特許第6803872号(P6803872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6803872
(24)【登録日】2020年12月3日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】カーテンエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/232 20110101AFI20201214BHJP
   B60R 21/233 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B60R21/232
   B60R21/233
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-60851(P2018-60851)
(22)【出願日】2018年3月27日
(65)【公開番号】特開2019-171992(P2019-171992A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2019年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】中島 敦
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−159291(JP,A)
【文献】 特開2012−218619(JP,A)
【文献】 特開2012−091650(JP,A)
【文献】 特開2016−222008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内部のルーフサイドレールに沿って配置され、車両側面の窓部分を覆うように展開可能なエアバッグを備えたカーテンエアバッグ装置において、
前記エアバッグは、少なくともフロントピラー(Aピラー)の一部を覆うように展開可能な主膨張部と、
前記主膨張部の前端から車両後方に向かう所定の第1長さの範囲において、当該主膨張部から下方に延び、ドアトリムに重なるオーバーラップ部と、
前記主膨張部の下方には、前後方向に延びる下部膨張部が設けられ、
前記下部膨張部の前端は、前記オーバーラップ部の後端に達するように設けられ、
前記下部膨張部は、後端部において前記主膨張部と上下方向に流体連通しており、
前記主膨張部は、フロントシートに着座した乗員の頭部に対応する位置から当該主膨張部の前端部に渡る範囲に凹部が形成されないことを特徴とするカーテンエアバッグ装置。
【請求項2】
前記主膨張部は、Bピラーの前縁部から主膨張部の前端部に渡る範囲に凹部が形成されないことを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項3】
前記主膨張部には、前記凹部としての非膨張領域が形成されないことを特徴とする請求項1又は2に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項4】
前記範囲は、FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety
Standard:米国連邦自動車安全基準)226による、インパクタ打点位置のうち、車両の最前部の第1打点位置から車両の前後方向で当該第1打点位置の1つ後方の第2打点位置に繋がる範囲を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項5】
前記主膨張部の縦方向の第2の長さと前記第1の長さが、160〜300mmであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項6】
前記第1の長さと前記第2の長さが、180〜250mmであることを特徴とする請求項5に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項7】
前記第1の長さと前記第2の長さは、概ね等しいことを特徴とする請求項5又は6に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項8】
