(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のコネクタ501は、ランス521に芯線カシメ部529が近接しているため、芯線カシメ部529がランス521に干渉すると、端子525の被係止面535に対する係止面523の係り代が浅くなり、端子保持力が低下する可能性があった。また、芯線カシメ部529がランス521に干渉しやすいため、係止面523の係止強度を担うせん断長Tが大きく確保できず、端子保持力を向上させにくいという課題があった。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、芯線カシメ部に対し可撓係止片を干渉しにくくすることにより、端子保持力の低下を抑制できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 挿入方向の後端に係止端縁が形成された電気接触部の後方に凹部を隔てて電線接続部の芯線カシメ部が設けられた端子と、前記端子を装着するための挿入口を後端面に有し、前記挿入口から挿入された前記端子を収容する端子収容室が形成された樹脂製のハウジングと、前記ハウジングに一体成形されて前記端子収容室に挿入された前記端子の前記係止端縁を係止して前記端子を抜け止めする係止面を備えた可撓係止片と、前記可撓係止片に形成されて挿入途中の前記端子に押圧されて前記係止面を係止解除方向へ移動させる傾斜面と、前記傾斜面に形成されて挿入が完了した前記端子の前記芯線カシメ部及びその近傍に対し前記傾斜面より離間する底面を有した凹状逃げ部と、を備え
、平らな前記底面における前記係止面側の前辺部が、前記傾斜面と同一面となって前記傾斜面と接続され、
前記係止面と前記底面の前記前辺部との間に位置して前記凹部に対向する前記可撓係止片の凹部対向面は、前記前辺部の前記係止面側に位置して前記前辺部と連続する平らな接続傾斜面と、前記接続傾斜面の前記係止面側に位置して前記接続傾斜面と連続し且つ前記係止面まで延びる対向平面と、からなり、前記接続傾斜面の前記挿入方向に対する傾斜角度が前記底面の傾斜角度より小さく、前記対向平面の前記傾斜角度が前記接続傾斜面の前記傾斜角度より小さいことを特徴とするコネクタ。
【0008】
上記(1)の構成のコネクタによれば、可撓係止片の傾斜面に、芯線カシメ部及びその近傍との干渉を抑制する凹状逃げ部が形成されている。凹状逃げ部は、底面が傾斜面よりも芯線カシメ部及びその近傍に対し離間して形成される。つまり、凹状逃げ部は、芯線カシメ部及びその近傍の進入を許容する進入空間となっている。これにより、芯線カシメ部に加工精度のばらつきが生じても、芯線カシメ部及びその近傍が傾斜面と干渉しにくくなる。その結果、端子保持力の低下が抑制される。また、可撓係止片は、凹状逃げ部が形成されることにより、従来構造に比べ、芯線カシメ部及びその近傍と傾斜面との間に、クリアランスが大きく確保可能となる。可撓係止片は、係止面に略直交し、端子引き抜き方向と略平行な断面が、せん断破壊の生じやすいせん断長となる。傾斜面は、凹状逃げ部により芯線カシメ部及びその近傍との間のクリアランスが大きくなるので、このせん断長が大きく確保可能となる。その結果、可撓係止片は、係止面のせん断長を増大させ、係止強度を高めることにより、端子保持力を向上させることができる。
【0009】
(2) 上記(1)に記載のコネクタであって、前記凹部に対向する前記可撓係止片の
前記凹部対向面には、
前記対向平面と前記接続傾斜面とに渡って延在して前記凹部に向かって突出する一対の凸条部が形成されることを特徴とするコネクタ。
【0010】
上記(2)の構成のコネクタによれば、可撓係止片の凹部対向面には、一対の凸条部が形成される。一対の凸条部は、それぞれが凹部対向面の両側に沿って、係止面から傾斜面に渡って延びる。凸条部の先端面は、係止面と同一平面となる。凸条部の後部は、傾斜面において高く突出する。上記のせん断破壊が生じた場合、せん断面の始端は、係止面となる。一方、せん断面の終端は、傾斜面となる。この傾斜面には、一対の凸条部が高く突出しているので、傾斜面までが破断されても、一対の凸条部が未破断部となって残る。つまり、せん断長を増加させることができる。その結果、コネクタは、凸条部を有しない場合に比べ、せん断長を長くして、端子保持力を向上させることができる。
