(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0013】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ジカルボン酸由来の構成単位とジアミン由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数9〜18の脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂25.0〜59.95重量%と、ガラス繊維40〜70重量%と、光透過性色素を含むポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂組成物は、ISO13468−1およびISO13468−2に従って測定した波長800nmにおける光線透過率が48%以上であり、波長1064nmにおける光線透過率が55%以上であることを特徴とする。
このような構成とすることにより、光線透過率の高く、レーザー溶着性に優れた成形品が得られる。このように、光線透過率が高く、レーザー溶着性に優れた成形品は、レーザー溶着の際の、透過樹脂部材として好ましく用いられる。
ここで、上記ポリアミド樹脂組成物の、ISO13468−1およびISO13468−2に従って測定した光線透過率とは、ポリアミド樹脂組成物の成形品であって、厚さが1mmのもののISO13468−1およびISO13468−2に従って測定した光線透過率をいい、具体的には、後述する実施例に記載の方法に従う。尚、実施例に記載の測定機器等が廃版等で入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を使用することができる。
上記ポリアミド樹脂組成物のISO13468−1およびISO13468−2に従って測定した光線透過率は、好ましくは、波長800nmにおける光線透過率が50%以上であり、波長1064nmにおける光線透過率が58%以上であり、より好ましくは、波長800nmにおける光線透過率が55%以上であり、波長1064nmにおける光線透過率が60%以上である。これらの光線透過率の上限値は、特に定めるものではないが、波長800nmにおける光線透過率が65%以下、さらには60%以下、また、波長1064nmにおける光線透過率が70%以下、さらには65%以下でも本発明の効果を奏する。
また、上記ポリアミド樹脂組成物のISO13468−1およびISO13468−2に従って測定した波長940nmの光線透過率は、好ましくはゲート側および反ゲート側の光線透過率の両方が55%以上である。上限値は特に定めるものではないが、例えば、70%以下でも十分に本発明の効果を奏する。
【0014】
<ポリアミド樹脂>
本発明で必須成分として用いられるポリアミド樹脂(以下、「特定ポリアミド樹脂」ということがある)は、ジカルボン酸由来の構成単位とジアミン由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数9〜18の脂肪族ジカルボン酸に由来する。
ここで、ジカルボン酸由来の構成単位と、ジアミン由来の構成単位から構成されるとは、特定ポリアミド樹脂を構成するアミド結合がジカルボン酸とジアミンの結合によって形成されていることをいう。従って、特定ポリアミド樹脂には、ジカルボン酸由来の構成単位と、ジアミン由来の構成単位以外の構成単位や、末端基等の他の部位を含みうる。さらに、微量の添加剤や不純物等が含まれる場合もあるであろう。本発明で用いるポリアミド樹脂は、その95重量%以上が、ジカルボン酸由来の構成単位またはジアミン由来の構成単位であることが好ましい。
【0015】
特定ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上がキシリレンジアミンに由来する。
キシリレンジアミンは、メタキシリレンジアミンであっても、パラキシリレンジアミンであっても、両者の混合物であってもよいが、少なくとも、パラキシリレンジアミンを含むことが好ましい。
さらには、特定ポリアミド樹脂では、ジアミン由来の構成単位の30〜100モル%がパラキシリレンジアミンに由来することが好ましく、50〜100モル%がパラキシリレンジアミンに由来することがより好ましく、50〜90モル%がパラキシリレンジアミンに由来することがさらに好ましく、55〜80モル%がパラキシリレンジアミンに由来することが一層好ましい。残りのジアミン成分に由来する構成単位は、0〜70モル%がメタキシリレンジアミンに由来することが好ましく、0〜50モル%がメタキシリレンジアミンに由来することがより好ましく、10〜50モル%がメタキシリレンジアミンに由来することがさらに好ましく、20〜45モル%がメタキシリレンジアミンに由来することが一層好ましい。
【0016】
キシリレンジアミン以外のジアミンは、芳香族ジアミンでも、脂肪族ジアミンでもよい。 直鎖または分岐脂肪族ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
また、脂環式ジアミンとしては、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカンが挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレンが挙げられる。
