特許第6803845号(P6803845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803845
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】赤色発光蛍光体、方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20201214BHJP
   C09K 11/77 20060101ALI20201214BHJP
   C09K 11/74 20060101ALI20201214BHJP
   C09K 11/67 20060101ALI20201214BHJP
   C09K 11/66 20060101ALI20201214BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20201214BHJP
   C09K 11/62 20060101ALI20201214BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20201214BHJP
【FI】
   C09K11/08 A
   C09K11/77
   C09K11/74
   C09K11/67
   C09K11/66
   C09K11/64
   C09K11/62
   C09K11/61
   H01L33/50
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-544656(P2017-544656)
(86)(22)【出願日】2016年3月2日
(65)【公表番号】特表2018-510237(P2018-510237A)
(43)【公表日】2018年4月12日
(86)【国際出願番号】US2016020438
(87)【国際公開番号】WO2016141049
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2019年2月27日
(31)【優先権主張番号】1093/CHE/2015
(32)【優先日】2015年3月5日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【復代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ポロブ,ディガンバー・グルーダス
(72)【発明者】
【氏名】セトラー,アナント・アチュト
(72)【発明者】
【氏名】ナマルウォー,プラサンス・クマール
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,ジェームズ・エドワード
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−140426(JP,A)
【文献】 特開2012−224536(JP,A)
【文献】 特表2014−514388(JP,A)
【文献】 特開2013−060506(JP,A)
【文献】 特表2014−514369(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0256125(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0320788(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/08
C09K 11/61
C09K 11/62
C09K 11/64
C09K 11/66
C09K 11/67
C09K 11/74
C09K 11/77
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式IのMn4+ドープ蛍光体の合成方法であって、
[MF]:Mn4+ (I)
式中、
AはLi、Na、K、Rb、Cs又はこれらの組合せであり、
MはSi、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Hf、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd又はこれらの組合せであり、
xは[MFy]イオンの電荷の絶対値であり、
yは5、6又は7であり、
フッ化水素酸またはヘキサフルオロケイ酸の少なくとも一方中に溶けたマンガン源、M源及びA源を含む反応液を電気分解する工程を含み、
前記反応液を電気分解する工程が、さらに、
マンガン源を含む溶液に電流を流して電気分解マンガン溶液を形成する工程と、
M源及びA源を電気分解マンガン溶液と組合せて複合溶液を形成する工程と、
複合溶液に電流を流す工程と、
を含む方法。
【請求項2】
マンガン源がMn2+、Mn3+、Mn4+、Mn5+、Mn6+又はこれらの組合せを含む化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
マンガン源がMnF、MnF、MnCl、MnCl、MnO又はこれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
MがSi、Ge、Ti又はこれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
M源がHSiF、ASiF、SiO、SiCl、Si(OAc)又はこれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
A源がAF、ACl、AOCH、A、AHPO又はこれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
A源がKF、KHF又はこれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