【0011】
(3) 上記(2)に記載のコネクタであって、前記係止端縁には、前記一対の凸条部の間に配置され、前記係止端縁から前記可撓係止片に向かって突出して前記係止面との係り代を増やす係止突起が形成されることを特徴とするコネクタ。
【0012】
上記(3)の構成のコネクタによれば、可撓係止片は、端子の係止端縁に係止している係止面の接触領域が係り代となる。ここで、端子の係止端縁からは、可撓係止片に向かって更に係止突起が突出して形成されている。可撓係止片は、この係止突起が係止面に接触する分、接触領域が増大する。その結果、コネクタは、係止突起を有しない場合に比べ、係り代を増やして、端子保持力を向上させることができる。また、係止突起は、一対の凸条部の間に形成されるので、凸条部との干渉を回避できる。そのため、端子挿入時の可撓係止片の退避ストロークを、凸条部と干渉する場合に比べ、小さくして、ハウジングの大型化を抑制できる。
【0013】
(4) (1)〜(3)の何れか1つに記載のコネクタであって、前記芯線カシメ部及びその近傍が、前記芯線カシメ部のベルマウスと、前記ベルマウスから突出した芯線突き出し部と、を含むことを特徴とするコネクタ。
【0014】
上記(4)の構成のコネクタによれば、芯線カシメ部及びその近傍が、芯線カシメ部のベルマウスと、ベルマウスから突出した芯線突き出し部と、を含む。通常、芯線カシメ部からは、芯線突き出し部が突出する。また、芯線カシメ部は、芯線への傷付き等を回避するために、前後端がテーパ状に拡径されたベルマウスとして形成される。これら芯線突き出し部やベルマウスは、加工精度にばらつきが生じやすい。コネクタは、特に加工精度にばらつきの生じやすい芯線突き出し部やベルマウスに対し、凹状逃げ部が対向配置されることにより、傾斜面に対する干渉がより効果的に回避可能となっている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るコネクタによれば、芯線カシメ部に対し可撓係止片を干渉しにくくすることにより、端子保持力の低下を抑制できる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るコネクタ11を前方斜め上方から見た斜視図である。
本実施形態に係るコネクタ11は、ハウジング13と、端子15と、可撓係止片17と、傾斜面19と、凹状逃げ部21と、を主要な構成として有する。
【0019】
コネクタ11は、電気絶縁性の合成樹脂材を射出成形することにより、樹脂製のハウジング13が略直方体に形成される。コネクタ11は、上壁部23の上面に、相手コネクタ(図示略)と結合する際のガイドとなる一対の平行なガイド壁25と、一対のガイド壁25の間に形成されて結合状態をロックするロックアーム27とが形成される。ハウジング13の結合方向の前端面29には、縦横に配列された複数(本実施形態では横3列、縦2段の合計6つ)の相手端子進入開口31が開口する。
【0020】
図2は
図1に示したコネクタ11の側部を切り欠いた斜視図である。
ハウジング13の内方には、端子15を装着するための横3列、縦2段の合計6つの端子収容室33が形成される。それぞれの端子収容室33は、先端が上記の相手端子進入開口31に通じて開口する。相手端子進入開口31には、相手端子(図示略)の進入をガイドするテーパ面31aが端子収容室33に向かって先細に形成される。
【0021】
なお、本実施形態において、相手端子は、棒状の電気接触部を有する雄端子となる。相手コネクタは、この雄端子を装着した雄コネクタとなる。本実施形態のコネクタ11は、この雄コネクタと結合する雌コネクタとなる。従って、コネクタ11に装着される後述の端子15は、雌端子となる。
