(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記縮小対応方向への力を前記往路の出口から前記往路の入口へ順次前記コントロールレールのうちの前記復路内の部分に加えていく制御を前記付勢部に対して行う初期付勢制御部を更に有している
請求項1〜6のいずれか1項に記載の同時二軸延伸機。
前記付勢部は、前記コントロールレールのうちの前記復路内の複数部位を所定のストローク内で前記メインレールに対して接近及び離反させる複数の個別付勢部を有しており、
前記複数部位が前記ストロークの離反側の端に到達したことを検出可能な複数の離反限センサと、
前記複数の離反限センサによって全ての前記複数部位が前記ストロークの離反側の端に到達したことが検出されたときに所定の警告処理を行う警告処理部と、が更に設けられている
請求項1〜7のいずれか1項に記載の同時二軸延伸機。
前記付勢部は、前記コントロールレールのうちの前記復路内の複数部位を所定のストローク内で前記メインレールに対して接近及び離反させる複数の個別付勢部を有しており、
前記複数部位が前記ストロークの接近側の端に到達したことを検出可能な複数の接近限センサと、
前記複数の接近限センサによって全ての前記複数部位が前記ストロークの接近側の端に到達したことが検出されたときに所定の警告処理を行う警告処理部と、が更に設けられている
請求項1〜7のいずれか1項に記載の同時二軸延伸機。
前記コントロールレールは、前記復路内の少なくとも一部においては、前記リンク機構に対して前記縮小対応方向及び前記拡大対応方向のうち前記縮小対応方向へのみ当接可能である
請求項1〜9のいずれか1項に記載の同時二軸延伸機。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(延伸システムの全体構成)
図1は、本開示の実施形態に係る延伸システム1の構成を示す模式図である。なお、以下に説明する図面には、図面相互の対応関係を示すために、延伸システム1に固定的な直交座標系xyzを付すことがある。延伸システム1においては、例えば、+z側が概略上方とされてよい。以下の説明では、z軸方向が鉛直方向であるものとして説明する。
【0027】
延伸システム1は、シート状(フィルム状)の製品101を作製するシステムとして構成されている。実施形態の説明では、製品101として、樹脂フィルムを例にとって説明することがある。延伸システム1は、例えば、製品101となるシートを成形する供給部3と、成形されたシートを引き延ばして製品101とする延伸機5と、引き延ばされた製品101を巻き取る収容部7とを有している。
【0028】
供給部3及び収容部7は、例えば、公知の種々の構成と同様とされてよい。具体的には、例えば、供給部3は、樹脂材料を溶融して押し出す押出機9と、押し出された樹脂を通過させつつシート状に成形するTダイ11と、Tダイ11からのシートを冷却するキャストロール13と、冷却されたシートを延伸機5へ送り出す送出部15とを有している。また、収容部7は、例えば、引き延ばされた製品101を延伸機5から搬出する引取機17と、搬出された製品101を巻き取る巻取機19とを有している。
【0029】
(延伸機の概要)
延伸機5は、製品101をMD及びTDへ同時に引き延ばす同時二軸延伸機として構成されている。なお、延伸機5の説明において、供給部3側を入口側といい、収容部7側を出口側ということがある。
【0030】
延伸機5は、製品101のTD両側の縁部を保持する複数の保持具21(例えばクリップ)を有している。複数の保持具21は、製品101のTD両側の縁部に沿って配列され、当該縁部を保持している状態で、入口側から出口側へ(MDの下流側へ)移動される。この移動の過程において、TDの一方の縁部の保持具21とTDの他方の縁部の保持具21とはTDに互いに離れていき、また、各縁部の保持具21はMDに互いに離れていく(複数の保持具21のピッチは下流ほど大きくされる。)。これにより、製品101は、TD及びMDに同時に引き延ばされる。
【0031】
収容部7付近へ到達した保持具21は、製品101を離し、後述する復路を経由して供給部3側へ戻る。そして、供給部3から延伸機5へ供給される製品101を保持して、再度、製品101の延伸に供される。これにより、例えば、延伸機5よりも長い製品101の延伸が継続的に行われる。
【0032】
製品101の延伸に際しては、製品101に対して適宜に熱処理がなされてよい。
図1では、製品101に熱を付与する炉23が点線で模式的に示されている。製品101は、
炉23内を通過している間に上記のように延伸される。
【0033】
(延伸機の移動機構の概要)
図2は、延伸機5の一部の構成を模式的に示す平面図である。
【0034】
延伸機5は、複数の保持具21を移動させるための1対の移動機構25を有している。1対の移動機構25は、TDにおいて製品101(
図1)を挟むように配置されており、例えば、MDに平行な中心線CLに対して概略線対称の構成とされている。
【0035】
各移動機構25は、複数の保持具21が搬送される循環経路27を有している。循環経路27は、概ね入口側(供給部3側)から出口側(収容部7側)への経路である往路27aと、概ね出口側から入口側への経路である復路27bとを有しており、全体として環状(無端状)に形成されている。往路27aは、製品101のTD両側の保持具21を互いに離しつつ保持具21のピッチを広げることによって製品101を延伸させるための延伸区間27cを含んでいる。
【0036】
延伸区間27cは、図示の例では、炉23内の区間と同等とされている。なお、
図2では、1対の循環経路27は、延伸区間27cのうち一部のみにおいて、下流側(出口側)ほど互いにTDに離れるように(中心線CLに傾斜するように)延びている。後述の説明から理解されるように、循環経路27の延伸区間27c内における中心線CLに対する傾斜角は、オペレータによって適宜に設定(変更)される。従って、図示の例とは異なり、延伸区間27cの全体が中心線CLに対して傾斜していてもよい。
【0037】
各移動機構25は、循環経路27に沿って、メインレール29と、コントロールレール31とを有している。メインレール29は、例えば、保持具21を案内することに寄与する。従って、例えば、延伸区間27cにおけるTD両側の保持具21同士の距離(製品101のTDへの延伸量)は、メインレール29の位置によって規定される。コントロールレール31は、例えば、後述するリンク機構の一部を案内することに寄与する。後述するように、コントロールレール31のメインレール29に対する距離によってリンク機構の姿勢が規定され、ひいては、保持具21のピッチが規定される。
【0038】
メインレール29及びコントロールレール31それぞれは、例えば、全体として、概略、環状(無端状)に形成されている。ただし、これらのレールは、適宜な位置において、被案内物の案内に支障が生じない距離で途切れていても構わない。
【0039】
なお、
図2の往路27a内において、各レールが4本の互いに平行な線で表されている部分は、後述するレールの横断面の形状(
図3(b)及び
図4(b)参照)に対応する部分を示している。その間における2本の互いに平行な線は、レールのうち湾曲可能な部分を示している。当該湾曲可能な部分の構成は、公知の種々の構成とされてよい。
【0040】
(保持具及びリンク機構の概要)
図3(a)及び
図4(a)は、
図2の−y側の移動機構25のうち、延伸区間27cの一部を拡大して示す模式的な平面図である。なお、これらの平面図は、一部に平面透視図を含む。
図3(b)は、
図3(a)のIIIb−IIIb線における模式的な断面図である。
図4(b)は、
図4(a)のIVb−IVb線における模式的な断面図である。
図3(a)及び
図3(b)は、複数の保持具21のピッチが略最小値とされている状態を示している。
図4(a)及び
図4(b)は、複数の保持具21のピッチが略最大値とされている状態を示している。
【0041】
各循環経路27において、互いに隣り合う保持具21同士は、リンク機構33によって連結されている。そして、複数の保持具21は、循環経路27に沿って環状に配列されているとともに、複数のリンク機構33によって環状に(無端状)に連結されている。なお、
図3(a)及び
図4(a)では、図解の便宜上、環状に連結される複数の保持具21及び複数のリンク機構33のうち一部のみが図示されている。
【0042】
保持具21及びリンク機構33の構成は、例えば、公知の種々の構成と同様とされてよい。例えば、特許文献1(特開2008−44339号公報)に開示されている保持具及びリンク機構が用いられてよい。特許文献1の内容は、参照による援用(incorporated by reference)がなされてよい。
【0043】
(保持具)
保持具21は、例えば、製品101の保持に直接的に寄与する保持部35と、保持部35を支持する支持部37とを有している。
【0044】
保持部35は、例えば、製品101の縁部をその厚さ方向(z方向)に挟み込んで保持する(把持)するクリップによって構成されている。当該クリップは、例えば、
図3(b)及び
図4(b)に示すように、保持具21の進行方向に見てC字状のクリップ基部35aと、クリップ基部35aの上側の梁状部分に水平な軸回りに揺動可能に支持されている抑え部材35bとを含んでいる。不図示のアクチュエータによって抑え部材35bが揺動されると、抑え部材35bは、クリップ基部35aの下側の梁状部分に対して接近及び離反する。そして、両者が接近したときに、抑え部材35bと上記の下側の梁状部分とによって製品101は上下に挟み込まれる。
【0045】
支持部37は、例えば、保持部35が固定される支持基部37aと、支持基部37aに軸支されている2つの走行輪37bと、メインレール29に案内されるメイン被案内部39とを有している。
【0046】
支持基部37aは、適宜な形状とされてよいが、例えば、概略、保持具21の進行方向に直交する方向を長手方向とする直方体状とされており、また、進行方向に開口する中空状とされている。換言すれば、支持基部37aは、特に符号を付さないが、概略平板状の上面部と、概略平板状の下面部と、これらを進行方向に直交する方向の端部において連結している概略平板状の2つの端面部とを有している。保持部35は、2つの端面部の端部のうち、循環経路27の外側となる端面部に固定されている。
【0047】
走行輪37bは、例えば、支持基部37aに対して、進行方向に直交する水平な軸回りに回転可能に支持されている。走行輪37bは、例えば、支持基部37aに対して、進行方向に直交する方向の両側に設けられている。そして、走行輪37bは、循環経路27に沿って設けられた路面(符号省略)に接地されている。これにより、保持具21は、路面に支持され、また、走行輪37bの回転によって循環経路27上を移動(走行)する。
【0048】
メイン被案内部39は、例えば、支持基部37aから下方へ突出するように構成されている。一方、メインレール29は、上面に凹溝が形成された形状とされている。換言すれば、メインレール29は、上方に面している底面部29aと、底面部29aの側方縁部から上方へ突出し、互いに対向している外周側当接部29b及び内周側当接部29cとを有している。そして、メイン被案内部39は、外周側当接部29b及び内周側当接部29cの間に挿入され、メインレール29に対する外側及び内側への移動が規制される。これにより、保持具21は、循環経路27に沿って移動する。
【0049】
メイン被案内部39は、例えば、特に符号を付さないが、支持基部37aに対して鉛直な軸回りに回転可能な回転体を含んで構成されている。従って、メイン被案内部39は、回転体がメインレール29の凹部壁面(外周側当接部29b又は内周側当接部29c)を転がるようにして案内される。保持具21が循環経路27に沿って一定の方向に移動する場合において、回転体が外周側当接部29bを転がるときの回転方向と、回転体が内周側当接部29cを転がるときの回転方向とは逆である。従って、特に図示しないが、回転体とメインレール29の凹部壁面との間には、比較的微小な遊びがあり、回転体は、外周側当接部29b及び内周側当接部29cに選択的に当接可能である。なお、メイン被案内部39又はその回転体は、後述する第2軸部47に取り付けられていてもよい。
【0050】
(リンク機構)
図5は、2つの保持具21及び当該2つの保持具21を連結している1つのリンク機構33の構成を示す平面図である。なお、2つの保持具21のうち一方は実線で示され、他方は破線でしめされている。
【0051】
リンク機構33の進行方向に対する向き、又はリンク機構33の循環経路27の内外方向に対する向きは、1つの循環経路27において複数のリンク機構33同士で互いに同一である。これらの向きは、各循環経路27において複数のリンク機構33同士で互いに同一であれば、可逆であるし、1対の循環経路27同士で互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。ただし、本実施形態の説明では、リンク機構33の向きは、
図3(a)及び
図4(a)においては、紙面上方側が進行方向となり、
図5においては、紙面右側が進行方向となる向きであるものとする。そして、
図5は、
図3(a)及び
図4(a)とは逆に、+y側の循環経路27の保持具21及びリンク機構33を示しているものとする。
【0052】
リンク機構33は、2つの保持具21に掛け渡された長リンク41と、一方の保持具21と長リンク41とに掛け渡された短リンク43とを有している。
図3(a)及び
図4(a)に示すように、長リンク41と短リンク43との交差角度を変化させることにより、保持具21のピッチを変化させることができる。具体的には、以下のとおりである。
【0053】