式IのMn4+ドープ蛍光体がA[MF]:Mn4+(式中、AはLi、Na、K、Rb、Cs又はこれらの組合せであり、MはSi、Ge、Ti又はこれらの組合せである)である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
式IのMn4+ドープ蛍光体がKSiF:Mn4+である、請求項1に記載の方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広義には赤色発光蛍光体に関する。特に、本発明はMn4+ドープ蛍光体の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第7358542号、同第7497973号及び同第7648649号に記載されているようなMn4+で賦活された錯フッ化物材料に基づく赤色発光蛍光体は、YAG:Ceその他のガーネット組成物のような黄色/緑色発光蛍光体と組合せて利用すると、現行の蛍光灯、白熱灯及びハロゲンランプと同等の白色光(黒体軌跡でCCT<5000K、演色評価数(CRI)>80)を青色LEDから得ることができる。これらの材料は青色光を強く吸収し、約610〜635nmで効率的に発光し、深赤色/NIR発光がほとんどない。したがって、視感度に劣る深赤色の発光が多い赤色蛍光体と比較して、発光効率が最大化される。量子効率は、青色(440〜460nm)励起下で85%を超えることができる。
【0003】
Mn4+ドープ錯フッ化物蛍光体の様々な合成方法が公知であり、例えば米国特許第20120256125号、国際公開第2007/100824号、米国特許第20100142189号及び欧州特許第2508586号に記載されている。典型的には、これらのMn4+ドープ錯フッ化物の合成のために、四価のマンガン(Mn4+)を有する化合物、例えばK2MnF6を出発材料として使用する。しかし、この出発材料は、一般に、環境中で安定ではなく、そのため蛍光体の合成直前に使用のための調製を行うのが一般的である。
【0004】
蛍光特性の改善又は製造コストの低減などの既存の方法を上回る利点を提供できる代替の方法があれば望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2015/115194号
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本発明は、電気分解による式IのMn4+ドープ蛍光体の合成方法に関する。本方法は、マンガン源、M源及びA源(AはLi、Na、K、Rb、Cs又はこれらの組合せであり、MはSi、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Hf、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd又はこれらの組合せである)を含む反応液を電気分解する工程を含む。一態様は、本方法で合成される式(I)のMn4+ドープ蛍光体に関する。
【0007】
別の態様では、本発明は式(I)のMn4+ドープ蛍光体を含む照明装置及びバックライト装置に関する。
【0008】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点については、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することにより、理解を深めることができるであろう。図面において、同様の符号は、図面全体にわたって同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る照明装置の概略断面図である。
図2】本発明の別の実施形態に係る照明装置の概略断面図である。
図3】本発明のさらに別の実施形態に係る照明装置の概略断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る照明装置の側断面斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る表面実装型デバイス(SMD)バックライトLEDの概略斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る方法で合成された蛍光体組成物の発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる近似表現は、数量を修飾し、その数量が関係する基本機能に変化をもたらさない許容範囲内で変動し得る数量を表現するために適用される。したがって、「約」のような用語で修飾された値はその厳密な数値に限定されない。場合によっては、近似表現は、その値を測定する機器の精度に対応する。本明細書及び特許請求の範囲において、単数形で記載したものであっても、文脈から別途明らかでない限り、標記のものが複数存在する場合も含む。
【0011】
本明細書で用いる「蛍光体」、「蛍光体組成物」又は「蛍光体材料」という用語は、1種類の蛍光体組成物及び複数種の蛍光体組成物のブレンドを示すために使用される。
【0012】
本発明に関して、「錯フッ化物」又は「錯フッ化物材料」という用語は、配位子として作用するフッ化物イオンで囲まれ、必要に応じて対イオンで電荷補償された1以上の配位中心を含む配位化合物を意味する。
例えば、K2[SiF6]では、配位中心はSiであり、対イオンはKである。錯フッ化物は、単純な二元フッ化物の組合せとして記載されることもあるが、かかる表記は、配位中心周囲のリガンドの配位数を示すものではない。角括弧(簡略化のため省略されることもある)は、角括弧内の錯イオンが、単純なフッ化物イオンとは異なる新しい化学種であることを示す。
【0013】
