特許第6803852号(P6803852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803852
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/50 20060101AFI20201214BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20201214BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C25D5/50
   C25D7/00 W
   H01M2/02 C
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-554217(P2017-554217)
(86)(22)【出願日】2016年12月5日
(86)【国際出願番号】JP2016086121
(87)【国際公開番号】WO2017094921
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2019年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-236710(P2015-236710)
(32)【優先日】2015年12月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390003193
【氏名又は名称】東洋鋼鈑株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】貞木 功太
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 興
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/098718(WO,A1)
【文献】 特開2006−093095(JP,A)
【文献】 特開2013−170308(JP,A)
【文献】 特開2014−009401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00− 7/12
H01M 2/00− 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板であって、
鋼板の電池缶内面となる面上に、最表層を構成する4.4〜26.7g/mのニッケル層を有し、
前記ニッケル層が形成された面について、高周波グロー放電発光分光分析装置によって前記電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板の表面から深さ方向に向かってFe強度およびNi強度を連続的に測定した際において、Fe強度が第1所定値を示す深さ(D1)と、Ni強度が第2所定値を示す深さ(D2)との差分(D2−D1)が0.04μm未満であることを特徴とする電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板。
(前記第1所定値を示す深さ(D1)は、前記測定により測定されたFe強度の飽和値に対して、10%の強度を示す深さであり、
前記第2所定値を示す深さ(D2)は、前記測定によりNi強度が極大値を示した後、さらに深さ方向に向かって測定を行った際に、該極大値に対して10%の強度を示す深さである。)
【請求項2】
前記ニッケル層の厚みに対する、前記鉄−ニッケル拡散層の厚みの比(鉄−ニッケル拡散層の厚み/ニッケル層の厚み)が、0.08以下である請求項1に記載の電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板。
【請求項3】
前記ニッケル層の厚みが0.5μm超である請求項1または2に記載の電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板。
【請求項4】
前記ニッケル層における10gfの荷重で測定されるビッカース硬度(HV)が220超えである請求項1〜3のいずれかに記載の電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板からなる電池容器。
【請求項6】
請求項に記載の電池容器を備える電池。
【請求項7】
鋼板の電池缶内面となる面上に、ニッケル量で4.4〜26.7g/mのニッケルめっき層を形成するニッケルめっき工程と、
前記ニッケルめっき層を形成した鋼板に対して、350℃以上、450℃以下の温度で30秒〜2分の間保持することにより熱処理を施し、最表層を構成するニッケル層を形成する熱処理工程と、を有する電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オーディオ機器や携帯電話など、多方面において携帯用機器が用いられ、その作動電源として一次電池であるアルカリ電池、二次電池であるニッケル水素電池、リチウムイオン電池などが多用されている。このような電池は、搭載される機器の高性能化に伴い、長寿命化および高性能化などが求められており、正極活物質や負極活物質などからなる発電要素を充填する電池容器、電池缶も電池の重要な構成要素としての性能の向上が求められている。
【0003】
このような電池缶を形成するための表面処理鋼板として、たとえば、特許文献1,2では、鋼板上にニッケルめっき層を形成した後、熱処理を施すことにより鉄−ニッケル拡散層を形成してなる表面処理鋼板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−009401号公報
【特許文献2】特開平6−2104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1,2では、鉄−ニッケル拡散層を形成する際の熱処理の条件が、高温または長時間であるため、基材である鋼板の鉄とニッケルめっき層のニッケルとの相互拡散が進みやすく、得られる表面処理鋼板上には、鉄−ニッケル拡散層およびその上層にニッケル層として残存するものの再結晶化が進み軟質化したニッケル層、または、より軟質な鉄−ニッケル拡散層が形成される。
このような表面処理鋼板を電池缶に加工する際には、最表層が軟質であることから、めっき後に熱処理を施さない表面処理鋼板を加工する際に比べて金型(パンチ)へのニッケル層の焼き付きが生じやすい。
【0006】
しかしながら、めっき後に熱処理を施さないニッケルめっき鋼板を電池缶形成した場合には基材である鋼板から地鉄が溶出しやすく耐食性に劣る。
【0007】
本発明の目的は、鉄の溶出を抑制することにより耐食性に優れ、かつ、皮膜が硬質な電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板であって、鋼板の電池缶内面となる面上に、最表層を構成する4.4〜26.7g/mのニッケル層を有し、前記ニッケル層が形成された面について、高周波グロー放電発光分光分析装置によって前記電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板の表面から深さ方向に向かってFe強度およびNi強度を連続的に測定した際において、Fe強度が第1所定値を示す深さ(D1)と、Ni強度が第2所定値を示す深さ(D2)との差分(D2−D1)が0.04μm未満であることを特徴とする電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板が提供される。
