(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、電力を伝達する手段として、送電側から受電側へ無線で電力を供給する無線給電装置の利用が進みつつある。この無線給電装置としては、例えば100kHz以下の帯域で用いられる電磁誘導による電力の供給が普及している。しかし、100kHz以下の帯域を利用する場合、十分な電力を供給するには、送電用および受電用のコイルの大型化を招くという問題がある。そこで、比較的小型のコイルを用いて大きな電力を供給する手段として、磁界共鳴を利用した無線給電が提案されている。
【0003】
この磁界共鳴を利用した無線給電では、送電用および受電用のコイルを小型化でき、伝達効率も電磁誘導に比較して高めることができるという利点を有している。また、受電用のコイルが小型化されることにより、例えばロボットなどの移動体への電力の供給に適しているという利点を有している(特許文献1)。
【0004】
ところで、このような磁界共鳴に限らず無線給電では、1つの送電設備から2つ以上の機器に電力を供給したいという要求がある。すなわち、1つの送電用コイルから、2つ以上の機器に電力を供給することが望まれている。しかし、1つの送電用コイルから2つ以上の機器に同時に電力を供給する場合、
図9に示すように送電用コイルから供給される電力が対象となる機器の増減によって変化する。磁界共鳴を利用する場合、送電コイルから供給される電力が変化すると、送電用コイルと各受電コイルとの間のインピーダンスが変化する。すなわち、1つの送電コイルに対し特定の数の受電コイルとの間の磁界共鳴にインピーダンスの最適化を図ると、受電コイルの数が変化したとき、各受電コイルの入力インピーダンスが変化する。特に、数MHz帯域の高周波を利用する磁界共鳴の場合、インピーダンスのわずかな変化が伝達効率の大きな低下を招くという問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、無線給電装置の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態による無線給電装置10は、送電ユニット11および受電ユニット12を備えている。送電ユニット11は、外部の電源13に接続している。受電ユニット12は、この送電ユニット11と対向して設けられ、電力を消費する負荷14に接続している。送電ユニット11と受電ユニット12との間は、数MHzから数十MHzの高周波による磁界共鳴によって無線すなわち非接触で電力が供給される。本実施形態の場合、無線給電装置10は、
図2に示すように固定側の設備から移動体へ電力を供給するために用いられる。
図2および
図3は、工場などにおいて用いられるAGV(Auto Guided Viecle)システム20に無線給電装置10を適用した例を示している。
図2および
図3に示す場合、送電ユニット11は、固定側の充電エリア21に設けられている。一方、受電ユニット12は、充電エリア21に対して相対的に移動する運搬車両22に設けられている。AGVシステム20の場合、工場の各部署で必要となる部品や組み付けられた製品は、運搬車両22によって予め設定された搬送経路に沿って運搬される。搬送経路は、マーカ用のテープ23で形成され、工場などの設備の床面に設けられている。AGVシステム20は、この搬送経路であるテープ23に沿って移動する運搬車両22を複数備えている。複数の運搬車両22は、テープ23に沿って移動する際に、搬送経路の途中に設けられている充電エリア21を通過する。これにより、運搬車両22は、充電エリア21を通過する際に、充電エリア21から無線給電装置10によって磁界共鳴を利用した非接触で電力の供給を受ける。なお、無線給電装置10を適用する機器は、AGVシステム20に限らない。無線給電装置10は、自動車や電気車を備える車両システムのように、例えば複数の自動車や電気車の移動体に対して、特定の位置に設けられた充電エリアから充電を行なう構成に適用することができる。複数の運搬車両22は、それぞれ受電ユニット12を搭載している。
【0014】
