特許第6803847号(P6803847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6803847シリコーン系親水性コポリマーおよびそれを含むヒドロゲル組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803847
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】シリコーン系親水性コポリマーおよびそれを含むヒドロゲル組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20201214BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20201214BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C08F293/00
   G02C7/04
   C08F2/44 Z
【請求項の数】21
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2017-550559(P2017-550559)
(86)(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公表番号】特表2018-510946(P2018-510946A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】US2016023923
(87)【国際公開番号】WO2016160488
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2019年3月1日
(31)【優先権主張番号】14/670,557
(32)【優先日】2015年3月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ナイク,サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】ブハト,シュリードハル
(72)【発明者】
【氏名】シャー,チェタン
(72)【発明者】
【氏名】サクセナ,アヌブハヴ
(72)【発明者】
【氏名】マサド,ラビーンドラ
【審査官】 久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−538113(JP,A)
【文献】 特開2014−153472(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0011788(US,A1)
【文献】 特表2015−523415(JP,A)
【文献】 特開2008−202060(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0237483(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1947033(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第104955878(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00−19/44
C08F6/00−301/00
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の親水性シロキサンコポリマーであって:
【化32】

式中lは1、mおよびnは独立して1〜200、そして2≦l+p≦200であり;
Wは一般式(2)を有する部分であり:
【化33】

式中Eは1〜20の炭素原子を有し、任意に硫黄または酸素を含む、置換、非置換、脂肪族、芳香族、環状、または非環状炭化水素ラジカルから選択された二価の部分であり;Dは1〜10の炭素原子を有し、ヒドロキシ、エーテル、エステル、アミン、アミド、カルボン酸、あるいはこれらの二またはより多くの組み合わせから独立して選択された官能基を備えた一価の炭化水素ラジカルであり;
Aは一般式(3)を有するオルガノシリコーンモノマーであり:
【化34】

式中R、RおよびRは独立して水素、または1から10の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルから選択され;そしてFはシロキサン含有基であり;
Bは一般式(13)を有する親水性モノマーであり;
【化35】

式中R41
【化36】

または-P-Qであり、Pは単結合、O、またはNR14から選択され、ここでR14は水素、または1から5の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルであり;R11、R12およびR13は独立して水素、または1から10の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルから選択され;Qは1〜50の炭素原子を含み、任意にヘテロ原子またはヒドロキシル、エーテル、エステル、アミン、またはカルボン酸から独立して選択される官能基を有する置換または非置換の脂肪族、芳香族、環状、または非環状の炭化水素ラジカルであり;そして
Cは一般式(14)を有する有機モノマーであり;
【化37】

式中R15、R16およびR17は独立して水素、または1〜10の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルから選択され;RはOまたはNR18から選択され、ここでR18は水素、または1から5の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルであり;Sは任意にヘテロ原子を含み、置換または非置換の脂肪族、環状、または芳香族炭化水素から選択され1〜20の炭素原子を有する二価の炭化水素ラジカルであり;そしてTはヒドロキシル、エポキシ、エーテル、エステル、アミン、アミド、またはカルボン酸から選択される少なくとも一つの官能部分を有し1〜10の炭素原子を備えた一価の炭化水素ラジカルである、親水性シロキサンコポリマー。
【請求項2】
シロキサン含有基Fは式(4)-(9):
【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

の化合物から選択され、式中R’は独立してHまたはCHから選択され;R”は置換または非置換の脂肪族、環状、または芳香族炭化水素から選択されヘテロ原子を含んでいてよい、1〜20の炭素原子を有する炭化水素ラジカルから独立して選択され;mは0〜1の整数であり;Xはエステルまたはアミドから独立して選択される官能基であり;KはCH、-O-[Si(CH)O]-Si(CH)、-OSi(CH)
【化44】

【化45】

【化46】

から独立して選択され、ここでRおよびR10は独立して水素、または1から5の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルから選択され、そしてRは水素、または1から10の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルから選択され;nは1〜10から選択される整数であり;JおよびLはmが0のときCH、-OSi(CH)、-O-[Si(CH)O]-Si(CH)から独立して選択され;mが0より大きいとき、JはCH、Kは-O-Si(CH)-;Lは-OSi(CH)O-;そしてMは-[OSi(CH)]-である、請求項1のコポリマー。
【請求項3】
Aが構造
【化47】

を有し、式中R19、R20およびR21は独立して水素、または1から10の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルから選択され;そしてFは一般構造(16)を有するものとして表され:
【化48】

式中R22、R24およびR25は独立して水素、または1から5の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルから選択され;R23はヒドロキシルまたはそのアルカリ金属塩、アルコキシ、またはハロゲンから選択され;Gは独立して、1〜20の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含み、置換または非置換の脂肪族または芳香族、環状または非環状の炭化水素ラジカルから選択される二価の部分;Hは一般式(17)によって規定され、
【化49】

式中Iは1〜16の炭素原子を有するアルキレン基;Kは独立してCH、-O-[Si(CH)O]-Si(CH)、-OSi(CH)
【化50】

【化51】

【化52】

から選択され、式中R26およびR28は独立して水素、または1から5の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルから選択され、そしてR27は水素、または1から10の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルから選択され;nは1〜50から選択される整数であり;JおよびLはmが0のとき独立してCH、-OSi(CH)、または-O-[Si(CH)O]-Si(CH)から選択され;mが0より大きなとき、JはCH、Kは-O-Si(CH)-、Lは-OSi(CH)O、そしてMは-[OSi(CH)]-である、請求項1のコポリマー。
【請求項4】
DおよびTは独立してOR29、NR3031、または-CR32CR3334Oから選択され、ここでR29、R30、R31、R32、R33およびR34は独立して水素、または1から5の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルから選択される、請求項1から3のいずれかのコポリマー。
【請求項5】
Dおよび少なくとも一つのTはUとして選択され、Uは一般式(21)
【化53】

を有し、式中Vは-O-またはNR38から選択され;R35、R36、R37およびR38は独立して水素、または1から5の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルから選択され;Yは1〜10の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む二価の置換または非置換の脂肪族炭化水素ラジカルから選択される、請求項1から3のいずれかのコポリマー。
【請求項6】
Fが式(16)を有し、Hが:
【化54】