特定ポリアミド樹脂において、ジアミンは、1種類のみでもよいし、2種類以上であってもよい。
【0017】
特定ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数9〜18の脂肪族ジカルボン酸に由来し、好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。
炭素数9〜18の脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数9〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸であっても、炭素数9〜18の環状構造を含む脂肪族ジカルボン酸であってもよい。本発明では、炭素数9〜18の脂肪族ジカルボン酸は、炭素数9〜18のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸であることがより好ましく、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸がさらに好ましく、セバシン酸が特に好ましい。 炭素数9〜18の脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸が好ましい。具体的には、例えば、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、スベリン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸が例示される。
特定ポリアミド樹脂において、ジカルボン酸は、1種類のみでもよいし、2種類以上であってもよい。
【0018】
特定ポリアミド樹脂としては、具体的には、特開2014−145004号公報に記載のポリアミド樹脂であって、特定ポリアミド樹脂に相当するものが例示され、メタ/パラ混合キシリレンセバサミド(ポリアミドMP10)、パラキシリレンセバサミド(ポリアミドPXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド等が好ましい。本発明においては、これらポリアミドホモポリマーもしくはコポリマーを、各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0019】
特定ポリアミド樹脂のガラス転移点は、40〜180℃であることが好ましく、60〜130℃であることがより好ましい。
特定ポリアミド樹脂の数平均分子量は、5000〜45000であることが好ましく、10000〜25000であることがより好ましい。
特定ポリアミド樹脂の融点は、170℃以上であることが好ましく、180〜300℃であることがより好ましい。
【0020】
特定ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基濃度は50〜200μ当量/gが好ましく、60〜150μ当量/gがより好ましい。
【0021】
本発明のポリアミド樹脂組成物における、特定ポリアミド樹脂の含有量は、25.0重量%以上であり、29.95重量%以上が好ましく、35.0重量%以上がさらに好ましく、40.0重量%以上とすることもできる。また、59.95重量%以下が好ましく、54.95重量%以下がより好ましく、50重量%未満がさらに好ましく、49.95重量%以下が一層好ましい。このような範囲とすることにより、本発明のポリアミド樹脂組成物の機械的強度がより向上する傾向にある。特定ポリアミド樹脂は、1種類のみでもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0022】
<他のポリアミド樹脂>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、特定ポリアミド樹脂以外の他のポリアミド樹脂を含んでいても良い。
他のポリアミド樹脂の例としては、ラクタムの重縮合物、ジアミンと炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸との重縮合物、ジアミンと芳香族ジカルボン酸との重縮合物、ω−アミノカルボン酸の重縮合物等の各種ポリアミド樹脂、または、これらの共重合ポリアミド樹脂が例示される。
【0023】
ポリアミド樹脂の重縮合の原料であるラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられる。
ジアミンとしては、特定のポリアミド樹脂で述べたジアミンが例示される。
炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸等が例示される。
ジアミンと炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸との重縮合物の具体例としては、ジカルボン酸由来の構成単位とジアミン由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂が例示される。
本発明のポリアミド樹脂組成物に、他のポリアミド樹脂を配合する場合、その含有量は、本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂全量の0.5〜50重量%が好ましい。本発明では後述するとおり、光透過性色素をマスターバッチとして配合することが好ましいが、この場合の、他のポリアミド樹脂の配合量は、0.5〜5重量%が好ましく、0.8〜3重量%がより好ましい。