前記下部膨張部の下縁は、前記オーバーラップ部の下縁よりも上方に位置することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のカーテンエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、、車両室内の側面部に沿って膨張展開することで、車両の側面衝突時やロールオーバ(横転)時に乗員を保護するカーテンエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、車両の事故発生時に乗員および場合によっては歩行者を保護するために1つまたは複数の膨張式エアバッグを当該車両に設けることは周知公用である。エアバッグは、例えば、自動車のステアリングホイールの中心付近から膨張して運転者を保護する、いわゆる運転者用エアバッグ、自動車の窓の内側で下方向に展開して横方向の衝撃や横転、転覆事故時に乗員を保護するカーテンエアバッグ、更には、横方向の衝撃時に乗員を保護すべく乗員とサイドパネルの間で展開するサイドエアバッグなどの様々な形態がある。この中で、本発明はカーテンエアバッグに関するものである。
【0003】
ところで、実際の車両の衝突の態様は種々多様であることから、車両の安全性能の実効性を向上させるために種々の衝突形態を想定した実験、開発が行われている。衝突の形態としては、正面衝突、側面衝突、オフセット衝突の他に、車両前面の25%が対向車と衝突するスモールオーバーラップ衝突、斜め方向からの衝突(オブリーク衝突)等が想定されている。
【0004】
従来のカーテンエアバッグにおいては、例えば、米国連邦自動車安全基準FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standard:)226の要件を満足させるために、窓枠を大きなカーテンエアバッグで覆う構造を採用している。エアバッグの面積を大きくすると、必然的にチャンバの容量が大きくなるため、メインチャンバの展開速度が遅くなることが懸念される。そこで、特許文献1に示すように、メインチャンバと前方のディレイチャンバの間に非膨張部を設け、メインチャンバを早期に膨張させる対応が採られている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すような従来のカーテンエアバッグにおいては、スモールオーバーラップ衝突やオブリーク衝突が発生すると、ドライバ又は助手席の乗員の頭部がカーテンエアバッグに接した後、カーテンエアバッグの表面を滑って(擦って)前方に移動し、Aピラーの方向に移動する。この時、カーテンエアバッグとドライバエアバッグ(又は助手席用エアバッグ)との境界部分(非膨張部)に乗員の頭部が進入し、頭部に回転力が加わり、脳傷害値(BrIC)が悪化する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許公開2016/0114754
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、特に、乗員の頭部回転に起因する脳傷害値の悪化を抑制可能なカーテンエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために、本発明は、車両内部のルーフサイドレールに沿って配置され、車両側面の窓部分を覆うように展開可能なエアバッグを備えたカーテンエアバッグ装置に適用される。そして、前記エアバッグは、少なくともフロントピラー(Aピラー)の一部を覆うように展開可能な主膨張部を備える。また、前記主膨張部は、フロントシートに着座した乗員の頭部に対応する位置から又はBピラーの前縁部から当該主膨張部の前端部に渡る範囲に凹部が形成されないことを特徴とする。前記凹部としては、非膨張領域がある。
【0009】
上記のように、主膨張部には、フロントシートに着座した乗員の頭部に対応する位置から当該チャンバの前端部に渡る範囲に、非膨張領域等の凹部が形成されないため、乗員の頭部が主膨張部の表面を滑って前方に移動したときに、当該頭部が凹部に干渉して変則的に回転するような事態を回避することができる。すなわち、乗員の頭部への回転による脳傷害値(BrIC)の悪化を抑制することが可能となる。
【0010】
凹部が形成されない前記範囲としては、FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standard:米国連邦自動車安全基準)226による、インパクタ打点位置のうち、車両の最前部の打点位置(例えば、A1:第1打点位置)から車両の前後方向で1つ後方の打点位置(例えば、A3:第2打点位置)に繋がる範囲を含むことができる。車両最前部の第1打点位置から、その1つ後方の第2打点位置に繋がる範囲とは、第1打点位置と第2打点位置とを直線又は曲線で結んだ線の周辺範囲を意味する。これは、乗員の頭部が前方に移動したときの予想される軌道上に凹部を形成しないという意味である。