【0022】
ハウジング13には、それぞれの端子収容室33の下方に、端子収容室33に沿って、先端面から後方に向かって延在する横穴部35が形成される。この横穴部35は、一部分で端子収容室33に通じる。それぞれの端子収容室33には、後述の可撓係止片17が突出する。横穴部35の奥側は、この可撓係止片17が係止解除方向(図中、下方向)へ移動するときの退避空間となる。
【0023】
可撓係止片17は、この退避空間へ進入することにより端子15に対する係止が解除可能となる。このため、横穴部35は、可撓係止片17の移動を規制することにより、端子15を二重に抜け止めするための規制杆(図示略)の挿入空間として利用可能となる。また、横穴部35は、可撓係止片17を係止解除方向へこじる解除治具の挿入を可能にして、端子15との係止を解除するための係止解除用穴としても利用可能となる。
【0024】
図3は
図1に示したコネクタ11の縦断面図である。
ハウジング13は、上段側の端子収容室33及び横穴部35と、下段側の端子収容室33及び横穴部35とが、水平隔壁部37で上下に仕切られる。水平隔壁部37の上面には、可撓係止片17の基端39が接続して一体に成形されている。下段側の端子収容室33に突出する可撓係止片17は、基端39が、ハウジング13の底壁部41に接続して一体に形成される。
【0025】
図4は
図1に示したコネクタ11の側部を切り欠いて後方斜め上方から見た斜視図である。
ハウジング13の後端面43には、端子15を端子収容室33に装着するための挿入口45が開口する。挿入口45は、それぞれの端子収容室33に通じる。即ち、挿入口45は、横3列、縦2段の合計6つが開口する。それぞれの挿入口45は、上下が上記の水平隔壁部37により仕切られ、横方向が2つの平行な垂直隔壁部47に仕切られて6つの四角形の穴となる。端子15は、この挿入口45から挿入されて、端子収容室33に保持される。なお、端子収容室33の数は、6つに限定されない。コネクタ11は、端子収容室33が1つであってもよく、6つ以外の複数であってもよい。
【0026】
図5(a)は電線49の端末に取り付けられた端子15の斜視図、(b)は端子15が装着された端子収容室33の側部を切り欠いた要部斜視図である。
端子15は、金属板をプレス加工することにより形成される。端子15は、挿入方向の先端に、電気接触部51を有する。本実施形態では、端子15は、雌端子であるので、電気接触部51が箱形に形成される。この箱形の電気接触部51の内側には、相手端子と接触して導通するバネ片部53(
図4等参照)が折り曲げられて一体に形成される。
【0027】
電気接触部51は、挿入方向の後端に、係止端縁55が形成される。係止端縁55は、展開状態の平らな金属素板を角筒形状に折り曲げた軸線方向の後端となる。この係止端縁55は、角筒形状に折り曲げられる金属素板の折り曲げ方向両側の端が上下方向で二重に重ねられている。
【0028】
本実施形態では、この二重に重ねられる外側の金属素板端に、更に係止突起57が突出して形成される。係止突起57は、略四角錐を、頂点を通る断面で半割とした外形状を有する。この係止突起57の底面側は、係止端縁55と同一平面となる。係止突起57は、可撓係止片17に形成される後述する一対の凸条部59の間に配置される。係止突起57は、係止端縁55から可撓係止片17に向かって突出することで、可撓係止片17に設けられる後述の係止面61との係り代を増やす。
【0029】
端子15は、電気接触部51に設けられた係止端縁55の後方に、凹部63を隔てて電線接続部80の芯線カシメ部65が設けられる。凹部63は、端子15の底板部67(
図3参照)の両側縁から起立して折り曲げられた一対の側板部69が、底板部67に向かって凹状に切り欠かれることにより形成される。芯線カシメ部65は、両側の側板部69から起立方向に延びる一対のカシメ片71を有する。芯線カシメ部65は、それぞれのカシメ片71が、複数の撚り線からなる芯線73の束を、両側から巻き込むように塑性変形されて圧着される。芯線カシメ部65の後方には、芯線カシメ部65と伴に電線接続部80を構成する被覆カシメ部79が形成される。被覆カシメ部79は、一対の被覆カシメ片81を有する。一対の被覆カシメ片81は、電線49の端末の被覆を、両側から包囲するように塑性変形されてカシメられる。