図1に示すように送電ユニット11は、送電側共振型アンプ回路31および高周波生成部32を備えている。送電側共振型アンプ回路31は、送電コイル33、スイッチング素子34、コンデンサ35、コンデンサ36およびコイル37を有している。送電ユニット11は、電源13に接続している。高周波生成部32は、図示しない発振器を有しており、送電ユニット11のキャリアクロックとなる駆動信号を生成する。スイッチング素子34は、高周波生成部32で生成された駆動信号に基づいて駆動される。これにより、送電側共振型アンプ回路31は、高周波を生成する。スイッチング素子34のスイッチングによって生成された高周波は、送電コイル33へ供給される。送電コイル33は、図示しない基板に平面状に形成された平面コイルで構成されている。送電コイル33は、コンデンサ35、コンデンサ36およびコイル37とともに共振回路を形成する。送電コイル33は、送電ユニット11から受電ユニット12へ電力を供給、すなわち送電するとき、送電側共振型アンプ回路31で生成された高周波を発振する。
【0015】
受電ユニット12は、受電側共振型アンプ回路41および信号生成部42を備えている。受電側共振型アンプ回路41は、送電ユニット11の送電側共振型アンプ回路31と実質的に同一の構成であり、受電コイル43、スイッチング素子44、コンデンサ45、コンデンサ46およびコイル47を有している。受電ユニット12は、コンバータ48、蓄電池49および負荷14に接続している。受電コイル43は、図示しない基板に平面状に形成された平面コイルで構成されている。受電コイル43は、コンデンサ45、コンデンサ46およびコイル47とともに共振回路を形成する。
【0016】
送電ユニット11と受電ユニット12との間で磁界共鳴が生じると、受電側共振型アンプ回路41には高周波が生じる。受電側共振型アンプ回路41では、スイッチング素子44のスイッチングによってこの高周波を整流する。コンバータ48は、DC/DCコンバータなどで構成されており、整流された電力の電圧を調整する。蓄電池49は、例えばリチウムイオン電池などの二次電池であり、受電側共振型アンプ回路41で整流され、コンバータ48で電圧が調整された電力を蓄える。負荷14は、例えばAGVシステム20の運搬車両22を駆動するモータなどを有しており、送電ユニット11から受電ユニット12に供給され、蓄電池49に蓄えられている電力によって駆動される。
【0017】
信号生成部42は、受電ユニット12のキャリアクロックとなる受電側駆動信号を生成する。信号生成部42は、送電側の駆動信号に対して位相をずらした受電側駆動信号を生成する。受電側共振型アンプ回路41を構成するスイッチング素子44は、信号生成部42で生成された受電側駆動信号に基づいて駆動される。
【0018】
信号生成部42は、生成した受電側駆動信号をスイッチング素子44のゲートへ入力する。これにより、受電側共振型アンプ回路41は、受電側駆動信号に基づいたスイッチング素子44のスイッチングによって、受電コイル43で受けた高周波を整流する。すなわち、送電コイル33と受電コイル43との間で磁界共鳴が生じると、送電コイル33で発振された高周波に共鳴する高周波が受電コイル43に生じる。つまり、送電コイル33から受電コイル43へ高周波の電力が供給される。受電側共振型アンプ回路41は、この受電コイル43で受けた高周波をスイッチング素子44のスイッチングによって整流する。
【0019】
信号生成部42は、サーチコイル51および遅延回路部52を有している。サーチコイル51は、受電コイル43と同様に、送電コイル33と非接触で対向している。このサーチコイル51は、遅延回路部52を含めた全体的なインピーダンスが送電ユニット11と大きく異なっている。そのため、サーチコイル51を含めた信号生成部42は、送電コイル33から発振された高周波と共鳴しない。その結果、送電コイル33とサーチコイル51との間では、電力の供給が生じない。一方、サーチコイル51は、送電コイル33から発振された高周波と共鳴することがないものの、送電コイル33による高周波の発振を検知する。
【0020】
信号生成部42を構成する遅延回路部52は、周知の構成である。すなわち、遅延回路部52は、
