(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る回転電機および回転電機を備える車両について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。また、部材のサイズおよび形状は、説明の便宜のため、変形または誇張して模式的に表す場合がある。
【0013】
[回転電機11の基本構成]
図1は、本発明の実施形態に係る回転電機11の正面図である。
図2は、
図1に示す回転電機11に備わるロータ15に設けた磁極部33の周辺を拡大して表す図である。
本実施形態は、爪部(凸部28)が磁性体のロータ内周側にある場合の例である。
図1に示すように、本実施形態に係る回転電機11は、ステータコア21および当該ステータコア21に設けられるコイルを有する円環状のステータ13と、駆動軸方向に延びる磁性体の収容孔34が周方向に複数設けられるロータコア27を有し、ステータ13の内周面と空隙を介して対向配置される円環状のロータ15と、を備える。
ステータ13は、ステータコア21と、ステータコア21に備わる複数のスロット23と、複数のスロット23のそれぞれに設けられたステータコイル25と、を有して構成される。
ステータコア21は、全体として円筒状に形成される。ステータコア21は、例えば、円環状に形成された複数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して構成すればよい。
【0014】
図2に示すように、円環状のロータ15は、ステータ13の内周面と僅かな空隙GPを介して対向配置される。
図1および
図2に示すように、ロータ15は、ロータコア27および磁極部33を備える。ロータコア27には、円筒状の内周側面を有する通孔17が開設されている。ロータコア27の通孔17には回転軸19が、通孔17の内周側面に回転軸19の外周側面を接合させて嵌め合わせられる。これにより、ロータコア27の通孔17に回転軸19が嵌合固定される。
【0015】
ロータコア27は、ステータコア21と同様に、例えば、円環状に形成された複数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して構成すればよい。
ロータコア27には、軸方向に真っ直ぐに延びる磁性体30を有する磁極部33が、周方向に所定の間隔を置いて複数備わっている。また、ロータコア27には、磁性体30を収容するための収容孔34が、周方向に所定の間隔を置いて複数備わっている。収容孔34の構成について、詳しくは後記する。
【0016】
ロータコア27は、収容孔34の端面から収容孔34内に延びる複数の凸部28を有し、複数の凸部28は磁性体30を挟むように成形される。凸部28は、磁性体30の保持・位置決めのための爪部に対応する。
また、従来、凸部28と磁性体30とが接する面に設置されていた、応力を分散するための冷熱応力逃げ部(後記
図14の比較例の冷熱応力逃げ部129参照)は廃止されている(このため図示されていない)。
さらに、ロータコア27には、略三角形状の空洞部40が、軸方向(
図2参照)の全長に渡って形成されている。
【0017】
[磁性体30]
磁性体30は、略矩形状の横断面を有する棒状の磁性部材によって形成される。磁性体30の長さは、ロータ15の軸方向全長と略同等の長さに設定されている。
図1および
図2に示すように、磁性体30は、硬磁性体31および軟磁性体32(低飽和磁化材料)から形成されている。
硬磁性体31は、硬磁性材料よりなる。硬磁性材料としては、特に限定されないが、例えば、高トルク密度化を実現可能な、高磁気特性を有するネオジム磁石等の希土類磁石を好適に用いることができる。
【0018】
軟磁性体32は、軟磁性材料よりなる。軟磁性材料としては、硬磁性体31(の硬磁性材料)に係る残留磁束密度Brと比べて低い飽和磁化特性を有すると共に、ロータ15の素材である電磁鋼板の最大透磁率と比べて高い最大透磁率特性を有する、例えばパーマロイを好適に用いることができる。なお、硬磁性体31と軟磁性体32の配置構造について、詳しくは後記する。
【0019】
回転電機11は、ロータ15が、収容孔34の端面から収容孔34内に延びて磁性体30を挟むように成形された複数の凸部28を有し、複数の凸部28は、磁性体30は硬磁性体31および軟磁性体32からなり、磁化方向に積層させて設けられ、軟磁性体32は、凸部28を有する収容孔34の端部に面するように設けられる。
【0020】
また、軟磁性体32の磁化方向厚さは、凸部28(爪部)の磁化方向高さと比較して高い方が好ましい。