を有し、式中R39はメチル基または-O-Si(CH)である、請求項3のコポリマー。
【請求項7】
Fが式(16)を有し、Hが:
【化55】

を有し、式中R40は1〜50の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価の炭化水素ラジカルである、請求項3のコポリマー。
【請求項8】
m:n:pの比率が約5〜60:20〜80:5〜60であり、但し比の合計が100である、請求項1から7のいずれかのコポリマー。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかの親水性シロキサンコポリマーを含む組成物。
【請求項10】
組成物が、硬化開始剤;任意選択的にビニル系モノマー、アクリルアミドモノマー、アクリル系モノマー、あるいはこれらの二またはより多くの組み合わせから選択されるモノマー;および任意選択的に架橋剤をさらに含む、請求項9の組成物。
【請求項11】
ビニル系モノマーが、N-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニル-カプロラクタム、N-ビニル-アセトアミド、N-ビニル-ホルムアミドおよびN-ビニル-イソプロピルアミド、ビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ビニルアルコール、ビニル含有シリコーン、あるいはこれらの二またはより多くの組み合わせから選択され;アクリル系モノマーが、2-ヒドロキシエチル-メタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシエチル-アクリレート(HEA)、ヒドロキシルプロピルメタクリレート、トリメチルアンモニウム2-ヒドロキシプロピルメタクリレートヒドロクロリド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、技術的に既存の任意のアクリレート化親水性または疎水性オルガノシリコーン、またはこれらの二またはより多くの組み合わせから選択される、請求項10の組成物。
【請求項12】
開始剤が、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパンニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)、過酸化ベンゾイルのような過酸化物、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(HMPP)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびDarocur(登録商標)やIrgacure(登録商標)のタイプのものから選択される熱開始剤または光開始剤である、請求項10または11の組成物。
【請求項13】
架橋剤が、エチレングリコールジメタクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ジグリシジルビスフェノールAジメタクリレートおよびジメタクリレート-末端化ポリエチレングリコールおよび反応性線状ポリエーテル変性シリコーンから選択される、請求項10から12のいずれかの組成物。
【請求項14】
組成物がヒドロゲルである、請求項9から13のいずれかの組成物。
【請求項15】
請求項14の組成物を含むコンタクトレンズ。
【請求項16】
組成物がエマルジョンまたはラテックスである、請求項9から13のいずれかの組成物。
【請求項17】
組成物がパーソナルケア組成物である、請求項9から13のいずれかの組成物。
【請求項18】
請求項9から13のいずれかの組成物から形成されたコーティングを含む物品であって、コーティングが物品の表面の少なくとも一部上に配置されている、物品。
【請求項19】
請求項9から13のいずれかの組成物からフィルムを形成し、そのフィルムをコンタクトレンズに成形し;コンタクトレンズから浸出性モノマーを除去することを含む、コンタクトレンズの形成プロセス。
【請求項20】
浸出性モノマーを除去することが、コンタクトレンズを水系で処理することを含む、請求項19のプロセス。
【請求項21】
プロセスが、水、有機塩溶液、無機塩溶液、緩衝液、エマルジョン、眼科的に相溶性の溶媒で20〜125℃の範囲の温度においてコンタクトレンズを処理すること、あるいはこれらの二またはより多くの組み合わせを含む、請求項19のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
この出願は、「シリコーン系親水性コポリマーおよびそれを含むヒドロゲル組成物」と題する2015年3月27日出願の米国出願第14/670557号の優先権および利益を主張するものであり、その開示はここでの参照によって、全体にわたり本明細書に取り込まれる。
【0002】
本発明は、親水性を示すコポリマーに関する。特に本発明は、親水性を示すオルガノ変性シロキサンと有機モノマーのコポリマーに関する。これらのコポリマーは、限定するものではないが、コンタクトレンズのようなバイオメディカル製品を含む種々の製品に用いるのに適切な、ヒドロゲルフィルムを作成するのに適したヒドロゲル組成物を形成するのに使用してよい。
【背景技術】
【0003】
ヒドロゲル配合物を含有する反応性シリコーンは、長期装用ソフトコンタクトレンズを作成するのに用いられているが、これはシリコーンが、高い酸素透過性、快適さにつながる可撓性をもたらし、角膜障害を低減させるからである。しかしこうしたシリコーン分子には固有の濡れ性が欠如しており、それによって酸素透過性と水分吸収との間で妥協が行われる。従来、こうしたシロキサンモノマーは有機親水性モノマーとブレンドされて、化学線によりまたは熱的に硬化可能な、硬化性モノマー混合物が調製される。しかしながら、シロキサンモノマーと有機モノマーを混合すると非相溶性がもたらされ、マクロ相分離を生じ、不透明性が発現する。この問題に対して考え得る解決策は、相分離をミクロレベルに制限する有機部分でシロキサンモノマーを変性して、硬化性混合物中での相溶性を高め、何らかの固有の親水性を取り入れることである。こうしたオルガノ変性シロキサンモノマーは、架橋剤の存在下に有機モノマーと共に硬化される。
【0004】
かかる方法論についての従来の試みの例には、米国特許第4260725号;第5352714号;第5998498号;第6867245号;第6013711号;第6207782号;第7601766号;第7557231号;第7732546号;第7781558号;第7825273号に記載されたものが含まれる。しかしこの手法は、それに関与するモノマーの反応性比における不整合に起因して、多量の未反応モノマーを生ずる。またこの方法は、制御されない架橋と分子量の増大につながり、これはバッチごとの再現性に影響する。配合物には多くの成分が関与しているため、未反応モノマーを生ずる可能性は高く、したがって水系有機溶媒混合物のようなマトリックスから、浸出性のあるそうしたモノマーを抽出することが必要になるが、それはプロセスコストの増大につながる。
【0005】
米国特許第5981669号は、連鎖移動剤の存在下にシリコーンモノマーと親水性モノマーをフリーラジカル重合することによる、単官能性プレポリマーの合成を開示している。こうしたプレポリマーは次いで、シリコーンから構成されていてよい二官能性マクロマーとの配合物へと誘導される。米国特許公開第2011/0166248号および第2008/0231798号は、シリコーン含有モノマーと親水性モノマーとの、プレポリマーを生ずるブロックコポリマーを開示している。米国特許公開第2010/0298446号および米国特許第8642712号は、原子移動ラジカル重合(ATRP)を通じて親水性モノマーを重合するためのマクロ開始剤として作用するように、ポリシロキサンブロックを官能化することを報告している。この技術は、二官能または四官能のプレポリマーを生ずる。米国特許公開第2010/0296049号および米国特許第8557940号は、二官能性ポリシロキサンポリマーと有機モノマーの混合物を重合するための、可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)技術を開示している。米国特許公開第2009/0143499号は、ポリシロキサンブロック、ポリ(オキシアルキレン)ブロック、および架橋基から作成されたプレポリマーを包含している。米国特許公開第2014/0235782号は、親水性モノマーの単独重合に基づくプレポリマーを開示している。米国特許公開第2013/0172600号は、プレポリマー手法を開示しており、そこではポリシロキサン単位が架橋剤として使用されて、ポリマーが調製され、その官能化が行われる。米国特許第7550519号は、反応性ポリマーから着色ヒドロゲルレンズを製造するための、フリーラジカル重合(FRP)法を開示している。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、フリーラジカル重合(FRP)または原子移動ラジカル重合(ATRP)を介した、シロキサンおよび親水性有機モノマー(単数または複数)の線状コポリマーを提供する。これらのコポリマーはまた種々の量で官能化することができ、熱的または化学放射線によって、さらに重合を受けることができるようになる。これらのポリマーの親水性は、シロキサンと有機モノマーの比率を変化させることによって変えることができ、それによって水分散性状態から可溶状態までとすることができる。シロキサン含有量は、中程度から硬度の酸素透過性を得るため、相応に調節可能である。これらのプレポリマーは、ヒドロゲルを生ずる単一成分の硬化性組成物として使用可能であり、浸出性成分の存在を最小限とし、またプロセスコストを低減させる。それらはまた、コポリマー、フィルム形成成分、ヒドロゲル、コーティング、エマルジョン/ラテックスその他として、パーソナルケア配合物に用途を見出しうる。
【0007】
一つの側面において、本発明はオルガノシリコーンポリマーを合成するためのプレポリマー的アプローチを提供するものであり、これはモノマーを共重合し、そして任意の低分子量反応性または非反応性種についてポリマーを精製することを含む。これらのポリマーはさらに官能化され、プレポリマーと呼ばれる反応性種とされる。これらのプレポリマーは無溶媒で、または何らかの追加の成分と共に硬化可能であって、最小限の後処理工程しか必要としないヒドロゲルフィルムを生成する。これらのプレポリマーは、モノマーを最適な比率で正しく選択することによって、親水性および/または酸素透過性について調節可能である。このアプローチは再現性をもたらし、最終物質の純度を増大させる。
【0008】
一つの側面において、本発明は式(1)の親水性シロキサンコポリマーを提供し:
【化1】

式中lは1、mおよびnは独立して1〜200、そして2≦l+p≦200であり;
Wは一般式(2)を有する部分であり:
【化2】

式中Eは1〜20の炭素原子を有し、任意に硫黄または酸素を含む、置換、非置換、脂肪族、芳香族、環状、または非環状炭化水素ラジカルから選択された二価の部分であり;Dは1〜10の炭素原子を有し、ヒドロキシ、エーテル、エステル、アミン、アミド、カルボン酸、あるいはこれらの二またはより多くの組み合わせから独立して選択された官能基を備えた一価の炭化水素ラジカルであり;
Aは一般式(3)を有するオルガノシリコーンブロックであり:
【化3】

式中R、RおよびRは独立して水素、または1から10の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルから選択され;そしてFはシロキサン含有基であり;
Bは一般式(13)を有する親水性ブロックであり;
【化4】

式中R41
【化5】

または-P-Qであり、Pは単結合、O、またはNR14から選択され、ここでR14は水素、または1から5の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルであり;R11、R12およびR13は独立して水素、または1から10の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルから選択され;Qは1〜50の炭素原子を含み、任意にヘテロ原子またはヒドロキシル、エーテル、エステル、アミン、またはカルボン酸から独立して選択される官能基を有する置換または非置換の脂肪族、芳香族、環状、または非環状の炭化水素ラジカルであり;そして
Cは一般式(14)を有する有機ブロックであり;
【化6】