【0024】
<他の樹脂成分>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂以外の他の樹脂成分を含んでいても良い。
他の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂以外の樹脂成分を実質的に配合しない構成としてもよく、例えば、ポリアミド樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量の5重量%以下、さらには、1重量%以下、特には、0.4重量%以下とすることもできる。
【0025】
<ガラス繊維>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ガラス繊維を含む。
ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Sガラスなどのガラス組成からなり、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
【0026】
本発明のポリアミド樹脂組成物に用いるガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものでもよい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取った「ガラスロービング」、長さ1〜10mmに切りそろえた「チョップドストランド」、長さ10〜500μm程度に粉砕した「ミルドファイバー」などのいずれでもよい。かかるガラス繊維としては、旭ファイバーグラス社より、「グラスロンチョップドストランド」や「グラスロンミルドファイバー」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
【0027】
また、本発明ではガラス繊維として、異形断面形状を有するものも好ましい。この異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径をD2、短径をD1とするときの長径/短径比(D2/D1)で示される扁平率が、例えば、1.5〜10であり、中でも2.5〜10、さらには2.5〜8、特に2.5〜5であることが好ましい。かかる扁平ガラスについては、特開2011−195820号公報の段落番号0065〜0072の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0028】
本発明におけるガラス繊維は、ガラスビーズであってもよい。ガラスビーズとは、外径10〜100μmの球状のものであり、例えば、ポッターズ・バロティーニ社より、商品名「EGB731」として市販されており、容易に入手可能である。また、ガラスフレークとは、厚さ1〜20μm、一辺の長さが0.05〜1mmの燐片状のものであり、例えば、日本板硝子社より、「フレカ」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。
【0029】
本発明で用いるガラス繊維は、特に、重量平均繊維径が1〜20μm、カット長が1〜10mmのガラス繊維が好ましい。ここで、ガラス繊維の断面が扁平の場合、重量平均繊維径は、同じ面積の円における重量平均繊維径として算出する。
本発明で用いるガラス繊維は、集束剤で集束されていてもよい。この場合の集束剤としては、酸系集束剤が好ましい。
【0030】
本発明のポリアミド樹脂組成物におけるガラス繊維の含有量は、ポリアミド樹脂組成物のガラス繊維40重量%以上70重量%以下であり、ポリアミド樹脂組成物の45重量%以上であることが好ましい。上限値については、65重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましく、55重量%以下がさらに好ましい。本発明のポリアミド樹脂組成物は、ガラス繊維を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明では、ガラス繊維の配合量を40重量%以上とすることにより、波長940nmにおける光線透過率をより向上させることができる。一般的なポリアミド樹脂では、ガラス繊維の配合量が少ない方が、光線透過率が高くなる傾向にあるが、本発明で用いるポリアミド樹脂組成物では、ガラス繊維の配合量が多い方が、光線透過率が高くなるという異質の効果を有する。
【0031】
<光透過性色素>
本発明で用いる光透過性色素は、本発明の組成物がISO13468−1およびISO13468−2に従って測定した波長800nmにおける光線透過率が48%以上であり、波長1064nmにおける光線透過率が55%以上となるように配合される。好ましくは、波長800nmにおける光線透過率が50%以上であり、波長1064nmにおける光線透過率が58%以上となるように配合され、より好ましくは、波長800nmにおける光線透過率が55%以上であり、波長1064nmにおける光線透過率が60%以上となるように配合される。これらの光線透過率の上限値は、特に定めるものではないが、波長800nmにおける光線透過率が65%以下、さらには60%以下、また、波長1064nmにおける光線透過率が70%以下、さらには65%以下でも本発明の効果を奏する。