【0021】
図1および
図2に示す例では、一つの磁極部33は、一対の第1および第2磁性体30A,30Bを組み合わせて構成されている。
第1磁性体30Aは、第1硬磁性体31Aおよび第1軟磁性体32Aからなる。一方、第2磁性体30Bは、第2硬磁性体30Bおよび第2軟磁性体32Bからなる。
本明細書中において、第1および第2磁性体30A,30Bを総称するときは、単に「磁性体30」と呼ぶ。第1および第2硬磁性体31A,31Bを総称するときは、単に「硬磁性体31」と呼ぶ。第1および第2軟磁性体32A,32Bを総称するときは、単に「軟磁性体32」と呼ぶ。
【0022】
一対の第1および第2磁性体30A,30Bは、
図2に示すように、径方向に延びる中心線38に対して線対称に、径方向(
図2参照)外側に傾斜しつつ略V字形状を描くように配設されている。
一対の第1および第2磁性体30A,30Bを収容するために、ロータ15には、
図1および
図2に示すように、第1および第2収容孔34A,34Bが開設されている。第1および第2収容孔34A,34Bは、一対の第1および第2磁性体30A,30Bと同様に、中心線38に対して線対称に、径方向(
図2参照)外側に傾斜しつつ略V字形状を描くように配設されている。
【0023】
第1収容孔34Aは、中心線38の側に位置する第1内側空隙部34A1と、径方向外側に位置する第1外側空隙部34A2と、第1内側および第1外側空隙部34A1,34A2に挟まれて第1磁性体30Aを収容する第1収容部34A3と、を連続して一体に有している。
第2収容孔34Bは、第1収容孔34Aと同様に、中心線38の側に位置する第2内側空隙部34B1と、径方向外側に位置する第2外側空隙部34B2と、第2内側および第2外側空隙部34B1,34B2に挟まれて第2磁性体30Bを収容する第2収容部34B3と、を連続して一体に有している。
【0024】
本明細書中において、第1および第2収容孔34A,34Bを総称するときは、単に「収容孔34」と呼ぶ。また、第1および第2収容部34A3,34B3を総称するときは、単に「収容部34−3」と呼ぶ。
【0025】
磁性体30は、収容孔34の収容部34−3に収容された状態で、収容部34−3における径方向(
図2参照)の内壁面に対して不図示の接着剤等を用いて固定される。
一つの磁極部33を構成する一対の磁性体30に係る磁石極性は、径方向外側を向く側が互いに同一となり、かつ、隣り合う磁極部33とは逆向きになるように設定されている。
【0026】
磁性体30のうち例えば硬磁性体31には、磁化が起こり易い磁化容易方向と、磁化が起こり難い磁化困難方向とがある。
図2に示す例では、硬磁性体31の磁化容易方向35(
図2の矢印参照)は、ロータ15の径方向外側を指向している。
【0027】
磁性体30の一部を構成する硬磁性体31のうち磁化容易方向35に存する一側面41には、例えば
図2,
図3〜
図12に示すように、不図示の接着剤等を介して、軟磁性体32が接着固定されている。軟磁性体32は、前記したように、硬磁性体31に係る残留磁束密度と比べて低い飽和磁化特性を有すると共に、ロータ15の素材である電磁鋼板の最大透磁率と比べて高い最大透磁率特性を有する。
これにより、軟磁性体32は、硬磁性体31に係る磁石磁束を低減する機能を発揮する。
【0028】
[磁性体30の積層構造]
図3は、
図2に示す磁極部33において磁石磁束発生機能を有する磁性体30のうち軟磁性体32に係る第1積層構造32−1を拡大して表す正面図である。
図4は、
図3に示す磁性体30のうち硬磁性体31の積層構造を表す正面図である。
図5は、
図4に示す磁性体30を矢視方向から視た側面図である。
図6は、
図5に示す磁性体30の変形例を表す側面図である。
【0029】
図7は、
図2に示す磁極部33において磁石磁束発生機能を有する磁性体30のうち軟磁性体32に係る第2積層構造32−2を拡大して表す正面図である。
図8は、
図7に示す磁性体30のうち硬磁性体31の積層構造を表す正面図である。
図9は、
図8に示す磁性体30を矢視方向から視た側面図である。
図10は、
図9に示す磁性体30の変形例を表す側面図である。
図11は、
図10に示す磁性体30の変形例を表す側面図である。
図12は、
図2に示す磁極部33において磁石磁束発生機能を有する磁性体30のうち軟磁性体32に係る第3積層構造32−3を拡大して表す正面図である。
【0030】
磁化容易方向35に沿って延びる硬磁性体31の高さ寸法d1は、例えば
図3,