式中R15、R16およびR17は独立して水素、または1〜10の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルから選択され;RはOまたはNR18から選択され、ここでR18は水素、または1から5の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルであり;Sは任意にヘテロ原子を含み、置換または非置換の脂肪族、環状、または芳香族炭化水素から選択され1〜20の炭素原子を有する二価の炭化水素ラジカルであり;そしてTはヒドロキシル、エポキシ、エーテル、エステル、アミン、アミド、またはカルボン酸から選択される少なくとも一つの官能部分を有し1〜10の炭素原子を備えた一価の炭化水素ラジカルである。
【0009】
一つの側面において、本発明は、かかるポリマーを含む組成物を提供する。一つの実施形態において、この組成物はヒドロゲル組成物である。一つの実施形態において、この組成物はエマルジョンまたはラテックスである。一つの実施形態において、この組成物はフィルム形成剤である。
【0010】
一つの実施形態において、本発明は、かかる組成物を含む物品を提供する。一つの実施形態において、この物品は組成物から生成されたヒドロゲルフィルムから形成されたコンタクトレンズである。一つの実施形態において、この物品は表面を有する基材を含み、その表面は少なくとも部分的に組成物で被覆されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、親水性を示すポリマー材料を提供する。このポリマー材料は、例えばエマルジョン、コーティング、フィルム形成剤、フィルム作成用のヒドロゲル組成物等を含む、各種の組成物において使用してよい。この組成物は、バイオメディカル用途におけるコーティングとして、または所望の製品、例えばコンタクトレンズの一部または全部を形成するなど、各種の用途において使用可能である。本発明のポリマーは、親水性を示す一方で、従来のヒドロゲル組成物において存在してよい浸出性モノマーの濃度を低減させるフィルムを形成するのに適切であることが見出されている。
【0012】
添付の特許請求の範囲を含めて、本明細書において使用するところでは、単数形「ある」、「あの」および「その」は複数形を含み、特定の数値に対する参照は、本文で明確に別様に規定しない限り、少なくともその特定の値を含む。
【0013】
本明細書において範囲は、「約」または「およそ」一つの特定の値から、および/または「約」または「およそ」別の特定の値までとして表現されてよい。そうした範囲が表現される場合、別の実施形態もその一つの特定の値から、および/または他方の特定の値を含んでいる。同様に、先行詞「約」の使用によって、値が近似で表現される場合、その特定の値は別の実施形態を構成することが理解されよう。
【0014】
本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書で別様に記載しない限り、あるいは文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施してよい。本明細書に規定されたあらゆる例示、または例示的な言語の使用(例えば「のような」)は、単に本発明を良好に描写することを意図したものであり、別様に特許請求されている場合を除き、本発明の範囲に限界を画するものではない。明細書中のどのような言語も、本発明の実施に本質的な、特許請求されていない要素を示すものとして解釈されてはならない。
【0015】
本明細書で使用するところでは、「包含する」、「含む」、「含有する」、「特徴とする」、およびこれらの文法的な等価物は包括的または開放式な用語であり、追加的な、未引用の要素または方法的工程を排除するものではないが、より制限的な用語「からなる」および「から本質的になる」を含むことも理解されよう。
【0016】
用語「ラジカル」および「基」は、用語「アルキル」、「シクロアルキル」、「アリール」、「アルコキシ」、「アリールオキシ」および「シクロアルコキシ」に適用されるところでは、本開示の全体を通じて交換可能に使用される。
【0017】
本開示の全体を通じて、用語「炭化水素ラジカル」は、1から60の炭素原子を有する脂肪族ラジカル、脂環式ラジカル、または芳香族ラジカルの任意のものを表す。「脂肪族」、「脂環式」および「芳香族」ラジカルについての以下の一般的な定義は、一価および二価の「炭化水素ラジカル」に適用できる。
【0018】
「脂肪族」ラジカルまたは基という用語は、環状ではない炭素原子の配列を参照しており、結合点(単数または複数)はsp炭素原子である。この炭素原子の配列はさらに、sp、sp、またはsp混成の炭素原子の任意の組み合わせを含んでよい。この炭素原子の配列はさらに、酸素、窒素、および硫黄のような一つまたはより多くのヘテロ原子を含んでよい。脂肪族ラジカルの例には、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、イソオクチル、ベンジル、シクロヘキシルメチル、フェネチル、アルファアルファジメチルベンジル、3-ヒドロキシプロピル、その他が含まれる。
【0019】
「芳香族」ラジカルまたは基という用語は、sp混成の炭素原子と共役した炭素-炭素二重結合の一価の環状配列であって、sp混成炭素原子を介して結合するものを参照している。芳香族基またはラジカルは、一つから最大限許容可能な数までの置換基を有することができる。置換基は、水素原子以外は一般的に、ラジカルとして定義される。したがって置換基によって明示的に置換されていない芳香族炭素原子は、水素原子によって置換されているものと想定される。一つの実施形態において、芳香族ラジカルは、C6〜C20芳香族ラジカル;C6〜C15芳香族ラジカル;さらにはC6〜C10芳香族ラジカルから選択されてよい。芳香族ラジカルまたは基はさらに、硫黄、酸素、および窒素といったヘテロ原子を含んでよい。アリール基の例には、限定するものではないが、フェニル、置換フェニル、トリル、置換トリル、キシリル、メシチル、クロロフェニル、ナフチル、フリル、フリルメチル、チエニル、ピロリル、その他が含まれる。
【0020】
「脂環式」ラジカルまたは基という用語は、一価の環状配列の炭素原子を参照しており、ケイ素原子に対しては、炭素原子の環状配列の一部を形成するsp混成炭素原子を介して結合する。炭素原子の環状配列はさらに、酸素、硫黄、および窒素といった一つまたはより多くのヘテロ原子を含んでよい。また炭素原子の環状配列は、一つから最大限許容可能な数までの置換基で置換可能である。シクロアルキル基の例には、限定するものではないが、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、トリメチルシクロヘキシル、フェニルシクロヘキシル、テトラヒドロピラニル、4-チアシクロヘキシル、シクロオクチル、その他が含まれる。
【0021】
「ヘテロ原子」には、例えば窒素、硫黄、酸素等といった非炭素原子が含まれる。
【0022】
「親水性」物質(例えば親水性モノマー、親水性マクロマー、親水性ポリマー、その他)は、好水性であり、水に親和性を有し、吸水性である等といったものである。親水性物質は、水に可溶性または不溶性(例えば実質的に不溶性)であってよい。親水性物質は、一つの実施形態において、親水性部分と疎水性部分の両方を含むことができるが、疎水性部分は相対的に、その物質または化合物が親水性であるような量において存在する。一つの実施形態において、親水性物質は少なくとも10重量パーセントの水を吸収することができる。
【0023】
一つの側面において、本発明は式(1)の親水性シロキサンコポリマーを提供し:
【化7】

式中lは1、mおよびnは独立して1〜200、そして2≦l+p≦200であり;
Wは一般式(2)を有する部分であり:
【化8】

式中Eは1〜20の炭素原子を有し、任意に硫黄または酸素を含む、置換、非置換、脂肪族、芳香族、環状、または非環状炭化水素ラジカルから選択された二価の部分であり;Dは1〜10の炭素原子を有し、ヒドロキシ、エーテル、エステル、アミン、アミド、カルボン酸、あるいはこれらの二またはより多くの組み合わせから独立して選択された官能基を備えた一価の炭化水素ラジカルであり;
Aは一般式(3)を有するオルガノシリコーンブロックであり:
【化9】

式中R、RおよびRは独立して水素、または1から10の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルから選択され;そしてFはシロキサン含有基であり;
Bは一般式(13)を有する親水性ブロックであり;
【化10】

式中R41
【化11】

または-P-Qであり、Pは単結合、O、またはNR14から選択され、ここでR14は水素、または1から5の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルであり;R11、R12およびR13は独立して水素、または1から10の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルから選択され;Qは1〜50の炭素原子を含み、任意にヘテロ原子またはヒドロキシル、エーテル、エステル、アミノ、またはカルボン酸から独立して選択される官能基を有する置換または非置換の脂肪族、芳香族、環状、または非環状の炭化水素ラジカルであり;そして
Cは一般式(14)を有する有機ブロックであり;
【化12】

式中R15、R16およびR17は独立して水素、または1〜10の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルから選択され;RはOまたはNR18から選択され、ここでR18は水素、または1から5の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルであり;Sは任意にヘテロ原子を含み、置換または非置換の脂肪族、環状、または芳香族炭化水素から選択され1〜20の炭素原子を有する二価の炭化水素ラジカルであり;そしてTはヒドロキシル、エポキシ、エーテル、エステル、アミン、アミド、またはカルボン酸から選択される少なくとも一つの官能部分を有し1〜10の炭素原子を備えた一価の炭化水素ラジカルである。
【0024】
一つの実施形態において、Bは次の一般式を有する親水性ブロックであり:
【化13】

式中PはOまたはNR14から選択され、ここでR14は水素、または1から5の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルであり;R11、R12およびR13は独立して水素または1から10の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルから選択され;Qは1〜50の炭素原子を含み、任意にヘテロ原子をヒドロキシル、エーテル、エステル、アミノ、またはカルボン酸から独立して選択される官能基と共に有する置換または非置換の脂肪族、芳香族、環状、または非環状の炭化水素ラジカルである。
【0025】
成分Aにおけるシロキサン含有成分Fは所望に応じて選択してよく、そして一般には少なくとも一つの-O-Si結合を含有する基を含んでいる。成分Fに適した適切なシロキサン含有基の例に含まれるものとしては、限定するものではないが:
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

式中R'は独立してHまたはCHから選択され;R''は置換または非置換の脂肪族、環状、または芳香族炭化水素から選択されヘテロ原子を含んでいてよい、1〜20の炭素原子を有する炭化水素ラジカルから独立して選択され;mは0〜1の整数であり;Xはエステルまたはアミドから独立して選択される官能基であり;KはCH、-O-[Si(CH)O]-Si(CH)、-OSi(CH)
【化20】

【化21】

【化22】

から独立して選択され、ここでRおよびR10は水素、または1から5の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルから選択され、そしてRは水素、または1から10の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルから選択され;そしてnは1〜50から選択される整数である。JおよびLはmが0のときCH、-OSi(CH)、-O-[Si(CH)O]-Si(CH)から独立して選択される。mが0より大きいとき、JはCH、Kは-O-Si(CH)-;Lは-OSi(CH)O-;そしてMは-[OSi(CH)]-である。
【0026】
一つの実施形態において、オルガノシリコーンブロックAは構造
【化23】

を有し、式中R19、R20およびR21は独立して水素、または1から10の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルから選択され;そしてFは一般構造(16)を有するものとして表され:
【化24】

式中R22、R24およびR25は独立して水素、または1から5の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む一価の炭化水素ラジカルから選択され;R23は独立してヒドロキシルおよびそのアルカリ金属塩、アルコキシ、およびハロゲンのような官能基から選択され;Gは独立して、1〜20の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含み、置換または非置換の脂肪族または芳香族、環状または非環状の炭化水素ラジカルから選択される二価の部分;Hは一般式(17)によって規定され、
【化25】

式中Iは1〜16の炭素原子を有するアルキレン基;JおよびLはmが0のとき独立してCH、-OSi(CH)、-O-[Si(CH)O]-Si(CH)から選択され;Kは独立してCH、-O-[Si(CH)O]-Si(CH)、-OSi(CH)
【化26】

【化27】

【化28】

から選択され、式中R26およびR28は独立して水素、または1から5の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルから選択され、そしてR27は水素、または1から10の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルから選択され;そしてnは1〜50から選択される整数である。mが0より大きなとき、JはCH、Kは-O-Si(CH)-、Lは-OSi(CH)O、そしてMは-[OSi(CH)]-である。
【0027】
一つの実施形態において、Hは式:
【化29】

のものであり、式中R39はメチル基または-O-Si(CH)である。別の実施形態において、Hは式:
【化30】

のものであり、式中R40は1〜50の炭素原子を有し直鎖または分岐鎖の一価の炭化水素ラジカルである。
【0028】
実施形態において、DおよびTは独立してOR29、NR3031、または-CR32CR3334Oから選択され、ここでR29、R30、R31、R32、R33およびR34は独立して水素、または1から5の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルから選択される。実施形態において、式(1)の化合物においてDおよび少なくとも一つのTはUとして選択され、これは一般式(21)を有し、そしてU≧2であり:
【化31】