図1に示すバラン方式や図示しないオールパス方式のように周知の回路を用いることができる。信号生成部42は、この遅延回路部52によって、サーチコイル51で検知した送電コイル33から発振される高周波に対して位相をずらした移相高周波を生成する。信号生成部42で生成した移相高周波は、スイッチング素子44に入力される受電側駆動信号となる。
【0021】
受電ユニット12は、上記に加え位相制御部60を備えている。位相制御部60は、信号生成部42で生成する受電側駆動信号の位相を制御する。位相制御部60は、CPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータを有している。位相制御部60は、CPUでROMに記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、受電側駆動信号の位相を制御する位相制御部60をソフトウェア的に実現している。なお、位相制御部60は、ソフトウェア的に実現するだけでなく、ハードウェア的な制御回路として実現してもよい。
【0022】
位相制御部60は、信号生成部42から波形整形回路61を経由してサーチコイル51で検知した高周波の位相を取得する。すなわち、送電ユニット11の送電コイル33から発振された高周波は、サーチコイル51によってその波形が検知される。サーチコイル51で検知された波形は、波形整形回路61を経由して位相制御部60へ入力される。位相制御部60は、入力された高周波の波形から、送電ユニット11から発振されている高周波の位相を取得する。位相制御部60は、信号生成部42を構成する遅延回路部52に含まれるデジタルポテンショメータ62を調整することにより、遅延回路部52で生成される受電側駆動信号の位相を制御する。
【0023】
信号生成部42は、遅延回路部52によって駆動信号sin(2πf)に対して位相が位相差Δφだけずれた受電側駆動信号sin(2πf+Δφ)を生成する。すなわち、信号生成部42は、サーチコイル51で検知した送電コイル33から発信される駆動信号sin(2πf)の高周波に対して、遅延回路部52を通すことにより、位相差Δφだけ位相がずれた受電側駆動信号sin(2πf+Δφ)を生成する。このとき、受電側駆動信号sin(2πf+Δφ)の位相差Δφは、位相制御部60によるデジタルポテンショメータ62の調整によってΔφ=0°〜360°で制御される。このように、送電ユニット11側の駆動信号と受電ユニット12側の受電側駆動信号との間に位相差Δφを形成することにより、送電ユニット11から受電ユニット12へ供給される電流は、
図4に示すように位相差Δφに応じて変化する。位相制御部60は、この位相差Δφを調整することにより、信号生成部42で生成する受電側駆動信号の位相を制御し、送電ユニット11から受電ユニット12へ供給される電力の伝達効率を制御する。このように、位相制御部60は、送電ユニット11と受電ユニット12との間の伝達効率を制御することにより、送電ユニット11と受電ユニット12との間の電力の供給を断続する。
【0024】
以下、複数の運搬車両に充電を行なう具体的な作動の流れについて
図5に基づいて説明する。
図5の例は、時分割を利用してAGVシステム20の複数の運搬車両22に充電を行なう一例である。したがって、複数のAGVシステム20において複数の運搬車両22に充電を行なう手順は、
図5に限らず任意に設定することができる。
【0025】
図2および
図3に示す運搬車両22は、搬送経路のテープ23に沿って移動する途中において、充電エリア21に到達する。運搬車両22は、それぞれ受電ユニット12を搭載している。本実施形態の場合、運搬車両22の受電ユニット12は、他の運搬車両22の受電ユニット12と通信するための通信機器を搭載してしない。
図2および
図3の場合、充電エリア21には3台の運搬車両22が位置する例を示している。
【0026】
運搬車両22の位相制御部60は、充電エリア21に到達すると待機時間Tdをリセットし、Td=0とする(S101)。すなわち、位相制御部60は、自身の運搬車両22が充電エリア21に到着すると、充電エリア21において充電のために待機している時間である待機時間Tdをリセットする。これにより、待機時間Tdは、位相制御部60は、待機時間Tdをリセットした後、待機時間のカウントを開始する(S102)。すなわち、位相制御部60は、待機時間Tdのカウンタを、Td=Td+1とインクリメントする。