長リンク41のうち、一方の保持具21(実線で示された保持具21)に対して連結されている部位(例えば端部)は、当該保持具21に対して、進行方向に直交する方向に移動可能、かつ鉛直軸回りに回転(揺動)可能とされている。具体的には、例えば、保持具21の支持基部37aの上面部及び/又は下面部には、進行方向に直交する方向に延びる案内溝37s(例えばスリット)が構成されており、当該案内溝37sに長リンク41に固定又は軸支された第1軸部45が挿入されている。
【0054】
長リンク41のうち、他方の保持具21(破線で示された保持具21)に対して連結されている部位(例えば端部)は、当該保持具21に対して、鉛直軸回りに回転(揺動)可能とされている。具体的には、例えば、長リンク41と、保持具21の支持基部37a(具体的には上面部及び/又は下面部)には、第2軸部47が鉛直方向に挿通されており、第2軸部47は、長リンク41及び保持具21の少なくとも一方に対して軸回りに回転可能である。
【0055】
短リンク43は、2つの保持具21のうち、当該短リンク43が連結される長リンク41が案内溝37sを介して連結されている保持具21(実線で示されている保持具21)に連結されている。短リンク43の保持具21に連結されている部位(例えば端部)は、保持具21に対して鉛直軸回りに回転可能とされている。具体的には、例えば、短リンク43と、保持具21の支持基部37a(具体的には上面部及び/又は下面部)には、前述の第2軸部47(ただし、他のリンク機構33の長リンク41の連結に利用されている第2軸部47)が鉛直方向に挿通されており、第2軸部47は、短リンク43及び保持具21の少なくとも一方に対して軸回りに回転可能である。
【0056】
短リンク43の長リンク41に連結されている部位(例えば端部)は、長リンク41に対して鉛直軸回りに回転可能とされている。具体的には、例えば、短リンク43と長リンク41には、第3軸部49が鉛直方向に挿通されており、第3軸部49は、短リンク43及び長リンク41の少なくとも一方に対して軸回りに回転可能である。
【0057】
長リンク41の第2軸部47に連結される部分は、案内溝37sよりも保持部35側に位置している。別の観点では、長リンク41は、保持具21の進行方向に対して傾斜している。
【0058】
短リンク43の保持具21に連結される部分は、案内溝37sよりも保持部35側に位置している。具体的には、第2軸部47が長リンク41及び短リンク43の連結に兼用されていることから明らかなように、短リンク43の保持具21に連結される部分は、進行方向に対して直交する方向において、長リンク41が保持具21に連結される部分と同一の位置にある。
【0059】
短リンク43の長リンク41に連結される部分は、長リンク41の中途(第1軸部45と第2軸部47)との間に位置している。より具体的には、当該部分は、例えば、長リンク41の概ね中間位置、及び/又は第1軸部45から短リンク43と概ね同じ長さで離れた位置にある。そして、短リンク43は、長リンク41に交差している(進行方向に対して長リンク41とは逆側に傾斜している。)。
【0060】
以上の構成のリンク機構33においては、第1軸部45を案内溝37sに沿って第2軸部47側(保持部35側、メインレール29側)へ移動させると、長リンク41及び短リンク43の進行方向に対する傾斜角は小さくなり、ひいては、保持具21のピッチが大きくなる(
図4(a))。逆に、第1軸部45を案内溝37sに沿って第2軸部47とは反対側へ移動させると、長リンク41及び短リンク43の進行方向に対する傾斜角は大きくなり、ひいては、保持具21のピッチが小さくなる(
図3(a))。
【0061】
ピッチの変化可能な範囲(ピッチの最小値及び最大値)は、例えば、第1軸部45が案内溝37s内を移動可能な範囲によって規定される。ただし、第1軸部45に当接する適宜なストッパによって最小値及び/又は最大値が規定されたり、互いに隣り合う保持具21同士の当接によって最小値が規定されたりしてもよい。
【0062】
(レールによるリンク機構の案内)
長リンク41の第2軸部47側の連結部は、保持具21に平行移動不可能に連結されているから、その進行方向に対して直交する方向の位置は、保持具21とともにメインレール29によって規定される。換言すれば、ここまでメインレール29は、保持具21を案内するものとして説明されてきたが、リンク機構33の一部を案内する
【0063】
一方、長リンク41の第1軸部45側の連結部は、コントロールレール31によって案内され、ひいては、当該連結部の進行方向に対して直交する方向の位置は、コントロールレール31によって規定される。従って、コントロールレール31のメインレール29に対する距離を進行方向の位置に応じて変化させることによって、進行方向の位置に応じて保持具21のピッチを変化させることができる。ひいては、製品101のMDへの延伸が可能になる。
【0064】
長リンク41の第1軸部45側の連結部をコントロールレール31に案内させる構成は、適宜なものとされてよい。例えば、リンク機構33は、
図3(b)及び
図4(b)に示すように、第1軸部45に連結されたコントロール被案内部51を有している。コントロール被案内部51の構成は、例えば、メイン被案内部39と同様とされてよい。具体的には、以下のとおりである。
【0065】
コントロール被案内部51は、例えば、支持基部37aから下方へ突出するように構成されている。一方、コントロールレール31は、例えば、メインレール29と同様に、上面に凹溝が形成された形状とされている。換言すれば、コントロールレール31は、上方に面している底面部31aと、底面部31aの側方縁部から上方へ突出し、互いに対向している外周側当接部31b及び内周側当接部31cとを有している。そして、コントロール被案内部51は、外周側当接部31b及び内周側当接部31cの間に挿入され、コントロールレール31に対する外側及び内側への移動が規制される。
【0066】
コントロール被案内部51は、例えば、特に符号を付さないが、支持基部37aに対して鉛直な軸回りに回転可能な回転体を含んで構成されている。従って、コントロール被案内部51は、回転体がコントロールレール31の凹部壁面(外周側当接部31b又は内周側当接部31c)を転がるようにして案内される。特に図示しないが、メイン被案内部39及びメインレール29と同様に、回転体とコントロールレール31の凹部壁面との間には、比較的微小な遊びがあり、回転体は、外周側当接部31b及び内周側当接部31cに選択的に当接可能である。
【0067】
保持具21のピッチを拡大する場合、又はピッチの縮小を規制する場合においては(以下、説明の便宜上、両場合を区別せずに、一方のみに言及することがある。)、コントロールレール31のうち内周側当接部31cがコントロール被案内部51に当接する。なお、本実施形態の説明では、内周側当接部31cがコントロール被案内部51に当接する方向(コントロールレール31がメインレール29に接近する方向)を「拡大対応方向」ということがある。この「拡大『対応』方向」という語は、本実施形態の説明では、コントロールレール31からメインレール29側への方向(レールの幅方向)にのみ用い、保持具21のピッチの拡大方向自体(レールの長さ方向)には用いない。
【0068】
逆に、保持具21のピッチを縮小する場合、又はピッチの拡大を規制する場合においては(以下、説明の便宜上、両場合を区別せずに、一方のみに言及することがある。)、コントロールレール31のうち外周側当接部31bがコントロール被案内部51に当接する。なお、本実施形態の説明では、外周側当接部31bがコントロール被案内部51に当接する方向(コントロールレール31がメインレール29から離反する方向)を「縮小対応方向」ということがある。この「縮小『対応』方向」という語は、本実施形態の説明では、コントロールレール31からメインレール29とは反対側への方向(レールの幅方向)にのみ用い、保持具21のピッチの縮小方向自体(レールの長さ方向)には用いない。
【0069】
(往路のTDにおける位置調整機構)
図2に戻って、移動機構25は、少なくとも延伸区間27cの一部において、メインレール29及びコントロールレール31のTDにおける位置を進行方向の位置毎に調整可能な機構を有している。これにより、延伸機5は、TDにおける延伸量が互いに異なる複数種類の製品101に対応することが可能となる。
【0070】
具体的には、例えば、メインレール29は、延伸区間27c内において、複数のメインエレメント29eに分割されている。複数のメインエレメント29eは、例えば、複数の支持エレメント53に個別に支持(固定)されている。複数の支持エレメント53は、鉛直軸回りに相対的に回転(揺動)可能に互いに連結されている。また、複数の支持エレメント53全体の両端(延伸区間27cの両端)とその外側の部材とは、鉛直軸回りに回転可能に連結されている。また、複数の支持エレメント53は、上記の回転によって複数の支持エレメント53がなす経路を変化させることが可能に、遊びを有しつつ連結されている。そして、エレメント駆動部55によって、支持エレメント53同士の連結部がTDに駆動されることによって、メインレール29のTDの位置が調整される。
【0071】
エレメント駆動部55の構成は、適宜なものとされてよい。図示の例では、エレメント駆動部55は、電動機55aと、当該電動機55aの回転をTDの並進運動に変換して、エレメント駆動部55同士の連結部に伝達するねじ機構とを有している。なお、エレメント駆動部55を設けずに、手作業(人力)によって支持エレメント53の位置が調整されても構わない。
【0072】
また、コントロールレール31は、例えば、延伸区間27c内において、メインレール29の分割位置と概ね同様の分割位置において分割され、複数のコントロールエレメント31eを有している。複数のコントロールエレメント31eは、複数のメインエレメント29eと同様に、個別に複数の支持エレメント53に支持されている。従って、コントロールエレメント31eは、支持エレメント53の移動によって、メインエレメント29eと共に移動可能である。
【0073】
(往路におけるコントロールレールの位置調整機構)
移動機構25は、少なくとも延伸区間27cの一部において、コントロールレール31のメインレール29との距離を進行方向の位置毎に調整可能な機構を有している。これにより、延伸機5は、MDにおける延伸量が互いに異なる複数種類の製品101に対応することが可能となる。
【0074】
具体的には、例えば、コントロールエレメント31eは、メインエレメント29eとは異なり、支持エレメント53に対してメインレール29に交差(例えば直交)する方向(TDとは限らない)に移動可能に支持されている。これにより、コントロールレール31のメインレール29に対する距離が調整される。
【0075】
コントロールレール31(コントロールエレメント31e)は、支持エレメント53に直接的に支持されていてもよいし、支持エレメント53に対して移動可能な他の部材を介して支持されていてもよい。本実施形態では、
図3(b)及び
図4(b)に示すように、コントロールレール31は、支持エレメント53に対してメインレール29に直交する方向に移動可能な可動部材57に支持されている。
【0076】
なお、
図2の例では、コントロールレール31は、延伸区間27c内だけでなく、延伸区間27cの外側においても分割されている。別の観点では、メインレール29が分割されていない位置においても分割されている。換言すれば、コントロールエレメント31eは、複数の支持エレメント53全体の外側にも設けられている。これにより、例えば、延伸区間27cとその外側との境界周辺において、コントロールレール31とメインレール29との距離の変化を緩やかにすることができる。
【0077】
コントロールエレメント31eのメインレール29に対する移動(位置決め)は、例えば、位置調整部59によってなされる。位置調整部59の構成は、適宜な構成とされてよい。例えば、位置調整部59は、
図2〜
図4(b)に示すように、回転式の電動機59a(
図2)と、電動機59aの回転を伝達するユニバーサルジョイント59b(
図2)と、ユニバーサルジョイント59bからの回転をメインレール29に直交する方向の並進運動に変換してコントロールエレメント31eに伝達するねじ機構59cとを有している。
【0078】
ねじ機構59cは、メインレール29に直交する方向に延びるねじ軸59dと、ねじ軸59dに螺合するナットとしての前述の可動部材57とを有している。ねじ軸59dは、軸方向の移動が規制されており、電動機59aによって軸回りに回転される。可動部材57は、軸回りの回転が規制されており、ねじ軸59dの回転によってねじ軸59dに沿って移動する。
【0079】
コントロールエレメント31eは、両端側の2箇所の連結部31d(
図2)において2つの可動部材57(2つの位置調整部59)に連結されている。従って、2つの電動機59aによって2つの可動部材57が駆動されることによって、コントロールエレメント31eの位置及び傾斜が調整され、ひいては、コントロールエレメント31eのメインエレメント29eに対する距離が進行方向の位置毎に調整される。電動機59aは、例えば、位置制御がなされる。
【0080】
ねじ機構59cは、セルフロック機能を有している。すなわち、電動機59aをトルクフリーの状態にして、可動部材57に対して軸方向の力を加えても、ねじ軸59dが回転して可動部材57が移動してしまうことはない。例えば、上記のように軸方向の力を加えても、ねじ軸57dと可動部材57とを回転方向に滑らす力よりも、当該力に抗する摩擦力の方が大きい。このようなセルフロック機能は、例えば、リード角を比較的小さくしたり、ねじ機構として、ボールねじ機構ではなく、滑りねじ機構を採用したりすることによって得られる。
【0081】
セルフロック機能が発揮されることにより、リンク機構33からコントロールエレメント31eへ付与される力に抗してコントロールエレメント31eの位置を保持することが容易化される。なお、セルフロック機能によらずに、電動機59aの位置制御によってコントロールエレメント31eの位置を保持することも可能である。