図7に示すように、磁化容易方向35に沿って延びる軟磁性体32の高さ寸法d2と比べて高く設定されている。磁化容易方向35は、本発明の「磁化方向」に相当する。
【0031】
磁性体30の一部を構成する軟磁性体32は、例えば、第1積層構造をとる第1軟磁性体32−1(
図3〜
図6参照)と、第2積層構造をとる第2軟磁性体32−2(
図7〜
図11参照)と、第3積層構造をとる第3軟磁性体32−3(
図12参照)とに分けられる。
【0032】
〈第1磁性体30−1〉
第1磁性体30−1は、例えば
図3に示すように、硬磁性体31のうち磁化容易方向35に存する一側面41に、第1積層構造をとる第1軟磁性体32−1を設けて構成されている。
第1磁性体30−1のうち第1軟磁性体32−1は、
図3に示すように、磁化容易方向35に、平板状の軟磁性体32a1,32b1,32c1,32d1を複数枚積層させて構成されている。複数枚の軟磁性体32a1,32b1,32c1,32d1のそれぞれは、均一な高さ寸法d3を呈している。複数枚の軟磁性体32a1,32b1,32c1,32d1同士は、不図示の接着剤を用いて相互に接着されている。
【0033】
第1磁性体30−1のうち硬磁性体31は、
図4の矢印Vに示すように、磁化容易方向35と直交する幅方向に、平板状の硬磁性体31aを複数積層させて構成されている。複数枚の硬磁性体31aのそれぞれは、均一な幅寸法を呈している。複数枚の硬磁性体31a同士は、接着剤を用いて相互に接着されている。
【0034】
第1磁性体30−1のうち硬磁性体31は、
図5に示すように、軸方向に沿って一体に延伸するように構成されている。
ただし、第1磁性体30−1の変形例として、
図6に示すように、軸方向に沿って平板状の硬磁性体31aを複数積層することで硬磁性体31を構成しても構わない。
【0035】
〈第2磁性体30−2〉
第2磁性体30−2は、例えば
図7に示すように、硬磁性体31のうち磁化容易方向35に存する一側面41に、第2積層構造をとる第2軟磁性体32−2を設けて構成されている。
第2磁性体30−2のうち第2軟磁性体32−2は、
図7に示すように、磁化容易方向35に直交する方向に、平板状の軟磁性体32a2,32b2,32c2,…,32s2,32t2を複数積層させて構成されている。複数枚の軟磁性体32a2,32b2,32c2,…,32s2,32t2のそれぞれは、均一な幅寸法d4を呈している。複数枚の軟磁性体32a2,32b2,32c2,…,32s2,32t2同士は、不図示の接着剤を用いて相互に接着されている。
【0036】
第2磁性体30−2のうち硬磁性体31は、
図8の矢印IXに示すように、磁化容易方向35と直交する幅方向に、平板状の硬磁性体31aを複数積層させて構成されている。複数枚の硬磁性体31aのそれぞれは、均一な幅寸法を呈している。複数枚の硬磁性体31a同士は、接着剤を用いて相互に接着されている。
【0037】
第2磁性体30−2のうち硬磁性体31は、
図9に示すように、軸方向に沿って一体に延伸するように構成されている。
ただし、第2磁性体30−2の変形例として、
図10に示すように、軸方向に沿って平板状の硬磁性体31aを複数積層することで硬磁性体31を構成しても構わない。
【0038】
さらに、
図10に示す第2磁性体30−2の変形例に係る第2磁性体30−2Bとして、
図11に示すように、軸方向に沿って方形状の軟磁性体32−2a(ただし、軟磁性体32aは、
図7等に示す軟磁性体32a2,32b2,32c2,…,32s2,32t2と比べて薄肉に形成されている。)を複数積層することで第2軟磁性体32−2Aを構成しても構わない。
【0039】
〈第3磁性体30−3〉
第3磁性体30−3は、
図12に示すように、硬磁性体31のうち磁化容易方向35に存する一側面41に、第3積層構造をとる第3軟磁性体32−3を設けて構成されている。なお、第3積層構造とは、第1積層構造と第2積層構造との組み合わせに係る軟磁性体32の積層構造である。
【0040】
第3磁性体30−3のうち第3軟磁性体32−3は、
図12に示すように、軸方向および磁化容易方向35の両方に沿って分割した方形棒状の軟磁性体32−3aを、軸方向および磁化容易方向35に沿って複数積層させて構成されている。複数の軟磁性体32−3aのそれぞれは、均一な高さ寸法および軸方向長さ寸法を呈している。複数の軟磁性体32−3a同士は、接着剤を用いて相互に接着されている。
【0041】
[比較例に係る回転電機111の基本構成]
次に、比較例に係る回転電機111の基本構成について、
図13および
図14を参照して詳細に説明する。