Mn4+ドープ蛍光体、例えばK2SiF6:Mn4+のようなMn4+ドープ錯フッ化物材料では、賦活剤イオン(Mn4+)はホスト格子の中心の一部、例えばSiを置換する配位中心としても作用する。ホスト格子(対イオンを含む)は、賦活剤イオンの励起及び発光特性をさらに改変し得る。この錯フッ化物組成物の配位中心はマンガン(Mn)である。ホスト格子すなわち式IのMはSi、Ge、Ti、Zr、Hf、Sn、Al、Ga、In、Sc、Y、Bi、La、Gd、Nb、Taから選択される1以上の元素である。ある具体例では、MはSi、Ge、Ti、及びこれらの組合せから選択される4価の元素である。対イオンすなわち式IのAは、Li、Na、K、Rb、Cs及びこれらの組合せから選択されるアルカリ金属であり、yは6である。
【0014】
式IのMn4+ドープ蛍光体の例としては、K2[SiF6]:Mn4+、K2[TiF6]:Mn4+、K2[SnF6]:Mn4+、Cs2[TiF6]:Mn4+、Rb2[TiF6]:Mn4+、Cs2[SiF6]:Mn4+、Rb2[SiF6]:Mn4+、Na2[TiF6]:Mn4+、Na2[ZrF6]:Mn4+、K3[ZrF7]:Mn4+、K3[BiF6]:Mn4+、K3[YF6]:Mn4+、K3[LaF6]:Mn4+、K3[GdF6]:Mn4+、K3[NbF7]:Mn4+、K3[TaF7]:Mn4+が挙げられる。特定の実施形態では、式Iの蛍光体は、K2SiF6:Mn4+である。
【0015】
本発明の実施形態では、式IのMn4+ドープ蛍光体は、電気分解によって調製することができる。この方法は、マンガン源、M源及びA源を含む反応液を電気分解する工程を含む。一実施形態では、溶液は、フッ化水素酸水溶液中で構成成分、すなわちマンガン源、M源及びA源を混合する工程によって調製される。電気分解は、電解槽内で反応液に電流を流すことにより実施される。
【0016】
適切なマンガン源は、四価マンガン(Mn4+)を直接与える化合物又は別の化合物に変換して、フッ化水素酸水溶液中に四価マンガン(Mn4+)を与える化合物である。ある実施形態では、マンガン源は、二価(Mn2+)、三価(Mn3+)、四価(Mn4+)、五価(Mn5+)、六価(Mn6+)又はこれらの組合せのマンガンを与える化合物である。ある場合には、化合物は混合原子価のマンガンを有する。適切なマンガン源の例としては、フッ化マンガン(II)(MnF2)、フッ化マンガン(III)(MnF3)、塩化マンガン(III)(MnCl3)、塩化マンガン(II)(MnCl2)水和物、酸化マンガン(MnO2)及びこれらの組合せが挙げられる。特定の実施形態では、マンガン源は、MnO2、MnF2又はMnF3である。他の例は酢酸マンガン、炭酸マンガン及び硝酸マンガンである。
【0017】
本発明は、4価以外の酸化状態にあるマンガンを有する化合物を使用する機会を提供する。二価、三価、五価、六価又は混合原子価のマンガンを与える化合物を、式Iの蛍光体の調製のための出発材料として使用することができる。このような化合物の例は、上述の通りである。これらの化合物の大部分は、周囲条件下で不活性であるため、容易に入手可能で取り扱いが容易である。ある実施形態では、マンガンは元素態であり、すなわち金属マンガンを使用することができる。ある実施形態では、出発材料は、四価でマンガンを与える化合物である。
【0018】
A源は塩であってもよく、A+の対アニオンはフッ化物、塩化物、酢酸塩、塩化物、シュウ酸塩、リン酸二水素塩又はこれらの組合せである。特に、アニオンはフッ化物である。適切な材料の例としては、KF、KHF2、LiF、LiHF2、NaF、NaHF2、RbF、RbHF2、CsF、CsHF2、及びこれらの組合せが挙げられる。特定の実施形態では、アニオンはフッ化物であり、AはKを含む。
【0019】
M源は、フッ化水素酸に可溶な化合物である。上述の通り、ある実施形態では、元素MはSi、Ge、Ti又はこれらの組合せである。特定の実施形態では、MはSiである。適切なSi源の例としては、H2SiF6、A2SiF6、SiO2、SiCl4、Si(OAc)4、テトラエチルオルトシリケート(Si(OEt)4)及びこれらの組合せが挙げられる。Si源の特定の例はH2SiF6である。適切なGe源の例としては、GeCl4、Ge(OEt)4、Ge(OPr)4、Ge(OMe)4、GeO2及びこれらの組合せが挙げられる。
【0020】
ある実施形態では、M源及びA源を、マンガン源と共にフッ化水素酸水溶液に同時に添加して、反応液を形成する。その後、反応液を本明細書に記載のように電気分解する。
【0021】
上述の通り、電気分解は、正極と負極とを有する電解槽内で実施される。フッ化水素酸中で化学的に安定な任意の適切な導電性材料を電極に使用することができる。いくつかの電極に適した金属は、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、金(Au)又はこれらの組合せである。一実施形態では、白金電極が使用される。他の実施形態は、Pt−10%Rhを含む。非金属電極の一例はグラファイトである。一実施形態では、電源を電極に接続して、約3Vの電圧で約0.75Aの電流を通し、電気分解を実行する。反応液は、電気分解時に連続的に撹拌してもよい。電気分解終了後、懸濁液を濾過し、洗浄した後、乾燥させて粉末状の生成物を得る。
【0022】
しかし、構成成分の添加速度、それらの添加時間及び添加順序、温度及び反応物質濃度は重要ではなく、特定の用途に応じて得られるMn4+ドープ蛍光体の性能が最適化されるように調整すればよい。
【0023】
ある実施形態では、まず、フッ化水素酸水溶液中にマンガン源を溶解することによって溶液を形成する。まずマンガン溶液に電流を流して溶液を一定時間電気分解し、電気分解マンガン溶液を形成する。ある例では、マンガン溶液の電気分解は、赤褐色溶液が観察されることで一般に識別される三価(Mn3+イオン)のマンガンが得られるまで実施される。次に、適量のM源とA源とを、電気分解マンガン溶液と組合せて、複合溶液を形成する。複合溶液は、上述の通り、電流を流すことによってさらに電気分解される。
【0024】