なお、前記第1所定値を示す深さ(D1)は、前記測定により測定されたFe強度の飽和値に対して、10%の強度を示す深さであり、前記第2所定値を示す深さ(D2)は、前記測定によりNi強度が極大値を示した後、さらに深さ方向に向かって測定を行った際に、該極大値に対して10%の強度を示す深さである。
【0009】
本発明の電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板において、前記ニッケル層の厚みに対する、前記鉄−ニッケル拡散層の厚みの比(鉄−ニッケル拡散層の厚み/ニッケル層の厚み)が、0越え、0.08以下、より好ましくは0.0001〜0.05であることが好ましい。
本発明の電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板において、前記ニッケル層の厚みが0.5μm超であることが好ましい。
本発明の電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板において、前記ニッケル層における10gfの荷重で測定されるビッカース硬度(HV)が220超えであることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、上述した電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板からなる電池容器が提供される。
また、本発明によれば、上述した電池容器を備える電池が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、鋼板の電池缶内面となる面上に、ニッケル量で4.4〜26.7g/mのニッケルめっき層を形成するニッケルめっき工程と、前記ニッケルめっき層を形成した鋼板に対して、350℃以上、450℃以下の温度で30秒〜2分の間保持することにより熱処理を施し、最表層を構成する熱処理工程と、を有する電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、皮膜の硬質化により焼き付きを抑制し連続プレス性に優れ、かつ、耐食性にも優れた電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板を提供することができる。また、本発明によれば、このような電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板を用いて得られる電池容器および電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板を適用した電池の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】本発明に係る電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板の一実施形態であって図2のIII部の拡大断面図である。
図4図3に示す電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板を製造する方法を説明するための図である。
図5】鉄−ニッケル拡散層の厚みを測定する方法を説明するための図である。
図6】ニッケル層の表面部分の平均結晶粒径を測定する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態について説明する。本発明に係る電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板は、所望の電池の形状に応じた外形形状に加工される。電池としては、特に限定されないが、一次電池であるアルカリ電池、二次電池であるニッケル水素電池、リチウムイオン電池などを例示することができ、これらの電池の電池容器の部材として、本発明に係る電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板を用いることができる。以下においては、アルカリ電池の電池容器を構成する正極缶に、本発明に係る電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板を用いた実施形態にて、本発明を説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板を適用したアルカリ電池2の一実施形態を示す斜視図、図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。本例のアルカリ電池2は、有底円筒状の正極缶21の内部に、セパレータ25を介して正極合剤23および負極合剤24が充填され、正極缶21の開口部内面側には、負極端子22、集電体26およびガスケット27から構成される封口体がカシメ付けられてなる。なお、正極缶21の底部中央には凸状の正極端子211が形成されている。そして、正極缶21には、絶縁性の付与および意匠性の向上等のために、絶縁リング28を介して外装29が装着されている。
【0016】
図1に示すアルカリ電池2の正極缶21は、本発明に係る電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板を、深絞り加工法、絞りしごき加工法(DI加工法)、絞りストレッチ加工法(DTR加工法)、または絞り加工後ストレッチ加工としごき加工を併用する加工法などにより成形加工することで得られる。以下、図3を参照して、本発明に係る電池缶用ニッケルめっき熱処理鋼板(ニッケルめっき熱処理鋼板1)の構成について説明する。
【0017】
図3は、図2に示す正極缶21のIII部を拡大して示す断面図であり、同図において上側が図1のアルカリ電池2の内面(アルカリ電池2の正極合剤23と接触する面)に相当する。本実施形態のニッケルめっき熱処理鋼板1は、図3に示すように、ニッケルめっき熱処理鋼板1の基材を構成する鋼板11上に、鉄−ニッケル拡散層12およびニッケル層14が形成されてなる。
【0018】
本実施形態のニッケルめっき熱処理鋼板1は、鋼板上に4.4〜26.7g/mのニッケル層を有し、かつ、高周波グロー放電発光分光分析装置によって測定されるD2−D1の差分が0.04μm未満である。これにより、本実施形態のニッケルめっき熱処理鋼板1は、皮膜の硬質化により電池缶へ加工する際の金型への焼き付きを抑制することができるため連続プレス性に優れ、かつ、電池缶加工後の耐食性にも優れたものとなる。
【0019】
<鋼板11>