【0011】
前記主膨張部の前端から車両後方に向かう所定の第1長さの範囲において、当該主膨張部から下方に延び、ドアトリムに重なるオーバーラップ部を備えることができる。オーバーラップ部の存在により、乗員が車外に放出される危険性を回避することができる。
【0012】
前記主膨張部の縦方向の第2の長さと前記第1の長さを、共に160〜300mm、好ましくは、180〜250mmとすることができる。また、前記第1の長さと前記第2の長さを、概ね等しくすることが好ましい。ここで、「概ね等しい」とは、例えば、±10%(例えば、16mm)の違いを含むものである。
【0013】
前記主膨張部の下方には、前後方向に延びる下部膨張部を設けることができる。この時、前記下部膨張部の前端が、前記オーバーラップ部の後端に達するように設けることができる。また、下部膨張部の後端部が主膨張部と流体連通する構成とすることができる。
下部膨張部を設けることにより、主膨張部に凹部を形成しないという本質的な特徴を維持しつつ、カーテンエアバッグとしての乗員の拘束範囲を上下方向に拡大できるというメリットがある。また、下部膨張部の後端部と主膨張部とが流体連通するように構成した場合には、主膨張部の速やかな展開を阻害することなく、下部膨張部を展開させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係るカーテンエアバッグ装置を備えた自動車の車室部分の断面図であり、展開時の状態を示す。
図2図2は、本発明に係るカーテンエアバッグ装置の構造を示す正面図であり、展開前の収容状態を示す。
図3図3は、本発明に係るカーテンエアバッグの展開した状態での運転席周辺の様子を示す図である。
図4図4は、本発明の実施例に係るカーテンエアバッグの展開した状態を示す側面図(正面図)である。
図5図5(A),(B)は、本発明の実施例に係るカーテンエアバッグ及びドライバエアバッグと乗員(ドライバ)の頭部との位置関係を示す上面図(A)と側面図(B)である。
図6図6(A),(B)は、本発明の実施例に係るカーテンエアバッグ及びドライバエアバッグと乗員(ドライバ)の頭部との位置関係を示す上面図(A)と側面図(B)である。
図7図7(A),(B)は、本発明の実施例に係るカーテンエアバッグ及びドライバエアバッグと乗員(ドライバ)の頭部との位置関係を示す上面図(A)と側面図(B)である。
図8図8(A),(B)は、本発明の実施例に係るカーテンエアバッグ及びドライバエアバッグと乗員(ドライバ)の頭部との位置関係を示す上面図(A)と側面図(B)である。
図9図9(A),(B)は、参考例(従来技術)に係るカーテンエアバッグ及びドライバエアバッグと乗員(ドライバ)の頭部との位置関係を示す上面図(A)と側面図(B)である。
図10図10(A),(B)は、参考例(従来技術)に係るカーテンエアバッグ及びドライバエアバッグと乗員(ドライバ)の頭部との位置関係を示す上面図(A)と側面図(B)である。
図11図11(A),(B)は、参考例(従来技術)に係るカーテンエアバッグ及びドライバエアバッグと乗員(ドライバ)の頭部との位置関係を示す上面図(A)と側面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に係るカーテンエアバッグ装置10を備えた自動車の車室部分の断面図であり、展開時の状態を示す。図1に示すように、車室側方の窓ガラスの上部において、ヘッドライニングに覆われたルーフサイドレールには、エアバッグ12が複数の取付けタブ14を用いてボルト又はクリップ等によって固定される。
【0016】
ルーフサイドレールには、ルーフ(屋根)を支える複数のピラーが接続されている。これらのピラーは、一般的に、車両の前方から、フロントピラー(Aピラー)11、センターピラー(Bピラー)34、リアピラー(Cピラー)と呼ばれる。そして、Aピラー11は、エアバッグ12の前縁部とストラップ15によって連結されている。ストラップ15は、エアバッグ12と同一の素材(ファブリック)により、幅の均一な帯状に成形することができる。なお、ストラップ15自体は、エアバッグと別素材(例えば、合成樹脂等)で成形することもできる。
【0017】
