UEの取り付け位置が以前の取り付け位置と異なることになる。この場合、上部電極UEと下部電極BEとの間のプラズマ放電の状態が変化する。つまり、上部電極UEを取り外して、ウェットエッチングでクリーニングする方法では、上部電極UE自体の取り付け位置を再現できなくなる結果、上部電極UEの取り付け位置が変わり、プラズマ放電の状態に代表される成膜条件が変化してしまう。この場合、基板1S上に形成される膜の品質が変動するおそれがある。さらには、上部電極UE自体に付着した膜をウェットエッチングにより除去する方法では、成膜容器内を大気圧に開放した後、上部電極UEを取り出す必要があり、メンテナンス作業性が低下することになる。
【0041】
以上のことから、上部電極UE自体に膜が付着することを防止するためには、基板1Sと対向する上部電極UEの対向面に導体防着部材を配置するだけでなく、さらに、導体防着部材の取り付け構造に対する工夫が必要とされる。すなわち、基板1Sと対向する上部電極UEの対向面に導体防着部材を取り付けたとしても、導体防着部材の取り付け構造に対する工夫を施さなければ、上部電極UE自体に膜が付着することを充分に抑制することはできないのである。そこで、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100では、導体防着部材の取り付け構造に対する工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態1における技術的思想について説明することにする。
【0042】
<本実施の形態1における基本思想>
図3は、上部電極UEの下面に設けられる導体防着部材10の取り付け構造に関する工夫の必要性を説明する図である。
図3に示すように、基板1Sと対向する上部電極UEの下面(対向面)には、導体防着部材10が設けられている。この導体防着部材10は、導体防着部材10を貫通する貫通孔11と、上部電極UEの下面に設けられ、かつ、貫通孔11と連通する溝12とにわたって挿入されたビス13によって固定されている。
【0043】
ここで、プラズマ原子層成長法においては、基板1S上だけでなく、微細な隙間にも膜が形成されてしまうという性質があることから、ビス13による上部電極UEの固定部位に存在する微細な隙間にも膜が形成されてしまう。すなわち、
図3の太矢印に示す経路1000aで、放電空間から上部電極UEに形成された溝12にまで膜が形成されてしまう。特に、
図3の太矢印に示す経路1000aの距離が短くなるほど、上部電極UEに形成された溝12の内部(微細な隙間)にも膜が形成されやすくなる。
【0044】
そこで、本実施の形態1における基本思想は、例えば、
図3に示すように、放電空間からビス13による固定部位を介して上部電極UEに形成された溝12にまで達する経路1000aをできるだけ長くする思想である。このように、放電空間からビス13による固定部位を介して上部電極UEに形成された溝12にまで達する経路1000aが長くなればなるほど、上部電極UE自体に膜が形成されることが抑制される。つまり、本実施の形態1における基本思想は、放電空間からビス13による固定部位を介して上部電極UEに形成された溝12にまで達する経路が、
図3の太矢印に示す経路1000aの距離よりも充分に長くするものである。そして、この本実施の形態1における基本思想を具現化するために、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置では、導体防着部材の取り付け構造に対する工夫を施している。以下では、本実施の形態1における基本思想を具現化するための導体防着部材の取り付け構造に対する特徴点について説明する。
【0045】
<実施の形態1における特徴点>
図4は、本実施の形態1における特徴点を説明する図である。すなわち、
図4は、導体防着部材の取り付け構造に関する特徴点を説明する図である。本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100は、例えば、
図4に示すように、基板1Sを保持するための下部電極BEと、下部電極BEと対向する対向面(下面)を有し、かつ、下部電極BEとの間でプラズマ放電を発生させるための上部電極UEとを備えることを前提とする。そして、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100では、上部電極UEの下面に複数のビス13aで導体防着部材10aが固定され、かつ、導体防着部材10aの下面に複数のビス13bで導体防着部材10bが固定されている。このとき、本実施の形態1における特徴点は、例えば、