また、本発明の組成物は、波長800nmおよび波長1064nmにおける反射率が、それぞれ、5%以上13%未満であることが好ましい。
本発明で用いる光透過性色素は、通常、上記特性を満たす黒色色素であり、具体的には、ニグロシン、ナフタロシアニン、アニリンブラック、フタロシアニン、ポルフィリン、ペリレン、クオテリレン、アゾ染料、アントラキノン、スクエア酸誘導体、およびインモニウム染料等が挙げられる。
市販品としては、オリエント化学工業製の着色剤であるeBind ACW−9871、e−BIND LTW−8731H、e−BIND LTW−8701H等が例示される。また、有彩色色素を2種類以上混ぜて黒系色素としたものを用いても良い。 本発明のポリアミド樹脂組成物における光透過性色素の含有量は、組成物の0.05〜5.0重量%が好ましく、0.4〜2.0重量%がより好ましく、0.7〜2.0重量%がさらに好ましい。光透過性色素は、1種類のみ含んでいても良いし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、カーボンブラックを実質的に含まないことが好ましい。さらには、本発明のポリアミド樹脂組成物は、光吸収性色素を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、例えば、ポリアミド樹脂組成物の0.0001重量%以下であることをいう。
【0032】
<タルク>
本発明のポリアミド樹脂組成物はタルクを含んでいてもよい。本発明では、タルクを配合することにより、結晶化を促進することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物における、タルクの配合量は、ポリアミド樹脂組成物に対し、0.05〜20重量%であることが好ましく、0.1〜10重量%であることがより好ましく、0.15〜5重量%であることがさらに好ましく、0.2〜1.0重量%であることが特に好ましい。タルクは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0033】
<離型剤>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0034】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。また、脂肪族カルボン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩が例示される。
【0035】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族または脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
【0036】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0037】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0038】
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、脂肪族炭化水素の数平均分子量は好ましくは5,000以下である。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
【0039】
本発明のポリアミド樹脂組成物が離型剤を含む場合、離型剤の含有量は、ポリアミド樹脂組成物に対し、0.001〜2重量%であることが好ましく、0.01〜1重量%であることがより好ましい。離型剤は、1種類のみでもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。離型剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
【0040】
<他の成分>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいても良い。このような添加剤としては、ガラス繊維以外のフィラー、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの成分は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
尚、本発明のポリアミド樹脂組成物は、各成分の合計が100重量%となるように、樹脂成分、ガラス繊維および光透過性色素、さらには他の添加剤の配合量等が調整される。
【0041】
