(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、コネクタの小型化の要求に伴い、端子が小型化され、電線も細径化してきている。電線が細い場合、端子が固定された電線を把持して、ハウジングの後方端から端子を挿入する際、端子の質量が電線に作用すること、並びに、電線の把持位置から端子の先端までの距離が長いこと等に起因して、電線に撓みが発生し易い。電線に撓みが発生すると、ハウジングの後方端の端子収容部の開口を狙って端子を当該開口に挿入することが困難となる。
【0005】
他方、この問題は、端子のみをハウジングの端子収容部に収容した後に端子に電線を接続する組み付け手順を採用することで容易に解決され得る。以上より、端子のみをハウジングの端子収容部に収容した後に端子に電線を接続する作業を行うことが容易な端子を開発することが望まれているところである。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、端子のみをハウジングの端子収容部に収容した後に端子に電線を接続する作業を行うことが容易な端子、端子に電線を接続する方法、及び治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る端子、端子に電線を接続する方法、及び、治具は、下記(1)〜(5)を特徴としている。
(1)
導体芯線と前記導体芯線を覆う被覆とを含む電線の先端に接続され、板状部材から作製されて前後方向に延びる端子であって、
相手側端子に接続される接続部と、
前記接続部より後方側に位置し、前記電線の被覆を固定する被覆固定部と、
前記接続部と前記被覆固定部との間に位置し、前記電線から露出した前記導体芯線を固定する導体固定部と、を一体に備え、
前記導体固定部は、
前記導体芯線が挿通する挿通部を構成し、前記挿通部に挿通する前記導体芯線の少なくとも幅方向の一側を保持する保持部と、
前記保持部とは前記前後方向の異なる位置に配置され、前記幅方向に弾性変形可能な弾性変形部であって、初期位置にあるときに前記導体芯線と干渉することで前記導体芯線が前記挿通部に挿通不能であり、前記初期位置から前記幅方向の前記一側と反対の他側に弾性変形した変形位置にあるときに前記導体芯線を前記挿通部に挿通可能とする弾性変形部と、を一体に備え、
外力の付与により前記弾性変形部が前記変形位置にあり、且つ、前記導体芯線が前記挿通部に挿通した状態にて前記外力の付与を解除することで、前記弾性変形部の弾性復元力によって前記導体芯線が前記保持部と前記弾性変形部とで前記幅方向に挟まれて、前記導体固定部が前記導体芯線を固定するように構成された、端子であること。
(2)
上記(1)に記載の端子において、
前記弾性変形部は、
前記保持部より前方及び後方に配置され、前記幅方向に弾性変形可能な一対の弾性片であって、前記初期位置にあるときに前記導体芯線と干渉することで前記導体芯線が前記挿通部に挿通不能であり、前記変形位置にあるときに前記導体芯線を前記挿通部に挿通可能とする一対の弾性片と、
前記一対の弾性片の延出端部同士を連結すると共に前記前後方向に延びる連結部と、を一体に備え、
前記連結部への外力の付与により前記一対の弾性片が前記変形位置にあり、且つ、前記導体芯線が前記挿通部に挿通した状態にて前記外力の付与を解除することで、前記一対の弾性片の弾性復元力によって前記導体芯線が前記保持部と前記一対の弾性片とで前記幅方向に挟まれて、前記導体固定部が前記導体芯線を固定するように構成された、端子であること。
(3)
上記(1)又は上記(2)に記載の端子に前記電線を接続する方法であって、
ハウジングの端子収容部に前記端子を収容する工程と、
前記端子収容部に収容された前記端子の前記弾性変形部に、外力を付与して前記弾性変形部を前記変形位置に維持する工程と、
前記外力の付与により前記弾性変形部が前記変形位置にある状態で、前記導体芯線を前記挿通部に挿通する工程と、
前記導体芯線が前記挿通部に挿通した状態で、前記外力の付与を解除して、前記弾性変形部の弾性復元力によって前記導体芯線を前記保持部と前記弾性変形部とで前記幅方向に挟むことで、前記導体固定部に前記導体芯線を固定する工程と、