【0027】
そして、位相制御部60は、送電ユニット11の送電コイル33からの高周波の発振を検知する(S103)。すなわち、位相制御部60は、送電コイル33から高周波が発振されているか否かを検知する。このとき、位相制御部60は、信号生成部42のサーチコイル51を利用して、送電コイル33から高周波が発振されているか否かを判断する。位相制御部60は、送電コイル33から高周波が発振されているとき、充電エリア21の送電ユニット11と自身以外の運搬車両22の受電ユニット12である他受電ユニットとの間で磁界共鳴による電力の供給が行なわれていると判断する。このように充電エリア21の送電ユニット11と他の運搬車両22に設けられている受電ユニット12である他受電ユニットとの間で電力の供給が行なわれているとき、自身の運搬車両22に搭載されている受電ユニット12と送電ユニット11との間で電力の供給を行なうと、送電ユニット11と自身の受電ユニット12および他受電ユニットの間のインピーダンスが大きく変化する。その結果、送電ユニット11と自身の受電ユニット12および他受電ユニットとの間の磁界共鳴による電力の伝達効率は、低下する。そこで、位相制御部60は、S103において送電コイル33から高周波が発振されていると判断したとき(S103:Yes)、磁界共鳴による電力の供給を生じさせることなくS102にリターンする。そして、位相制御部60は、充電エリア21における待機を継続し、カウンタのカウントを継続する。
【0028】
一方、位相制御部60は、S103において送電コイル33から高周波が発振されていないと判断したとき(S103:No)、優先順位を決定するためのマスキング時間Tmを算出する(S104)。このマスキング時間Tmは、
図6に示すように待機する複数の運搬車両22のうち充電を行なう運搬車両22の優先順位を決定するために設定される。すなわち、複数の運搬車両22が充電エリア21にあるとき、マスキング時間Tmが短い運搬車両22は他の運搬車両に優先して送電ユニット11から電力を受け取ることができる。例えば、待機時間Tdが長い、つまり待機時間Tdのカウンタのカウントが大きいとき、優先順位は上昇する。また、時分割によって充電を受けた回数である充電回数Cが大きいとき、優先順位は低下する。位相制御部60は、この条件にしたがってマスキング時間Tmを算出する。具体的な例として、位相制御部60は、待機時間Tdを予め設定された整数Nで除し、これに充電回数Cを加えてマスキング時間Tmを算出する。すなわち、マスキング時間Tmは、Tm=Td/N+Cとして算出される。ここで、整数Nは、例えば16など、テープ23に沿って設定されている運搬経路を移動する運搬車両22の数などに応じて任意の自然数として設定される。
【0029】
位相制御部60は、S104においてマスキング時間Tmを算出すると、マスキング時間Tmを計測し(S105)、マスキング時間Tmが経過したか否かを判断する(S106)。すなわち、位相制御部60は、マスキング時間Tmが経過していないとき(S106:No)、S105におけるマスキング時間Tmの計測を繰り返す。位相制御部60は、マスキング時間Tmが経過すると(S106:Yes)、再び送電コイル33から高周波の発振を検知する(S107)。
【0030】
位相制御部60は、送電コイル33から高周波の発振を検知すると(S107:Yes)、S102へリターンし、待機時間Tdの計測を継続する。すなわち、送電コイル33から高周波が発振されているとき、自身以外の他の運搬車両22の他受電ユニットにおいて送電ユニット11から電力の供給が行なわれている。そのため、位相制御部60は、送電ユニット11からの電力の供給を受けることなく待機する。
【0031】
図6に示す例において、前方の運搬車両22が充電エリア21から電力の受け取っているとき、後方の運搬車両22が充電エリア21に進入したとする。このとき、後方の運搬車両22のサーチコイル51は、前方の運搬車両22と送電ユニット11との電力の供給にともなう高周波の波形を検出する。そのため、位相制御部60は、他の送電ユニット11において電力の供給が行なわれていると判断する。そこで、位相制御部60は、高周波の波形を検出しているとき、カウンタによる待機時間Tdを計測する。