【0082】
(保持具を移動させる駆動機構)
図2に示すように、各移動機構25は、保持具21を循環経路27に沿って移動させるための駆動力を保持具21に付与するための入口駆動部61I及び出口駆動部61Oを有している。
【0083】
入口駆動部61Iは、例えば、回転式の入口電動機63I(
図10参照)と、入口電動機63Iの回転が伝達されて回転する入口スプロケット65Iとを有している。同様に、出口駆動部61Oは、例えば、回転式の出口電動機63O(
図10参照)と、出口電動機63Oの回転が伝達されて回転する出口スプロケット65Oとを有している。なお、以下の説明では、単に、「駆動部61」、「電動機63」及び「スプロケット65」といい、入口側と出口側とを区別しないことがある。
【0084】
電動機63は、直流モータ、交流モータ、誘導モータ、同期モータ、ステッピングモータ、サーボモータ等の適宜な方式のものとされてよい。電動機63の回転は、直接的にスプロケット65に伝達されてもよいし、歯車機構又はプーリベルト機構等の伝達機構を介してスプロケット65に伝達されてもよい。当該伝達機構は、電動機63の回転を変速してスプロケット65に伝達してもよいし、変速せずに伝達してもよい。
【0085】
スプロケット65は、鉛直軸回りに回転可能に配置されている。また、スプロケット65は、外縁に不図示の複数の歯を有しており、当該歯が保持具21の所定の部位に係合することによって、スプロケット65から保持具21に対して循環経路27に沿う方向の力が伝達される。例えば、
図3(b)及び
図4(b)に示すように、第2軸部47又は第2軸部47と同軸の突部が保持具21の上方に突出しており、当該部分に対してスプロケット65の歯が係合する。スプロケット65は、同時に2以上の保持具21に当接してもよいし、同時に1つの保持具21のみに当接してもよい。
【0086】
複数の保持具21は、複数のリンク機構33によって連結されているから、スプロケット65に係合していない保持具21に対してもリンク機構33を介して駆動部61の駆動力が伝達される。そして、全ての保持具21が循環経路27に沿って移動する。
【0087】
入口スプロケット65Iは、例えば、循環経路27において、延伸区間27cよりも上流側に位置している(延伸区間27cよりも上流側に位置している保持具21に係合する。)。出口スプロケット65Oは、循環経路27において、延伸区間27cよりも下流側に位置している(延伸区間27cよりも下流側に位置している保持具21に係合する。)。なお、本実施形態の説明において、往路27aと復路27bとの境界(別の観点では往路27aの入口及び出口)は、スプロケット65の位置である。循環経路27のうち保持具21がスプロケット65に係合する範囲は、往路27a及び復路27bのいずれにも属さないと捉えられてもよいし、当該範囲内の適宜な位置に往路27a及び復路27bの境界が定義されてもよい。
【0088】
入口スプロケット65I及び出口スプロケット65Oは、例えば、互いに同様の構成とされている。具体的には、例えば、両者は、半径及び歯のピッチが同一である。なお、本実施形態においては、入口スプロケット65I及び出口スプロケット65Oの構成は同様であることから、入口駆動部61Iと出口駆動部61Oとを比較するとき、スプロケット65の外縁の速度(保持具21を駆動する速度)についての両者の比と、スプロケット65の回転数(回転速度)についての両者の比とは同じである。同様に、力についての両者の比と、トルクについての両者の比とは同じである。従って、以下の説明では、外縁の速度と回転数とを区別せず、力とトルクとを区別しないことがある。
【0089】
所定の製品101を延伸しているとき、入口スプロケット65I及び出口スプロケット65Oそれぞれは、基本的に、一定の速度で回転される。また、このとき、両者の速度は、基本的に同一である。すなわち、入口駆動部61Iが保持具21を駆動する入口速度V
INに対する出口駆動部61Oが保持具21を駆動する出口速度V
OUTの比V
OUT/V
IN(速度比)は1で一定である。このとき、往路27a内(復路27b内)に位置する保持具21の数は一定である。
【0090】
延伸するべき製品101の種類が変更され、メインレール29及び/又はコントロールレール31の位置が変更されると、この変更後のレール位置に対応する往路27a内の保持具21の数が変化する。このときは、比V
OUT/V
INを一時的に異ならせることによって、往路27a内(復路27b内)に位置する保持具21の数が増減される。
【0091】
具体的には、比V
OUT/V
INを一時的に1より小さくすれば、往路27a内の保持具の数を増加(復路27b内の保持具の数を減少)させることができる。逆に、比V
OUT/V
INを一時的に1より大きくすれば、往路27a内の保持具の数を減少(復路27b内の保持具の数を増加)させることができる。なお、本実施形態の説明において、所定区間内における保持具の数の増加量又は減少量は、整数に限定されず、1/2等の1未満の数であってもよい。
【0092】
往路27aにおいて、入口スプロケット65Iに相対的に近い位置の保持具21及びリンク機構33は、往路27aに沿う圧縮力を受ける。この圧縮力によるピッチの縮小は、コントロールレール31が保持具21に対して拡大対応方向(本実施形態ではコントロールレール31がメインレール29に近接する方向)へ当接することによって規制される。逆に、往路27aにおいて、出口スプロケット65Oに相対的に近い位置の保持具21及びリンク機構33は、往路27aに沿う引張力を受ける。この引張力によるピッチの拡大は、コントロールレール31が保持具21に対して縮小対応方向(本実施形態ではコントロールレール31がメインレール29から離反する方向)へ当接することによって規制される。
【0093】
同様に、復路27bにおいて、出口スプロケット65Oに相対的に近い位置の保持具21及びリンク機構33は、復路27bに沿う圧縮力を受ける。また、復路27bにおいて、入口スプロケット65Iに相対的に近い位置の保持具21及びリンク機構33は、復路27bに沿う引張力を受ける。この復路27bにおける圧縮力及び引張力と、保持具21のピッチとの関係については後述する。
【0094】
(復路におけるコントロールレールの構成)
コントロールレール31の復路27b内における部分は、往路27a内における部分と同様の構成とされてもよいし、異なる構成とされてもよい。本実施形態では、異なる場合を例に取る。
【0095】
図6(a)は、
図2のVI−VI線における断面図である。
【0096】
図6(a)と
図4(b)との比較から理解されるように、コントロールレール31は、復路27bにおいては、内周側当接部31cを有しておらず、底面部31a及び外周側当接部31bによって構成されている。すなわち、コントロールレール31は、復路27bにおいては、メインレール29から離反する方向(縮小対応方向)にのみ、保持具21のコントロール被案内部51に対して当接する。この縮小対応方向への当接は、保持具21のピッチの拡大の規制又はピッチの縮小に寄与する。なお、コントロールレール31は、底面部31aを有さず、外周側当接部31bのみを有していてもよい。本実施形態の平面図においては、底面部31aを省略することがある。
【0097】
コントロールレール31は、復路27b内の少なくとも一部において、メインレール29に対する距離を進行方向の位置毎に調整可能に構成されている。例えば、
図2に示すように、コントロールレール31は、復路27b内において複数に分割されており、複数のコントロールエレメント31fを有している。互いに隣り合うコントロールエレメント31fは、鉛直軸回りに相対回転可能に互いに連結されている。複数のコントロールエレメント31f全体の両端も、コントロールレール31の他の部分と鉛直軸回りに相対回転可能に互いに連結されている。また、連結部は、遊びを有しつつ互いに連結されている。このような構成により、コントロールレール31は、復路27b内において、その経路を変化させ、メインレール29に対する位置を変化させることが可能である。
【0098】
(コントロールレールを付勢する付勢部)
移動機構25は、復路27bにおけるコントロールエレメント31fをメインレール29から離反する方向(縮小対応方向)へ付勢する機構を有している。この付勢は、保持具21のピッチの拡大の規制又はピッチの縮小に寄与する。往路27aに係る位置調整部59がコントロールエレメント31eの位置決めを主目的としていたのに対して、この付勢部67は、コントロールエレメント31fを付勢することを主目的としている。具体的には、以下のとおりである。
【0099】
上述のように、延伸すべき製品101の種類が変更された場合等においては、往路27a(延伸区間27c)を移動する複数の保持具21のピッチを調整することによって、MDにおける延伸量を調整することができる。このとき、往路27aにおける保持具の数は、ピッチの調整に伴って増減する。この増加又は減少は、復路27bに貯留されている保持具21の減少又は増加によって吸収される。これにより、循環経路27上の保持具21の総数を変更する必要性が低減される。
【0100】
復路27bに貯留されている保持具21の数が増減されるということは、復路27bにおける保持具21のピッチも変化するということである。ここで、往路27aと同様に位置調整部59によってコントロールレール31のメインレール29に対する距離を調整する場合、往路27aにおける保持具21のピッチの調整量に応じて復路27bにおけるコントロールレール31の位置を算出しなければならない。
【0101】
また、上記のように算出したコントロールレール31の位置と、実際に好適なコントロールレール31の位置とはずれるおそれがある。このずれは、例えば、レール間の屈曲率、レール間の遊び、及びレールと被案内部との遊び等がピッチに及ぼす影響を正確に演算に反映させることが困難であることから生じる。そして、算出位置と、実際に好適な位置とがずれると、ピッチを調整しているとき、又は調整後に製品101の延伸を開始したときに、リンク機構33及びレール等に過大な負荷が加えられるおそれがある。
【0102】
一方、復路27bにコントロールレール31を設けない場合においては、復路27bにおける保持具21のピッチ(保持具21の数)は自動的に規定される。すなわち、上述した煩雑な演算及び/又は過大な負荷の課題は解消される。具体的には、出口スプロケット65Oから復路27bへ保持具21が次々と押し出されることにより、復路27bのうち出口スプロケット65O側においては複数の保持具21が最小のピッチで溜まる。この溜まった複数の保持具21は、やがて入口スプロケット65Iによって引き出されていく。これにより、複数の保持具21が溜まっている領域から入口スプロケット65Iまでは、複数の保持具21が最大のピッチで存在する。復路27bにおける保持具21の数が増加又は減少したときは、ピッチが最小の保持具21の数が増加又は減少(ピッチが最大の保持具21の数が減少又は増加)する。このような動作により、復路27bにおける保持具21の数の増減に伴ってリンク機構33に過大な負荷が加えられる現象は解消される。
【0103】
ここで、上記の動作では、ピッチが最小値となる複数の保持具21が存在する範囲と、ピッチが最大値となる複数の保持具21が存在する範囲との境界において、ピッチが最小値から最大値へ変化する。別の観点では、リンク機構33は、両範囲の境界を通過するときに、最小に折り畳まれた状態から最大に開かれた状態へ急激に遷移する。その結果、上記の境界を通過するリンク機構33に衝撃が生じるおそれがある。この場合、例えば、第1軸部45が案内溝37sの端部内面に衝突する音が発生したり、リンク機構33に過大な負荷が加えられたりするおそれがある。
【0104】
そこで、復路27bにおいてもコントロールレール31を設けるとともに、付勢部67によって復路27bにおけるコントロールエレメント31fを縮小対応方向(コントロールレール29から離れる方向)へ適宜な大きさの力で付勢する。この付勢力は、コントロールエレメント31fがメインレール29に対して拡大対応方向(コントロールレール29へ近づく方向)へ移動するほど大きくされる。これにより、上記のような衝撃が生じるおそれが低減される。具体的には、以下のとおりである。
【0105】
入口駆動部61Iが復路27b内の保持具21を引っ張る力は、復路27b内の保持具21同士が引っ張り合う力(保持具21のピッチを大きくする力)として作用する。この力は、リンク機構33を介して拡大対応方向への力としてコントロールエレメント31fに伝わる。一方、付勢部67は、コントロールエレメント31fを縮小対応方向へ付勢する。すなわち、付勢部67は、入口駆動部61Iが保持具21及びリンク機構33を介してコントロールエレメント31fに付与する力とは逆向きにコントロールエレメント31fを付勢する。従って、コントロールエレメント31fは、上記の互いに逆向きの2つの力の一方が他方よりも大きいときは、上記一方の力の向きへ移動し、また、両者が釣り合うときは停止する。
【0106】
復路27bにおいては、入口駆動部61Iに近いほど、保持具21同士が引っ張り合う力が強い。すなわち、入口駆動部61Iからコントロールエレメント31fに付与される力は、入口駆動部61Iに近いほど大きい。一方、上述のように、付勢部67の付勢力は、コントロールエレメント31fがメインレール29に対して拡大対応方向へ移動するほど大きくなる。従って、コントロールエレメント31fは、入口駆動部61I側ほどメインレール29に対して拡大対応方向へ移動した位置で停止する。その結果、保持具21のピッチは、入口駆動部61I側ほど徐々に大きくなっていくことになる。すなわち、上述したような、ピッチが最小値から最大値へ変化する境界は無くされる。その結果、リンク機構33が、最小に折り畳まれた状態から最大に開かれた状態へ急激に遷移するおそれが低減される。ひいては、衝撃が生じるおそれが低減される。