を含む、方法であること。
(4)
上記(3)に記載の方法にて使用される治具であって、
前記端子収容部に収容された前記端子の前記弾性変形部を上方から下方に向けて押圧する押圧部を備え、
前記押圧部の底部に位置する、前記弾性変形部を押圧するための押圧面は、前記弾性変形部に対して前記押圧部を下方に押し付けたとき、前記弾性変形部が前記幅方向の前記他側に変形するように、水平面に対して前記他側に傾斜している、治具であること。
(5)
上記(4)に記載の治具であって、
前記押圧部と並んで位置すると共に、前記導体芯線を前記挿通部に向けて案内する案内部を一体に備え、
前記案内部の底部に位置する、前記導体芯線を前記挿通部に向けて案内する案内面には、前記導体芯線を前記挿通部の中心に向けて案内する突起部が設けられた、治具であること。
【0008】
上記(1)の構成の端子によれば、ハウジングの端子収容部に端子を収容した後に、電線を端子に接続する際に、外力の付与により弾性変形部が変形位置にあり、且つ、導体芯線が挿通部に挿通した状態にて、その外力の付与を解除するだけで、電線の導体芯線を端子に固定することができる。従って、端子のみをハウジングの端子収容部に収容した後においても、極めて容易に電線を端子に接続することができる。
【0009】
上記(2)の構成の端子によれば、導体芯線が、保持部と一対の弾性片とによって、延在方向の異なる2箇所にて挟まれるので、導体芯線が延在方向の1箇所のみで挟まれる態様と比べて、電線の導体芯線をより一層強固に端子に固定することができる。
【0010】
上記(3)の構成の端子に電線を接続する方法によれば、ハウジングの端子収容部に端子を収容した後に、電線を端子に接続する際に、外力の付与により弾性変形部が変形位置にあり、且つ、導体芯線が挿通部に挿通した状態にて、その外力の付与を解除するだけで、電線の導体芯線を端子に固定することができる。従って、端子のみをハウジングの端子収容部に収容した後においても、極めて容易に電線を端子に接続することができる。
【0011】
上記(4)の構成の治具によれば、押圧部の押圧面が水平面に対して他側に傾斜している。従って、押圧部を上方から下方に向けて移動するだけで、弾性変形部を他側に確実に弾性変形させることができる。
【0012】
上記(5)の構成の治具によれば、案内部の案内面に突起部が設けられたことにより、導体芯線の先端を案内部の案内面上を滑らせながら導体芯線を挿通部に挿入することで、導体芯線の先端を挿通部内に確実に案内することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、端子のみをハウジングの端子収容部に収容した後に端子に電線を接続する作業を行うことが容易な端子、端子に電線を接続する方法、及び、治具を提供できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る端子10を含むコネクタ1について説明する。以下、説明の便宜上、コネクタ1の軸方向(嵌合方向)において、相手側端子(図示省略)が嵌合する側(
図1において左側)を前方側とし、その反対側(
図1において右側)を後方側と呼ぶ。また、
図1において上側及び下側をそれぞれ、上側及び下側と呼ぶ。
【0017】
図2に示すように、コネクタ1は、端子10と、ハウジング20と、カバー30と、コネクタカバー40と、を含んで構成される。以下、コネクタ1を構成する各部品について順に説明していく。
【0018】
先ず、
図3〜
図5を参照しながら、端子10について説明する。端子10は、板状金属部材にプレス加工・曲げ加工等を施すことで形成された雌端子であり、相手側端子(雄端子、図示省略)が嵌合する接続部11と、接続部11の後方側に連続し電線(図示省略)の導体芯線を固定する導体固定部12と、導体固定部12の後方側に連続し電線の被覆を固定する被覆固定部13と、を備える。
【0019】
接続部11は、角筒状の形状を有しており、その上面の幅方向一側の前後方向両端部には、上方に突出する一対の突出部14が形成されている。一対の突出部14のうち特に前方側の突出部14は、後述するように、ハウジング20のランス26(
図8参照)と係合して、端子10の抜け止め機能を果たす。