【0032】
位相制御部60は、マスキング時間Tmが経過しても送電コイル33から高周波の発振を検知しないと(S107:No)、送電ユニット11から電力の受け取りを開始する(S108)。すなわち、位相制御部60は、サーチコイル51で送電コイル33による高周波の発振を検知しないとき、送電ユニット11と他の運搬車両22の他受電ユニットとの間で電力の供給が行なわれていないと判断する。そして、位相制御部60は、自身の受電ユニット12に対して送電ユニット11からの電力の供給を開始させる。このとき、位相制御部60は、信号生成部42の遅延回路部52において位相をずらした受電側駆動信号を生成する。これにより、位相制御部60は、生成する受電側駆動信号を、送電ユニット11から受電ユニット12への電力の伝達効率が最適となる位相に設定する。位相制御部60は、サーチコイル51で検知した送電ユニット11から発振される高周波の位相を遅延回路部52でずらすことにより、受電側駆動信号の位相を最適化する。位相制御部60は、
図4に示すように受電側駆動信号の位相差Δφを調整することにより、送電ユニット11から自身の受電ユニット12へ電力の供給を開始する。受電ユニット12では、送電ユニット11から磁界共鳴を利用して受け取った電力が、受電側共振型アンプ回路41で整流された後、コンバータ48で変圧され、蓄電池49に充電される。位相制御部60は、受電側共振型アンプ回路41のスイッチング素子44を駆動する受電側駆動信号の位相を調整することにより、送電ユニット11と受電ユニット12との間の磁界共鳴を最適化する。これにより、送電ユニット11から受電ユニット12への電力の伝達効率も最適化される。
【0033】
充電エリア21に複数の運搬車両22があるとき、マスキング時間Tmは運搬車両22ごとに異なっている。マスキング時間Tmが最短の運搬車両22は、他の運搬車両22に先駆けて送電ユニット11から電力を受け取ることができる。すなわち、位相制御部60は、マスキング時間Tmが経過しても、送電ユニット11と他の運搬車両22との間で電力の供給が行なわれていない、つまりサーチコイルで高周波を検知しないとき、自身が電力を受け取る順番であると判断する。そこで、位相制御部60は、受電側駆動信号の位相を最適化し、
図6に示すように送電ユニット11から電力の供給を受ける。
【0034】
位相制御部60は、電力の供給によって蓄電池49への充電を開始すると、充電時間が経過したか否かを判断する(S109)。すなわち、位相制御部60は、予め設定された充電時間が経過するまで、送電ユニット11と受電ユニット12との間の電力の供給を継続する。充電時間は、例えば500msに設定されている。位相制御部60は、充電時間が経過していないと判断すると(S109:No)、充電時間が経過するまで待機する。
【0035】
位相制御部60は、充電時間が経過したと判断すると(S109:Yes)、充電回数Cをインクリメントし(S110)、送電ユニット11から電力の受け取りを終了する(S111)。すなわち、位相制御部60は、充電時間が経過すると、これまで記憶している充電回数Cをインクリメントする。この充電回数Cは、S104におけるマスキング時間Tmの次回の算出に用いられる。位相制御部60は、充電回数Cをインクリメントするとともに、送電ユニット11から電力の受け取りを終了する。位相制御部60は、信号生成部42の遅延回路部52において生成する受電側駆動信号の位相をずらす。これにより、位相制御部60は、生成する受電側駆動信号を、
図4に示すように送電ユニット11から受電ユニット12への電流が「0」、つまり電力の伝達効率が「0」となる位相に設定する。このように、位相制御部60が受電側駆動信号の位相を調整することにより、送電ユニット11から自身の受電ユニット12への電力の供給が終了する。
【0036】
位相制御部60は、予め設定された終了待機時間Twが経過した後(S112)、処理を終了し、S101へリターンする。終了待機時間Twは、複数の運搬車両22における干渉を低減するために設定されている。本実施形態の場合、終了待機時間Twは、10msに設定している。