式中Vは-O-またはNR38から選択され、ここでR35、R36、R37およびR38は独立して水素、または1から5の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルから選択され;そしてYは1〜10の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む二価の置換または非置換の脂肪族炭化水素ラジカルから選択される。
【0029】
ポリマーおよびポリマーによって形成される組成物の性質は、ポリマー中における種々のブロック(すなわちモノマー)の比率を変化させることによって制御または調節してよい。一つの実施形態において、m:n:p単位の比率は約5〜60:20〜80:5〜60;約10〜50:25〜75:10:50;約15〜40:30〜60:15〜40;さらには約20〜30:40〜50:20〜30であり、但し比の合計は100である。ここで、明細書および特許請求の範囲の他の部分においても同様に、数値は組み合わせて新たな、非開示の範囲を形成してよい。
【0030】
本発明はまた、式(1)によるポリマーを含む組成物をも提供する。実施形態において、ポリマーはヒドロゲル組成物の一部として使用してよい。ヒドロゲル組成物は、(a)式(1)のポリマー;(b)硬化開始剤;(c)任意に重合可能なモノマー;および(d)任意に架橋剤を含んでよい。本発明のポリマーは一成分系の硬化組成物として使用可能であり、すなわち追加的な在来のコモノマー(c)は必要としない。
【0031】
硬化開始剤(b)は例えば、重合反応を促進させおよび/または速度を増大させるため、重合技術においてそのように使用することが知られている材料から選択可能である。開始剤は、重合反応を開始させることのできる化学剤である。開始剤は、光開始剤または熱開始剤であることができる。
【0032】
光開始剤は、光を使用することによって、フリーラジカル重合および/または架橋を開始させることができる。適切な光開始剤には、限定するものではないが、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(HMPP)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびDarocurやIrgacureのタイプのもの、好ましくはDarocur(登録商標)1173および2959が含まれる。ベンゾイルホスフィン開始剤の例には、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-N-プロピルフェニルホスフィンオキシド;およびビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-N-ブチルフェニルホスフィンオキシドが含まれる。例えばマクロマー中に取り込み可能であったり、特別なモノマーとして使用可能な、反応性の光開始剤もまた適切である。反応性の光開始剤の例には、EP632329号に開示されたものが含まれ、この特許はその全体を、ここでの参照によって本明細書に取り入れる。その場合に重合は化学線、例えば光線、特に適切な波長のUV線によって誘発させることができる。波長条件は適切な場合には、適当な感光剤を添加することによって制御可能である。
【0033】
適切な熱開始剤の例には、限定するものではないが、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピンニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)、過酸化ベンゾイルのような過酸化物、その他が含まれる。好ましくは、熱開始剤はアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)および1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)である。
【0034】
RAFTは、重合において用いられる可逆的付加-開裂連鎖移動技術を参照している。RAFT試薬は、一般式K-C(S)-S-R39を有する化合物を参照しており、式中のR39は脱離基であり、Kは活性化基である。ここで使用される用語は、この技術分野の当業者によって理解される伝統的な意味を有している。任意の既知のRAFT試薬を本発明においてプレポリマーを合成するために使用可能であり、ジチオベンゾエート、トリチオカーボネート、ザンテート、およびジチオカルバメート類に属するRAFT試薬がRAFT反応において考慮される。本発明の文脈において好ましい試薬は、4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸および2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸である。
【0035】
ATRPは、周知技術でありリビングラジカル重合において用いられる、原子移動ラジカル重合技術を参照している。ATRPの条件には、開始剤および触媒の使用が含まれる。ATRP開始剤は、以下の類、すなわちハロゲン化アルカン、ハロゲン化ベンジル、アルファハロエステル、アルファハロケトン、アルファハロニトリル、または塩化スルホニルの任意のものから選択可能である。ATRP触媒は金属配位子錯体であり、金属の部分はMo、Cr、Re、Ru、Fe、Rh、Ni、Pd、Cuおよび配位子を含んでいる。使用される配位子は、二座配位子(例えば2,2'-ビピリジン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン)、三座配位子(例えばN,N,N',N'',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA))、または四座配位子(例えば1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、トリス(2-(ジメチルアミノ)エチル)アミン))であることができる。適切な触媒の一つは、Cu-PMDETA錯体である。
【0036】
この組成物は任意選択的に、重合性モノマー(c)を含む。一般に、ヒドロゲルはポリマー、例えば親水性ポリマーまたはモノマーと、コモノマー、例えばメタクリレート、N-ビニルピロリドン、メタクリル酸、その他を含んでいる。しかしながら本発明の組成物においては、そうしたモノマーは必要とされず、ヒドロゲルはポリマー(a)を直接硬化させることによって形成されてよい。従来のヒドロゲルフィルムにおいて、コモノマーは典型的にはヒドロゲル組成物の約30から約40重量パーセントの濃度で用いられている。このコモノマーは最終的なヒドロゲル製品において、依然として浸出性のモノマーとして残存する。この遊離した浸出性のモノマーは、フィルムの性質、およびフィルムと他の材料との相溶性に影響しうる。本発明のヒドロゲルフィルム組成物においてもコモノマーを使用してよいが、それらは必要な訳ではなく、また少なくとも従来のヒドロゲル組成物と比較して少ない量で使用してよい。一つの実施形態において、モノマー(c)は組成物の約0から約50重量%、約0.5から約40重量%、約1から約30重量%、約2から約20重量%、さらには組成物の約5から約10重量%の量で存在する。
【0037】
適切なモノマー(c)の例には、限定するものではないが、一つの重合性基を有する有機シリコーンまたはオルガノ変性シリコーン分子が含まれる。適切な重合性基の非限定的な例には、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、メタリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、カルボン酸またはエステルを有するオレフィン性不飽和炭化水素、その他が含まれる。より具体的な重合性基には、限定するものではないが、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピロール、N-ビニルスクシンイミド、アルキルビニルエーテル、2-アクリルアミドグリコール酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、メチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ドデシルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリル酸、無水マレイン酸、ビニルアセテート、アリルアルコール、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルアセテート、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N,N-ビニル-3-メチルカプロラクタム、N-ビニルイミダゾール、2-アクリルアミドグリコール酸、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-tertブチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸およびその塩、(3-アクリルアミドプロピル)-トリメチルアンモニウムクロリド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、3-アクリロイルアミノ-1-プロパノール、2-アクリルアミドグリコール酸、アミノプロピルメタクリレート、3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート(トリス)、ビス-(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピルメタクリレート、ペンタメチルジシロキサンプロピルメタクリレート、ペンタメチルジシロキサニルメチルメタクリレート、(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)シラン(SIGMA)、モノメタクリロキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルオキシエチルメタクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルオキシエチルメタクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリロキシエチルカルバメート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロール、N-[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]メタクリルアミド、ペンタメチルジシロキサニルメチルメタクリレート、フェニルテトラメチルジシロキサニルエチルエタクリレート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカーボネート、2-(アクリルオキシエチルオキシ)トリメチルシラン、N-(3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(アクリルオキシメチル)フェネチルトリメトキシシラン、3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシランが含まれる。
【0038】
一つの実施形態において、モノマー(c)は、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニル-2-ピロリドン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、その他といった、親水性モノマーから選択される。