本実施形態の鋼板11としては、成形加工性に優れているものであればよく特に限定されないが、たとえば、低炭素アルミキルド鋼(炭素量0.01〜0.15重量%)、炭素量が0.003重量%以下の極低炭素鋼、または極低炭素鋼にTiやNbなどを添加してなる非時効性極低炭素鋼を用いることができる。鋼板の厚みは特に限定されないが、好ましくは0.2〜0.5mmである。厚すぎる場合、拡散に必要な熱量が不足し拡散層が十分に形成されない恐れがある。薄すぎる場合、後の電池缶として必要な厚みが確保できない場合や熱の伝わりが早く拡散層の厚みの制御が困難となる恐れがある。
【0020】
本実施形態においては、これらの鋼の熱間圧延板を酸洗して表面のスケール(酸化膜)を除去した後、冷間圧延し、次いで電解洗浄後に、焼鈍、調質圧延したもの、または前記冷間圧延、電解洗浄後、焼鈍をせずに調質圧延を施したものを鋼板11として用いる。
【0021】
<鉄−ニッケル拡散層12、ニッケル層14>
本実施形態のニッケルめっき熱処理鋼板1では、鋼板11上にニッケルめっき層13を形成した後、熱処理を行う。このとき、鋼板11を構成する鉄と、ニッケルめっき層13を構成するニッケルとが熱拡散することにより形成される、鉄とニッケルが相互に拡散している層である鉄−ニッケル拡散層12が形成される。ニッケル層14は、前記熱処理を行った際、ニッケルめっき層13のうち鉄が拡散しなかった表層に近い部分が、熱により再結晶し軟質化した層である。
【0022】
なお、本実施形態においては、後述のようにニッケルめっきおよび熱処理を行うことにより、鉄−ニッケル拡散層12が0.04μm未満と非常に薄く形成される。
【0023】
ニッケルめっき層13は、たとえば、ニッケルめっき浴を用いることで、鋼板11上に形成することができる。ニッケルめっき浴としては、ニッケルめっきで通常用いられているめっき浴、すなわち、ワット浴や、スルファミン酸浴、ほうフッ化物浴、塩化物浴などを用いることができる。たとえば、ニッケルめっき層13は、ワット浴として、硫酸ニッケル200〜350g/L、塩化ニッケル20〜60g/L、ほう酸10〜50g/Lの浴組成のものを用い、pH3.0〜4.8(好ましくはpH3.6〜4.6)、浴温50〜70℃にて、電流密度10〜40A/dm(好ましくは20〜30A/dm)の条件で形成することができる。
【0024】
なお、ニッケルめっき層13としては、硫黄を含む光沢めっきは電池特性の低下のおそれがあるため好ましくないが、硫黄を不可避的不純物量以上含まない無光沢めっきはもちろん、半光沢めっきも本発明においては適用可能である。めっきにより得られる層の硬度は、半光沢めっきは無光沢めっきより硬いものの、本発明における拡散層を形成するための熱処理によって、半光沢めっきの硬度は無光沢めっきと同程度かやや高い程度となるためである。ニッケルめっき層として半光沢めっきを形成する場合には、上記めっき浴に半光沢剤を添加すればよい。半光沢剤としてはめっき後のニッケルめっき層の硫黄が含有されない(例えば蛍光X線での測定において含有率0.05%以下)となる半光沢剤であれば特に限定されないが、例えば、不飽和アルコールのポリオキシ−エチレン付加物等の脂肪族不飽和アルコール、不飽和カルボン酸、ホルムアルデヒド、クマリンなどを用いることが可能である。
【0025】
本実施形態では、図4に示すように、上述したニッケルめっき層13を鋼板11上に形成し、その後、熱処理を行うことで鉄−ニッケル拡散層12およびニッケル層14を形成し、図3に示すようなニッケルめっき熱処理鋼板1を得ることができる。
【0026】
本実施形態においては、熱処理を行う前のニッケルめっき層13のニッケル量は、熱処理によって得られる鉄−ニッケル拡散層12およびニッケル層14に含まれるニッケルの合計量に相当する。
【0027】
熱処理によって得られる鉄−ニッケル拡散層12およびニッケル層14に含まれるニッケルの合計量(熱処理を行う前のニッケルめっき層13のニッケル量)は、4.4〜26.7g/mであればよいが、好ましくは8.9〜26.0g/m、より好ましくは10.0〜25.0g/mである。鉄−ニッケル拡散層12およびニッケル層14に含まれるニッケルの合計量が少なすぎると、ニッケルによる耐食性の向上効果が不十分となり、得られるニッケルめっき熱処理鋼板1を電池容器とした際に、耐食性が低下してしまうとともに硬度が低くなるため連続プレス性が低下する恐れがある。一方、鉄−ニッケル拡散層12およびニッケル層14に含まれるニッケルの合計量が多すぎると、基材の鋼板11との密着性不十分による剥離の恐れがある。また、得られるニッケルめっき熱処理鋼板1を電池容器とした際に、缶壁の厚みが厚くなってしまい、電池容器内部の容積が小さくなってしまう(容積率が低下してしまう。)。鉄−ニッケル拡散層12およびニッケル層14に含まれるニッケルの合計量は、たとえば、ICP分析法にて測定することができる鉄−ニッケル拡散層12およびニッケル層14に含まれるニッケルの合計量(総重量)に基づいて算出する方法により求めることができる。あるいは、鉄−ニッケル拡散層12およびニッケル層14に含まれるニッケルの合計量は、ニッケルめっき層13を形成した後で、熱処理を行う前に、蛍光X線測定を行うことで、ニッケルめっき層13を構成するニッケル原子の付着量を測定し、測定した付着量に基づいて算出する方法によっても求めることができる。
【0028】
熱処理の条件は、ニッケルめっき層13の厚みに応じて、適宜、選択すればよいが、熱処理温度が、好ましくは350℃以上、450℃以下、より好ましくは400〜450℃、さらに好ましくは420〜450℃であり、熱処理における均熱時間が、好ましくは30秒〜2分、より好ましくは30〜100秒、さらに好ましくは45〜90秒である。また、熱処理において、均熱時間に加えて昇温・冷却時間含めた時間は2〜7分が好ましく、より好ましくは3〜5分である。熱処理の方法としては、熱処理温度および熱処理時間を上記範囲に調整しやすいという観点より、連続焼鈍法が好ましい。
【0029】
本発明においては、上述したように熱処理を行うことにより、鋼板11と、ニッケル層14との間に、鉄−ニッケル拡散層12を形成し、ニッケルめっき熱処理鋼板1が、鋼板11上に、下から順に、鉄−ニッケル拡散層12、ニッケル層14を有するような構成(Ni/Fe−Ni/Fe)となる。
【0030】
このとき、後述するように高周波グロー放電発光分光分析装置を用いて、ニッケルめっき熱処理鋼板1について、最表面から鋼板11へ深さ方向にFe強度およびNi強度の変化を連続的に測定することにより求めることができるD2−D1の差分を鉄−ニッケル拡散層12の厚みとみなすことができる。
【0031】
具体的には、まず、高周波グロー放電発光分光分析装置を用いて、ニッケルめっき熱処理鋼板1中のFe強度を、Fe強度が飽和するまで測定し、Fe強度の飽和値を基準として、Fe強度がその飽和値の10%となる深さ(D1)を、ニッケル層14と鉄−ニッケル拡散層12との境界とする。
【0032】
たとえば、実際に作製したニッケルめっき熱処理鋼板1を高周波グロー放電発光分光分析装置により測定した結果の一例を示す図5(A)を参照して説明する。なお、図5(A)では、縦軸がFe強度およびNi強度を示しており、横軸が高周波グロー放電発光分光分析装置によりニッケルめっき熱処理鋼板1の表面から深さ方向に測定した際の測定時間を示す。
【0033】