<ポリアミド樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法は、特に制限されないが、ベント口から脱揮できる設備を有する1軸または2軸の押出機を混練機として使用する方法が好ましい。上記ポリアミド樹脂、ガラス繊維および必要に応じて配合される他の添加剤は、混練機に一括して供給してもよいし、ポリアミド樹脂成分に他の配合成分を順次供給してもよい。ガラス繊維は、混練時に強化充填剤が破砕するのを抑制するため、押出機の途中から供給することが好ましい。また、各成分から選ばれた2種類以上の成分を予め混合、混練しておいてもよい。例えば、ニグロシンは、熱可塑性樹脂を用いてマスターバッチしたものをあらかじめ調整し、これを残りの配合成分と溶融混合押出して所定の配合比率とすることによっても、本発明におけるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。マスターバッチに用いる熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂が好ましい。マスターバッチのためのポリアミド樹脂は、上記特定ポリアミド樹脂であってもよいし、他のポリアミド樹脂であってもよく、ポリアミド6やポリアミド66などが例示される。本発明のポリアミド樹脂組成物の好ましい一実施形態として、光透過性色素をポリアミド66でマスターバッチ化したものを用いる形態が例示される。
【0042】
本発明のポリアミド樹脂組成物を用いた成形品の製造方法は、特に制限されず、熱可塑性樹脂について一般に使用されている成形方法、すなわち、射出成形、中空成形、押出成形、プレス成形などの成形方法を適用することができる。この場合、特に好ましい成形方法は、流動性の良さから、射出成形である。射出成形に当たっては、樹脂温度を250〜300℃にコントロールするのが好ましい。
【0043】
<キット>
本発明は、また、上記ポリアミド樹脂組成物と、ポリアミド樹脂とガラス繊維と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物とを有するキットを開示する。本発明のキットは、レーザー溶着による成形品の製造に好ましく用いられる。
すなわち、キットに含まれるポリアミド樹脂組成物は、光透過性樹脂組成物としての役割を果たし、光透過性樹脂組成物を成形してなる成形品は、レーザー溶着の際のレーザー光に対する透過樹脂部材となる。一方、光吸収性樹脂組成物を成形してなる成形品は、レーザー溶着の際のレーザー光に対する吸収樹脂部材となる。
【0044】
<<光吸収性樹脂組成物>>
本発明で用いる光吸収性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含み、さらに、無機フィラーを含んでいてもよい。
熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等が例示され、ポリアミド樹脂組成物との相溶性が良好な点から、特に、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂がさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
光吸収性樹脂組成物に用いるポリアミド樹脂としては、その種類等を定めるものではなく、上述の特定ポリアミド樹脂や他のポリアミド樹脂が好ましく用いられ、上記特定ポリアミド樹脂およびジアミンと炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸との重縮合物が例示される。光吸収性樹脂組成物に用いられるポリアミド樹脂は、より好ましくは、上記特定ポリアミド樹脂およびジカルボン酸由来の構成単位とジアミン由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種であり、さらに好ましくは、上記特定ポリアミド樹脂である。
本発明では、光吸収性樹脂組成物に含まれる樹脂成分と光透過性樹脂組成物に含まれる樹脂成分の90重量%以上が共通することが好ましい。
無機フィラーは、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ、アルミナ、タルク、カーボンブラックおよびレーザーを吸収する材料をコートした無機粉末等のレーザー光を吸収しうるフィラーが例示され、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維は、上記本発明のポリアミド樹脂組成物で用いるガラス繊維と同義であり、好ましい範囲も同様である。
光吸収性色素としては、照射するレーザー光波長の範囲、すなわち、本発明では、波長800nm〜1064nmの範囲に吸収波長を持つものであり、無機顔料(カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなど)などの黒色顔料、酸化鉄赤などの赤色顔料、モリブデートオレンジなどの橙色顔料、酸化チタンなどの白色顔料)、有機顔料(黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料など)などが挙げられる。なかでも、無機顔料は一般に隠ぺい力が強く好ましく、黒色顔料がさらに好ましい。光吸収性色素、特に、顔料は、マスターバッチとして配合すると、分散性向上の観点から好ましい。カーボンブラックのマスターバッチとしては、日弘ビックス株式会社製、PA−0896A(カーボンブラック含有量50重量%のマスターバッチ)が例示される。
これらの光吸収性色素は2種類以上組み合わせて使用してもよい。光吸収性色素の配合量は、樹脂成分100重量部に対し0.01〜1重量部であることが好ましい。
【0045】
<<レーザー溶着方法>>
次に、レーザー溶着方法について説明する。本発明では、本発明のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品(透過樹脂部材)と、上記光吸収性樹脂組成物を成形してなる成形品(吸収樹脂部材)を、レーザー溶着させて成形品を製造することができる。レーザー溶着することによって透過樹脂部材と吸収樹脂部材を接着剤を用いずに、強固に溶着することができる。