【0020】
導体固定部12は、保持部12aと、弾性変形部12bとを含んで構成されている。保持部12aは、その先端部が前後方向に延びる筒状に屈曲された板状部分であり、その筒状部が、電線Wの導体芯線W1(
図30参照)が挿通する挿通部15として機能する。本例では、挿通部15は、周方向に完全に閉じた筒状ではなく、正面(前方側)からみて右側の一部が開口している(特に、
図5参照)。
【0021】
弾性変形部12bは、保持部12a(挿通部15)に対して前方側の近傍及び後方側の近傍から上方に延びる一対の弾性片18と、一対の弾性片18の延出端部同士を連結すると共に前後方向に延びる連結部17と、で構成されている。
【0022】
一対の弾性片18は、幅方向に弾性変形可能であり、
図5に示す「初期位置」では、前後方向からみて、挿通部15の領域内を略上下方向に横断する。このため、導体芯線W1を挿通部15に挿通させようとしても、導体芯線W1と弾性片18とが干渉することで、導体芯線W1が挿通部15に挿通不能となる。一方、一対の弾性片18が、「初期位置」から、正面(前方側)からみて右側に弾性変形した「変形位置」にある状態(
図34参照)では、一対の弾性片18は、前後方向からみて、挿通部15の領域外に移動する。このため、導体芯線W1が挿通部15に挿通可能となる。導体固定部12による電線Wの導体芯線W1の固定方法については、後に詳述する。
【0023】
被覆固定部13には、一対の加締め片16が形成されている。これらの加締め片16により電線Wの被覆W2を圧着することで、電線Wが被覆固定部13に固定される。
【0024】
次に、
図6〜
図12を参照しながら、ハウジング20について説明する。特に、
図6及び
図9に示すように、ハウジング20は、矩形平板状のハウジング本体21を備える。ハウジング本体21の上下面それぞれには、複数の端子10を収容するための複数の端子収容部が形成されている。ハウジング本体21の上面側及び下面側の構成は、若干の相違はあるものの、大略的には同様であるので、以下、ハウジング本体21の上面側の構成についてのみ説明する。
【0025】
ハウジング本体21の上面には、幅方向に間隔を空けて前後方向に延びる複数の立壁22が一体に形成されている。各立壁22は、幅方向に隣接する2つの端子収容部を仕切る機能を果たす。即ち、ハウジング本体21の上面には、複数の立壁22により仕切られた複数の端子収容部が幅方向に並ぶように形成されている。
【0026】
ハウジング本体21の前方側部分には、端子収容部の上方を塞ぐように天壁部23が一体に形成されている。即ち、端子収容部の前方側部分は、天壁部23により上方が塞がれた筒状の形状を有し、端子収容部の後方側部分は、その上方が開放されている。各端子収容部の前方側端には開口24が形成されている(
図6〜
図8参照)。この開口24を介して、相手側端子(雄端子)がハウジング本体21の端子収容部に挿入されることになる。
【0027】
図8に示すように、天壁部23の後端縁には、後方且つ下方を向くように傾斜するテーパ面25が形成されている。テーパ面25は、後述するように、ハウジング20に上カバー30Aを組み付ける際に利用されることになる(
図21参照)。天壁部23の前後方向中央部の下面には、各端子収容部内に向けて下方に突出するランス26が一体に形成されている。
【0028】
上述のように、ハウジング本体21では、各端子収容部の後方側部分の上方が開放されている。このため、端子10を把持しながら、
図9及び
図10に示すように、端子10を端子収容部の後方側部分に載置して前方を押し込むことで、端子10を、端子収容部の前方側部分(筒状の部分)における正規挿入位置近傍の1次係止位置(中途挿入位置)まで容易に挿入することができる(
図11及び
図12参照)。
【0029】
端子10が、
図11及び
図12に示す1次係止位置まで挿入される過程において、ランス26は、端子10の前方側の突出部14に当接することで弾性変形を伴いながら当該突出部14に乗り上げ、その後、当該突出部14が通り過ぎることで、初期位置に弾性復帰する。この結果、
図12に示すように、当該突出部14がランス26と係合することで、端子10のハウジング20からの抜け止め機能が発揮される。