本実施形態では、まず、Fe強度の測定結果に基づいて、Fe強度の飽和値を求める。Fe強度の飽和値は、Fe強度の時間変化率(Fe強度変化/秒)からもとめる。Fe強度の時間変化率は、測定開始後にFeが検出されると急激に大きくなり極大値を過ぎると減少しほぼゼロ付近で安定する。ほぼゼロ付近で安定した時が飽和値であり、Fe強度の時間変化率は具体的には、0.02(Fe強度/秒)以下の値となった深さ方向の測定時間をFeの強度が飽和したと見なせる。
【0034】
図5(A)に示す例では、Fe強度の飽和値は、測定時間20秒付近の70程度の値となり、Fe強度がその飽和値の10%である7程度になった深さを、ニッケル層14と鉄−ニッケル拡散層12との境界として検知することができる。
【0035】
一方、鉄−ニッケル拡散層12と鋼板11との境界は、次のようにして検知することができる。すなわち、高周波グロー放電発光分光分析装置を用いてニッケルめっき熱処理鋼板1のNi強度を測定した際に、得られたNi強度の変化のグラフから極大値を抽出し、Ni強度が、その極大値を示した後に、その極大値の10%の値となる深さ(D2)を、鉄−ニッケル拡散層12と鋼板11との境界と判断する。たとえば、図5(A)を参照すると、Ni強度の極大値が、測定時間9秒付近の70程度の値であるため、Ni強度がその極大値の10%である7程度になった深さを、鉄−ニッケル拡散層12と鋼板11との境界として検知することができる。
【0036】
そして、本実施形態では、上述したようにして判断した各層の境界に基づいて、鉄−ニッケル拡散層12の厚みを求めることができる。具体的には、高周波グロー放電発光分光分析装置を用いて測定した際に、Fe強度がその飽和値に対して10%の強度となった時点を起点として、Ni強度が、その極大値を示した後に、極大値に対して10%の強度となった時点までの測定時間を算出し、算出した測定時間に基づいて、鉄−ニッケル拡散層12の厚みを求めることができる。
【0037】
なお、測定時間に基づきニッケルめっき熱処理鋼板1の鉄−ニッケル拡散層12の厚みを求める際には、既知のめっき厚を有する熱処理をしていないニッケルめっき鋼板について、予め図5(B)に示すように高周波グロー放電発行分光分析を行い、図5(B)にて鉄−ニッケル拡散層として算出される厚み分を算出し、算出した厚み分を、実際の測定対象であるニッケルめっき熱処理鋼板1の鉄−ニッケル拡散層12の算出時に差し引く必要がある。すなわち、図5(A)のグラフから算出される鉄−ニッケル拡散層12部分の厚み(図5(A)において、Fe強度がその飽和値に対して10%の強度となった時点を起点として、Ni強度が、その極大値を示した後に、極大値に対して10%の強度となった時点までの測定時間を厚みに換算した値)から、同様にして図5(B)のグラフから算出される厚みを差し引くことで、図5(A)のグラフにおける実際の鉄−ニッケル拡散層12の厚みを求めることができる。
本発明においては上記のように既知のめっき厚を有する熱処理をしていないニッケルめっき鋼板について高周波グロー放電発行分光分析を行い鉄−ニッケル拡散層として算出される厚み分を「基準の厚み」とし、D1とD2との差分(D2−D1)は前述のように基準の厚みを差し引いたものを指す。
なお、高周波グロー放電発光分光分析装置における測定上、ニッケルめっき層の厚みの増加に伴い、ニッケルめっき層の測定から算出される基準の厚みが厚くなるため、鉄−ニッケル拡散層を求める際には各々のめっき付着量において基準の厚みを確認するか、めっき付着量の異なる2種類以上の熱処理を行う前のサンプルにて基準の厚みの測定を行い、めっき付着量と基準の厚みとの関係式を求めて算出することが望ましい。
【0038】
また、熱処理をしていないニッケルめっき鋼板を測定することで、深さ時間(高周波グロー放電発光分光分析装置による測定時間)と実際の厚みの関係を求めることが出来ることから、この関係(深さ時間と実際の厚みとの関係を示す関係)を利用して、深さ時間を、実際の測定対象となるニッケルめっき熱処理鋼板1の鉄−ニッケル拡散層12の厚みに換算することができる。
【0039】
なお、このように高周波グロー放電発光分光分析装置により鉄−ニッケル拡散層12の厚みを測定する際には、高周波グロー放電発光分光分析装置の性能や測定条件等に起因して、鉄−ニッケル拡散層12の厚みの検出限界値がある場合がある。たとえば、鋼板11として触針式粗度計にて計測される表面粗度Raが0.05〜3μmである鋼板を用いて作成したニッケルめっき熱処理鋼板1を高周波グロー放電発光分光分析装置の測定径φ5mmで測定した場合、高周波グロー放電発光分光分析装置による厚みの検出可能領域(形状上の検出限界値)は0.04μm程度であり、高周波グロー放電発光分光分析装置により測定した鉄−ニッケル拡散層12の厚みが検出限界値以下である場合には、該鉄−ニッケル拡散層12の厚みは、0μm超、0.04μm未満であるとみなすことができる。すなわち、ニッケルめっき層13を鋼板11上に形成し、その後、熱処理を行うことで鉄−ニッケル拡散層12およびニッケル層14を形成した場合には、高周波グロー放電発光分光分析装置により鉄−ニッケル拡散層12の厚みを測定した際に、検出限界値以下であったとしても、該鉄−ニッケル拡散層12の厚みは、0μm超、0.04μm未満であるとみなすことができる。なお、ニッケルめっき層13を鋼板11上に形成した後、熱処理を施さないでニッケルめっき鋼板を得た場合については、該ニッケルめっき鋼板には、鉄−ニッケル拡散層12が形成されていない(鉄−ニッケル拡散層12の厚みが0である)とみなすことができる。
【0040】
本実施形態では、このようにして高周波グロー放電発光分光分析装置によって測定されるD1とD2との差分(D2−D1)が、0.04μm未満であればよい。なお、鉄−ニッケル拡散層12の厚みの下限は0μm超であればよく、わずかでも鉄−ニッケル拡散層12が形成されていればよい。好ましくは0.0001μm以上、0.04μm未満、より好ましくは0.001μm以上、0.02μm未満である。上述の通り、D2−D1は鋼板11と鉄−ニッケル拡散層12の境目とニッケル層14との境目との深さの差を表す数値であり、この値が小さいことは鉄−ニッケル拡散層が薄いことを意味する。このような構成を有するニッケルめっき熱処理鋼板1としては、たとえば、上述した熱処理を、温度350℃以上、均熱時間30秒以上の条件で行うことで得られるニッケルめっき熱処理鋼板1が挙げられる。
【0041】