図4に示すように、複数のビス13aと複数のビス13bとは、互いに重ならないように配置されている点にある。言い換えれば、本実施の形態1における特徴点は、例えば、平面視において、複数のビス13aと複数のビス13bとは、互いに離間して配置されている点にある。
【0046】
具体的に、
図4に示すように、導体防着部材10aには、貫通孔11aが形成されており、かつ、上部電極UEには、この貫通孔11aと連通する溝12が形成されている。そして、貫通孔11aと溝12とにわたってビス13aを挿入することにより、導体防着部材10aは、上部電極UEの下面に取り付けられている。一方、導体防着部材10bには、貫通孔11bが形成されており、かつ、導体防着部材10aには、この貫通孔11bと連通する溝14が形成されている。そして、貫通孔11bと溝14とにわたってビス13bを挿入することにより、導体防着部材10bは、導体防着部材10aの下面に取り付けられている。ここで、本実施の形態1における特徴点は、
図4に示すように、導体防着部材10aを上部電極UEに固定するビス13aと、導体防着部材10bを導体防着部材10aに固定するビス13bとが、互い違いに配置されている点にある。言い換えれば、本実施の形態1における特徴点は、
図4に示すように、導体防着部材10aを上部電極UEに固定するビス13aと、導体防着部材10bを導体防着部材10aに固定するビス13bとが、互いに重ならないように配置されている点にある。これにより、
図4の太矢印で示す経路1000bは、
図3の太矢印で示す経路1000aに比べて、遥かに長くなる。このことは、本実施の形態1における特徴点によれば、放電空間から上部電極UE自体に形成されている溝12までのガスの侵入距離が長くなることを意味する。したがって、たとえ、微細な隙間にも膜が形成されてしまうという性質があるプラズマ原子層成長装置100であっても、導体防着部材の取り付け構造に対する工夫として、本実施の形態1における特徴点を採用することにより、上部電極UE自体に膜が付着することを効果的に防止することができる。この結果、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100によれば、上部電極UEを取り外して、上部電極UEに付着した膜を除去するメンテナンス作業を実施する頻度が少なくなる結果、上部電極UEの取り付け位置が変化することに起因する成膜条件の変動を抑制できる。この結果、本実施の形態1における特徴点を採用することにより、基板1S上に形成される膜の品質が変動することを抑制することができる。このことから、本実施の形態1におけるプラズマ原子層成長装置100によれば、基板1S上に品質の良好な膜を安定して形成することができる。
【0047】
次に、
図5(a)は、導体防着部材10aと導体防着部材10bとを示す断面図である。
図5(a)において、導体防着部材10aは、複数のビス13aによって、図示しない上部電極に固定されている。一方、導体防着部材10bは、複数のビス13bによって、導体防着部材10aに固定されている。
【0048】
ここで、
図5(b)は、
図5(a)に示す導体防着部材10aの上方から見た平面図である。
図5(b)において、導体防着部材10aの平面形状は、矩形形状をしており、導体防着部材10aの外縁領域には、複数のビス13aが配置されている。そして、
図5(b)において、破線で囲む領域110は、例えば、
図1に示す基板1Sと平面的に重なる領域を示している。したがって、導体防着部材10aの外縁領域に配置されている複数のビス13aは、
図1に示す基板1Sと平面的に重ならないようになっている。
【0049】
続いて、
図5(c)は、
図5(a)に示す導体防着部材10bの下方から見た平面図である。
図5(c)において、導体防着部材10bの平面形状は、矩形形状をしている。そして、
図5(c)には、例えば、
図1に示す基板1Sと平面的に重なる領域110が破線で示されている。このとき、
図1に示す基板1Sと平面的に重なる領域110内には、複数のビス13bが配置されている。
【0050】
ただし、例えば、
図3に示すように、下部電極BE上に配置された基板1Sの上方に、導体防着部材10を上部電極UEに固定するビス13が存在すると、このビス13による固定部位に存在する微細な隙間に形成された膜が剥がれて、基板1S上に降り積もることが懸念される。この場合、剥離した膜は、基板1Sに付着する異物となる結果、基板1S上に形成される膜の品質に悪影響が及ぶおそれがある。すなわち、基板1Sと平面的に重なる位置にビス13による固定部位が存在すると、ビス13による固定部位に付着した膜の剥離に起因する異物の発生によって、基板1S上に形成される膜の品質に悪影響が及ぶおそれが高くなるのである。この点に関し、