図13は、比較例に係る回転電機111の正面図である。
図14は、
図13に示す比較例に係る回転電機111に備わるロータ115に設けた磁極部133の周辺を拡大して表す図である。
図13に示すように、比較例に係る回転電機111は、円環状のステータ113およびロータ115を備えて構成されている。
ステータ113は、本発明に係るステータ13と同様に、ステータコア121と、ステータコア121に備わる複数のスロット123と、複数のスロット123のそれぞれに設けられたステータコイル125と、を有して構成される。
ステータコア121は、全体として円筒状に形成される。ステータコア121は、円環状に形成された複数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して構成される。
図14に示すように、円環状のロータ115は、ステータ113の内周面と僅かな空隙GPを介して対向配置される。
【0042】
図13および
図14に示すように、ロータ115は、本実施形態に係るロータ15と同様に、ロータコア127および磁極部133を備える。
図13に示すように、ロータコア127には、円筒状の内周側面を有する通孔117が開設されている。ロータコア127の通孔117には回転軸119が、通孔117の内周側面に回転軸119の外周側面を接合させて嵌め合わせられる。これにより、ロータコア127の通孔117に回転軸119が嵌合固定される。
ロータコア127は、ステータコア121と同様に、円環状に形成された複数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して構成される。
ロータコア127には、軸方向に真っ直ぐに延びる磁性体130を有する磁極部133が、周方向に所定の間隔を置いて複数備わっている。また、ロータコア127には、磁性体130を収容するための収容孔134が、周方向に所定の間隔を置いて複数備わっている。
【0043】
ロータコア127は、収容孔134の端面から収容孔134内に延びる複数の凸部128を有し、複数の凸部128は磁性体130を挟むように成形される。凸部128は、磁性体30の保持・位置決めのための爪部に対応する。
また、凸部128と磁性体130とが接する面には、応力を分散するための冷熱応力逃げ部129が設置されている。
さらに、ロータコア127には、略三角形状の空洞部140が、軸方向(
図13参照)の全長に渡って形成されている。
【0044】
磁性体130は、略矩形状の横断面を有する棒状の磁性部材によって形成される。磁性体130の長さは、ロータ115の軸方向全長と略同等の長さに設定されている。また、硬磁性体131のみから形成される磁性体130の高さ寸法(径方向寸法)および幅寸法(周方向寸法)は、本発明に係る磁性体30のうち硬磁性体31の高さ寸法(径方向寸法)および幅寸法(周方向寸法)と同等に設定されている。
【0045】
図13および
図14に示すように、本比較例に係る磁性体130は、硬磁性体131のみから形成されている。磁性体130が硬磁性体131のみから形成される点が、本比較例に係る回転電機111と、本実施形態に係る回転電機11との主な相違点である。
硬磁性体131は、硬磁性材料よりなる。硬磁性材料としては、本発明に係る回転電機11と同様に、高トルク密度化を実現可能な、高磁気特性を有するネオジム磁石等の希土類磁石が用いられる。
【0046】
図13および
図14に示す例では、一つの磁極部133は、一対の磁性体130A,130Bを組み合わせて構成されている。
本明細書中において、一対の磁性体130A,130Bを総称するときは、単に「磁性体130」と呼ぶ。
【0047】
一対の磁性体130A,130Bは、
図14に示すように、径方向に延びる中心線138に対して線対称に、径方向(
図14参照)外側に傾斜しつつ略V字形状を描くように配設されている。
一対の磁性体130A,130Bを収容するために、ロータ115には、
図13および
図14に示すように、一対の収容孔134A,134Bが開設されている。一対の収容孔139A,134Bは、一対の磁性体130A,130Bと同様に、中心線138に対して線対称に、径方向(
図14参照)外側に傾斜しつつ略V字形状を描くように配設されている。
本明細書中において、一対の収容孔134A,134Bを総称するときは、単に「収容孔134」と呼ぶ。
【0048】
磁性体130は、収容孔134に収容された状態で、収容孔134における径方向(
図14参照)の内壁面に対して不図示の接着剤等を用いて固定される。