【0039】
架橋剤(d)は一般に、その分子の異なる部位に、二またはより多くの反応性官能基を有することができる。典型的には、これらの部位は重合性オレフィン系不飽和基を含んでいる。硬化に際して、それらは二つの異なるポリマー鎖と共有結合を形成し、安定な三次元網目構造を形成して、ポリマーの強度を改善する。適切な架橋剤の非限定的な例には、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、チオ、シアヌレートその他が含まれる。使用可能な幾つかの例は、限定するものではないが、エチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、エチレンジアミンジメタクリルアミド、ビスフェノールAジメタクリレート、COATOSIL、ジアクリレートまたはジメタクリレート末端化ポリジシロキサン、ジアクリルアミド末端化ポリジメチルシロキサン、ジメタクリルアミド末端化ポリジメチルシロキサン、ジメタクリレート化ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンその他である。従来からコンタクトレンズに使用されている架橋剤には、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、およびトリメチロールプロパントリメタクリレート(約0.1から2重量%)が含まれる。他の有用な架橋剤には、ジエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ジグリシジルビスフェノールAジメタクリレート、ジメタクリレート末端化ポリエチレングリコール、および反応性線状ポリエーテル変性シリコーンが含まれる。
【0040】
本発明のポリマーおよびヒドロゲルはまた、紫外線吸収剤、顔料および着色料を、添加剤またはコモノマーの形で含有してよい。
【0041】
本発明はまた、(メタ)アクリレート官能化親水性シリコーンモノマーおよびHEMAまたはその他のコンタクトレンズ用モノマーのような、従来のモノマーを含むシリコーン-ヒドロゲル組成物をも提供し、軟質で可撓性のある水吸収性フィルムを生成する。本発明のポリマーは、約10重量%から約60重量%の水を吸収可能であり、優れた表面湿潤性と効果的な酸素透過性を示すが、これらは全て、レンズが装用された場合の良好な快適性や、ヒトの角膜の良好な健康状態にとって必要である。本発明はまた、特許請求する発明のシリコーン-ヒドロゲルフィルムから作成されたコンタクトレンズをも提供する。これらの実施形態は以下でさらに記載される。
【0042】
本発明のポリマーまたはヒドロゲル組成物を形成するために、本発明のポリマーおよび任意選択のモノマーは混合され、架橋剤の存在下に過酸化物または光開始剤のいずれかを使用する既知の熱硬化または紫外線硬化技術によって、得られた混合物は重合され硬化されて、透明な薄いフィルムが形成される。
【0043】
本発明のプレポリマー組成物は、親水性シリコーンホモポリマー/コポリマーを形成するために使用してよく、これはポリエーテル鎖中に線状アルキル連結基を有するモノマーと比較して、良好な酸素透過性および大きく改善された表面湿潤性を有するシリコーン-ヒドロゲルフィルムを生成する。本発明のシリコーン-ヒドロゲルフィルムから生成されたコンタクトレンズは、プラズマ酸化やプラズマコーティングのような高価な二次処理や、湿潤性を改良するための内部湿潤剤を必要としない。すなわち本発明のシリコーン-ヒドロゲルフィルムから生成されたコンタクトレンズは、二次処理なしで、軟質で可撓性があり、本来的に湿潤性であり、高い酸素透過性を示す。
【0044】
本発明のポリマーは、澄んだ透明な均質の単相溶液を形成し、これは本発明のシロキサンモノマーの分子量に応じて、直接硬化可能であるか、または有機親水性ヒドロゲルモノマーと混和性の追加的な均質化溶液として0〜50%の2-プロパノールまたは水または緩衝溶液を用いることで硬化可能である。本発明のモノマーについて、フェドース法(Robert F. Fedors, PolymerEngineering and Science, Feb. 1974, vol. 14, No. 2)に基づいて計算された溶解度パラメータ値は、おおよそ16.5からおおよそ19(J/モル)1/2の範囲にあり、これはトリスのようなシリコーンモノマーよりも、従来のヒドロゲルモノマー(HEMA、NVPおよびDMAのような)の溶解度パラメータ値に近い。混和性は、本発明のモノマーと親水性コモノマーの間の溶解度パラメータの差が約7.7(J/モル)1/2未満である場合に実現される。
【0045】
本発明の別の実施形態においては、ポリマーは技術的に既知のプロセスを介して、シリコーン-ヒドロゲルフィルムへと形成されてよい。本発明のシリコーン-ヒドロゲルフィルムは軟質で、可撓性があり、そして非常に透明である。本発明のポリマーから作成されたシリコーン-ヒドロゲルフィルムは、線状アルキルで連結されたメタクリレート化シリコーンポリエーテル鎖を有するモノマーを用いて作成されたフィルムと比較して、良好な表面湿潤性と酸素透過性を示す。このヒドロゲルフィルムまたはレンズの酸素透過性は、本発明のシリコーンプレポリマーを独立してまたは組み合わせて選択することにより、40Dkから400Dk単位であり得る。本発明のシリコーン-ヒドロゲルフィルムは水に対し、100°から20°の範囲にある動的前進接触角を有し、また約10から70重量%の水を吸収することが見出されたが、これらはプレポリマーの分子量に応じて変化しうる。接触角はまた、ポリ(ビニルピロリドン)、またはポリ(ビニルアルコール)のような湿潤剤を添加することにより、この所定範囲内において変化させうる。シリコーンヒドロゲルはまた、コンタクトレンズの用途に必要とされる、良好な機械的性質(低いモジュラスおよび高い引裂強度のような)を有する。
【0046】
従来のシリコーン-ヒドロゲルフィルムは一般に、疎水性シリコーンモノマーと親水性ヒドロゲルモノマーの混合物を約10から40重量%の有機溶媒の存在下に硬化させることによって生成されるが、それはこれらが相互に非相溶性だからである。しかしながら本発明においては、本発明の親水性シリコーンマクロマーは水または2-プロパノールおよび親水性ヒドロゲルモノマー(HEMA、NVPおよびDMAのような)と混和性であることが見出されており、コンタクトレンズ製造においてより一般的に使用されまたは「グリーン(低公害)溶媒」と混和性のあるシリコーン-ヒドロゲルフィルムを生成するのに適した、均質溶液を形成することができる。「グリーン溶媒」という用語は、水、緩衝液、無機塩溶液、多目的溶液、レンズケア溶液、これらの二またはより多くの組み合わせ、またはこれらのいずれかと眼にやさしい溶媒との組み合わせを含みうるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
本発明においては、得られるポリマーは、技術的に既知のプロセスを介して、シリコーン-ヒドロゲルフィルムへと形成してよい。したがって本発明はまた、本発明のホモポリマーまたはコポリマーのいずれかから生成されるコンタクトレンズをも対象としている。本発明のモノマー/ポリマーは、米国特許第3408429号および第3496254号に開示されたごときスピンコートプロセス、米国特許第4084459号および第4197266号に開示されたごときキャスト成形プロセス、これらの方法の組み合わせ、またはコンタクトレンズを作成する他の既知の何らかの方法によって、コンタクトレンズへと形成可能である。重合化は、所望とするコンタクトレンズの形状に対応するスピンモールド(型)、または固定モールド中のいずれかで行ってよい。レンズには必要に応じて、さらに機械仕上げを施してよい。重合化はまた、ボタン状、プレート状、チューブ状またはロッド状を形成するように適当な型または容器中で実行してよく、これらは次いで加工して(例えば旋盤またはレーザーによる切断または研磨)、所望とする形状を有するコンタクトレンズをもたらしてよい。
【0048】
上記したように、本発明のシリコーン-ヒドロゲルは、線状アルキル連結基を有するシリコーン-ポリエーテルコポリマーと比較して、高い酸素運搬性と改善された表面湿潤性を示す。本発明によって用いられるポリマーは、容易に重合して三次元網目構造を形成するが、これは良好な機械的性質および光学的透明度と共に、改善された表面湿潤性を備えて酸素の運搬を許容する。
【0049】
フィルムの具体的な用例には、眼内コンタクトレンズ、人工角膜、および使い捨て長期装用ソフトコンタクトレンズまたはバイオメディカル装置のコーティングとしてのものが含まれる。
【0050】
加えて、本発明のポリマーの使用は、組成物またはヒドロゲル生成物から浸出性分子またはモノマーを除去するのに、「グリーン」抽出プロトコルを採用することを許容する。先に記載したように、コンタクトレンズ用の従来のヒドロゲルフィルムは比較的高濃度のコモノマー(例えばHEMAのような)を用い、系から浸出性モノマーを抽出するための処理を必要とする。抽出は典型的には、有機溶媒を用いて実行される。本発明のポリマーは、追加のコモノマーを系から大きく低減させ、または排除することを許容する。本発明のポリマー組成物を用いれば、より厳しくない抽出プロトコルを採用することが可能である。一つの実施形態においては、水、有機塩または無機塩溶液、緩衝液、エマルジョン、市販のレンズ洗浄液、または任意の眼科的に相溶性のある溶媒などを含む水系を抽出に使用してよいが、これらに限定されるものではない。
【0051】
コンタクトレンズ用のフィルムを作成するために使用されるヒドロゲル組成物を形成するのに適しているほか、本発明の組成物はまた、種々の用途に使用可能である。一つの側面において、この組成物は、バルク形態またはラテックス形態で調製されたホモポリマーまたはコポリマーを含む。本発明のポリマーを含有するこうしたホモポリマー、コポリマー、エマルジョン、およびラテックス粒子は、口紅、マスカラ、ファンデーション、ローション、クリーム、シャンプー、コンディショナー、およびマニキュアのような、スキンケア、ヘアケア、およびネイルケアを含むパーソナルケア配合物において、それらの商品特性、触覚特性および使いやすさを改善するための成分として使用可能である。それらはまた、テキスタイルおよび繊維処理用途に使用可能であり、天然繊維および合成繊維のいずれに対しても、滑らかでソフトな感触と湿潤性を付与する。最後にこのホモポリマー、コポリマー、エマルジョンおよびラテックス粒子は、ワニス、ラテックス塗料、および屋根材組成物のような、金属、プラスチック、木材および紙用のコーティング配合物中に取り入れることができる。
【0052】