図5(c)に示すように、導体防着部材10bを固定する複数のビス13bも、基板1Sと平面的に重なる領域110に配置されている。このことから、
図3の構成と同様に、ビス13bによる固定部位に付着した膜の剥離に起因する異物の発生によって、基板1S上に形成される膜の品質に悪影響が及ぶおそれがある。そこで、以下に示す変形例では、この点に関する工夫を施している。
【0051】
<変形例>
次に、本実施の形態1における変形例について説明する。
図6(a)は、導体防着部材10aと導体防着部材10bとを示す断面図である。
図6(a)において、導体防着部材10aは、複数のビス13aによって、図示しない上部電極に固定されている。一方、導体防着部材10bは、複数のビス13bによって、導体防着部材10aに固定されている。
【0052】
図6(b)は、
図6(a)に示す導体防着部材10aの上方から見た平面図である。
図6(b)において、導体防着部材10aの平面形状は、矩形形状をしており、基板1S(
図1参照)と平面的に重なる領域110に、複数のビス13aが配置されている。すなわち、本変形例において、導体防着部材10aを上部電極に固定している複数のビス13aは、基板1Sと平面的に重なる領域110に設けられている。
【0053】
続いて、
図6(c)は、
図6(a)に示す導体防着部材10bの下方から見た平面図である。
図6(c)において、導体防着部材10bの平面形状は、矩形形状をしている。そして、
図6(c)には、例えば、基板1Sと平面的に重なる領域110が破線で示されている。このとき、本変形例では、基板1Sと平面的に重ならない領域に複数のビス13bが配置されている。したがって、本変形例によれば、複数のビス13bが領域110と平面的に重ならない領域に設けられているため、ビス13bによる固定部位に付着した膜の剥離に起因する異物の発生によって、基板1S上に形成される膜の品質に悪影響が及ぶおそれを低減できる。言い換えれば、平面視において、複数のビス13bは、基板1Sと離間する位置に配置されていることから、ビス13bによる固定部位に付着した膜の剥離に起因する異物の発生によって、基板1S上に形成される膜の品質に悪影響が及ぶおそれを低減できるのである。つまり、複数のビス13bが領域110と平面的に重なるように設けられている場合、剥離した膜に起因する異物は、基板1S上に付着する可能性が高い。これに対し、複数のビス13bが領域110と平面的に重ならないように設けられている場合には、剥離した膜に起因する異物は、基板1S上に付着する可能性が低くなる。この結果、本変形例によれば、ビス13bによる固定部位に付着した膜の剥離に起因する異物の発生ポテンシャルを低減することができるのである。
【0054】
<原子層成長方法>
次に、本実施の形態1における原子層成長方法について説明する。
図7は、本実施の形態1における原子層成長方法を説明するフローチャートであり、
図8(a)〜
図8(e)は、基板上に膜を形成する工程を模式的に示す図である。
【0055】
まず、
図8(a)に示す基板1Sを準備した後、
図1に示すプラズマ原子層成長装置100の下部電極BE(ステージ)上に基板1Sを搭載する(
図7のS101)。続いて、
図1に示すプラズマ原子層成長装置100のガス供給部GSUから成膜容器の内部に原料ガスを供給するとともに、不活性ガス供給部IGSUから不活性ガスを成膜容器の内部に供給する(
図7のS102)。このとき、原料ガスは、例えば、0.1秒間、成膜容器の内部に供給される。これにより、
図8(b)に示すように、成膜容器内に不活性ガスIGと原料ガスSGとが供給され、かつ、基板1S上に原料ガスSGが吸着して吸着層ABLが形成される。
【0056】
続いて、原料ガスの供給を停止した後、ガス供給部GSUからパージガスを供給するとともに、不活性ガス供給部IGSUから不活性ガスを成膜容器の内部に供給する(
図7のS103)。これにより、パージガスは、成膜容器の内部に供給される一方、原料ガスは、排気部から成膜容器の外部に排出される。パージガスは、例えば,0.1秒間、成膜容器の内部に供給される。そして、排気部は、例えば、2秒間、成膜容器内の原料ガスやパージガスを排気する。これにより、
図8(c)に示すように、成膜容器内に不活性ガスIGとパージガスPG1とが供給され、かつ、基板1S上に吸着していない原料ガスSGが成膜容器からパージされる。
【0057】
次に、ガス供給部GSUから反応ガスを供給するとともに、不活性ガス供給部IGSUから不活性ガスを成膜容器の内部に供給する(
図7のS104)。これにより、反応ガスは、成膜容器の内部に供給される。反応ガスは、例えば,1秒間、成膜容器の内部に供給される。この反応ガスを供給する工程において、