本実施形態においては、上述したように、ニッケルめっき熱処理鋼板1について、ニッケル量で4.4〜26.7g/mのニッケルめっき層を形成した後に350〜450℃の温度で30秒〜2分の間保持することにより熱処理を施すことによって、鋼板11上のニッケル層を4.4〜26.7g/mの範囲に制御し、かつD1とD2の差分を0.04μm未満であるニッケルめっき熱処理鋼板を得ることが可能となる。このようなニッケルめっき熱処理鋼板は、電池缶とした際に鉄の溶出抑制が可能となるため耐蝕性に優れ、かつ、表層が硬質であるため電池缶への成形加工の際に焼きつきが生じにくく連続プレス性に優れるものとなる。なお、従来、ニッケルめっき後に熱処理を施し鉄−ニッケル拡散層を形成した表面処理鋼板は、鉄−ニッケル拡散層を形成する際の熱処理条件が高温または長時間であるため、得られる表面処理鋼板は鋼板上に鉄−ニッケル拡散層とその上層に再結晶化が進み硬度が大幅に低下したニッケル層または、前記ニッケル層よりもさらに軟質な鉄−ニッケル拡散層が形成されていた。このように表層の硬度が大幅に低下した鋼板を用いた場合は、電池缶に成形加工するプレスの際に、金型(パンチ)への焼き付きが生じやすく、焼き付きが生じ電池缶が金型から抜けにくくなる場合があった。金型から抜けない場合が増えると生産性が低下してしまうため、このような材料を用いる際には連続プレス性改善のため、熱処理を施さないニッケルめっき鋼板を電池缶に形成する際よりも潤滑剤を多用したり、金型にコーティングを施したり、加工条件の厳密な制御などをする必要があった。一方で、めっき後に熱処理を施さない表面処理鋼板は、皮膜が硬質なため連続プレス性には優れるものの、形成した電池缶は基材である鋼板から地鉄が溶出しやすく、高耐食性確保のためにはニッケルめっきの厚みを厚くする必要があるが、ニッケル厚みの増加はコスト増加や電池内容量の減量につながってしまう。そのため、電池缶用表面処理鋼板の技術においては、電池缶とした際の耐食性と電池缶形成時の連続プレス性向上とを両立させることが困難であった。これに対して、本実施形態によれば、ニッケル量で4.4〜26.7g/mのニッケルめっき層を形成した後に350〜450℃の温度で30秒〜2分の間保持することにより熱処理を施すことによって、鋼板11上のニッケル層を4.4〜26.7g/mの範囲に制御し、かつD1とD2の差分を0.04μm未満と制御することにより、電池缶とした際の耐食性を従来の熱処理条件による表面処理鋼板と同等以上とし、かつ、電池缶形成時の連続プレス性向上をも有する、2特性を高度にバランスさせたニッケルめっき熱処理鋼板1を提供することが可能となるものである。
【0042】
また、従来、ニッケルめっき層および鉄−ニッケル拡散層を備える表面処理鋼板において、電池容器として成形する際の加工密着性を向上させる観点、電池容器の耐食性を向上させる観点、鉄−ニッケル拡散層の密着性を確保する観点などにより、鉄−ニッケル拡散層の厚みを0.5μm以上とする方法が知られていた(たとえば、特開2009−263727号公報の段落0018。)。ここで、このように鉄−ニッケル拡散層の厚みを0.5μm以上とするためには、鋼板にニッケルめっき層を形成した後の熱処理の条件を、長時間あるいは高温とする必要がある。たとえば、熱処理の条件を長時間とする場合には、熱処理温度:400〜600℃、熱処理時間:1〜8時間とする条件が知られている。また、熱処理の条件を高温とする場合には、熱処理温度:700〜800℃、熱処理時間:30秒〜2分とする条件が知られている。このような熱処理条件にて熱処理を施された後のニッケル層は、同程度の厚みの熱処理を施さないニッケルめっき鋼板と比較し、大幅に軟質化、例えば後述のようにビッカース硬度において65以上低下してしまうため、焼き付きが生じやすくなる。一方で、熱処理を施さないニッケルめっき層を有する表面処理鋼板は、硬度は高いが耐食性に極端に劣る。このような状況において、本発明者等は、熱処理を施さないニッケルめっき層を表層に有する場合には、硬度が高いばかりではなく、めっき皮膜中に残存するめっき歪が原因で延性が乏しいために、電池缶形成加工の際にめっき皮膜に発生するクラックが深くなりやすく地鉄まで到達し耐食性が極端に劣っていることを見出した。
【0043】
これに対し、本実施形態によれば、ニッケルめっき熱処理鋼板1について、鋼板上に4.4〜26.7g/mのニッケル層を有しD1とD2との差分を0.04μm未満と比較的薄いものと制御することにより、電池缶とした際に鉄の溶出抑制が可能となるため耐蝕性に優れ、かつ、表層が硬質であるため電池缶への成形加工の際に焼きつきが生じにくく連続プレス性に優れるものとなる。本実施形態においては、上記構成とするために熱処理が施されるためめっき歪が低減しニッケルめっきの延性が改善するが、これにより、後述の電池缶へ成形加工する際において、成形加工の応力により、ニッケルめっき熱処理鋼板1の最表層のニッケル層14が引き延ばされ、ニッケルが、ニッケルめっき熱処理鋼板1の表面に露出した鉄を覆う効果を得ることが可能となる。また、上記構成となるような熱処理条件にて得られたニッケル層14は硬度の低下が65未満となるため焼き付きが生じにくくなる。
【0044】
上述のような効果は、元の板厚(ニッケルめっき熱処理鋼板1の厚み)に対し、減厚が10%以下であるような加工(例えば絞り加工など)を行う際に、特に発揮される。
【0045】
また、本実施形態では、ニッケル層14の厚みは、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.2μm以上、特に好ましくは1.5μm以上である。また、ニッケル層14の厚みの上限は、特に限定されないが、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは2.8μm以下である。
【0046】
鉄−ニッケル拡散層12の厚みに対して、ニッケル層14の厚みが、比較的厚くなるように制御することにより、ニッケルめっき熱処理鋼板1を電池容器として用いた場合に、電池容器の耐食性を、さらに向上させることができる。すなわち、熱処理後のニッケルめっき熱処理鋼板1については、電池容器内面に鉄が露出し、かつ、局所的に露出する部分が現れる場合がある。これに対し、本実施形態においては、加工に最適な熱処理を実施することで、ニッケルめっき熱処理鋼板1を、深絞り加工法、絞りしごき加工法(DI加工法)、絞りストレッチ加工法(DTR加工法)、または絞り加工後ストレッチ加工としごき加工を併用する加工法などにより成形加工する際において、成形加工の応力により、ニッケルめっき熱処理鋼板1の最表層のニッケル層14が引き延ばされ、ニッケルが、ニッケルめっき熱処理鋼板1の表面に露出した鉄を覆うこととなり、結果として、得られる電池容器の耐食性を、さらに向上させることが可能となる。特に、本実施形態においては、上述したように、鉄−ニッケル拡散層12の厚みが0.04μm未満と非常に薄いものとするものであるため、鉄−ニッケル拡散層12の厚みに対して、ニッケル層14の厚みが非常に厚いものとなる。そのため、得られるニッケルめっき熱処理鋼板1は、上述したニッケル層14の作用による効果、すなわち、成形加工の応力により、ニッケルめっき熱処理鋼板1の最表層のニッケル層14が引き延ばされ、ニッケルが、ニッケルめっき熱処理鋼板1の表面に露出した鉄を覆うことで耐食性を向上させる効果が、より顕著なものとなる。
【0047】
熱処理後のニッケル層14の厚みは、上述した高周波グロー放電発光分光分析装置を用いた測定により、ニッケル層14と鉄−ニッケル拡散層12との境界を検知することで求めることができる。すなわち、高周波グロー放電発光分光分析装置によりニッケルめっき熱処理鋼板1の表面の測定を開始した時点を起点として、Fe強度がその飽和値に対して10%の強度となった時点までの測定時間を算出し、算出した測定時間に基づいて、ニッケル層14の厚みを求めることができる。本実施形態においては、高周波グロー放電発光分光分析装置により、鉄−ニッケル拡散層12の厚みおよびニッケル層14の厚みを測定することにより、得られた測定結果を用いて、(鉄−ニッケル拡散層12の厚み/ニッケル層14の厚み)の比を求めることができる。