一つの実施形態において、この組成物はパーソナルケア組成物においてフィルム形成剤として用いることができる。この組成物を利用可能なパーソナルケア組成物の例には、限定するものではないが、スプレー式、スティック式および回転塗布式などの防臭剤、制汗剤、および制汗/防臭剤、髭剃り製品、スキンローション、保湿剤、化粧水、浴用製品、クレンジング製品、シャンプー、コンディショナー、一体式シャンプー/コンディショナー、ムース、スタイリングジェル、ヘアスプレー、ヘアダイ、ヘアカラー製品、毛髪脱色剤、ウェーブ用製品、縮毛矯正剤、マニキュア、除光液、ネイルクリームおよびローション、キューティクル柔軟剤、日焼け止め、虫除け剤、アンチエージング製品、口紅、ファンデーション、フェイスパウダー、アイライナー、アイシャドウ、頬紅、顔用化粧品、マスカラ、保湿用調製品、ファンデーション、ボディおよびハンド用調製品、スキンケア用品、フェイスおよびネック用剤、トニック、包帯、整髪用剤、スプレー式固定剤、芳香用剤、アフターシェーブ用剤、顔用化粧用剤、ソフトフォーカス製品、ナイトアンドデイスキンケア用剤、無着色整髪用剤、日焼け用剤、合成および非合成固形石鹸、ハンドソープ、ノーズストリップ、パーソナルケア用不織布用品、ベビーローション、ベビー用浴用剤およびシャンプー、ベビー用コンディショナー、髭剃り用剤、胡瓜スライス、肌用パッド、化粧落とし、顔用クレンジング製品、コールドクリーム、日焼け止め製品、ムース、整髪料、ペーストマスクおよびマッド、フェイスマスク、コロンおよびトワレ、髪用キューティクルコーティング、シャワージェル、フェイスおよびボディウォッシュ、パーソナルケア洗い流し製品、ジェル、泡風呂剤、スクラブ式クレンザー、収斂剤、ネイルコンディショナー、アイシャドースティック、フェースまたはアイパウダー、リップクリーム、リップグロス、ヘアケアポンプスプレーおよび他の非エーロゾル式スプレー、くせ毛コントロールジェル、髪用リーブインコンディショナー、ヘアポマード、髪用デタングラー製品、髪用固定剤、髪用脱色製品、スキンローション、プリシェーブ用品および電気カミソリ用プリシェーブ用品、無水クリームおよびローション、水中油、油中水、多重、マクロおよびミクロエマルジョン、耐水性クリームおよびローション、ニキビ用品、マウスウォッシュ、マッサージオイル、歯磨き、クリアジェルおよびスティック、軟膏基剤、局所創傷治癒製品、エーロゾルタルク、保護用スプレー、ビタミンおよびアンチエージング用剤、ハーブ抽出剤、バスソルト、バスおよびボディミルク、ヘアスタイリングエイド、髪用-、目用-、ネイル用-およよび肌用-軟質固形用品、制御放出製品、ヘアコンディショニングミスト、スキンケア保湿用ミスト、肌用ワイプ、毛穴肌用ワイプ、毛穴クリーナ、しみ消し剤、肌用エクスフォリエーター、肌用落屑エンハンサー、肌用ウェットティッシュおよびクロス、脱毛用剤、パーソナルケア潤滑剤、ネイル着色用剤、サンスクリーン、コスメティック、ヘアケア製品、スキンケア製品、歯磨きペースト、肌に適用される医療組成物の局所適用のための薬剤供給システム、これらの二またはより多くの組み合わせ、その他が含まれる。
【0053】
本発明の組成物が採用されている組成物は、特定の目的または意図する用途について、他の材料および成分を所望に応じて含んでよいことが理解されよう。例えば、パーソナルケア組成物は、エモリエント、保湿剤、湿潤剤、顔料、被覆マイカ、着色剤、香料、殺生物剤、保存剤、酸化防止剤、抗菌剤、抗真菌剤、制汗剤、スクラブ剤、ホルモン、酵素、医薬化合物、ビタミン、塩、電解質、アルコール、ポリオール、紫外放射線吸収剤、植物抽出物、界面活性剤、シリコーンオイル、有機油、ワックス、フィルム形成剤、増粘剤、粒状フィラー、クレイ、表面活性剤、乳化剤、溶媒、エモリエント、保湿剤、湿潤剤、顔料、着色剤、香料、殺生物剤、保存剤、キレート剤、酸化防止剤、抗菌剤、抗真菌剤、制汗剤、スクラブ剤、ホルモン、酵素、医薬化合物、ビタミン、アルファヒドロキシ酸、ベータヒドロキシ酸、レチノール、ナイアシンアミド、美白剤、塩、電解質、アルコール、ポリオール、紫外放射線吸収剤、植物抽出物、有機油、ワックス、フィルム形成剤、増粘剤、粒状フィラー、シリコーン、クレイ、可塑剤、湿潤剤、閉塞剤、知覚増強剤、エステル、樹脂、フィルム形成剤、フィルム形成性乳化剤、高屈折率材料、これらの二またはより多くの組み合わせ、その他から選択された材料を含んでよい。
【0054】
別の実施形態においては、この組成物は、例えば肥料、殺虫剤その他のような農業用組成物におけるフィルム形成剤として使用してよい。
【0055】
さらに別の実施形態においては、この組成物は接着剤配合物における成分中に用いることができる。
【0056】
本発明の側面は、以下の非限定的な例を参照することによってさらに理解されよう。
【0057】
本発明の側面は、以下の非限定的な例を参照することによってさらに理解されてよい。これらの例は、本発明の側面および実施形態を例示することが目的であって、添付の特許請求の範囲を限定することを必然的に意図したものではない。
【実施例】
【0058】
例1:5-(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、および2-ヒドロキシエチルメタクリレートのトリブロックコポリマーの合成、m:n:p=20:55:25、Mw〜2600g/モル、U=3
撹拌棒、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた丸底フラスコに、ビニル-シクロヘキシル-エポキシ官能化トリシロキサン(100g)とトルエン(100mL)を仕込み、この反応混合物を70〜75℃に加熱した。その時点で、触媒量のチタンイソプロポキシド(0.8モル%)とTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル)(0.1ミリモル)を添加し、反応混合物をさらに90℃まで加熱した。この反応混合物に、2時間にわたってアクリル酸(21g)を徐々に添加した。完了後、反応混合物はDowex-WBA樹脂(10g)上で撹拌して、未反応のアクリル酸を除去した。生成物は活性炭(1重量%)を用いて脱色し、セライト(Celite)製の床上で濾過した。濾液は減圧蒸留して有機溶媒を除去し、淡黄色の液体である5-(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレートを生成した。
【0059】
重合化は典型的には、25gの(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレートと、16gのN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)と、10gの2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、および75mLのトルエンが仕込まれた、撹拌棒、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた丸底フラスコ中で実行した。溶存酸素を除去するため、窒素を用いてこの反応混合物を脱ガスした。0.1モル%の1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)をフリーラジカル源として使用した。2-メルカプトエタノール(1.5g)を連鎖移動剤として、陽圧の窒素流の下に添加した。反応混合物を10時間にわたり、110〜120℃に加熱した。重合完了後、反応混合物を蒸留して有機溶媒を除去し、コポリマーを白色の自由流動パウダーとして生成した。得られたパウダーは本質的に吸湿性であり、したがって水分のない条件下で貯蔵した。反応は、H NMR分光法およびゲル浸透クロマトグラフィによってモニターした。
【0060】
コポリマーのヒドロキシル自由末端はさらにメタクリレート化して、エチレン性不飽和末端基を得た。滴下漏斗と窒素入口を備えた丸底フラスコに、50gのコポリマーと、100gのトルエンおよび14gのトリエチルアミンを仕込み、フラスコを氷浴に入れた。この反応フラスコに対して、12gのメタクリロイルクロリドを滴下により添加した。反応混合物を1時間にわたって同じ温度で撹拌し、次いで12時間にわたり室温(25℃)に加温した。反応中に形成されたトリエチルアンモニウム塩酸塩は、漏斗を用いて濾別した。反応混合物は蒸留して有機溶媒を除去した。生成物は2-プロパノール中に再度溶解し、Dowex WBA樹脂(10g)上で撹拌して、反応中に形成されたメタクリル酸副生物を除去した。コポリマー溶液は次いで、活性炭(1重量%)を使用して脱色した。活性炭分散物は、Celite-S床上で濾過した。50ppmのヒドロキノンを濾液に添加した。溶媒を蒸留したところ、淡黄色の官能化コポリマーが固形物として生成された。すべての反応工程および生成物は、Hおよび29Si NMR分光法によって確認した。
【0061】
例2:5-(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、および2-ヒドロキシエチルメタクリレートのトリブロックコポリマーの合成、m:n:p=15:60:25、Mw〜4700g/モル、U=3
重合化は典型的には、撹拌棒、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた丸底フラスコ中で行った。このフラスコに、50gの(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、47gのN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、26gの2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、および185mLのルエンを仕込んだ。シロキサン:ジメチルアクリルアミド:2-ヒドロキシエチルメタクリレートのモル比は15:60:25に固定した。溶存酸素を除去するため、窒素を用いてこの反応混合物を脱ガスした。0.1モル%の1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)をフリーラジカル源として使用した。2-メルカプトエタノール(2g)を連鎖移動剤として、陽圧の窒素流の下に添加した。反応混合物を10時間にわたり、110〜120℃に加熱した。重合完了後、反応混合物を蒸留して有機溶媒を除去し、コポリマーを白色の自由流動パウダーとして生成した。得られたパウダーは本質的に吸湿性であり、したがって水分のない条件下で貯蔵した。反応は、H NMR分光法およびゲル浸透クロマトグラフィによってモニターした。
【0062】
コポリマーのヒドロキシル自由末端はさらにメタクリレート化して、エチレン性不飽和末端基を得た。滴下漏斗と窒素入口を備えた丸底フラスコに、120gのコポリマーと、250gのトルエンおよび20gのトリエチルアミンを仕込んだ。反応フラスコを氷浴中に入れた。反応混合物に対して、17gのメタクリロイルクロリドを滴下により添加した。反応混合物を1時間にわたって同じ温度で撹拌し、次いで12時間にわたり室温(25℃)に加温した。形成されたトリエチルアンモニウム塩酸塩を、漏斗を用いて濾別した。生成物は2-プロパノール中に再度溶解し、Dowex WBA樹脂(10g)上で撹拌して、反応中に形成されたメタクリル酸副生物を除去した。コポリマー溶液は次いで、活性炭(1重量%)を使用して脱色した。活性炭分散物は、Celite-S床上で濾過した。50ppmのヒドロキノンを濾液に添加した。溶媒を蒸留したところ、淡黄色の官能化コポリマーが生成された。すべての反応工程および生成物は、Hおよび29Si NMR分光法によって確認した。
【0063】
例3:5-(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、および2-ヒドロキシエチルメタクリレートのトリブロックコポリマーの合成、m:n:p=15:60:25、Mw〜4700g/モル、U=2
例2のコポリマーのヒドロキシル自由末端をさらにメタクリレート化して、エチレン性不飽和末端基を得た。滴下漏斗と窒素入口を備えた丸底フラスコに、30gのコポリマーと、100gのトルエンと、3gのトリエチルアミンを仕込んだ。このフラスコを氷浴中に入れた。反応混合物に対し、2.8gのメタクリロイルクロリドを滴下により添加した。反応混合物を1時間にわたって同じ温度で撹拌し、次いで12時間にわたり室温(25℃)に加温した。形成されたトリエチルアンモニウム塩酸塩を、漏斗を用いて濾過した。反応混合物は蒸留して有機溶媒を除去した。生成物は2-プロパノール中に再度溶解し、Dowex WBA樹脂(10g)上で撹拌して、反応中に形成されたメタクリル酸副生物を除去した。コポリマー溶液は次いで、活性炭(1重量%)を使用して脱色した。活性炭分散物は、Celite-S床上で濾過した。50ppmのヒドロキノンを濾液に添加した。溶媒を蒸留したところ、淡黄色の官能化コポリマーが生成された。すべての反応工程および生成物は、Hおよび29Si NMR分光法によって確認した。