【0037】
以上の手順により、複数の運搬車両22が充電エリア21に進入したとき、待機時間Tmが長く、充電回数Cが少ない運搬車両22が優先して充電される。そして、
図7に示すように、複数の運搬車両22は、時分割によって送電する時期が重複することなく、送電ユニット11から電力を受け取る。そのため、送電する時期の重複にともなう送電ユニット11と受電ユニット12との間のインピーダンスの変化が抑えられる。したがって、複数の運搬車両22が充電エリア21にあるときでも、送電ユニット11から受電ユニット12への電力の伝達効率の低下を招かない。
【0038】
以上説明した第1実施形態では、受電ユニット12は、信号生成部42を備えている。信号生成部42は、受電ユニット12の受電側共振型アンプ回路41に、送電側の高周波生成部32で生成した駆動信号に対して位相をずらした受電側駆動信号を供給する。すなわち、受電側共振型アンプ回路41を駆動する受電側駆動信号は、送電側の高周波生成部32で生成した駆動信号に対して位相が変化する。磁界共鳴を利用する場合、共鳴によって電力が供給されるため、送電コイル33から発振される高周波の位相と受電コイル43で共鳴する高周波の位相とのずれ、つまり位相差Δφによって電力の伝達効率が変化する。そこで、位相制御部60は、この位相差Δφを意図的に変化させることにより、送電ユニット11と受電ユニット12との間の磁界共鳴を任意に断続している。すなわち、位相制御部60は、2つ以上の受電ユニット12があるとき、他受電ユニットと送電ユニット11との間で磁界共鳴による電力の供給が行なわれていれば、自身の信号生成部42から受電側共振型アンプ回路41に供給する受電側駆動信号の位相を共鳴が生じない位相差Δφとする。そのため、他受電ユニットと送電ユニット11との間で電力の供給が行なわれているとき、自身の受電ユニット12は送電ユニット11から電力が供給されない。一方、位相制御部60は、他受電ユニットと送電ユニット11との間で磁界共鳴による電力の供給が行なわれていないとき、受電側駆動信号を共鳴が生じる位相差Δφとなるように制御する。そのため、他受電ユニットと送電ユニット11の間で電力の供給が行なわれていないとき、自身の受電ユニット12は送電ユニット11から電力が供給される。このように、位相制御部60は、受電側駆動信号の位相を制御することにより、他受電ユニットと送電ユニット11との電力の供給の有無に応じて、自身の受電ユニット12と送電ユニット11との間の電力の供給を断続する。その結果、送電ユニット11は、常に1つの受電ユニット12との間で磁界共鳴による電力の供給が成立する。したがって、1つの送電ユニット11に対して複数の受電ユニット12があるときでも、インピーダンスの低下を招くことがなく、電力の供給時における伝達効率の低下を回避することができる。
【0039】
また、送電ユニット11と受電ユニット12との間のインピーダンスは、運搬車両22に搭載されている蓄電池49の充電状態によって変化する。そこで、位相制御部60は、受電側駆動信号の位相を制御することにより、駆動信号と受電側駆動信号との位相差Δφを蓄電池49の充電状態に応じて最適化する。したがって、各運搬車両22に搭載されている蓄電池49の状態に応じて、最適な電力の供給を図ることができる。
【0040】
また、第1実施形態では、位相制御部60は、サーチコイル51で検知した高周波に基づいて遅延回路部52で受電側駆動信号の位相をずらしている。すなわち、位相制御部60は、送電側の送電コイル33から発振される高周波をサーチコイル51で検知する。そして、位相制御部60は、サーチコイル51で検知した高周波の位相に基づいて、遅延回路部52において受電側駆動信号の位相をずらしている。したがって、位相制御部60は、他の運搬車両22と通信を行なうことなく、サーチコイル51で検知した高周波の位相から他受電ユニットにおける充電の有無を検知することができる。
【0041】