本発明の方法で使用される水溶液中のフッ化水素酸の濃度は、典型的には約20w/w%〜約70w/w%、特に約40w/w%〜約55w/w%の範囲である。必要に応じて、ヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6)のような他の酸を溶液に配合してもよい。
【0025】
したがって、本発明のある実施形態は、マンガン源、4価元素M源及びアルカリ金属A源(式中、AはLi、Na、K、Rb、Cs及びこれらの組合せから選択され、MはSi、Ge、Ti及びこれらの組合せから選択される)を含む反応液を電気分解することで得られる蛍光体組成物を提供する。この方法の詳細は上述の通りである。
【0026】
本発明の方法は、得られる蛍光体粒子の粒径の制御が可能である。フッ化水素酸の量、構成成分の供給源の量、及び電気分解の期間などの方法の詳細を最適化することによって、得られる蛍光体粒子の粒径を適合させることができる。
【0027】
ある実施形態では、蛍光体組成物は、約50μm未満のD50粒径を有する粒径分布を有する。ある実施形態では、D50粒径は、約20μm〜約30μmの範囲である。ある実施形態では、蛍光体粒子の集団は、約30μm〜約70μmの範囲のD90粒径を有する。
【0028】
本明細書で用いるD90、D50及びD10のようなD値は、一般に、粒径分布を表すために使用される。D90、D50又はD10は、それぞれサンプルの粒子の90%、50%又は10%がD90、D50又はD10値以下である、90%、50%又は10%の累積粒径分布に対応する粒径値として定義される。
【0029】
ある実施形態では、蛍光体組成物は、約10μm未満のD50値を有する微小粒径分布を有する。特定の実施形態では、D50粒径は、約5μm〜約15μmの範囲である。ある実施形態では、D90粒径は、約10μm〜約20μmの範囲である。ある実施形態では、D10粒径は、約1μm〜約10μmの範囲である。特定の実施形態では、粒径D10/D50/D90は2/6/10μmである。
【0030】
蛍光体の微小粒径分布は、所望の特性にとって有利である。例えば、封入材(例えば、シリコーン)中の蛍光体粒子の沈降速度(又は沈殿速度)は、蛍光体粒子の粒径と共に低下する。粒径及び粒径分布を制御することによって、粒子の沈降速度をブレンド中の他の蛍光体と一致させるか、他の蛍光体より遅くするか又は速くする用に調整でき、したがって蛍光体の分離の制御が可能になる。蛍光体の分離は、励起フラックスによって引き起こされる損傷からMn4+ドープ蛍光体を保護するのに有益である。さらに、蛍光体粒子の量及び位置(LEDチップに近い又は遠い)は、所望のカラーポイントを達成するために制御することができる。さらに、微小粒径(上記のような)は、単純な堆積技術、例えば噴霧コーティング技術の使用を可能にすることができる。
【0031】
一実施形態では、合成したMn4+ドープ蛍光体を金属捕捉剤と接触させる。金属捕捉剤は、合成プロセスの間に電極から発生し得る金属汚染を除去する。白金汚染を除去するための金属捕捉剤の例はSmopex(登録商標)である。
【0032】
上記の合成プロセス工程の完了後、Mn4+ドープ蛍光体は、米国特許第8252613号に記載されているような処理プロセスに付してもよい。一実施形態では、合成されたMn4+ドープ蛍光体を、ガス状のフッ素含有酸化剤と昇温下で接触させる。蛍光体とフッ素含有酸化剤との接触温度は、約200℃〜約900℃、特に約350℃〜約600℃であり、ある実施形態では約400℃〜約575℃である。本発明の様々な実施形態では、温度は100℃以上、特に225℃以上、より詳細には350℃以上である。蛍光体は、得られる蛍光体の性能及び安定性を高めるのに十分な時間、酸化剤と接触させる。時間と温度は相互に関連しており、例えば温度を下げて時間を増やしたり又は時間を短縮しながら温度を上げたりするなど、併せて調整することができる。特定の実施形態では、時間は1時間以上、特に4時間以上、より詳細には6時間以上、最も詳細には8時間以上である。
【0033】
5℃/分以下の制御された速度で温度を下げると、10℃/分の速度で温度を下げた場合と比較して優れた特性を有する蛍光体生成物を得ることができる。様々な実施形態では、速度は、5℃/分以下、特に3℃/分以下、より詳細には1℃/分以下の速度に制御することができる。
【0034】
制御された速度で温度を下げる期間は、接触温度及び冷却速度に関連する。例えば、接触温度が540℃、冷却速度が10℃/分の場合、冷却速度を制御する期間は1時間未満であり、その後温度は外部制御なしでパージ温度又は周囲温度に低下させてよい。接触温度が540℃で、冷却速度が5℃/分以下の場合、冷却時間は2時間未満である。接触温度が540℃で、冷却速度が3℃/分以下の場合、冷却時間は3時間未満である。接触温度が540℃で、冷却速度が1℃/分以下の場合、冷却時間は4時間未満である。例えば、制御された冷却により温度を約200℃に下げることができ、次いで制御を中止することができる。制御された冷却期間の後、温度は初期の制御された速度よりも高い又は低い速度で低下させてよい。
【0035】
フッ素含有酸化剤は、F2、HF、SF6、BrF5、NH4HF2、NH4F、KF、AlF3、SbF5、ClF3、BrF3、KrF、XeF2、XeF4、NF3、SiF4、PbF2、ZnF2、SnF2、CdF2又はこれらの組合せである。特定の実施形態では、フッ素含有酸化剤は、F2である。酸化雰囲気中の酸化剤の量を、特に時間及び温度の変化と併せて変化させ、所望の特性の蛍光体を得ることができる。フッ素含有酸化剤がF2である場合、雰囲気は、少なくとも0.5%のF2を含むことができるが、ある実施形態ではより低い濃度が有効な場合もある。特に、雰囲気は、5%以上のF2、より詳細には20%以上のF2を含むことができる。雰囲気は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンを、フッ素含有酸化剤との任意の組合せでさらに含むことができる。特定の実施形態では、雰囲気は約20%のF2及び約80%の窒素で構成される。