一つの磁極部133を構成する一対の磁性体130に係る磁石極性は、本発明に係る回転電機11と同様に、径方向外側を向く側が互いに同一となり、かつ、隣り合う磁極部133とは逆向きになるように設定されている。
【0049】
[本実施形態に係る回転電機11の作用効果]
次に、本実施形態に係る回転電機11の作用効果について、比較例に係る回転電機111と対比しながら、適宜図面を参照しつつ説明する。
図15は、本実施形態に係る回転電機11に備わるロータ15に設けた磁極部33の周辺の磁束密度および磁束線図を示す図である。
図16は、比較例に係る回転電機111に備わるロータ115に設けた磁極部133の周辺の磁束密度および磁束線図を示す図である。
図15および
図16において、磁束密度を、濃淡の粗密で表記している。磁束密度が高い場合は、濃淡を密に、磁束密度が低くなるほど濃淡を粗で表している。
【0050】
図16に示すように、比較例に係る回転電機111は、ロータコア127の凸部128と磁性体130とが接する面に冷熱応力逃げ部129が設置されている。磁性体130が接する面に冷熱応力逃げ部129があるので、
図16の符号aに示すように、磁束が通りにくい。このため、磁束通路が制限され、トルク密度および減磁耐力が低下する原因となる。
【0051】
これに対して、
図15に示すように、本実施形態に係る回転電機11は、冷熱応力逃げ部がない。冷熱応力逃げ部がないので、磁束通路が確保され、トルク密度および減磁耐力を向上させることができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る回転電機11は、ロータ15が、収容孔34の端面から収容孔34内に延びて磁性体30を挟むように成形された複数の凸部28を有し、複数の凸部28は、磁性体30は硬磁性体31および軟磁性体32からなり、磁化方向に積層させて設けられ、軟磁性体32は、凸部28を有する収容孔34の端部に面するように設けられる。
【0053】
この構成により、磁性体30の収容孔34の端面に接する部分を、低飽和磁化材料である軟磁性体32とすることで、電磁鋼板と低飽和磁化材料との線膨張係数差が、電磁鋼板と永久磁石との線膨張係数差よりも格段に小さくなる。これにより、電磁鋼板と永久磁石との線膨張係数差で発生する冷熱応力逃げ部を作る必要がなくなり、磁束通路が確保されるため、トルク密度が向上する。
【0054】
また、軟磁性体32(低飽和磁化材料)が、磁石に接着しているため、磁石の爪部が損傷する懸念がなくなり、磁石角部のRを作る必要がないため空隙を設ける必要がなくなる。これにより、磁束の通路が確保され、トルク密度および減磁耐力を向上させることが可能になる
【0055】
また、本実施形態では、軟磁性体32の厚みは、凸部28の磁化方向高さと比較して厚くなるように形成されている。これにより、磁石の温度が下がり、磁化直行方向に膨張したとしても、凸部28への応力をかけることなく、軟磁性体32を凸部28を有する収容孔34の端部に、確実に面するように設置することができる。
【0056】
また、本実施形態では、軟磁性体32は、軟磁性材料を複数積層して形成されている。これにより、磁化方向に磁石磁束の変動が生じた際に軟磁性体32に生じる渦電流損を低減する効果を期待することができる。
【0057】
また、本実施形態では、軟磁性材料同士が積層する積層面は、磁化方向に直交する方向を向いて広がっている(
図3〜
図6に示す第1積層構造をとる第1軟磁性体32−1、および
図12に示す第3積層構造をとる第3軟磁性体32−3参照)。これにより、軟磁性体32を構成する軟磁性材料の積層数を抑制しながら、磁化方向に磁石磁束の変動が生じた際に軟磁性体32に生じる渦電流損を低減することができる。
【0058】
また、本実施形態では、軟磁性材料同士が積層する積層面は、磁化方向を向いて広がっている(
図7〜
図11に示す第2積層構造をとる第2軟磁性体32−2、および
図12に示す第3積層構造をとる第3軟磁性体32−3参照)。これにより、磁化方向に磁石磁束の変動が生じた際に軟磁性体32に生じる渦電流損を一層低減することができる。
【0059】
また、本実施形態では、軟磁性体は、前記硬磁性体の残留磁束密度よりも、飽和磁束密度の低い性質を有する。そのため、軟磁性体32は硬磁性体31に係る磁石磁束を低減するように働くので、磁化方向に磁石磁束の変動が生じた際に軟磁性体32に生じる渦電流損を一層低減することができる。
【0060】
上記回転電機11を駆動源として搭載する車両によれば、重量および体格の増大を招来することなく、高効率運転を実現可能な回転電機11を駆動源として搭載した車両を得ることができる。