【0030】
次に、
図13〜
図22を参照しながら、カバー30について説明する。カバー30として、本例では、上カバー30Aと、下カバー30Bが使用される(
図2参照)。上カバー30Aは、ハウジング本体21の上面側に組み付けられて、上面側の端子収容部の後方側部分の上方を塞ぐ機能を有し、下カバー30Bは、ハウジング本体21の下面側に組み付けられて、下面側の端子収容部の後方側部分の下方を塞ぐ機能を有する。
【0031】
先ず、
図13〜
図15を参照しながら、上カバー30Aについて説明する。
図13は、ハウジング本体21への組み付け時の向きの上カバー30Aを示し、
図14は、裏返した上カバー30Aを示す。
【0032】
上カバー30Aは、略平板状のカバー本体31を備える。カバー本体31の前方側部分の下面には、ハウジング本体21の立壁22に対応して、幅方向に間隔を空けて前後方向に延びる複数の立壁32が一体に形成されている。これにより、上カバー30Aのハウジング20への組み付け状態では、ハウジング本体21の端子収容部の後方側部分の上方が上カバー30Aにより塞がれて、端子収容部の前方側部分及び後方側部分において、前後方向に連続する筒状の形状を有する端子収容部が構成される。
【0033】
上カバー30Aのカバー本体31の前端縁には、前方且つ上方を向くように傾斜するテーパ面33が形成されている。テーパ面33は、後述するように、ハウジング20に上カバー30Aを組み付ける際に利用されることになる(
図21参照)。
【0034】
上カバー30Aのカバー本体31の前端部の下面には、
図15に示すように、下方に突出する複数の突起部34が、幅方向における複数の端子収容部の位置(隣接する立壁32の間の位置)に一体で形成されている。突起部34は、後述するように、上カバー30Aのハウジング20への組み付け時、1次係止位置にある端子10を前方へ押圧して端子10を正規挿入位置まで移動させる機能を有する。
【0035】
上カバー30Aのカバー本体31の幅方向両端部には、ハウジング20への組み付け時において、下カバー30Bの係合部36(
図16及び
図17参照)とそれぞれ係合する係合部35が一体で形成されている。
【0036】
上カバー30Aのカバー本体31の前後方向中央部分には、複数の端子収容部に跨って幅方向に連続する第1貫通孔37が形成されている。更に、上カバー30Aのカバー本体31の前方側部分(突起部34より後方側の部分)には、幅方向における複数の端子収容部の位置(隣接する立壁32の間の位置)のそれぞれに、前後方向に延びる第2貫通孔38が形成されている。
【0037】
次に、
図16〜
図18を参照しながら、下カバー30Bについて説明する。
図16は、ハウジング本体21への組み付け時の向きの下カバー30Bを示し、
図17は、裏返した下カバー30Bを示す。上カバー30A及び下カバー30Bの構成は、上下方向に対称であることを除き、若干の相違はあるものの、大略的には同様である。従って、下カバー30Bについては、上カバー30Aの各構成に対応する構成に対して上カバー30Aと同じ符号を付すことで、それらの説明に代える。
【0038】
図19〜
図22に示すように、上カバー30A及び下カバー30Bがハウジング20に組み付けられた状態では、上カバー30Aの前端縁のテーパ面33がハウジング20の上面側の天壁部23の後端縁のテーパ面25の下側に進入した状態で、上カバー30Aの前端縁とハウジング20の上面側の天壁部23の後端縁とが係止されている(
図21参照)。下カバー30Bの前端縁のテーパ面33がハウジング20の下面側の天壁部23の後端縁のテーパ面25の上側に進入した状態で、下カバー30Bの前端縁とハウジング20の下面側の天壁部23の後端縁とが係止されている(
図22参照)。更に、上カバー30Aの複数の係合部35と下カバー30Bの複数の係合部36とが互いに係止されている。これらの協働により、上カバー30A及び下カバー30Bそれぞれがハウジング20に対して相対移動不能に組み付けられ、且つ、上カバー30A及び下カバー30B同士も相対移動不能に組み付けられる。
【0039】
次に、