【0030】
この芯線カシメ部65では、凹部63に向かって芯線73の先端が突出する。この突出した芯線73は、芯線突き出し部75となる。芯線カシメ部65は、その前後端が、先端に向かって徐々に拡がるベルマウス77として形成される。芯線カシメ部65は、これら芯線突き出し部75やベルマウス77を有することにより、所定の圧着性能が確保されている。
【0031】
本実施形態において、芯線カシメ部65及びその近傍は、芯線カシメ部65の芯線突き出し部75側のベルマウス77と、ベルマウス77から突出した芯線突き出し部75と、を含む。
【0032】
可撓係止片17は、ハウジング13に一体成形されて、端子収容室33に突出する。本実施形態において、可撓係止片17は、基端39が水平隔壁部37または底壁部41に接続して一体に成形される。基端39がハウジング側に支持された可撓係止片17は、先端が自由端となる。可撓係止片17は、挿入途中の端子15に押圧されて、係止解除方向に弾性変形する。端子15の挿入が完了して弾性復帰した可撓係止片17は、挿入後の端子15の係止端縁55を係止し、端子15を抜け止めする係止面61を備える。
【0033】
なお、本実施形態において、可撓係止片17は、基端39のみがハウジング13に接続する片持ち梁状に形成されるが、これに限定されない。可撓係止片17は、
図8に示した従来技術に開示されるような、前端の連結板部と後端の連結部とがハウジング13に支持され、中間部が浮いた状態となる両持ち梁状のバンドに一体形成されてもよい。
【0034】
図6は
図3に示した可撓係止片17の要部拡大図である。
係止面61は、可撓係止片17の先端で、端子15の挿入方向に略直交する面で形成される。可撓係止片17の先端には、この係止面61の端子15と反対側に、先端凸部83が形成される。従って、可撓係止片17の先端は、側断面視がL字形に形成される。この先端凸部83は、横穴部35に挿入される上記の解除治具によりこじられる係止解除部として利用可能となる。
【0035】
可撓係止片17は、挿入口45に対向する面が、傾斜面19となる。傾斜面19は、端子収容室33の前方に向かって徐々に端子収容室33に進入する上り傾斜の面となる。この傾斜面19は、挿入口45から挿入される端子15の進入路85の一部分を塞ぐ。これにより、傾斜面19は、挿入途中の電気接触部51に押圧されて、係止面61が係止解除方向(
図6中、下方向)へ移動される。
【0036】
この傾斜面19には、凹状逃げ部21が形成される。凹状逃げ部21は、傾斜面19を四角形状に切り欠くことにより形成される。凹状逃げ部21は、係止面61側の前辺部87が、傾斜面19と同一面となって接続される四角形の底面89を有する。この底面89は、挿入が完了した端子15の芯線カシメ部65及びその近傍に対向配置される。凹状逃げ部21は、切り欠かれている分、底面89が、傾斜面19より芯線カシメ部65及びその近傍から離間する。即ち、可撓係止片17は、傾斜面19に凹状逃げ部21が設けられている分、芯線カシメ部65及びその近傍とのクリアランスが拡充されている。
【0037】
図7は可撓係止片17を後方斜め上方より見た要部拡大図である。
また、可撓係止片17は、端子15の凹部63に対向する部分が、凹部対向面91となる。この凹部対向面91は、凹状逃げ部21の底面89と連続する。凹部対向面91は、底面89の前辺部87と連続する接続傾斜面93と、この接続傾斜面93の底面89と反対側で連続する対向平面95と、からなる。底面89、接続傾斜面93、対向平面95は、この順で傾斜角度が小さくなっている。
【0038】
可撓係止片17は、この対向平面95と接続傾斜面93とに渡って一対の平行な凸条部59が両側に形成される。一対の凸条部59は、係止面61から傾斜面19に渡って延在して端子15の凹部63に向かって突出する。