【0107】
また、上記の作用を別の観点から見ると、復路27bにコントロールレール31が設けられない態様(本実施形態とは異なる態様)においてピッチが最大値となる複数の保持具21のうち、入口駆動部61Iから相対的に離れている一部の保持具21のピッチは、本実施形態では縮小され、最大値ではなくなる。その分、復路27bにコントロールレール31が設けられない態様においてピッチが最小値となる複数の保持具21が引っ張られる。その結果、復路27bにコントロールレール31が設けられない態様においてピッチが最小値となる複数の保持具21のうち、相対的に出口駆動部61Oから離れている一部の保持具21のピッチは、本実施形態では拡大され、最小値でなくなる。ひいては、リンク機構33は、復路27bにコントロールレール31が設けられない態様に比較して、復路27bの比較的長い範囲において徐々に開いていくことになる。より具体的には、例えば、出口駆動部61Oに極めて近い保持具21のピッチは最小値となり、入口駆動部61Iに極めて近い保持具21のピッチは最大値となり、ピッチは、復路27bの比較的長い範囲において最小値から最大値へ徐々に変化する。
【0108】
なお、コントロールレール31は、往路27aから出口駆動部61Oを経て復路27bへ至るまで連続性を有している。換言すれば、コントロールレール31は、メインレール29との距離を急激に(階段状に)変化させるように延びることはできず、徐々に変化させるように延びる。ひいては、コントロールレール31とメインレール29との距離によってピッチが規定されている保持具21は、復路27b内において、出口駆動部61O(出口スプロケット65O)から離れた直後に急激にピッチを変化させることはできない。従って、上記では、復路27bにおいて、出口駆動部61Oに極めて近い保持具21のピッチは最小値となると述べたが、厳密には、保持具21が出口駆動部61Oから離れた直後は、保持具21のピッチは、出口駆動部61Oにおける保持具21のピッチ(別の観点では出口スプロケット65Oの歯のピッチ)から徐々に最小値に近づくことになり、また、必ずしも最小値に至るとは限らない。同様に、上記では、復路27bにおいて、入口駆動部61Iに極めて近い保持具21のピッチは最大値となると述べたが、厳密には、保持具21が入口駆動部61Iに近づくと、保持具21のピッチは、入口駆動部61Iにおける保持具21のピッチ(別の観点では入口スプロケット65Iの歯のピッチ)に徐々に近づくことになり、また、入口駆動部61Iにおけるピッチに近づく直前に最大値であるとは限らない。
【0109】
このような事情も踏まえ、本実施形態の説明で、保持具21のピッチが最大値又は最小値という場合は、略最大値又は略最小値である場合を含むものとする。略最大値は、例えば、最大値と最小値との差の20%以下、10%以下又は5%以下の大きさの差で、最大値よりも小さい値を含む。略最小値は、例えば、最大値と最小値との差の20%以下、10%以下又は5%以下の大きさの差で、最小値よりも大きい値を含む。
【0110】
ちなみに、出口駆動部61O及び入口駆動部61Iにおける、保持具21のピッチは、例えば、ほぼ最大値とされている。出口駆動部61Oにおける保持具21のピッチをほぼ最大値にすることにより、例えば、製品101をMD方向に引き延ばす量を大きくすることが容易化される。また、入口駆動部61Iにおける保持具21のピッチを出口駆動部61Oにおける保持具21のピッチと同一にしておくことにより、例えば、両者が保持具21を駆動する速度を同一にしやすい。また、出口駆動部61O及び入口駆動部61Iにおける保持具21のピッチを大きくすることにより、例えば、レールにかかる負荷を低減できる。
【0111】
上記のように復路27bにもコントロールレール31を設けてリンク機構33の衝撃を緩和する一方で、コントロールレール31が設けられない態様と同様の効果を得ることができる。すなわち、延伸すべき製品101の種類の変更等に応じて往路27aにおける保持具21のピッチを調整したときに、復路27bにおける保持具21のピッチを自動的に調整する機能が発揮される。具体的には、以下のとおりである。
【0112】
例えば、往路27a内で保持具21のピッチが小さくされ、ひいては、往路27a内の保持具21の数が増やされると、復路27b内では保持具21の数が減らされる。復路27b内の保持具21は、その数が減ることにより、リンク機構33を介して引っ張り合いやすくなる。ひいては、入口駆動部61Iから保持具21及びリンク機構33を介してコントロールレール31に付与される拡大対応方向(メインレール29に近づく方向)への力は復路27bの少なくとも一部において大きくなる。そして、この大きくなった力と、付勢部67がコントロールレール31を縮小対応方向(メインレール29から離れる方向)へ付勢する付勢力とが釣り合う位置まで、コントロールレール31の一部は拡大対応方向へ移動する。これにより、復路27bの保持具21のピッチは、自動的に調整される。
【0113】
なお、往路27aにおける保持具21のピッチを調整するとき、復路27bに対する付勢力は、付与されていてもよいし、開放されていてもよい。すなわち、付勢力は、製品101が延伸されているときに付与されていればよい。
【0114】
コントロールレール31の復路27b内の部分に対する縮小対応方向への付勢部67の付勢力は、上記のように、コントロールレール31の復路27b内の部分の少なくとも一部が、拡大対応方向へピッチが最大となる位置まで移動することを規制する。ただし、当該付勢力は、往路27aにおけるコントロールレール31の移動の規制とは異なり、コントロールレール31の拡大対応方向への移動をある程度許容する大きさである。
【0115】
従って、付勢部67による縮小対応方向への付勢力の大きさは、入口駆動部61Iが復路27b内の保持具21を往路27aの入口側へ引っ張ることによってコントロールレール31に拡大対応方向への力が加えられるときに、復路27b内の少なくとも一部がメインレール29に対して拡大対応方向へ移動することが許容される大きさ(リンク機構33からコントロールレール31に加えられる拡大対応方向への力よりも小さい大きさ)であるということができる。このような力の大きさ(別の観点では付勢力の上限)は、入口駆動部61Iの駆動力及びリンク機構33の構成等によって異なるが、実験等によって簡便に見つけることができる。
【0116】
なお、コントロールレール31が設けられていない場合に、ピッチが最小から最大になる境界付近では、引張力(及び圧縮力)は殆ど生じていない。従って、リンク機構33の摩擦抵抗等にもよるが、理論上は、上記境界付近においては、多少なりとも縮小対応方向へコントロールレール31を付勢すれば、コントロールレール31が拡大対応方向へ移動することが規制される。換言すれば、付勢力の下限は、理論上は0超である。
【0117】
付勢部67は、例えば、復路27b内に位置する全て又は大部分(例えば8割以上)の保持具21がリンク機構33を介して互いに引っ張り合う状態となる大きさの力でコントロールレール31を付勢する。保持具21同士が引っ張り合う範囲は、概ね、ピッチが最小値よりも大きくなる範囲である。従って、このような大きさの付勢力が付与されることによって、ピッチが最小値から最大値へと変化する範囲の長さが長くなりやすい。
【0118】
付勢力の大きさは、延伸機5の製造者によって予め設定されていてもよいし、オペレータによって設定可能であってもよい。
【0119】
上述のように、復路27b内の、出口駆動部61O及び入口駆動部61I付近においては、保持具21のピッチは、厳密には最小値又は最大値になるとは限らない。これに関連して、出口駆動部61O及び/又は入口駆動部61I付近においては、付勢部67によらずに、固定された(又は位置制御された)レールによって、保持具21のピッチを積極的に調整してもよい。そして、復路27bのうち、前記固定されたレールのその長さ方向の範囲外において、付勢部67によって保持具21のピッチが自動的に調整されてもよい。
【0120】
例えば、後述する
図7(a)及び
図7(b)では、出口駆動部61O付近(紙面右側)及び入口駆動部61O付近(紙面左側)において、コントロールレール31及びコントロール被案内部51に対して紙面上方に位置している、固定された補助レール(符号省略)が設けられている。この補助レールは、コントロール被案内部51に対して、保持具21のピッチの縮小を規制する方向(拡大対応方向、メインレール29に近づく方向)に当接可能である。そして、出口駆動部61O付近で固定された補助レールは、出口駆動部61Oから離れるほど(紙面左側ほど)徐々に縮小対応方向(メインレール29から離れる方向)に位置するように傾斜している。これにより、出口スプロケット65Oから解放された保持具21が最小のピッチに急激に変化することが抑制される。また、入口駆動部61I付近で固定された補助レールは、入口駆動部61Iに近づくほど(紙面左側ほど)徐々に拡大対応方向(メインレール29に近づく方向)に位置するように傾斜している。これにより、復路27b内の保持具21の数が過大なときに、ピッチが最小の保持具21が入口スプロケット65Iに到達するおそれが低減される。
【0121】
(付勢部と位置調整部との相違)
上記のように、付勢部67は、リンク機構33からの力によってコントロールレール31が移動することを許容している。この点、付勢部67は、往路27aにおける位置調整部59と相違する。
【0122】
別の観点では、付勢部67は、位置調整部59がコントロールレール31の変位を規制するときの力よりも小さい力でコントロールレール31を付勢する。ここでいう変位を規制する力は、リンク機構33からの力によってコントロールレール31が動いてしまうことを位置調整部59が規制するために発揮可能な最大値である。この最大値は、位置調整部59の駆動源(ここでは電動機59a)の駆動力によって生じてもよいし、セルフロック機能によって生じてもよい。
【0123】
また、例えば、位置調整部59はセルフロック機能を有しているのに対して、付勢部67は、セルフロック機能を有していない。セルフロック機能を有さない付勢部67としては、例えば、後述するように、コントロールレール31に直接的(ねじ機構等を介さずに)に連結されたエアシリンダ、ばね、油圧シリンダ又はリニアモータ等が挙げられる。
【0124】
また、例えば、位置調整部59においては、コントロールレール31を目標位置に位置決めする制御が行われるのに対して、付勢部67においては、コントロールレール31に対して付与される駆動力を目標値に収束させる制御がなされてよい。
【0125】
(付勢部の具体的な構成例)
付勢部67は、例えば、復路27bの比較的長い範囲において、コントロールレール31を付勢可能に構成されている。別の観点では、コントロールレール31は、復路27bの比較的長い範囲においてメインレール29に対して移動可能に構成されている。上記比較的長い範囲は、例えば、復路27bの長さの中間位置を含む復路27bの長さの5割以上又は8割以上の長さである。
【0126】
また、例えば、付勢部67は、復路27b内においてコントロールレール31の互いに異なる位置を個別に付勢する複数の個別付勢部69を有している。複数の個別付勢部69は、例えば、互いに隣り合うコントロールエレメント31f同士の連結部の数と同じ数で設けられ、当該連結部をメインレール29に交差(例えば直交)する方向に付勢する。
【0127】
個別付勢部69の構成は、適宜なものとされてよい。
図6(a)の例では、個別付勢部69は、エアシリンダ71を有している。エアシリンダ71は、特に符号を付さないが、シリンダ部と、シリンダ部内を収容するピストンと、ピストンに固定されており、シリンダ部から延び出ているロッドとを有している。そして、エアシリンダ71は、その軸方向をメインレール29に対して交差(例えば直交)する方向に向けて配置され、シリンダ部がメインレール29に対して固定的に設けられているとともにロッドがコントロールレール31に固定されている。そして、ピストンによって区画されたシリンダ部内の2つのシリンダ室に選択的に気体(例えば空気)が供給されることによって、コントロールレール31が付勢される。また、例えば、エアシリンダ71には、ロッドとシリンダ部との相対位置を検出する位置センサが設けられている。そして、当該位置センサの検出値に基づいて、コントロールレール31が拡大対応方向(メインレール29へ近づく方向)へ移動するほど、エアシリンダ71がコントロールレール31を縮小対応方向(メインレール29から離れる方向)へ付勢する付勢力が大きくなるように、シリンダ室内の圧力が制御される。
【0128】
図6(b)は、個別付勢部69の変形例を示している。この変形例では、個別付勢部69は、ばね73を有している。ばね73の形式は適宜なものとされてよく、例えば、コイルばねであってもよいし、板ばねであってもよい。ばね73は、メインレール29等に固定的な部材と、コントロールレール31とに固定されており、コントロールレール31に対して縮小対応方向に復元力を付与する。ばね73は、例えば、第1軸部45及び案内溝37sによって規定されるコントロールレール31の移動可能範囲のいずれの位置にコントロールレール31が位置している状態でも、縮小対応方向への復元力をコントロールレール31に付与可能に設けられている。また、ばね73は、コントロールレール31が拡大対応方向へ移動するほど変形量が大きくなり、ひいては、復元力を増すように設けられている。
【0129】
なお、個別付勢部69は、上記の他にも種々可能である。例えば、個別付勢部69は、リニアモータ又は油圧シリンダを含んで構成されてよい。また、個別付勢部69は、回転式の電動機と、当該電動機の回転を並進運動に変換する伝達機構とを含んで構成されてもよい。ただし、この場合、伝達機構は、セルフロック機能を有さないものである。例えば、伝達機構は、ラックピニオン機構、又はリード角が比較的大きいボールねじ機構である。以下の説明では、便宜上、個別付勢部69としては、主として、