部材の形状は特に制限されないが、部材同士をレーザー溶着により接合して用いるため、通常、少なくとも面接触箇所(平面、曲面)を有する形状である。レーザー溶着では、透過樹脂部材を透過したレーザー光が、吸収樹脂部材に吸収されて、溶融し、両部材が溶着される。本発明のポリアミド樹脂組成物の成形品は、ガラス繊維を含有しているにも関わらずレーザー光に対する透過性が高いので、透過樹脂部材として好ましく用いることができる。ここで、レーザー光が透過する部材の厚み(レーザー光が透過する部分におけるレーザー透過方向の厚み)は、用途、ポリアミド樹脂組成物の組成その他を勘案して、適宜定めることができるが、例えば5mm以下であり、好ましくは4mm以下である。
【0046】
レーザー溶着に用いるレーザー光源としては、光吸収性色素の光に応じて定めることができ、波長800〜1064nmの範囲のレーザーが好ましく、例えば、半導体レーザーが利用できる。
【0047】
より具体的には、例えば、透過樹脂部材と吸収樹脂部材を溶着する場合、まず、両者の溶着する箇所同士を相互に接触させる。この時、両者の溶着箇所は面接触が望ましく、平面同士、曲面同士、または平面と曲面の組み合わせであってもよい。次いで、透過樹脂部材側からレーザー光を照射(好ましくは溶着面に85〜95°の角度から照射)する。この時、必要によりレンズ系を利用して両者の界面にレーザー光を集光させてもよい。その集光ビームは、透過樹脂部材中を透過し、吸収樹脂部材の表面近傍で吸収されて発熱し溶融する。次にその熱は熱伝導によって透過樹脂部材にも伝わって溶融し、両者の界面に溶融プールを形成し、冷却後、両者が接合する。
このようにして透過樹脂部材と吸収樹脂部材を溶着された成形品は、高い接合強度を有する。尚、本発明における成形品とは、完成品や部品の他、これらの一部分を成す部材も含む趣旨である。
【0048】
本発明でレーザー溶着して得られた成形品は、機械的強度が良好で、高い溶着強度を有し、レーザー光照射による樹脂の損傷も少ないため、種々の用途、例えば、各種保存容器、電気・電子機器部品、オフィスオートメート(OA)機器部品、家電機器部品、機械機構部品、車両機構部品などに適用できる。特に、食品用容器、薬品用容器、油脂製品容器、車両用中空部品(各種タンク、インテークマニホールド部品、カメラ筐体など)、車両用電装部品(各種コントロールユニット、イグニッションコイル部品など)モーター部品、各種センサー部品、コネクター部品、スイッチ部品、ブレーカー部品、リレー部品、コイル部品、トランス部品、ランプ部品などに好適に用いることができる。特に、本発明のポリアミド樹脂組成物およびキットは、車載カメラの筐体に適している。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0050】
<樹脂>
MP10−1:以下の合成方法によって得た。
セバシン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学製)とメタキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学製)のモル比が7:3の混合ジアミンを、加圧(0.35MPa)下でジアミンとセバシン酸とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を235℃まで上昇させた。滴下終了後、60分間反応継続し、分子量1,000以下の成分量を調整した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド樹脂を得た。
【0051】
MP10−2:以下の合成方法によって得た。
MP10−1において、パラキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学製)とメタキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学製)のモル比を6:4とした以外は、同様に行ってポリアミド樹脂を得た。
【0052】
MXD6:メタキシリレンアジパミド樹脂、三菱ガス化学社製、S6001
PA66:ポリアミド66、東レ製、商品名「CM3001−N」、 融点265℃、相対粘度2.95
【0053】
<ガラス繊維>
296GH:日本電気ガラス製、商品名「ECS03T−296GH」、重量平均繊維径9.5〜10.5μm、カット長3mm、
<光透過性色素>
8731H:オリエント化学工業製、商品名「e−BIND LTW−8731H」、ポリアミド66と光透過性色素のマスターバッチ(光透過性色素50重量%)
8701H:オリエント化学工業製、商品名「e−BIND LTW−8701H」、ポリアミド66と光透過性色素のマスターバッチ(光透過性色素50重量%)
【0054】
<光吸収性色素>
カーボンブラック(三菱化学製、MA600B)
<タルク>
ミクロンホワイト#5000S:林化成製
<離型剤>
ライトアマイドWH255:共栄社化学製
【0055】
<実施例1>
<<コンパウンド>>