【0064】
例4:5-(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、および2-ヒドロキシエチルメタクリレートのトリブロックコポリマーの合成、m:n:p=15:60:25、Mw〜2400g/モル、U=3
重合化は典型的には、撹拌棒、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた丸底フラスコ中で行った。このフラスコに、25gの(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、24gのN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、13gの2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、および90mLの2-プロパノールを仕込んだ。シロキサン:ジメチルアクリルアミド:2-ヒドロキシエチルメタクリレートのモル比は15:60:25に固定した。溶存酸素を除去するため、窒素を用いてこの反応混合物を脱ガスした。0.1モル%の1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)をフリーラジカル源として使用した。2-メルカプトエタノール(2g)を連鎖移動剤として、陽圧の窒素流の下に添加した。反応混合物を10時間にわたり、90〜95℃に加熱した。重合完了後、反応混合物を蒸留して有機溶媒を除去し、コポリマーを白色の自由流動パウダーとして生成した。得られたパウダーは本質的に吸湿性であり、したがって水分のない条件下で貯蔵した。反応は、H NMR分光法およびゲル浸透クロマトグラフィによってモニターした。
【0065】
コポリマーのヒドロキシル自由末端をさらにメタクリレート化して、エチレン性不飽和末端基を得た。滴下漏斗と窒素入口を備えた丸底フラスコに、40gのコポリマーと、120gのメチルエチルケトンと、9gのトリエチルアミンを仕込んだ。このフラスコを氷浴中に入れた。反応混合物に対し、8gのメタクリロイルクロリドを滴下により添加した。反応混合物を1時間にわたって同じ温度で撹拌し、次いで12時間にわたり室温(25℃)に加温した。形成されたトリエチルアンモニウム塩酸塩を、漏斗を用いて濾過した。生成物は2-プロパノール中に再度溶解し、Dowex WBA樹脂(10g)上で撹拌して、反応中に形成されたメタクリル酸副生物を除去した。コポリマー溶液は次いで、活性炭(1重量%)を使用して脱色した。活性炭分散物は、Celite-S床上で濾過した。50ppmのヒドロキノンを濾液に添加した。溶媒を蒸留したところ、淡黄色の官能化コポリマーが生成された。すべての反応工程および生成物は、Hおよび29Si NMR分光法によって確認した。
【0066】
例5:5-(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、および2-ヒドロキシエチルアクリレートのトリブロックコポリマーの合成、m:n:p=20:30:50、Mw〜5200g/モル、U=3
重合は典型的には、撹拌棒、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた丸底フラスコ中で行った。フラスコには25gの(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、9gのN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、17gの2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、および75mLの2-プロパノールを仕込んだ。シロキサン:ジメチルアクリルアミド:2-ヒドロキシエチルアクリレートのモル比は20:30:50に固定した。溶存酸素を除去するため、窒素を用いてこの反応混合物を脱ガスした。0.1モル%の1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)をフリーラジカル源として使用した。2-メルカプトエタノール(0.8g)を連鎖移動剤として、陽圧の窒素流の下に添加した。反応混合物は10時間にわたり、90〜95℃に加熱した。重合の完了後、反応混合物を蒸留して有機溶媒を除去し、コポリマーを白色の自由流動パウダーとして生成した。得られたパウダーは本質的に吸湿性であり、水分のない条件下で貯蔵した。反応は、H NMR分光法およびゲル浸透クロマトグラフィによってモニターした。
【0067】
コポリマーのヒドロキシル自由末端をさらにメタクリレート化して、エチレン性不飽和末端基を得た。滴下漏斗と窒素入口を備えた丸底フラスコに、50gのコポリマーと、100gのメチルエチルケトンと、11gのトリエチルアミンを仕込んだ。フラスコを氷浴中に入れた。この反応混合物に対し、9gのメタクリロイルクロリドを滴下により添加した。反応混合物を1時間にわたって同じ温度で撹拌し、次いで12時間にわたり室温(25℃)に加温した。形成されたトリエチルアンモニウム塩酸塩を、漏斗を用いて濾過した。生成物は2-プロパノール中に再度溶解し、Dowex WBA樹脂(10g)上で撹拌して、反応中に形成されたメタクリル酸副生物を除去した。コポリマー溶液は次いで、活性炭(1重量%)を使用して脱色した。活性炭分散物は、Celite-S床上で濾過した。50ppmのヒドロキノンを濾液に添加した。溶媒を蒸留したところ、淡黄色の官能化コポリマーが生成された。すべての反応工程および生成物は、Hおよび29Si NMR分光法によって確認した。
【0068】
例6:5-(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、およびグリシジルメタクリレートのトリブロックコポリマーの合成、m:n:p=15:72:13、Mw〜4700g/モル、U=3
重合は典型的には、撹拌棒、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた丸底フラスコ中で行った。フラスコには20gの(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、23gのN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、6gのグリシジルメタクリレート(GMA)、および75mLの2-プロパノールを仕込んだ。シロキサン:ジメチルアクリルアミド:グリシジルメタクリレートのモル比は15:72:13に固定した。溶存酸素を除去するため、窒素を用いてこの反応混合物を脱ガスした。0.1モル%の1,1'-アゾビスイソブチロニトリルをフリーラジカル源として使用した。2-メルカプトエタノール(0.8g)を連鎖移動剤として、陽圧の窒素流の下に添加した。反応混合物は10時間にわたり、65〜70℃に加熱した。重合の完了後、反応混合物を蒸留して有機溶媒を除去し、コポリマーを白色の自由流動パウダーとして生成した。得られたパウダーは本質的に吸湿性であり、水分のない条件下で貯蔵した。反応は、H NMR分光法、13C NMR分光法、およびゲル浸透クロマトグラフィによってモニターした。
【0069】
コポリマーのエポキシ自由末端をさらにアクリレート化して、エチレン性不飽和末端基を得た。窒素入口を備えた丸底フラスコに、45gのコポリマーと、100gの2-プロパノールと、1.5gのトリエチルアミンと、5gのアクリル酸を仕込んだ。15mgのブチル化ヒドロキシトルエンを重合防止剤として添加して、ゲル化を阻止した。反応混合物は12時間にわたり、90〜95℃で撹拌した。反応完了後、反応混合物はDowexWBA樹脂(10g)上で撹拌して、反応中に形成されたアクリル酸副生物を除去した。溶媒を蒸留したところ、白く着色された官能化コポリマーが生成された。すべての反応工程および生成物は、H、13Cおよび29Si NMR分光法によって確認した。
【0070】
例7:5-(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、N-ビニルピロリドン、および2-ヒドロキシエチルメタクリレートのトリブロックコポリマーの合成、m:n:p=55:36:9、Mw〜4300g/モル、U=2
重合は典型的には、撹拌棒、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた丸底フラスコ中で行った。フラスコには、30gの(2-(1,1,1,3,5,5,5,-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレートと60mlのトルエンを仕込んだ。溶存酸素を除去するため、窒素を用いてこの反応混合物を脱ガスした。0.1モル%の1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)をフリーラジカル源として使用した。2-メルカプトエタノール(0.7g)を連鎖移動剤として、陽圧の窒素流の下に添加した。反応混合物は110〜120℃に加熱した。15分後に、5gのN-ビニルピロリドン(NVP)および5mlのトルエンを、2時間かけて反応混合物に滴下により添加した。これに続いて、1.6gの2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と5mLのトルエンを滴下により添加した。反応は8時間にわたって継続した。重合の完了後、反応混合物は水に沈殿させて、コポリマーを白色の自由流動パウダーとして生成した。得られたパウダーは本質的に吸湿性であり、水分のない条件下で貯蔵した。反応は、H NMR分光法によってモニターした。
【0071】
コポリマーのヒドロキシル自由末端をさらにメタクリレート化して、エチレン性不飽和末端基を得た。滴下漏斗と窒素入口を備えた丸底フラスコに、24gのコポリマーと、50gのトルエンと、そして5gのトリエチルアミンを仕込んだ。フラスコは氷浴中に入れた。反応混合物に対して、4.5gのメタクリロイルクロリドを滴下により添加した。反応混合物を1時間にわたって同じ温度で撹拌し、次いで12時間にわたり室温(25℃)に加温した。形成されたトリエチルアンモニウム塩酸塩を、漏斗を用いて濾過した。生成物は2-プロパノール中に再度溶解し、Dowex WBA樹脂(10g)上で撹拌して、反応中に形成されたメタクリル酸副生物を除去した。コポリマー溶液は次いで、活性炭(1重量%)を使用して脱色した。活性炭分散物は、Celite-S床上で濾過した。50ppmのヒドロキノンを濾液に添加した。溶媒を蒸留したところ、淡黄色の官能化コポリマーが生成された。すべての反応工程および生成物は、Hおよび29Si NMR分光法によって確認した。
【0072】
例8:5-(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、およびグリシジルメタクリレートのトリブロックコポリマーの合成、m:n:p=30:57:13、Mw〜6000g/モル、U=3