図2は、本発明の第1実施例に係るカーテンエアバッグ装置の構造を示す正面図であり、展開前の収容状態を示す。なお、以下に示す実施例においては、右側にステアリングホイールが配置された、所謂右ハンドル車を例にとって説明しているが、左ハンドル車に適用可能であることは言うまでもない。
本実施例に係るカーテンエアバッグ装置10は、車両内部のルーフサイドレールに沿って配置され、車両側面の窓部分を覆うように展開可能なエアバッグ12を備える。エアバッグ12は折り畳み、又はロールすることによって長尺状に成形される。また、例えば、この第2図のように、当該エアバッグ12の長手方向における少なくとも一部に、当該エアバッグ12の外周を覆うカバー部材18a,18b,18cが備えられていてもよい。カバー部材18a,18b,18cは、複数の高分子繊維を含む延性布材料で成形され、高分子繊維の少なくとも一部が互いに融着することでエアバッグ12の断面を小径化するとともに、形状を保持するように構成される。カバー部材18によって覆われた部分のエアバッグ12は、圧縮によって断面を小径化される。
【0018】
エアバッグ12は、ほぼ同一の2枚のシートの可撓性材料、例えば織布を互いに重ね、揃えた端を周囲縫い目により相互接続し、ガス発生器などのインフレータ20からの膨張ガスを受ける大きな内部膨張可能部分を該シート間に画定して形成することができる。エアバッグ12は、また、1枚のシートの可撓性材料を半分に折って2枚の層を重ね、周囲縫い目により相互接続することができる。あるいは、所謂「ワンピースウィービング(OPW)」技法により織り上げることもでき、膨張領域と非膨張領域とを形成する縦糸と緯糸を選択された部分で織り合わせて、複数のシートの織り構造を形成して膨張室(チャンバ)と複数シートが相互接続する周囲結合部を形成する。
【0019】
エアバッグ12を作製する布は、好ましくは可塑性の布であり、例えばポリアミド繊維の縦糸と緯糸を織り合わせて形成される布である。布は熱可塑性材料でコーティングしてもよい。図2に示すように、エアバッグ12は、インフレータ20をエアバッグ12内に挿入するための開口部を有するように形成される。例えば、筒状のインフレータが開口部を通って延び、その長さの大部分がエアバッグ12内部に存在する。
【0020】
車両に設置できるようにエアバッグ12をパッケージ化するために、エアバッグ12はまずロールされかつ/または折り畳まれ、もしくは、まず折り畳まれ、且つ/又はロールされてロッド状に形成される。エアバッグ12を折り畳んで、またはエアバッグ12にロールを形成して、またはそれ自体公知のエアバッグのロール化と折り畳みの技法を組み合わせて、パッケージを形成してもよい。ロール化の技法の場合、エアバッグ12を心棒(図示せず)の周りに巻いてできたパッケージを軸方向に引き抜いてもよい。
【0021】
カバー部材18a,18b,18cは、ロール状のエアバッグ12の周方向全体に包囲するように巻かれる。また、エアバッグ12とカバー部材18がほどけないように、カバー部材18の一部をバッグの基布に仮縫いなどにより保持することができる。
【0022】
図3は、本発明に係るカーテンエアバッグ12の展開した状態での運転席周辺の様子を示す図である。図3においては、カーテンエアバッグ12に加えて、ステアリングホイール30の中央からドライバエアバッグ32が展開した状態が示されている。
【0023】
図4は、本発明の実施例に係るカーテンエアバッグ12の展開した状態を示す側面図(正面図)である。本発明に係るエアバッグ12は、少なくともフロントピラー(Aピラー)11の一部を覆うように展開可能な主膨張部12aを備える。主膨張部12aは、フロントシートに着座した乗員の頭部Hに対応する位置から当該主膨張部12aの前端部に渡る範囲に凹部が形成されない構造となっている。凹部としては、例えば、ガスが流入しない非膨張領域がある。また、主膨張部12aの後端は、Bピラー34の前端部とすることができる。
【0024】
上記のように、主膨張部12aには非膨張領域等の凹部が形成されないため、乗員の頭部Hが主膨張部12aの表面を滑って前方に移動したときに、当該頭部Hが凹部に干渉して変則的に回転するような事態を回避することができる。すなわち、乗員の頭部への回転による脳傷害値(BrIC)の悪化を抑制することが可能となる。
【0025】