後述する下記表に示す組成となるように、樹脂とタルクと離型剤と光透過性色素をそれぞれ秤量し、ドライブレンドした後、二軸押出機(東芝機械製、TEM26SS)のスクリュー根元から2軸スクリュー式カセットウェイングフィーダ(クボタ製、CE−W−1−MP)を用いて投入した。また、ガラス繊維については振動式カセットウェイングフィーダ(クボタ製、CE−V−1B−MP)を用いて押出機のサイドから上述の二軸押出機に投入し、樹脂成分等と溶融混練し、樹脂組成物ペレットを投入した。押出機の温度設定は、280℃とした。
【0056】
<<光線透過率>>
ISO13468−1およびISO13468−2に従い光線透過率を測定した。具体的には、上記で得られた樹脂組成物ペレットを、120℃で5時間乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業製「型式:SE−50D」)を用いて、シリンダー温度280℃、金型表面温度110℃の条件で、
図1に概略図を示すような光線透過率測定用の試験片(ASTM4号ダンベル試験片、厚さ1.0mm)を作製した。本試験片では、
図1に示すように、片側にゲート1を有している。
図1における、2のゲート側測定位置および3の反ゲート側測定位置について、それぞれ、光線透過率を測定した。光線透過率は、可視・紫外分光光度計(島津製作所製「UV−3100PC」)を用いて測定し、波長800nm、940nm、1064nmの光線透過率をそれぞれ測定した。波長800nmにおける光線透過率および波長1064nmにおける光線透過率については、ゲート側の光線透過率および反ゲート側の光線透過率のうち、低い方を示した。波長940nmにおける光線透過率については、ゲート側の光線透過率および反ゲート側の光線透過率から、以下の通り評価した。
<<<波長940nmにおける光線透過率>>>
以下の通り区分して評価した。
A:ゲート側および反ゲート側の光線透過率の両方が55%以上
B:ゲート側および反ゲート側の光線透過率の一方が55%以上
C:ゲート側および反ゲート側の光線透過率の両方が55%未満
【0057】
<<レーザー溶着性>>
上記で得られた樹脂組成物ペレットを、120℃で5時間乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業製「型式:SG−75MIII」)を用いて、シリンダー温度280℃、金型表面温度110℃の条件で幅20mm、長さ126mm、厚さ1.0mmの試験片1(透過樹脂部材)を製造した。
また、表に示す吸収樹脂部材用の組成物についても、上記樹脂組成物ペレットと同様にコンパウンドし、さらに、射出成形して、幅20mm、長さ126mm、厚さ1.0mmの試験片2(吸収樹脂部材)を製造した。
図2に示すように試験片を重ね合わせ、レーザー光照射を行った。
図2中、(a)は試験片を側面から見た図を、(b)は試験片を上方から見た図をそれぞれ示している。4は、試験片1を、5は、試験片2を、6はレーザー光照射箇所を、それぞれ示している。
試験片1と試験片2を重ね合わせ、試験片1側からレーザーを照射した。レーザー溶着装置は、スキャンタイプのパーカーコーポレーション製「PARK LASER SYSTEM」を用い、レーザー光波長は940nm(半導体レーザー)、溶着スポット径は2.0mm、溶着長さは20mmでレーザーを照射した。レーザー光のスキャン速度は5mm/sec、レーザー出力は13W、クランプ圧力は0.5MPaとした。
溶着された試験片を用い、レーザー溶着強度測定を行った。溶着強度の測定は、引張試験機(インストロン製「5544型」)を使用し、溶着して一体化された試験片1と2を、その長軸方向の両端をクランプで挟み、引張速度5mm/minで引っ張った。溶着部の引張せん断破壊強度に応じて以下の通り評価した。
A:溶着部の引張せん断破壊強度が800N以上である。
B:溶着部の引張せん断破壊強度が100N以上800N未満であった。
C:溶着部の引張せん断破壊強度が100N未満であった。
【0058】
<実施例2>
実施例1において、表1に示す通り変更し、他は同様に行った。
【0059】
<実施例3>
実施例1において、表1に示す通り変更し、他は同様に行った。
【0060】
<実施例4>
実施例1において、表1に示す通り変更し、他は同様に行った。
【0061】
<比較例1>
実施例1において、表1に示す通り変更し、金型表面温度は100℃に変更し、他は同様に行った。
【0062】
<比較例2>
実施例1において、表1に示す通り変更し、他は同様に行ったところ、押出成形ができなかった。
【0063】
<比較例3>
実施例1において、表1に示す通り変更し、他は同様に行った。
【0064】
【表1】
【0065】
上記結果から明らかなとおり、本発明のポリアミド樹脂組成物は、波長940nmにおける光線透過率が高く、かつ、レーザー溶着性に優れていることが分かった(実施例1〜4)。そのため、レーザー出力を小さくしても、適切なレーザー溶着が可能になる。
一方、ポリアミド樹脂として、レーザー溶着に多用されているポリアミド66を用いた場合(比較例1)、レーザー溶着性が顕著に劣ることが分かった。
また、ポリアミド樹脂の量が本発明の範囲を外れる場合、押出成形できなかった(比較例2)。
さらに、ポリアミド樹脂の種類が本発明の範囲を外れる場合、透過樹脂部材の光線透過率が低く、レーザー溶着性に劣っていた(比較例3)。
加えて、本発明のポリアミド樹脂組成物では、ガラス繊維の配合量をより多くできることから、機械的強度により優れた成形品とすることができる。