図1に示す上部電極UEと下部電極BEとの間に放電電圧を印加することにより、プラズマ放電を生じさせる。この結果、反応ガスにラジカル(活性種)が生成される。このようにして、
図8(d)に示すように、成膜容器内に不活性ガスIGと反応
ガスRAGとが供給され、かつ、基板1S上に吸着している吸着層が反応ガスRAGと化学反応することにより、原子層ATLからなる薄膜層が形成されることになる。
【0058】
続いて、反応ガスの供給を停止した後、ガス供給部GSUからパージガスを供給するとともに、不活性ガス供給部IGSUから不活性ガスを成膜容器の内部に供給する(
図7のS105)。これにより、パージガスは、成膜容器の内部に供給される一方、反応ガスは、排気部から成膜容器の外部に排出される。反応ガスは、例えば,0.1秒間、成膜容器の内部に供給される。そして、排気部は、例えば、2秒間、成膜容器内の原料ガスやパージガスを排気する。これにより、
図8(e)に示すように、成膜容器内に不活性ガスIGとパージガスPG2とが供給され、かつ、反応に使用されない余分な反応ガスRAGが成膜容器からパージされる。
【0059】
以上のようにして、基板1S上に一層の原子層ATLからなる薄膜層が形成される。その後、上述したステップ(
図7のS102〜
図7のS105)を所定回数繰り返すことにより(
図7のS106)、複数の原子層ATLからなる薄膜層を形成する。これにより、成膜処理が終了する(
図7のS107)。
【0060】
<実施の形態における製法上の利点>
本実施の形態1における原子層成長方法は、プラズマを使用して基板上に膜を形成する。ここで、本実施の形態1における原子層成長方法は、(a)基板が配置された成膜容器内に原料ガスを供給する工程と、(b)(a)工程の後、成膜容器内に第1パージガスを供給する工程と、(c)(b)工程の後、成膜容器内に反応ガスを供給する工程と、(d)(c)工程の後、成膜容器内に第2パージガスを供給する工程とを備える。このとき、本実施の形態では、(a)工程と(b)工程と(c)工程と(d)工程とにわたって、さらに、成膜容器内に不活性ガスを供給している。
【0061】
これにより、成膜容器内に異物の発生源となる不要な膜の形成がされにくくなる利点を得ることができる。特に、本実施の形態1における原子層成長方法を具現化した
図1に示すプラズマ原子層成長装置では、原料ガスとパージガスと反応ガスとは、ガス供給部GSUから供給される一方、不活性ガスは、ガス供給部GSUと異なる不活性ガス供給部IGSUから供給される。これにより、ガス供給部GSUの配置位置に左右されることなく、不要な膜の付着を防止したい場所(基板1S上に形成される膜の膜質に大きな影響を与える場所)に効率良く不活性ガスを供給することができる。このことから、本実施の形態によれば、基板1S上に形成される膜の膜質を向上することができる。
【0062】
さらに、本実施の形態1における原子層成長方法によれば、(a)工程と(b)工程と(c)工程と(d)工程とにわたる成膜容器内の圧力変動が、不活性ガスを供給しない場合の成膜容器内の圧力変動に比べて、小さくすることができる。なぜなら、原料ガスの流量とパージガスの流量と反応ガスの流量との相違が、(a)工程と(b)工程と(c)工程と(d)工程とにわたって成膜容器内に供給される不活性ガスの流量によって緩和されるからである。すなわち、本実施の形態1では、原料ガスと不活性ガスとを合わせた流量と、パージガスと不活性ガスとを合わせた流量と、反応ガスと不活性ガスとを合わせた流量とがほぼ等しくなるように、(a)工程と(b)工程と(c)工程と(d)工程とにわたって成膜容器内に供給される不活性ガスの流量を調整する。この結果、本実施の形態1における原子層成長方法によれば、(a)工程と(b)工程と(c)工程と(d)工程とにわたる成膜容器内の圧力変動が、不活性ガスを供給しない場合の成膜容器内の圧力変動に比べて、小さくなる。これにより、成膜容器内の圧力変動に起因する異物の発生を抑制することができる。なぜなら、原子層成長方法では、成膜容器内における不要な部分への膜の付着が生じ、この付着した膜の一部が剥離することによって異物が発生するが、成膜容器内の圧力変動が大きくなると、圧力変動に起因する膜の振動が生じて、膜の剥離が進みやすくなるからである。言い換えれば、本実施の形態1では、成膜容器内の圧力変動を小さくすることができる結果、異物の発生要因となる膜の剥離の進行を抑制することができるのである。したがって、本実施の形態1における原子層成長方法によれば、異物の発生を抑制できることから、異物の発生によって、基板上に形成される膜の膜質が低下することを抑制できる。