図6(a)に示したエアシリンダ71を含むものを例に取る。
【0130】
(付勢の初期動作)
付勢部67によってコントロールレール31の復路27b内における部分を付勢していない状態から、付勢する状態へ移行する初期動作においては、例えば、付勢部67は、復路27bの上流側(出口駆動部61O側)から順次コントロールレール31を付勢していく。具体的には、例えば、複数の個別付勢部69がエアシリンダ71を含むものである場合においては、出口駆動部61O側のエアシリンダ71から順に気体を供給していく。例えば、一のエアシリンダ71の圧力が定常状態になったら、次のエアシリンダ71への気体の供給を開始する。定常状態になったか否かは、圧力センサによって判定されてもよいし、時間によって判定されてもよい。
【0131】
(復路におけるセンサ)
移動機構25は、例えば、コントロールレール31の復路27b内におけるメインレール29との相対位置を検出可能な位置センサを有している。一方、コントロールレール31とメインレール29との距離は、保持具21のピッチ(別の観点では保持具21の数)に対応している。従って、位置センサが設けられていることにより、復路27b内の保持具21のピッチ(保持具21の数)を把握することができる。
【0132】
図7(a)及び
図7(b)は、上記のような位置センサの具体的な構成の例を示す模式的な平面図である。この図では、1対の移動機構25のうち−y側の移動機構25の復路27bの一部を示している。
【0133】
上述のように、付勢部67は、コントロールレール31の互いに異なる位置を付勢する複数の個別付勢部69を有している。各個別付勢部69は、例えば、コントロールレール31に連結されたロッド69aをその軸方向へ駆動する構成とされている。ロッド69aは、例えば、メインレール29(ここでは不図示)に交差(例えば直交)する方向に延びている。
【0134】
ロッド69aは、例えば、リンク機構33の第1軸部45が案内溝37s内を移動可能な長さに対応するストロークで移動可能である。なお、ロッド69aのストロークは、個別付勢部69の駆動源(エアシリンダ71等)のストロークが、第1軸部45の移動可能な長さよりも短いことによって、当該駆動源によって規定されてもよいし、第1軸部45の移動を案内溝37sよりも先に規制するストッパが設けられて規定されてもよい。ただし、本実施形態の説明では、ロッド69aのストロークは、第1軸部45及び案内溝37sによって規定されているものとする。
【0135】
移動機構25は、各ロッド69aに沿って引限近接スイッチ75A及び押限近接スイッチ75Bを有している(以下、単に「近接スイッチ75」といい、両者を区別しないことがある。)。近接スイッチ75は、ロッド69aに設けられた被検出部69bの近接(接触してもよい。)を検出する(被検出部69bが近接したときに所定の信号を出力する(オンされる))ものである。従って、コントロールレール31は、個別付勢部69に連結されている部位毎に、被検出部69bが引限近接スイッチ75Aに近接する位置と、被検出部69bが押限近接スイッチ75Bに近接する位置との2位置への移動が検出される。
【0136】
上記の2位置は、例えば、ロッド69aがそのストロークの両端に位置するときの被検出部69bの位置に対応している。すなわち、2つの近接スイッチ75は、コントロールレール31がメインレール29に対する接近及び離反の方向において駆動限に到達したことを検出する。具体的には、引限近接スイッチ75Aは、コントロールレール31がメインレール29から最も離れた(保持具21のピッチが最小となった)ことを検出する。押限近接スイッチ75Bは、コントロールレール31がメインレール29に最も近づいた(保持具21のピッチが最大となった)ことを検出する。
【0137】
引限近接スイッチ75A及び押限近接スイッチ75Bの組み合わせは、例えば、全ての個別付勢部69(復路27b内におけるコントロールレール31の全ての可動部位)に設けられている。従って、例えば、全ての引限近接スイッチ75Aによって被検出部69bの近接が検出された場合、復路27b内の全ての保持具21のピッチが最小になっている(保持具21の数が最大になっている)とみなされてよい。同様に、全ての押限近接スイッチ75Bによって被検出部69bの近接が検出された場合、復路27b内の全ての保持具21のピッチが最大になっている(保持具21の数が最小になっていること)とみなされてよい。すなわち、全ての近接スイッチ75によって、復路27b内の保持具21の数の増加又は減少の操作が限界であることが検知される。
【0138】
近接スイッチ75の構成は適宜なものとされてよく、例えば、誘導式、静電容量式、超音波式又は光電式等の適宜なセンサとされてよい。また、近接スイッチ75は、被検出部69bが物理的に接触することによってオンされるスイッチによって構成されていてもよい。
【0139】
(保持具を移動させる駆動力に基づく保持具の増減操作)
上述したように、延伸すべき製品101の種類が変更される場合等においては、往路27aにおいてメインレール29及びコントロールレール31の位置が変更され、これにより、MD及び/又はTDにおける延伸量が変更される。このとき、往路27aの長さの変更及び/又は保持具21のピッチの変更に伴い、往路27aに位置すべき保持具21の数も増減する。この増減が適切になされないと、例えば、リンク機構33及びレール等に過大な負荷が生じる。
【0140】
往路27aに位置すべき保持具21の数は、往路27aの長さ及び保持具21のピッチ等から算出することができる。しかし、算出した数と実際に好適な数とにはずれが生じるおそれがある。このずれは、例えば、復路27bにおけるコントロールレール31の位置についての説明で述べたように、レール間の屈曲率、レール間の遊び、及びレールと被案内部との遊び等が保持具21の数に及ぼす影響を正確に演算に反映させることが困難であることから生じる。
【0141】
そこで、本実施形態では、スプロケット65が保持具21に付与する力を監視することによって、往路27a内における保持具21の数を好適に増減する。具体的には、以下のとおりである。
【0142】
図8は、往路27a内における保持具21の数(横軸)と、駆動部61のトルク(縦軸)との関係を示す図である。この図において、線L1は、入口駆動部61Iの生じるトルクを示し、線L2は、出口駆動部61Oの生じるトルクを示している。この図は、入口駆動部61I及び出口駆動部61Oの速度を互いに同一にするように速度制御が行われている場合のトルクを示している。
【0143】
この図に示されているように、往路27aにおける保持具21の数がメインレール29及びコントロールレール31の位置によって規定される適切な数に対して少ない場合、保持具21同士はリンク機構33を介して引っ張り合いやすくなる。その結果、往路27a内の保持具21に圧縮力を付与する入口駆動部61Iの負担は低減され、往路27a内の保持具21に引張力を付与する出口駆動部61Oの負担は増加する。
【0144】
逆に、往路27aにおける保持具21の数がメインレール29及びコントロールレール31の位置によって規定される適切な数に対して多い場合、保持具21同士はリンク機構33を介して押し合いやすくなる。その結果、往路27a内の保持具21に圧縮力を付与する入口駆動部61Iの負担は増加し、往路27a内の保持具21に引張力を付与する出口駆動部61Oの負担は低減される。
【0145】
なお、
図8において、線L1及びL2は、傾きの絶対値が互いに同一の直線で描かれている。
図8はあくまで概念図であり、実際には、両者の傾きの絶対値は互いに異なっていてもよいし、各線は直線(線形)でなくてもよい。
【0146】
図8から理解されるように、入口駆動部61Iの生じるトルクと出口駆動部61Oの生じるトルクとの比(トルク比)と、保持具21の数との間には相関関係がある。従って、駆動部61によって保持具21を移動させた状態で、メインレール29及び/又はコントロールレール31の位置を変更することとし、上記のトルク比を監視することによって、保持具21の増減の要否を判断することができる。
【0147】
具体的には、例えば、入口駆動部61Iの生じるトルクT
INに対する出口駆動部61Oの生じるトルクT
OUTの比T
OUT/T
INが所定の許容範囲内に収まるように往路27a内の保持具21の数を増減させる。例えば、トルク比T
OUT/T
INが許容範囲の上限(許容上限)を超えたときは、往路27a内の保持具21の数を増加させる。また、トルク比T
OUT/T
INが許容範囲の下限(許容下限)を下回ったときは、往路27a内の保持具21の数を減少させる。
【0148】
なお、本開示において、特に断りが無い限り、上記のような処理は、等価な処理を含む。別の観点では、プログラム等で具体的に用いられる値は、T
OUT/T
INでなくてもよい。例えば、トルク比T
OUT/T
INに代えて、その逆数のT
IN/T
OUTが用いられてもよい。また、例えば、入口駆動部61Iが保持具21に付与する力をF
IN、出口駆動部61Oが保持具21に付与する力をF
OUTとしたときに、F
OUT/F
IN又はF
IN/F
OUTが用いられてもよい。また、例えば、上記とは逆に、T
IN/T
OUT、F
OUT/F
IN又はF
IN/F
OUTを用いて表現した処理は、T
OUT/T
INを用いた等価な処理を含む。また、このトルク比に基づく処理に関わらず、他の種々の処理も、等価な処理を含む。
【0149】
また、プログラム上は、判定対象の値が閾値以上か否かの判定を行っていても、このプログラム上の閾値よりも若干小さい値を概念上の閾値として捉えれば、判定対象の値が概念上の閾値を超えたか否かの判定を行っていることになる。このような事情から、本開示においては、判定対象の値が閾値よりも低い値から閾値に到達することと、閾値を上回ることとは同義のものとして扱い、また、判定対象の値が閾値よりも高い値から閾値に到達することと、閾値を下回ることとは同義のものとして扱うことがある。
【0150】
T
OUT/T
INの許容下限は、例えば、1以上とされる。すなわち、出口駆動部61Oのトルクは、基本的に入口駆動部61Iのトルク以上とされる。より詳細には、例えば、T
OUT/T
INの許容範囲は、1以上2以下(許容下限が1かつ許容上限が2)、1.5以上1.9以下(許容下限が1.5かつ許容上限が1.9)、又は1.6以上2.0以下(許容下限が1.6かつ許容上限が2.0)である。別の観点では、例えば、許容下限は、1以上1.5以下の範囲から選択され、かつ許容上限は、1.9以上2以下の範囲から選択される。なお、許容上限と許容下限とは同一の値とされても構わない。換言すれば、トルク比を許容範囲に収めるのではなく、トルク比を所定の目標値に収束させてもよい。
【0151】
トルク又は力の検出方法又は検出部は、適宜な方法又は構成とされてよい。例えば、電動機63に供給される電流を検出することによってトルク又は力が算出されてよい。電流の検出値に代えて、速度制御を行っているときの電動機63に対する電流指令が用いられてもよい。また、トルク又は力を検出するセンサが設けられてもよい。このようなセンサとしては、例えば、磁歪式、ひずみゲージ式、圧電式、光学式、ばね式又は静電容量式のものが用いられてよい。
【0152】
往路27a内における保持具21の数の増減方法は、既に述べたとおり、V
OUT/V
INを一時的に変化させる(1以外の値にする)方法である。また、トルク比が許容範囲外の値となったとき、1回の増減数及び/又は時間当たりの増減数(ゲイン)は、トルク比と許容範囲との差の大きさに応じて変化してもよいし、一定であってもよい。増減数の具体的な値(既に述べたように整数に限定されない)は、適宜に設定されてよい。一例を挙げると、1回の処理で1/10以上1以下の数で増減されてよい。
【0153】
トルク比の許容範囲(又は目標値)及び/又は保持具21の増減数(ゲイン)は、延伸機5の製造者によって予め設定されていてもよいし、オペレータによって設定可能であってもよい。
【0154】
なお、このトルク比を監視して保持具21を増減する動作は、メインレール29及び/又はコントロールレール31の位置を調整するときに特に有効である。ただし、レールの位置調整後、所定の製品101の延伸を行っているときに、この動作が行われても構わない。この場合、例えば、レールの位置調整後、温度環境の変化等によって往路27a内における保持具21の好適な数が変化してしまったときにも保持具21の数を好適な数に維持することができる。
【0155】
(レールの移動速度及び移動時間の設定)
上述のように、コントロールレール31は、往路27aにおいて、複数のコントロールエレメント31eに分割されている。そして、コントロールレール31は、コントロールレール31の分割位置を屈曲部としてその経路を変化させる。このときのコントロールエレメント31e及び/又は屈曲部の移動速度又は移動時間は適宜に設定されてよい。具体的には、例えば、以下のように設定されてよい。
【0156】
図9(a)は、コントロールレール31の移動方法の第1の例を示す模式図である。
【0157】
図2に示した構成例では、互いに隣り合うコントロールエレメント31eの互いに隣り合う端部(コントロールレール31の屈曲部を構成する端部)は、互いに連結されておらず、互いに独立に移動可能となっている。
図9(a)では、コントロールエレメント31eの端部同士は互いに連結されている、又は連結されている場合と同様に共に移動するものとして説明する。
図9(a)において、A〜Dは、コントロールレール31の屈曲部を示している。
【0158】