【0036】
蛍光体をフッ素含有酸化剤と接触させる様式は重要ではなく、所望の特性を達成するのに十分な任意の方法で達成することができる。ある実施形態では、蛍光体を含むチャンバーに添加した後、封止してチャンバーが加熱されると過圧が発生するようにし、他の実施形態では、フッ素と窒素の混合物をアニールプロセス全体を通して流動させ、より均一な圧力が確保される。ある実施形態では、追加のフッ素含有酸化剤の添加が、一定期間後に導入してもよい。
【0037】
一実施形態では、Mn4+ドープ蛍光体をフッ素含有酸化剤と接触させた後、蛍光体は、フッ化水素酸水溶液中の式(II)の組成物の飽和溶液でさらに処理される。蛍光体が溶液と接触する温度は、約20℃〜約50℃の範囲である。蛍光体の処理に要する時間は、約1分〜約5時間、特に約5分〜約1時間の範囲である。HF水溶液中のフッ化水素酸の濃度は、約20w/w%〜約70w/w%、特に約40w/w%〜約70w/w%の範囲である。濃縮度の低い溶液は、蛍光体の収率を低下させることがある。
【0038】
x[MFy] (II)
式中、AはLi、Na、K、Rb、Cs又はこれらの組合せであり、MはSi、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Hf、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd又はこれらの組合せであり、xは[MFy]イオンの電荷の絶対値であり、yは5、6又は7である。
【0039】
本明細書に記載されている数値はいずれも、任意の低い値から任意の高い値までの間に少なくとも2単位の分離がある場合、1単位の増分で低い値から高い値までのすべての値を含む。一例として、例えば、成分の量又は、例えば温度、圧力、時間などのプロセス変数の値が、例えば1〜90、好ましくは20〜80、さらに好ましくは30〜70であると述べられている場合、15〜85、22〜68、43〜51、30〜32などの値が本明細書において明確に列挙されていることを意図している。1未満の値の場合、1単位は、必要に応じて0.0001,0.001,0.01又は0.1であると見なされる。これらは、具体的に意図される例に過ぎず、列挙された最低値と最高値との間の数値のすべての可能な組合せが、本出願において同様の様式で明確に述べられていると見なされるべきである。
【0040】
得られるMn4+ドープ蛍光体中のマンガンの量は、前駆体又は蛍光体の総重量に基づいて約0.3重量%(wt%)〜約2.5wt%(約1.2モル%(mol%)〜約10mol%)の範囲である。ある実施形態では、マンガンの量は、約0.3wt%〜約1.5wt%(約1.2mol%〜約6mol%)、特に約0.50wt%〜約0.85wt%(約2mol%〜約3.4mol%)、より詳細には約0.65wt%〜約0.75wt%(約2.6mol%〜約3mol%)の範囲である。他の実施形態では、マンガンの量は、約0.75wt%〜2.5wt%(約3mol%〜約10mol%)、特に約0.9wt%〜1.5wt%(約3.5mol%〜約6mol%)、さらに好ましくは約0.9wt%〜約1.4wt%(約3.0mol%〜約5.5mol%)、さらにより詳細には約0.9wt%〜約1.3wt%(約3.5mol%〜約5.1mol%)の範囲である。
【0041】
本発明のある実施形態は、光源に放射結合された蛍光体材料を含む照明装置を対象とする。図1は、本発明の一実施形態に係る照明装置又は発光アセンブリ又はランプ10を示す。照明装置10は、発光ダイオード(LED)チップ12として示される半導体放射源と、LEDチップに電気的に取り付けられたリード14とを備える。リード14は、より厚い1以上のリードフレーム16によって支持された細いワイヤであってもよいし又はリードは自己支持電極であってもよく、リードフレームは省略してもよい。リード14はLEDチップ12に電流を供給し、それにより放射を発する。
【0042】
ランプは、発した放射が蛍光体材料に向けられたときに白色光を発生することができる半導体青色光源又はUV光源を備えることができる。一実施形態では、半導体光源は、様々な不純物をドープされた青色発光LEDである。したがって、LEDは、任意の適切なIII−V、II−VI又はIV−IV半導体層に基づき、約250〜550nmの発光波長を有する半導体ダイオードを備えることができる。特に、LEDは、GaN、ZnSe又はSiCを含む1以上の半導体層を備えることができる。例えば、LEDは、約250nmより長く、約550nmよりも短い発光波長を有する、式IniGajAlkN(式中、0≦i;0≦j;0≦k及びI+j+k=1)で表される窒化化合物半導体を含むことができる。特定の実施形態では、チップは、約400〜約500nmのピーク発光波長を有する近紫外又は青色発光LEDである。このようなLED半導体は当技術分野において公知である。放射源は便宜上本明細書においてはLEDとして記載する。しかし、本明細書で用いるこの用語は、例えば半導体レーザダイオードを含むすべての半導体放射源を包含することを意味する。さらに、本明細書で論じる本発明の例示的な構造の一般的な考察は無機LEDベースの光源を対象としているが、特に明記しない限りLEDチップを別の放射源で置き換えることができ、半導体、半導体LED又はLEDチップは、限定するものではないが、有機発光ダイオードを含む任意の適切な放射源の単なる代表例であると理解すべきである。
【0043】