図23を参照しながら、コネクタカバー40について説明する。コネクタカバー40は、上下方向に互いに対向するように配置された一対の板状の電線収容部41と、下側の電線収容部41の後方側に一体に延出形成された電線保持部42と、を備える。コネクタカバー40は、一対の電線収容部41それぞれの前方側端部に設けられた係合部43を、ハウジング20に組み付けられた状態にある上カバー30A及び下カバー30Bそれぞれの後方側端部に設けられた係合部(図示省略)に取り付けることで、ハウジング20の後端面から後方側へ突出するように、ハウジング20に固定される(
図42参照)。
【0040】
一対の電線収容部41は、複数の端子収容部に収容された複数の端子10から後方側に延びる複数の電線Wを収容して保護する機能を有する。電線保持部42は、ハウジング20から後方側に延びる複数の電線を束ねて保持するために使用される部位である。ハウジング20から後方側に延びる複数の電線Wは、タイバンド等(図示省略)を利用して束ねた状態で電線保持部42に保持されることになる。
【0041】
次に、
図24〜
図42を参照しながら、コネクタ1の組み付け手順について説明する。先ず、
図24に示すように、裏返した状態にあるハウジング20の上面側(正規の向きでは下面側)の所定の端子収容部における上方が開放された後方側部分に、所定の装置を利用して、端子10をそれぞれ配置し、上述した
図11及び
図12に示した1次係止位置まで端子10の所定箇所(典型的には、角筒状の接続部11の後端面)を前方に押し込む。これにより、端子10の突出部14がハウジング20のランス26と係合することで、端子収容部に挿入された端子10のハウジング20からの抜けが防止される状態が得られる。
【0042】
次に、
図25に示すように、ハウジング20を裏返す。これにより、ハウジング20の向きが正規の向きとなる。この状態で、上述した
図24に示した手順と同様、
図26に示すように、ハウジング20の上面側の所定の端子収容部に、端子10を1次係止位置までそれぞれ挿入する。
【0043】
次に、
図27に示すように、下カバー30Bをハウジング20に組み付け、次いで、
図28に示すように、上カバー30Aをハウジング20に組み付ける。上カバー30A及び下カバー30Bのハウジング20への組み付け手順は、上下方向に対称であることを除き、大略的には同様である。従って、以下、上カバー30Aのハウジング20への組み付け手順のみについて説明する。
【0044】
端子収容部に挿入された端子10が1次係止位置にある状態にて、先ず、上カバー30Aの後方側が前方側より上方に傾斜した状態を維持しながら、上カバー30A(カバー本体31)の前端縁を、ハウジング20の天壁部23の後端縁に向けて近づけ、上カバー30Aの突起部34を端子10の接続部11の後端に当接させる。
【0045】
次に、この状態(即ち、上カバー30Aが傾斜した状態、且つ、突起部34が端子10の接続部11に当接した状態を維持しながら、上カバー30Aの前端縁のテーパ面33が天壁部23の後端縁のテーパ面25の下側に進入するまで(上カバー30Aの前端縁と天壁部23の後端縁とが係合するまで)、上カバー30Aをハウジング20に対して前方側に平行移動させる。このとき、突起部34の押圧によって端子10は、上カバー30Aの前方側への移動に伴って、1次係止位置から正規挿入位置まで移動する。
【0046】
そして、上カバー30Aの前端縁と天壁部23の後端縁とが係合した状態を維持しながら、傾斜した状態にある上カバー30Aを、上カバー30Aの先端側を支点にして、上カバー30Aの後方側がハウジング20に近づく向きに回動させる。これにより、上カバー30Aの複数の係合部35と下カバー30Bの複数の係合部36とが互いに係止されることで、上述した
図20に示すように、ハウジング20に対して上カバー30A及び下カバー30Bが組み付けられた状態が得られる。
【0047】
なお、上カバー30Aがハウジング20に対して組み付けられた状態では、上カバー30Aの突起部34が端子10の接続部11の後端面に対面接触、或いは、近接している。このため、端子10のハウジング20からの抜け止め機能が発揮される。即ち、端子10の突出部14とランス26との係合に加えて、端子10の接続部11と突起部34との係合により、所謂2重係止の状態が得られる。