【0063】
<原子層成長方法の適用例>
本実施の形態1における原子層成長方法では、例えば、TMAを原料として使用し、かつ、酸素ガスを反応ガスとして使用し、かつ、窒素ガスをパージガスとして使用することにより、酸化アルミニウム膜を形成することができる。特に、基板上に形成される酸化アルミニウム膜は、有機EL素子の発光層を保護する保護膜の一部を構成する膜として形成することができる。
【0064】
また、基板上に形成される膜は、酸化アルミニウム膜だけでなく、酸化シリコン膜に代表される様々な種類の膜とすることができる。例えば、本実施の形態における原子層成長方法によって、基板上に形成される膜は、電界効果トランジスタ(半導体素子)のゲート絶縁膜を構成する膜としても形成することができる。
【0065】
(実施の形態2)
<改善の検討>
図9は、本実施の形態2におけるプラズマ原子層成長装置100の模式的な全体構成を示す図である。
図9において、本実施の形態2におけるプラズマ原子層成長装置100では、前記実施の形態1のように、上部電極UEの下面に別部品からなる導体防着部材10aと導体防着部材
10bとを設ける構成とは異なり、下部電極BE上に配置された基板1Sと対向する上部電極UEの下面に単体の導体防着部材10が設けられている。
【0066】
図10は、高周波電源20と電気的に接続された上部電極UEに導体防着部材10を固定する取り付け構造を模式的に示す図である。
図10に示すように、導体防着部材10は、ビス13によって、上部電極UEに取り付けられている。このとき、本実施の形態2では、ビス13が、基板1Sと平面的に重ならない位置に設けられている。言い換えれば、本実施の形態2では、平面視において、複数のビス13のそれぞれは、基板1Sと離間する位置に配置されている。つまり、複数のビス13のそれぞれは、基板1Sと平面的に重ならない導体防着部材10の外縁領域に設けられている。これにより、たとえ、ビス13による固定部位に存在する微細な隙間に形成された膜が剥離して、剥離した膜からなる異物が生じたとしても、ビス13による固定部位自体が、基板1Sの上方から離れた位置に存在するため、異物が基板1S上に付着するポテンシャルを低減することができる。つまり、本実施の形態2では、ビス13を基板1Sと平面的に重ならない位置に設けるという導体防着部材10の取り付け構造に対する工夫によって、剥離した膜からなる異物に起因して、基板1S上に形成される膜の品質に悪影響が及ぶことを抑制することができる。
【0067】
ところが、近年では、基板1Sからの製品の取得数を増加させて製造コストを削減する観点から、基板1Sの平面サイズの大型化が進められている。このように大型化された基板1Sに対応したプラズマ原子層成長装置において、ビス13を基板1Sと平面的に重ならない位置に設けるという導体防着部材10の取り付け構造に対する工夫を採用すると、新たな改善の余地が顕在化することを本発明者は見出した。
【0068】
以下に、この点について説明することにする。
図11は、本発明者が見出した改善の余地を説明するための図である。
図11において、下部電極BE上には、例えば、平面寸法がG2サイズ(平面寸法が370mm×470mm)の基板1Sが搭載されている。そして、下部電極BE上に搭載された基板1Sの上方には、放電空間を挟んで、高周波電源20と電気的に接続された上部電極UEが配置されており、この上部電極UEの下面には、導体防着部材10が取り付けられている。この導体防着部材10の平面寸法は、370mm×470mmよりも大きく、かつ、導体防着部材10の厚さ寸法は、10mm以下となっている。したがって、平面視において、基板1Sは、導体防着部材10に内包される。このとき、導体防着部材10は、基板1Sと平面的に重ならない位置に設けられた複数のビス13によって、上部電極UEに固定されている。
【0069】
ここで、ビス13を基板1Sと平面的に重ならない位置に設けるという導体防着部材10の取り付け構造に対する工夫を採用する場合、導体防着部材10の平面サイズは、必然的に、基板1Sの平面サイズよりも大きくなる。一方、ビス13を基板1Sと平面的に重ならない位置に設けるという導体防着部材10の取り付け構造に対する工夫を採用する場合、個々のビス13に加わる荷重が大きくなることから、個々のビス13に加わる荷重を軽減するために、導体防着部材10の質量を小さくする必要がある。したがって、導体防着部材10の平面サイズをG2サイズの基板1Sの平面サイズよりも大きくし、かつ、導体防着部材10の質量を小さくするためには、導体防着部材10の厚さ寸法を小さくする必要がある。具体的に、導体防着部材10の厚さ寸法は、例えば、10mm以下となる。このことから、大型化された基板1Sに対応したプラズマ原子層成長装置において、ビス13を基板1Sと平面的に重ならない位置に設けるという導体防着部材10の取り付け構造に対する工夫を採用する場合、導体防着部材10の平面形状は、大型化された基板1Sよりも大きく、かつ、導体防着部材10の厚さは、できる限り小さくなるように構成されることになる。この結果、