図9(a)において、上段の図は、コントロールレール31の調整前の状態を示し、中段の図は、調整途中の状態を示し、下段の図は、調整完了時の状態を示している。上段の図と下段の図との比較から理解されるように、この例では、屈曲部A及びBは、調整前の位置が維持され、屈曲部Cは調整前の位置から1目盛り紙面上方へ移動され、屈曲部Dは、調整前の位置から2目盛り紙面上方へ移動される。
【0159】
図9(a)の例では、屈曲部A〜Dのうち移動するもの(屈曲部C及びD)は、互いに同時に移動を開始し、互いに同一の速度で移動する。具体的には、上段の図から中段の図へ移行する過程において、屈曲部C及びDは、いずれも1目盛り進む。そして、屈曲部Cは停止する。次に、中段の図から下段の図へ移行する過程において、屈曲部Dは1目盛り進む。
【0160】
図9(b)は、コントロールレール31の移動方法の第2の例を示す模式図である。なお、実施形態の説明では、主として、この第2の例を採用する。
【0161】
図9(b)は、
図9(a)と同様の図である。また、屈曲部A〜Dの調整前の位置と調整後の位置とは同一である。すなわち、
図9(b)の上段及び下段の図は、
図9(a)の上段及び下段の図と同じである。
【0162】
図9(b)の例では、屈曲部A〜Dのうち移動するもの(屈曲部C及びD)は、互いに同時に移動を開始し、互いに同時に移動を完了する。すなわち、移動時間が互いに同一とされる。別の観点では、移動距離が短い屈曲部ほど速度が低くされる。より具体的には、例えば、屈曲部同士の速度の比と、屈曲部同士の距離の比とは逆になる。
【0163】
この場合、例えば、最も移動距離が長い屈曲部(ここでは屈曲部D)の速度を所定の基準速度に設定する。次に、この基準速度に対して、上記の最長の移動距離に対する各屈曲部の移動距離の比を乗じて、各屈曲部の速度として設定される速度を算出する。基準速度の具体的な値は適宜に設定されてよいが、一例を挙げると、2mm/minである。基準速度は、延伸機5の製造者によって予め設定されていてもよいし、オペレータによって設定可能であってもよい。
【0164】
上記のように屈曲部C及びDの移動速度(移動時間)を設定すると、
図9(b)の上段の図から中段の図へ移行する過程において、屈曲部C及びDは、いずれも調整前から調整後までの移動距離に対して互いに同一の割合の距離で進む。具体的には、屈曲部Cは、半目盛り進み、屈曲部Dは、1目盛り進む。同様に、中段の図から下段の図へ移行する過程においても、屈曲部C及びDは、いずれも調整前から調整後までの移動距離に対して互いに同一の割合で進む。
【0165】
図9(a)の中段の図と
図9(b)の中段の図とを比較すると、
図9(b)の屈曲部Cにおける屈曲は、
図9(a)の屈曲部Cにおける屈曲に比較して緩やかになっている。従って、例えば、
図9(b)の例では、
図9(a)の例に比較して、コントロールレール31の機械的な負荷が軽減される。
【0166】
上記では、屈曲部の速度に着目して説明した。ただし、
図9(b)の速度の設定方法を複数の位置調整部59(別の観点ではコントロールレール31の位置調整部59に連結される連結部31d)の速度に対して適用した場合も、
図9(b)に示した屈曲動作と同様の屈曲動作が得られる。例えば、複数の連結部31d同士における速度の比と、複数の連結部31d同士における移動距離の比とが逆にされ、複数の連結部31dが、互いに同時に移動を開始し、互いに同時に移動を完了する場合の屈曲動作も、
図9(b)と同様である。
【0167】
また、上記では、コントロールレール31のメインレール29に対する相対移動に関して説明した。ただし、第1又は第2の例は、メインレール29の移動(支持エレメント53の移動)に適用されてもよい。
【0168】
(レールを移動させる駆動力に基づく保持具の増減操作)
上記のように、レールの位置を調整するときには、往路27a内の保持具21の数がレールの位置に適した数となるように往路27a内の保持具21の数が増減される。しかし、この保持具21の増減がレールの位置の調整に遅れるおそれがある。遅れが生じた場合、リンク機構33及びレールに過大な負荷が生じるおそれがある。
【0169】
位置調整部59は、上述のように、コントロールレール31の移動に際しては、速度制御を行う。従って、上記のように保持具21の増減がレールの位置の調整に遅れた場合は、位置調整部59(電動機59a)の負荷が大きくなる。例えば、駆動部61によって循環経路27に沿って保持具21が引っ張られている区間では、コントロールレール31を縮小対応方向(メインレール29から離れる方向)へ移動させる負荷が大きくなる。逆に、例えば、駆動部61によって循環経路27に沿って保持具21が押されている区間では、コントロールレール31を拡大対応方向(メインレール29へ近づく方向)へ移動させる負荷が大きくなる。
【0170】
そこで、本実施形態では、位置調整部59の負荷を監視して、当該負荷に応じて往路27a内における保持具21の数を好適に増減する。具体的には、例えば、位置調整部59の縮小対応方向への駆動力が所定の上限値を超えたときは、往路27a内の保持具21の数を増加させるように駆動部61の速度を一時的に変化させる。逆に、位置調整部59の拡大対応方向への駆動力が上記の上限値を超えたときは、往路27a内の保持具21の数を減少させるように駆動部61の速度を一時的に変化させる。なお、このように駆動力に基づく処理として説明している場合、特に断りが無い限り、当該処理は、具体的にはトルクに基づく処理であってもよいことは、既に述べたとおりである。
【0171】
この位置調整部59の負荷に基づく保持具21の数の増減操作は、前述の駆動部61のトルク比に基づく保持具21の数の増減操作に優先して行われる。例えば、位置調整部59の駆動力が上限値を超えていない間は、駆動部61のトルク比に基づく保持具21の数の増減操作が行われ、上限値を超えたときは、駆動部61のトルク比が許容範囲内か否かに関わらず、位置調整部59の負荷に基づく保持具21の数の増減操作が行われる。
【0172】
複数の位置調整部59によってコントロールレール31の複数位置(連結部31d)を移動させている場合においては、例えば、いずれか1つの位置調整部59において駆動力が上限値を超えたときに、この位置調整部59の駆動力の方向(縮小対応方向又は拡大対応方向)に基づいて、保持具21を増加又は減少させてよい。また、例えば、2以上の位置調整部59において駆動力が上限値を超え、かつその駆動力の方向が同一でない場合は、駆動力の代表値の方向に基づいて、保持具21の増加及び減少のいずれを行うかが決定されてもよい。代表値は、例えば、最も大きい駆動力、上限値を超えた駆動力の平均値(拡大対応方向と縮小対応方向とで符号を逆にして算出した値。以下、同様。)、又は全ての位置調整部59の駆動力の平均値とされてよい。
【0173】
上記では、縮小対応方向の上限値と拡大対応方向の上限値とを同一の値として説明したが、両者は互いに異なっていてもよい。また、複数の位置調整部59間で上限値が異なっていてもよい。ただし、本実施形態の説明では、基本的に、全ての位置調整部59に対して、また、縮小対応方向及び拡大対応方向に対して、共通の上限値が設定されている場合を例にとる。上限値の具体的な値は適宜に設定されてよいが、一例を挙げると、電動機59aの定格トルク、又は定格トルク未満の範囲で適宜に設定された基準トルクの50%である。
【0174】
位置調整部59のトルク又は力の検出方法又は検出部は、駆動部61のトルク又は力の検出方法と同様に、適宜な方法又は構成とされてよい。例えば、電動機59aに供給される電流を検出することによってトルク又は力が算出されてよい。電流の検出値に代えて、速度制御を行っているときの電動機59aに対する電流指令が用いられてもよい。また、トルク又は力を検出するセンサが設けられてもよい。このようなセンサとしては、例えば、磁歪式、ひずみゲージ式、圧電式、光学式、ばね式又は静電容量式のものが用いられてよい。
【0175】
往路27a内における保持具21の数の増減方法も、既に述べたとおりである。また、駆動力が上限値を超えたとき、1回の増減数及び/又は時間当たりの増減数は、駆動力と上限値との差の大きさに応じて変化してもよいし、一定であってもよい。また、増減数が一定である場合、この増減数は、駆動部61のトルク比が許容範囲を超えたときの増減数と同一であってもよいし、異なっていてもよい。増減数の具体的な値(既に述べたように整数に限定されない)は、適宜に設定されてよい。一例を挙げると、1回の処理で1/2個増減されてよい。
【0176】
位置調整部59の駆動力の上限値及び/又は保持具21の増減数(ゲイン)は、延伸機5の製造者によって予め設定されていてもよいし、オペレータによって設定可能であってもよい。
【0177】
(レール移動の減速)
上記では、保持具21の増減がレールの位置の調整に遅れ、位置調整部59の駆動力が上限値を超えたときに、往路27a内の保持具21の数を増減させる制御について説明した。この制御に加えて、又は代えて、レールの移動速度を低下させることによって、リンク機構33及びレールの負荷を低減してもよい。
【0178】
保持具21の数を増減させる制御と併用する場合においては、例えば、保持具21の数を増減させる閾値である上限値よりも大きい上上限値を設定する。そして、位置調整部59の駆動力がこの上上限値を超えたときに、レールの移動速度を減じる。これにより、保持具21の数の増減だけでは解消できなかった遅れを低減、又は解消することができる。
【0179】
複数の位置調整部59によってコントロールレール31の複数位置(連結部31d)を移動させている場合においては、例えば、いずれか1つの位置調整部59において駆動力が上上限値を超えたときに、レールの移動速度を減じてもよいし、2以上の所定数の位置調整部59において駆動力が上上限値を超えたときに、レールの移動速度を減じてもよい。このとき、コントロールレール31を移動させている位置調整部59の全てについて速度を減じてもよいし、駆動力が上上限値を超えた位置調整部59のみ速度を減じてもよいし、駆動力が上上限値を超えた位置調整部59を含む一部(互いに隣り合う2以上の位置調整部59)のみ速度を減じてもよい。なお、本実施形態の説明では、基本的に、いずれか1つの位置調整部59において駆動力が上上限値を超えたときに、全ての位置調整部59において速度を低下させる場合を例にとる。
【0180】
上上限値は、上限値と同様に、縮小対応方向(コントロールレール31がメインレール29から離れる方向)と拡大対応方向(コントロールレール31がメインレール29に近づく方向)とで異ならせたり、複数の位置調整部59同士で異ならせたりすることも可能である。ただし、本実施形態の説明では、基本的に、全ての位置調整部59に対して、また、縮小対応方向及び拡大対応方向に対して、共通の上上限値が設定されている場合を例にとる。上上限値の具体的な値は、適宜に設定されてよいが、一例を挙げると、電動機59aの定格トルク、又は定格トルク未満の前記基準トルクの60%とされてよい。
【0181】
移動速度の低減量又は低減割合は適宜に設定されてよい。1回の又は時間当たりの低減量又は低減割合は、位置調整部59の駆動力と上上限値との差の大きさに応じて変化してもよいし、一定であってもよい。また、移動速度の低減量又は低減割合は、全ての位置調整部59又はコントロールレール31の全ての屈曲部に共通であってもよいし、互いに異なっていてもよい。移動速度の低減量又は低減割合は、拡大対応方向と縮小対応方向とで異なっていてもよい。ただし、本実施形態の説明では、基本的に、全ての位置調整部59に対して、また、縮小対応方向及び拡大対応方向に対して、共通の低減割合が設定されている場合を例にとる。その具体的な低減割合の値は適宜に設定されてよいが、一例を挙げると1/2とされてよい。
【0182】
位置調整部59の駆動力の上上限値及び/又は位置調整部59の減速の程度は、延伸機5の製造者によって予め設定されていてもよいし、オペレータによって設定可能であってもよい。
【0183】
(その他の負荷軽減動作)
上記のように、位置調整部59の駆動力に基づいて、保持具21の数の増減及び/又はレールの減速を行っても、位置調整部59の駆動力が上昇する場合においては、例えば、位置調整部59の制御を速度制御からトルク制御(力制御)に切り換えてもよい。より具体的には、例えば、上記の上上限値よりも高い切換閾値を設定する。そして、位置調整部59の駆動力が切換閾値を超えたときは、切換閾値以下の駆動力を目標値とする力制御を行う。
【0184】
このような制御により、レールの速度は低下し、過大な負荷が生じるおそれが低減される。なお、この制御を行って、レールが所定時間内に目標位置に到達しない場合等においては、所定の異常時処理がなされてよい。例えば、後述する表示装置に所定の警告画像が表示されてよい。
【0185】
複数の位置調整部59によってコントロールレール31の複数位置(連結部31d)を移動させている場合においては、例えば、いずれか1つの位置調整部59において駆動力が切換閾値を超えたときに、トルク制御に切り換えてもよいし、2以上の所定数の位置調整部59において駆動力が切換閾値を超えたときに、トルク制御に切り換えてもよい。このとき、コントロールレール31を移動させている位置調整部59の全てについてトルク制御を行ってもよいし、駆動力が切換閾値を超えた位置調整部59のみトルク制御を行ってもよいし、駆動力が切換閾値を超えた位置調整部59を含む一部(互いに隣り合う2以上の位置調整部59)のみトルク制御を行ってもよい。本実施形態では、例えば、いずれか1つの位置調整部59において駆動力が切換閾値を超えたときに、全ての位置調整部59においてトルク制御が行われる。
【0186】
切換閾値は、上限値及び上上限値と同様に、縮小対応方向(コントロールレール31がメインレール29から離れる方向)と拡大対応方向(コントロールレール31がメインレール29に近づく方向)とで異ならせたり、複数の位置調整部59同士で異ならせたりすることも可能である。ただし、本実施形態の説明では、全ての位置調整部59に対して、また、縮小対応方向及び拡大対応方向に対して、共通の切換閾値が設定されている。切換閾値の具体的な値は、適宜に設定されてよいが、一例を挙げると、電動機59aの定格トルク、又は定格トルク未満の前記基準トルクの100%とされてよい。