【0048】
なお、上カバー30Aは、上述のように、傾斜した状態にある上カバー30Aを、上カバー30Aの先端側を支点にして回動させることによってのみ、正規の状態でハウジング20に組み付くように設計されている。仮に、上カバー30Aを、ハウジング20に対して平行に維持した状態で、上方から下方に向けて平行移動させてハウジング20に組み付けようとしても、上カバー30Aの前端縁と天壁部23の後端縁とが干渉することで、組み付けることができない。
【0049】
上述のように、ハウジング20に対して上カバー30A及び下カバー30Bが組み付けられると、次に、ハウジング20に収容されている複数の端子10それぞれに電線Wを接続する。このため、先ず、端子10が収容されている複数の端子収容部のうち1つの端子収容部の第2貫通孔38に、上方から下方に向けて治具50を挿入する。以下、先ず、
図29〜
図31を参照しながら、治具50について説明する。
【0050】
治具50は、押圧部51と、押圧部51と並んで配置される案内部52と、押圧部51と案内部52とを連結する連結部53と、を一体で備える金属製部材である。治具50は、大略的には、前後方向に延びる板状の形状を有し、押圧部51及び案内部52がそれぞれ前方側及び後方側に位置する向きで、第2貫通孔38に挿入される。
【0051】
押圧部51は、端子収容部に収容された端子10の弾性変形部12b(より具体的には、連結部17)を上方から下方に向けて押圧する機能を果たす。押圧部51の底部に位置する、弾性変形部12bを押圧するための押圧面(平面)54は、弾性変形部12bに対して押圧部51を下方に押し付けたとき、弾性変形部12bが正面(前方側)からみて右側に変形するように、水平面に対して、正面からみて右側に傾斜している(
図31参照)。
【0052】
従って、押圧部51の押圧面54によって弾性変形部12b(連結部17)を上方から下方に向けて押圧すると、一対の弾性片18が、「初期位置」(
図5参照)から、「変形位置」(
図34参照)に移動するようになっている。
【0053】
案内部52は、電線Wの導体芯線W1を端子10の挿通部15に向けて案内する機能を果たす。案内部52の底部に位置する、導体芯線W1を挿通部15に向けて案内する案内面には、その前方側(押圧部51に近い側)の端部に、導体芯線W1を挿通部15の中心に向けて案内する突起部55が設けられている。以上、治具50について説明した。
【0054】
このような形状を有する治具50を第2貫通孔38に挿入する前の段階では、
図32及び
図5に示すように、端子10の弾性変形部12bの一対の弾性片18は「初期位置」にある。従って、電線Wの導体芯線W1を挿通部15に挿通不能となっている。
【0055】
この状態にて、対応する第2貫通孔38に、上方から下方に向けて治具50を挿入すると、治具50の押圧面54が、対応する端子10の弾性変形部12bの連結部17に当接する状態が得られる。
【0056】
この状態にて、治具50を下方に向けて押し付ける。これにより、連結部17が下方に押圧されることで、
図33及び
図34に示すように、一対の弾性片18が、「初期位置」から「変形位置」に移動する。即ち、電線Wの導体芯線W1が挿通部15に挿通可能な状態が得られる。
【0057】
次に、対応する端子収容部の後側端開口から、電線Wを挿入する。なお、電線Wには、電線Wの先端部の被覆W2を除去する端末処理が予めなされている。従って、電線Wの導体芯線W1の先端部は露出している。
【0058】
このように、電線Wを挿入することで、電線Wの先端部の露出した導体芯線W1は、治具50の案内部52の案内面により案内され、突起部55によって挿通部15の中心に向けて案内されながら、
図35及び
図36に示すように、挿通部15に挿通される。
【0059】
次に、この状態から、治具50を第2貫通孔38から抜き出す。これにより、押圧面54による弾性変形部12bへの押圧が解除されるので、
図37及び
図38に示すように、一対の弾性片18の弾性復元力によって導体芯線W1が保持部12aと一対の弾性片18とで幅方向に挟まれる。この結果、導体芯線W1が端子10の導体固定部12に固定されると共に電気的に接続される。