図11に示すように、大型化された基板1Sに対応したプラズマ原子層成長装置において、ビス13を基板1Sと平面的に重ならない位置に設けるという導体防着部材10の取り付け構造に対する工夫を採用すると、導体防着部材10に撓みが発生しやすくなる。すなわち、導体防着部材10の撓みは、導体防着部材10の平面サイズがG2サイズの基板1Sの平面サイズよりも大きくなる場合に顕著となりやすくなる。さらに、導体防着部材10の撓みは、導体防着部材10の平面サイズがG4サイズ(680mm×880mm)の基板1Sの平面サイズよりも大きくなると、特に顕著となる。
【0070】
このように、導体防着部材10に撓みが発生すると、
図11に示すように、上部電極UEと導体防着部材10との電気的な接触が不安定となる。すなわち、
図11に示すように、導体防着部材10に撓みが発生する結果、上部電極UEと導体防着部材10との間に隙間が発生することになる。このことは、例えば、上部電極UEと確実に接触しているビスによる固定部位(導体防着部材10の外縁領域)と、導体防着部材10が撓むことに起因して上部電極UEとの間に隙間が生じている導体防着部材10の中央領域との間に、導体防着部材10自体の内部抵抗に起因した電位差が生じることを意味する。この結果、導体防着部材10に撓みが発生すると、高周波電源20と電気的に接続された上部電極UEと、上部電極UEとは異なる電位となる導体防着部材10の中央領域との間で、隙間を介した意図しない放電が生じることになる。このような意図しない放電が生じると、導体防着部材10と基板1Sとの間に挟まれた放電空間におけるプラズマ放電が不良となり、基板1S上の膜の形成に悪影響が及ぶことになる。すなわち、大型化された基板1Sに対応したプラズマ原子層成長装置では、ビス13を基板1Sと平面的に重ならない位置に設けるという導体防着部材10の取り付け構造に対する工夫を採用すると、導体防着部材10の撓みに起因して、上部電極UEと導体防着部材10との間の意図しない放電が誘発されることになり、これによって、基板1S上の膜の形成に悪影響が及ぶことになるのである。
【0071】
そこで、本実施の形態2では、大型化された基板1Sに対応したプラズマ原子層成長装置において、ビス13を基板1Sと平面的に重ならない位置に設けるという導体防着部材10の取り付け構造に対する工夫を採用することを前提として、導体防着部材10の撓みに起因した意図しない放電を抑制する工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態2における技術的思想について説明することにする。
【0072】
<実施の形態2における基本思想>
本実施の形態2における基本思想は、ビスを基板と平面的に重ならない位置に設けるという導体防着部材の取り付け構造に対する工夫を前提構成として、この前提構成を採用しながらも、導体防着部材の内部に電位差が生じることを抑制するための思想である。具体的に、本実施の形態2における基本思想は、上述した前提構成を採用することにより顕在化する導体防着部材の撓みの発生を是認しながらも、導体防着部材の撓みに起因して導体防着部材の内部に発生する電位差を抑制するための思想である。特に、本実施の形態2における基本思想は、導体防着部材に撓みが発生しても、撓んだ導体防着部材と上部電極との電気的な接触の均一性を向上することにより、防着部材の内部に発生する電位差を抑制する思想である。以下では、撓んだ導体防着部材と上部電極との電気的な接触の均一性を向上するという本実施の形態2における基本思想を具現化する本実施の形態2における特徴点について、図面を参照しながら説明することにする。
【0073】
<実施の形態2における特徴点>
本実施の形態2における特徴点は、例えば、
図12に示すように、基板1Sと平面的に重ならない位置に配置されたビス13によって上部電極UEに固定される導体防着部材10と、上部電極UEとの間に、上部電極UEの厚さ方向(z方向)に伸縮性を有する導電部材15を配置する点にある。これにより、
図12に示すように、導体防着部材10に撓みが発生したとしても、導体防着部材10と上部電極UEとの間の電気的な接触の均一性向上を図ることができる。つまり、