【0039】
次に、上記した構成の作用を説明する。
本実施形態に係るコネクタ11は、可撓係止片17が、ハウジング13の端子収容室33に突出して一体成形される。可撓係止片17には、端子15の挿入方向に向かって、端子収容室33に入り込む方向の傾斜面19が形成されている。端子15は、挿入過程において、先端の電気接触部51がこの傾斜面19を押圧することで、可撓係止片17を係止解除方向へ弾性変形させる。可撓係止片17を弾性変形させた端子15は、可撓係止片17に摺接しながら端子収容室33に進入する。端子15は、所定位置まで挿入されて挿入が完了すると、係止端縁55が可撓係止片17の係止面61と一致する。係止面61は、可撓係止片17が弾性復帰する方向と略平行な面となる。つまり、係止面61は、端子15の後抜け方向に略直交する面となる。端子15は、この係止面61が、係止端縁55の後方に対向配置されることにより、後抜けが規制されて端子収容室33に保持される。
【0040】
端子15は、端子収容室33に保持された状態において、芯線カシメ部65及びその近傍が傾斜面19に対向する。可撓係止片17は、端子15の挿入過程と同様に、この傾斜面19が押圧されれば、係止面61が係止解除方向へ移動し、端子15の係止端縁55に係止する係り代が減少する。
【0041】
一方、端子15は、芯線カシメ部65に、電線49の芯線73が加締められる。芯線73は、芯線カシメ部65における圧着長を確保するために、先端が芯線突き出し部75となって延出する。これら芯線カシメ部65の塑性加工による芯線73の圧着加工は、各部材の弾性反力(スプリングバック等)により、外形状に変動が生じやすい。特に、芯線カシメ部65及びその近傍では、外形状に変動が生じやすい。なお、芯線カシメ部65の近傍とは、主に芯線突き出し部75を言う。可撓係止片17は、加工精度のばらつきにより芯線カシメ部65及びその近傍が傾斜面19に干渉すれば、上記のように、係止面61が係止解除方向へ移動し、係止端縁55に対する係り代が減少する可能性がある。
【0042】
そこで、本実施形態の可撓係止片17の傾斜面19には、これら芯線カシメ部65及びその近傍との干渉を抑制する凹状逃げ部21が形成されている。凹状逃げ部21は、底面89が、傾斜面19よりも芯線カシメ部65及びその近傍に対し離間して形成される。つまり、凹状逃げ部21は、芯線カシメ部65及びその近傍の進入を許容する進入空間となっている。
【0043】
これにより、芯線カシメ部65に加工精度のばらつきが生じても、芯線カシメ部65及びその近傍が傾斜面19と干渉しにくくなる。その結果、端子保持力の低下が抑制される。
また、可撓係止片17は、凹状逃げ部21が形成されることにより、従来構造に比べ、芯線カシメ部65及びその近傍と傾斜面19との間に、クリアランスが大きく確保可能となる。可撓係止片17は、係止面61に略直交し、端子引き抜き方向と略平行な断面が、せん断破壊の生じやすいせん断長Tとなる。傾斜面19は、凹状逃げ部21により芯線カシメ部65及びその近傍との間のクリアランスが大きくなるので、このせん断長Tが大きく確保可能となる。その結果、可撓係止片17は、係止面61のせん断長Tを増大させ、係止強度を高めることによっても、端子保持力を向上させることができる。
【0044】
そして、本実施形態のコネクタ11では、可撓係止片17の凹部対向面91に、一対の凸条部59が形成される。一対の凸条部59は、それぞれが凹部対向面91の両側に沿って、係止面61から傾斜面19に渡って延びる。凸条部59の先端面は、係止面61と同一平面となる。凸条部59の後部は、傾斜面19で高く突出する。上記のせん断破壊が生じた場合、せん断面の始端は、係止面61となる。一方、せん断面の終端は、傾斜面19となる。この傾斜面19には、一対の凸条部59が高く突出しているので、傾斜面19までが破断されても、一対の凸条部59が未破断部となって残る。