照明装置10では、蛍光体材料22がLEDチップ12に放射結合される。蛍光体材料22は、上記の実施形態で説明したようなMn4+ドープ蛍光体を含む。放射結合とは、要素が互いに関連しているため、一方からの放射が他方に伝達されることを意味する。蛍光体材料22は、任意の適切な方法でLED12上に堆積される。例えば、(1以上の)蛍光体の水性懸濁液を形成し、蛍光体層としてLED表面に適用することができる。このような方法の1つでは、蛍光体粒子がランダムに懸濁されたシリコーンスラリーがLEDの周りに配置される。この方法は、蛍光体材料22及びLED12の可能な位置の単なる例示である。したがって、蛍光体材料22は、LEDチップ12にわたって蛍光体懸濁液をコーティングし、乾燥させることによって、LEDチップ12の発光面にわたって又はその上に直接にコーティングすることができる。シリコーン系懸濁液の場合、懸濁液は適切な温度で硬化される。シェル18及び封入材20は両方とも、白色光24がこれらの要素を透過するように透明でなければならない。
【0044】
他の実施形態では、蛍光体材料22は、LEDチップ12上に直接形成される代わりに、封入材20内に分散させられる。蛍光体材料(粉末形態)は、封入材20の単一領域内に又は封入材の全体積にわたって分散させることができる。LEDチップ12によって発せられた青色光は、蛍光体組成物22によって発せられた光と混ざり合い、混合光は白色光として現れる。蛍光体材料が封入材20の材料内に分散する場合、蛍光体粉末をポリマー又はシリコーン前駆体に添加し、混合物をLEDチップ12に装填した後又はその前に混合物を硬化させて、ポリマー又はシリコーン材料を固化させることができる。ポリマー前駆体の例としては、熱可塑性又は熱硬化性のポリマー又は樹脂、例えばエポキシ樹脂が挙げられる。他の公知の蛍光体分散法、例えば、トランスファーローディング(transfer loading)も使用することができる。
【0045】
ある実施形態では、封入材20は、屈折率Rを有し、蛍光体組成物22に加えて、約5%未満の吸光度及びR±0.1の屈折率を有する希釈材を含む。希釈材は、≦1.7、特に≦1.6及びより詳細には≦1.5の屈折率を有する。特定の実施形態では、希釈材は式II:Ax[MFy]のものであり、約1.4の屈折率を有する。蛍光体/シリコーン混合物に光学的に不活性な材料を添加することにより、蛍光体/封入材混合物を通る光束のより漸進的な分布が生じ、蛍光体への損傷を少なくすることができる。希釈材に適した材料には、約1.38(AlF3及びK2NaAlF6)〜約1.43(CaF2)の範囲の屈折率を有するLiF、MgF2、CaF2、SrF2、AlF3、K2NaAlF6、KMgF3、CaLiAlF6、K2LiAlF6、及びK2SiF6のようなフッ化物化合物並びに約1.254〜約1.7の範囲の屈折率を有するポリマーが挙げられる。希釈材としての使用に適したポリマーの非限定的な例としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、並びにスチレン、アクリレート、メタクリレート、ビニル、酢酸ビニル、エチレン、プロピレンオキシド、エチレンオキシドモノマー由来のポリマー又はこれらのコポリマーが挙げられ、ハロゲン化及び非ハロゲン化誘導体が挙げられる。これらのポリマー粉末は、シリコーン封入材に直接組み込み、その後シリコーンを硬化することができる。
【0046】
さらに別の実施形態では、蛍光体材料22は、LEDチップ12にわたって形成される代わりに、シェル18の表面上にコーティングされる。蛍光体材料は、好ましくは、シェル18の内側表面上にコーティングされるが、所望であれば、シェルの外側表面上にコーティングしてもよい。蛍光体材料22は、シェルの表面全体にコーティングされてもよく又はシェルの表面上部のみにコーティングしてもよい。LEDチップ12によって発せられたUV/青色光は、蛍光体材料22によって発せられた光と混ざり合い、混合光は白色光として現れる。当然のことながら、蛍光体材料は、いずれか2箇所又は3箇所すべてに又はシェルとは別個に、もしくはLEDに一体化されたような任意の他の適切な場所に配置することができる。
【0047】
図2は、本発明によるシステムの第2の構造を例示する。図1図4の対応する数字(例えば、図1の12及び図2の112)は、特に明記しない限り、各図の対応する構造に関する。図2の実施形態の構造は、蛍光体材料122がLEDチップ112上に直接形成される代わりに、封入材120内に分散する点を除いて、図1の構造と同様である。蛍光体材料(粉末形態)は、封入材の単一領域内に又は封入材の全体積にわたって分散させることができる。LEDチップ112によって発せられた放射(矢印126によって示される)は、蛍光体材料122によって発せられた光と混ざり合い、混合光は白色光124として現れる。蛍光体材料を封入材120内に分散させる場合、蛍光体粉末をポリマー前駆体に添加し、LEDチップ112の周りに装填することができる。次いで、ポリマー又はシリコーン前駆体を硬化させて、ポリマー又はシリコーンを固化させることができる。他の公知の蛍光体分散法、例えば、トランスファー成形も使用することができる。
【0048】
図3は、本発明によるシステムの第3の可能な構造を例示する。図3に示す実施形態の構造は、蛍光体材料222が、LEDチップ212にわたって形成される代わりに、エンベロープ218の表面上にコーティングされる点を除いて、図1の構造と同様である。蛍光体材料222は、好ましくはエンベロープ218の内側表面上にコーティングされるが、所望であればエンベロープの外側表面上にコーティングしてもよい。蛍光体材料222は、エンベロープの表面全体にコーティングされてもよく又はエンベロープの表面上部のみにコーティングしてもよい。LEDチップ212によって発せられた放射226は、蛍光体材料222によって発せられた光と混ざり合い、混合光は白色光224として現れる。当然のことながら、図1図3の構造は組合せることができ、蛍光体材料は、いずれか2箇所又は3箇所すべてに又はエンベロープとは別個に、もしくはLEDに一体化されたような任意の他の適切な場所に配置することができる。
【0049】