【0061】
[変形例]
〈変形例1〉
図17は、本実施形態の変形例1に係る回転電機に備わるロータ15に設けた磁極部33の周辺を拡大して表す図である。
図2と同一構成部分には同一番号を付して重複箇所の説明を省略する。
変形例1は、爪部(凸部)が磁性体30のロータ外周側にある場合の例である。
【0062】
図17に示すように、ロータコア27は、収容孔34の端面から収容孔34内に延びる複数の凸部29を有し、複数の凸部29は磁性体30のロータ外周側にあって、磁性体30を挟むように成形される。本変形例にあっても、
図1〜
図12の回転電機11と同様に、冷熱応力逃げ部は廃止されている。
【0063】
変形例1によれは、本実施形態と同様に、冷熱応力逃げ部を作る必要がなくなるので、
図1〜
図12の回転電機11と同様の効果、すなわち、磁束通路が確保され、トルク密度が向上する効果を得ることができる。
【0064】
〈変形例2〉
図18は、本実施形態の変形例2に係る回転電機に備わるロータ15に設けた磁極部33の周辺を拡大して表す図である。
図17と同一構成部分には同一番号を付して重複箇所の説明を省略する。
変形例2は、爪部(凸部)が磁性体30のロータ内周側と外周側にある場合の例である。
【0065】
図18に示すように、磁性体30のロータ内周側にあって、磁性体30を挟むように成形された複数の凸部28と、磁性体30のロータ外周側にあって、磁性体30を挟むように成形された複数の凸部29と、を有する。本変形例にあっても、
図1〜
図12の回転電機11と同様に、冷熱応力逃げ部は廃止されている。
【0066】
変形例2によれば、冷熱応力逃げ部を作る必要がなくなるので、
図1〜
図12の回転電機11と同様の効果、すなわち、磁束通路が確保され、トルク密度が向上する効果を得ることができる。
また、変形例2によれば、磁性体30は、ロータ内周側に設けられた凸部28と、ロータ外周側に設けられた凸部29とによる周方向の上下両面側から、より確実に保持される。同様の理由で、凸部(爪部)の損傷による回転電機11の故障を未然に防止することができる。
【0067】
以上説明した複数の実施形態は、本発明の具現化の例を示したものである。したがって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならない。本発明はその要旨またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形態で実施することができるからである。
【0068】
例えば、本発明に係る回転電機11の説明において、軟磁性体32は、硬磁性体31の磁化方向であって、硬磁性体31における径方向外側に積層させて設けられる態様を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0069】
軟磁性体32は、硬磁性体31の磁化方向であって、硬磁性体31における径方向内側に積層させて設けられる態様を採用してもよい。
また、硬磁性体31をその磁化方向に複数に分割し、分割された硬磁性体31同士の間に軟磁性体32を挟み込んで積層させるように軟磁性体32を設ける態様を採用してもよい。
【0070】
また、本発明に係る回転電機11の基本構成に関する説明において、磁極部33の構成要素である磁性体30、および収容孔34の数量・形状は、回転電機11としての回転性能を妨げないのであれば、いかなる数量・形状であっても構わない。
【0071】
また、本発明に係る回転電機11の基本構成に関する説明において、「12」の磁極部33、「72」のスロット23を備える構成の回転電機11を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。
磁極部33・スロット23の数量は、回転電機11としての回転性能を妨げないのであれば、いかなる数量であっても構わない。
【0072】
また、本発明に係る回転電機11の基本構成に関する説明において、横断面が矩形状の磁性体30の高さ寸法(径方向寸法)および幅寸法(周方向寸法)は、回転電機11の出力特性への影響を実験・シミュレーションを通して求めた結果と、目標となる出力特性とを比較衡量した上で、適宜の寸法を設定すればよい。
【0073】
また、本発明に係る回転電機11は、例えば、ハイブリッド車(車両)に搭載される薄型のモータやジェネレータである。ハイブリッド車両に限らず、回転電機11を備えた車両であれば、これに限らない。例えば、ハイブリッド車両は、エンジンを有さずモータのみを駆動源とする電気自動車または燃料電池車両であってもよい。