図12に示すように、導体防着部材10と上部電極UEとの間に挟み込まれるように配置されている導電部材15は、上部電極UEの厚さ方向に伸縮性を有する。このことから、導体防着部材10が撓むことによって、導体防着部材10の端部から中央部に向って、z方向のサイズが連続的に変化する隙間が発生し
たとしても、この隙間のz方向のサイズに対応して、導電部材15が伸縮する。このため、本実施の形態2における特徴点によれば、導体防着部材10に撓みが発生した場合であっても、導体防着部材10の端部から中央部に向って、導体防着部材10と上部電極UEとの間の電気的な接触の均一性を確保することができる。これにより、本実施の形態2における特徴点によれば、導体防着部材10の内部に電位差が発生することを抑制することができる。この結果、本実施の形態2における特徴点によれば、導体防着部材10に撓みが発生することにより生じる隙間を介した意図しない放電を防止できる。つまり、本実施の形態2における特徴点によれば、放電空間におけるプラズマ放電の不良を抑制することができ、これによって、基板1S上の膜の形成に悪影響が及ぶことを抑制することができる。
【0074】
このように、本実施の形態2では、まず、導体防着部材10を上部電極UEに固定するビス13を基板1Sと平面的に重ならない位置に設けるという導体防着部材10の取り付け構造に対する工夫を採用することを前提としている。これにより、ビス13による固定部位から剥離した膜(異物)に起因して、基板1S上に形成される膜の品質に悪影響が及ぶことを抑制することができる。そして、本実施の形態2では、例えば、
図12に示すように、基板1Sと平面的に重なる位置において、上部電極UEと導体防着部材10とに挟まれるようにz方向に伸縮性を有する導電部材15を配置している。これにより、導体防着部材10を上部電極UEに固定するビス13を基板1Sと平面的に重ならない位置に設けるという導体防着部材10の取り付け構造に対する工夫を採用することによる副作用を抑制することができる。すなわち、導体防着部材10を上部電極UEに固定するビス13を基板1Sと平面的に重ならない位置に設ける場合、基板1Sの大型化に伴って、導体防着部材10に撓みが発生し、この撓みに起因して、導体防着部材10と上部電極UEとの間の隙間に意図しない放電が生じてしまうという副作用が生じる。
【0075】
この点に関し、本実施の形態2では、導体防着部材10を上部電極UEに固定するビス13を基板1Sと平面的に重ならない位置に設ける一方、基板1Sと平面的に重なる位置において、上部電極UEと導体防着部材10とに挟まれるようにz方向に伸縮性を有する導電部材15を配置している。これにより、本実施の形態2によれば、ビス13による固定部位を発生源とする異物が基板1S上に付着するポテンシャルを低減しながらも、導体防着部材10の撓みに起因する導体防着部材10と上部電極UEとの間の電気的な接触の不均一性に基づく意図しない放電の発生を防止することができる。
【0076】
図13は、本実施の形態2における導電部材15の一例を示す模式図である。
図13に示すように、本実施の形態2における導電部材15は、例えば、コイル形状をしている。このように構成されている本実施の形態2における導電部材15は、例えば、
図13および
図14に示すように、z方向に変形可能に構成されている。すなわち、
図13および
図14に示すように、本実施の形態2における導電部材15は、z方向に伸縮性を有している。この導電部材15は、例えば、コイル形状からなるゴムの表面に金属(メタル)に代表される導電材料をコーティングすることにより形成することができる。
【0077】
図15(a)は、
図12に示す実線矢印の方向から導体防着部材10を見た平面図である。
図15(a)において、導体防着部材10の平面形状は、矩形形状をしており、導体防着部材10の外縁領域には、複数のビス13が配置されている。そして、
図15(a)において、破線で囲む領域110は、例えば、
図12に示す基板1Sと平面的に重なる領域を示している。したがって、導体防着部材10の外縁領域に配置されている複数のビス13は、
図12に示す基板1Sと平面的に重ならないようになっている。
【0078】
続いて、
図15(b)は、
図12に示す破線矢印の方向から導体防着部材10を見た平面図である。
図15(b)において、基板1Sと平面的に重なる領域110が破線で示されており、この領域110と平面的に重なるように、メアンダ形状の導電部材15が配置されている。なお、領域110と平面的に重なるように配置されている導電部材15の形状は、
図15(b)に示すメアンダ形状に限定されるものではない。例えば、本実施の形態2における導電部材15は、