凹部が形成されない前記範囲としては、FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standard:米国連邦自動車安全基準)226による、インパクタ打点位置のうち、車両の最前部の打点位置(例えば、A1:第1打点位置)から車両の前後方向で1つ後方の打点位置(例えば、A3:第2打点位置)に繋がる範囲を含むことができる。車両最前部の第1打点位置から、その1つ後方の第2打点位置に繋がる範囲とは、第1打点位置と第2打点位置とを直線又は曲線で結んだ線の周辺範囲を意味する。これは、乗員の頭部Hが前方に移動したときの予想される軌道上に凹部を形成しないという意味である。
【0026】
主膨張部12aの前端から車両後方に向かう所定の第1長さL1の範囲において、当該主膨張部12aから下方に延び、ドアトリムに重なるオーバーラップ部12bを備えることができる。オーバーラップ部12bの存在により、乗員が車外に放出される危険性を回避することができる。
【0027】
主膨張部12aの下方には、前後方向に延びる下部膨張部12cが形成されている。ここで、下部膨張部12cの前端が、オーバーラップ部12bの後端に達するように配置されている。下部膨張部12cの後端部が主膨張部12aと流体連通している。下部膨張部12cを設けることにより、主膨張部12aに凹部を形成しないという本質的な特徴を維持しつつ、カーテンエアバッグ12としての乗員の拘束範囲を上下方向に拡大できるというメリットがある。また、下部膨張部12cの後端部と主膨張部12aとが流体連通するため、主膨張部12aの速やかな展開を阻害することなく、下部膨張部12cを展開させることができる。
【0028】
図4(B)に示すように、主膨張部12aの縦方向の第2の長さL2と第1の長さL1は、160〜300mm、好ましくは、180〜250mmとする。また、第1の長さL1と第2の長さL2とは、概ね等しく設定することができる。ここで、「概ね等しい」とは、例えば、±10%(例えば、16mm)の違いを含むものである。
【0029】
図5図8は、本発明の実施例に係るカーテンエアバッグ12及びドライバエアバッグ32と乗員(ドライバ)の頭部Hとの位置関係を示す。これらの図に基づいて、本発明の作用について説明する。
【0030】
まず、図5に示すように、カーテンエアバッグ12とドライバエアバッグ32が展開した初期の段階では、乗員の頭部Hは通常(正常)の位置にある。その後、乗員の頭部Hがカーテンエアバッグ12に沿って前方に移動すると、図6に示すように、カーテンエアバッグ12とドライバエアバッグ32との境界付近に達する。
【0031】
そのまま乗員の頭部Hが前方に移動し続けると、頭部Hはカーテンエアバッグ12とドライバエアバッグ32との境界部分に入り込む。更に、頭部Hが前方に移動すると、図8に示すように、頭部Hはカーテンエアバッグ12とドライバエアバッグ32との境界部分に食い込むように進入し、停止する。本発明においては、主膨張部12aの表面に凹部がなく、全体の厚さが概ね均一に設定されているため、特定の箇所で頭部Hが引っかかって回転するようなことがない。
【0032】
図9図11は、参考例(従来技術)に係るカーテンエアバッグ及びドライバエアバッグと乗員(ドライバ)の頭部との位置関係を示す。この参考例に係るカーテンエアバッグ112においては、乗員の頭部Hが移動すると予測される軌道上に非膨張領域112aが形成され、主膨張部113の前方に副膨張部114が区画されている。
【0033】
参考例において、まず、図9に示すように、カーテンエアバッグ112とドライバエアバッグ32が展開した初期の段階では、乗員の頭部Hは通常(正常)の位置にある。その後、乗員の頭部Hがカーテンエアバッグ112に沿って前方に移動すると、図10に示すように、、カーテンエアバッグ112とドライバエアバッグ32との境界付近に達する。ここまでは、本発明と大きな相違はない。
【0034】
しかしながら、そのまま乗員の頭部Hが前方に移動し続けると、図11に示すように、頭部Hはカーテンエアバッグ112の非膨張領域112aに嵌まってしまう。更に、頭部Hが前方に移動すると、頭部Hは回転し、脳傷害値(BrIC)が悪化してしまう可能性がある。
【0035】
本発明を上記の例示的な実施形態と関連させて説明してきたが、当業者には本開示により多くの等価の変更および変形が自明であろう。したがって、本発明の上記の例示的な実施形態は、例示的であるが限定的なものではないと考えられる。本発明の精神と範囲を逸脱することなく、記載した実施形態に様々な変化が加えられ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11