【0060】
次に、第1貫通孔37の対応する位置に、上方から下方に向けて加締め治具(図示省略)を挿入する。これにより、加締め治具の下端面が、対応する端子10の被覆固定部13の一対の加締め片16に当接する状態が得られる。次に、この状態にて、加締め治具を下方に向けて押し付ける。これにより、一対の加締め片16が下方に押圧されることで、電線Wの被覆W2が、一対の加締め片16より圧着され、被覆固定部13に固定される。
【0061】
これにより、この電線Wの対応する端子10への接続が完了する。以降、
図39に示すように、上述した電線Wの接続作業が、端子10が収容されている残りの全ての端子収容部について順に繰り返し実行される。
【0062】
端子10が収容されている端子収容部の全てについて電線Wの接続作業が完了すると、次に、
図40に示すように、コネクタカバー40をハウジング20に取り付ける。具体的には、一対の電線収容部41それぞれの係合部43を、ハウジング20に組み付けられた上カバー30A及び下カバー30Bそれぞれの後方側端部の係合部に取り付けることで、コネクタカバー40が、ハウジング20の後端面から後方側へ突出するように、ハウジング20に固定される。
【0063】
そして、最後に、コネクタカバー40から後方側に延びる複数の電線Wを、タイバンド等(図示省略)を利用して束ねた状態で電線保持部42に保持する。これにより、コネクタ1の組み付けが完了する。
【0064】
以上、本発明の実施形態に係る端子10によれば、ハウジングの端子収容部に端子10を収容した後に、電線Wを端子10に接続する際に、外力の付与により弾性変形部12bが変形位置にあり、且つ、導体芯線W1が挿通部15に挿通した状態にて、その外力の付与を解除するだけで、電線Wの導体芯線W1を端子10に固定することができる。従って、端子10のみをハウジング20の端子収容部に収容した後においても、極めて容易に電線Wを端子10に接続することができる。
【0065】
更に、導体芯線W1が、保持部12aと一対の弾性片18とによって、延在方向の異なる2箇所にて挟まれるので、導体芯線W1が延在方向の1箇所のみで挟まれる態様と比べて、電線Wの導体芯線W1をより一層強固に端子10に固定することができる。
【0066】
本発明の実施形態に係る治具50によれば、押圧部51の押圧面54が水平面に対して幅方向の他側に傾斜している。従って、押圧部51を上方から下方に向けて移動するだけで、弾性変形部12bを幅方向の他側に確実に弾性変形させることができる。
【0067】
更に、案内部52の案内面に突起部55が設けられたことにより、導体芯線W1の先端を案内部52の案内面上を滑らせながら導体芯線W1を挿通部15に挿入することで、導体芯線W1の先端を挿通部15内に確実に案内することができる。
【0068】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0069】
上記実施形態では、端子10の弾性変形部12bが、連結部17及び一対の弾性片18で構成されているが、単一の弾性片18のみで構成されていてもよい。この場合、導体芯線W1は、保持部12aと単一の弾性片18とによって、延在方向の1箇所にて挟まれる。
【0070】
さらに、上記実施形態では、端子10として、雌端子が採用されているが、端子10として、雄端子が採用されてもよい。この場合、端子10の接続部11が、角筒状の形状ではなく、タブ状の形状を有することになる。
【0071】
ここで、上述した本発明に係る端子10、端子10に電線を接続する方法、及び、治具50の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
導体芯線(W1)と前記導体芯線(W1)を覆う被覆(W2)とを含む電線(W)の先端に接続され、板状部材から作製されて前後方向に延びる端子(10)であって、
相手側端子に接続される接続部(11)と、
前記接続部(11)より後方側に位置し、前記電線(W)の被覆(W2)を固定する被覆固定部(13)と、