図16に示すように、直線形状から構成してもよい。この場合、それぞれ直線形状から構成される複数の導電部材15が所定間隔で並べられる。さらに、本実施の形態2では、領域110と平面的に重なるように、梯子形状の導電部材15と、直線形状の導電部材15とを組み合わせて配置することもできる。
【0079】
(実施の形態3)
本実施の形態3におけるプラズマ原子層成長装置は、前記実施の形態1における特徴点と、前記実施の形態2における特徴点とを備えている。
【0080】
具体的に、
図18は、本実施の形態3におけるプラズマ原子層成長装置の主要な構成要素を示す模式図である。
図18において、上部電極UEの下面に複数のビス13aで導体防着部材10aが固定され、かつ、導体防着部材10aの下面に複数のビス13bで導体防着部材10bが固定されている。このとき、本実施の形態3では、例えば、
図18に示すように、複数のビス13aと複数のビス13bとは、互いに重ならない。
【0081】
これにより、
図18の太矢印で示す経路1000cは、
図3の太矢印で示す経路1000aに比べて、遥かに長くなる。このことは、本実施の形態3においても、放電空間から上部電極UE自体までのガスの侵入距離が長くなることを意味する。したがって、たとえ、微細な隙間にも膜が形成されてしまうという性質があるプラズマ原子層成長装置であっても、前記実施の形態1と同様の特徴点を採用することにより、上部電極UE自体に膜が付着することを効果的に防止することができる。この結果、本実施の形態3におけるプラズマ原子層成長装置においても、上部電極UEを取り外して、上部電極UEに付着した膜を除去するメンテナンス作業を実施する頻度が少なくなる結果、上部電極UEの取り付け位置が変化することに起因する成膜条件の変動を抑制できる。この結果、本実施の形態3でも、前記実施
の形態1と同様の特徴点を採用することにより、基板1S上に形成される膜の品質が変動することを抑制することができる。このことから、本実施の形態3におけるプラズマ原子層成長装置においても、基板1S上に品質の良好な膜を形成できる。
【0082】
さらに、本実施の形態3では、導体防着部材10bを導体防着部材10aに固定するビス13bを基板1Sと平面的に重ならない位置に設けるという工夫を採用することを前提としている。これにより、ビス13bによる固定部位から剥離した膜(異物)に起因して、基板1S上に形成される膜の品質に悪影響が及ぶことを抑制することができる。
【0083】
そして、本実施の形態3でも、例えば、
図18に示すように、基板1Sと平面的に重なる位置において、導体防着部材10aと導体防着部材10bとに挟まれるようにz方向に伸縮性を有する導電部材15を配置している。これにより、本実施の形態3においても、ビス13bによる固定部位を発生源とする異物が基板1S上に付着するポテンシャルを低減しながら、導体防着部材10bの撓みに起因する導体防着部材10aと導体防着部材10bとの間の電気的な接触の不均一性に基づく意図しない放電の発生を防止できる。
【0084】
なお、
図18に示すように、本実施の形態3におけるプラズマ原子層成長装置では、基板1Sと平面的に重なる位置において、導体防着部材10aと導体防着部材10bとに挟まれるようにz方向に伸縮性を有する導電部材15を配置している。このため、導体防着部材10bを導体防着部材10aに固定するビス13bを基板1Sと平面的に重ならない位置にだけ設ける場合でも、導体防着部材10bの撓みに起因する導体防着部材10aと導体防着部材10bとの間の電気的な接触の不均一性を抑制できる。すなわち、
図18に示す構成は、ビス13bによる固定部位から剥離した膜(異物)に起因して、基板1S上に形成される膜の品質に悪影響が及ぶことを抑制する観点から望ましいといえる。
【0085】
ただし、導体防着部材10bを導体防着部材10aに固定するビス13bを基板1Sと平面的に重なる位置にも設ける場合であっても、導体防着部材10aと導体防着部材10bとに挟まれるようにz方向に伸縮性を有する導電部材15を配置する構成を採用することによって、基板1Sと平面的に重なる位置に設けられるビス13bの個数を複数のビス13aの個数よりも少なくすることが可能となる。この場合においても、導体防着部材10bの撓みに起因する導体防着部材10aと導体防着部材10bとの間の電気的な接触の不均一性に基づく意図しない放電の発生を防止できる。さらに、この構成においても、
図18に示す構成には及ばないものの、基板1Sと平面的に重なる領域に配置されているビス13bの個数を少なくすることができることから、ビス13bによる固定部位に付着した膜の剥離に起因する異物の発生ポテンシャルを低減できる。
【0086】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。