上記構造のいずれにおいても、ランプは、封入材に埋め込まれた複数の散乱粒子(図示せず)を含むことができる。散乱粒子としては、例えば、アルミナ又はチタニアを挙げることができる。散乱粒子は、LEDチップから発せられた指向性光を、好ましくは無視できる量の吸収で効果的に散乱させる。
【0050】
図4の第4の構造に示すように、LEDチップ412は、反射カップ430内に取り付けられてもよい。カップ430は、アルミナ、チタニア又は当技術分野で公知の他の誘電性粉末などの誘電材料から製造されるかもしくはこれによりコーティングされても又はアルミニウムもしくは銀のような反射金属によってコーティングしてもよい。図4の実施形態の構造の残りの部分は、先の図面のいずれかの構造と同じであり、2つのリード416、導線432、及び封入材420を備えることができる。反射カップ430は、第1のリード416によって支持され、導線432は、LEDチップ412を第2のリード416と電気的に接続するために使用される。
【0051】
他の構造(特に、バックライト用途)は、例えば図5に例示されるような表面実装型デバイス(SMD)タイプの発光ダイオード550である。このSMDは、「側面発光型」であり、導光部材554の突出部分に発光窓552を有する。SMDパッケージは、上記で定義したLEDチップと、LEDチップから発せられた光によって励起される蛍光体材料とを備えることができる。他のバックライト装置としては、限定するものではないが、半導体光源及び本発明によるMn4+ドープ蛍光体を含むディスプレイを有する、テレビ、コンピュータ、モニター、スマートフォン、タブレットコンピュータ、及び他の携帯用デバイスが挙げられる。
【0052】
250〜550nmで発光するLED及び1以上の他の適切な蛍光体と共に使用された場合、得られる照明システムは白色を有する光を発生する。ランプ10はまた、封入材に埋め込まれた散乱粒子(図示せず)をさらに含んでもよい。散乱粒子としては、例えば、アルミナ又はチタニアを挙げることができる。散乱粒子は、LEDチップから発せられた指向性光を、好ましくは無視できる量の吸収で効果的に散乱させる。
【0053】
Mn4+ドープ蛍光体に加えて、蛍光体材料22は、1以上の追加の蛍光体を含むことができる。約250〜550nmの範囲の放射を発する青色又は近紫外LEDと組合せた照明装置で使用される場合、アセンブリによって発せられる光は白色光となる。緑色、青色、黄色、赤色、橙色又は他の色の蛍光体などの追加の蛍光体をブレンドに用いて、得られる光の白色をカスタマイズし、特定のスペクトル出力分布を生成することができる。
【0054】
蛍光体材料22での使用に適した追加の材料としては、特に限定されないが、以下のものが挙げられる。
((Sr1-z(Ca,Ba,Mg,Zn)z1-(x+w)(Li,Na,K,Rb)wCex3(Al1-ySiy)O4+y+3(x-w)1-y-3(x-w)(0<x≦0.10,0≦y≦0.5,0≦z≦0.5,0≦w≦x);(Ca,Ce)3Sc2Si312(CaSiG);(Sr,Ca,Ba)3Al1-xSix4+x1-x:Ce3+(SASOF));(Ba,Sr,Ca)5(PO43(Cl,F,Br,OH):Eu2+,Mn2+;(Ba,Sr,Ca)BPO5:Eu2+,Mn2+;(Sr,Ca)10(PO46*νB23:Eu2+(0<ν≦1);Sr2Si38*2SrCl2:Eu2+;(Ca,Sr,Ba)3MgSi28:Eu2+,Mn2+;BaAl813:Eu2+;2SrO*0.84P25*0.16B23:Eu2+;(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu2+,Mn2+;(Ba,Sr,Ca)Al24:Eu2+;(Y,Gd,Lu,Sc,La)BO3:Ce3+,Tb3+;ZnS:Cu+,Cl-;ZnS:Cu+,Al3+;ZnS:Ag+,Cl-;ZnS:Ag+,Al3+;(Ba,Sr,Ca)2Si1-ξO4-2ξ:Eu2+(−0.2≦ξ≦0.2);(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si27:Eu2+;(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In)24:Eu2+;(Y,Gd,Tb,La,Sm,Pr,Lu)3(Al,Ga)5-αO12-3/2α:Ce3+(0≦α≦0.5);(Y,Gd,Lu,Tb)3(Al,Ga)512:Ce3+;(Ca,Sr)8(Mg,Zn)(SiO44Cl2:Eu2+,Mn2+;Na2Gd227:Ce3+,Tb3+;(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)227:Eu2+,Mn2+;(Gd,Y,Lu,La)23:Eu3+,Bi3+;(Gd,Y,Lu,La)22S:Eu3+,Bi3+;(Gd,Y,Lu,La)VO4:Eu3+,Bi3+;(Ca,Sr)S:Eu2+,Ce3+;SrY24:Eu2+;CaLa24:Ce3+;(Ba,Sr,Ca)MgP27:Eu2+,Mn2+;(Y,Lu)2WO6:Eu3+,Mo6+;(Ba,Sr,Ca)βSiγNμ:Eu2+(2β+4γ=3μ);(Ba,Sr,Ca)2Si5-xAlx8-xx:Eu2+(0≦x≦2);Ca3(SiO4)Cl2:Eu2+;(Lu,Sc,Y,Tb)2-u-vCevCa1+uLiwMg2-ww(Si,Ge)3-w12-u/2(−0.5≦u≦1,0<v≦0.1,0≦w≦0.2);(Y,Lu,Gd)2-φCaφSi46+φC1-φ:Ce3+(0≦φ≦0.5);Eu2+及び/又はCe3+をドープしたα−SiAlON;(Ca,Sr,Ba)SiO22:Eu2+,Ce3+;β−SiAlON:Eu2+,3.5MgO*0.5MgF2*GeO2:Mn4+;(Sr,Ca,Ba,Mg)AlSiN3:Eu2+;(Sr,Ca,Ba)3SiO5:Eu2+;Ca1-c-fCecEufAl1+cSi1-c3(0≦c≦0.2,0≦f≦0.2);Ca1-h-rCehEurAl1-h(Mg,Zn)hSiN3(0≦h≦0.2,0≦r≦0.2);Ca1-2s-tCes(Li,Na)sEutAlSiN3(0≦s≦0.2,0≦f≦0.2,s+t>0);及びCa1-σ-χ-φCeσ(Li,Na)χEuφAl1+σ-χSi1-σ+χN3(0≦σ≦0.2,0≦χ≦0.4,0≦φ≦0.2)。