【0048】
また、本実施形態では、熱処理後のニッケル層14は、表面部分の平均結晶粒径が、好ましくは0.1〜0.4μm、より好ましくは0.2〜0.4μmである。本実施形態では、ニッケル層14の表面部分の平均結晶粒径は特に限定されるものではないが、平均結晶粒径が小さすぎると、めっき応力が内在したままとなってしまい、この際には、電池容器として成形加工する際に、ニッケルめっき熱処理鋼板1に、鋼板11まで達する深いひび割れが生じ、鋼板11の鉄が露出してしまう場合がある。この場合には、鋼板11の露出した部分から鉄が溶出し、鉄の溶出に伴って発生するガスにより電池内部の内圧が上昇してしまうおそれがある。一方、上述したように、ニッケルめっき熱処理鋼板1に鋼板11まで達するひび割れが発生してしまうと不具合が発生してしまうが、電池容器の電池特性を向上させるという観点より、ニッケルめっき熱処理鋼板1の電池容器の内面側には、微細なひび割れが発生していた方が好ましい。この点について、ニッケル層14の表面部分の平均結晶粒径が大きすぎると、ニッケル層14の硬度が低くなりすぎてしまう場合があり(ニッケル層14が軟化しすぎてしまい)、この場合には、電池缶に成形加工する際に焼き付きが生じやすく、結果、金型から抜けにくくなる恐れがある。また、ニッケルめっき熱処理鋼板1を電池容器として成形加工する際に、電池容器内面に微細なひび割れを発生させることができないため、電池特性を向上させる効果、すなわち、ひび割れによって電池容器と正極合剤との接触面積を増大させ、電池の内部抵抗を低下させて電池特性を向上させる効果が、十分に得られなくなってしまうおそれがある。
【0049】
なお、ニッケル層14の表面部分の平均結晶粒径は、熱処理における熱処理温度が高いほど、大きくなる傾向にあるが、本発明者等は、平均結晶粒径の大きさは温度範囲によって段階的に大きくなることを見出した。熱処理を施さないものに対し、低温、例えば300℃であっても熱処理を施したものは結晶粒が大きくなる。熱処理温度を400〜600℃の間とした場合には、温度が高くなるほど結晶粒径が少し大きくなるが、温度による結晶粒径の大きさの差はあまり大きくない。熱処理温度が700℃を超えると急激に平均結晶粒径が大きくなる。そのため、熱処理の熱処理温度を制御することにより、ニッケル層14の表面部分の平均結晶粒径を調整することができる。
【0050】
本実施形態では、ニッケル層14の表面部分の平均結晶粒径は、たとえば、ニッケルめっき熱処理鋼板1の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定し、得られた反射電子像を用いて求めることができる。
【0051】
具体的には、まず、ニッケルめっき熱処理鋼板1の表面を必要に応じてエッチングした後、たとえば図6に示すように、ニッケルめっき熱処理鋼板1の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定する。なお、図6は、実際に作製したニッケルめっき熱処理鋼板1を、倍率10,000倍で測定して得られた反射電子像を示す画像の一例である。そして、得られた反射電子像に、長さ10μmの長さの直線を任意の本数(たとえば四本)引く。そして、直線毎に、直線上に位置する結晶粒の数nに基づいて、結晶粒径dを、d=10/(n+1)の式により求め、それぞれの直線について求めた結晶粒径dの平均値を、ニッケルめっき層13の表面部分の平均結晶粒径とすることができる。
【0052】
また、本実施形態では、熱処理後のニッケル層14の表面硬度は、10gfの荷重で測定されるビッカース硬度(HV)で、下限は、好ましくは220超え、より好ましくは250以上である。上限は、ニッケルめっき厚により異なるが、好ましくは310以下である。熱処理後のニッケル層14の表面硬度を上記範囲とすることにより、得られるニッケルめっき熱処理鋼板1を電池容器に加工する際の加工性がより向上するとともに、電池容器に成形加工する際の金型への焼き付きの抑制効果もより高めることが可能となる。
【0053】
本実施形態においては、ニッケルめっき熱処理鋼板1について、鉄−ニッケル拡散層12の厚みと、鉄−ニッケル拡散層およびニッケル層に含まれるニッケルの合計量とを、それぞれ上記範囲に制御する方法としては、上述した条件で熱処理を行う方法が挙げられる。すなわち、鋼板11にニッケルめっき層13を形成した後、熱処理温度350℃以上、450℃未満、熱処理時間30秒〜2分の条件で、熱処理を行う方法が挙げられる。
【0054】
なお、鉄−ニッケル拡散層12の厚みは、熱処理における熱処理温度が高いほど、および熱処理時間が長いほど、厚くなる傾向にある。そのため、熱処理の熱処理温度および熱処理時間を制御することにより、鉄−ニッケル拡散層12の厚み、および(鉄−ニッケル拡散層12の厚み/ニッケル層14の厚み)の比を調整することができる。ただし熱処理温度300℃以下では鉄−ニッケル拡散層は形成され難いため、鉄−ニッケル拡散層12の厚み、および(鉄−ニッケル拡散層12の厚み/ニッケル層14の厚み)の比を上記範囲に制御する観点より、350℃以上で熱処理を行うことが好ましい。
【0055】
本実施形態のニッケルめっき熱処理鋼板1は、以上のようにして構成される。
【0056】
本実施形態のニッケルめっき熱処理鋼板1は、深絞り加工法、絞りしごき加工法(DI加工法)、絞りストレッチ加工法(DTR加工法)、または絞り加工後ストレッチ加工としごき加工を併用する加工法などにより、図1,2に示すアルカリ電池2の正極缶21や、その他の電池の電池容器などに成形加工されて用いられる。
【0057】
<ニッケルめっき熱処理鋼板1の製造方法>
次いで、本実施形態のニッケルめっき熱処理鋼板1の製造方法について、説明する。
【0058】
まず、鋼板11を準備し、上述したように、鋼板11に対してニッケルめっきを施すことにより、鋼板11の電池容器内面となる面にニッケルめっき層13を形成する。なお、ニッケルめっき層13は、鋼板11の電池容器内面となる面だけでなく、反対の面にも形成されることが好ましい。ニッケルめっき層13を鋼板11の両面に形成する際には、鋼板11における電池容器の内面となる面と、電池容器の外面となる面とに、別々の組成のめっき浴を用いて、組成や表面粗度などが異なるニッケルめっき層13をそれぞれ形成してもよいが、製造効率を向上させる観点より、鋼板11の両面に、同じめっき浴を用いて1工程でニッケルめっき層13を形成することが好ましい。
【0059】
次いで、ニッケルめっき層13を形成した鋼板11に対して、上述した条件で熱処理を行うことにより、鋼板11を構成する鉄と、ニッケルめっき層13を構成するニッケルとを熱拡散させ、鉄−ニッケル拡散層12およびニッケル層14を形成する。これにより、図3に示すようなニッケルめっき熱処理鋼板1が得られる。
【0060】