【0187】
トルク制御の目標値は適宜に設定されてよい。トルク制御の目標値は、全ての位置調整部59に共通であってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、トルク制御の目標値は、拡大対応方向と縮小対応方向とで異なっていてもよい。本実施形態では、例えば、全ての位置調整部59に対して、また、縮小対応方向及び拡大対応方向に対して、共通の目標値が設定されている。その具体的な値は、適宜に設定されてよい。
【0188】
切換閾値及び/又はトルク制御の目標値は、延伸機5の製造者によって予め設定されていてもよいし、オペレータによって設定可能であってもよい。
【0189】
(延伸機の信号処理系のブロック図)
図10は、上記の種々の制御を実行する延伸機5の信号処理系の構成を示すブロック図である。なお、この図は、主として、コントロールレール31の位置調整に係る要素を示しており、他の要素については省略されている。
【0190】
延伸機5は、入力された種々の信号に基づいて延伸機5の各部の動作を制御する制御装置77を有している。制御装置77は、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を有しており、CPUがROM及び外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって、各種の機能部(77a〜77j)が構築される。これらの機能部によって、例えば、上述した種々の処理が実行される。
【0191】
また、延伸機5は、入力装置79、表示装置81、各種の電動機を駆動するためのドライバ、各種の電動機の速度及び/又は位置を検出するためのセンサ等を有している。具体的には、例えば、以下のとおりである。
【0192】
入力装置79は、オペレータの操作を受け付け、その操作に応じた信号を制御装置77に出力する。表示装置81は、制御装置77からの信号に基づいて所定の画像を表示する。これらは公知の種々の構成と同様とされてよい。例えば、入力装置79は、機械式のスイッチ及びタッチパネルによって構成されている。表示装置81は、例えば、入力装置79にも利用されている前記のタッチパネルによって構成されている。タッチパネルは、液晶表示ディスプレイ又は有機ELディスプレイを含んでいる。
【0193】
入口ドライバ62Iは、制御装置77(例えば主個数制御部77d及び副個数制御部77e)からの信号に基づいて、入口電動機63Iに電力を供給する。同様に、出口ドライバ62Oは、制御装置77(例えば主個数制御部77d及び副個数制御部77e)からの信号に基づいて、出口電動機63Oに電力を供給する。なお、以下では、単に「ドライバ62」といい、入口ドライバ62I及び出口ドライバ62Oを区別しないことがある。
【0194】
ドライバ62は、図示の例では、電動機63に供給される電流に応じた信号を制御装置77(例えば主個数制御部77d)に出力する。これにより、制御装置77は、電動機63のトルクを算出することができる。ひいては、保持具21の増減のためのトルク比の監視が可能になる。
【0195】
入口回転センサ64Iは、入口電動機63Iの回転数に応じた信号を制御装置77(例えば主個数制御部77d及び副個数制御部77e)に出力する。同様に、出口回転センサ64Oは、出口電動機63Oの回転数に応じた信号を制御装置77(例えば主個数制御部77d及び副個数制御部77e)に出力する。これにより、例えば、制御装置77は、スプロケット65の速度をフィードバック制御することが可能になる。なお、以下では、単に「回転センサ64」といい、入口回転センサ64I及び出口回転センサ64Oを区別しないことがある。回転センサ64の構成は、適宜なものとされてよく、例えば、エンコーダであってもよいし、レゾルバであってもよい。
【0196】
複数の位置調整部59(ここでは1つのみ図示)のそれぞれは、制御装置77(例えば速度制御部77g)からの信号に基づいて電動機59aに電力を供給するドライバ59eと、電動機59aの回転数に応じた信号を制御装置77(例えば速度制御部77g)に出力する回転センサ59fとを有している。これにより、例えば、制御装置77は、コントロールレール31の位置及び速度をフィードバック制御することが可能になる。
【0197】
ドライバ59eは、図示の例では、電動機59aに供給される電流に応じた信号を制御装置77(例えば副個数制御部77e及び速度再設定部77f)に出力する。これにより、制御装置77は、電動機59aのトルクを算出することができる。ひいては、位置調整部59の駆動力の監視(並びに当該監視に基づく保持具21の増減及び/又はコントロールレール31の減速)が可能になる。
【0198】
複数の個別付勢部69(ここでは1つのみ図示)のそれぞれは、制御装置77(例えば初期付勢制御部77h及び付勢力制御部77i)からの信号に基づいて付勢力を生じる。より具体的には、例えば、複数の個別付勢部69がエアシリンダ71を含んで構成されている場合においては、エアシリンダ71へ気体を供給する空圧回路69cに信号が入力される。
【0199】
空圧回路69cは、例えば、特に図示しないが、圧力源(例えばポンプ、ボンベ及び/又はアキュムレータ)と、圧力源からエアシリンダ71への気体の流れを制御するバルブを含んでいる。なお、空圧回路69cは、図示のように個別付勢部69毎に設けられてもよいし、一部(例えば圧力源)又は全部が、複数(例えば全て)のエアシリンダ71に対して共通に設けられ、同一の圧力の気体を複数のエアシリンダ71に対して供給してもよい。
【0200】
複数の個別付勢部69(ここでは1つのみ図示)のそれぞれは、付勢力に応じた信号を制御装置77(例えば付勢力制御部77i)に出力する。これにより、例えば、制御装置77は、付勢力をフィードバック制御することができる。より具体的には、例えば、複数の個別付勢部69がエアシリンダ71を含んで構成されている場合においては、エアシリンダ71に供給されている気体の圧力を検出する圧力センサ69dの信号が制御装置77に出力される。
【0201】
圧力センサ69dの構成は公知の種々のものとされてよい。圧力センサ69dは、図示のように個別付勢部69毎に設けられてよい。また、上述のように、空圧回路69cの一部(例えば圧力源)又は全部が、複数(例えば全て)のエアシリンダ71に対して共通に設けられ、同一の圧力が複数のエアシリンダ71に付与される場合においては、その圧力を検出するように、複数のエアシリンダ71に対して共通に設けられてもよい。
【0202】
近接スイッチ75は、被検出部69bが接近したときに所定の信号を制御装置77(例えば警告処理部77j)に出力する。
【0203】
制御装置77が後述するフローチャートのいずれかのステップを実行するとき、制御装置77は、所定の機能部(77a〜77g)のいずれかとして機能する。従って、機能部(77a〜77g)の動作については、後述のフローチャートの説明と共に説明する。
【0204】
初期付勢制御部77hは、付勢部67によってコントロールレール31の復路27b内における部分の付勢を開始するときに、付勢部67を制御する機能部である。初期付勢制御部77hは、例えば、複数の個別付勢部69がエアシリンダ71を含むものである場合においては、出口駆動部61O側のエアシリンダ71から順に気体を供給していくように、エアシリンダ71に気体を供給する空圧回路69cを制御する。
【0205】
付勢力制御部77iは、上記の初期付勢制御部77hによる制御に続いて、付勢部67がコントロールレール31を付勢する付勢力が所定の目標値に収束するように付勢部67を制御する。当該制御は、例えば、上記のようにフィードバック制御とされてよい。目標値は、コントロールレール31が拡大対応方向(メインレール29に近づく方向)へ位置するほど大きく設定される。なお、初期付勢制御部77hの制御によって付勢を開始するときの付勢力の目標値は、付勢力制御部77の制御における目標値と同様に設定されてもよいし、異なる方法により設定されてもよい。
【0206】
警告処理部77jは、全ての引限近接スイッチ75Aによって被検出部69bの近接が検出された場合、又は全ての押限近接スイッチ75Bによって被検出部69bの近接が検出された場合に、所定の警告処理を実行する。警告処理は、例えば、表示装置81に所定の警告画像を表示させる処理である。
【0207】
(フローチャート)
図11は、製品101の種類が変更された場合等において、制御装置77が実行するピッチ変更処理の手順の一例を示すフローチャートである。この処理においては、上述した種々の処理が行われる。この処理は、例えば、オペレータによって入力装置79に対して所定の操作が行われたときに開始され、又は所定の操作が行われたことをトリガとして支持エレメント53の位置調整等が完了したときに開始される。
【0208】
ステップST1では、制御装置77は、オペレータが入力装置79に対する操作によって設定したMDにおける延伸量等に基づいて、コントロールレール31の移動距離を算出する。具体的には、例えば、制御装置77(位置設定部77a)は、まず、延伸量等に基づいて、コントロールレール31の複数の連結部31d(複数の位置調整部59)それぞれについて、ピッチ変更後の目標位置を算出する。そして、制御装置77(速度設定部77b)は、複数の連結部31dそれぞれについて、現在位置と目標位置との差を算出する。
【0209】
ステップST2では、制御装置77(速度設定部77b)は、ステップST1で算出した複数の連結部31dの移動距離に基づいて、複数の連結部31dの移動時間が互いに同一になるように、複数の連結部31d(複数の電動機59a)の速度を設定する。
【0210】
ステップST3では、制御装置77は、保持具21の移動速度Vcが所定の設定値になるように入口駆動部61I及び出口駆動部61Oを制御する。このときの設定値は、例えば、コントロールレール31の位置調整用のものであり、製品101を延伸するときの保持具21の移動速度とは異なり、例えば、製品101を延伸するときの移動速度よりも遅い。ただし、移動速度Vcは製品101を延伸するときの速度と同等とされても構わない。
【0211】
ステップST4では、制御装置77(位置制御部77c及び速度制御部77g)は、連結部31dがステップST1で設定した目標位置へ、ステップST2で設定した速度で到達するように、位置制御及び速度制御を行う。この制御は、例えば、回転センサ59fの検出値に基づくフィードバック制御とされてよい。なお、特に図示しないが、コントロールレール31(連結部31d)自体の位置を検出する位置センサに基づいて、フルクローズドループの制御が行われてもよい。
【0212】
ステップST5では、制御装置77(速度再設定部77f)は、位置調整部59の電動機59aがコントロールレール31を移動させるために生じているトルクT
Rが上上限値T
UU以下か否か判定する。そして、制御装置77は、否定判定のときは、ステップST6へ進み、肯定判定のときは、ステップST6をスキップしてステップST7へ進む。
【0213】
ステップST6では、制御装置77(速度再設定部77f)は、位置調整部59がコントロールレール31を移動させる速度V
Rを減じる。このときの減速は、例えば、既述のように、速度V
Rを現在の速度の1/2にするものである。なお、ステップST13を経由してステップST6が繰り返されることにより、速度V
Rは更に低速に再設定されてよい。
【0214】
ステップST7では、制御装置77(副個数制御部77e)は、位置調整部59の電動機59aがコントロールレール31を移動させるために生じているトルクT
Rが上限値T
U以下か否か判定する。そして、制御装置77は、否定判定のときは、ステップST8又はST9へ進み、肯定判定のときは、ステップST10へ進む。
【0215】
ステップST8又はST9では、制御装置77(副個数制御部77e)は、往路27a内における保持具21の数を増減するように入口駆動部61I及び出口駆動部61Oの速度を制御する。具体的には、トルクT
Rが縮小対応方向(コントロールレール31をメインレール29から離す方向)のものであるときは、保持具21の数を増加させ(ステップST8)、トルクT
Rが拡大対応方向(コントロールレール31をメインレール29に近づける方向)のものであるときは、保持具21の数を減少させる(ステップST9)。なお、このときの増減量は、例えば、1/2個などの一定の値である。
【0216】
ステップST10では、制御装置77(主個数制御部77d)は、トルク比T
OUT/T
INが許容範囲PR内に収まっているか否か判定する。そして、制御装置77は、否定判定のときは、ステップST11又はST12へ進み、肯定判定のときは、ステップST11及びST12をスキップしてステップST13へ進む。
【0217】
ステップST11又はST12では、制御装置77(主個数制御部77d)は、往路27a内における保持具21の数を増減するように入口駆動部61I及び出口駆動部61Oの速度を制御する。具体的には、トルク比T
OUT/T
INが許容範囲を超えているときは、保持具21の数を増加させ(ステップST11)、トルク比T
OUT/T
INが許容範囲を下回っているときは、保持具21の数を減少させる(ステップST12)。なお、このときの増減量は、例えば、1/10以上1以下から選択された一定の値である。
【0218】
ここで、制御装置77は、ステップST8又はST9に進んだときは、ステップST10〜ST12をスキップしてステップST13へ進み、ステップST8又はST9に進まなかったときは、ステップST10〜ST12を経由してステップST13へ進む。これにより、位置調整部59の電動機59aがコントロールレール31を移動させるために生じているトルクT