【0055】
蛍光体材料22への使用に適した他の材料としては、ポリフルオレン、好ましくはポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)及びそのコポリマー、例えばポリ(9,9’−ジオクチルフルオレン−co−ビス−N,N’‐(4−ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(F8−TFB)、ポリ(ビニルカルバゾール)及びポリフェニレンビニレン並びにそれらの誘導体などのエレクトロルミネセンスポリマーが挙げられる。さらに、発光層は、青色、黄色、橙色、緑色又は赤色のリン光発光染料もしくは金属錯体又はこれらの組合せを含むことができる。リン光発光染料としての使用に適した材料としては、限定するものではないが、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)(赤色色素)、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(緑色色素)及びイリジウム(III)ビス(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2)(青色染料)が挙げられる。ADS(American Dyes Source,Inc.)から市販されている蛍光及びリン光金属錯体を使用することもできる。ADSの緑色染料としては、ADS060GE、ADS061GE、ADS063GE、及びADS066GE、ADS078GE、及びADS090GEが挙げられる。ADSの青色染料としては、ADS064BE、ADS065BE、及びADS070BEが挙げられる。ADSの赤色染料としては、ADS067RE、ADS068RE、ADS069RE、ADS075RE、ADS076RE、ADS067RE、及びADS077REが挙げられる。
【0056】
ブレンド中の個々の蛍光体のそれぞれの比は、所望の光出力の特性に依存して変化し得る。様々な蛍光体ブレンドにおける個々の蛍光体の相対的比率は、それらの発光がブレンドされてLED照明装置に使用されるとき、CIE色度図上の所定のx及びy値の可視光が生成されるように調整することができる。上述のように、白色光が好ましく生成される。この白色光は、例えば、約0.20〜約0.55の範囲のx値と、約0.20〜約0.55の範囲のy値とを有することができる。しかし、上述のように、蛍光体材料中の各蛍光体の正確な同一性及び量は、最終使用者の必要に応じて変えることができる。例えば、材料は、液晶ディスプレイ(LCD)バックライトのために意図されたLEDに使用することができる。この用途では、LEDカラーポイントは、LCD/カラーフィルタの組合せを通過した後、所望の白色、赤色、緑色、及び青色に基づいて適切に調整される。所与のブレンドのための潜在的な蛍光体のリストは網羅的であることを意味するものではなく、これらのMn4+ドープ蛍光体は、異なる発光を有する様々な蛍光体とブレンドして、所望のスペクトル出力分布を達成することができる。
【0057】
本発明のMn4+ドープ蛍光体は、上記以外の用途に使用することができる。例えば、蛍光灯、陰極線管、プラズマディスプレイ装置又は液晶ディスプレイ(LCD)の蛍光体として使用することができる。この材料は、電磁カロリメータ、ガンマ線カメラ、コンピュータ断層撮影スキャナ又はレーザのシンチレータとして使用することもできる。これらの用途は単なる例示であり、限定するものではない。
【実施例】
【0058】
以下の実施例は単なる例示であり、特許請求の範囲に記載の発明の範囲を限定するものと解釈するべきではない。
【0059】
実施例1
MnF2(0.082g)を、白金るつぼで約48%HF溶液70mLと混合した。溶液に白金ストリップを浸漬した。撹拌しながら、赤褐色の溶液が得られるまで、約3Vの電位及び約0.75Aの電流で溶液を電気分解した。赤褐色の溶液が形成されたら、7.5mLのH2SiF6及び4.05gのKHF2を溶液に添加し、3V及び0.75Aで約2〜3時間電気分解を続けた。淡黄色の懸濁液が形成された。懸濁液を濾過し、続いてアセトンで洗浄した。得られた粉末生成物を最後に約100℃で真空中で乾燥させた。
【0060】
次いで、得られた粉末を、粉末X線回折に付しててその結晶構造を分析した。粉末は、K2SiF6と同様の結晶構造を有することが確認され、錯フッ化物の形成が確認された。さらに、粉末を分光光度計を用いてその発光スペクトルを測定した。図6は、得られた粉末生成物の発光スペクトルを示す。粉末生成物は、UV光又は青色光で励起すると赤色蛍光を示し、Mn4+ドープ錯フッ化物、すなわちK2SiF6:Mn4+として表される蛍光体の形成を実証した。量子効率測定システムを用いて、励起波長450nmにおいて蛍光体の量子効率を測定した。この蛍光体の量子効率は約76であった。
【0061】
次いで、蛍光体を粒径分析器(Malvern)を用いて分析した。蛍光体は、主にD10/D50/D90粒径が約2/6/20μmの粒子からなることが観察された。
【0062】
本発明の幾つかの特徴だけについて例示・説明してきたが、数多くの修正及び変更が当業者には自明であろう。従って、特許請求の範囲は、このような本発明の技術的思想に属する修正及び変形を包含する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6