なお、本実施形態では、得られたニッケルめっき熱処理鋼板1に対して、調質圧延を行ってもよい。これにより、ニッケルめっき熱処理鋼板1の電池容器の内面となる面の表面粗度を調整することができ、ニッケルめっき熱処理鋼板1を電池容器として用いた際に、電池容器と正極合剤との接触面積を増大させ、電池の内部抵抗を低下させることができ、電池特性を向上させることができる。
【0061】
以上のようにして、本実施形態のニッケルめっき熱処理鋼板1は製造される。
【0062】
本実施形態のニッケルめっき熱処理鋼板1では、上述したように、鉄−ニッケル拡散層12の厚みを0μm超、0.04μm未満と比較的薄いものとし、かつ、鉄−ニッケル拡散層およびニッケル層に含まれるニッケルの合計量を4.4〜26.7g/mの範囲に制御することにより、このニッケルめっき熱処理鋼板1を用いて作製されるアルカリ電池2について、ニッケル層14の作用による効果、すなわち、ニッケルめっき熱処理鋼板1を電池容器に成形加工する際の応力により、ニッケルめっき熱処理鋼板1の最表層のニッケル層14が引き延ばされ、ニッケルが、ニッケルめっき熱処理鋼板1の表面に露出した鉄を覆うことで耐食性を向上させる効果が、より顕著なものとなり、これにより、長期間にわたって保管ないし使用した場合においてもガス発生を有効に防止することでき、これにより、ガス発生に起因して電池内部の内圧が上昇してしまうことを防止することができる。さらには、上述したように、ニッケル層14の厚みを好ましくは0.5μm超とすることにより、ニッケルめっき熱処理鋼板1を電池容器に用いた際の耐食性がより向上し、このような電池内部のガス発生およびこれに起因する内圧の上昇を、より有効に防止することができる。したがって、本実施形態のニッケルめっき熱処理鋼板1は、たとえば、アルカリ電池、ニッケル水素電池などのアルカリ性の電解液を用いる電池や、リチウムイオン電池などの電池容器として好適に用いることができる。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0064】
《実施例1》
原板として、下記に示す化学組成を有する低炭素アルミキルド鋼の冷間圧延板(厚さ0.25mm)を焼鈍して得られた鋼板11を準備した。
C:0.045重量%、Mn:0.23重量%、Si:0.02重量%、P:0.012重量%、S:0.009重量%、Al:0.063重量%、N:0.0036重量%、残部:Feおよび不可避的不純物
【0065】
そして、準備した鋼板11について、アルカリ電解脱脂、硫酸浸漬の酸洗を行った後、下記条件にて電解めっきを行い、鋼板11上に、厚さが2μmとなるようにニッケルめっき層13を形成した。なお、ニッケルめっき層13の厚みは、蛍光X線測定により、その付着量を求め、求めた付着量から算出した。結果を表1に示す。
浴組成:硫酸ニッケル250g/L、塩化ニッケル45g/L、ホウ酸45g/L
pH:3.5〜4.5
浴温:60℃
電流密度:20A/dm
通電時間:32秒
【0066】
次いで、ニッケルめっき層13を形成した鋼板11に対して、連続焼鈍により、熱処理温度350℃、熱処理時間30秒、還元雰囲気の条件で熱処理を行なうことにより、鉄−ニッケル拡散層12およびニッケル層14を形成し、ニッケルめっき熱処理鋼板1を得た。
【0067】
次いで、得られたニッケルめっき熱処理鋼板1に対して、伸び率1%の条件下にて調質圧延を行った。
【0068】
そして、調質圧延後のニッケルめっき熱処理鋼板1を用いて、下記の方法に従い、鉄−ニッケル拡散層12およびニッケル層14の厚みの測定を行った。
【0069】
<鉄−ニッケル拡散層12およびニッケル層14の厚みの測定>
ニッケルめっき熱処理鋼板1について、高周波グロー放電発光分光分析装置を用いて、最表面から鋼板11へ深さ方向にFe強度およびNi強度の変化を連続的に測定し、Fe強度がその飽和値に対して10%の強度となった時点を起点として、Ni強度が、その極大値を示した後に、極大値に対して10%の強度となった時点までの測定時間を算出し、算出した測定時間に基づいて、鉄−ニッケル拡散層12の厚みを求めた。なお、鉄−ニッケル拡散層12の厚みを求める際には、まず、後述する熱処理をしていないニッケルめっき鋼板(比較例2)の高周波グロー放電発行分光分析を行った結果について、鉄−ニッケル拡散層として測定される厚み分において、Fe強度がその飽和値に対して10%の強度となった時点を起点として、Ni強度が、その極大値を示した後に、極大値に対して10%の強度となった時点までの測定時間を厚みに換算した値)を、基準の厚みとして測定した。なお、基準の厚みは0.55μmであった。そして、この基準の厚み分を、実施例1のニッケルめっき熱処理鋼板1の鉄−ニッケル拡散層12部分の厚み(Fe強度がその飽和値に対して10%の強度となった時点を起点として、Ni強度が、その極大値を示した後に、極大値に対して10%の強度となった時点までの測定時間を厚みに換算した値)から差し引くことで、実施例1における、実際の鉄−ニッケル拡散層12の厚みを求めた。なお、実施例1においては、鉄−ニッケル拡散層12の厚みが、高周波グロー放電発光分光分析装置による検出可能領域(0.04μm)以下であったため、鉄−ニッケル拡散層12の厚みは、0μm超、0.04μm未満であるとみなした(後述する実施例2〜4、比較例3についても同様)。また、ニッケル層14については、高周波グロー放電発光分光分析装置によりニッケルめっき熱処理鋼板1の表面の測定を開始した時点を起点として、Fe強度がその飽和値に対して10%の強度となった時点までの測定時間を算出し、算出した測定時間に基づいて、ニッケル層14の厚みを求めた。そして、測定した結果に基づいて、ニッケル層14の厚みに対する、鉄−ニッケル拡散層12の厚みの比(鉄−ニッケル拡散層12の厚み/ニッケル層14の厚み)を求めた。結果を表1に示す。なお、表1中においては、(鉄−ニッケル拡散層12の厚み/ニッケル層14の厚み)の比を、「厚み比率Fe−Ni/Ni」と記載した。実施例1では、鉄−ニッケル拡散層12の厚みを、0μm超、0.04μm未満とみなしたため、表1において、「厚み比率Fe−Ni/Ni」を「0<」とした(後述する実施例2〜7についても同様)。
なお、高周波グロー放電発光分光分析装置における測定上、ニッケルめっき層の厚みの増加に伴い、ニッケルめっき層の測定から算出される基準の厚みが厚くなるため、鉄−ニッケル拡散層を求める際には各々のめっき付着量において基準の厚みを確認するか、めっき付着量の異なる2種類以上の熱処理を行う前のサンプルにて基準の厚みの測定を行い、めっき付着量と基準の厚みとの関係式を求めて算出することが望ましい。
なお、後述の実施例5〜7、比較例5〜7において、鉄−ニッケル拡散層の算出時に用いる基準の厚みは後述する比較例1から算出される基準の厚みを用いた。
【0070】
《実施例2〜7》
ニッケルめっき層13のめっき付着量、ニッケルめっき層13を形成した鋼板11に対する連続焼鈍の条件(熱処理条件)を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に、ニッケルめっき熱処理鋼板1を得て、同様に測定を行った。結果を表1に示す。
【0071】
《比較例1》