さらに、第1実施形態では、位相制御部60は、サーチコイル51で高周波を検知することにより、他受電ユニットにおける電力の供給の有無を検知するだけでなく、検知した高周波の位相に応じて信号生成部42から受電側共振型アンプ回路41に供給する受電側駆動信号の位相を調整する。サーチコイル51は、送電コイル33から発振される高周波と共鳴せず、無線による電力の伝達に寄与しない。そのため、サーチコイル51は、磁界共鳴による無線の給電が成立する送電コイル33と受電コイル43との間のインピーダンスおよび共振周波数に影響を与えることなく送電コイル33から発振される高周波の位相を検知する。そして、信号生成部42の遅延回路部52は、サーチコイル51で検知した高周波の位相に対して遅延を付加する。このような遅延を付加することによって、信号生成部42は、送信コイル33から発振される高周波と受電側駆動信号との間に、位相差Δφを確実に生成するとともに、この位相差Δφを最適化する。これにより、送電ユニット11との間で磁界共鳴による電力の供給を行なうとき、位相制御部60は、受電側駆動信号の位相を最適化する。したがって、他受電ユニットと送電ユニット11との間の電力の供給の有無を検知できるだけでなく、自身と送電ユニット11との間で電力の供給を行なうとき、その伝達効率の最適化を図ることができる。
【0042】
さらに、第1実施形態では、受電ユニット12側において受電側駆動信号の位相を調整している。すなわち、一対の送電ユニット11と受電ユニット12から無線給電装置10が構成される場合でも、受電ユニット12側において位相の調整を行なっている。これにより、運搬車両22ごとの個体差や経年的な変化が生じる場合でも、無線給電装置10の伝達効率は受電側駆動信号の調整を行なうだけで最適化される。したがって、調整をより容易にすることができる。
【0043】
(第2実施形態)
第2実施形態による無線給電装置を
図8に示す。
第2実施形態では、
図8に示すように信号生成部70の構成が第1実施形態と異なっている。具体的には、第2実施形態の場合、信号生成部70は、分圧抵抗71および分圧抵抗72を有している。分圧抵抗71および分圧抵抗72は、特許請求の範囲の抵抗素子に相当する。受電コイル43と並列に分圧抵抗71および分圧抵抗72を挿入することにより、遅延回路部73には受電コイル43の両端に加わる電圧が入力される。これにより、信号生成部70は、分圧抵抗71および分圧抵抗72で取得された受電コイル43に加わる電圧の変化に基づいて、遅延回路部73において駆動信号に対して位相をずらした受電側駆動信号を生成する。すなわち、受電コイル43に加わる電圧の変化は、送電コイル33から発振された高周波の位相に関係する。そのため、遅延回路部73は、この高周波の位相に関係する電圧の変化、つまり電圧の位相から、その位相をずらすことにより受電側駆動信号を生成する。信号生成部70で生成した受電側駆動信号は、第1実施形態と同様に受電側共振型アンプ回路41のスイッチング素子44のゲートに入力される。
【0044】
このように第2実施形態では、第1実施形態のサーチコイル51に代えて、分圧抵抗71および分圧抵抗72で受電コイル43で受信する高周波の電圧を検知している。そして、信号生成部70は、検知した電圧の変化に基づいて、駆動信号から位相がずれた受電側駆動信号を生成している。分圧抵抗71および分圧抵抗72は、送電コイル33と受電コイル43との間のインピーダンスおよび共振周波数に影響を与えることなく送電コイル33から発振される高周波の位相を電圧として検知する。そして、信号生成部70の遅延回路部73は、検知した高周波の位相に対して1/2周期以上の遅延を付加した受電側駆動信号を生成する。このような遅延を付加することによって、信号生成部70は、送信コイル33から発振される高周波と受電側駆動信号との間に、確実な位相差Δφを生成するとともに、位相差Δφを最適化する。これにより、信号生成部70で生成する受電側駆動信号を簡単な構成かつ高い精度で受電側共振型アンプ回路41へ供給することができる。また、第2実施形態でも、受電ユニット12側において位相の調整を行なうので、個体差や経年的な変化への調整を容易にすることができる。
【0045】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。