重合は典型的には、撹拌棒、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた丸底フラスコ中で行った。フラスコには30gの(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、13gのN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、4gのグリシジルメタクリレート(GMA)、および75mLの2-プロパノールを仕込んだ。シロキサン:ジメチルアクリルアミド:グリシジルメタクリレートのモル比は30:57:13に固定した。溶存酸素を除去するため、窒素を用いてこの反応混合物を脱ガスした。0.1モル%の1,1'-アゾビスイソブチロニトリルをフリーラジカル源として使用した。2-メルカプトエタノール(0.6g)を連鎖移動剤として、陽圧の窒素流の下に添加した。反応混合物は10時間にわたり、65〜70℃に加熱した。重合の完了後、反応混合物を蒸留して有機溶媒を除去し、コポリマーを白色の自由流動パウダーとして生成した。得られたパウダーは本質的に吸湿性であり、水分のない条件下で貯蔵した。反応は、H NMR分光法、13C NMR分光法、およびゲル浸透クロマトグラフィによってモニターした。
【0073】
コポリマーのエポキシ自由末端をさらにアクリレート化して、エチレン性不飽和末端基を得た。窒素入口を備えた丸底フラスコに、45gのコポリマーと、100gの2-プロパノールと、1.5gのトリエチルアミンと、4gのアクリル酸を仕込んだ。14mgのブチル化ヒドロキシトルエンを重合防止剤として添加して、ゲル化を阻止した。反応混合物は12時間にわたり、90〜95℃で撹拌した。反応完了後、反応混合物はDowexWBA樹脂(10g)上で撹拌して、反応中に形成されたアクリル酸副生物を除去した。溶媒を蒸留したところ、白く着色された官能化コポリマーが生成された。すべての反応工程および生成物は、H、13Cおよび29Si NMR分光法によって確認した。
【0074】
例9:(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)シラン(SIGMA)、N,N-ジメチルアクリルアミド、およびグリシジルメタクリレートのトリブロックコポリマーの合成、m:n:p=30:57:13、Mw〜6100g/モル
重合は典型的には、撹拌棒、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた丸底フラスコ中で行った。フラスコには10gの(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)シラン(SIGMA)、4.5gのN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、1.5gのグリシジルメタクリレート(GMA)、および25mLの2-プロパノールを仕込んだ。シロキサン:ジメチルアクリルアミド:グリシジルメタクリレートのモル比は30:57:13に固定した。溶存酸素を除去するため、窒素を用いてこの反応混合物を脱ガスした。0.1モル%のVazo 88(1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル))をフリーラジカル源として使用した。2-メルカプトエタノール(0.2g)を連鎖移動剤として、陽圧の窒素流の下に添加した。反応混合物は15時間にわたり、85〜90℃に加熱した。重合の完了後、反応混合物を蒸留して有機溶媒を除去し、コポリマーを白色の固体として生成した。得られた固体は本質的に吸湿性であり、水分のない条件下で貯蔵した。反応は、H NMR分光法、13C NMR分光法、およびゲル浸透クロマトグラフィによってモニターした。
【0075】
例10:メタクリルイソブチル多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)、N,N-ジメチルアクリルアミド、およびグリシジルメタクリレートのトリブロックコポリマーの合成、m:n:p=30:57:13、Mw〜10,000g/モル
重合は典型的には、撹拌棒、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた丸底フラスコ中で行った。フラスコには10gのメタクリルイソブチル多面体オリゴマーシルセスキオキサン、2gのN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、0.6gのグリシジルメタクリレート(GMA)、および25mLの2-プロパノールを仕込んだ。シロキサン:ジメチルアクリルアミド:グリシジルメタクリレートのモル比は、30:57:13に固定した。溶存酸素を除去するため、窒素を用いてこの反応混合物を脱ガスした。0.1モル%のVazo 88(1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル))をフリーラジカル源として使用した。2-メルカプトエタノール(0.1g)を連鎖移動剤として、陽圧の窒素流の下に添加した。反応混合物は15時間にわたり、85〜90℃に加熱した。重合の完了後、反応混合物を蒸留して有機溶媒を除去し、コポリマーを麦わら色の粘稠な液体として生成した。得られた固体は本質的に吸湿性であり、水分のない条件下で貯蔵した。反応は、H NMR分光法、13C NMR分光法、およびゲル浸透クロマトグラフィによってモニターした。
【0076】
例11:メタクリレートポリエチレングリコール官能化トリシロキサン、N,N-ジメチルアクリルアミド、およびグリシジルメタクリレートのトリブロックコポリマーの合成、m:n:p=30:57:13、Mw〜9500g/モル
重合は典型的には、撹拌棒、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた丸底フラスコ中で行った。フラスコには10gのメタクリレートポリエチレングリコール官能化トリシロキサン、2.5gのN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、0.8gのグリシジルメタクリレート(GMA)、および25mLの2-プロパノールを仕込んだ。シロキサン:ジメチルアクリルアミド:グリシジルメタクリレートのモル比は30:57:13に固定した。溶存酸素を除去するため、窒素を用いてこの反応混合物を脱ガスした。0.1モル%のVazo 88(1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル))をフリーラジカル源として使用した。2-メルカプトエタノール(0.1g)を連鎖移動剤として、陽圧の窒素流の下に添加した。反応混合物は15時間にわたり、85〜90℃に加熱した。重合の完了後、反応混合物を蒸留して有機溶媒を除去し、コポリマーを白色の固体として生成した。得られたパウダーは本質的に吸湿性であり、水分のない条件下で貯蔵した。反応は、H NMR分光法、13C NMR分光法、およびゲル浸透クロマトグラフィによってモニターした。
【0077】
例12:3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]-プロピルメタクリレート(TRIS)、N,N-ジメチルアクリルアミド、およびグリシジルメタクリレートのトリブロックコポリマーの合成、m:n:p=30:57:13、Mw〜6100g/モル
重合は典型的には、撹拌棒、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた丸底フラスコ中で行った。フラスコには10gの3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]-プロピルメタクリレート、4.5gのN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、1.5gのグリシジルメタクリレート(GMA)、および25mLの2-プロパノールを仕込んだ。シロキサン:ジメチルアクリルアミド:グリシジルメタクリレートのモル比は30:57:13に固定した。溶存酸素を除去するため、窒素を用いてこの反応混合物を脱ガスした。0.1モル%のVazo 88(1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル))をフリーラジカル源として使用した。2-メルカプトエタノール(0.2g)を連鎖移動剤として、陽圧の空気流の下に添加した。反応混合物は15時間にわたり、85〜90℃に加熱した。重合の完了後、反応混合物を蒸留して有機溶媒を除去し、コポリマーを白色の固体として生成した。得られた固体は本質的に吸湿性であり、水分のない条件下で貯蔵した。反応は、H NMR分光法、13C NMR分光法、およびゲル浸透クロマトグラフィによってモニターした。
【0078】
例13:5-(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、およびグリシジルメタクリレートのトリブロックコポリマーの合成、m:n:p=30:57:13、Mw〜6000g/モル
重合は典型的には、撹拌棒、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた丸底フラスコ中で行った。フラスコには10gの(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、4.5gのN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、1.5gのグリシジルメタクリレート(GMA)、および25mLの2-プロパノールを仕込んだ。シロキサン:ジメチルアクリルアミド:グリシジルメタクリレートのモル比は30:57:13に固定した。溶存酸素を除去するため、窒素を用いてこの反応混合物を脱ガスした。0.1モル%の1,1'-アゾビスイソブチロニトリルをフリーラジカル源として使用した。L-システイン(0.3g)を連鎖移動剤として、陽圧の空気流の下に添加した。反応混合物は10時間にわたり、75〜80℃に加熱した。重合の完了後、反応混合物を蒸留して有機溶媒を除去し、コポリマーを白色の自由流動パウダーとして生成した。得られたパウダーは本質的に吸湿性であり、水分のない条件下で貯蔵した。反応は、H NMR分光法、13C NMR分光法、およびゲル浸透クロマトグラフィによってモニターした。
【0079】
ヒドロゲルフィルムの例
2-プロパノール中50〜70重量%の上記した例に記載のコポリマーを用いて、選ばれたヒドロゲルフィルムを調製した。フィルムは、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンをラジカル開始剤(0.5重量%)として使用して硬化した。得られた澄んだ均質な溶液を、測定ギャップが1mmのPET(ポリ(エチレンテレフタレート))へと注入した。配合物は、UV放射線に対して35mW/cmで30〜120秒間曝露することによって硬化した。表1に列挙したように、フィルムは、平衡水分率、水湿潤性、酸素透過性、およびモジュラスについて評価した。
【表1】
【0080】
本発明は、一成分の硬化性組成物として、または他の有機モノマーと組み合わせて使用可能な、反応性線状オルガノシロキサンプレポリマーを提供する。これらのプレポリマーは、シリコーン/有機単位の選択によって、構造を調整して親水性および/または酸素透過性を制御する機会を許容する。この手法は、最終製品に対して、良好な再現性と増大した純度をもたらす。本発明に記載されたプレポリマーはまた、ヒトの健康に有害な、浸出成分と呼ばれる未反応モノマーまたはオリゴマーが低減された医療用デバイスを作成するためのヒドロゲルを提供し、それによって処理コストを低減させる。
【0081】
以上においては本発明を種々の実施形態を参照して記載してきたが、当業者は、発明の範囲から逸脱することなしに、種々の変更を行ってよく、また均等物で要素の置換を行ってよいことを理解するであろう。本発明は、この発明を実施するための最適モードとして開示された具体的な実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に含まれるすべての実施形態を含むことが意図されている。本書で参照したすべての引用文献は、ここでの参照によって明示的に本明細書に取り込まれる。