ニッケルめっき層13の狙いめっき付着量を17.8g/mから8.9g/mに変更し、また、ニッケルめっき層13を形成した後に連続焼鈍および調質圧延をいずれも行わなかった以外は、実施例1と同様の条件にて、ニッケルめっき鋼板を作製した。作製したニッケルめっき鋼板について、ニッケルめっき層13の厚みを、ニッケル層14の厚みとして求めた。結果を表1に示す。
【0072】
《比較例2》
ニッケルめっき層13を形成した後に連続焼鈍および調質圧延をいずれも行わなかった以外は、実施例1と同様の条件にて、ニッケルめっき鋼板を作製した。作製したニッケルめっき鋼板について、ニッケルめっき層13の厚みを、ニッケル層14の厚みとして求めた。結果を表1に示す。
【0073】
《比較例3〜7》
ニッケルめっき層13の厚み、およびニッケルめっき層13を形成した鋼板11に対する連続焼鈍の条件(熱処理条件)を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に、ニッケルめっき熱処理鋼板1を得て、同様に測定を行った。結果を表1に示す。
【0074】
《参考例1》
ニッケルめっき層13の狙いめっき付着量を17.8g/mから10.7g/mに変更し、また、ニッケルめっき層13を形成した後に連続焼鈍および調質圧延をいずれも行わなかった以外は、実施例1と同様の条件にて、ニッケルめっき鋼板を作製した。そして、作製したニッケルめっき鋼板について、上述したように、高周波グロー放電発行分光分析により測定を行い、図5(B)に示す測定結果を得て、鉄−ニッケル拡散層として測定される厚み分(図5(B)において、Fe強度がその飽和値に対して10%の強度となった時点を起点として、Ni強度が、その極大値を示した後に、極大値に対して10%の強度となった時点までの測定時間を厚みに換算した値)を、基準の厚みとして測定した。結果を表1および図5(B)に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
次いで、実施例2,3,5,7および比較例4〜7のニッケルめっき熱処理鋼板1、ならびに比較例1,2のニッケルめっき鋼板について、下記の方法にしたがい、電池容器に成形した場合における、電池容器の耐食性の評価、および表面硬度の測定を行った。
【0077】
<耐食性評価>
ニッケルめっき熱処理鋼板1をプレス機で所定形状に打ち抜くことでブランクを作製し、ニッケル層14が内面側となるように、下記条件にて絞り加工を行うことで、電池容器を作製した。すなわち、所定のクリアランスを有する絞りダイスまたはしごきダイスを6段配置してなる絞り兼しごき機と、パンチとを用いて、ブランクに対して絞りしごき加工を行うことで筒状体を得て、得られた筒状体の開口部付近の耳部を切断することにより、電池容器を得た。
次いで、得られた電池容器について、10mol/Lの水酸化カリウムの溶液を充填して密封し、60℃、480時間の条件で保持した後、電池容器の内面から溶液中に溶出したFeイオンの溶出量を、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP)(島津製作所製 ICPE−9000)により測定し、以下の基準で評価した。以下の基準においては、評価がAまたはBであれば、電池容器の内面からの鉄の溶出が十分に抑制されていると判断した。結果を表2,3に示す。
A:Feイオンの溶出量が30mg/L以下
B:Feイオンの溶出量が30mg/L超え、35mg/L以下
C:Feイオンの溶出量が35mg/L超え
【0078】
<表面硬度の測定>
ニッケルめっき熱処理鋼板1のニッケル層14(または、ニッケルめっき鋼板のニッケルめっき層13)について、微小硬度計(明石製作所社製、型番:MVK−G2)により、ダイヤモンド圧子を用いて、荷重:10gf、保持時間:10秒の条件でビッカース硬度(HV)を測定することにより、表面硬度の測定を行い、以下の基準で評価した。以下の基準においては、評価がA+、AまたはBであれば、十分な硬度を有し、電池容器に加工する際の加工性(電池容器として成形加工する際に、電池容器内面に微細なひび割れを適度に発生させることができること)および金型への焼き付きの抑制効果に優れたものであると判断した。結果を表2,3に示す。
A+:280以上
A:250超え、280未満
B:220超え、250以下
C:220以下
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
表2に示すように、鉄−ニッケル拡散層12の厚みが0μm超、0.04μm未満であり、かつ、鉄−ニッケル拡散層およびニッケル層に含まれるニッケルの合計量が4.4〜26.7g/mである実施例2,3は、いずれも、耐食性に優れるという結果であった。さらに、実施例2,3は、いずれも、十分な硬度を有しているため、得られるニッケルめっき熱処理鋼板1を電池容器に加工する際における、加工性および金型への焼き付きの抑制効果が、いずれも優れるものであると考えられる。
【0082】
一方、表2に示すように、熱処理を行わなかった比較例1,2は、耐食性に劣るという結果であり、しかも、熱処理を行わなかったことで鉄−ニッケル拡散層12が形成されていないため、鋼板11とニッケルめっき層13との密着性に劣ると考えられる。
また、熱処理を行った場合であっても、過剰な熱処理により、鉄−ニッケル拡散層12の厚みが厚くなりすぎた場合には、比較例4,7のように、耐食性の結果は優れるものの、硬度が低すぎるものであり、これにより、得られるニッケルめっき熱処理鋼板1を電池容器に加工する際における加工性および金型への焼き付きの抑制効果に劣るものであると考えられる。
【0083】
また、表3に示すように、鉄−ニッケル拡散層12の厚みが0μm超、0.04μm未満であり、かつ、鉄−ニッケル拡散層およびニッケル層に含まれるニッケルの合計量が4.4〜26.7g/mである実施例5,7は、いずれも、耐食性に優れるという結果であった。さらに、実施例5,7は、いずれも、十分な硬度を有しているため、得られるニッケルめっき熱処理鋼板1を電池容器に加工する際における、加工性および金型への焼き付きの抑制効果が、いずれも優れるものであると考えられる。
【0084】
一方、表3に示すように、熱処理を行わなかった比較例1,2は、耐食性に劣るという結果であり、しかも、熱処理を行わなかったことで鉄−ニッケル拡散層12が形成されていないため、鋼板11とニッケルめっき層13との密着性に劣ると考えられる。
また、熱処理を行った場合であっても、過剰な熱処理により、鉄−ニッケル拡散層12の厚みが厚くなりすぎた場合には、比較例5,6のように、耐食性の結果は優れるものの、硬度が低すぎるものであり、これにより、得られるニッケルめっき熱処理鋼板1を電池容器に加工する際における加工性および金型への焼き付きの抑制効果に劣るものであると考えられる。
【符号の説明】
【0085】
1…表面処理鋼板
11…鋼板
12…鉄−ニッケル拡散層
13…ニッケルめっき層
14…ニッケル層
2…アルカリ電池
21…正極缶
211…正極端子
22…負極端子
23…正極合剤
24…負極合剤
25…セパレータ
26…集電体
27…ガスケット
28…絶縁リング
29…外装
図1
図2
図3
図4
図5
図6