Rに基づく保持具21の数の増減は、トルク比T
OUT/T
INに基づく保持具21の数の増減に優先して実行されることになる。
【0219】
ステップST13では、制御装置77は、コントロールレール31がステップST1で特定した目標位置に到達したか否か判定する。そして、制御装置77は、否定判定のときはステップST4へ戻り、肯定判定のときはステップST14へ進む。
【0220】
ステップST14〜ST16は、ステップST10〜ST12と同様である。ただし、ステップST14で否定判定がなされて往路27aにおける保持具21の数が増減された場合、制御装置77は、ステップST14に戻る。コントロールレール31の移動が完了してからもトルク比に基づいて往路27a内の保持具21の数が調整されることによって、例えば、コントロールレール31の移動中に調整仕切れなかった分が調整される。
【0221】
そして、制御装置77は、ステップST14で肯定判定がなされると、保持具21の移動速度VcをステップST3以前の速度に復元し(ステップST17)、処理を終了する。
【0222】
以上のとおり、本実施形態では、延伸機5は、複数の保持具21と、1対の移動機構25と、複数のリンク機構33とを有している。複数の保持具21は、シート状の延伸対象物(製品101)の横方向(TD)縁部をそれぞれ保持する。1対の移動機構25は、製品101のMD両側に位置する1対の循環経路27に沿って複数の保持具21を移動させる。複数のリンク機構33は、それぞれ循環経路27上で互いに隣り合う保持具21を連結しており、リンク(長リンク41及び短リンク43)がなす姿勢によって複数の保持具21のピッチを規定する。
【0223】
また、1対の循環経路27それぞれは、往路27aと、復路27bとを有している。往路27aは、製品101を保持している複数の保持具21を他方の循環経路27からTDに離しつつ縦方向(MD)に移動させる区間(延伸区間27c)を含む。復路27bは、製品101を保持していない複数の保持具21を往路27aの出口から往路27aの入口へ移動させる。
【0224】
また、1対の移動機構25それぞれは、入口駆動部61Iと、出口駆動部61Oと、メインレール29と、コントロールレール31と、付勢部67とを有している。入口駆動部61Iは、往路27aの入口に位置している保持具21に当接して当該保持具21を下流へ駆動する。出口駆動部61Oは、往路27aの出口に位置している保持具21に当接して当該保持具21を下流へ駆動する。メインレール29は、循環経路27に沿って延びており、複数の保持具21を案内する。コントロールレール31は、メインレール29に沿って延びており、複数のリンク機構33を案内し、メインレール29との距離によって複数のリンク機構33の姿勢を規定し、これにより複数の保持具21のピッチを規定する。また、コントロールレール31は、メインレール29が延びる方向の位置毎にメインレール29との距離が可変な部分を含んでいる。付勢部67は、コントロールレール31のうちの復路27b内の部分を付勢する。
【0225】
そして、コントロールレール31のメインレール29に対する接近方向及び離反方向のうち、保持具21のピッチが小さくなるものを縮小対応方向(本実施形態では離反方向)とし、その逆方向を拡大対応方向(実施形態では近接方向)としたときに、付勢部67は、コントロールレール31のうちの復路27b内の部分を縮小対応方向へ付勢する。この付勢力は、コントロールレール31の復路27b内の部分が拡大対応方向に位置するほど大きくされる。また、入口駆動部61Iが復路27b内の保持具21を往路27aの入口側へ引っ張り、これにより、入口駆動部61Iから複数のリンク機構33を介してコントロールレール31の復路27b内の少なくとも一部に拡大対応方向への力が付与されたときを考える。このとき、付勢部67は、上記の拡大対応方向への力と、付勢部67による縮小対応方向への力とが釣り合う位置までコントロールレール31の前記一部が移動することを許容する。
【0226】
従って、例えば、前述のように、コントロールレール31の復路27b内の部分を往路27a内の部分と同様に位置決めする態様とは異なり、復路27b内のピッチを自動的に調整することができる。その結果、コントロールレール31の復路27b内のメインレール29に対する位置について煩雑な計算を行う必要性がなくなる。また、計算された位置と実際に好適な位置とのずれに起因してリンク機構33及びレールに過大な負荷が生じるおそれがなくなる。その一方で、コントロールレール31を復路27b内に設けない態様とは異なり、出口駆動部61Oから圧縮力を受ける範囲と、入口駆動部61Iから引張力を受ける範囲との境界を通過するリンク機構33が急激に開かれるおそれが低減される。その結果、打撃音を低減したり、リンク機構33等の負荷を軽減したりすることができる。
【0227】
また、本実施形態では、付勢部67は、復路27b内の8割以上の保持具21がリンク機構33を介して互いに引っ張り合う状態となる大きさの力でコントロールレール31を付勢してよい。
【0228】
すなわち、復路27b内の比較的長い範囲に亘ってリンク機構33は引張力を受けてよい。この場合、復路27b内の複数の保持具21は、比較的長い範囲に亘ってピッチが最小の状態からピッチが最大の状態へ開いていくことになる。ひいては、リンク機構33が急激に開かれるおそれを低減する効果が向上する。
【0229】
また、本実施形態では、制御装置77は、縮小対応方向(コントロールレール31をメインレール29から離す方向)への力を往路27aの出口から往路27aの入口へ順次コントロールレール31の復路27b内の部分に加えていく制御を付勢部67に対して行う初期付勢制御部77hを有していてよい。
【0230】
例えば、上記とは異なる態様で付勢の初期動作を行うと(そのような態様も本開示に係る技術に含まれる)、復路27b内におけるピッチ(コントロールレール31のメインレール29に対する位置)は不規則になったり、往路27aの出口側ほど大きくなったりする。そして、例えば、この状態で駆動部61による保持具21の移動が開始されると、出口駆動部61Oによる押す力、及び入口駆動部61Iによる引っ張る力によって、下流側ほどピッチが大きくなる状態へ遷移していく。その結果、リンク機構33及びコントロールレール31に加えられる負荷が大きくなるおそれがある。しかし、上記のように、上流側から順次コントロールレール31を付勢すれば、当初から、運転時と同様の状態とされることから、負荷が大きくなるおそれが低減される。
【0231】
また、本実施形態では、付勢部67は、コントロールレール31のうちの復路27b内の複数部位(連結部31d)を所定のストローク内でメインレール29に対して接近及び離反させる複数の個別付勢部69を有している。移動機構25は、連結部31dが離反側のストローク限に到達したことを検出可能な複数の離反限センサ(引限近接スイッチ75A)を有している。制御装置77は、複数の引限近接スイッチ75Aによって全ての連結部31dが離反側のストローク限に到達したことが検出されたときに所定の警告処理を行う警告処理部77jを有している。
【0232】
従って、例えば、オペレータは、復路27bに貯留できる保持具21の数が限界(本実施形態では上限)に到達し、ひいては、往路27aにおけるピッチの操作(本実施形態では拡大操作)が限界に到達したことを知ることができる。そして、オペレータは、循環経路27上の一部において複数の保持具21及び複数のリンク機構33の連結を解除し、保持具21及びリンク機構33の数を減らして再度連結する(循環経路27上における総数を減らす)などの適切な方策を講じることができる。
【0233】
離反限センサ(引限近接スイッチ75A)について述べたが、接近限センサ(押限近接スイッチ75B)についても同様である。この場合は、例えば、オペレータは、復路27bに貯留できる保持具21の数が限界(本実施形態では下限)に到達し、ひいては、往路27aにおけるピッチの操作(本実施形態では縮小操作)が限界に到達したことを知ることができる。
【0234】
また、本実施形態では、コントロールレール31は、復路27b内の少なくとも一部においては、リンク機構33(コントロール被案内部51)に対して縮小対応方向(メインレール29から離れる方向)及び拡大対応方向(メインレール29に近づく方向)のうち縮小対応方向へのみ当接可能である。
【0235】
より具体的には、コントロールレール31は、往路27a内の少なくとも一部においては、リンク機構33(コントロール被案内部51)に対して縮小対応方向へ当接可能な第1当接部(外周側当接部31b)、及びリンク機構33(コントロール被案内部51)に対して拡大対応方向へ当接可能な第2当接部(内周側当接部31c)を有している。一方、コントロールレール31は、復路27b内の少なくとも一部においては、外周側当接部31b及び内周側当接部31cのうち外周側当接部31bのみを有している。
【0236】
従って、コントロールレール31は、付勢部67による付勢方向(本実施形態では縮小対応方向)とは反対方向への移動によって、コントロール被案内部51から離反することができる。これにより、例えば、リンク機構33のメンテナンスを行うことが容易化される。また、例えば、複数の保持具21及び複数のリンク機構33の一部の連結の解除及び再度の連結が容易化される。これにより、保持具21及びリンク機構33の数を増減したり、保持具21及びリンク機構33の一部を交換したりすることが容易化される。
【0237】
(変形例)
実施形態では、付勢部67によって、コントロールレール31の復路27b内の部分を縮小対応方向(実施形態ではメインレール29から離れる方向)へ付勢することについて述べた。ただし、付勢部67によって、コントロールレール31の復路27b内の部分を拡大対応方向(実施形態ではメインレール29へ近づく方向)へ付勢してもよい。この付勢力は、コントロールレール31の復路27b内の部分が縮小対応方向に位置するほど大きくされる。また、出口駆動部61Oが復路27b内の保持具21を往路27aの入口側へ押し、これにより、出口駆動部61Oから複数のリンク機構33を介してコントロールレール31の復路27b内の少なくとも一部に縮小対応方向への力が付与されたときを考える。このとき、付勢部67は、上記の縮小対応方向への力と、付勢部67による拡大対応方向への付勢力とが釣り合う位置までコントロールレール31の復路27b内の前記一部が移動することを許容する。その結果、実施形態と同様に、ピッチは、比較的長い範囲で最小値から最大値へと変化することになる。
【0238】
図6(c)は、上記のような変形例におけるコントロールレール31の復路27b内における構成の一例を示している。この図に示すように、コントロールレール31は、実施形態とは逆に、外周側当接部31b及び内周側当接部31cのうち内周側当接部31cのみを有していてもよい。
【0239】
なお、以上の実施形態及び変形例において、製品101は延伸対象物の一例である。引限近接スイッチ75Aは離反限センサの一例である。押限近接スイッチ75Bは接近限センサの一例である。外周側当接部31bは第1当接部の一例である。内周側当接部31cは第2当接部の一例である。
【0240】
本開示に係る技術は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0241】
1対の移動機構は、左右対称の構成でなく、非対称の構成とされていてもよい。別の観点では、本開示の同時二軸延伸機は、延伸対象物をTD及びMDに対して斜めに延伸するものを含む。
【0242】
リンク機構の構成は、実施形態で例示したものに限定されず、公知の種々のものとされてよい。例えば、一端が保持具に共通に軸支されるとともに他端がコントロールレールに別々に案内される2本のリンクを互いに交差するように保持具毎に設けるとともに、互いに隣り合う保持具間でリンクの前記他端同士を連結したものが採用されてもよい。また、実施形態では、コントロールレールのメインレールに対する離反方向及び接近方向が、縮小対応方向及び拡大対応方向となったが、リンク機構の構成によっては、逆にすることも不可能ではない。
【0243】
レール(29、31)及び被案内部(39、51)は、凹溝内に被案内部が挿入される構成、又はこの構成を基本として変形した構成(
図6(a)〜
図6(c))に限定されない。例えば、厚さ方向を水平方向とした板状のレールと、このレールを水平方向に挟む1対の被案内部とを有する構成、又はこの構成を基本として変形した構成が採用されてもよい。なお、この構成においても、往路においてはコントロールレールが1対の被案内部の間に位置し、復路においてはコントロールレールが1対の被案内部の外側に位置するように、コントロールレールの位置を往路と復路とでずらせば、復路においてコントロールレールをリンク機構に対して、拡大対応方向及び縮小対応方向の一方にのみ当接させることが可能である。また、被案内部は、レールを転がる回転体を有さず、レールに対して摺動してもよい。
【0244】
駆動部(スプロケット)は、1つの循環流路上において3以上設けられてもよい。この場合、循環経路上で互いに隣り合う任意の2つの駆動部について、実施形態で例示したトルク比に基づく保持具の数の制御等が行われてよい。
【0245】
実施形態で例示したトルク比に基づく保持具の数の制御、レールを駆動する負荷に基づく保持具の数の制御、及びレールの移動時間を複数の部位間で同一にする制御等の、本実施形態で提案した種々の新しい特徴は、復路内のコントロールレールを付勢する構成に対して組み合させなくてもよい。これらの構成又は動作は、公知のものと同様とされてよい。また、位置調整部によるメインレールとコントロールレールとの間隔調整と入口駆動部及び出口駆動部によるVout/Vinの制御は独立して行っても良い。