前記接続部(11)と前記被覆固定部(13)との間に位置し、前記電線(W)から露出した前記導体芯線(W1)を固定する導体固定部(12)と、を一体に備え、
前記導体固定部(12)は、
前記導体芯線(W1)が挿通する挿通部(15)を構成し、前記挿通部(15)に挿通する前記導体芯線(W1)の少なくとも幅方向の一側を保持する保持部(12a)と、
前記保持部(12a)とは前記前後方向の異なる位置に配置され、前記幅方向に弾性変形可能な弾性変形部(12b)であって、初期位置にあるときに前記導体芯線(W1)と干渉することで前記導体芯線(W1)が前記挿通部(15)に挿通不能であり、前記初期位置から前記幅方向の前記一側と反対の他側に弾性変形した変形位置にあるときに前記導体芯線(W1)を前記挿通部(15)に挿通可能とする弾性変形部(12b)と、を一体に備え、
外力の付与により前記弾性変形部(12b)が前記変形位置にあり、且つ、前記導体芯線(W1)が前記挿通部(15)に挿通した状態にて前記外力の付与を解除することで、前記弾性変形部(12b)の弾性復元力によって前記導体芯線(W1)が前記保持部(12a)と前記弾性変形部(12b)とで前記幅方向に挟まれて、前記導体固定部(12)が前記導体芯線(W1)を固定するように構成された、端子(10)。
[2]
上記[1]に記載の端子(10)において、
前記弾性変形部(12b)は、
前記保持部(12a)より前方及び後方に配置され、前記幅方向に弾性変形可能な一対の弾性片(18)であって、前記初期位置にあるときに前記導体芯線(W1)と干渉することで前記導体芯線(W1)が前記挿通部(15)に挿通不能であり、前記変形位置にあるときに前記導体芯線(W1)を前記挿通部(15)に挿通可能とする一対の弾性片(18)と、
前記一対の弾性片(18)の延出端部同士を連結すると共に前記前後方向に延びる連結部(17)と、を一体に備え、
前記連結部(17)への外力の付与により前記一対の弾性片(18)が前記変形位置にあり、且つ、前記導体芯線(W1)が前記挿通部(15)に挿通した状態にて前記外力の付与を解除することで、前記一対の弾性片(18)の弾性復元力によって前記導体芯線(W1)が前記保持部(12a)と前記一対の弾性片(18)とで前記幅方向に挟まれて、前記導体固定部(12)が前記導体芯線(W1)を固定するように構成された、端子(10)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の端子(10)に前記電線(W)を接続する方法であって、
ハウジング(20)の端子収容部に前記端子(10)を収容する工程と、
前記端子収容部に収容された前記端子(10)の前記弾性変形部(12b)に、外力を付与して前記弾性変形部(12b)を前記変形位置に維持する工程と、
前記外力の付与により前記弾性変形部(12b)が前記変形位置にある状態で、前記導体芯線(W1)を前記挿通部(15)に挿通する工程と、
前記導体芯線(W1)が前記挿通部(15)に挿通した状態で、前記外力の付与を解除して、前記弾性変形部(12b)の弾性復元力によって前記導体芯線(W1)を前記保持部(12a)と前記弾性変形部(12b)とで前記幅方向に挟むことで、前記導体固定部(12)に前記導体芯線(W1)を固定する工程と、
を含む、方法。
[4]
上記[3]に記載の方法にて使用される治具(50)であって、
前記端子収容部に収容された前記端子(10)の前記弾性変形部(12b)を上方から下方に向けて押圧する押圧部(51)を備え、
前記押圧部(51)の底部に位置する、前記弾性変形部(12b)を押圧するための押圧面(54)は、前記弾性変形部(12b)に対して前記押圧部(51)を下方に押し付けたとき、前記弾性変形部(12b)が前記幅方向の前記他側に変形するように、水平面に対して前記他側に傾斜している、治具(50)。
[5]
上記[4]に記載の治具(50)であって、
前記押圧部(51)と並んで位置すると共に、前記導体芯線(W1)を前記挿通部(15)に向けて案内する案内部(52)を一体に備え、
前記案内部(52)の底部に位置する、前記導体芯線(W1)を前記挿通部(15)に向けて案内する案内面には、前記導体芯線(W1)を前記挿通部(15)の中心に向けて案内する突起部(55)が設けられた、治具(50)。