つまり、せん断長Tを増加させることができる。その結果、コネクタ11は、凸条部59を有しない場合に比べ、せん断長Tを長くして、端子保持力をより向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態のコネクタ11では、端子15の係止端縁55に係止している係止面61の接触領域が係り代となる。ここで、端子15の係止端縁55からは、可撓係止片17に向かって更に係止突起57が突出して形成されている。可撓係止片17は、この係止突起57が係止面61に接触する分、接触領域が増大する。その結果、コネクタ11は、係止突起57を有しない場合に比べ、係り代を増やして、端子保持力を向上させることができる。また、係止突起57は、一対の凸条部59の間で形成されるので、凸条部59との干渉を回避できる。そのため、コネクタ11は、凸条部59が係止突起57に干渉する場合に比べ、端子挿入時の可撓係止片17の退避ストロークを小さくして、ハウジング13の大型化を抑制できる。
【0046】
更に、本実施形態のコネクタ11では、芯線カシメ部65及びその近傍が、芯線カシメ部65のベルマウス77と、ベルマウス77から突出した芯線突き出し部75と、を含む。通常、芯線カシメ部65からは、芯線突き出し部75が突出する。また、芯線カシメ部65は、芯線73への傷付き等を回避するために、前後端がテーパ状に拡径されたベルマウス77として形成される。これら芯線突き出し部75やベルマウス77は、加工精度にばらつきが生じやすい。コネクタ11は、特に加工精度にばらつきの生じやすい芯線突き出し部75やベルマウス77に対し、凹状逃げ部21が対向配置されることにより、傾斜面19に対する干渉がより効果的に回避可能となっている。
【0047】
従って、本実施形態に係るコネクタ11によれば、芯線カシメ部65に対し可撓係止片17を干渉しにくくすることにより、端子保持力の低下を抑制できる。
【0048】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0049】
ここで、上述した本発明に係るコネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 挿入方向の後端に係止端縁(55)が形成された電気接触部(51)の後方に凹部(63)を隔てて電線接続部(80)の芯線カシメ部(65)が設けられた端子(15)と、
前記端子を装着するための挿入口(45)を後端面(43)に有し、前記挿入口から挿入された前記端子を収容する端子収容室(33)が形成された樹脂製のハウジング(13)と、
前記ハウジングに一体成形されて前記端子収容室に挿入された前記端子の前記係止端縁を係止して前記端子を抜け止めする係止面(61)を備えた可撓係止片(17)と、
前記可撓係止片に形成されて挿入途中の前記端子に押圧されて前記係止面を係止解除方向へ移動させる傾斜面(19)と、
前記傾斜面に形成されて挿入が完了した前記端子の前記芯線カシメ部及びその近傍に対し前記傾斜面より離間する底面(89)を有した凹状逃げ部(21)と、
を備えることを特徴とするコネクタ(11)。
[2] 上記[1]に記載のコネクタであって、
前記凹部(63)に対向する前記可撓係止片(17)の凹部対向面(91)には、前記係止面(61)から前記傾斜面(19)に渡って延在して前記凹部に向かって突出する一対の凸条部(59)が形成されることを特徴とするコネクタ(11)。
[3] 上記[2]に記載のコネクタであって、
前記係止端縁(55)には、前記一対の凸条部(59)の間に配置され、前記係止端縁から前記可撓係止片(17)に向かって突出して前記係止面(61)との係り代を増やす係止突起(57)が形成されることを特徴とするコネクタ(11)。
[4] 上記[1]〜[3]の何れか1つに記載のコネクタであって、
前記芯線カシメ部(65)及びその近傍が、前記芯線カシメ部のベルマウス(77)と、前記ベルマウスから突出した芯線突き出し部(75)と、を含むことを特徴とするコネクタ(11)。